(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156406
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】セパ穴用充填材、コンクリート構造物の製造方法、コンクリート構造物、セパレータ用コーティング材及びセパレータ
(51)【国際特許分類】
C04B 41/61 20060101AFI20241029BHJP
E04G 19/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C04B41/61
E04G19/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070839
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 健夫
(72)【発明者】
【氏名】刈茅 孝一
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 朱音
【テーマコード(参考)】
2E150
4G028
【Fターム(参考)】
2E150AA21
2E150LA00
4G028BA02
(57)【要約】
【課題】セパ穴及びその周囲の防水性を高め、コンクリート構造物を長期に安定した状態に保持することができる充填材を提供する。
【解決手段】本発明に係るセパ穴用充填材は、コンクリート構造物におけるセパ穴に用いられる充填材であり、陽イオン又は陰イオンを放出可能なイオン放出性化合物と、樹脂、セメントミルク、又はモルタルとを含み、前記イオン放出性化合物が、難水溶性塩を生成可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物におけるセパ穴に用いられる充填材であり、
陽イオン又は陰イオンを放出可能なイオン放出性化合物と、樹脂、セメントミルク、又はモルタルとを含み、
前記イオン放出性化合物が、難水溶性塩を生成可能である、セパ穴用充填材。
【請求項2】
前記難水溶性塩が、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、リン酸カルシウム、又は水酸化鉄である、請求項1に記載のセパ穴用充填材。
【請求項3】
前記イオン放出性化合物が、陽イオンを放出可能な化合物を含み、
前記陽イオンを放出可能な化合物が、ケイ酸カルシウム、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、又は炭酸水素カルシウムである、請求項1又は2に記載のセパ穴用充填材。
【請求項4】
前記イオン放出性化合物が、陰イオンを放出可能な化合物を含み、
前記陰イオンを放出可能な化合物が、リン酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、又は炭酸水素カルシウムである、請求項1又は2に記載のセパ穴用充填材。
【請求項5】
前記樹脂が、エポキシ樹脂、又は変性シリコーン樹脂を含む、請求項1又は2に記載のセパ穴用充填材。
【請求項6】
23℃及び20rpmでの粘度が、2000mPa・s以上50000mPa・s以下である、請求項1又は2に記載のセパ穴用充填材。
【請求項7】
23℃及び2rpmでの粘度の、23℃及び20rpmでの粘度に対する比が、3.0以上8.0以下である、請求項1又は2に記載のセパ穴用充填材。
【請求項8】
セパレータ及びセパレータコーンを用いて、セパ穴を有するコンクリート構造物本体を得る工程と、
前記コンクリート構造物本体の前記セパ穴に、請求項1又は2に記載のセパ穴用充填材を充填する工程とを備える、コンクリート構造物の製造方法。
【請求項9】
セパ穴を有するコンクリート構造物本体と、
前記コンクリート構造物本体の前記セパ穴に充填された充填材とを備え、
前記充填材が、請求項1又は2に記載のセパ穴用充填材により形成されている、コンクリート構造物。
【請求項10】
コンクリート構造物におけるセパレータに用いられるコーティング材であり、
陽イオン又は陰イオンを放出可能なイオン放出性化合物と、樹脂、セメントミルク、又はモルタルとを含み、
前記イオン放出性化合物が、難水溶性塩を生成可能である、セパレータ用コーティング材。
【請求項11】
前記樹脂が、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はポリオレフィン樹脂を含む、請求項10に記載のセパレータ用コーティング材。
【請求項12】
セパレータ本体と、
前記セパレータ本体の表面上に配置されたコーティング材とを備え、
前記コーティング材が、請求項10又は11に記載のセパレータ用コーティング材により形成されている、セパレータ。
【請求項13】
コンクリート構造物本体と、前記コンクリート構造物本体の内部に配置されたセパレータとを備え、
前記セパレータが、セパレータ本体と、前記セパレータ本体の表面上に配置されたコーティング材とを備え、
前記コーティング材が、請求項10又は11に記載のセパレータ用コーティング材により形成されている、コンクリート構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物におけるセパ穴に用いることができるセパ穴用充填材に関する。また、本発明は、上記セパ穴用充填材を用いるコンクリート構造物の製造方法及び上記セパ穴用充填材を用いたコンクリート構造物に関する。本発明は、セパレータに用いることができるセパレータ用コーティング材に関する。また、本発明は、上記セパレータ用コーティング材を用いたセパレータ及びコンクリート構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場でコンクリートを打設する際に、セパレータ(例えば、B型セパレータ及びBC型セパレータ)及びセパレータコーンを用いて、コンクリート型枠間の距離を保持する方法が知られている。このような方法では、打設されたコンクリートが十分に硬化した後に、コンクリート型枠及びセパレータコーンが除去され、コンクリート壁面には、セパレータコーンを除去した跡の穴(セパ穴)が形成される。コンクリート型枠及びセパレータコーンが除去された後も、セパレータは除去されずにコンクリート内部に残存しており、上記セパ穴からセパレータの端部が露出している。
【0003】
セパ穴及びセパレータの端部を処理せず放置した場合には、雨水及びコンクリートに付着した水分等がセパレータを介してコンクリート内部に浸潤し、コンクリート構造物の強度が徐々に低下することがある。また、セパレータが金属製であると、露出したセパレータの端部が錆びて膨張し、コンクリート構造物にひび割れ等が生じることがある。結果として、ひび割れから水分等がコンクリート内部に浸潤し、コンクリート構造物の状態変化が促進されることがある。
【0004】
コンクリート構造物の防水性を高めるために、専用の保護具が用いられることがある。
【0005】
下記の特許文献1には、防錆効果を有する大径部と、上記大径部よりも小さい径を有し、上記大径部の一端から段差をもって延設されており、かつ防錆効果を有する小径部とで構成されるコンクリート型枠セパレータ保護具が開示されている。特許文献1には、上記コンクリート型枠セパレータ保護具において、コンクリート型枠セパレータの雄ネジ部に上記大径部の雌ネジ部を螺合することにより、上記コンクリート型枠セパレータの端部を被包し、錆の発生を防止することができる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されているような保護具を用いて、セパ穴又はセパレータの端部を保護した場合には、保護具を設置してからある程度の期間が経過するまでは、セパ穴及びセパレータの端部を保護し、漏水を防止する(防水性を高める)ことができる。
【0008】
しかしながら、従来の保護具では、長期間経過すると(例えば、設置から20年~50年経過後)、保護具の劣化等によって、保護具とコンクリート構造物との界面において、界面剥離が生じることがある。また、地震等の外部応力によっても、保護具とコンクリート構造物との界面において、界面剥離が生じることがある。このため、従来の保護具では、設置後に、外部応力や環境条件の変化等により、セパ穴又はセパレータの端部、及びその周囲にてコンクリート構造物等に新たな亀裂や微細な空隙が発生すると、セパレータの端部に錆が発生したり、漏水が発生したりして、補修が必要となる。
【0009】
従来、コンクリート構造物のセパ穴及びセパレータと、その周囲とを、長期間にわたり自己治癒的に保護又は強化する方法は知られていない。
【0010】
本発明の目的は、セパ穴及びその周囲の防水性を高め、コンクリート構造物を長期に安定した状態に保持することができるセパ穴用充填材を提供することである。また、本発明の目的は、上記セパ穴用充填材を用いるコンクリート構造物の製造方法及び上記セパ穴用充填材を用いたコンクリート構造物を提供することである。
【0011】
また、本発明の目的は、セパレータの防錆性を高め、セパレータ及びその周囲の防水性を高め、コンクリート構造物を長期に安定した状態に保持することができるセパレータ用コーティング材を提供することである。また、本発明の目的は、上記セパレータ用コーティング材を用いたセパレータ及びコンクリート構造物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書において、以下のセパ穴用充填材、コンクリート構造物の製造方法、コンクリート構造物、セパレータ用コーティング材及びセパレータを開示する。
【0013】
項1.コンクリート構造物におけるセパ穴に用いられる充填材であり、陽イオン又は陰イオンを放出可能なイオン放出性化合物と、樹脂、セメントミルク、又はモルタルとを含み、前記イオン放出性化合物が、難水溶性塩を生成可能である、セパ穴用充填材。
【0014】
項2.前記難水溶性塩が、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、リン酸カルシウム、又は水酸化鉄である、項1に記載のセパ穴用充填材。
【0015】
項3.前記イオン放出性化合物が、陽イオンを放出可能な化合物を含み、前記陽イオンを放出可能な化合物が、ケイ酸カルシウム、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、又は炭酸水素カルシウムである、項1又は2に記載のセパ穴用充填材。
【0016】
項4.前記イオン放出性化合物が、陰イオンを放出可能な化合物を含み、前記陰イオンを放出可能な化合物が、リン酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、又は炭酸水素カルシウムである、項1~3のいずれか1項に記載のセパ穴用充填材。
【0017】
項5.前記樹脂が、エポキシ樹脂、又は変性シリコーン樹脂を含む、項1~4のいずれか1項に記載のセパ穴用充填材。
【0018】
項6.23℃及び20rpmでの粘度が、2000mPa・s以上50000mPa・s以下である、項1~5のいずれか1項に記載のセパ穴用充填材。
【0019】
項7.23℃及び2rpmでの粘度の、23℃及び20rpmでの粘度に対する比が、3.0以上8.0以下である、項1~6のいずれか1項に記載のセパ穴用充填材。
【0020】
項8.セパレータ及びセパレータコーンを用いて、セパ穴を有するコンクリート構造物本体を得る工程と、前記コンクリート構造物本体の前記セパ穴に、項1~7のいずれか1項に記載のセパ穴用充填材を充填する工程とを備える、コンクリート構造物の製造方法。
【0021】
項9.セパ穴を有するコンクリート構造物本体と、前記コンクリート構造物本体の前記セパ穴に充填された充填材とを備え、前記充填材が、項1~7のいずれか1項に記載のセパ穴用充填材により形成されている、コンクリート構造物。
【0022】
項10.コンクリート構造物におけるセパレータに用いられるコーティング材であり、陽イオン又は陰イオンを放出可能なイオン放出性化合物と、樹脂、セメントミルク、又はモルタルとを含み、前記イオン放出性化合物が、難水溶性塩を生成可能である、セパレータ用コーティング材。
【0023】
項11.前記樹脂が、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はポリオレフィン樹脂を含む、項10に記載のセパレータ用コーティング材。
【0024】
