(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156401
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】ワイヤボンディング装置、ワイヤボンディング方法及びワイヤボンディングプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
H01L21/60 301L
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070827
(22)【出願日】2023-04-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 豊
(72)【発明者】
【氏名】早田 滋
(72)【発明者】
【氏名】菊谷 隆至
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044BB22
5F044DD02
5F044DD20
(57)【要約】
【課題】ボンディング位置の精度向上を図る。
【解決手段】ワイヤボンディング装置1は、超音波ホーン30と、ホーンホルダ20と、ボンディングツール40と、ホーンホルダ温度センサCH0と、ホーンホルダ駆動部10,12と、ホーンホルダ20の温度履歴、及び、ボンディングツール40の位置履歴、のうち少なくとも一方に基づいて、熱回路網法によって超音波ホーン30の推定温度を算出するホーン温度推定部90cと、ホーン温度推定部90cにおいて算出された超音波ホーン30の推定温度に基づいて、ボンディングツール40の位置を補正するボンディングツール位置補正部90dとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークにワイヤボンディングを行うワイヤボンディング装置であって、
先端部と基端部とを有し、ワイヤに超音波振動を印加する超音波ホーンと、
前記超音波ホーンの前記基端部に設けられ、前記超音波ホーンを保持するホーンホルダと、
前記超音波ホーンの前記先端部に設けられ、前記ワイヤを前記ワークにボンディングするボンディングツールと、
前記ホーンホルダに設けられたホーンホルダ温度センサと、
前記ホーンホルダを移動させ、前記ボンディングツールを前記ワークのボンディング位置に位置決めするホーンホルダ駆動部と、
前記ホーンホルダ温度センサから取得した前記ホーンホルダの温度履歴、及び、前記ワークに対する前記ボンディングツールの位置履歴、のうち少なくとも一方に基づいて、熱回路網法によって前記超音波ホーンの推定温度を算出するホーン温度推定部と、
前記ホーン温度推定部において算出された前記超音波ホーンの推定温度に基づいて、前記ボンディングツールの位置を補正するボンディングツール位置補正部と
を備える、
ワイヤボンディング装置。
【請求項2】
前記ホーンホルダ温度センサは、前記ホーンホルダの長手方向において間隔を空けて設けられた第1のホーンホルダ温度センサ及び第2のホーンホルダ温度センサであって、前記ホーンホルダにおける前記超音波ホーンに近い側の部分の温度を測定する第1のホーンホルダ温度センサと、前記ホーンホルダにおける前記超音波ホーンから遠い側の部分の温度を測定する第2のホーンホルダ温度センサとを含む、
請求項1に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項3】
前記ホーンホルダの温度履歴は、前記第1のホーンホルダ温度センサから取得される、
請求項2に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項4】
前記ワークの画像を取り込む画像取込部と、
前記ワークの画像を処理する画像処理部と、
前記ワークの画像を反射して前記画像取込部から前記画像処理部に導く内面、及び、前記内面を覆う外装の最外面である外面を有する鏡筒部と、
前記鏡筒部の前記内面と前記外面との間に設けられた鏡筒部温度センサと、
前記鏡筒部の温度に基づいて、前記画像取込部の位置、または前記画像取込部と前記ボンディングツールとの相対位置を補正する画像取込部位置補正部とをさらに備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項5】
前記鏡筒部温度センサは、前記鏡筒部の長手方向において間隔を空けて設けられた第1の鏡筒部温度センサ及び第2の鏡筒部温度センサであって、前記鏡筒部における前記画像取込部に接近する側の部分の温度を測定する第1の鏡筒部温度センサと、前記鏡筒部における前記画像処理部に接近する側の部分の温度を測定する第2の鏡筒部温度センサとを含む、
請求項4に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項6】
前記鏡筒部温度センサは、前記鏡筒部に挿入されるパイプと、前記パイプの内部に設けられたサーミスタと、前記サーミスタを封止する樹脂材料とを含む、
請求項4に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項7】
ワークにワイヤボンディングを行うワイヤボンディング装置を用いたワイヤボンディング方法であって、
前記ワイヤボンディング装置は、
先端部と基端部とを有し、ワイヤに超音波振動を印加する超音波ホーンと、
前記超音波ホーンの前記基端部に設けられ、前記超音波ホーンを保持するホーンホルダと、
前記超音波ホーンの前記先端部に設けられ、前記ワイヤを前記ワークにボンディングするボンディングツールと、
前記ホーンホルダに設けられたホーンホルダ温度センサと、
前記ホーンホルダを移動させ、前記ボンディングツールを前記ワークのボンディング位置に位置決めするホーンホルダ駆動部と
を備え、
前記ワイヤボンディング方法は、
前記ホーンホルダ温度センサから前記ホーンホルダの温度履歴を取得することと、
前記ワークに対する前記ボンディングツールの位置履歴を取得することと、
前記温度履歴及び前記位置履歴の少なくとも一方に基づいて、熱回路網法によって前記超音波ホーンの推定温度を算出することと、
算出された前記超音波ホーンの前記推定温度に基づいて、前記ボンディングツールの位置を補正することと
を含む、ワイヤボンディング方法。
【請求項8】
ワークにワイヤボンディングを行うワイヤボンディング装置のコンピュータに実行させるワイヤボンディングプログラムであって、
前記ワイヤボンディング装置は、
先端部と基端部とを有し、ワイヤに超音波振動を印加する超音波ホーンと、
前記超音波ホーンの前記基端部に設けられ、前記超音波ホーンを保持するホーンホルダと、
前記超音波ホーンの前記先端部に設けられ、前記ワイヤを前記ワークにボンディングするボンディングツールと、
前記ホーンホルダに設けられたホーンホルダ温度センサと、
前記ホーンホルダを移動させ、前記ボンディングツールを前記ワークのボンディング位置に位置決めするホーンホルダ駆動部と
を備え、
前記コンピュータに、
前記ホーンホルダ温度センサから前記ホーンホルダの温度履歴を取得することと、
前記ワークに対する前記ボンディングツールの位置履歴を取得することと、
前記温度履歴及び位置履歴の少なくとも一方に基づいて、熱回路網法によって前記超音波ホーンの推定温度を算出することと、
算出された前記超音波ホーンの前記推定温度に基づいて、前記ボンディングツールの位置を補正することと
を実行させる、ワイヤボンディングプログラム。
【請求項9】
ワークにワイヤボンディングを行うワイヤボンディング装置であって、
先端部と基端部とを有し、ワイヤに超音波振動を印加する超音波ホーンと、
前記超音波ホーンの前記基端部に設けられ、前記超音波ホーンを保持するホーンホルダと、
前記超音波ホーンの前記先端部に設けられ、前記ワイヤを前記ワークにボンディングするボンディングツールと、
前記ワークの画像を取り込む画像取込部と、
前記ワークの画像を処理する画像処理部と、
前記ワークの画像を反射して前記画像取込部から前記画像処理部に導く内面、及び、前記内面を覆う外装の最外面である外面を有する鏡筒部と、
前記鏡筒部の前記内面と前記外面との間に設けられた鏡筒部温度センサと、
前記鏡筒部を移動させ、前記画像取込部を前記ワークの撮像位置に位置決めする鏡筒部駆動部と、
前記鏡筒部温度センサによって測定された前記鏡筒部の温度に基づいて、前記画像取込部の位置、または前記画像取込部と前記ボンディングツールとの相対位置を補正する画像取込部位置補正部と
を備える、
ワイヤボンディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ワイヤボンディング装置、ワイヤボンディング方法及びワイヤボンディングプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤボンディングのためのワイヤボンディング装置において、熱伸縮によるボンディング位置のズレを補正するため、ボンディングツール、超音波ホーン、ホーンホルダ、画像取込部及び鏡筒部などの温度の測定又は推定が行われる。
【0003】
