(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156412
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】袖仕切りおよび鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B61D 33/00 20060101AFI20241029BHJP
B61D 37/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B61D33/00 Z
B61D37/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070851
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 康行
(72)【発明者】
【氏名】小牧 一郎
(57)【要約】
【課題】製造コスト低減を図ることが容易となるよう、種々の意匠への部材の共通化を図ることが容易な袖仕切り、およびそのような袖仕切りを備える鉄道車両を提供すること。
【解決手段】鉄道車両1の客室28における座席と通路の間に位置する袖仕切り5A,5Bにおいて、座席と通路を仕切るための仕切板6と、仕切板6を保持する仕切板枠7と、客室28の壁面29に固定され、仕切板枠7を支持するベース枠8と、を備えること、仕切板枠7は、それぞれ所定の長さに切断した少なくとも3本の第1押出形材70により形成されること、ベース枠8は、所定の長さに切断した第2押出形材80により形成されること。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の車内空間における座席と通路の間に位置する袖仕切りにおいて、
前記座席と前記通路を仕切るための仕切板と、
前記仕切板を保持する仕切板枠と、
前記車内空間の壁面に固定され、前記仕切板枠を支持するベース枠と、
を備えること、
前記仕切板枠は、それぞれ所定の長さに切断した少なくとも3本の第1押出形材により形成されること、
前記ベース枠は、所定の長さに切断した第2押出形材により形成されること、
を特徴とする袖仕切り。
【請求項2】
請求項1に記載の袖仕切りにおいて、
前記仕切板枠は、
前記壁面に平行な前記仕切板枠の第1辺部材を形成する前記第1押出形材と、
前記第1辺部材に対して垂直に接続され、前記車内空間の床面に平行な前記仕切板枠の第2辺部材を形成する前記第1押出形材と、
湾曲された状態で前記第1辺部材と前記第2辺部材を接続する前記仕切板枠の第3辺部材を形成する前記第1押出形材と、
からなること、
を特徴とする袖仕切り。
【請求項3】
請求項1に記載の袖仕切りにおいて、
前記仕切板枠を形成する前記第1押出形材同士は、前記第1押出形材にビス止めされる連結部材により連結されること、
を特徴とする袖仕切り。
【請求項4】
請求項1に記載の袖仕切りにおいて、
前記第2押出形材は、前記第2押出形材の押出方向と平行に延在するとともに、相反する方向に開口する第1溝部および第2溝部により、略H字状の断面形状を備えること、
を特徴とする袖仕切り。
【請求項5】
請求項4に記載の袖仕切りにおいて、
前記仕切板枠は、前記ベース枠を形成する前記第2押出形材の前記第1溝部に挿し込まれること、
前記第1溝部に挿し込まれた前記仕切板枠は、前記第2溝部に挿し込まれるビスにより、前記第2押出形材と結合すること、
を特徴とする袖仕切り。
【請求項6】
請求項4に記載の袖仕切りにおいて、
前記仕切板枠の、前記車内空間の床面側の端部に、所定の長さに切断した、前記ベース枠とは別体の前記第2押出形材を介して、前記座席を支持するための座席用骨組みが結合されていること、
前記端部は、前記第1溝部に挿し込まれること、
前記座席用骨組みは、前記第2溝部に挿し込まれること、
を特徴とする袖仕切り。
【請求項7】
請求項1に記載の袖仕切りにおいて、
前記第1押出形材には、