項12.セパレータ本体と、前記セパレータ本体の表面上に配置されたコーティング材とを備え、前記コーティング材が、項10又は11に記載のセパレータ用コーティング材により形成されている、セパレータ。
【0025】
項13.コンクリート構造物本体と、前記コンクリート構造物本体の内部に配置されたセパレータとを備え、前記セパレータが、セパレータ本体と、前記セパレータ本体の表面上に配置されたコーティング材とを備え、前記コーティング材が、項10~12のいずれか1項に記載のセパレータ用コーティング材により形成されている、コンクリート構造物。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るセパ穴用充填材は、コンクリート構造物におけるセパ穴に用いられる充填材であり、陽イオン又は陰イオンを放出可能なイオン放出性化合物と、樹脂、セメントミルク、又はモルタルとを含み、上記イオン放出性化合物が、難水溶性塩を生成可能である。本発明に係るセパ穴用充填材では、上記の構成が備えられているので、セパ穴及びその周囲の防水性を高め、コンクリート構造物を長期に安定した状態に保持することができる。
【0027】
本発明に係るセパレータ用コーティング材は、コンクリート構造物におけるセパレータに用いられるコーティング材であり、陽イオン又は陰イオンを放出可能なイオン放出性化合物と、樹脂、セメントミルク、又はモルタルとを含み、上記イオン放出性化合物が、難水溶性塩を生成可能である。本発明に係るセパレータ用コーティング材では、上記の構成が備えられているので、セパレータの防錆性を高め、セパレータ及びその周囲の防水性を高め、コンクリート構造物を長期に安定した状態に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るセパ穴用充填材を用いたコンクリート構造物の断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るセパレータ用コーティング材を用いたコンクリート構造物の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0030】
(セパ穴用充填材)
本発明に係るセパ穴用充填材は、コンクリート構造物におけるセパ穴(separatоr hоle)に用いられる。本発明に係るセパ穴用充填材は、コンクリート構造物におけるセパ穴に充填して用いられる。本発明に係るセパ穴用充填材は、陽イオン又は陰イオンを放出可能なイオン放出性化合物(以下、「イオン放出性化合物」と記載することがある)と、樹脂、セメントミルク、又はモルタルとを含む。本発明に係るセパ穴用充填材では、上記イオン放出性化合物が、難水溶性塩を生成可能である。本発明に係るセパ穴用充填材は、難水溶性塩生成用セパ穴用充填材である。
【0031】
本発明に係るセパ穴用充填材では、上記の構成が備えられているので、セパ穴及びその周囲の防水性を高め、コンクリート構造物を長期に安定した状態に保持することができる。より具体的には、充填対象部(セパ穴)にセパ穴用充填材が配置された状態で、上記セパ穴用充填材中の上記イオン放出性化合物がイオンを放出することにより、難水溶性塩が生成される。これにより、充填した箇所(セパ穴)及びその周囲が緻密化され、漏水を効果的に防ぐ(防水性を高める)ことができ、コンクリート構造物を長期に安定した状態に保持する(耐久性を高める)ことができる。また、セパレータの端部がセパ穴から露出している場合には、本発明に係るセパ穴用充填材では、セパレータの端部及びその周囲が緻密化され、セパレータの端部の防錆性を高めることができ、結果として、漏水を効果的に防ぐ(防水性を高める)ことができ、コンクリート構造物を長期に安定した状態に保持する(耐久性を高める)ことができる。本発明は、コンクリート構造物の予防保全に寄与する。本発明は、特に、新設のコンクリート構造物の予防保全に寄与する。
【0032】
本発明に係るセパ穴用充填材では、充填した箇所(セパ穴)において、上記セパ穴用充填材が、コンクリート構造物に付着した水分等と接触した場合には、上記セパ穴用充填材中の上記イオン放出性化合物がイオンを放出することにより、水分等とセパ穴用充填材との接触面において、難水溶性塩を生成可能である。すなわち、本発明に係るセパ穴用充填材は、上記セパ穴用充填材の表面に、難水溶性塩の層を生成可能である。上記セパ穴用充填材は、上記セパ穴用充填材の界面近傍に、ひび割れ等により水の侵入経路が生じた場合、生成した難水溶性塩により、該水の侵入経路が塞がれ、充填した箇所(セパ穴)及びその周囲の強度はさらに高められる。なお、上記難水溶性塩は、通常、数カ月~数年をかけて生成すると考えられる。また、生成した難水溶性塩により、セパ穴用充填材と水分とのさらなる接触が効果的に抑えられ、コンクリート構造物の劣化を効果的に抑えることができる。本発明に係るセパ穴用充填材は、様々な用途のコンクリート構造物を保全することができる。
【0033】
上記コンクリート構造物は、特に限定されない。上記コンクリート構造物としては、建築物、地下トンネル、海底トンネル、及び山岳トンネル等が挙げられる。上記コンクリート構造物は、地下構造物であってもよい。
【0034】
上記セパ穴用充填材が充填されるセパ穴の形状は、特に限定されない。上記セパ穴の形状(セパレータコーンの形状)は、コンクリート構造物の用途により適宜選択することができる。上記セパ穴の形状(セパレータコーンの形状)は、裁頭円錐状であってもよく、円柱状であってもよく、四角柱状であってもよく、半球状であってもよい。上記セパ穴では、セパレータの端部が露出していてもよく、露出していなくてもよい。
【0035】
上記セパ穴用充填材が充填されるセパ穴の大きさ(セパレータコーンの大きさ)は、特に限定されない。
【0036】
上記セパ穴用充填材では、23℃及び20rpmでの粘度は、好ましくは2000mPa・s以上、より好ましくは3000mPa・s以上、さらに好ましくは5000mPa・s以上であり、好ましくは50000mPa・s以下、より好ましくは45000mPa・s以下、さらに好ましくは40000mPa・s以下である。上記23℃及び20rpmでの粘度が上記下限以上及び上記上限以下であると、セパ穴用充填材をセパ穴に容易に充填(注入)することができ、作業性を高めることができる。なお、上記23℃及び20rpmでの粘度は、配合成分の種類及び配合量により適宜調整することができる。
【0037】
上記23℃及び20rpmでの粘度は、例えば、B型粘度計(FUNGILAB社製「VISCOSTAR」)等を用いて、23℃及び20rpmの条件で測定することができる。
【0038】
上記セパ穴用充填材では、23℃及び2rpmでの粘度は、好ましくは6000mPa・s以上、より好ましくは8000mPa・s以上、さらに好ましくは10000mPa・s以上であり、好ましくは400000mPa・s以下、より好ましくは350000mPa・s以下、さらに好ましくは300000mPa・s以下である。上記23℃及び2rpmでの粘度が上記下限以上及び上記上限以下であると、良好に施工することができる。なお、上記23℃及び2rpmでの粘度は、配合成分の種類及び配合量により適宜調整することができる。
【0039】
上記23℃及び2rpmでの粘度は、例えば、B型粘度計(FUNGILAB社製「VISCOSTAR」)等を用いて、23℃及び2rpmの条件で測定することができる。
【0040】
上記セパ穴用充填材では、23℃及び2rpmでの粘度の、上記23℃及び20rpmでの粘度に対する比(23℃及び2rpmでの粘度/上記23℃及び20rpmでの粘度)は、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.5以上、さらにより好ましくは4.0以上である。上記セパ穴用充填材では、上記比(23℃及び2rpmでの粘度/上記23℃及び20rpmでの粘度)は、好ましくは8.0以下、より好ましくは7.5以下、さらに好ましくは7.0以下である。上記比(23℃及び2rpmでの粘度/上記23℃及び20rpmでの粘度)が上記下限以上及び上記上限以下であると、セパ穴用充填材をセパ穴に容易に充填(注入)することができ、作業性を高めることができる。
【0041】
(セパレータ用コーティング材)
本発明に係るセパレータ用コーティング材は、コンクリート構造物におけるセパレータに用いられる。本発明に係るセパレータ用コーティング材は、陽イオン又は陰イオンを放出可能なイオン放出性化合物(以下、「イオン放出性化合物」と記載することがある)と、樹脂、セメントミルク、又はモルタルとを含む。本発明に係るセパレータ用コーティング材では、上記イオン放出性化合物が、難水溶性塩を生成可能である。本発明に係るセパレータ用コーティング材は、難水溶性塩生成用セパレータ用コーティング材である。
【0042】
本発明に係るセパレータ用コーティング材では、上記の構成が備えられているので、セパレータの防錆性を高め、セパレータ及びその周囲の防水性を高め、コンクリート構造物を長期に安定した状態に保持することができる。より具体的には、セパレータの表面にセパレータ用コーティング材が配置された状態で、上記セパレータ用コーティング材中の上記イオン放出性化合物がイオンを放出することにより、難水溶性塩が生成され、コンクリーションが形成される。これにより、コーティングした箇所(セパレータの表面)及びその周囲が緻密化され、セパレータの防錆性を高め、セパレータ及びその周囲の漏水を効果的に防ぐ(防水性を高める)ことができ、コンクリート構造物を長期に安定した状態に保持する(耐久性を高める)ことができる。本発明は、コンクリート構造物の予防保全に寄与する。本発明は、特に、新設のコンクリート構造物の予防保全に寄与する。
【0043】
本発明に係るセパレータ用コーティング材が、コーティングした箇所(セパレータの表面)において、コンクリート構造物に付着した水分等と接触した場合には、上記セパレータ用コーティング材中の上記イオン放出性化合物がイオンを放出することにより、水分等とセパレータ用コーティング材との接触面において、難水溶性塩を生成可能である。すなわち、本発明に係るセパレータ用コーティング材は、上記セパレータ用コーティング材により、セパレータの表面上に難水溶性塩の層を生成可能である。生成した難水溶性塩により、コーティングした箇所(セパレータの表面)及びその周囲の強度はさらに高められる。なお、上記難水溶性塩は、通常、数カ月~数年をかけて生成すると考えられる。また、生成した難水溶性塩により、セパレータ用コーティング材と水分とのさらなる接触が効果的に抑えられ、セパレータ用コーティング材の劣化及びコンクリート構造物の劣化を効果的に抑えることができる。なお、上記セパレータ用コーティング材中の樹脂が硬化性樹脂を含む場合には、生成した難水溶性塩により、上記硬化性樹脂の硬化反応後のセパレータ用コーティング材の劣化を効果的に抑えることができ、セパレータ用コーティング材の硬化物の劣化を効果的に抑えることができる。また、上記セパレータ用コーティング材中の樹脂が熱可塑性樹脂を含む場合には、生成した難水溶性塩により、成形後の上記セパレータ用コーティング材の劣化を効果的に抑えることができ、セパレータ用コーティング材の成形体の劣化を効果的に抑えることができる。
【0044】
上記セパレータ用コーティング材は、セパレータが乾燥状態であっても、湿潤状態であっても用いることができる。また、上記セパレータ用コーティング材は、セパレータの端部から水が流出している場合であっても、用いることができる。このため、本発明に係るセパレータ用コーティング材は、様々な用途のコンクリート構造物を保全することができる。
【0045】
上記コンクリート構造物は、特に限定されない。上記コンクリート構造物としては、建築物、地下トンネル、海底トンネル、及び山岳トンネル等が挙げられる。上記コンクリート構造物は、地下構造物であってもよい。
【0046】
上記セパレータ用コーティング材は、セパレータのコーティングに用いられる。上記セパレータ用コーティング材は、セパレータの外周に用いられてもよく、端部に用いられてもよい。上記セパレータ用コーティング材は、セパレータの表面の一部のみに用いられてもよく、セパレータの表面の全体に用いられてもよい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記セパレータ用コーティング材は、セパレータの外周に用いられることが好ましく、セパレータの表面の全体に用いられることがより好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記セパレータ用コーティング材は、セパレータの表面の全体のコーティングに用いられることがより好ましい。