例えば、特許文献1には、キャピラリによって半導体チップに対して、ワイヤボンディングを施すワイヤボンディング装置において、ホーンホルダ又は認識レンズに温度センサを設けたことを特徴とするワイヤボンディング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、超音波ホーンに温度センサを設けると、超音波ホーンによってワイヤに印加される超音波振動が阻害されてしまい、ワイヤボンディングの品質が損なわれる場合がある。このため、特許文献1のようなワイヤボンディング装置においては、超音波ホーンに温度センサを設けることができず、超音波ホーンの温度を直接測定することが難しい。したがって、超音波ホーンの熱伸縮に起因してワイヤボンディング位置がずれる場合がある。
【0006】
本願発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ワイヤボンディング位置の精度向上を図ることができる、ワイヤボンディング装置、ワイヤボンディング方法及びワイヤボンディングプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の一態様に係るワイヤボンディング装置は、ワークにワイヤボンディングを行うワイヤボンディング装置であって、先端部と基端部とを有し、ワイヤに超音波振動を印加する超音波ホーンと、超音波ホーンの基端部に設けられ、超音波ホーンを保持するホーンホルダと、超音波ホーンの先端部に設けられ、ワイヤをワークにボンディングするボンディングツールと、ホーンホルダに設けられたホーンホルダ温度センサと、ホーンホルダを移動させ、ボンディングツールをワークのボンディング位置に位置決めするホーンホルダ駆動部と、ホーンホルダ温度センサから取得したホーンホルダの温度履歴、及び、ワークに対するボンディングツールの位置履歴、のうち少なくとも一方に基づいて、熱回路網法によって超音波ホーンの推定温度を算出するホーン温度推定部と、ホーン温度推定部において算出された超音波ホーンの推定温度に基づいて、ボンディングツールの位置を補正するボンディングツール位置補正部とを備える。
【0008】
本願発明の他の一態様に係るワイヤボンディング方法は、ワークにワイヤボンディングを行うワイヤボンディング装置を用いたワイヤボンディング方法であって、ワイヤボンディング装置は、先端部と基端部とを有し、ワイヤに超音波振動を印加する超音波ホーンと、超音波ホーンの基端部に設けられ、超音波ホーンを保持するホーンホルダと、超音波ホーンの先端部に設けられ、ワイヤをワークにボンディングするボンディングツールと、ホーンホルダに設けられたホーンホルダ温度センサと、ホーンホルダを移動させ、ボンディングツールをワークのボンディング位置に位置決めするホーンホルダ駆動部とを備え、ボンディング方法は、ホーンホルダ温度センサからホーンホルダの温度履歴を取得することと、ワークに対するボンディングツールの位置履歴を取得することと、温度履歴及び位置履歴の少なくとも一方に基づいて、熱回路網法によって超音波ホーンの推定温度を算出することと、算出された超音波ホーンの推定温度に基づいて、ボンディングツールの位置を補正することとを含む。
【0009】
本願発明の他の一態様に係るワイヤボンディングプログラムは、ワークにワイヤボンディングを行うワイヤボンディング装置のコンピュータに実行させるワイヤボンディングプログラムであって、ワイヤボンディング装置は、先端部と基端部とを有し、ワイヤに超音波振動を印加する超音波ホーンと、超音波ホーンの基端部に設けられ、超音波ホーンを保持するホーンホルダと、超音波ホーンの先端部に設けられ、ワイヤをワークにボンディングするボンディングツールと、ホーンホルダに設けられたホーンホルダ温度センサと、ホーンホルダを移動させ、ボンディングツールをワークのボンディング位置に位置決めするホーンホルダ駆動部とを備え、コンピュータに、ホーンホルダ温度センサからホーンホルダの温度履歴を取得することと、ワークに対するボンディングツールの位置履歴を取得することと、温度履歴及び位置履歴の少なくとも一方に基づいて、熱回路網法によって超音波ホーンの推定温度を算出することと、算出された超音波ホーンの推定温度に基づいて、ボンディングツールの位置を補正することとを実行させる。
【0010】
本願発明の一態様に係るワイヤボンディング装置は、ワークにボンディングを行うワイヤボンディング装置であって、先端部と基端部とを有し、ワイヤに超音波振動を印加する超音波ホーンと、超音波ホーンの基端部に設けられ、超音波ホーンを保持するホーンホルダと、超音波ホーンの先端部に設けられ、ワイヤをワークにボンディングするボンディングツールと、ワークの画像を取り込む画像取込部と、ワークの画像を処理する画像処理部と、ワークの画像を反射して画像取込部から画像処理部に導く内面、及び、内面を覆う外装の最外面である外面を有する鏡筒部と、鏡筒部の内面と外面との間に設けられた鏡筒部温度センサと、鏡筒部を移動させ、画像取込部をワークの撮像位置に位置決めする鏡筒部駆動部と、鏡筒部温度センサによって測定された鏡筒部の温度に基づいて、画像取込部の位置、または画像取込部とボンディングツールとの相対位置を補正する画像取込部位置補正部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本願発明によれば、ボンディング位置の精度向上を図ることができる、ワイヤボンディング装置、ワイヤボンディング方法及びワイヤボンディングプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るワイヤボンディング装置の全体概要を示す図である。
【
図2】ワイヤボンディング装置を別角度から示す図である。
【
図3】熱回路網法による伝熱モデルを示す図である。
【
図4】ワイヤボンディング制御部の物理的構成の一例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るワイヤボンディング方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の構成要素は同一又は類似の符号で表している。図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施の形態に限定して解するべきではない。
【0014】
<ワイヤボンディング装置>
まず、
図1乃至
図3を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るワイヤボンディング装置1の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係るワイヤボンディング装置の全体概略を示す図である。
図2は、ワイヤボンディング制御部の物理的構成の一例を示す図である。
図3は、熱回路網法による伝熱モデルを示す図である。
【0015】
ワイヤボンディング装置1は、ワーク18にワイヤボンディングを行う。
図1に示すように、ワイヤボンディング装置1は、XY駆動機構10,10A、Z駆動機構12、ホーンホルダ20、超音波ホーン30、ボンディングツール40、荷重センサ50、超音波振動子60、ワイヤクランプ装置70、カメラユニット80及びワイヤボンディング制御部90を備える。
【0016】
XY駆動機構10,10AはXY軸方向(ボンディング面に平行な方向)に摺動可能に構成されている。XY駆動機構10には、ホーンホルダ20をZ軸方向(ボンディング面に垂直な方向)に揺動可能なZ駆動機構12が設けられている。XY駆動機構10Aには、カメラユニット80が保持されている。XY駆動機構10,10A及びZ駆動機構12は、例えばリニアモータである。XY駆動機構10及びZ駆動機構12は、ホーンホルダ20を移動させ、ボンディングツール40をワーク18のボンディング位置に位置決めする、ホーンホルダ20用のホーンホルダ駆動部の一例に相当する。XY駆動機構10Aは、後述する鏡筒部82を移動させ、後述する光学レンズ81をワーク18の撮像位置に位置決めする、カメラユニット80用の鏡筒部駆動部の一例に相当する。
【0017】
ホーンホルダ20は、超音波ホーン30を保持する。ホーンホルダ20は、支軸14に支持され、XY駆動機構10に対して揺動自在に構成されている。ホーンホルダ20は、XY駆動機構10から、ボンディング対象であるワーク(例えば半導体ダイ又は基板)18が置かれたボンディングステージ16に延出するように略直方体に形成されている。支軸14は、例えば、ワーク18の作業面(ボンディング面)と略同じ高さにある。ホーンホルダ20は、XY駆動機構10に取り付けられるホルダ基端部22と、ホルダ基端部22の先端側に位置して超音波ホーン30が取り付けられるホルダ先端部24と、ホルダ基端部22とホルダ先端部24とを連結して可撓性を有する連結部23とを備える。ホーンホルダ20は、Y軸方向を長手方向とし、ホルダ基端部22はY軸正方向側に設けられ、ホルダ先端部24はY軸負方向側に設けられている。連結部23は、ホーンホルダ20の頂面21aから底面21bの方向へ延出した所定幅のスリット25a、25b、及び、ホーンホルダ20の底面21bから頂面21aの方向へ延出した所定幅のスリット25cによって構成されている。このように、連結部23が各スリット25a、25b、25cによって局部的に薄肉部として構成されているため、ホルダ先端部24はホルダ基端部22に対して撓むように構成されている。
【0018】