前記仕切板枠の内周面を形成する端面の、袖仕切りの厚み方向の両端部のうちの一端に、他端の側から前記仕切板を受ける仕切板受けが立設、かつ、押出方向に延在していること、
前記端面において、前記仕切板受けの前記他端の側に、前記仕切板受けと所定の距離を置いて、クサビゴムを取り付け可能な取付溝が、押出方向に延在していること、
を特徴とする袖仕切り。
【請求項8】
請求項7に記載の袖仕切りにおいて、
前記第1押出形材は、前記端面の裏側に、押出方向に延在する中空部を備えること、
を特徴とする袖仕切り。
【請求項9】
車内空間における座席と通路の間に位置する袖仕切りを備える鉄道車両において、
前記袖仕切りは、請求項1乃至8のいずれか1つに記載の袖仕切りであること、
を特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の車内空間における座席と通路の間に位置する袖仕切りおよびそのような袖仕切りを備える鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
在来線等の通勤車両においては、車両の長手方向に沿って乗客が座るように構成されたロングシートが用いられている。ロングシートには、車室内の側扉に通じる通路空間に面する端部に、袖仕切りが設けられている。袖仕切りが設けられている目的は、側扉から乗り降りする乗客とロングシートに座る乗客とが干渉することや、側扉から吹き込む風に乗客が晒されることを防止するためである。また、側扉に通じる通路空間は、乗車空間としても用いられるため、袖仕切りを設けることで、該通路空間の立客とロングシートに座る乗客との干渉を防止することができる。
【0003】
ところで、車両が前面衝突をするなどの事故時においては、乗客が袖仕切りに打ち付けられるおそれがあるため、乗客が袖仕切りに打ち付けられる衝撃を出来るだけ広い面積で受け、乗客の怪我を防止できるよう、袖仕切りの面積を大きくする構造がとられる。
【0004】
しかし、金属製による袖仕切りで面積を大きくすると袖仕切りの質量がかさむこと、また、軽量化や、コスト削減のため樹脂製単板からなる構成とすると、強度確保が困難であり、車両走行時の振動や乗客が寄りかかったりするなど、過酷な使用に耐えられないこと、さらにまた、袖仕切りの面積を大きくすると、車室内の見通しが悪くなるため、防犯性やデザイン性を欠くこと、といった問題点が残る。
【0005】
そこで、特許文献1に示すように、軽量化のために薄肉化された樹脂製の表皮部を二枚合わせ、その内部に袖仕切りの面剛性を高めるための内装材を備えることや、また、特許文献2や特許文献3に示すように、袖仕切りにガラス等の透過部を設けることで、防犯性やデザイン性を高めるということが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-156229号公報
【特許文献2】特開2013-82290号公報
【特許文献3】特開2012-11962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、袖仕切りは、鉄道会社の要求に合わせた意匠を得るために専用の部材からなることが一般的である。このため、他の意匠の袖仕切りと部材を共通化させることが困難であり、製造コストの低減を図ることが困難であるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、製造コスト低減を図ることが容易となるよう、種々の意匠への部材の共通化を図ることが容易な袖仕切り、およびそのような袖仕切りを備える鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の袖仕切りは次のような構成を有している。
【0010】
(1)鉄道車両の車内空間における座席と通路の間に位置する袖仕切りにおいて、前記座席と前記通路を仕切るための仕切板と、前記仕切板を保持する仕切板枠と、前記車内空間の壁面に固定され、前記仕切板枠を支持するベース枠と、を備えること、前記仕切板枠は、それぞれ所定の長さに切断した少なくとも3本の第1押出形材により形成されること、前記ベース枠は、所定の長さに切断した第2押出形材により形成されること、を特徴とする。