【0047】
上記セパレータ用コーティング材は、セパ穴を有するコンクリート構造物から露出したセパレータ(セパレータの端部等)に用いられてもよく、セパ穴を有さないコンクリート構造物から露出したセパレータ(セパレータの端部等)に用いられてもよい。
【0048】
上記セパレータ用コーティング材は、塗布して用いられてもよく、吹付けて用いられてもよい。
【0049】
上記セパレータ用コーティング材は、コンクリート打設前に用いられてもよく、コンクリート打設後に用いられてもよい。上記セパレータ用コーティング材は、コンクリート打設前にセパレータの外周に用いられてもよく、コンクリート打設前にセパレータの端部に用いられてもよく、コンクリート打設前にセパレータの表面の全体に用いられてもよい。上記セパレータ用コーティング材は、コンクリート打設後にセパレータの端部に用いられてもよい。上記セパレータ用コーティング材は、コンクリート打設後に、露出したセパレータの端部に用いられてもよい。
【0050】
上記セパレータ用コーティング材を用いるセパレータの材質は、特に限定されない。上記セパレータは、金属製であってもよい。
【0051】
上記セパレータの端部の形状は、特に限定されない。上記セパレータの端部の形状は、円柱状であってもよく、多角柱状であってもよく、おねじ状であってもよい。
【0052】
上記セパレータ用コーティング材のコーティング厚み及びセパレータの表面に配置されたコーティング材の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは100μm以上であり、好ましくは10000μm以下、より好ましくは5000μm以下、さらに好ましくは3000μm以下である。上記セパレータ用コーティング材のコーティング厚み及びセパレータの表面に配置されたコーティング材の厚みが上記下限以上であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。上記セパレータ用コーティング材のコーティング厚み及びセパレータの表面に配置されたコーティング材の厚みが上記上限以下であると、良好に施工することができる。
【0053】
(セパ穴用充填材及びセパレータ用コーティング材の他の詳細)
上記セパ穴用充填材及び上記セパレータ用コーティング材では、20℃での上記難水溶性塩の水に対する溶解度は、好ましくは1.0×10-3mol/L以下、より好ましくは8.0×10-4mol/L以下、さらに好ましくは5.0×10-4mol/L以下、特に好ましくは2.0×10-4mol/L以下である。20℃での上記難水溶性塩の水に対する溶解度が上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。20℃での上記難水溶性塩の水に対する溶解度の下限は、特に限定されない。20℃での上記難水溶性塩の水に対する溶解度は、1.0×10-10mol/L以上であってもよく、1.0×10-9mol/L以上であってもよい。
【0054】
20℃での上記難水溶性塩の水に対する溶解度は、以下の方法で測定することができる。純水100gに対して、難水溶性塩10gを添加して、20℃で10分間撹拌を行う。その後、溶液部分を蒸発皿に10g分取し、100℃で水分を完全に除去する。蒸発皿上に残った難水溶性塩の重量から、20℃での上記難水溶性塩の水に対する溶解度を算出する。
【0055】
以下、本発明に係るセパ穴用充填材及びセパレータ用コーティング材に用いられる各成分の詳細などを説明する。
【0056】
上記セパ穴用充填材及び上記セパレータ用コーティング材は、イオン放出性化合物と、樹脂、セメントミルク、又はモルタルとを含む。
【0057】
上記セパ穴用充填材は、樹脂を含んでいてもよく、セメントミルクを含んでいてもよく、モルタルを含んでいてもよい。上記セパ穴用充填材は、樹脂を含むことが好ましく、セメントミルクを含むことが好ましく、モルタルを含むことが好ましい。
【0058】
上記セパレータ用コーティング材は、樹脂を含んでいてもよく、セメントミルクを含んでいてもよく、モルタルを含んでいてもよい。上記セパレータ用コーティング材は、樹脂を含むことが好ましい。
【0059】
<樹脂>
上記樹脂としては、熱可塑性樹脂、及び硬化性樹脂等が挙げられる。上記樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0060】
上記熱可塑性樹脂としては、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリメタクリル酸メチル(PMMA)等が挙げられる。
【0061】
上記ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体(EPDM)、イソブチレン-イソプレン共重合体、ポリスチレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、アクリロニトリルーブタジエン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、及びエチレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられる。
【0062】
上記硬化性樹脂としては、変性シリコーン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレア樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、及びナフトキサジン樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0063】
上記硬化性樹脂は、1液硬化型の硬化性樹脂であってもよく、2液硬化型の硬化性樹脂であってもよい。上記1液硬化型の硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、及び湿気硬化性樹脂等が挙げられる。上記2液硬化型の硬化性樹脂は、硬化剤と併用して用いられる。現場での作業性を高める観点からは、上記硬化性樹脂は、湿気硬化性樹脂を含むことが好ましく、湿気硬化性樹脂であることが好ましい。上記硬化性樹脂は、硬化剤と併用されてもよく、硬化剤と併用されなくてもよい。
【0064】
弾性を高める観点からは、上記硬化性樹脂は、変性シリコーン樹脂を含むことが好ましく、変性シリコーン樹脂であることが好ましい。
【0065】
現場での作業性を高める観点からは、上記変性シリコーン樹脂は、湿気硬化性変性シリコーン樹脂であることが好ましい。湿気硬化性変性シリコーン樹脂は、加水分解性ケイ素基を有する。上記加水分解性ケイ素基を有する変性シリコーン樹脂は、ポリエーテル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー又はアクリル系ポリマーを主鎖(加水分解性ケイ素基を除く部分)として有する。したがって、上記主鎖の材料となるモノマーとしては、アルキレンオキサイド系モノマー、オレフィン系モノマー又はアクリル系モノマー等が挙げられる。上記重合体は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。上記重合体が共重合体である場合、用いられるモノマーとしては、アルキレンオキサイド系モノマー、オレフィン系モノマー成分、アクリル系モノマー、及びビニル系モノマー等が挙げられる。変性シリコーン樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0066】
上記アルキレンオキサイド系モノマーとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイド等が挙げられる。硬化後の伸び及び粘性的な取扱性を良好にする観点から、上記アルキレンオキサイド系モノマーは、プロピレンオキサイドを重合することにより得られる、ポリプロピレンオキサイドであることが好ましい。
【0067】
上記オレフィン系モノマーとしては、イソブチレン等が挙げられる。
【0068】
上記アクリル系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-3-メチルブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル2-ヒドロキシエチルフタル酸、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル2-ヒドロキシプロピルフタル酸等が挙げられる。なお、アクリル系ポリマーが、他のビニルモノマー成分が共重合されたものである場合、加水分解性ケイ素基を有するビニルモノマー成分を共重合することにより加水分解性ケイ素基を導入することができる。
【0069】
耐候性を高める観点からは、上記変性シリコーン樹脂における上記主鎖は、アクリル系モノマーに由来する構造単位を有することが好ましい。
【0070】
耐候性を高める観点からは、上記変性シリコーン樹脂における上記主鎖100重量%中、アクリル系モノマーに由来する構造単位の含有率は、好ましくは5重量%以上、好ましくは20重量%以下である。
【0071】
上記加水分解性ケイ素基としては、特に限定されないが、ハロゲン化シリル基、アルケニルオキシシリル基、アシロキシシリル基、アミノシリル基、アミノオキシシリル基、オキシムシリル基、アミドシリル基、及びアルコキシシリル基等が挙げられる。
【0072】
上記加水分解性ケイ素基におけるケイ素原子に結合した加水分解性基の数は、好ましくは1以上であり、好ましくは3以下である。1個のケイ素原子に結合した加水分解性基は1種であってもよく、2種以上であってもよい。上記加水分解性基と非加水分解性基とが1個のケイ素原子に結合していてもよい。安定性に優れ、取扱いが容易であることから、上記加水分解性ケイ素基は、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、又はトリアルコキシシリル基であることが好ましい。
【0073】
上記硬化性樹脂が上記変性シリコーン樹脂を含む場合に、上記硬化性樹脂は、シラノール縮合触媒を含むことが好ましい。上記硬化性樹脂は、上記変性シリコーン樹脂と、シラノール縮合触媒とを含むことが好ましい。上記シラノール縮合触媒を用いることにより、変性シリコーン樹脂を短時間で硬化させることができる。上記シラノール縮合触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0074】
上記シラノール縮合触媒としては、モノアルキル錫エステル及びジアルキル錫エステル等の錫触媒、ポリ(ジアルキルスタノキサン)ジシリケート樹脂、並びに有機チタネート等が挙げられる。
【0075】
上記モノアルキル錫エステルとしては、例えば、ブチルスズトリス(2-エチルヘキサノエート)等が挙げられる。上記ジアルキル錫エステルとしては、例えば、ジブチル錫アセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジオレート、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジフェノキシド、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫アセトアセテート、及びオクタン酸第一錫等が挙げられる。
【0076】
上記有機チタネートとしては、例えば、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラ(2-エチルヘキシルチタネート)トリエタノールアミンチタネート等のチタンアルコキシド類、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンエチルアセトアセテート、及びオクチレングリコレート等のチタンキレート類等が挙げられる。
【0077】
上記変性シリコーン樹脂100重量部に対して、上記シリコーン縮合触媒の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。上記シリコーン縮合触媒の含有量が上記下限以上であると、変性シリコーン樹脂を含む樹脂層の材料を短時間で硬化させることができ、樹脂層を短時間で良好に得ることができる。上記シリコーン縮合触媒の含有量が上記上限以下であると、樹脂層の接着強度を高めることができる。
【0078】