ホーンホルダ20には、温度センサCH0及び温度センサCH1が設けられている。温度センサCH0及び温度センサCH1は、ホーンホルダ20の長手方向であるY軸方向において間隔を空けて設けられている。温度センサCH0は、ホーンホルダ20のホルダ先端部24に設けられている。温度センサCH1は、ホーンホルダ20のホルダ基端部22に設けられている。温度センサCH0は、ホーンホルダ20のうち、超音波ホーン30に接近する側の部分の温度を測定する。温度センサCH1は、ホーンホルダ20のうち、超音波ホーン30から離間する側の部分の温度を測定する。温度センサCH0は「第1のホーンホルダ温度センサ」の一例に相当し、温度センサCH1は「第2のホーンホルダ温度センサ」の一例に相当する。
【0019】
可能な限り超音波ホーン30に近い位置の温度を測定する観点から、温度センサCH0は、望ましくは、ホルダ先端部24のうちホルダ基端部22から離れる位置に設けられる。また、Y軸方向における温度センサCH0と温度センサCH1との間隔を広くする観点から、温度センサCH1は、望ましくは、ホルダ基端部22のうちホルダ先端部24から離れる位置に設けられる。つまり、温度センサCH0と温度センサCH1との間の間隔を可能な限り広くすることが望ましい。
【0020】
超音波ホーン30は、Y軸方向を長手方向とし、Y軸負方向側に設けられた先端部と、Y軸正方向側に設けられた基端部とを有する。超音波ホーン30の基端部は、ホーンホルダ20の底面21b側に形成された凹部26に収容されている。超音波ホーン30の基端部は、ホーンホルダ20の凹部26において、ホルダ先端部24にホーン固定ネジ32によって取り付けられている。超音波ホーン30は、凹部26から突出した先端部においてボンディングツール40を保持している。言い換えると、超音波ホーン30の基端部にホーンホルダ20が設けられ、超音波ホーン30の先端部にボンディングツール40が設けられている。
【0021】
超音波ホーン30は、ワイヤ42に超音波振動を印加する。具体的には、凹部26に設けられた超音波振動子60が超音波振動を発生させ、この超音波振動が超音波ホーン30によってボンディングツール40に伝達される。このボンディングツール40に伝達された超音波振動が、ボンディングツール40を介してワイヤ42に付与される。超音波振動子60は、例えば、ピエゾ振動子である。
【0022】
また、
図1及び
図2に示すように、ホーンホルダ20の頂面21a側には、頂面21aから底面21bに向かって順番にスリット25a及び25bが形成されている。上部のスリット25aは、下部のスリット25bよりも幅広に形成されている。そして、この幅広に形成された上部のスリット25aに、荷重センサ50が設けられている。荷重センサ50は、予圧用ネジ52によってホルダ先端部24に固定されている。荷重センサ50は、ホルダ基端部22とホルダ先端部24との間に挟みこまれるように配置されている。すなわち、荷重センサ50は、超音波ホーン30の長手方向の中心軸からボンディング対象に対する接離方向にオフセットして、ホーンホルダ20の回転中心とホルダ先端部24における超音波ホーン30の取付面(すなわち、ホルダ先端部24におけるボンディングツール40側の先端面)との間に取り付けられている。そして、上記のように、ボンディングツール40を保持する超音波ホーン30がホルダ先端部24に取り付けられているため、ボンディング対象からの反力によりボンディングツール40の先端に荷重が加わると、ホルダ基端部22に対してホルダ先端部24が撓み、荷重センサ50において荷重を検出することが可能となっている。荷重センサ50は、例えば、ピエゾ素子荷重センサである。
【0023】
ボンディングツール40は、ワイヤ42を位置決めし、ワイヤ42をワーク18にボンディングする。ボンディングツール40は、ワイヤ42を挿通するためのものであり、例えば挿通穴41が設けられたキャピラリである。この場合、ボンディングツール40の挿通穴41にボンディングに使用するワイヤ42が挿通され、その先端からワイヤ42の一部を繰り出し可能に構成されている。また、ボンディングツール40の先端には、ワイヤ42を押圧するための押圧部が設けられている。押圧部は、ボンディングツール40の挿通穴41の軸方向の周りに回転対称の形状を有しており、挿通穴41の周囲の下面に押圧面を有している。
【0024】
ボンディングツール40は、バネ力等によって交換可能に超音波ホーン30に取り付けられている。また、ボンディングツール40の上方には、ワイヤクランプ装置70が設けられ、ワイヤクランプ装置70は所定のタイミングでワイヤ42を拘束又は解放するよう構成されている。ワイヤクランプ装置70のさらに上方には、ワイヤテンショナ46が設けられ、ワイヤテンショナ46はワイヤ42を挿通し、ボンディング中のワイヤ42に適度なテンションを付与するよう構成されている。
【0025】
ワイヤ42の材料は、加工の容易さと電気抵抗の低さなどから適宜選択され、例えば、金(Au)、銅(Cu)又は銀(Ag)等が用いられる。なお、ワイヤ42は、ボンディングツール40の先端から延出したフリーエアーボール43がワーク18の第1ボンド点にボンディングされる。
【0026】
カメラユニット80は、ワーク18を撮像する。例えば、カメラユニット80によって撮像されたボンディングツール40の画像を基に、カメラユニット80に対するワーク18の相対位置からボンディング位置が特定される。カメラユニット80は、光学レンズ81と、鏡筒部82と、イメージセンサ83とを備えている。
【0027】
光学レンズ81は、ワーク18の画像を取り込む。光学レンズ81は、ボンディングツール40から所定の距離に設けられる。例えば、光学レンズ81は、X軸負方向側からワーク18の画像を取り込む。光学レンズ81は、「画像取込部」の一例に相当する。
【0028】
鏡筒部82は、光学レンズ81によって取り込まれたワーク18の画像をイメージセンサ83に導く。鏡筒部82は、Y軸方向を長手方向とし、Y軸負方向側に設けられた先端部と、Y軸正方向側に設けられた基端部とを有する。鏡筒部82の先端部に光学レンズ81が設けられ、鏡筒部82の基端部にイメージセンサ83が設けられている。鏡筒部82は、内面82aと、外面82bとを備えている。内面82aは、ワーク18の画像を反射する筒状の鏡面である。外面82bは、内面82aを覆う外装の最外面である。
【0029】
鏡筒部82には、温度センサCH3及び温度センサCH4が設けられている。温度センサCH3及び温度センサCH4は、鏡筒部82の内面82aと外面82bとの間、すなわち鏡筒部82の外装の内部に設けられている。温度センサCH3及び温度センサCH4は、鏡筒部82の長手方向であるY軸方向において間隔を空けて設けられている。温度センサCH3は、鏡筒部82の先端部に設けられている。温度センサCH4は、鏡筒部82の基端部に設けられている。温度センサCH3は、鏡筒部82のうち、光学レンズ81に接近する側の部分の温度を測定する。温度センサCH4は、鏡筒部82のうち、イメージセンサ83に接近する側の部分の温度を測定する。温度センサCH3は「第1の鏡筒部温度センサ」の一例に相当し、温度センサCH4は「第2の鏡筒部温度センサ」の一例に相当する。
【0030】
Y軸方向における温度センサCH3と温度センサCH4との間隔を広くして、鏡筒部82全体のY軸方向における温度勾配をより正確に把握する観点から、温度センサCH3は、望ましくは、鏡筒部82の先端部のうち鏡筒部82の基端部から離れる位置に設けられる。同様の観点から、温度センサCH4は、望ましくは、鏡筒部82の基端部のうち鏡筒部82の先端部から離れる位置に設けられる。
【0031】
温度センサCH3,CH4は、鏡筒部82に挿入されるパイプPPと、パイプPPの内部に設けられたサーミスタTSと、パイプPPの内部に充填されサーミスタTSを封止する樹脂材料RSとを含む。サーミスタTSの一部は、パイプPPの外部に延出している。サーミスタTSは、鏡筒部82の外面82bに設けられた外部端子TMに電気的に接続されている。
【0032】
図2に示す例において、温度センサCH3は内面82aのX軸負方向側に設けられ、温度センサCH4は内面82aのX軸正方向側に設けられているが、温度センサCH3,CH4のX軸方向における内面82aに対する位置はこれに限定されるものではない。温度センサCH3は内面82aのX軸正方向側に設けられてもよく、温度センサCH4は内面82aのX軸負方向側に設けられてもよい。温度センサCH3,CH4の両方が内面82aのX軸負方向側に設けられてもよく、温度センサCH3,CH4の両方がX軸正方向側に設けられてもよい。
【0033】
一例として、温度センサCH3,CH4は、Z軸方向正方向側から鏡筒部82に挿入されているが、温度センサCH3,CH4の挿入方向はこれに限定されるものではない。温度センサCH3,CH4は、Z軸方向負方向側、X軸正方向側又はX軸負方向側から鏡筒部82に挿入されてもよい。温度センサCH3,CH4は、互いに異なる方向から鏡筒部82に挿入されてもよい。
【0034】
鏡筒部82には、温度センサCH3,CH4に加えて、さらに温度センサが設けられてもよい。例えば、Y軸方向における温度センサCH3と温度センサCH4との間に、少なくとも1つの温度センサがさらに設けられてもよい。また、X軸方向において温度センサCH3又は温度センサCH4と並ぶ温度センサがさらに設けられてもよい。
【0035】
