IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本自動車部品総合研究所の特許一覧 ▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特開-電力変換器の制御装置、プログラム 図1
  • 特開-電力変換器の制御装置、プログラム 図2
  • 特開-電力変換器の制御装置、プログラム 図3
  • 特開-電力変換器の制御装置、プログラム 図4
  • 特開-電力変換器の制御装置、プログラム 図5
  • 特開-電力変換器の制御装置、プログラム 図6
  • 特開-電力変換器の制御装置、プログラム 図7
  • 特開-電力変換器の制御装置、プログラム 図8
  • 特開-電力変換器の制御装置、プログラム 図9
  • 特開-電力変換器の制御装置、プログラム 図10
  • 特開-電力変換器の制御装置、プログラム 図11
  • 特開-電力変換器の制御装置、プログラム 図12
  • 特開-電力変換器の制御装置、プログラム 図13
  • 特開-電力変換器の制御装置、プログラム 図14
  • 特開-電力変換器の制御装置、プログラム 図15
  • 特開-電力変換器の制御装置、プログラム 図16
  • 特開-電力変換器の制御装置、プログラム 図17
  • 特開-電力変換器の制御装置、プログラム 図18
  • 特開-電力変換器の制御装置、プログラム 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156402
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】電力変換器の制御装置、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/12 20160101AFI20241029BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H02P21/12
H02P27/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070828
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 瞭弥
(72)【発明者】
【氏名】外山 佳祐
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB10
5H505CC04
5H505DD03
5H505DD06
5H505EE30
5H505EE41
5H505GG04
5H505HA09
5H505HB01
5H505JJ03
5H505LL22
5H505LL24
5H505LL41
5H505LL44
(57)【要約】
【課題】回転電機のロータの回転停止状態を維持しつつ、電力変換器のスイッチング制御により発生する熱量を増大させることができる電力変換器の制御装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】制御装置60は、界磁巻線32に流す正弦波状の前記界磁目標電流を算出する。制御装置60は、回転電機30の発生トルクを、ロータ31の回転停止状態を維持可能なトルクにするとの条件、及びdq座標系において界磁巻線32に流れる電流ベクトルが回転電機30のリラクタンストルクを減少させる成分を有するとの条件を満たすように、算出した界磁目標電流と、回転電機30のインダクタンスとに基づいて、巻線34U~34Wに流すd軸目標電流を算出する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電部(10)と、
複数相の電機子巻線(34U~34W)及び界磁巻線(32)を有する回転電機(20)と、
前記蓄電部及び前記電機子巻線を電気的に接続し、各相の上,下アームスイッチ(SUH~SWL)を有する第1電力変換器(20)と、
前記蓄電部及び前記界磁巻線を電気的に接続する第2電力変換器(40)と、
を備えるシステムに適用される電力変換器の制御装置(60)において、
前記界磁巻線に流す界磁目標電流(If*)、及び前記電機子巻線に流すd,q軸目標電流(Id*,Iq*)を算出する目標値算出部と、
算出された前記d軸目標電流に前記電機子巻線に流れるd軸電流(Idr)を制御するとともに、算出された前記q軸目標電流に前記電機子巻線に流れるq軸電流(Iqr)を制御すべく、各相の前記上,下アームスイッチのスイッチング制御を行う電機子制御部と、
算出された前記界磁目標電流に前記界磁巻線に流れる界磁電流(Ifr)を制御すべく、前記第2電力変換器のスイッチング制御を行う界磁制御部と、
を備え、
前記目標値算出部は、
正弦波状の前記界磁目標電流を算出し、
前記回転電機の発生トルクを、前記回転電機のロータの回転停止状態を維持可能なトルクにするとの条件、及びdq座標系において前記界磁巻線に流れる電流ベクトルが前記回転電機のリラクタンストルクを減少させる成分を有するとの条件を満たすように、算出した前記界磁目標電流と、前記回転電機のインダクタンス(Ld,Lq,Lmf)とに基づいて、前記d軸目標電流を算出する、電力変換器の制御装置。
【請求項2】
前記目標値算出部は、各相の前記電機子巻線に流れる電流(Iu,Iv,Iw)の振幅が同等になるように、前記界磁目標電流の正の振幅(Ifp)及び負の振幅(Ifm)を個別に算出する、請求項1に記載の電力変換器の制御装置。
【請求項3】
前記目標値算出部は、
各相の前記上,下アームスイッチのスイッチング制御により発生する熱量の目標値である目標熱量(Q*)に基づいて、前記正の振幅及び前記負の振幅を算出し、
算出した前記正の振幅及び前記負の振幅に基づいて、正弦波状の前記界磁目標電流を算出する、請求項2に記載の電力変換器の制御装置。
【請求項4】
前記目標値算出部は、前記目標熱量及び前記ロータの電気角に基づいて、前記正の振幅及び前記負の振幅を算出する、請求項3に記載の電力変換器の制御装置。
【請求項5】
前記目標値算出部は、
前記インダクタンスに基づいて、前記界磁目標電流の初期値を算出し、
前記初期値の算出後、前記d軸電流の振幅が前記q軸電流の振幅と同等になるように、前記初期値における前記正の振幅及び前記負の振幅を調整する、請求項2に記載の電力変換器の制御装置。
【請求項6】
前記目標値算出部は、
前記電機子巻線に流れる相電流を検出する電流センサ(51)の検出値に基づいて、前記電機子巻線に流れる前記d軸電流を算出し、
算出した前記d軸電流に基づいて、前記正の振幅及び前記負の振幅を調整する、請求項5に記載の電力変換器の制御装置。
【請求項7】
前記目標値算出部は、
前記インダクタンスに基づいて、前記界磁目標電流の初期値を算出し、
前記初期値の算出後、各相の前記上,下アームスイッチの温度が近づくように、前記初期値における前記正の振幅及び前記負の振幅を調整する、請求項2に記載の電力変換器の制御装置。
【請求項8】
前記目標値算出部は、各相の前記上,下アームスイッチの温度又は該温度の相関値を検出する温度センサの検出値に基づいて、前記正の振幅及び前記負の振幅を調整する、請求項7に記載の電力変換器の制御装置。
【請求項9】
前記目標値算出部は、前記インダクタンスが関係付けられたマップ情報、又は前記インダクタンスを出力とする物理モデルに基づいて、前記インダクタンスを算出する、請求項1~8のいずれか1項に記載の電力変換器の制御装置。
【請求項10】
前記システムには、前記第1電力変換器において発生した熱を昇温対象(10)に伝達する熱伝達部(400,401)が備えられ、
前記昇温対象の昇温要求があるか否かを判定する判定部を備え、
前記目標値算出部は、前記昇温要求があると判定された場合、前記界磁目標電流及び前記d,q軸目標電流を算出する、請求項1~8のいずれか1項に記載の電力変換器の制御装置。
【請求項11】
前記回転電機は、d軸インダクタンスがq軸インダクタンスよりも大きい特性を有し、
前記目標値算出部は、dq座標系において前記界磁巻線に流れる電流ベクトルが、dq座標系において前記電機子巻線に流れる電流ベクトルの位相とは180度異なる成分を有するとの条件を満たすように、前記d軸目標電流を算出する、請求項1~8のいずれか1項に記載の電力変換器の制御装置。
【請求項12】
前記回転電機は、q軸インダクタンスがd軸インダクタンスよりも大きい特性を有し、
前記制御部は、dq座標系において前記界磁巻線に流れる電流ベクトルが、dq座標系において前記電機子巻線に流れる電流ベクトルの位相と同じ成分を有するとの条件を満たすように、前記d軸目標電流を算出する、請求項1~8のいずれか1項に記載の電力変換器の制御装置。
【請求項13】
前記第2電力変換器は、双方向に電流流通が可能な上,下アームスイッチ(SH1,SL1,SH2,SL2)の直列接続体を二組備える、請求項1~8のいずれか1項に記載の電力変換器の制御装置。
【請求項14】
蓄電部(10)と、
複数相の電機子巻線(34U~34W)及び界磁巻線(32)を有する回転電機(20)と、
前記蓄電部及び前記電機子巻線を電気的に接続し、各相の上,下アームスイッチ(SUH~SWL)を有する第1電力変換器(20)と、
前記蓄電部及び前記界磁巻線を電気的に接続する第2電力変換器(40)と、
コンピュータ(60a)と、
を備えるシステムに適用されるプログラムにおいて、
前記コンピュータに、
前記界磁巻線に流す界磁目標電流(If*)、及び前記電機子巻線に流すd,q軸目標電流(Id*,Iq*)を算出する目標値算出処理と、
算出された前記d軸目標電流に前記電機子巻線に流れるd軸電流(Idr)を制御するとともに、算出された前記q軸目標電流に前記電機子巻線に流れるq軸電流(Iqr)を制御すべく、各相の前記上,下アームスイッチのスイッチング制御を行う処理と、
算出された前記界磁目標電流に前記界磁巻線に流れる界磁電流(Ifr)を制御すべく、前記第2電力変換器のスイッチング制御を行う処理と、