上記シリコーン樹脂としては、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。上記オルガノポリシロキサンの主鎖は、ジオルガノシロキサンの重合体が一般的であるが、一部枝分かれした構造又は環状の構造を有していてもよい。上記オルガノポリシロキサンが有するアルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、ペテニル基、へキセニル基、オクテニル基、及びシクロへキセニル基等が挙げられる。
【0079】
上記シリコーン樹脂の硬化剤(架橋剤)としては、SiH基を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、フェニルメチルハイドロジェンポリシロキサン、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、及び両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0080】
上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、及びこれらの水添化物等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂等のエステル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及びこれらの水添化物等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等のトリスフェノール型の多官能エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラグリシジルメタキシレンジアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂等の含窒素環型多官能エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂等の縮環型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;エーテルエステル型エポキシ樹脂;3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどの脂環式構造を有するエポキシ樹脂;ウレタン型エポキシ樹脂;ポリブタジエン及びアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のゴム骨格を有するゴム変性エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0081】
上記硬化性樹脂が上記エポキシ樹脂を含む場合に、上記硬化性樹脂は、エポキシ樹脂の硬化剤(エポキシ硬化剤)を含むことが好ましい。すなわち、上記硬化性成分は、上記エポキシ樹脂と、エポキシ硬化剤とを含むことが好ましい。
【0082】
上記エポキシ樹脂の硬化剤(エポキシ硬化剤)としては、アミン化合物、イミダゾール化合物、アミド化合物、及びシアノ化合物等が挙げられる。上記アミン化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、それらのアミンアダクト、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。上記イミダゾール化合物としては、メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、エチルイミダゾール、イソプロピルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、フェニルイミダゾール、ウンデシルイミダゾール、ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、及び2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。上記アミド化合物としては、ポリアミド等が挙げられる。上記シアノ化合物としては、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0083】
上記エポキシ硬化剤は、活性アミンがブロックされており、水分などの所定の条件下で活性化するケチミンなどの潜在型硬化剤であってもよい。例えばケチミンは、水分がない状態では安定に存在するが、水分の存在によって一般に一級アミンとなり、エポキシ樹脂と反応する。上記潜在型硬化剤としては、2,5,8-トリアザ-1,8-ノナジエン、2,10-ジメチル-3,6,9-トリアザ-2,9-ウンデカジエン、2,10-ジフェニール-3,6,9-トリアザ-2,9-ウンデカジエン、3,11-ジメチル-4,7,10-トリアザ-3,10-トリデカジエン、3,11-ジエチル-4,7,10-トリアザ-3,10-トリデカジエン、2,4,12,14-テトラメチル-5,8,11-トリアザ-4,11-ペンタデカジエン、2,4,20,22-テトラメチル-5,12,19-トリアザ-4,19-トリエイコサジエン、及び2,4,15,17-テトラメチル-5,8,11,14-テトラアザ-4,14-オクタデカジエン等が挙げられる。
【0084】
上記エポキシ樹脂と上記エポキシ硬化剤とを反応させることにより、エポキシ樹脂の硬化物を得ることができる。
【0085】
本発明の効果をより一層効果的に発揮させる観点からは、上記エポキシ樹脂は、芳香族骨格を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、又はビスフェノールF型エポキシ樹脂であることがより好ましい。
【0086】
本発明の効果をより一層効果的に発揮させる観点からは、上記エポキシ硬化剤は、アミン系硬化剤(アミン化合物)であることが好ましい。
【0087】
ポリオール化合物と、イソシアネート化合物とを硬化反応させることにより、ウレタン樹脂を得ることができる。上記ポリオール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、シクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロヘキシルメタンジオール、ジメチルジシクロヘキシルメタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ε-カプロラクトン又はα-メチル-ε-カプロラクトンなどのラクトンを開環重合して得られる重合体等が挙げられる。
【0088】
上記イソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート化合物が挙げられる。上記ポリイソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。上記芳香族ポリイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。上記脂環族ポリイソシアネートとしては、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0089】
本発明の効果をより一層効果的に発揮させる観点からは、上記ポリオール化合物は、ポリエステルポリオール、又はポリエーテルポリオールであることが好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮させる観点からは、上記ポリオール化合物の硬化剤(イソシアネート化合物)は、ジフェニルメタンジイソシアネート、又はトルエンジイソシアネートであることが好ましい。
【0090】
上記ポリオール化合物と上記ポリイソシアネート化合物との配合比は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との種類の組み合わせによって適宜変更可能である。上記ポリイソシアネート化合物の配合量は、上記ポリオール化合物の水酸基量と、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基量(NCO量)とが等量となる量であることが好ましい。
【0091】
上記フェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール、及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
【0092】
上記フェノール樹脂の硬化剤としては、ヘキサメチレンテトラミン、及びパラホルムアルデヒド等が挙げられる。
【0093】
上記ビニルエステル樹脂としては、エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応物等が挙げられる。上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその高分子量同族体、ノボラック型ポリグリシジルエーテル及びその高分子量同族体、並びに1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族系グリシジルエーテル類等が挙げられる。上記不飽和一塩基酸としては、アクリル酸及びメタクリル酸等が挙げられる。上記エポキシ樹脂と、上記アクリル酸及び上記メタクリル酸との反応物としては、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0094】
上記ビニルエステル樹脂の硬化剤としては、有機過酸化物等が挙げられる。上記有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、パーベンゾエート、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリルパーオキサイド、パーオキシエステル、及びパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0095】
上記硬化性樹脂が上記ビニルエステル樹脂を含む場合に、該硬化性成分は、ラジカル重合性不飽和単量体を含んでいてもよい。上記ラジカル重合性不飽和単量体としては、スチレンモノマー、スチレンのα-,o-,m-,p-アルキル,ニトロ,シアノ,アミド,エステル誘導体、クロルスチレン、ビニルトルエン、及びジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー、ブタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、イソプレン、及びクロロプレン等のジエン類;(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸-i-プロピル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸アミド及び(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド;(メタ)アクリル酸アニリド等のビニル樹脂;シトラコン酸ジエチル等の不飽和ジカルボン酸ジエステル;N-フェニルマレイミド等のモノマレイミド樹脂;N-(メタ)アクリロイルフタルイミドなどが挙げられる。
【0096】
上記セパ穴用充填材では、上記セパ穴用充填材をセパ穴に良好に充填する観点からは、上記樹脂は、硬化性樹脂を含むことが好ましく、エポキシ樹脂、又は変性シリコーン樹脂を含むことがより好ましい。
【0097】
上記セパレータ用コーティング材では、コーティング材によるコーティング後すぐのセパレータの取扱い性を良好にする観点からは、上記樹脂は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、ポリオレフィン樹脂を含むことがより好ましい。上記セパレータ用コーティング材では、上記セパレータ用コーティング材を用いてセパレータを良好にコーティングする観点からは、上記樹脂は、硬化性樹脂を含むことが好ましく、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、又は不飽和ポリエステル樹脂を含むことがより好ましい。上記セパレータ用コーティング材では、上記樹脂は、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。
【0098】