イメージセンサ83は、ワーク18の画像を処理する。具体的には、イメージセンサ83は、光学レンズ81によって取り込まれて鏡筒部82によって導かれたボンディングツール40の画像を受光し、当該画像の光学情報を電気信号に変換する。イメージセンサ83は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサである。イメージセンサ83は、「画像処理部」の一例に相当する。
【0036】
なお、カメラユニットの撮像対象は、ワークに限定されるものではない。例えば、カメラユニットは、超音波ホーンの先端部、ワイヤ、フリーエアーボール又はワークの第1ボンド点、ボンディングツールなどを撮像してもよい。
【0037】
ワイヤボンディング制御部90は、XY駆動機構10,10A、Z駆動機構12、超音波ホーン30(超音波振動子60)、荷重センサ50、ワイヤクランプ装置70、カメラユニット80及び温度センサCH0,CH1,CH3,CH4などの各構成との間で信号の送受信が可能なように接続されており、ワイヤボンディング制御部90によってこれらの構成の動作を制御することにより、ワイヤボンディングのための必要な処理を行うことができるようになっている。
【0038】
また、ワイヤボンディング制御部90には、制御情報を入力するための操作部92と、制御情報を出力するための表示部94とが接続されている。これにより作業者が表示部94によって画面を認識しながら操作部92によって必要な制御情報を入力することができる。操作部92は、例えば、キーボード、タッチパネル又はマウス等である。表示部94は、例えば、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどである。
【0039】
本実施形態に係るワイヤボンディング制御部90は、記憶部90aと、ホーンホルダ温度取得部90bと、ホーン温度推定部90cと、ボンディングツール位置補正部90dと、鏡筒部温度取得部90eと、光学レンズ位置補正部90fとを備えている。
【0040】
記憶部90aは、ホーン温度推定部90cにおいて超音波ホーン30の推定温度を算出するためのデータを記憶する。このデータは、例えば、超音波ホーン30の温度を推定する温度推定式、温度推定式のためにワークの品種毎に設定された品種データ、及び、温度センサCH0から取得したホーンホルダ20のホルダ先端部24の温度履歴である。
【0041】
記憶部90aに記憶される温度推定式は、ホーンホルダ20の温度履歴、及び、ワーク18に対するボンディングツールの位置履歴、に基づいて、熱回路網法によって超音波ホーン30の温度を推定する式である。ここで、超音波ホーン30は、ホーンホルダ20からの熱伝導と、ワーク18を介したボンディングステージ16からの熱輻射と、によって加熱されると考える。当該温度推定式は、
図3に示す伝熱モデルによって導出される。具体的には、ホーンホルダ20のホルダ先端部24の温度を電圧V
HH、超音波ホーン30の先端部における温度を電圧V
UST、超音波ホーン30における基端部から先端部への熱抵抗を電気抵抗R
4、超音波ホーン30における基端部から先端部への熱流量を電流i
2、超音波ホーン30の先端部とボンディングステージ16との間の熱抵抗を電気抵抗R
1、超音波ホーン30の先端部とボンディングステージ16との間の熱流量を電流i
1、ボンディングステージ16の温度を電圧V
in1、超音波ホーン30の先端部と外部との間の熱容量を静電容量C
1、超音波ホーン30の先端部と外部との間の熱流量を電流i
C1、に置き換えて計算する。
【0042】
図3に示す回路において、下記連立方程式(1)が成り立つ。
【数1】
連立方程式(1)から、電圧V
USTが下記の式(2)によって表される。
【数2】
【0043】
式(2)で表された電圧V
USTは、ホーンホルダ20からの熱伝導と、ワーク18を介したボンディングステージ16からの熱輻射とに起因した、超音波ホーン30の温度変化に対応する。このため、これに超音波ホーン30の初期温度を加味することで、超音波ホーン30の推定温度T
UST_
ESTIMATEが算出される。推定温度T
UST_
ESTIMATEは、下記式(3)によって表される。なお、式(3)の右辺の第1項は、超音波ホーン30の推定温度のうち、ワーク18から超音波ホーン30への熱輻射による上昇温度を示す。式(1)の右辺の第2項は、超音波ホーン30の推定温度のうち、ホーンホルダ20から超音波ホーン30への熱伝導による上昇温度を示す。式(1)の右辺の第3項は、ホーンホルダ20の初期温度の影響を示す。
【数3】
T
UST_
ESTIMATE:超音波ホーン30の推定温度
S:ラプラス演算子
T
HH_
CH0:温度センサCH0によって測定されたホーンホルダ20のホルダ先端部24の温度
T
0_
HH_
CH0:T
HH_
CH0の初期値
AB(x,y):ワーク18に対するボンディングツール40の位置を示す座標(x、y)において、ワーク18から超音波ホーン30に伝わる温度
C(x,y):ワーク18に対するボンディングツール40の位置を示す座標(x、y)において、ホーンホルダ20のホルダ先端部24から超音波ホーン30へと伝わる温度の倍率
D:T
HH_
CH0と超音波ホーン30の初期温度との差分
T
1:AB(x,y)の時定数
T
2:C(x,y)×(T
0_
HH_
CH0-T
0_
HH_
CH0)の時定数
α:ワーク18の品種毎の補正係数
【0044】
式(3)を、S={2(1-Z
-1)}/{ΔT(1+Z
-1)}で双1次変換すると、下記式(4)が得られる。式(4)中のT
UST_
AB(n)は下記式(5)によって表され、式(4)中のT
UST_
C_
THH(n)は下記式(6)によって表される。式(5)は、T
UST_
AB(n-1)によってT
UST_
AB(n)が定まる漸化式である。また、式(6)は、T
UST_
C_
THH(n-1)によってT
UST_
C_
THH(n)が定まる漸化式である。
【数4】
【数5】
【数6】
n:温度センサCH0における温度測定の順番
ΔT:温度センサCH0における温度測定の時間間隔
(x(n),y(n)):n番目の温度測定時における、ボンディングステージ16に対するボンディングツール40の(x,y)座標
T
UST_
ESTIMATE(n):座標(x(n),y(n))における、超音波ホーン30の推定温度
T
UST_
AB(n):座標(x(n),y(n))において、ワーク18から超音波ホーン30への熱輻射によって変化した超音波ホーン30の温度
T
UST_
C_
THH(n):座標(x(n),y(n))において、ホーンホルダ20から超音波ホーン30への熱伝導によって変化した超音波ホーン30の温度
T
HH_
CH0(n):座標(x(n),y(n))における、温度センサCH0によって測定されたホーンホルダ20のホルダ先端部24の温度
T
0_
HH_
CH0:初期状態(n=0)のときのT
HH_
CH0(T
HH_
CH0(0))
AB(x(n),y(n)):座標(x(n),y(n))における、ワーク18から超音波ホーン30に伝わる温度
C(x(n),y(n)):座標(x(n),y(n))における、ホーンホルダ20のホルダ先端部24から超音波ホーン30へと伝わる温度の倍率
D:T
HH_
CH0と超音波ホーン30の初期温度との差分
T
1:AB(x,y)の時定数
T
2:C(x,y)×(T
0_
HH_
CH0-T
0_
HH_
CH0)の時定数
α:ワーク18の品種毎の補正係数
【0045】
記憶部90aは、ワイヤボンディングを開始する前に、式(4)~(6)、ΔT、(x(n),y(n))、AB(x(n),y(n))、C(x(n),y(n))、D、T1、T2及びαを記憶する。ΔT、(x(n),y(n))、AB(x(n),y(n))、C(x(n),y(n))、D、T1、T2及びαは、ワーク18の形状や寸法などに基づいて、品種毎に設定されたものである。AB(x(n),y(n))及びC(x(n),y(n))は、ワーク18の品種毎に、座標(x,y)に対するデータテーブルとして記憶される。ΔT、D、T1、T2及びαは、ワーク18の品種毎に、定数として記憶される。また、ワーク18の品種が未定の場合に利用するΔT、D、T1、T2及びαとして、これらの基準値が記憶される。例えば、Dの基準値は2.61であり、T1の基準値は100であり、T2の基準値は30であり、ΔTの基準値は0.1であり、αの基準値は1である。ΔT、(x(n),y(n))、AB(x(n),y(n))、C(x(n),y(n))、D、T1、T2及びαは、例えば、ワイヤボンディングを開始する前に、作業者によって操作部92から入力されてもよく、事前に記憶部90aに入力されたデータベースから適宜選択されてもよい。
【0046】
(x(n),y(n))においてn=0,1,2,…,mと変化させたときの(x(0),y(0))、(x(1),y(1))、(x(2),y(2))、…,(x(m),y(m))は、n=0からn=mまでのΔT毎の座標(x,y)の履歴、すなわちボンディングステージ16に対するボンディングツール40の位置履歴として記憶される。n=0,1,2,…,mにおけるAB(x(n),y(n))及びC(x(n),y(n))は、位置履歴に相当する(x(0),y(0))、(x(1),y(1))、(x(2),y(2))、…,(x(m),y(m))のそれぞれに対して定められたデータ、すなわちデータテーブルとして記憶される。なお、n=0,1,2,…,mにおけるAB(x(n),y(n))及びC(x(n),y(n))は、位置履歴に相当する(x(0),y(0))、(x(1),y(1))、(x(2),y(2))、…,(x(m),y(m))のそれぞれにおいて解を求めることができる(x(n),y(n))の関数として記憶されてもよい。