【0011】
(2)(1)に記載の袖仕切りにおいて、前記仕切板枠は、前記壁面に平行な前記仕切板枠の第1辺部材を形成する前記第1押出形材と、前記第1辺部材に対して垂直に接続され、前記車内空間の床面に平行な前記仕切板枠の第2辺部材を形成する前記第1押出形材と、湾曲された状態で前記第1辺部材と前記第2辺部材を接続する前記仕切板枠の第3辺部材を形成する前記第1押出形材と、からなること、が好ましい。
【0012】
上記袖仕切りによれば、仕切板を保持する仕切板枠は、それぞれ所定の長さに切断した少なくとも3本の第1押出形材により形成されることを特徴とするため、第1押出形材の、本数や長さ、曲げ加工の実施等に応じ、様々な形状の仕切板枠を得ることが可能となる。具体的には、例えば(2)に記載の袖仕切りのように、3本の第1押出形材を用い、仕切板枠を、壁面に平行な前記仕切板枠の第1辺部材を形成する第1押出形材と、第1辺部材に対して垂直に接続され、床面に平行な仕切板枠の第2辺部材を形成する第1押出形材と、湾曲された状態で第1辺部材と第2辺部材を接続する仕切板枠の第3辺部材を形成する第1押出形材と、から形成することが可能である。なお、第1押出形材の所定の長さとは、仕切板枠に求められる大きさや意匠に応じて設定される。
【0013】
また、車内空間の壁面に固定され、仕切板枠を支持するベース枠は、仕切板枠を壁面に固定するための部材であるところ、所定の長さに切断した第2押出形材により形成されることを特徴とするため、第1押出形材により得られる仕切板枠の形状に合わせた形状を得ることが可能である。具体的には、例えば前記壁面に平行な前記仕切板枠の第1辺部材を形成する第1押出形材を支持するために十分な長さに切断した第2押出形材を用いることで、仕切り板枠を壁面に固定することができる。
【0014】
以上のように、袖仕切りを汎用性の高い第1押出形材および第2押出形材により形成することで、種々の意匠への部材の共通化を図ることが容易となる。
【0015】
(3)(1)または(2)に記載の袖仕切りにおいて、前記仕切板枠を形成する前記第1押出形材同士は、前記第1押出形材にビス止めされる連結部材により連結されること、が好ましい。
【0016】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の袖仕切りにおいて、前記第2押出形材は、前記第2押出形材の押出方向と平行に延在するとともに、相反する方向に開口する第1溝部および第2溝部により、略H字状の断面形状を備えること、が好ましい。
【0017】
(5)(4)に記載の袖仕切りにおいて、前記仕切板枠は、前記ベース枠を形成する前記第2押出形材の前記第1溝部に挿し込まれること、前記第1溝部に挿し込まれた前記仕切板枠は、前記第2溝部に挿し込まれるビスにより、前記第2押出形材と結合すること、が好ましい。
【0018】
(6)(4)または(5)に記載の袖仕切りにおいて、前記仕切板枠の、前記車内空間の床面側の端部に、所定の長さに切断した、前記ベース枠とは別体の前記第2押出形材を介して、前記座席を支持するための座席用骨組みが結合されていること、前記端部は、前記第1溝部に挿し込まれること、前記座席用骨組みは、前記第2溝部に挿し込まれること、が好ましい。
【0019】
従来、袖仕切りは、袖仕切りを構成する部材を溶接することにより組み立てることが一般的であった。しかし、溶接を行うと部材に歪が生じることから、袖仕切りの意匠性が低下するおそれがあった。
【0020】
この点、(3)に記載の袖仕切りによれば、前記仕切板枠を形成する前記第1押出形材同士は、前記第1押出形材にビス止めされる連結部材により連結されることを特徴とするため、仕切板枠の形成に溶接を用いる必要がない。よって、溶接歪による意匠性の低下を防止することができる。また、連結部材を袖仕切りの外部から視認できない箇所に設けることでも意匠性の向上を図ることができる。
【0021】