上記セパ穴用充填材100重量%中、上記樹脂の含有量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60重量%以上であり、好ましくは97重量%以下、より好ましくは95重量%以下、さらに好ましくは90重量%以下、特に好ましくは80重量%以下である。上記樹脂の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、セパ穴及びその周囲がより一層緻密化され、コンクリート構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。
【0099】
上記セパ穴用充填材100重量%中、上記硬化性樹脂の含有量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60重量%以上であり、好ましくは97重量%以下、より好ましくは95重量%以下、さらに好ましくは90重量%以下、特に好ましくは80重量%以下である。上記硬化性樹脂の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、セパ穴及びその周囲がより一層緻密化され、コンクリート構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。
【0100】
上記セパ穴用充填材100重量%中、上記エポキシ樹脂の含有量は、好ましくは35重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60重量%以上であり、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、さらに好ましくは85重量%以下、特に好ましくは80重量%以下である。上記エポキシ樹脂の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、セパ穴及びその周囲がより一層緻密化され、コンクリート構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。
【0101】
上記セパ穴用充填材100重量%中、上記変性シリコーン樹脂の含有量は、好ましくは35重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60重量%以上であり、好ましくは97重量%以下、より好ましくは95重量%以下、さらに好ましくは90重量%以下、特に好ましくは80重量%以下である。上記変性シリコーン樹脂の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、セパ穴及びその周囲がより一層緻密化され、コンクリート構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。
【0102】
上記セパレータ用コーティング材100重量%中、上記樹脂の含有量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60重量%以上であり、好ましくは97重量%以下、より好ましくは95重量%以下、さらに好ましくは90重量%以下、特に好ましくは80重量%以下である。上記樹脂の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、セパレータ及びその周囲がより一層緻密化され、コンクリート構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。
【0103】
上記セパレータ用コーティング材100重量%中、上記硬化性樹脂の含有量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60重量%以上であり、好ましくは97重量%以下、より好ましくは95重量%以下、さらに好ましくは90重量%以下、特に好ましくは80重量%以下である。上記硬化性樹脂の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、セパレータ及びその周囲がより一層緻密化され、コンクリート構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。
【0104】
上記セパレータ用コーティング材100重量%中、上記エポキシ樹脂の含有量は、好ましくは35重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60重量%以上であり、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、さらに好ましくは85重量%以下である。上記エポキシ樹脂の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、セパレータ及びその周囲がより一層緻密化され、コンクリート構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。
【0105】
上記セパレータ用コーティング材100重量%中、上記ビニルエステル樹脂の含有量は、好ましくは35重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60重量%以上であり、好ましくは97重量%以下、より好ましくは95重量%以下、さらに好ましくは90重量%以下である。上記ビニルエステル樹脂の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、セパレータ及びその周囲がより一層緻密化され、コンクリート構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。
【0106】
上記セパレータ用コーティング材100重量%中、上記不飽和ポリエステル樹脂の含有量は、好ましくは35重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60重量%以上であり、好ましくは97重量%以下、より好ましくは95重量%以下、さらに好ましくは90重量%以下である。上記不飽和ポリエステル樹脂の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、セパレータ及びその周囲がより一層緻密化され、コンクリート構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。
【0107】
上記セパレータ用コーティング材100重量%中、上記ポリオレフィン樹脂の含有量は、好ましくは35重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60重量%以上であり、好ましくは97重量%以下、より好ましくは95重量%以下、さらに好ましくは90重量%以下である。上記ポリオレフィン樹脂の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、セパレータ及びその周囲がより一層緻密化され、コンクリート構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。
【0108】
<セメントミルク、及びモルタル>
本明細書において、「セメントミルク」とは、セメントと水(混錬用水)との混錬物を意味する。本明細書において、「セメントミルク」は、細骨材及び粗骨材を含まない。本明細書において、「モルタル」とは、セメントと細骨材と水(混錬用水)との混錬物を意味する。本明細書において、「モルタル」は、粗骨材を含まない。本明細書において、「コンクリート」とは、セメントと細骨材と粗骨材と水(混錬用水)との混錬物を意味する。本明細書において、「セメント」とは、石灰石、粘土、珪石、及び酸化鉄原料等を主原料とし、水との化学反応で硬化可能な粉体を意味する。
【0109】
上記セメントミルク、及び上記モルタルに含まれるセメントは、特に限定されない。上記セメントミルク、及び上記モルタルに含まれるセメントとしては、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、及びフライアッシュセメント等が挙げられる。上記ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメントであってもよく、特殊ポルトランドセメント(早強ポルトランドセメント)であってもよい。
【0110】
上記細骨材としては、人工骨材、及び天然骨材等が挙げられる。上記人工骨材としては、高炉スラグ、及びフライアッシュ等が挙げられる。上記天然骨材としては、砂等が挙げられる。材料コストを良好にする観点からは、上記細骨材は、砂であることが好ましい。
【0111】
上記細骨材の平均粒子径は、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.1mm以上であり、好ましくは5mm以下、より好ましくは4mm以下である。上記細骨材の平均粒子径が上記下限以上であると、コンクリート構造物の強度を高めることができる。上記細骨材の平均粒子径が上記上限以下であると、上記細骨材が沈下することを抑制し、モルタルの粘度を良好にすることができる。上記細骨材の平均粒子径は、数平均粒子径であることが好ましい。
【0112】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記セメントミルク100重量%中、セメントの含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下である。
【0113】
上記セメントミルクにおいて、セメント100重量部に対して、水(混錬用水)の含有量は、好ましくは11重量部以上、より好ましくは25重量部以上、さらに好ましくは35重量部以上であり、好ましくは125重量部以下、より好ましくは100重量部以下、さらに好ましくは66重量部以下である。上記水(混錬用水)の含有量が上記下限以上であると、上記セメントと水(混錬用水)とを良好に反応させることができ、コンクリート構造物の強度を高めることができる。上記水(混錬用水)の含有量が上記上限以下であると、上記セメントと水(混錬用水)とを均一に混合することができ、コンクリート構造物の強度を高めることができる。
【0114】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記モルタル100重量%中、セメントの含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上であり、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下である。
【0115】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記モルタル100重量%中、細骨材の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、さらに好ましくは80重量%以下である。
【0116】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記モルタルにおいて、セメント100重量部に対して、細骨材の含有量は、好ましくは11重量部以上、より好ましくは25重量部以上、さらに好ましくは40重量部以上であり、好ましくは900重量部以下、より好ましくは400重量部以下、さらに好ましくは300重量部以下である。
【0117】
上記モルタルにおいて、セメント100重量部に対して、水(混錬用水)の含有量は、好ましくは20重量部以上、より好ましくは30重量部以上、さらに好ましくは40重量部以上であり、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下、さらに好ましくは60重量部以下である。上記水(混錬用水)の含有量が上記下限以上であると、上記セメントと水(混錬用水)とを良好に反応させることができ、コンクリート構造物の強度を高めることができる。上記水(混錬用水)の含有量が上記上限以下であると、上記セメントと水(混錬用水)とを均一に混合することができ、コンクリート構造物の強度を高めることができる。
【0118】
上記セパ穴用充填材100重量%中、上記セメントミルク、又は上記モルタルの含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは94重量%以上であり、好ましくは99.9重量%以下、より好ましくは99.5重量%以下、さらに好ましくは99重量%以下である。上記セメントミルク、又は上記モルタルの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0119】