【0047】
記憶部90aは、ワイヤボンディング中に、T0_HH_CH0を含むTHH_CH0(n)を記憶する。具体的には、THH_CH0(n)は、温度センサCH0によって測定され、ホーンホルダ温度取得部90bによって取得され、記憶部90aに記憶される。THH_CH0(n)は、n=0,1,2,…とΔT毎に測定され、ボンディングツール40の温度履歴として記憶される。
【0048】
さらに、記憶部90aは、ワイヤボンディング中に、ホーン温度推定部90cにおいて算出されたTUST_AB(n)及びTUST_C_THH(n)を記憶する。記憶部90aは、ホーン温度推定部90cにおいて算出されたTUST_AB(n-1)を記憶する。同様に、記憶部90aは、ホーン温度推定部90cにおいて算出された、TUST_AB(n-2)、TUST_AB(n-3)、…、TUST_AB(2)、TUST_AB(1)を記憶する。また、記憶部90aは、ホーン温度推定部90cにおいて算出されたTUST_C_THH(n-1)を記憶する。同様に、記憶部90aは、ホーン温度推定部90cにおいて算出されたTUST_C_THH(n-2)、TUST_C_THH(n-3)、…、TUST_C_THH(2)、TUST_C_THH(1)を記憶する。なお、記憶部90aは、TUST_AB(0)及びTUST_C_THH(0)は、ワイヤボンディングを開始する前に、記憶部90aが記憶している。TUST_AB(0)=0であり、TUST_C_THH(0)=0である。
【0049】
記憶部90aは、さらに、ボンディングツール位置補正部90dにおいてボンディングツール40の位置を補正するためのデータを記憶する。このデータは、例えば、ホーン温度推定部90cにおいて算出された超音波ホーン30の推定温度TUST_ESTIMATE(n)に基づいて、超音波ホーン30の熱伸縮に起因したボンディングツール40の位置の補正量を算出するための式を含む。
【0050】
記憶部90aは、さらに、光学レンズ位置補正部90fにおいて光学レンズ81の位置を補正するためのデータを記憶する。このデータは、例えば、鏡筒部温度取得部90eによって取得された鏡筒部82の温度に基づいて、鏡筒部82の熱伸縮に起因した光学レンズ81の位置の補正量を算出するための式を含む。
【0051】
ホーンホルダ温度取得部90bは、ホーンホルダ20に設けられた温度センサCH0,CH1と通信可能に接続されている。ホーンホルダ温度取得部90bは、温度センサCH0からホルダ先端部24の温度を取得し、温度センサCH1からホルダ基端部22の温度を取得する。ホルダ先端部24の温度THH_CH0(n)について、ホーンホルダ温度取得部90bは、n=0,1,2,…それぞれのTHH_CH0(0),THH_CH0(1),THH_CH0(2),…を取得する。THH_CH0(0),THH_CH0(1),THH_CH0(2),…は、ホルダ先端部24の温度履歴に相当する。ホーンホルダ温度取得部90bが取得したホルダ先端部24の温度履歴は、記憶部90aに送られて記憶される。同様に、ホーンホルダ温度取得部90bは、ホルダ基端部22の温度履歴を取得してもよい。
【0052】
ホーン温度推定部90cは、記憶部90aに記憶された式(4)~(6)などのデータを基に、超音波ホーン30の温度を算出する。ホーン温度推定部90cは、式(4)によってTUST_ESTIMATE(n)を算出するために、式(5)によってTUST_AB(n)を算出し、式(6)によってTUST_C_THH(n)を算出する。
【0053】
TUST_AB(n)の算出において、ホーン温度推定部90cは、まずTUST_AB(1)を算出する。TUST_AB(1)の算出において、ホーン温度推定部90cは、記憶部90aからT1、ΔT、AB(x(1),y(1))、AB(x(0),y(0))、TUST_AB(0)を取得し、これらを式(5)に代入する。算出したTUST_AB(1)は、記憶部90aに送られ記憶される。次に、ホーン温度推定部90cは、記憶部90aからT1、ΔT、AB(x(2),y(2))、AB(x(1),y(1))、TUST_AB(1)を取得し、これらを式(5)に代入してTUST_AB(2)を算出する。算出されたTUST_AB(2)は、記憶部90aに送られ記憶させる。同様に、ホーン温度推定部90cは、順次TUST_AB(3),TUST_AB(4),…,TUST_AB(n)を算出し、記憶部90aに送って記憶させる。
【0054】
TUST_C_THH(n)の算出において、ホーン温度推定部90cは、まずTUST_C_THH(1)を算出する。TUST_C_THH(1)の算出において、ホーン温度推定部90cは、記憶部90aからT2、ΔT、C(x(1),y(1))、C(x(0),y(0))、THH_CH0(1)、THH_CH0(0)、T0_HH_CH0、TUST_C_THH(0)を取得し、これらを式(6)に代入する。算出したTUST_C_THH(1)は、記憶部90aに送られ記憶される。次に、ホーン温度推定部90cは、記憶部90aからT2、ΔT、C(x(2),y(2))、C(x(1),y(1))、THH_CH0(2)、THH_CH0(1)、T0_HH_CH0、TUST_C_THH(0)を取得し、これらを式(6)に代入してTUST_C_THH(2)を算出する。算出したTUST_C_THH(2)は、記憶部90aに送られ記憶される。同様に、ホーン温度推定部90cは、順次TUST_C_THH(3)、TUST_C_THH(4),…,TUST_C_THH(n)を算出し、記憶部90aに送って記憶させる。このように、TUST_C_THH(n)はTHH_CH0(n),THH_CH0(n-1)及びTUST_C_THH(n-1)に基づいて算出され、TUST_C_THH(n-1)はTHH_CH0(n-1),THH_CH0(n-2)及びTUST_C_THH(n-2)に基づいて算出され、同様の計算がn=1まで繰り返される。したがって、TUST_C_THH(n)は、THH_CH0(n),THH_CH0(n-1),THH_CH0(n-2),…,THH_CH0(1),THH_CH0(0)、すなわちホルダ先端部24の温度履歴、に基づいて算出されるといえる。
【0055】
ボンディングツール位置補正部90dは、ホーン温度推定部90cにおいて算出された超音波ホーン30の推定温度に基づき、熱伸縮による超音波ホーン30の変形量を算出する。ボンディングツール位置補正部90dは、算出した超音波ホーン30の変形量に基づき、位置補正指令を生成する。ボンディングツール位置補正部90dは、生成した位置補正指令に基づいてXY駆動機構10を駆動し、ボンディングツール40のY軸方向における位置を補正する。
【0056】
鏡筒部温度取得部90eは、鏡筒部82に設けられた温度センサCH3,CH4と通信可能に接続されている。鏡筒部温度取得部90eは、温度センサCH3から鏡筒部82の先端部の温度を取得し、温度センサCH4から鏡筒部82の基端部の温度を取得する。鏡筒部温度取得部90eが取得した鏡筒部82の先端部及び基端部の温度は、記憶部90aに送られて記憶される。
【0057】
なお、鏡筒部温度取得部90eは、鏡筒部82の先端部及び基端部のうち少なくとも一方の温度履歴を取得してもよい。このような場合、当該温度履歴は、記憶部90aに送られ、記憶される。
【0058】
光学レンズ位置補正部90fは、鏡筒部温度取得部90eにおいて取得した鏡筒部82の温度に基づき、熱伸縮による鏡筒部82の変形量を算出する。光学レンズ位置補正部90fは、算出した鏡筒部82の変形量に基づき、位置補正指令を生成する。光学レンズ位置補正部90fは、生成した位置補正指令に基づいてXY駆動機構10Aを駆動し、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方向における光学レンズ81の位置、又は光学レンズ81とボンディングツール40との相対位置を補正する。光学レンズ位置補正部90fは、「画像取込部位置補正部」の一例に相当する。
【0059】
図示を省略しているが、ワイヤボンディング制御部90は、XY駆動機構10,10A、Z駆動機構12、超音波ホーン30(超音波振動子60)、荷重センサ50、ワイヤクランプ装置70及びカメラユニット80のそれぞれを操作する操作部と、カメラユニット80において撮像された画像を解析する画像解析部とをさらに備えている。ワイヤボンディング制御部90は、画像解析部によって解析された画像の解析結果に基づいてボンディングツール40と光学レンズ81との相対位置を補正する相対位置補正部とをさらに備えてもよい。
【0060】
次に、
図4を参照しつつ、ワイヤボンディング制御部90の物理的構成について説明する。
図4は、ワイヤボンディング制御部の物理的構成の一例を示す図である。
【0061】