を実行させ、
前記目標値算出処理は、
正弦波状の前記界磁目標電流を算出する処理と、
前記回転電機の発生トルクを、前記回転電機のロータの回転停止状態を維持可能なトルクにするとの条件、及びdq座標系において前記界磁巻線に流れる電流ベクトルが前記回転電機のリラクタンストルクを減少させる成分を有するとの条件を満たすように、算出した前記界磁目標電流と、前記回転電機のインダクタンス(Ld,Lq,Lmf)とに基づいて、前記d軸目標電流を算出する処理と、
を含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換器の制御装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリと、バッテリに電気的に接続された電力変換器と、電力変換器に電気的に接続された電機子巻線を有する回転電機とを備える車両に適用される制御装置が知られている。この制御装置は、車両停止中に電力変換器のスイッチング制御を行うことにより、電機子巻線に流すq軸電流を0としつつ、電機子巻線にd軸電流を流す。これにより、回転電機のロータの回転停止状態を維持しつつ、バッテリを昇温させる。その結果、車両の停車状態を維持しつつバッテリを暖機することができる。なお、このような制御装置の例として、特許文献1に開示された制御装置が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5259752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロータの回転停止状態を維持しつつ、電力変換器のスイッチング制御により発生する熱量を増大させる技術については、未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明は、回転電機のロータの回転停止状態を維持しつつ、電力変換器のスイッチング制御により発生する熱量を増大させることができる電力変換器の制御装置及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の開示は、蓄電部と、
複数相の電機子巻線及び界磁巻線を有する回転電機と、
前記蓄電部及び前記電機子巻線を電気的に接続し、各相の上,下アームスイッチを有する第1電力変換器と、
前記蓄電部及び前記界磁巻線を電気的に接続する第2電力変換器と、
を備えるシステムに適用される電力変換器の制御装置において、
前記界磁巻線に流す界磁目標電流、及び前記電機子巻線に流すd,q軸目標電流を算出する目標値算出部と、
算出された前記d軸目標電流に前記電機子巻線に流れるd軸電流を制御するとともに、算出された前記q軸目標電流に前記電機子巻線に流れるq軸電流を制御すべく、各相の前記上,下アームスイッチのスイッチング制御を行う電機子制御部と、
算出された前記界磁目標電流に前記界磁巻線に流れる界磁電流を制御すべく、前記第2電力変換器のスイッチング制御を行う界磁制御部と、
を備え、
前記目標値算出部は、
正弦波状の前記界磁目標電流を算出し、
前記回転電機の発生トルクを、前記回転電機のロータの回転停止状態を維持可能なトルクにするとの条件、及びdq座標系において前記界磁巻線に流れる電流ベクトルが前記回転電機のリラクタンストルクを減少させる成分を有するとの条件を満たすように、算出した前記界磁目標電流と、前記回転電機のインダクタンスとに基づいて、前記d軸目標電流を算出する。
【0007】
第1の開示では、d軸電流に加えてq軸電流を電機子巻線に流すことにより、各相の上,下アームスイッチのスイッチング制御により発生する熱量を増加させる。ここで、回転電機のロータの回転停止状態を維持しつつ、スイッチング制御により発生する熱量を増大させるために、第1の開示では、d軸電流の目標値であるd軸目標電流と、界磁電流の目標値である界磁目標電流との算出方法に特徴がある。
【0008】
界磁電流とd軸電流とは、回転電機のインダクタンスによって関係付けられる。この関係を利用して、界磁目標電流と、回転電機のインダクタンスとに基づいて、d軸目標電流が算出される。この際、回転電機の発生トルクを、回転電機のロータの回転停止状態を維持可能なトルクにするとの条件、及びdq座標系において界磁巻線に流れる電流ベクトルが回転電機のリラクタンストルクを減少させる成分を有するとの条件が課される。これにより、ロータの回転停止状態を維持しつつ、各相の上,下アームスイッチのスイッチング制御により発生する熱量を増加させる。
【0009】
第2の開示では、前記目標値算出部は、各相の前記電機子巻線に流れる電流の振幅が同等になるように、前記界磁目標電流の正の振幅及び負の振幅を個別に算出する。
【0010】
各相の上,下アームスイッチのスイッチング制御により発生する熱量を増加させるためには、各相の上,下アームスイッチの発熱量に大きな偏りが発生しないようにすることが要求される。発熱量に大きな偏りが発生しないようにするためには、各相の電機子巻線に流れる電流の振幅を同等にする必要がある。そこで、本願出願人は、振幅が同等である各相の電流に基づいてd軸目標電流を算出し、算出したd軸目標電流及び回転電機のインダクタンスに基づいて、界磁目標電流を算出する方法について検討した。
【0011】
回転電機のインダクタンスは、d,q軸電流、界磁電流、及びロータの電気角といったパラメータに応じて変化する。このため、これらパラメータを反映させたインダクタンス及びd軸目標電流に基づいて界磁目標電流を算出すると、界磁目標電流に高調波成分が含まれることとなる。
【0012】
ここで、界磁巻線のインダクタンスは、電機子巻線のインダクタンスと比較して大きい。このため、界磁電流の制御応答性が低くなり、実際の界磁電流を高調波成分に追従させることができず、界磁目標電流に対する実際の界磁電流の乖離が大きくなる。その結果、回転電機の発生トルクが大きくなり、ロータの回転停止状態を維持できなくなる懸念がある。
【0013】
そこで、本願出願人は、正弦波状の界磁目標電流と、回転電機のインダクタンスとに基づいて、d軸目標電流を算出する方法について検討した。回転電機のインダクタンスが上記パラメータに応じて変化することに起因して、界磁目標電流及びインダクタンスに基づいて算出したd軸目標電流の振幅が、q軸目標電流の振幅から大きくずれる。このずれは、各相の電機子巻線に流れる電流の振幅のずれにつながり、各相の上,下アームスイッチの発熱量に大きな偏りが発生してしまう。
【0014】
ここで、本願出願人は、正弦波状の界磁目標電流の正の振幅及び負の振幅を調整することにより、d軸目標電流の振幅を調整できるとの知見を得た。そこで、第2の開示では、各相の電機子巻線に流れる電流の振幅が同等になるように、正弦波状の界磁目標電流の正の振幅及び負の振幅が個別に算出される。この場合、界磁電流を高調波成分に追従させる必要がないため、界磁電流の制御応答性が低いときであっても、各相の電機子巻線に流れる電流の振幅を同等にできる。その結果、各相の上,下アームスイッチの発熱量に大きな偏りが発生してしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る車載システムの全体構成図。
図2】熱伝達部としての冷却システムの概要を示す図。
図3】昇温制御における3相交流電流、d,q軸電流及び界磁電流の推移を示す図。
図4】dq座標系における昇温制御時の電流ベクトルを示す図。
図5】比較例に係る昇温制御における3相交流電流、d,q軸電流、界磁電流及びトルクの推移及び各スイッチの発熱量を示す図。
図6】比較例に係る昇温制御における3相交流電流、d,q軸電流、界磁電流及びトルクの推移及び各スイッチの発熱量を示す図。
図7】第1実施形態に係る昇温制御における3相交流電流、d,q軸電流、界磁電流及びトルクの推移及び各スイッチの発熱量を示す図。
図8】昇温制御のブロック図。
図9】昇温制御の処理手順を示すフローチャート。
図10】界磁目標電流の決定処理の手順を示すフローチャート。
図11】第1実施形態の変形例に係るdq座標系における昇温制御時の電流ベクトルを示す図。
図12】第1実施形態の変形例に係るdq座標系における昇温制御時の電流ベクトルを示す図。
図13】第1実施形態の変形例に係るdq座標系における昇温制御時の電流ベクトルを示す図。
図14】第1実施形態の変形例に係るdq座標系における昇温制御時の電流ベクトルを示す図。
図15】第2実施形態に係る昇温制御のブロック図。
図16】第3実施形態に係る昇温制御のブロック図。
図17】界磁目標電流の決定処理の手順を示すフローチャート。
図18】第4実施形態に係る昇温制御のブロック図。
図19】界磁目標電流の決定処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る制御装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の制御装置を備えるシステムは、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載されている。
【0017】
図1に示すように、システムは、蓄電池10(「蓄電部」に相当)と、2つの電力変換器と、回転電機30とを備えている。本実施形態において、回転電機30は、巻線界磁型の回転電機である。また、回転電機30は、d軸インダクタンスLdがq軸インダクタンスLqよりも大きい特性である順突極性を有している。
【0018】
蓄電池10は、単電池である電池セルの直列接続体として構成された組電池である。電池セルは、例えば、リチウムイオン電池等の2次電池である。蓄電池10は、車両の外部に備えられた外部充電器により充電可能である。外部充電器は、例えば定置式の充電器である。
【0019】