また、仕切板枠とベース枠の連結についても、(4)に記載の袖仕切りによれば、第2押出形材は、第2押出形材の押出方向と平行に延在する第1溝部および第2溝部により、略H字状の断面形状を備えること、を特徴とするため、例えば、(5)に記載の通り、仕切板枠は、ベース枠を形成する第2押出形材の第1溝部に挿し込まれること、第1溝部に挿し込まれた仕切板枠は、第2溝部に挿し込まれるビスにより、第2押出形材と結合することとすれば、仕切板枠を第2押出形材(ベース枠)に固定するビスは、第2溝部に隠れた状態になる。よって、仕切板枠と第2押出形材(ベース枠)との結合箇所は、袖仕切りの外部からは視認できず、意匠性の向上を図ることができる。さらには、(4)に記載の袖仕切りによれば、第2押出形材を利用して、例えば(6)に記載の通り、座席を支持するための座席用骨組みを、仕切板枠に結合可能である。
【0022】
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載の袖仕切りにおいて、前記第1押出形材には、前記仕切板枠の内周面を形成する端面の、袖仕切りの厚み方向の両端部のうちの一端に、他端の側から前記仕切板を受ける仕切板受けが立設、かつ、押出方向に延在していること、前記端面において、前記仕切板受けの前記他端の側に、前記仕切板受けと所定の距離を置いて、クサビゴムを取り付け可能な取付溝が、押出方向に延在していること、が好ましい。
【0023】
従来、仕切板は、メンテナンス時に交換する場合があるが、袖仕切り内に固定されており、交換が容易でなかった。上記袖仕切りによれば、第1押出形材には、仕切板枠の内周面を形成する端面の、袖仕切りの厚み方向の両端部のうちの一端に、他端の側から仕切板を受ける仕切板受けが立設、かつ、押出方向に延在しており、端面において、仕切板受けの他端の側に、仕切板受けと所定の距離を置いて、クサビゴムを取り付け可能な取付溝が、押出方向に延在しているため、このような第1押出形材を用いれば、仕切板が仕切板受けとクサビゴムとに挟持されることで仕切板枠内に保持されるように、仕切板枠を構成可能である。したがって、クサビゴムを取付溝から取り外すだけで、仕切板を仕切板枠から取り外すことが可能であるため、仕切板の交換が容易になる。なお、所定の距離とは、仕切板の厚みに応じて適宜設定されるものである。
【0024】
また、袖仕切りの座席の側から通路の側に向かって、仕切板受け、仕切板、クサビゴムの順に並ぶようにするか、その逆とするかは、仕切板枠を構成する第1押出形材の向きにより選定可能である。よって、通路の側からクサビゴムが視認可能であることを避けたい等、求められる意匠性に応じて仕切板枠を構成することができる。
【0025】
(8)(7)に記載の袖仕切りにおいて、前記第1押出形材は、前記端面の裏側に、押出方向に延在する中空部を備えること、が好ましい。
【0026】
第1押出形材は、端面の裏側に、押出方向に延在する中空部を備えるため、適宜中空部を利用して、袖仕切りに追加的に部材(追加部材)を接続することが可能になる。具体的には、例えば、第1押出形材に、中空部に外部からアクセス可能な開口部を設けることで、当該開口部から、中空部に追加部材を挿し込むことが可能になる。追加部材とは、例えば、手すりを袖仕切りに接続するための部材等が考えられる。
【0027】
また、上記課題を解決するために、本発明の鉄道車両は、次のような構成を有している。
(9)車内空間における座席と通路の間に位置する袖仕切りを備える鉄道車両において、前記袖仕切りは、(1)乃至(8)のいずれか1つに記載の袖仕切りであること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の袖仕切りおよび袖仕切りを備える鉄道車両によれば、種々の意匠への部材の共通化を図ることが容易な袖仕切り、およびそのような袖仕切りを備える鉄道車両とすることができ、製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】本実施形態に係る鉄道車両の客室内を示す図である。
【
図9】袖仕切りの変形例を示す図であり、ベース枠の部分のみ図示した、
図2のB-B断面図に対応する図である。