ワイヤボンディング制御部90は、CPU(Central Processing Unit)95と、RAM(Random Access Memory)96と、ROM(Read Only Memory)97と、通信モジュール98とを備えている。これらの各構成は、バスを介して相互にデータ送受信可能に接続されている。また、CPU95、RAM、ROM97及び通信モジュール98は、操作部92及び表示部94とバスを介してデータ送受信可能に接続されている。ワイヤボンディング制御部90は、例えば単一のコンピュータにより構成されるが、分散した複数のコンピュータが組み合われて実現されたものでもよい。ワイヤボンディング制御部90は、例えば、RAM96又はROM97に記憶された所定のプログラムを、CPU95で実行することにより、記憶部90a、ホーンホルダ温度取得部90b、ホーン温度推定部90c、ボンディングツール位置補正部90d、鏡筒部温度取得部90e及び光学レンズ位置補正部90fを機能させることができる。
【0062】
CPU95は、ホーン温度推定部90c、ボンディングツール位置補正部90d及び光学レンズ位置補正部90fの一例に相当する。RAM96又はROM97は、記憶部90aの一例に相当する。通信モジュール98は、ホーンホルダ温度取得部90b及び光学レンズ位置補正部90fの一例に相当する。
【0063】
<ワイヤボンディング方法>
次に
図5を参照しつつ、ワイヤボンディング装置1を用いたワイヤボンディング方法について説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係るワイヤボンディング方法を示すフローチャートである。以下においては、n=mのときのボンディングツール40の推定温度T
UST_
ESTIMATE(m)を算出する方法において説明する。
【0064】
まず、初期状態(n=0)において、THH_CH0(0)及び(x(0),y(0))を取得する(S11)。ワーク18の品種に基づいて、記憶部90aのデータベースの中から、T1,T2,D、α、ΔT、(x(n),y(n))、AB(x(n),y(n))及びC(x(n),y(n))が選択される。THH_CH0(0)は、初期状態において温度センサCH0によって測定され、ホーンホルダ温度取得部90bによって取得される。取得されたTHH_CH0(0)は、記憶部90aに記憶される。THH_CH0(0)は、T0_HH_CH0としても記憶される。n=1,2,…mのときの座標(x(n),y(n))は記憶部90aに記憶されている。ホーン温度推定部90cによって、(x(0),y(0))は、記憶部90aから抽出される。
【0065】
次に、(x(0),y(0))に基づいて、AB(x(0),y(0))及びC(x(0),y(0))を取得する(S12)。記憶部90aには、AB(x(n),y(n))及びC(x(n),y(n))の座標(x(n),y(n))に対するデータテーブルが記憶されている。ホーン温度推定部90cによって、座標(x(0),y(0))に対応するAB(x(0),y(0))及びC(x(0),y(0))は、記憶部90aから抽出される。
【0066】
次に、ΔT経過後(n=1)、THH_CH0(1)及び(x(1),y(1))を取得する(S13)。ΔTの時間経過によって、nが1つ増えてn=0からn=1へと変化する。THH_CH0(1)は、n=1のときに温度センサCH0によって測定され、ホーンホルダ温度取得部90bによって取得される。取得されたTHH_CH0(1)は、記憶部90aに記憶される。ステップS11と同様、ホーン温度推定部90cによって、(x(1),y(1))は、記憶部90aから抽出される。
【0067】
次に、(x(1),y(1))に基づいて、AB(x(1),y(1))及びC(x(1),y(1))を取得する(S14)。ステップS12と同様、ホーン温度推定部90cによって、座標(x(1),y(1))に対応するAB(x(1),y(1))及びC(x(1),y(1))は、記憶部90aから抽出される。
【0068】
次に、TUST_AB(0)に基づいてTUST_AB(1)を計算する(S15)。ホーン温度推定部90cにおいて、式(5)を用いて、T1、ΔT、AB(x(1),y(1))、AB(x(0),y(0))及びTUST_AB(0)に基づいて、TUST_AB(1)は算出される。算出されたTUST_AB(1)は、記憶部90aに送られて記憶される。
【0069】
次に、TUST_C_THH(0)に基づいて、TUST_C_THH(1)を算出する(S16)。ホーン温度推定部90cにおいて、式(6)を用いて、T2、ΔT、C(x(1),y(1))、C(x(0),y(0))、THH_CH0(1)、THH_CH0(0)、T0_HH_CH0及びTUST_C_THH(0)に基づいて、TUST_C_THH(1)は算出される。算出されたTUST_C_THH(1)は、記憶部90aに送られて記憶される。
【0070】
次に、n=2,3,・・・,mで、順次TUST_AB(n)及びTUST_C_THH(n)を算出する(S17)。ホーン温度推定部90cにおいて、式(5)を用いて、T1、ΔT、AB(x(n),y(n))、AB(x(n-1),y(n-1))及びTUST_AB(n-1)に基づいて、TUST_AB(n)は算出される。当該計算をn=2からn=mまで繰り返すことで、TUST_AB(m)が算出される。ホーン温度推定部90cにおいて、式(6)を用いて、T2、ΔT、C(x(n),y(n))、C(x(n-1),y(n-1))、THH_CH0(n)、THH_CH0(n-1)、T0_HH_CH0及びTUST_C_THH(n-1)に基づいて、TUST_C_THH(n)は算出される。当該計算をn=2からn=mまで繰り返すことで、TUST_C_THH(m)が算出される。すなわち、TUST_C_THH(m)は、n=0からn=mまでのホルダ先端部24の温度履歴である、THH_CH0(m),THH_CH0(m-1),THH_CH0(m-2),…,THH_CH0(1),THH_CH0(0)に基づいて算出される。
【0071】
最後に、TUST_AB(m)及びTUST_C_THH(m)に基づいて、TUST_ESTIMATE(m)を算出する(S18)。ホーン温度推定部90cにおいて、式(4)を用いて、α、TUST_AB(m)、TUST_C_THH(m)、T0_HH_CH0及びDに基づいて、TUST_ESTIMATE(m)が算出される。
【0072】
以下に、本発明の実施形態の一部又は全部を付記する。なお、本発明は以下の付記に限定されるものではない。
【0073】
[付記1]
ワークにワイヤボンディングを行うワイヤボンディング装置であって、先端部と基端部とを有し、ワイヤに超音波振動を印加する超音波ホーンと、超音波ホーンの基端部に設けられ、超音波ホーンを保持するホーンホルダと、超音波ホーンの先端部に設けられ、ワイヤをワークにボンディングするボンディングツールと、ホーンホルダに設けられたホーンホルダ温度センサと、ホーンホルダを移動させ、ボンディングツールをワークのボンディング位置に位置決めするホーンホルダ駆動部と、ホーンホルダ温度センサから取得したホーンホルダの温度履歴、及び、ワークに対するボンディングツールの位置履歴、のうち少なくとも一方に基づいて、熱回路網法によって超音波ホーンの推定温度を算出するホーン温度推定部と、ホーン温度推定部において算出された超音波ホーンの推定温度に基づいて、ボンディングツールの位置を補正するボンディングツール位置補正部とを備える、ワイヤボンディング装置。
【0074】
この態様によれば、直接測定することが難しい超音波ホーンの温度を精度良く推定することができるため、超音波ホーンの熱伸縮に起因するボンディングツールの位置の変化を、ボンディングツール位置補正部によって高い精度で補正することができる。したがって、ボンディング位置の精度を向上させることができる。なお、ホーンホルダの温度履歴に基づいて、ホーンホルダから超音波ホーンへの熱伝導に起因した超音波ホーンの温度変化が推定され、ボンディングツールの位置履歴に基づいて、ワークから超音波ホーンへの熱輻射に起因した超音波ホーンの温度変化が推定される。超音波ホーンは、当該熱伝導と当該熱輻射の両方の影響を受けるため、ホーンホルダの温度履歴及びボンディングツールの位置履歴の両方に基づいて超音波ホーンの推定温度を算出することが望ましい。ホーンホルダの温度履歴及びボンディングツールの位置履歴の両方に基づいて超音波ホーンの推定温度を算出することで、ホーンホルダの温度履歴及びボンディングツールの位置履歴の一方にのみ基づいて超音波ホーンの推定温度を算出する場合よりも、高い精度でボンディングツールの位置を補正することができる。ただし、当該熱伝導が当該熱輻射に比べて充分に小さい場合、ホーンホルダの温度履歴を無視してボンディングツールの位置履歴にのみ基づいて超音波ホーンの推定温度を算出したとしても、高い精度でボンディングツールの位置を補正することができる。逆に当該熱輻射が当該熱伝導に比べて充分に小さい場合、ボンディングツールの位置履歴を無視してホーンホルダの温度履歴にのみ基づいて超音波ホーンの推定温度を算出したとしても、高い精度でボンディングツールの位置を補正することができる。
【0075】
[付記2]
ホーンホルダ温度センサは、ホーンホルダの長手方向において間隔を空けて設けられた第1のホーンホルダ温度センサ及び第2のホーンホルダ温度センサであって、ホーンホルダにおける超音波ホーンに近い側の部分の温度を測定する第1のホーンホルダ温度センサと、ホーンホルダにおける超音波ホーンから遠い側の部分の温度を測定する第2のホーンホルダ温度センサとを含む、[付記1]に記載のワイヤボンディング装置。