<イオン放出性化合物>
上記セパ穴用充填材及び上記セパレータ用コーティング材は、陽イオン又は陰イオンを放出可能なイオン放出性化合物(イオン放出性化合物)を含む。上記イオン放出性化合物は、難水溶性塩を生成可能である。
【0120】
上記イオン放出性化合物は、陽イオンを放出可能な化合物であってもよく、陰イオンを放出可能な化合物であってもよく、陽イオンと陰イオンとの双方を放出可能な化合物であってもよく、陽イオンを放出可能な化合物と陰イオンを放出可能な化合物との混合物であってもよい。上記イオン放出性化合物は、陽イオンを放出可能な化合物を含んでいてもよく、陰イオンを放出可能な化合物を含んでいてもよく、陽イオンを放出可能な化合物と陰イオンを放出可能な化合物とを含んでいてもよい。上記イオン放出性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0121】
上記イオン放出性化合物は、コンクリート構造物に付着した水分等との接触により、難水溶性塩を生成することが好ましい。上記セパ穴用充填材及び上記セパレータ用コーティング材を配置した箇所に至った水又は湿気により、上記イオン放出性化合物より陽イオン又は陰イオンが放出されることが好ましい。具体的には、上記イオン放出性化合物が陽イオンを放出可能な化合物である場合には、上記イオン放出性化合物から放出された陽イオンと、水分等に溶解した陰イオンとが化学反応し、難水溶性塩が形成されることが好ましい。上記イオン放出性化合物が陰イオンを放出可能な化合物である場合には、上記イオン放出性化合物から放出された陰イオンと、水分等に溶解した陽イオンとが化学反応し、難水溶性塩が形成されることが好ましい。また、上記イオン放出性化合物が、陽イオンと陰イオンとの双方を放出可能な化合物、又は陽イオンを放出可能な化合物と陰イオンを放出可能な化合物との混合物である場合には、上記イオン放出性化合物から放出された陽イオンと陰イオンとが、水分等を媒体に移動し、出会ったポイントで難水溶性塩が形成されることが好ましい。
【0122】
上記イオン放出性化合物は、無機塩であってもよく、イオン交換樹脂であってもよく、イオン錯体であってもよい。
【0123】
上記イオン放出性化合物としては、ケイ酸カルシウム、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、リン酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。上記イオン放出性化合物は、これらのイオン放出性化合物であることが好ましい。これらのイオン放出性化合物は、難水溶性塩をより一層効果的に生成可能である。
【0124】
上記陽イオンを放出可能な化合物としては、ケイ酸カルシウム、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、及び炭酸水素カルシウム等が挙げられる。上記陽イオンを放出可能な化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0125】
上記陽イオンを放出可能な化合物は、ケイ酸カルシウム、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、又は炭酸水素カルシウムであることが好ましい。上記陽イオンを放出可能な化合物が上記の好ましい化合物であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記陽イオンを放出可能な化合物は、酸化カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、又は乳酸バリウムであることがより好ましく、乳酸カルシウムであることがさらに好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記陽イオンを放出可能な化合物は、カルシウムイオンを放出可能な化合物であることが好ましく、有機酸カルシウム塩であることがより好ましい。上記有機酸カルシウム塩としては、酢酸カルシウム、及び乳酸カルシウム等が挙げられる。
【0126】
上記陰イオンを放出可能な化合物としては、リン酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素カルシウム等が挙げられる。上記陰イオンを放出可能な化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0127】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記陰イオンを放出可能な化合物は、リン酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、又は炭酸水素カルシウムであることが好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記陰イオンを放出可能な化合物は、リン酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムであることがより好ましく、炭酸水素ナトリウムであることがさらに好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記陰イオンを放出可能な化合物は、炭酸水素イオン(重炭酸イオン)又は炭酸イオンを放出可能な化合物であることが好ましい。
【0128】
上記陽イオンと陰イオンとの双方を放出可能な化合物としては、炭酸水素カルシウム等が挙げられる。
【0129】
難水溶性塩をより一層を良好に生成する観点からは、上記セパ穴用充填材及び上記セパレータ用コーティング材は、陽イオンを放出可能な化合物と陰イオンを放出可能な化合物との混合物であることが好ましく、カルシウムイオンを放出可能な化合物と炭酸水素イオン又は炭酸イオンを放出可能な化合物との混合物であることがより好ましい。難水溶性塩をより一層を良好に生成する観点からは、上記セパ穴用充填材及び上記セパレータ用コーティング材は、陽イオンを放出可能な化合物と陰イオンを放出可能な化合物とを含むことが好ましく、カルシウムイオンを放出可能な化合物と炭酸水素イオン又は炭酸イオンを放出可能な化合物とを含むことがより好ましい。
【0130】
上記難水溶性塩としては、以下の化合物等が挙げられる。炭酸カルシウム(比重:2.71、20℃での水に対する溶解度:1.5×10-4mol/L)。炭酸バリウム(比重:4.29、20℃での水に対する溶解度:1.25×10-4mol/L)。リン酸カルシウム(比重:3.14、20℃での水に対する溶解度:6.5×10-5mol/L)。水酸化鉄(比重:3.40、20℃での水に対する溶解度:5.0×10-6mol/L)。
【0131】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記難水溶性塩は、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、リン酸カルシウム、又は水酸化鉄であることが好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記イオン放出性化合物は、難水溶性塩として、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、リン酸カルシウム、又は水酸化鉄を生成可能であることが好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記難水溶性塩は、炭酸カルシウムであることが好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記イオン放出性化合物は、難水溶性塩として、炭酸カルシウムを生成可能であることが好ましい。
【0132】
上記イオン放出性化合物は、粒子状であってもよい。上記イオン放出性化合物は、球状であってもよく、球状以外の形状であってもよく、扁平状であってもよい。上記イオン放出性化合物は、球状であることが好ましい。
【0133】
上記イオン放出性化合物の粒子径は、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは5.0μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは150μm以下、特に好ましくは100μm以下である。上記イオン放出性化合物の粒子径が上記下限以上であると、上記イオン放出性化合物が後述するコーティング材(A)により良好に被覆され、上記セパ穴用充填材中及び上記セパレータ用コーティング材中での上記イオン放出性化合物の分散性を高めることができる。また、上記イオン放出性化合物の粒子径が上記下限以上であると、上記セパ穴用充填材をセパ穴に充填する際の粘度を良好にし、上記セパレータ用コーティング材を用いてセパレータをコーティングする際の粘度を良好にし、上記セパ穴用充填材及び上記セパレータ用コーティング材の配置性を高めることができる。上記イオン放出性化合物の粒子径が上記上限以下であると、上記セパ穴用充填材中及び上記セパレータ用コーティング材中での上記イオン放出性化合物の分散性を高めることができる。
【0134】
上記イオン放出性化合物の粒子径は、平均粒子径であることが好ましい。上記平均粒子径は、数平均粒子径を示す。上記イオン放出性化合物の平均粒子径は、任意のイオン放出性化合物50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0135】
上記セパ穴用充填材中及び上記セパレータ用コーティング材中では、上記イオン放出性化合物の表面が、コーティング材(本明細書において、上記イオン放出性化合物を被覆するためのコーティング材を「コーティング材(A)」と記載することがある)により被覆されていてもよい。上記イオン放出性化合物は、マイクロカプセルの内包物であってもよい。上記イオン放出性化合物が無機塩である場合に、上記セパ穴用充填材及び上記セパレータ用コーティング材では、上記イオン放出性化合物の表面が、コーティング材(A)により被覆されていることが好ましい。上記イオン放出性化合物が無機塩である場合に、上記セパ穴用充填材及び上記セパレータ用コーティング材は、上記イオン放出性化合物を内包物として含有するマイクロカプセルを含んでいることが好ましい。上記イオン放出性化合物の表面がコーティング材(A)により被覆されているか、又は、上記イオン放出性化合物がマイクロカプセルの内包物であると、上記イオン放出性化合物から陽イオン又は陰イオンが放出される時期及び量を制御することができる。
【0136】
上記コーティング材(A)により被覆されたイオン放出性化合物は、水又は湿気等の水分が上記セパ穴用充填材及び上記セパレータ用コーティング材と接触し、該水分が上記コーティング材(A)の内部に拡散浸入したときに、陽イオン又は陰イオンを放出可能であることが好ましい。上記コーティング材(A)により被覆されたイオン放出性化合物は、上記コーティング材(A)中の空隙より陽イオン又は陰イオンを放出可能であってもよい。上記コーティング材(A)により被覆されたイオン放出性化合物は、上記コーティング材(A)の内部に拡散し、陽イオン又は陰イオンを放出可能であってもよい。これらの場合には、イオン放出性化合物から陽イオン又は陰イオンが放出される時期及び量をより一層良好に制御することができる。
【0137】
上記マイクロカプセルは、上記イオン放出性化合物を放出可能であることが好ましい。上記マイクロカプセルは、水又は湿気等の水分と接触したときに、マイクロカプセルを構成する膜が崩壊することが好ましい。この場合には、イオン放出性化合物から陽イオン又は陰イオンが放出される時期及び量をより一層良好に制御することができる。
【0138】
上記マイクロカプセルを構成する膜の材料及び上記イオン放出性化合物の表面を被覆するためのコーティング材(A)の材料は、上記イオン放出性化合物の種類により適宜選択することができる。上記マイクロカプセルを構成する膜の材料及び上記イオン放出性化合物の表面を被覆するためのコーティング材(A)の材料は、カップリング剤又は樹脂を含むことが好ましい。この場合には、上記セパ穴用充填材中及び上記セパレータ用コーティング材中での上記イオン放出性化合物の分散性を高め、陽イオン又は陰イオンを放出する時期及び量を良好に制御することができる。また、マイクロカプセルを構成する膜の厚みを均一にすることができ、上記イオン放出性化合物の表面をコーティング材(A)により均一に被覆することができる。