回転電機30は、車両の駆動輪12に回転動力を付与して駆動輪12を回転させる機器である。回転電機30は、ロータ31を備えている。ロータ31は、ロータコアと、ロータコアから径方向に延びる複数の界磁突極部とを備えている。各界磁突極部には、界磁巻線32が巻回されている。ロータ31の回転軸は、車両に備えられた動力伝達機構11を介して、車両の駆動輪12と動力伝達が可能とされている。回転電機30が電動機として機能することにより発生するトルクが、動力伝達機構11を介して駆動輪12に伝達され、駆動輪12が回転する。これにより、車両が走行する。なお、動力伝達機構11は、例えば、変速装置及びシャフトを含む。また、回転電機30は、例えば、車両の駆動輪12に一体に設けられるインホイールモータであってもよいし、車両の車体に備えられるオンボードモータであってもよい。
【0020】
回転電機30は、ステータ33を備えている。ステータ33は、電機子コアと、電機子巻線とを備えている。電機子コアは、円環状のバックヨーク部と、バックヨーク部から径方向においてロータ31側に延びる複数のティース部とを備えている。電機子巻線は、電気角で互いに120°ずれた状態で星形結線されたU,V,W相巻線34U,34V,34Wである。
【0021】
システムは、インバータ20(「第1電力変換器」に相当)と、界磁通電回路40(「第2電力変換器」に相当)とを備えている。インバータ20は、蓄電池10からの直流電流を交流電流に変換して電機子巻線に供給する。インバータ20は、U,V,W相上アームスイッチSUH,SVH,SWHと、U,V,W相下アームスイッチSUL,SVL,SWLとの直列接続体を備えている。本実施形態において、各スイッチSUH,SVH,SWH,SUL,SVL,SWLは、NチャネルMOSFETである。各スイッチSUH,SVH,SWH,SUL,SVL,SWLは、ボディダイオードDUH,DVH,DWH,DUL,DVL,DWLを備えている。
【0022】
U,V,W相上アームスイッチSUH,SVH,SWHの高電位側端子であるドレインには、高電位側電気経路Lpを介して蓄電池10の正極端子が接続されている。U,V,W相下アームスイッチSUL,SVL,SWLの低電位側端子であるソースには、低電位側電気経路Lnを介して蓄電池10の負極端子が接続されている。各電気経路Lp,Lnは、バスバー等の導電部材である。インバータ20は、平滑コンデンサである第1コンデンサ21を備えている。なお、第1コンデンサ21は、インバータ20の外部に設けられていてもよい。
【0023】
界磁通電回路40は、蓄電池10から界磁巻線32に電流を供給する。本実施形態の界磁通電回路40は、フルブリッジ回路であり、第1上アームスイッチSH1及び第1下アームスイッチSL1の直列接続体と、第2上アームスイッチSH2及び第2下アームスイッチSL2の直列接続体とを備えている。本実施形態において、各スイッチSH1,SH2,SL1,SL2は、NチャネルMOSFETである。各スイッチSH1,SH2,SL1,SL2は、ボディダイオードDH1,DH2,DL1,DL2を備えている。各スイッチSH1,SH2,SL1,SL2は、オンされている場合、ドレインからソースへの電流の流通、及びソースからドレインへの電流の流通が許可される双方向導通型のスイッチング素子である。
【0024】
第1,第2上アームスイッチSH1,SH2の高電位側端子であるドレインには、高電位側電気経路Lpを介して蓄電池10の正極端子が接続されている。第1,第2下アームスイッチSL1,SL2の低電位側端子であるソースには、低電位側電気経路Lnを介して蓄電池10の負極端子が接続されている。第1上アームスイッチSH1と第1下アームスイッチSL1との接続点には、図示しないブラシを介して界磁巻線32の第1端が接続されている。第2上アームスイッチSH2と第2下アームスイッチSL2との接続点には、図示しないブラシを介して界磁巻線32の第2端が接続されている。界磁通電回路40は、平滑コンデンサである第2コンデンサ41を備えている。なお、第2コンデンサ41は、界磁通電回路40の外部に設けられていてもよい。また、界磁通電回路40に個別に第2コンデンサ41が設けられるとともにインバータ20に個別に第1コンデンサ21が設けられる構成に代えて、インバータ20及び界磁通電回路40に共通のコンデンサが設けられる構成であってもよい。この場合、例えば、第2コンデンサ41が設けられない構成とすればよい。
【0025】
システムは、図2に示すように、車両を走行させるためにインバータ20のスイッチング制御が行われている場合においてインバータ20、界磁通電回路40、回転電機30及び蓄電池10を冷却する装置を備えている。詳しくは、車両は、冷却水が循環する循環経路400と、電動式のウォータポンプ401と、ラジエータ402と、電動式のファン403とを備えている。ウォータポンプ401は、給電されて駆動されることにより冷却水を循環させる。図2に示す例では、循環経路400において、ウォータポンプ401の下流側には、順に、インバータ20、界磁通電回路40、回転電機30、蓄電池10が配置されている。なお、循環経路400における配置順は、図2に示す順序に限らない。
【0026】
循環経路400においてウォータポンプ401と蓄電池10の間には、ラジエータ402が設けられている。ラジエータ402は、循環経路400を介して流入する冷却水を冷却してウォータポンプ401へと供給する。車両の走行に伴いラジエータ402に吹き付けられる走行風や、ファン403を回転駆動させることによりラジエータ402に吹き付けられる風により、ラジエータ402に流入する冷却水が冷却される。
【0027】
なお、ウォータポンプ401及びファン403は、制御装置60とは別の制御装置により駆動され得る。ただし、本実施形態では、便宜上、ウォータポンプ401及びファン403が、システムが備える制御装置60により駆動されるものとする。
【0028】
図1の説明に戻り、システムは、電圧センサ50、相電流センサ51、界磁電流センサ52、角度センサ53、電池温度センサ54、スイッチ温度センサ55及び冷却水温センサ56を備えている。電圧センサ50は、蓄電池10の電圧を検出する。相電流センサ51は、U,V,W相巻線34U,34V,34Wのうち少なくとも2相の巻線に流れる相電流を検出する。界磁電流センサ52は、界磁巻線32に流れる界磁電流を検出する。角度センサ53は、ロータ31の回転角(具体的には電気角)を検出する。電池温度センサ54は、蓄電池10の温度を検出する。スイッチ温度センサ55は、各スイッチSUH,SVH,SWH,SUL,SVL,SWLの温度を検出する。冷却水温センサ56は、循環経路400に流れる冷却水の温度を検出する。
【0029】
システムは、制御装置60と、制御装置60よりも上位の上位制御装置80とを備えている。各センサ50~56の検出値は、制御装置60に入力される。
【0030】
制御装置60は、マイコン60aを主体として構成される電子制御装置(Electronic Control Unit)である。上位制御装置80は、マイコンを主体として構成される電子制御装置(Electronic Control Unit)である。制御装置60と上位制御装置80とは、情報のやり取りが可能になっている。
【0031】
制御装置60のマイコン60a及び上位制御装置80のマイコンは、CPU(Central Processing Unit)を備えている。制御装置60のマイコン60a及び上位制御装置80のマイコンが提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、マイコンがハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、マイコンは、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、後述する図9,10等に示す処理のプログラムが含まれる。プログラムを構成するインストラクションのセットが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えばOTA(Over The Air)等、インターネット等の通信ネットワークを介して更新可能である。
【0032】
制御装置60は、界磁巻線32を励磁すべく、界磁通電回路40を構成する各スイッチのスイッチング制御を行う。詳しくは、制御装置60は、界磁電流センサ52により検出された界磁電流Ifrを界磁目標電流If*に制御すべく、第1状態と第2状態とが交互に出現するようにスイッチング制御を行う。第1状態は、第1上アームスイッチSH1と第2下アームスイッチSL2とがオンされて、かつ、第2上アームスイッチSH2と第1下アームスイッチSL1とがオフされている状態である。第2状態は、第1上アームスイッチSH1と第2下アームスイッチSL2とがオフされて、かつ、第2上アームスイッチSH2と第1下アームスイッチSL1とがオンされている状態である。
【0033】
制御装置60は、界磁巻線32が励磁されている状態において、各センサ50~56の検出値に基づいて、回転電機30の制御量を指令値にフィードバック制御すべく、インバータ20を構成する各スイッチのスイッチング制御を行う。本実施形態において、制御量はトルクである。各相において、上アームスイッチと下アームスイッチとは交互にオンされる。このフィードバック制御により、ロータ31の回転動力が駆動輪12に伝達され、車両が走行する。
【0034】
続いて、制御装置60により実行される蓄電池10の昇温制御について説明する。この制御は、車両の停車中において外部充電器により蓄電池10を充電する場合において、電池温度センサ54により検出された蓄電池10の温度Trが目標温度T*を下回るとき、インバータ20及び界磁通電回路40のスイッチング制御により熱を発生させる制御である。発生した熱は、ウォータポンプ401の駆動によって循環経路400を循環する冷却水を介して蓄電池10に伝えられる。昇温制御は、例えば、蓄電池10の温度Trが目標温度T*に到達するまで継続される。また、ウォータポンプ401の駆動は、少なくとも昇温制御の実行中は継続される。なお、本実施形態において、循環経路400、循環経路400を循環する冷却水及びウォータポンプ401が「熱伝達部」に相当する。昇温制御により、蓄電池10を迅速に昇温させ、外部充電器による蓄電池10の充電時間の短縮を図る。