【
図10】袖仕切りの変形例を示す図であり、
図2のA-A断面図に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の袖仕切りおよび袖仕切りを備える鉄道車両の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る鉄道車両1の側面図である。なお、
図1中の左右方向が軌道方向であり、
図1中の上下方向が垂直方向(鉄道車両1の高さ方向)である。
図2は、本実施形態に係る鉄道車両1の客室28内を示す図である。なお、
図2中の左右方向が枕木方向であり、
図2中の上下方向が垂直方向である。
【0031】
(鉄道車両について)
まず、本実施形態に係る鉄道車両1の概略構成について説明する。鉄道車両1は、例えば通勤車両として用いられるステンレス車両であり、
図1に示すように、車両構体2と、車両構体2を支持する台車3と、を有している。
【0032】
車両構体2は、鉄道車両1の床部をなす台枠21と、台枠21の軌道方向の一方の端部(
図1中の左端部)に立設されることで車両構体2の先頭部をなす前面妻構体22と、台枠21の軌道方向の他方の端部(
図1中の右端部)に立設されることで車両構体2の連結部を形成する連妻構体23と、台枠21の枕木方向の両端部に立設されることで車両構体2の側面部を形成する一対の側構体24と、前面妻構体22の上端部と連妻構体23の上端部と一対の側構体24の上端部に結合されることで車両構体2の屋根部を形成する屋根構体25と、により6面体をなすように構成されている。また、車両構体2の側面には、客室28(車内空間の一例)に通じる乗客乗降口26および窓27A,27B,27C,27Dが設けられている。
【0033】
客室28には、壁面29に沿って、座席の一例であるロングシート(不図示)が配置されている。さらに、客室28には、袖仕切り5Aが、ロングシートの軌道方向の両端に位置された状態で、壁面29に固定されている。なお、
図2中の右側の袖仕切り5Aは、ロングシート側から見た状態を表し、
図2中の左側の袖仕切り5Aは通路側から見た状態を表している。
【0034】
(袖仕切りについて)
次に袖仕切り5Aの構成について説明する。袖仕切り5Aは、
図2に示すように、仕切板6と、仕切板枠7と、ベース枠8と、座席用骨組み9と、接続部材10と、を主要な構成要素としている。また、袖仕切り5Aには、上部ブラケット121および下部ブラケット122を介して、手すり12が接続されている。なお、手すり12の上部は、客室28の天井側に向かって延伸され、その先端は、例えば、ロングシート上方に位置されている網棚に接続されている。
【0035】
仕切板6は、仕切板枠7に保持された、ロングシートと通路との間を仕切るためのガラス板である。仕切板6は、壁面29と平行な垂直辺部61と、床面30に平行な水平辺部62と、湾曲辺部63とを備えた、略扇形をなしている(
図8参照)。なお、仕切板6の形状を略扇型とするのはあくまで一例であり、これに限定されない。
【0036】
座席用骨組み9は、ロングシートを支持するための骨組みである。袖仕切り5Aは、ロングシートの軌道方向の両端部に設けられるため、一対の座席用骨組み9がロングシートを軌道方向の両端部から支持する。
【0037】
仕切板枠7は第1押出形材70により形成され、ベース枠8および接続部材10は第2押出形材80により形成されている。ここで、第1押出形材70と第2押出形材80について説明する。
【0038】
まず、第1押出形材70について、
図3を用いて説明する。
図3は、第1押出形材70の断面形状を示す図である。なお、図中の奥行方向が第1押出形材70の押出方向である。また、図中の上下方向が袖仕切り5Aの厚み方向(すなわち、鉄道車両1においては軌道方向)に対応している。以後、図中の上下方向を単に厚み方向と言う。
【0039】
第1押出形材70は、材質をアルミ合金とした押出形材である。第1押出形材70は、