【0076】
この態様によれば、ホーンホルダの長手方向における温度勾配を算出することができるため、ホーンホルダの熱伸縮に起因するボンディングツールの位置の変化を、高い精度で補正することができる。なお、ホーンホルダ温度センサの数は2つに限定されるものではない。第1のホーンホルダ温度センサ及び第2のホーンホルダ温度センサに加えて、ホーンホルダの長手方向にさらにホーンホルダ温度センサを設けることで、ホーンホルダの長手方向における温度勾配の算出精度が向上し、ボンディングツールの位置の補正精度を高めることができる。また、第1のホーンホルダ温度センサと第2のホーンホルダ温度センサとの間の間隔を可能な限り広くすることで、ホーンホルダの長手方向における温度勾配の算出精度が向上し、ボンディングツールの位置の補正精度を高めることができる。
【0077】
[付記3]
ホーンホルダの温度履歴は、第1のホーンホルダ温度センサから取得される、[付記2]に記載のワイヤボンディング装置。
【0078】
この態様によれば、ホーンホルダの温度履歴を第1のホーンホルダ温度センサから取得ホーンホルダから取得する構成に比べて、超音波ホーンへの熱伝導の影響を精度良く推定することができる。したがって、ボンディングツールの位置の補正精度を高めることができる。
【0079】
[付記4]
ボンディングツールの画像を取り込む画像取込部と、ボンディングツールの画像を処理する画像処理部と、ボンディングツールの画像を反射して画像取込部から画像処理部に導く内面、及び、外面と内面との間に設けられた鏡筒部温度センサを有する鏡筒部と、鏡筒部温度センサによって測定された鏡筒部の温度に基づいて、画像取込部の位置を補正する画像取込部位置補正部とをさらに備える、[付記1]から[付記3]のいずれか一つに記載のワイヤボンディング装置。
【0080】
この態様によれば、鏡筒部の熱伸縮に起因する画像取込部の位置の変化を、画像取込部位置補正部によって高い精度で補正することができる。したがって、ボンディングツールの画像に基づくボンディング位置の特定の精度が向上し、ボンディング位置の精度を向上させることができる。
【0081】
[付記5]
鏡筒部温度センサは、鏡筒部の長手方向において間隔を空けて設けられた第1の鏡筒部温度センサ及び第2の鏡筒部温度センサであって、鏡筒部における光学レンズに接近する側の部分の温度を測定する第1の鏡筒部温度センサと、鏡筒部における画像処理部に接近する側の部分の温度を測定する第2の鏡筒部温度センサとを含む、[付記4]に記載のワイヤボンディング装置。
【0082】
この態様によれば、鏡筒部の長手方向における温度勾配を算出することができるため、鏡筒部の熱伸縮に起因する画像取込部の位置の変化を、高い精度で補正することができる。なお、鏡筒部温度センサの数は2つに限定されるものではない。第1の鏡筒部温度センサ及び第2の鏡筒部温度センサに加えて、鏡筒部の長手方向にさらに鏡筒部温度センサを設けることで、鏡筒部の長手方向における温度勾配の算出精度が向上し、画像取込部の位置の補正精度を高めることができる。また、第1の鏡筒部温度センサと第2の鏡筒部温度センサとの間の間隔を可能な限り広くすることで、鏡筒部の長手方向における温度勾配の算出精度が向上し、画像取込部の位置の補正精度を高めることができる。
【0083】
[付記6]
鏡筒部温度センサは、鏡筒部に挿入されるパイプと、パイプの内部に設けられたサーミスタと、サーミスタを封止する樹脂材料とを含む、[付記4]又は[付記5]に記載のワイヤボンディング装置。
【0084】
この態様によれば、鏡筒部温度センサの損傷を抑制することができる。
【0085】
[付記7]
ワークにワイヤボンディングを行うワイヤボンディング装置を用いたワイヤボンディング方法であって、ワイヤボンディング装置は、先端部と基端部とを有し、ワイヤに超音波振動を印加する超音波ホーンと、超音波ホーンの基端部に設けられ、超音波ホーンを保持するホーンホルダと、超音波ホーンの先端部に設けられ、ワイヤをワークにボンディングするボンディングツールと、ホーンホルダに設けられたホーンホルダ温度センサと、ホーンホルダを移動させ、ボンディングツールをワークのボンディング位置に位置決めするホーンホルダ駆動部とを備え、ワイヤボンディング方法は、ホーンホルダ温度センサからホーンホルダの温度履歴を取得することと、ワークに対するボンディングツールの位置履歴を取得することと、温度履歴及び位置履歴の少なくとも一方に基づいて、熱回路網法によって超音波ホーンの推定温度を算出することと、算出された超音波ホーンの推定温度に基づいて、ボンディングツールの位置を補正することとを含む、ワイヤボンディング方法。
【0086】
この態様によれば、直接測定することが難しい超音波ホーンの温度を精度良く推定することができるため、超音波ホーンの熱伸縮に起因するボンディングツールの位置の変化を、ボンディングツール位置補正部によって高い精度で補正することができる。したがって、ボンディング位置の精度を向上させることができる。なお、ホーンホルダの温度履歴に基づいて、ホーンホルダから超音波ホーンへの熱伝導に起因した超音波ホーンの温度変化が推定され、ボンディングツールの位置履歴に基づいて、ワークから超音波ホーンへの熱輻射に起因した超音波ホーンの温度変化が推定される。超音波ホーンは、当該熱伝導と当該熱輻射の両方の影響を受けるため、ホーンホルダの温度履歴及びボンディングツールの位置履歴の両方に基づいて超音波ホーンの推定温度を算出することが望ましい。ホーンホルダの温度履歴及びボンディングツールの位置履歴の両方に基づいて超音波ホーンの推定温度を算出することで、ホーンホルダの温度履歴及びボンディングツールの位置履歴の一方にのみ基づいて超音波ホーンの推定温度を算出する場合よりも、高い精度でボンディングツールの位置を補正することができる。ただし、当該熱伝導が当該熱輻射に比べて充分に小さい場合、ホーンホルダの温度履歴を無視してボンディングツールの位置履歴にのみ基づいて超音波ホーンの推定温度を算出したとしても、高い精度でボンディングツールの位置を補正することができる。逆に当該熱輻射が当該熱伝導に比べて充分に小さい場合、ボンディングツールの位置履歴を無視してホーンホルダの温度履歴にのみ基づいて超音波ホーンの推定温度を算出したとしても、高い精度でボンディングツールの位置を補正することができる。
【0087】
[付記8]
ワークにワイヤボンディングを行うワイヤボンディング装置のコンピュータに実行させるワイヤボンディングプログラムであって、ワイヤボンディング装置は、先端部と基端部とを有し、ワイヤに超音波振動を印加する超音波ホーンと、超音波ホーンの基端部に設けられ、超音波ホーンを保持するホーンホルダと、超音波ホーンの先端部に設けられ、ワイヤをワークにボンディングするボンディングツールと、ホーンホルダに設けられたホーンホルダ温度センサと、ホーンホルダを移動させ、ボンディングツールをワークのボンディング位置に位置決めするホーンホルダ駆動部とを備え、コンピュータに、ホーンホルダ温度センサからホーンホルダの温度履歴を取得することと、ワークに対するボンディングツールの位置履歴を取得することと、温度履歴及び位置履歴の少なくとも一方に基づいて、熱回路網法によって超音波ホーンの推定温度を算出することと、算出された超音波ホーンの推定温度に基づいて、ボンディングツールの位置を補正することとを実行させる、ワイヤボンディングプログラム。
【0088】
この態様によれば、直接測定することが難しい超音波ホーンの温度を精度良く推定することができるため、超音波ホーンの熱伸縮に起因するボンディングツールの位置の変化を、ボンディングツール位置補正部によって高い精度で補正することができる。したがって、ボンディング位置の精度を向上させることができる。なお、ホーンホルダの温度履歴に基づいて、ホーンホルダから超音波ホーンへの熱伝導に起因した超音波ホーンの温度変化が推定され、ボンディングツールの位置履歴に基づいて、ワークから超音波ホーンへの熱輻射に起因した超音波ホーンの温度変化が推定される。超音波ホーンは、当該熱伝導と当該熱輻射の両方の影響を受けるため、ホーンホルダの温度履歴及びボンディングツールの位置履歴の両方に基づいて超音波ホーンの推定温度を算出することが望ましい。ホーンホルダの温度履歴及びボンディングツールの位置履歴の両方に基づいて超音波ホーンの推定温度を算出することで、ホーンホルダの温度履歴及びボンディングツールの位置履歴の一方にのみ基づいて超音波ホーンの推定温度を算出する場合よりも、高い精度でボンディングツールの位置を補正することができる。ただし、当該熱伝導が当該熱輻射に比べて充分に小さい場合、ホーンホルダの温度履歴を無視してボンディングツールの位置履歴にのみ基づいて超音波ホーンの推定温度を算出したとしても、高い精度でボンディングツールの位置を補正することができる。逆に当該熱輻射が当該熱伝導に比べて充分に小さい場合、ボンディングツールの位置履歴を無視してホーンホルダの温度履歴にのみ基づいて超音波ホーンの推定温度を算出したとしても、高い精度でボンディングツールの位置を補正することができる。
【0089】
[付記9]