【0139】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、及びチタンカップリング剤等が挙げられる。
【0140】
上記樹脂としては、水溶性樹脂、熱可塑性樹脂、及び硬化性樹脂等が挙げられる。上記樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記セパ穴用充填材及び上記セパレータ用コーティング材に含まれる樹脂と、上記コーティング材(A)の材料に含まれる樹脂とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0141】
上記水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸樹脂(PLA樹脂)、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、及びメチルセルロース等が挙げられる。
【0142】
上記熱可塑性樹脂及び上記硬化性樹脂としては、上述した熱可塑性樹脂及び硬化性樹脂等が挙げられる。
【0143】
イオン放出性化合物から陽イオン又は陰イオンが放出される時期及び量をより一層良好に制御する観点からは、上記コーティング材(A)の材料に含まれる樹脂は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、ポリオレフィン樹脂又はエチレン-酢酸ビニル共重合体を含むことがより好ましく、エチレン-酢酸ビニル共重合体であることが特に好ましい。
【0144】
上記マイクロカプセルを構成する膜の厚み及び上記コーティング材(A)による被覆層の厚みは、特に限定されない。イオン放出性化合物から陽イオン又は陰イオンが放出される時期及び量をより一層良好に制御する観点からは、上記マイクロカプセルを構成する膜の厚み及び上記コーティング材(A)の被覆層の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは200μm以下である。
【0145】
上記セパ穴用充填材100重量%中、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは45重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。上記イオン放出性化合物の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、セパ穴及びその周囲がより一層緻密化され、コンクリート構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。上記イオン放出性化合物の含有量が上記上限以下であると、上記セパ穴用充填材を充填した後のコンクリート構造物の外観を良好にし、セパ穴及びその周囲の強度を高めることができる。
【0146】
上記セパ穴用充填材では、上記樹脂100重量部に対して、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは3重量部以上、より好ましくは5重量部以上、さらに好ましくは10重量部以上、特に好ましくは20重量部以上であり、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下、さらに好ましくは70重量部以下である。上記イオン放出性化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、セパ穴及びその周囲がより一層緻密化され、コンクリート構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。上記イオン放出性化合物の含有量が上記上限以下であると、上記セパ穴用充填材をセパ穴に充填する際の粘度を良好にし、上記セパ穴用充填材の配置性を高めることができる。
【0147】
上記セパ穴用充填材では、上記セメントミルク又は上記モルタル100重量部に対して、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは3重量部以上、より好ましくは5重量部以上、さらに好ましくは10重量部以上であり、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下、さらに好ましくは70重量部以下である。上記イオン放出性化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、セパ穴及びその周囲がより一層緻密化され、コンクリート構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。上記イオン放出性化合物の含有量が上記上限以下であると、上記セパ穴用充填材をセパ穴に充填する際の粘度を良好にし、上記セパ穴用充填材の配置性を高めることができる。
【0148】
上記セパ穴用充填材100重量%中、上記イオン放出性化合物及び上記コーティング材(A)の合計の含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。上記イオン放出性化合物及び上記コーティング材(A)の合計の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、セパ穴及びその周囲がより一層緻密化され、コンクリート構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。上記イオン放出性化合物及び上記コーティング材(A)の合計の含有量が上記上限以下であると、上記セパ穴用充填材をセパ穴に充填する際の粘度を良好にし、上記セパ穴用充填材の配置性を高めることができる。
【0149】
上記セパレータ用コーティング材100重量%中、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上である。上記セパレータ用コーティング材100重量%中、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは45重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。上記イオン放出性化合物の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、セパレータ及びその周囲がより一層緻密化され、コンクリート構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。上記イオン放出性化合物の含有量が上記上限以下であると、セパレータ及びその周囲の強度を高めることができる。
【0150】
上記セパレータ用コーティング材では、上記樹脂100重量部に対して、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは3重量部以上、より好ましくは5重量部以上、さらに好ましくは10重量部以上、特に好ましくは20重量部以上であり、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下、さらに好ましくは70重量部以下である。上記イオン放出性化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、シーリングした箇所及びその周囲がより一層緻密化され、コンクリート構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。上記イオン放出性化合物の含有量が上記上限以下であると、上記セパレータ用コーティング材を用いてセパレータをコーティングする際の粘度を良好にし、上記セパレータ用コーティング材の配置性を高めることができる。
【0151】
上記セパレータ用コーティング材100重量%中、上記イオン放出性化合物及び上記コーティング材(A)の合計の含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。上記イオン放出性化合物及び上記コーティング材(A)の合計の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、セパ穴及びその周囲がより一層緻密化され、構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。上記イオン放出性化合物及び上記コーティング材(A)の合計の含有量が上記上限以下であると、上記セパレータ用コーティング材を用いてセパレータをコーティングする際の粘度を良好にし、上記セパレータ用コーティング材の配置性を高めることができる。
【0152】
<他の成分>
上記セパ穴用充填材及び上記セパレータ用コーティング材は、必要に応じて、上記イオン放出性化合物、上記樹脂、上記セメントミルク、上記モルタル、及び上記コーティング材(A)以外の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、反応触媒、反応促進剤、架橋剤、吸水剤、整泡剤、酸化防止剤、及び着色剤等が挙げられる。
【0153】
(セパレータ)
本発明に係るセパレータは、セパレータ本体と、上記セパレータ本体の表面上に配置されたコーティング材とを備える。本発明に係るセパレータでは、上記コーティング材が、上述したセパレータ用コーティング材により形成されている。
【0154】
本発明に係るセパレータでは、上記の構成が備えられているので、セパレータの防錆性を高め、セパレータ及びその周囲の防水性を高め、コンクリート構造物を長期に安定した状態に保持することができる。
【0155】
上記セパレータでは、上記コーティング材が、上記セパレータ本体の少なくとも端部の表面上に配置されていることが好ましく、上記セパレータ本体の表面上の全体に配置されていることが好ましい。
【0156】
上記コーティング材は、上記セパレータ用コーティング材自体であってもよい。上記コーティング材は、上記セパレータ用コーティング材中の樹脂(硬化性樹脂)、セメントミルク、又はモルタルが硬化されて形成されていてもよい。上記コーティング材は、上記セパレータ用コーティング材の硬化物であってもよい。
【0157】
上記セパレータでは、上記コーティング材中(上記セパレータ用コーティング材中又は上記セパレータ用コーティング材の硬化物中)の上記イオン放出性化合物は、上記樹脂中(又は上記セメントミルク中又は上記モルタル中)又は上記樹脂(又は上記セメントミルク又は上記モルタル)の硬化物中に分散していることが好ましい。
【0158】
(コンクリート構造物及びコンクリート構造物の製造方法)
本発明に係るセパ穴用充填材又はセパレータ用コーティング材を用いて、コンクリート構造物を得ることができる。
【0159】
上記コンクリート構造物(第1のコンクリート構造物)は、セパ穴を有するコンクリート構造物本体と、上記コンクリート構造物本体の上記セパ穴に充填された充填材とを備える。上記コンクリート構造物(第1のコンクリート構造物)では、上記充填材が、上述したセパ穴用充填材により形成されている。上記コンクリート構造物(第1のコンクリート構造物)では、充填した箇所(セパ穴)及びその周囲を緻密化することができ、長期に安定した状態に保持することができる。なお、上記第1のコンクリート構造物は、後述する第2のコンクリート構造物のセパレータを備えていてもよい。
【0160】
上記充填材は、上記セパ穴用充填材自体であってもよい。上記充填材では、上記セパ穴用充填材中の樹脂(硬化性樹脂)、セメントミルク、又はモルタルが硬化されて形成されていてもよい。上記充填材は、上記セパ穴用充填材の硬化物であってもよい。上記充填材は、上記セパ穴用充填材が押出成形又は射出成形されて形成されていてもよい。上記充填材は、上記セパ穴用充填材の成形体であってもよい。
【0161】
上記充填材中(上記セパ穴用充填材中、上記セパ穴用充填材の硬化物中又は上記セパ穴用充填材の成形体中)の上記イオン放出性化合物は、上記樹脂中(又は上記セメントミルク中又は上記モルタル中)又は上記樹脂(又は上記セメントミルク又は上記モルタル)の硬化物中に分散していることが好ましい。
【0162】