【0035】
昇温制御による昇温能力を高めるために、制御装置60は、昇温制御において、電機子巻線に正弦波状のd,q軸電流を流すようにインバータ20のスイッチング制御を行う。この際、ロータ31の回転停止状態を維持して車両の停車状態を維持するために、制御装置60は、d,q軸電流の流通によって発生するリラクタンストルクをマグネットトルクで減少させるように界磁通電回路40のスイッチング制御を行う。
【0036】
まず、昇温制御の概要について説明する。
【0037】
回転電機30の発生トルクTrqは、下式(eq1)で表されるように、マグネットトルクTMと、リラクタンストルクTRとからなる。下式(eq1)において、Pは回転電機30の極対数を示し、φfは界磁巻線32に界磁電流が流れることにより発生する磁束を示す。
【0038】
Trq=TM+TR
=P・φf・Iq+P・(Ld-Lq)・Id・Iq …(eq1)
制御装置60は、昇温制御において、図3(A)に示すように電気角で120度位相がずれた正弦波状の3相交流電流IU,IV,IWを各相巻線34U~34Wに流すように、インバータ20のスイッチング制御を行う。この場合、図3(B)に示すように正弦波状のd,q軸電流Id,Iqが流れる。この場合のd,q軸電流Id,Iqの周波数は同じであり、d軸電流Idとq軸電流Iqとの位相差は電気角で90度である。
【0039】
一方、磁束φfは、下式(eq2)で表されるように、界磁巻線32のターン数Nfと、界磁電流Ifとの乗算値に比例する。
【0040】
φf∝Nf・If …(eq2)
リラクタンストルクTRをマグネットトルクTMで相殺するとの条件を上式(eq1)に課す。詳しくは、上式(eq1)においてTrq=0とする。この場合、下式(eq3)が導かれる。
【0041】
φf=-(Ld-Lq)・Id …(eq3)
上式(eq2),(eq3)から下式(eq4)が導かれる。
【0042】
If∝-(Ld-Lq)・Id/Nf …(eq4)
本実施形態では、(eq4)においてLd>Lqである。このため、図3(C)に示すように、制御装置60は、d軸電流Idの位相とは180度異なって、かつ、d軸電流Idの周波数と同じ周波数を有する正弦波状の界磁目標電流If*を設定する。なお、図3に示すTfは、d軸電流Id及び界磁電流Ifの1周期である。
【0043】
図4は、昇温制御中において流れる電流をdq座標系に示した図である。図4において、Ivt_3phは、dq座標系において電機子巻線に流れる電流ベクトル(以下、電機子電流ベクトル)を示し、Ivt_fldは、dq座標系において界磁巻線32に流れる電流ベクトル(以下、界磁電流ベクトル)を示す。ロータ31の回転が停止しているため、電機子電流ベクトルIvt_3phは、3相交流電流の周波数で回転する。回転する電機子電流ベクトルIvtと、界磁電流ベクトルIvt_fldとの位相差が180度になるように、制御装置60は、インバータ20及び界磁通電回路40のスイッチング制御を行う。これにより、界磁電流ベクトルIvt_fldが、回転電機30のリラクタンストルクを減少させる成分を有するようになり、詳しくはリラクタンストルクを0に近づける成分を有するようになる。
【0044】
本実施形態の昇温制御では、3相の上,下アームスイッチのスイッチング制御が行われる。昇温制御の実行に伴いインバータ20において発生する熱を各相及び上,下アームに分散させることができる。この場合において、発生する熱量を増大させるために、本願出願人は、昇温制御方法について種々の検討を行った。
【0045】
結合インダクタンスLmfを用いると、上式(eq4)を下式(eq5)のように表すことができる。
【0046】
【数1】
結合インダクタンスLmf(>0)は、ステータ33のバックヨーク部及びティース部と、ロータ31のロータコア及び界磁突極部とを含むd軸磁路のインダクタンスであり、「φf=Lmf×If」の関係がある。
【0047】
昇温制御により発生する熱量を増加させるためには、インバータ20の各スイッチSUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLが発生する熱量を同等にすることが要求される。この熱量は、例えば、スイッチング制御に伴い単位時間当たりにスイッチで発生する熱量[W]である。発熱量を同等にするには、3相電流の振幅を同等にする必要がある。そこで、本願出願人は、振幅が同等である3相電流に基づいてd軸目標電流Id*を算出し、算出したd軸目標電流Id*及び回転電機30のインダクタンスに基づいて、界磁目標電流If*を算出する方法について検討した。詳しくは、図5に示すように、振幅を同等にした3相電流から変換されたd,q軸目標電流Id*,Iq*の振幅は同等になる。このd軸目標電流Id*及び上式(eq5)に基づいて算出された界磁目標電流If*に、界磁電流Ifrを制御することにより、昇温制御中の回転電機30の発生トルクを0に近づけつつ、各スイッチSUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLの発熱量を同等にする。
【0048】
ここで、回転電機30のインダクタンスであって、上式(eq5)に含まれるd軸インダクタンスLd、q軸インダクタンスLq及び結合インダクタンスLmfは、d,q軸電流及び界磁電流に応じて変化する。具体的には、d軸電流及び界磁電流が大きいほど、磁気飽和の影響によりd軸インダクタンスLd及び結合インダクタンスLmfが小さくなり、q軸電流Iqが大きいほど、磁気飽和の影響によりq軸インダクタンスLqが小さくなる。また、各インダクタンスLd,Lq,Lmfは、電気角に応じて変化する。
【0049】
d軸インダクタンスLd、q軸インダクタンスLq及び結合インダクタンスLmfが上述した各パラメータの依存性を有するため、上式(eq5)において、d軸電流Idが正弦波状の電流であったとしても、図5の破線の円で囲む部分に示すように、界磁電流Ifに高調波成分が含まれることとなる。
【0050】
ここで、界磁巻線32のインダクタンスは、例えばターン数Nfが非常に多いことに起因して、電機子巻線のインダクタンスと比較して非常に大きい。このため、界磁電流の制御応答性が低くなり、実際の界磁電流を高調波成分に追従させることができず、界磁目標電流If*に対する実際の界磁電流の乖離が大きくなる。その結果、図5に示すように、各スイッチSUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLが発生する熱量は目標熱量Q*以上となるものの、回転電機30の発生トルクがトルク閾値Trqth以上になってしまう。トルク閾値Trqthは、駆動輪12が回転し始めるトルクであり、例えば、駆動輪12が回転し始めるトルクとして想定される範囲の上限値に設定されている。発生トルクがトルク閾値Trqthを超えてしまうと、外部充電中のユーザに違和感を与えるおそれがある。
【0051】
そこで、本願出願人は、各スイッチSUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLが発生する熱量を同等にできる理想的な正弦波状の界磁目標電流If*と、回転電機30のインダクタンスとに基づいて、d軸目標電流Id*を算出する方法について検討した。図6に示すように、理想的な界磁目標電流If*の正負の振幅If0は同じである。
【0052】
ここで、d軸インダクタンスLd、q軸インダクタンスLq及び結合インダクタンスLmfが上述した各パラメータの依存性を有するため、界磁目標電流If*及び上式(eq5)に基づいて算出したd軸目標電流Id*の振幅は、図6に示すように、q軸目標電流Iq*の振幅から大きくずれる。このずれは、図6に示すように、3相電流の振幅のずれにつながり、各スイッチSUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLが発生する熱量に大きな偏りが発生してしまう。図6に示す例では、U相下アームスイッチSULが発生する熱量が目標熱量Q*を下回っている。
【0053】
ここで、本願出願人は、昇温制御において、正弦波状の界磁目標電流If*の正の振幅及び負の振幅を個別に調整することにより、d軸目標電流Id*の振幅を調整できるとの知見を得た。そこで、制御装置60は、図7に示すように、3相電流の振幅が同等になるように、正弦波状の界磁目標電流If*の正の振幅Ifp及び負の振幅Ifmを個別に調整する。3相電流の振幅が同等であれば、各スイッチSUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLが発生する熱量が同等になる。図7に示す例では、制御装置60は、界磁目標電流If*の正の振幅Ifpを増加させることにより、d軸目標電流Idの負の振幅を増加させ、これによってd軸電流Idの負の振幅とq軸電流Iqの負の振幅とを同等にしている。
【0054】
上述した方法によれば、界磁電流Ifrを高調波成分に追従させる必要がないため、界磁電流Ifrの制御応答性が低いときであっても、3相電流の振幅を同等にできる。その結果、回転電機30の発生トルクをトルク閾値Trqthよりも小さいトルクに維持しつつ、各スイッチSUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLが発生する熱量を同等にすることができる。これにより、ロータ31の回転停止状態を維持しつつ、昇温制御において発生する熱量を好適に増加させる。
【0055】
図8に、制御装置60により実行される昇温制御のブロック図を示す。
【0056】