図3に示すように、略四角形(本実施形態では、厚み方向の両側面が平行面となる略矩形)状の断面を備える。さらに、内部に押出方向に延在する中空部701(本実施形態では、両側面に平行となる内側面を有する角丸の矩形断面)を有している。厚み方向に直交する方向(図中の左右方向)における両端面の内の一方の第1端面702(図中の右側の端面)は、仕切板枠7の内周面を形成する面(本実施形態では、両側面に垂直な面)である。第1端面702とは反対側の第2端面703は、仕切板枠7の外周面を形成する面である。第2端面703は、乗客の手が触れることを考慮し、外方に膨出した円弧状にされている。
【0040】
第1端面702の厚み方向の両端部のうちの一端(図中の上端)には、第1端面702に対して垂直(本実施形態では、厚み方向の外面が側面と同一面を形成する)に、仕切板受け705が立設されている。この、仕切板受け705は押出方向に延在している。
【0041】
仕切板受け705の、第1端面702の厚み方向の両端部のうちの他端(図中の下端)側の面は、受け面705aであり、仕切板枠7内に保持される仕切板6に当接する面である。
【0042】
また、第1押出形材70は、第1端面702において、仕切板受け705の厚み方向の他端(図中下端)の側に、仕切板受け705と所定の距離Dを置いて、クサビゴム11(
図5-
図7参照)を取り付け可能な取付溝704を備えている。この取付溝704は、押出方向に延在している。取付溝704にクサビゴム11を取り付けることで、仕切板受け705とクサビゴム11とにより仕切板6を挟持し、仕切板6を仕切板枠7内に保持することが可能となっている(
図5-
図7参照)。したがって、上述の所定の距離Dとは、仕切板6の厚みに応じて適宜設定されるものである。
【0043】
次に、第2押出形材80について、
図4を用いて説明する。
図4は、第2押出形材80の断面形状を示す図である。なお、図中の奥行方向が第2押出形材80の押出方向である。また、図中の上下方向が袖仕切り5Aの厚み方向(すなわち、鉄道車両1においては軌道方向)に対応している。以後、図中の上下方向を単に厚み方向と言う。
【0044】
第2押出形材80は、材質をアルミ合金とした押出形材である。第2押出形材80は、
図4に示すように、第2押出形材80の押出方向と平行に延在するとともに、相反する方向に開口する第1溝部801および第2溝部802により、略H字状の断面形状を備えている。
【0045】
第1溝部801は、第1押出形材70を挿し込むための溝である。したがって、第1溝部801の幅寸法Wは、第1押出形材70を挿し込み可能な程度に、第1押出形材70の厚み方向の大きさと略同一に設定されている。なお、第1溝部801の奥側の幅寸法は、第1押出形材70との干渉を避けるために、幅寸法Wよりも幅広に設定されている。
【0046】
第2溝部802は、第1押出形材70を第2押出形材80と連結するためのビスや、座席用骨組み9を挿し込むために用いる(詳細は後述する)。また、第2押出形材80の、厚み方向の両端面の内の一方の端面(図中、上側の端面)には、枕木方向における中央近傍から第2溝部802の開口側の端部まで、一段落ちた段差部803が設けられている。この段差部803の機能については後述する。
【0047】
次に、上に説明した第1押出形材70により形成される仕切板枠7について、
図2、
図5-
図8を用いて説明する。
図5は、
図2のA-A断面図である。
図6は、
図2のB-B断面図である。
図7は、
図2のC-C断面図である。
図8は、本実施形態に係る袖仕切り5Aの分解図である。
【0048】
仕切板枠7は、それぞれ所定の長さに切断するとともに、必要な加工を施した3本の第1押出形材70により構成されている。具体的には、
図2や
図8に示すように、仕切板枠7は、壁面29と平行な第1辺部材71と、第1辺部材71に対して垂直に接続され、客室28の床面30に平行な第2辺部材72と、第1辺部材71と第2辺部材72を接続する第3辺部材73と、を備えており、それぞれの辺部材71,72,73が、別個の第1押出形材70により形成されている。なお、所定の長さとは、仕切板枠7に求められる大きさや意匠に応じて設定されるものであり、本実施形態においては、仕切板枠7が仕切板6の外周を覆うことで仕切板6の外形と相似形状をなすように設定されている。