上記コンクリート構造物(第2のコンクリート構造物)は、コンクリート構造物本体と、上記コンクリート構造物本体の内部に配置されたセパレータとを備える。上記セパレータは、セパレータ本体と、上記セパレータ本体の表面上に配置されたコーティング材とを備える。上記コーティング材は、上記セパレータ用コーティング材により形成されている。上記コンクリート構造物(第2のコンクリート構造物)では、コーティングした箇所(セパレータ本体の表面上)及びその周囲を緻密化することができ、長期に安定した状態に保持することができる。なお、上記第2のコンクリート構造物は、上述した第1のコンクリート構造物の充填材を備えていてもよい。
【0163】
上記コンクリート構造物(第2のコンクリート構造物)では、上記コーティング材が、上記セパレータ本体の少なくとも端部の表面上に配置されていることが好ましく、上記セパレータ本体の表面上の全体に配置されていることが好ましい。上記コンクリート構造物(第2のコンクリート構造物)は、上記セパレータの少なくとも端部に、上記コーティング材を備えることが好ましい。上記コンクリート構造物(第2のコンクリート構造物)は、上記セパレータの表面の全体に、上記コーティング材を備えることが好ましい。
【0164】
上記コーティング材は、上記セパレータ用コーティング材自体であってもよい。上記コーティング材は、上記セパレータ用コーティング材中の樹脂(硬化性樹脂)、セメントミルク、又はモルタルが硬化されて形成されていてもよい。上記コーティング材は、上記セパレータ用コーティング材の硬化物であってもよい。
【0165】
上記コーティング材中(上記セパレータ用コーティング材中又は上記セパレータ用コーティング材の硬化物中)の上記イオン放出性化合物は、上記樹脂中(又は上記セメントミルク中又は上記モルタル中)又は上記樹脂(又は上記セメントミルク又は上記モルタル)の硬化物中に分散していることが好ましい。
【0166】
図1は、本発明の一実施形態に係るセパ穴用充填材を用いたコンクリート構造物(第1のコンクリート構造物)の断面図である。
【0167】
コンクリート構造物1は、充填材11と、セパレータ12と、コンクリート構造物本体13とを備える。コンクリート構造物本体13は、セパ穴13aを有する。充填材11は、コンクリート構造物本体13のセパ穴13aに充填されている。セパレータ12は、コンクリート構造物本体13の内部に配置されている。
【0168】
コンクリート構造物1では、充填材11が、セパ穴用充填材により形成されている。上記充填材は、上記セパ穴用充填材自体であってもよく、上記セパ穴用充填材の硬化物(保護キャップ)であってもよい。
【0169】
図2は、本発明の一実施形態に係るセパレータ用コーティング材を用いたコンクリート構造物の断面図である。
【0170】
コンクリート構造物1Aは、セパレータ12Aと、コンクリート構造物本体13Aとを備える。コンクリート構造物本体13Aは、セパ穴13Aaを有する。
【0171】
セパレータ12Aは、セパレータ本体12Aaと、コーティング材12Abとを備える。コーティング材12Abは、セパレータ本体12Aaの表面上に配置されている。コーティング材12Abは、セパレータ本体12Aaの表面上(外周及び端部)に配置されている。コーティング材12Abは、セパレータ本体12Aaの表面の全体に配置されている。コンクリート構造物1Aでは、コーティング材12Abが、セパレータ用コーティング材により形成されている。上記コーティング材は、上記セパレータ用コーティング材自体であってもよく、上記セパレータ用コーティング材の硬化物であってもよい。
【0172】
上記コンクリート構造物(第1のコンクリート構造物)の製造方法は、(1A)セパレータ及びセパレータコーンを用いて、セパ穴を有するコンクリート構造物本体を得る工程と、(2A)上記コンクリート構造物本体の上記セパ穴に、上述したセパ穴用充填材を充填する工程とを備えることが好ましい。上記コンクリート構造物(第1のコンクリート構造物)の製造方法は、(3A)上記セパ穴用充填材中の上記樹脂(又は上記セメントミルク又は上記モルタル)を硬化させる工程を備えることが好ましい。なお、工程(3A)は、行われてもよく、行われなくてもよい。
【0173】
また、上記コンクリート構造物(第1のコンクリート構造物)の製造方法は、以下の工程を備えていてもよい。(1A)セパレータ及びセパレータコーンを用いて、セパ穴を有するコンクリート構造物本体を得る工程。(2B)上記セパ穴用充填材を押出成形又は射出成形して充填物(保護キャップ)を形成する成形工程。(3B)上記コンクリート構造物本体の上記セパ穴に、上記充填物(保護キャップ)を配置する配置工程。
【0174】
充填対象部(セパ穴)に上記セパ穴用充填材を充填する方法は、特に限定されない。充填対象部(セパ穴)に上記セパ穴用充填材を充填する方法としては、ヘラで埋め込む方法、及びガンで充填(注入)する方法等が挙げられる。上記セパ穴用充填材の注入量は、充填対象部(セパ穴)の大きさ等に応じて適宜変更可能である。
【0175】
上記コンクリート構造物(第2のコンクリート構造物)の製造方法は、以下の工程を備えることが好ましい。(1C)セパレータ本体を用いて、セパレータ本体の端部が露出したコンクリート構造物を得る工程。(2C)上述したセパレータ用コーティング材を用いて、上記セパレータ本体の端部が露出したコンクリート構造物の上記セパレータ本体の端部(表面上)に、セパレータ用コーティング材を配置する工程。(3C)上記セパレータ用コーティング材中の上記樹脂(又は上記セメントミルク又は上記モルタル)を硬化させる工程。なお、工程(3C)は、行われてもよく、行われなくてもよい。
【0176】
また、上記コンクリート構造物(第2のコンクリート構造物)の製造方法は、以下の工程を備えることも好ましい。(1D)セパレータ本体の表面上に、セパレータ用コーティング材を配置する工程。(2D)上記セパレータ用コーティング材中の上記樹脂(又は上記セメントミルク又は上記モルタル)を硬化させる工程。(3D)コンクリート構造物本体と、上記セパレータとを用いて、上記セパレータが上記コンクリート構造物本体の内部に配置されたコンクリート構造物を得る工程。なお、工程(2D)は、行われてもよく、行われなくてもよい。
【0177】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0178】
以下の材料を用意した。
【0179】
(樹脂)
硬化性樹脂A(2液硬化型のエポキシ樹脂、積水化学工業社製「インフラガード CRJ」、主剤50重量%:硬化剤50重量%)
硬化性樹脂B(1液変成シリコーン樹脂、コニシ社製「ボンド変成シリコンコーク」)
熱可塑性樹脂(エチレン-酢酸ビニル共重合体、東ソー社製「EVAウルトラセン#636」)
【0180】
(モルタル)
セメント(太平洋セメント社製「普通ポルトランドセメント」)100重量部
細骨材(珪砂6号)300重量部
混錬用水60重量部
【0181】
(イオン放出性化合物)
陽イオンを放出可能な化合物:
酢酸カルシウム(富士フイルム和光純薬社製、平均粒子径10μm)
ギ酸カルシウム(朝日化学工業所社製、粉末)
乳酸カルシウム(ナカライテスク社製、平均粒子径50μm)
乳酸バリウム(富士フイルム和光純薬社製、粉末)
陰イオンを放出可能な化合物:
炭酸水素ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製、平均粒子径107μm)
炭酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製、平均粒子径100μm)
リン酸水素ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製、粉末)
ケイ酸ナトリウム(ナカライテスク社製「オルトケイ酸ナトリウム(Na4SiO4)」)
【0182】
セパ穴用充填材の作製:
(実施例1)
硬化性樹脂A100重量部と、酢酸カルシウム30重量部と、炭酸水素ナトリウム30重量部とを混合して、セパ穴用充填材を得た。
【0183】
(実施例2~4、及び比較例1)
セパ穴用充填材の配合成分の種類及び含有量を表1,3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、セパ穴用充填材を得た。
【0184】
(実施例5)
ギ酸カルシウム1.5重量部と、炭酸ナトリウム1.5重量部と、硬化性樹脂A3重量部とを混合し、混合液を厚み1mmで塗工した後、硬化させて板状硬化物を得た。この板状硬化物を冷凍粉砕して平均粒子径50μmの粉体を得た。得られた粉体6重量部とモルタル100重量部とを混合して、セパ穴用充填材を得た。
【0185】
試験体1の作製:
セパレータ(コンドーテック社製「B型セパレータ」)及びセパレータコーン(コンドーテック社製「プラスチックコーン」)を、コンクリート型枠間に配置し、コンクリートを打設した。28日間静置してコンクリートを硬化させた後、コンクリート型枠及びセパレータコーンを除去して、セパ穴を形成した。その後、実施例1~5、及び比較例1で得られたセパ穴用充填材をそれぞれ充填し、28日間静置してセパ穴用充填材を硬化させた。その後、セパ穴の底部にひびを入れて、試験体1を得た。
【0186】
セパレータ用コーティング材の作製:
(実施例6)
硬化性樹脂A100重量部と、炭酸水素ナトリウム50重量部とを混合して、セパレータ用コーティング材を得た。
【0187】
(実施例7、及び比較例2)
セパレータ用コーティング材の配合成分の種類及び含有量を表2,3に示すように変更したこと以外は、実施例6と同様にして、セパレータ用コーティング材を得た。
【0188】
(実施例8)
熱可塑性樹脂100重量部と、ギ酸カルシウム25重量部と、炭酸ナトリウム50重量部とを、押出機で溶融混合し、押出してペレタイズして、ペレット状のセパレータ用コーティング材を得た。
【0189】
(実施例9)
熱可塑性樹脂100重量部と、乳酸カルシウム50重量部と、炭酸ナトリウム50重量部とを用いたこと以外は、実施例8と同様にして、ペレット状のセパレータ用コーティング材を得た。
【0190】
試験体2の作製:
実施例6~7、及び比較例2で得られたセパレータ用コーティング材を、セパレータ本体(コンドーテック社製「B型セパレータ」)の長さ方向に3等分したときの中央の部分の表面上に、厚み0.3mmでそれぞれ塗り付けた。セパレータ用コーティング材を塗り付けたセパレータを、コンクリート型枠間に配置し、コンクリートを打設した。28日間静置してコンクリートを硬化させた後、コンクリート型枠を除去した。その後、セパレータ周囲のコンクリートにひびを入れて、試験体2を得た。また、実施例8~9で得られたセパレータ用コーティング材を、ホットメルトガンを用いて溶融塗布したこと以外は、実施例6~7、及び比較例2と同様にして、試験体2を得た。
【0191】
(評価)
(1)粘度
得られたセパ穴用充填材の23℃及び20rpmでの粘度、並びに23℃及び2rpmでの粘度を、上述した方法で測定した。また、比(23℃及び2rpmでの粘度/23℃及び20rpmでの粘度)を計算した。
【0192】
(2)防水性
得られた試験体1,2について、ひびの部分が水に接触するように、水を張った水槽に1ヶ月間浸漬させた。試験体1,2のひび及びその周辺の表面に粒子が析出しているか否かを目視で詳細に観察した。粒子が析出している試験体については、走査型電子顕微鏡を用いて観察し、該粒子の20℃での水に対する溶解度を、上述した方法で測定した。
【0193】
[防水性の判定基準]
○:難水溶性塩が生成している
×:難水溶性塩が生成していない
【0194】
実施例1、2、5、6、8、9では、難水溶性塩として、炭酸カルシウム(20℃での水に対する溶解度:1.5×10-4mol/L)が生成していた。実施例3では、難水溶性塩として、リン酸カルシウム(20℃での水に対する溶解度:6.5×10-5mol/L)が生成していた。実施例4では、難水溶性塩として、ケイ酸カルシウム(20℃での水に対する溶解度:5.8×10-4mol/L)が生成していた。実施例7では、難水溶性塩として、炭酸バリウム(20℃での水に対する溶解度:1.25×10-4mol/L)が生成していた。
【0195】
セパ穴用充填材及びセパレータ用コーティング材の構成、並びに結果を下記の表1~3に示す。
【0196】
【0197】
【0198】
【符号の説明】
【0199】
1,1A…コンクリート構造物
11…充填材
12,12A…セパレータ
12Aa…セパレータ本体
12Ab…コーティング材
13,13A…コンクリート構造物本体
13a,13Aa…セパ穴