3相目標振幅算出部61は、制御周期毎に、上位制御装置80から目標熱量Q*を取得し、取得した目標熱量Q*に基づいて、U相目標電流の振幅Iuamp*、V相目標電流の振幅Ivamp*、及びW相目標電流の振幅Iwamp*を算出する。各振幅Iuamp*,Ivamp*,Iwamp*は同じ値である。3相目標振幅算出部61は、例えば、目標熱量Q*が大きいほど、各振幅Iuamp*,Ivamp*,Iwamp*を大きく算出する。3相目標振幅算出部61は、例えば、目標熱量Q*及び各振幅Iuamp*,Ivamp*,Iwamp*が関係付けられたマップ情報と、取得した目標熱量Q*とに基づいて、各振幅Iuamp*,Ivamp*,Iwamp*を算出すればよい。
【0057】
2相目標振幅算出部62は、制御周期毎に、各相電流の振幅Iuamp*,Ivamp*,Iwamp*と、角度センサ53により検出された電気角θeとに基づいて、3相固定座標系における各相電流の振幅Iuamp*,Ivamp*,Iwamp*を、2相回転座標系(dq座標系)におけるd軸目標電流Id*の振幅Idamp*及びq軸目標電流Iq*の振幅Iqamp*に変換する。
【0058】
2相変換部63は、制御周期毎に、相電流センサ51の検出値と、検出された電気角θeとに基づいて、3相固定座標系におけるU,V,W相電流を、dq座標系におけるd軸電流Idr及びq軸電流Iqrに変換する。
【0059】
定数算出部64は、制御周期毎に、d軸インダクタンスLd、q軸インダクタンスLq及び結合インダクタンスLmfを算出する。詳しくは、定数算出部64は、d軸電流Idr、界磁電流Ifr、電気角θe及びd軸インダクタンスLdが関係付けられたマップ情報と、2相変換部63により算出されたd軸電流Idrと、界磁電流センサ52により検出された界磁電流Ifrと、角度センサ53により検出された電気角θeとに基づいて、d軸インダクタンスLdを算出する。定数算出部64は、例えば、d軸電流Idが大きかったり、界磁電流Ifrが大きかったりするほど、d軸インダクタンスLdを小さく算出すればよい。
【0060】
定数算出部64は、d軸電流Idr、界磁電流Ifr、電気角θe及び結合インダクタンスLmfが関係付けられたマップ情報と、算出されたd軸電流Idrと、検出された界磁電流Ifrと、検出された電気角θeとに基づいて、結合インダクタンスLmfを算出する。定数算出部64は、例えば、d軸電流Idが大きかったり、界磁電流Ifrが大きかったりするほど、結合インダクタンスLmfを小さく算出すればよい。
【0061】
定数算出部64は、q軸電流Iqr、電気角θe及びq軸インダクタンスLqが関係付けられたマップ情報と、2相変換部63により算出されたq軸電流Iqrと、検出された電気角θeとに基づいて、q軸インダクタンスLqを算出する。定数算出部64は、例えば、q軸電流Iqrが大きいほど、q軸インダクタンスLqを小さく算出すればよい。
【0062】
初期界磁振幅算出部65は、制御周期毎に、2相目標振幅算出部62により算出されたd軸目標電流Id*の振幅Idamp*、定数算出部64により算出された各インダクタンスLd,Lq,Lmf、及び上式(eq5)に基づいて、界磁目標電流If*の振幅の初期値である初期界磁振幅Ifampiniを算出する。つまり、「Ifampini=(Lq-Ld)/Lmf×Idamp*」である。
【0063】
目標界磁算出部66は、初期界磁振幅算出部65により算出された初期界磁振幅Ifampiniを振幅とし、d,q軸目標電流Id*,Iq*と同じ周波数で変動する界磁目標電流If*を算出する。界磁目標電流If*の周波数は、界磁電流Ifrの制御応答性を満足できる周波数に設定されており、例えば、5Hz以上の周波数又は10Hz以上の周波数に設定されている。なお、本実施形態において、目標界磁算出部66が、界磁目標電流If*を算出する「目標値算出部」に相当する。
【0064】
界磁制御部67は、目標界磁算出部66により算出された界磁目標電流If*に、検出された界磁電流Ifrをフィードバック制御すべく、界磁通電回路40の各スイッチSH1,SL1,SH2,SL2のゲート駆動信号を生成する。界磁制御部67は、生成したゲート駆動信号を各スイッチSH1,SL1,SH2,SL2を駆動するドライブ回路に出力する。これにより、界磁電流Ifrが正弦波状の界磁目標電流If*に制御される。
【0065】
目標界磁算出部66は、界磁制御部67による界磁電流Ifrの制御が開始された後、2相変換部63によって算出されたd軸電流Idrを制御周期毎に都度取得し、取得したd軸電流Idrに基づいて、界磁目標電流If*の正の振幅Ifpを調整する。
【0066】
具体的には、目標界磁算出部66は、都度取得したd軸電流Idrに基づいて、d軸電流Idrの負の振幅Idamprmを算出する。目標界磁算出部66は、算出したd軸電流Idrの負の振幅Idamprmと、2相目標振幅算出部62により算出されたq軸目標電流Iq*の振幅Iqamp*との差の絶対値を算出する。目標界磁算出部66は、算出した絶対値が電流閾値Ithを超えていると判定した場合、界磁目標電流If*の正の振幅Ifpを調整する。この調整処理において、目標界磁算出部66は、例えば、d軸電流Idrの負の振幅Idamprmがq軸目標電流Iq*の振幅Iqamp*よりも小さいと判定した場合、界磁目標電流If*の正の振幅Ifpを増加させればよく、具体的には例えば、「Iqamp*-Idamprm」が大きいほど、正の振幅Ifpの増加量を大きくすればよい。また、この調整処理において、目標界磁算出部66は、例えば、d軸電流Idrの負の振幅Idamprmがq軸目標電流Iq*の振幅Iqamp*よりも大きいと判定した場合、界磁目標電流If*の正の振幅Ifpを減少させればよく、具体的には例えば、「Idamprm-Iqamp*」が大きいほど、正の振幅Ifpの減少量を大きくすればよい。目標界磁算出部66は、d軸電流Idrの負の振幅Idamprmと、q軸目標電流Iq*の振幅Iqamp*との差の絶対値が電流閾値Ith以下になるまで、d軸電流Idrの負の振幅Idamprmを算出するたびに界磁目標電流If*の正の振幅Ifpの調整処理を行う。
【0067】
目標界磁算出部66は、界磁制御部67による界磁電流Ifrの制御が開始された後、算出されたd軸電流Idrを制御周期毎に都度取得し、取得したd軸電流Idrに基づいて、界磁目標電流If*の負の振幅Ifmを調整する。
【0068】
具体的には、目標界磁算出部66は、都度取得したd軸電流Idrに基づいて、d軸電流Idrの正の振幅Idamprpを算出する。目標界磁算出部66は、算出したd軸電流Idrの正の振幅Idamprpと、算出されたq軸目標電流Iq*の振幅Iqamp*との差の絶対値を算出する。目標界磁算出部66は、算出した絶対値が電流閾値Ithを超えていると判定した場合、界磁目標電流If*の負の振幅Ifmを調整する。この調整処理において、目標界磁算出部66は、例えば、d軸電流Idrの正の振幅Idamprpがq軸目標電流Iq*の振幅Iqamp*よりも小さいと判定した場合、界磁目標電流If*の負の振幅Ifmを増加させればよく、具体的には例えば、「Iqamp*-Idamprp」が大きいほど、負の振幅Ifmの増加量を大きくすればよい。また、この調整処理において、目標界磁算出部66は、例えば、d軸電流Idrの正の振幅Idamprpがq軸目標電流Iq*の振幅Iqamp*よりも大きいと判定した場合、界磁目標電流If*の負の振幅Ifmを減少させればよく、具体的には例えば、「Idamprp-Iqamp*」が大きいほど、負の振幅Ifmの減少量を大きくすればよい。目標界磁算出部66は、d軸電流Idrの正の振幅Idamprpと、q軸目標電流Iq*の振幅Iqamp*との差の絶対値が電流閾値Ith以下になるまで、d軸電流Idrの正の振幅Idamprpを算出するたびに界磁目標電流If*の負の振幅Ifmの調整処理を行う。
【0069】
目標d軸電流算出部68は、制御周期毎に、定数算出部64により算出された各インダクタンスLd,Lq,Lmf、目標界磁算出部66により算出された界磁目標電流If*及び上式(eq5)に基づいて、目標d軸電流Id*を算出する。界磁目標電流If*の振幅が目標界磁算出部66により調整された場合、目標d軸電流算出部68は、振幅が調整された界磁目標電流If*を目標d軸電流Id*の算出に用いる。なお、本実施形態において、目標d軸電流算出部68が、d軸目標電流Id*を算出する「目標値算出部」に相当する。
【0070】
3相制御部69は、2相目標振幅算出部62により算出されたq軸目標電流Iq*の振幅Iqamp*を振幅とし、d軸目標電流Id*と位相が90度異なってかつd軸目標電流Id*と振幅が同じq軸目標電流Iq*を算出する。なお、本実施形態において、69が、q軸目標電流Iq*を算出する「目標値算出部」に相当する。
【0071】
3相制御部69は、算出したq軸目標電流Iq*に、2相変換部63により算出されたq軸電流Iqrをフィードバック制御するとともに、算出されたd軸電流Idrを、目標d軸電流算出部68により算出された目標d軸電流Id*にフィードバック制御すべく、インバータ20の各スイッチSUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLのゲート駆動信号を生成する「電機子制御部」として機能する。この生成処理において、電気角θeと、電圧センサ50により検出された電源Vdcとが用いられる。3相制御部69は、生成したゲート駆動信号を各スイッチSUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLを駆動するドライブ回路に出力する。これにより、d軸電流Idrが正弦波状のd軸目標電流Id*に制御されるとともに、q軸電流Iqrが正弦波状のq軸目標電流Iq*に制御される。
【0072】
図9は、制御装置60により実行される昇温制御の処理手順を示すフローチャートである。この処理は、例えば、外部充電器による蓄電池10の充電が開始されたと制御装置60により判定された場合に実行される。
【0073】