【0049】
第1辺部材71は、仕切板6の垂直辺部61を保持するためのものであり、第1押出形材70を、垂直辺部61を全長に渡って保持可能な長さに切断した上、ビス用の通し穴やねじ穴を設ける加工を施すことで得られる。
【0050】
上記の通し穴について具体的に説明すると、第1辺部材71の垂直方向の両端部の内、第3辺部材73側の端部(
図8中の上端部)には、第3辺部材73と接続するためのビスS11を挿通するための通し穴が設けられている。また、第2辺部材72側の端部(
図8中の下端部)には、第2辺部材72と接続するためのビスS12を挿通するための通し穴が設けられている。このビスS11、S12を挿通させる通し穴は、例えば、第1辺部材71(第1押出形材70)の第1端面702から中空部701に貫通して設けられている。なお、この通し穴は、取付溝704から中空部701に貫通して設けても良いし、第1端面702から中空部701に貫通して設けるものと、取付溝704から中空部701に貫通して設けるものと、の両方を設けても良い。
【0051】
また、上記のねじ穴について具体的に説明すると、第1辺部材71には、上端部側の通し穴と下端部側の通し穴に挟まれて、ベース枠8を接続するためのビスS13を螺合するねじ穴711(
図5参照)が等間隔に複数個設けられている。このねじ穴711は、第1辺部材71(第1押出形材70)の第2端面703から中空部701に貫通して設けられている。
【0052】
第2辺部材72は、仕切板6の水平辺部62を保持するためのものであり、第1押出形材70を、水平辺部62を全長に渡って保持可能な長さに切断した上、ビス用の通し穴やねじ穴を設ける加工を施すことで得られる。
【0053】
上記の通し穴について具体的に説明すると、第2辺部材72の枕木方向の両端部の内、第1辺部材71側の端部(
図8中の右端部)には、第1辺部材71と接続するためのビスS14を挿通するための通し穴が設けられている。また、第3辺部材73側の端部(
図8中の左端部)には、第3辺部材73と接続するためのビスS15を挿通するための通し穴が設けられている。このビスS14、S15を挿通させる通し穴は、例えば、第2辺部材72(第1押出形材70)の第1端面702から中空部701に貫通して設けられている。なお、この貫通孔は、取付溝704から中空部701に貫通して設けても良いし、第1端面702から中空部701に貫通して設けるものと、取付溝704から中空部701に貫通して設けるものと、の両方を設けても良い。
【0054】
また、上記のねじ穴について具体的に説明すると、第2辺部材72には、右端部側の通し穴と、左端部側の通し穴に挟まれて、接続部材10を介して座席用骨組み9を接続するためのビスS16を螺合するねじ穴721(
図7参照)が等間隔に複数個設けられている。このねじ穴721は、第2辺部材72(第1押出形材70)の第2端面703から中空部701に貫通して設けられている。
【0055】
また、第2辺部材72には、ビスS14,S15による連結作業を容易とするため、
図8に示すように、切欠き部722,723を設けることとしても良い。切欠き部722は、第2辺部材72(第1押出形材70)の中空部701を囲む4つの面の内、第1端面702の裏側の面のみを残すようにして、第2辺部材72(第1押出形材70)の第2端面703の側を切除することで設けられている。切欠き部723は、第2辺部材72(第1押出形材70)の中空部701を囲む4つの面の内、第2端面703の裏側の面のみを残すようにして、第2辺部材72(第1押出形材70)の第1端面702の側を切除することで設けられている。
【0056】
第3辺部材73は、仕切板6の湾曲辺部63を保持するためのものであり、第1押出形材70を、湾曲辺部63を全長に渡って保持可能な長さに切断した上、ビス用の通し穴を設ける加工と、湾曲辺部63に沿う形状とするための曲げ加工を施すことで得られる。
【0057】
上記の通し穴について具体的に説明すると、第3辺部材73の、第1辺部材71側の端部(