ワークにワイヤボンディングを行うワイヤボンディング装置であって、先端部と基端部とを有し、ワイヤに超音波振動を印加する超音波ホーンと、超音波ホーンの基端部に設けられ、超音波ホーンを保持するホーンホルダと、超音波ホーンの先端部に設けられ、ワイヤをワークにボンディングするボンディングツールと、ワークの画像を取り込む画像取込部と、ワークの画像を処理する画像処理部と、ワークの画像を反射して画像取込部から画像処理部に導く内面、及び、内面を覆う外装の最外面である外面を有する鏡筒部と、鏡筒部の内面と外面との間に設けられた鏡筒部温度センサと、鏡筒部を移動させ、画像取込部をワークの撮像位置に位置決めする鏡筒部駆動部と、鏡筒部温度センサによって測定された鏡筒部の温度に基づいて、画像取込部の位置、または画像取込部とボンディングツールとの相対位置を補正する画像取込部位置補正部とを備える、ワイヤボンディング装置。
【0090】
この態様によれば、鏡筒部の熱伸縮に起因する画像取込部の位置の変化を、画像取込部位置補正部によって高い精度で補正することができる。したがって、ボンディングツールの画像に基づくボンディング位置の特定の精度が向上し、ボンディング位置の精度を向上させることができる。
【0091】
以上説明したように、本願発明の一態様によれば、ボンディング位置の精度向上を図ることができる、ワイヤボンディング装置、ワイヤボンディング方法及びワイヤボンディングプログラムを提供することができる。
【0092】
以上説明した実施形態は、本願発明の理解を容易にするためのものであり、本願発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0093】
1…ワイヤボンディング装置
10,10A…XY駆動機構
12…Z駆動機構
16…ボンディングステージ
18…ワーク
20…ホーンホルダ
22…ホルダ基端部
24…ホルダ先端部
30…超音波ホーン
40…ボンディングツール
42…ワイヤ
80…カメラユニット
81…光学レンズ
82…鏡筒部
82a…内面
82b…外面
83…イメージセンサ
90…ワイヤボンディング制御部
90a…記憶部
90b…ホーンホルダ温度取得部
90c…ホーン温度推定部
90d…ボンディングツール位置補正部
90e…鏡筒部温度取得部
90f…光学レンズ位置補正部
92…操作部
94…表示部
95…CPU
96…RAM
97…ROM
98…通信モジュール
CH0,CH1,CH3,CH4…温度センサ
【手続補正書】
【提出日】2024-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークにワイヤボンディングを行うワイヤボンディング装置であって、
先端部と基端部とを有し、ワイヤに超音波振動を印加する超音波ホーンと、
前記超音波ホーンの前記基端部に設けられ、前記超音波ホーンを保持するホーンホルダと、
前記超音波ホーンの前記先端部に設けられ、前記ワイヤを前記ワークにボンディングするボンディングツールと、
前記ホーンホルダに設けられたホーンホルダ温度センサと、
前記ホーンホルダを移動させ、前記ボンディングツールを前記ワークのボンディング位置に位置決めするホーンホルダ駆動部と、
前記ワークに対する前記ボンディングツールの位置履歴を含む履歴情報に基づいて、熱回路網法によって前記超音波ホーンの推定温度を算出するホーン温度推定部と、
前記ホーン温度推定部において算出された前記超音波ホーンの推定温度に基づいて、前記ボンディングツールの位置を補正するボンディングツール位置補正部と
を備える、
ワイヤボンディング装置。
【請求項2】
前記ホーンホルダ温度センサは、前記ホーンホルダの長手方向において間隔を空けて設けられた第1のホーンホルダ温度センサ及び第2のホーンホルダ温度センサであって、前記ホーンホルダにおける前記超音波ホーンに近い側の部分の温度を測定する第1のホーンホルダ温度センサと、前記ホーンホルダにおける前記超音波ホーンから遠い側の部分の温度を測定する第2のホーンホルダ温度センサとを含む、
請求項1に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項3】
前記履歴情報は、前記ホーンホルダ温度センサから取得した前記ホーンホルダの温度履歴をさらに含み、
前記ホーンホルダの温度履歴は、前記第1のホーンホルダ温度センサから取得される、 請求項2に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項4】
前記ワークの画像を取り込む画像取込部と、
前記ワークの画像を処理する画像処理部と、
前記ワークの画像を反射して前記画像取込部から前記画像処理部に導く内面、及び、前記内面を覆う外装の最外面である外面を有する鏡筒部と、
前記鏡筒部の前記内面と前記外面との間に設けられた鏡筒部温度センサと、
前記鏡筒部の温度に基づいて、前記画像取込部の位置、または前記画像取込部と前記ボンディングツールとの相対位置を補正する画像取込部位置補正部とをさらに備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項5】
前記鏡筒部温度センサは、前記鏡筒部の長手方向において間隔を空けて設けられた第1の鏡筒部温度センサ及び第2の鏡筒部温度センサであって、前記鏡筒部における前記画像取込部に接近する側の部分の温度を測定する第1の鏡筒部温度センサと、前記鏡筒部における前記画像処理部に接近する側の部分の温度を測定する第2の鏡筒部温度センサとを含む、
請求項4に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項6】
前記鏡筒部温度センサは、前記鏡筒部に挿入されるパイプと、前記パイプの内部に設けられたサーミスタと、前記サーミスタを封止する樹脂材料とを含む、
請求項4に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項7】
ワークにワイヤボンディングを行うワイヤボンディング装置を用いたワイヤボンディング方法であって、
前記ワイヤボンディング装置は、
先端部と基端部とを有し、ワイヤに超音波振動を印加する超音波ホーンと、
前記超音波ホーンの前記基端部に設けられ、前記超音波ホーンを保持するホーンホルダと、
前記超音波ホーンの前記先端部に設けられ、前記ワイヤを前記ワークにボンディングするボンディングツールと、
前記ホーンホルダに設けられたホーンホルダ温度センサと、
前記ホーンホルダを移動させ、前記ボンディングツールを前記ワークのボンディング位置に位置決めするホーンホルダ駆動部と
を備え、
前記ワイヤボンディング方法は、
前記ホーンホルダ温度センサから前記ホーンホルダの温度履歴を取得することと、
前記ワークに対する前記ボンディングツールの位置履歴を取得することと、
前記位置履歴を含む履歴情報に基づいて、熱回路網法によって前記超音波ホーンの推定温度を算出することと、
算出された前記超音波ホーンの前記推定温度に基づいて、前記ボンディングツールの位置を補正することと
を含む、ワイヤボンディング方法。
【請求項8】
ワークにワイヤボンディングを行うワイヤボンディング装置のコンピュータに実行させるワイヤボンディングプログラムであって、
前記ワイヤボンディング装置は、
先端部と基端部とを有し、ワイヤに超音波振動を印加する超音波ホーンと、
前記超音波ホーンの前記基端部に設けられ、前記超音波ホーンを保持するホーンホルダと、
前記超音波ホーンの前記先端部に設けられ、前記ワイヤを前記ワークにボンディングするボンディングツールと、
前記ホーンホルダに設けられたホーンホルダ温度センサと、
前記ホーンホルダを移動させ、前記ボンディングツールを前記ワークのボンディング位置に位置決めするホーンホルダ駆動部と
を備え、
前記コンピュータに、
前記ホーンホルダ温度センサから前記ホーンホルダの温度履歴を取得することと、
前記ワークに対する前記ボンディングツールの位置履歴を取得することと、
前記位置履歴を含む履歴情報に基づいて、熱回路網法によって前記超音波ホーンの推定温度を算出することと、
算出された前記超音波ホーンの前記推定温度に基づいて、前記ボンディングツールの位置を補正することと
を実行させる、ワイヤボンディングプログラム。
【請求項9】
ワークにワイヤボンディングを行うワイヤボンディング装置であって、
先端部と基端部とを有し、ワイヤに超音波振動を印加する超音波ホーンと、
前記超音波ホーンの前記基端部に設けられ、前記超音波ホーンを保持するホーンホルダと、
前記超音波ホーンの前記先端部に設けられ、前記ワイヤを前記ワークにボンディングするボンディングツールと、
前記ワークの画像を取り込む画像取込部と、
前記ワークの画像を処理する画像処理部と、
前記ワークの画像を反射して前記画像取込部から前記画像処理部に導く内面、及び、前記内面を覆う外装の最外面である外面を有する鏡筒部と、
前記鏡筒部の前記内面と前記外面との間に設けられた鏡筒部温度センサと、
前記鏡筒部を移動させ、前記画像取込部を前記ワークの撮像位置に位置決めする鏡筒部駆動部と、
前記鏡筒部温度センサによって測定された前記鏡筒部の温度に基づいて、前記画像取込部の位置、または前記画像取込部と前記ボンディングツールとの相対位置を補正する画像取込部位置補正部と
を備え、
前記鏡筒部温度センサは、前記鏡筒部の長手方向において間隔を空けて設けられた第1の鏡筒部温度センサ及び第2の鏡筒部温度センサであって、前記鏡筒部における前記画像取込部に接近する側の部分の温度を測定する第1の鏡筒部温度センサと、前記鏡筒部における前記画像処理部に接近する側の部分の温度を測定する第2の鏡筒部温度センサとを含む、
ワイヤボンディング装置。