ステップS10では、蓄電池10の昇温要求があるか否かを判定する。本実施形態では、検出された蓄電池10の温度Trが目標温度T*を下回っている場合に昇温要求があると判定する。なお、本実施形態において、ステップS10の処理が「判定部」に相当する。
【0074】
ステップS10において昇温要求があると判定した場合には、ステップS11に進み、界磁目標電流If*の決定処理を行う。以下、図10を用いて、この処理について説明する。
【0075】
ステップS20では、上位制御装置80から目標熱量Q*を取得する。なお、上位制御装置80は、例えば、目標温度T*から蓄電池10の温度Trを差し引いた値が大きいほど、目標熱量Q*を大きく算出すればよい。
【0076】
ステップS21では、3相目標振幅算出部61において、ステップS20で取得した目標熱量Q*に基づいて、U相目標電流の振幅Iuamp*、V相目標電流の振幅Ivamp*、及びW相目標電流の振幅Iwamp*を算出する。
【0077】
ステップS22では、2相目標振幅算出部62において、ステップS21で算出した各相電流の振幅Iuamp*,Ivamp*,Iwamp*と、電気角θeとに基づいて、d軸目標電流Id*の振幅Idamp*及びq軸目標電流Iq*の振幅Iqamp*を算出する。
【0078】
ステップS23では、2相変換部63において、相電流センサ51の検出値と、電気角θeとに基づいて、d軸電流Idr及びq軸電流Iqrを算出する。
【0079】
ステップS24では、定数算出部64において、d軸電流Idr、界磁電流Ifr、電気角θe及びd軸インダクタンスLdが関係付けられたマップ情報と、ステップS23で算出したd軸電流Idrと、界磁電流Ifrと、電気角θeとに基づいて、d軸インダクタンスLdを算出する。
【0080】
また、d軸電流Idr、界磁電流Ifr、電気角θe及び結合インダクタンスLmfが関係付けられたマップ情報と、算出したd軸電流Idrと、界磁電流Ifrと、電気角θeとに基づいて、結合インダクタンスLmfを算出する。
【0081】
また、q軸電流Iqr、電気角θe及びq軸インダクタンスLqが関係付けられたマップ情報と、ステップS23で算出したq軸電流Iqrと、電気角θeとに基づいて、q軸インダクタンスLqを算出する。
【0082】
ステップS25では、初期界磁振幅算出部65において、ステップS22で算出したd軸目標電流Id*の振幅Idamp*、ステップS24で算出した各インダクタンスLd,Lq,Lmf、及び上式(eq5)に基づいて、初期界磁振幅Ifampiniを算出する。
【0083】
ステップS26では、目標界磁算出部66において、ステップS25で算出した初期界磁振幅Ifampiniに基づいて、界磁目標電流If*を算出する。
【0084】
ステップS27では、2相変換部63において、ステップS23と同様にd軸電流Idr及びq軸電流Iqrを算出する。ステップS28では、定数算出部64において、ステップS24と同様に各インダクタンスLd,Lq,Lmfを算出する。
【0085】
ステップS29では、目標d軸電流算出部68において、ステップS26で算出した界磁目標電流If*と、ステップS28で算出した各インダクタンスLd,Lq,Lmfと、上式(eq5)とに基づいて、d軸目標電流Id*を算出する。
【0086】
ステップS30では、3相制御部69において、ステップS22で算出したq軸目標電流Iq*の振幅Iqamp*に基づいて、ステップS29で算出したd軸目標電流Id*と位相が90度異なってかつd軸目標電流Id*と振幅が同じq軸目標電流Iq*を算出する。
【0087】
ステップS31では、界磁制御部67において、ステップS26で算出した界磁目標電流If*に界磁電流Ifrをフィードバック制御すべく、界磁通電回路40の各SH1,SL1,SH2,SL2のスイッチング制御を行う。
【0088】
ステップS32では、3相制御部69において、ステップS29で算出したd軸目標電流Id*にステップS27で算出したd軸電流Idrをフィードバック制御するとともに、ステップS30で算出したq軸目標電流Iq*にステップS27で算出したq軸電流Iqrをフィードバック制御すべく、インバータ20の各スイッチSUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLのスイッチング制御を行う。
【0089】
ステップS33では、目標界磁算出部66において、d軸電流Idrの正の振幅Idamprpと、ステップS22で算出したq軸目標電流Iq*の振幅Iqamp*との差の絶対値を算出する。そして、算出した絶対値が電流閾値Ithを超えていると判定した場合、ステップS34に進み、界磁目標電流If*の負の振幅Ifmを調整する。また、ステップS33では、d軸電流Idrの負の振幅Idamprmと、q軸目標電流Iq*の振幅Iqamp*との差の絶対値を算出する。そして、算出した絶対値が電流閾値Ithを超えていると判定した場合、ステップS34に進み、界磁目標電流If*の正の振幅Ifpを調整する。ステップS34の後、ステップS26では、調整された正の振幅Ifp及び負の振幅Ifmを有する界磁目標電流If*を算出する。
【0090】
ステップS33において、d軸電流Idrの正の振幅Idamprpとq軸目標電流Iq*の振幅Iqamp*との差の絶対値が電流閾値Ith以下になって、かつ、d軸電流Idrの負の振幅Idamprmとq軸目標電流Iq*の振幅Iqamp*との差の絶対値が電流閾値Ith以下になると判定した場合、界磁目標電流If*の正の振幅Ifp及び負の振幅Ifmを確定し、図9のステップS12に進む。
【0091】
ステップS12では、界磁制御部67において、振幅が確定した正弦波状の界磁目標電流If*に界磁電流Ifrをフィードバック制御すべく、界磁通電回路40の各SH1,SL1,SH2,SL2のスイッチング制御を行う。
【0092】
また、ステップS12では、3相制御部69において、正弦波状のd,q軸目標電流Id*,Iq*にd,q軸電流Idr,Iqrをフィードバック制御すべく、インバータ20の各スイッチSUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLのスイッチング制御を行う。このフィードバック制御におけるd軸目標電流Id*は、振幅が確定した界磁目標電流If*と、定数算出部64により算出された各インダクタンスLd,Lq,Lmfとに基づいて、目標d軸電流算出部68により算出される。なお、各インダクタンスLd,Lq,Lmfに起因してd軸目標電流Id*に高調波成分が含まれる。ただし、電機子巻線のインダクタンスは界磁巻線32のインダクタンスと比較して非常に小さいため、d軸目標電流Id*に高調波成分が含まれたとしても、高調波成分が含まれたd軸目標電流Id*にd軸電流Idrを制御できる。
【0093】
ステップS12では、昇温対象の温度Tobjが目標温度T*に到達したか否かを判定する。本実施形態では、上述したように、昇温対象が蓄電池10のため、昇温対象の温度Tobjは蓄電池10の温度Trである。
【0094】
ステップS12において蓄電池10の温度Trが目標温度T*未満であると判定した場合には、ステップS12のスイッチング制御を継続する。一方、蓄電池10の温度Trが目標温度T*に到達したと判定した場合には、昇温制御を停止させる。
【0095】
ちなみに、昇温制御の実行中において、循環経路400の冷却水の温度低下を抑制するために、ファン403の回転駆動を停止させておいてもよい。
【0096】
以上説明したように、本実施形態では、各相電流の振幅が同等になるように、正弦波状の界磁目標電流If*の正の振幅Ifp及び負の振幅Ifmが個別に調整される。この場合、界磁電流Ifrを高調波成分に追従させる必要がないため、界磁電流の制御応答性が低いときであっても、各相電流の振幅を同等にできる。その結果、インバータ20の各スイッチSUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLの発熱量を同等にでき、昇温制御における発熱量を増加できる。これにより、蓄電池10を迅速に昇温させることができ、ひいては外部充電による蓄電池10の充電時間を短縮できる。この際、ロータ31の回転停止状態を維持できるため、外部充電中において車両のユーザに違和感を与えることを防止できる。
【0097】
<第1実施形態の変形例>
・定数算出部64において、d,q軸電流Idr,Iqrに代えて、例えば1制御周期前に算出されたd,q軸目標電流Id*,Iq*が用いられてもよい。また、定数算出部64において、界磁電流Ifrに代えて、例えば1制御周期前に算出された界磁目標電流If*が用いられてもよい。
【0098】
・昇温制御中における電機子電流ベクトルIvt_3phと界磁電流ベクトルIvt_fldとの位相差αは、界磁電流ベクトルIvt_fldがリラクタンストルクを減少させる成分を有するのであれば、180度に限らず、図11に示す角度であってもよい。図11に示す位相差αは、電機子電流ベクトルIvt_3phに対して界磁電流ベクトルIvt_fldが時計回りに進む場合を正としている。位相差αは、回転電機30の発生トルクTrqがトルク閾値Trqthよりも小さくなることを条件として、例えば、90度<α<270度に設定され、望ましくは150度≦α≦210度に設定され、より望ましくは170度≦α≦190度に設定されればよい。
【0099】
・回転電機30は、q軸インダクタンスLqがd軸インダクタンスLdよりも大きい特性である逆突極性を有していてもよい。この場合、上式(eq5)に基づくと、図12に示すように、昇温制御において、界磁電流ベクトルIvt_fldと電機子電流ベクトルIvt_3phとの位相差αが0度になるように、インバータ20及び界磁通電回路40がスイッチング制御されればよい。この場合、目標界磁算出部66は、d軸電流Idrの負の振幅Idamprmがq軸目標電流Iq*の振幅Iqamp*よりも小さいと判定した場合、例えば、界磁目標電流If*の正の振幅Ifpではなく負の振幅Ifmを増加させればよい。一方、目標界磁算出部66は、d軸電流Idrの負の振幅Idamprmがq軸目標電流Iq*の振幅Iqamp*よりも大きいと判定した場合、例えば、負の振幅Ifmを減少させればよい。また、目標界磁算出部66は、d軸電流Idrの正の振幅Idamprpがq軸目標電流Iq*の振幅Iqamp*よりも小さいと判定した場合、例えば、界磁目標電流If*の負の振幅Ifmではなく正の振幅Ifpを増加させればよい。一方、目標界磁算出部66は、d軸電流Idrの正の振幅Idamprpがq軸目標電流Iq*の振幅Iqamp*よりも大きいと判定した場合、例えば、正の振幅Ifpを減少させればよい。
【0100】
なお、逆突極性を有する場合の位相差αは、界磁電流ベクトルIvt_fldがリラクタンストルクを減少させる成分を有するのであれば、0度に限らず、図13及び図14に示す角度であってもよい。位相差αは、回転電機30の発生トルクTrqがトルク閾値Trqthよりも小さくなることを条件として、例えば、-90度<α<90度に設定され、望ましくは-30度≦α≦30度に設定され、より望ましくは-10度≦α≦10度に設定される。なお、図13及び図14には、位相差αが負になる場合を示す。
【0101】
・制御装置60は、トルク閾値Trqthを可変とすることができる。例えば、制御装置60は、車両のパーキングブレーキが作動状態であると判定した場合、作動状態でない場合よりもトルク閾値Trqthを大きく設定する。
【0102】
また、制御装置60は、車両の走行路面温度を取得する取得部を有し、取得した路面温度に基づいてトルク閾値Trqthを変更してもよい。ここでは、路面温度及びトルク閾値Trqthが関係付けられたマップ情報が用いられればよい。
【0103】
・制御装置60は、昇温制御の実行中において、車両に備えられる機械式ブレーキ装置により車両の車輪に制動トルクを付与するようにしてもよい。
【0104】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図15に示すように、定数算出部64aは、マップ情報に代えて、物理モデルに基づいて、各インダクタンスLd,Lq,Lmfを算出する。
【0105】
詳しくは、定数算出部64aは、d軸電流Idr、界磁電流Ifr及び電気角θeを入力とし、d軸インダクタンスLd及び結合インダクタンスLmfを出力とするd軸磁気回路の物理モデルに基づいて、d軸インダクタンスLd及び結合インダクタンスLmfを算出する。また、定数算出部64aは、q軸電流Iqr及び電気角θeを入力とし、q軸インダクタンスLqを出力とするq軸磁気回路の物理モデルに基づいて、q軸インダクタンスLqを算出する。
【0106】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、昇温制御における界磁目標電流If*の算出方法が変更されている。図16は、本実施形態に係る昇温制御のブロック図である。本実施形態において、2相目標振幅算出部62は、d軸目標電流Id*の振幅Idamp*を算出しない。
【0107】
初期界磁振幅算出部70は、制御周期毎に、上位制御装置80から取得した目標熱量Q*及び電気角θeに基づいて、界磁目標電流If*の正の振幅Ifp及び負の振幅Ifmを算出する。詳しくは、初期界磁振幅算出部70は、目標熱量Q*、電気角θe、正の振幅Ifp及び負の振幅Ifmが関係付けられたマップ情報と、取得した目標熱量Q*及び電気角θeに基づいて、正の振幅Ifp及び負の振幅Ifmを算出する。初期界磁振幅算出部70は、例えば、目標熱量Q*が大きいほど、正の振幅Ifp及び負の振幅Ifmを大きく算出する。界磁電流は、上式(eq5)に示したように各インダクタンスLd,Lq,Lmfを介してd軸電流と関係付けられる。また、d軸インダクタンスLd及び結合インダクタンスLmfと相関があるd軸電流は目標熱量Q*と相関があり、q軸インダクタンスLqと相関があるq軸電流は目標熱量Q*と相関がある。また、各インダクタンスLd,Lq,Lmfは電気角と相関がある。このため、目標熱量Q*、電気角θe、正の振幅Ifp及び負の振幅Ifmの関係を紐付けた情報として上記マップ情報を定めることができる。
【0108】
目標界磁算出部66は、初期界磁振幅算出部70により算出された正の振幅Ifp及び負の振幅Ifmを有し、d,q軸目標電流Id*,Iq*と同じ周波数で変動する界磁目標電流If*を算出する。この算出処理の後、本実施形態では、界磁目標電流If*の各振幅Ifp,Ifmは変更されない。これにより、制御装置60の演算負荷の低減を図っている。
【0109】
図17に、制御装置60により実行される界磁目標電流If*の決定処理の手順を示す。
【0110】
ステップS40では、上位制御装置80から目標熱量Q*を取得する。
【0111】
ステップS41では、3相目標振幅算出部61において、ステップS40で取得した目標熱量Q*に基づいて、U相目標電流の振幅Iuamp*、V相目標電流の振幅Ivamp*、及びW相目標電流の振幅Iwamp*を算出する。
【0112】
ステップS42では、2相目標振幅算出部62において、ステップS41で算出した各相電流の振幅Iuamp*,Ivamp*,Iwamp*と、電気角θeとに基づいて、q軸目標電流Iq*の振幅Iqamp*を算出する。
【0113】
ステップS43では、初期界磁振幅算出部70において、ステップS40で取得した目標熱量Q*及び電気角θeと、目標熱量Q*、電気角θe及び各振幅Ifp,Ifmが関係付けられたマップ情報とに基づいて、界磁目標電流If*の正の振幅Ifp及び負の振幅Ifmを算出する。
【0114】
ステップS44では、目標界磁算出部66において、ステップS43で算出した正の振幅Ifp及び負の振幅Ifmに基づいて、界磁目標電流If*を算出する。
【0115】
ステップS45では、2相変換部63において、相電流センサ51の検出値と、電気角θeとに基づいて、d軸電流Idr及びq軸電流Iqrを算出する。
【0116】
ステップS46では、定数算出部64において、d軸電流Idr、界磁電流Ifr、電気角θe及びd軸インダクタンスLdが関係付けられたマップ情報と、ステップS45で算出したd軸電流Idrと、界磁電流Ifrと、電気角θeとに基づいて、d軸インダクタンスLdを算出する。また、d軸電流Idr、界磁電流Ifr、電気角θe及び結合インダクタンスLmfが関係付けられたマップ情報と、算出したd軸電流Idrと、界磁電流Ifrと、電気角θeとに基づいて、結合インダクタンスLmfを算出する。
【0117】
また、q軸電流Iqr、電気角θe及びq軸インダクタンスLqが関係付けられたマップ情報と、ステップS45で算出したq軸電流Iqrと、電気角θeとに基づいて、q軸インダクタンスLqを算出する。
【0118】
ステップS47では、目標d軸電流算出部68において、ステップS44で算出した界磁目標電流If*と、ステップS46で算出した各インダクタンスLd,Lq,Lmfと、上式(eq5)とに基づいて、d軸目標電流Id*を算出する。
【0119】
ステップS48では、3相制御部69において、ステップS42で算出したq軸目標電流Iq*の振幅Iqamp*に基づいて、ステップS47で算出したd軸目標電流Id*と位相が90度異なってかつd軸目標電流Id*と振幅が同じq軸目標電流Iq*を算出する。その後、図9のステップS12に進む。
【0120】
以上説明した本実施形態によれば、ステップS43において界磁目標電流If*の各振幅Ifp,Ifmの算出後、各振幅Ifp,Ifmの調整処理が不要である。このため、昇温制御における制御装置60の演算負荷を低減することができる。
【0121】
<第3実施形態の変形例>
初期界磁振幅算出部70において電気角θeが用いられなくてもよい。この場合、初期界磁振幅算出部70は、目標熱量Q*、正の振幅Ifp及び負の振幅Ifmが関係付けられたマップ情報と、取得した目標熱量Q*に基づいて、正の振幅Ifp及び負の振幅Ifmを算出すればよい。
【0122】
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、目標界磁算出部66において、d軸電流Idrに代えて、スイッチ温度センサ55の検出値に基づいて界磁目標電流If*の各振幅Ifp,Ifmが調整される。図18は、本実施形態に係る昇温制御のブロック図である。
【0123】
目標界磁算出部66は、初期界磁振幅算出部65により算出された初期界磁振幅Ifampiniを振幅とし、d,q軸目標電流Id*,Iq*と同じ周波数で変動する界磁目標電流If*を算出する。目標界磁算出部66は、界磁制御部67による界磁電流Ifrの制御が開始された後、スイッチ温度センサ55の温度検出値Tswを制御周期毎に都度取得し、取得した温度検出値Tswに基づいて、界磁目標電流If*の正の振幅Ifp及び負の振幅Ifmを調整する。以下、この調整方法の一例について説明する。
【0124】
目標界磁算出部66は、検出された各スイッチSUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLの温度の平均値Taveを算出する。また、目標界磁算出部66は、検出された各スイッチSUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLの温度のうち、平均値Taveからの乖離が最も大きい温度である最大乖離温度Tbを算出する。目標界磁算出部66は、最大乖離温度Tbが平均値Taveに近づくように、界磁目標電流If*の正の振幅Ifp及び負の振幅Ifmを調整する。
【0125】
目標界磁算出部66は、最大乖離温度Tbと平均値Taveとの差の絶対値が温度閾値Tth以下になるまで、スイッチ温度センサ55の温度検出値Tswに基づいて界磁目標電流If*の各振幅Ifp,Ifmの調整処理を行う。
【0126】
図19に、制御装置60により実行される界磁目標電流If*の決定処理の手順を示す。なお、図19の処理において、ステップS50~S62の処理については、先の図10のステップS20~S32の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0127】
ステップS63では、スイッチ温度センサ55の温度検出値Tswに基づいて、上記平均値Tave及び最大乖離温度Tbを算出する。そして、最大乖離温度Tbと平均値Taveとの差の絶対値が温度閾値Tthを超えていると判定した場合、ステップS64に進み、界磁目標電流If*の正の振幅Ifp及び負の振幅Ifmを調整する。
【0128】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態の効果に準じた効果を奏することができる。
【0129】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0130】
・第4実施形態の目標界磁算出部66において、スイッチ温度センサ55の温度検出値Tswに代えて、冷却水温センサ56の温度検出値が用いられてもよい。冷却水温センサ56の温度検出値と、スイッチ温度センサ55の温度検出値との間には相関がある。
【0131】
・第2実施形態で説明した物理モデルの構成を、第3,第4実施形態に適用してもよい。
【0132】
・上記各実施形態において、回転電機としては、界磁極として界磁巻線のみを備えるものに限らず、界磁巻線に加えて永久磁石を備えるものであってもよい。この場合、永久磁石により発生する磁束をφmとすると、上式(eq1)に代えて下式(eq6)が成立する。
【0133】
Trq=TM+TR
=P・(φf+φm)・Iq+P・(Ld-Lq)・Id・Iq …(eq6)
上式(eq6)においてTrq=0とすると、下式(eq7)が導かれる。
【0134】
φf=-(Ld-Lq)・Id-φm …(eq7)
上式(eq2),(eq7)から下式(eq8)が導かれる。
【0135】
If∝-(Ld-Lq)・Id/Nf-φm/Nf …(eq8)
上式(eq8)によれば、第1実施形態で説明した交流の界磁電流Ifに「-φm/Nf」に対応する直流成分を重畳した界磁電流が界磁目標電流If*に設定されることにより、ロータ31の回転停止状態を維持することができる。
【0136】
・回転電機としては、界磁巻線がロータに備えられるものに限らず、ハイブリッド界磁フラックススイッチングモータ(HEFSM)等、界磁巻線がステータに備えられるものであってもよい。
【0137】
・回転電機としては、同期機に限らず、誘導機等の非同期機であってもよい。
【0138】
・回転電機としては、ロータ及びステータが径方向に対向するラジアル型のものに限らず、ロータ及びステータが回転軸の軸方向に対向するアキシャル型のものであってもよい。
【0139】
・回転電機としては、星形結線されるものに限らず、Δ結線されるものであってもよい。また、回転電機及びインバータとしては、3相のものに限らず、2相のもの、又は4相以上のものであってもよい。
【0140】
・昇温制御による昇温対象を、例えば、循環経路400の冷却水としてもよい。冷却水を車室内暖房の熱源として利用する空調装置が車両に備えられる場合、昇温制御により、暖房の熱源の温度を迅速に上昇させることができる。
【0141】
・熱伝達部としては、冷却流体として冷却水を用いるものに限らず、例えば、冷却流体として気体(空気)を用いる空冷式のものであってもよいし、金属製のヒートシンクであってもよい。熱伝達部としてヒートシンクが用いられる場合、例えば、ヒートシンクにインバータ等の電力変換器及び蓄電池が設けられていればよい。
【0142】
・インバータのスイッチは、NチャネルMOSFETに限らず、例えばIGBTであってもよい。この場合、IGBTにフリーホイールダイオードが逆並列接続されていればよい。
【0143】
・インバータ等の電力変換器に接続される蓄電部としては、蓄電池に限らず、例えば、大容量の電気二重層キャパシタ、又は蓄電池及び電気二重層キャパシタの双方を備えるものであってもよい。
【0144】
・制御装置が搭載される移動体としては、車両に限らず、例えば、航空機又は船舶であってもよい。また、制御装置の搭載先は、移動体に限らず、定置式の装置であってもよい。
【0145】
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0146】
以下、上述した各実施形態から抽出される特徴的な構成を記載する。
[構成1]
蓄電部(10)と、
複数相の電機子巻線(34U~34W)及び界磁巻線(32)を有する回転電機(20)と、
前記蓄電部及び前記電機子巻線を電気的に接続し、各相の上,下アームスイッチ(SUH~SWL)を有する第1電力変換器(20)と、
前記蓄電部及び前記界磁巻線を電気的に接続する第2電力変換器(40)と、
を備えるシステムに適用される電力変換器の制御装置(60)において、
前記界磁巻線に流す界磁目標電流(If*)、及び前記電機子巻線に流すd,q軸目標電流(Id*,Iq*)を算出する目標値算出部と、
算出された前記d軸目標電流に前記電機子巻線に流れるd軸電流(Idr)を制御するとともに、算出された前記q軸目標電流に前記電機子巻線に流れるq軸電流(Iqr)を制御すべく、各相の前記上,下アームスイッチのスイッチング制御を行う電機子制御部と、
算出された前記界磁目標電流に前記界磁巻線に流れる界磁電流(Ifr)を制御すべく、前記第2電力変換器のスイッチング制御を行う界磁制御部と、
を備え、
前記目標値算出部は、
正弦波状の前記界磁目標電流を算出し、
前記回転電機の発生トルクを、前記回転電機のロータの回転停止状態を維持可能なトルクにするとの条件、及びdq座標系において前記界磁巻線に流れる電流ベクトルが前記回転電機のリラクタンストルクを減少させる成分を有するとの条件を満たすように、算出した前記界磁目標電流と、前記回転電機のインダクタンス(Ld,Lq,Lmf)とに基づいて、前記d軸目標電流を算出する、電力変換器の制御装置。
[構成2]
前記目標値算出部は、各相の前記電機子巻線に流れる電流(Iu,Iv,Iw)の振幅が同等になるように、前記界磁目標電流の正の振幅(Ifp)及び負の振幅(Ifm)を個別に算出する、構成1に記載の電力変換器の制御装置。
[構成3]
前記目標値算出部は、
各相の前記上,下アームスイッチのスイッチング制御により発生する熱量の目標値である目標熱量(Q*)に基づいて、前記正の振幅及び前記負の振幅を算出し、
算出した前記正の振幅及び前記負の振幅に基づいて、正弦波状の前記界磁目標電流を算出する、構成2に記載の電力変換器の制御装置。
[構成4]
前記目標値算出部は、前記目標熱量及び前記ロータの電気角に基づいて、前記正の振幅及び前記負の振幅を算出する、構成3に記載の電力変換器の制御装置。
[構成5]
前記目標値算出部は、
前記インダクタンスに基づいて、前記界磁目標電流の初期値を算出し、
前記初期値の算出後、前記d軸電流の振幅が前記q軸電流の振幅と同等になるように、前記初期値における前記正の振幅及び前記負の振幅を調整する、構成2に記載の電力変換器の制御装置。
[構成6]
前記目標値算出部は、
前記電機子巻線に流れる相電流を検出する電流センサ(51)の検出値に基づいて、前記電機子巻線に流れる前記d軸電流を算出し、
算出した前記d軸電流に基づいて、前記正の振幅及び前記負の振幅を調整する、構成5に記載の電力変換器の制御装置。
[構成7]
前記目標値算出部は、
前記インダクタンスに基づいて、前記界磁目標電流の初期値を算出し、
前記初期値の算出後、各相の前記上,下アームスイッチの温度が近づくように、前記初期値における前記正の振幅及び前記負の振幅を調整する、構成2に記載の電力変換器の制御装置。
[構成8]
前記目標値算出部は、各相の前記上,下アームスイッチの温度又は該温度の相関値を検出する温度センサの検出値に基づいて、前記正の振幅及び前記負の振幅を調整する、構成7に記載の電力変換器の制御装置。
[構成9]
前記目標値算出部は、前記インダクタンスが関係付けられたマップ情報、又は前記インダクタンスを出力とする物理モデルに基づいて、前記インダクタンスを算出する、構成1~8のいずれか1つに記載の電力変換器の制御装置。
[構成10]
前記システムには、前記第1電力変換器において発生した熱を昇温対象(10)に伝達する熱伝達部(400,401)が備えられ、
前記昇温対象の昇温要求があるか否かを判定する判定部を備え、
前記目標値算出部は、前記昇温要求があると判定された場合、前記界磁目標電流及び前記d,q軸目標電流を算出する、構成1~9のいずれか1つに記載の電力変換器の制御装置。
[構成11]
前記回転電機は、d軸インダクタンスがq軸インダクタンスよりも大きい特性を有し、
前記目標値算出部は、dq座標系において前記界磁巻線に流れる電流ベクトルが、dq座標系において前記電機子巻線に流れる電流ベクトルの位相とは180度異なる成分を有するとの条件を満たすように、前記d軸目標電流を算出する、構成1~10のいずれか1つに記載の電力変換器の制御装置。
[構成12]
前記回転電機は、q軸インダクタンスがd軸インダクタンスよりも大きい特性を有し、
前記制御部は、dq座標系において前記界磁巻線に流れる電流ベクトルが、dq座標系において前記電機子巻線に流れる電流ベクトルの位相と同じ成分を有するとの条件を満たすように、前記d軸目標電流を算出する、構成1~10のいずれか1つに記載の電力変換器の制御装置。
[構成13]
前記第2電力変換器は、双方向に電流流通が可能な上,下アームスイッチ(SH1,SL1,SH2,SL2)の直列接続体を二組備える、構成1~12のいずれか1つに記載の電力変換器の制御装置。
【符号の説明】
【0147】
10…蓄電池、20…インバータ、30…回転電機、31…ロータ、34U~34W…U~W相巻線、40…界磁通電回路、60…制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19