図8中の上端部)には、第1辺部材71と接続するためのビスS17を挿通するための通し穴が設けられている。このビスS17を挿通させる通し穴は、例えば、第3辺部材73(第1押出形材70)の第1端面702から中空部701に貫通して設けられている。なお、この貫通孔は、取付溝704から中空部701に貫通して設けても良いし、第1端面702から中空部701に貫通して設けるものと、取付溝704から中空部701に貫通して設けるものと、の両方を設けても良い。
【0058】
また、第3辺部材73の、第2辺部材72側の端部(図中の下端部)には、第2辺部材72および下部ブラケット122を接続するためのビスS18を挿通するための通し穴731(
図6参照)が設けられている。さらに、上部ブラケット121を接続するためのビスS19を挿通するための通し穴732(
図5参照)が設けられている。この通し穴731,732は、第1端面702から中空部701に貫通して設けるものと、取付溝704から中空部701に貫通して設けるものと、の両方を設けることが望ましい。これは、手すり12を乗客が握ったり、乗客が手すり12に寄り掛かったりすると、ブラケット121,122に負荷がかかるため、下部ブラケット122を強固に固定することを目的としている。
【0059】
さらに、ブラケット121,122は、第3辺部材73(第1押出形材70)の第2端面703の側から中空部701に挿し込まれるものであるため、第3辺部材73(第1押出形材70)の、ブラケット121,122を固定する箇所においては、第2端面703を切除する加工が施されている。
【0060】
以上のような第1辺部材71、第2辺部材72、第3辺部材73は、全て第1端面702が仕切板枠7の内周側を向くように、かつ、厚み方向において、仕切板受け705が通路側に位置された状態で連結され、仕切板枠7を形成する。
【0061】
具体的には、第1辺部材71と第3辺部材73とは、連結部材13により、以下のようにして連結されている。連結部材13は、垂直方向(壁面29と略平行)に配置される第1接続片131と該第1接続片の上端から壁面29方向に延設される第2接続片132とによりL字形に形成されている。第1接続片131は、第1辺部材71(第1押出形材70)の中空部701に上端側から挿入される。第1接続片131はねじ座を備えており、第1辺部材71の上端部に設けられた通し穴に挿通されたビスS11が第1接続片131に螺合されることで、連結部材13が第1辺部材71に固定される。第2接続片132は、第3辺部材73(第1押出形材70)の第1端面702に当接された状態で、ビスS17が挿通される。このビスS17は、第3辺部材73(第1押出形材70)の中空部701に挿入されるねじ座14に螺合される。これにより、連結部材13が第3辺部材73に固定される。以上のように、連結部材13が第1辺部材71と第3辺部材73に固定されることで、第1辺部材71と第3辺部材73とが連結される。
【0062】
第1辺部材71と第2辺部材72とは、連結部材15により、以下のようにして連結されている。連結部材15は、垂直方向(壁面29と略平行)に配置される第3接続片151と該第3接続片の下端から壁面29とは反対の方向に延設される第4接続片152とによりL字形に形成されている。第3接続片151は、第1辺部材71(第1押出形材70)の中空部701に下端側から挿入される。第3接続片151はねじ座を備えており、第1辺部材71の下端部に設けられた通し穴に挿通されたビスS12が第3接続片151に螺合されることで、連結部材15が第1辺部材71に固定される。第4接続片152は、第2辺部材72(第1押出形材70)の中空部701に切欠き部723の側から挿入される。第4接続片152はねじ座を備えており、第2辺部材72の壁面29側の端部に設けられた通し穴に挿通されたビスS14が第4接続片152に螺合されることで、連結部材15が第2辺部材72に固定される。以上のように、連結部材15が第1辺部材71と第2辺部材72に固定されることで、第1辺部材71と第2辺部材72とが連結される。
【0063】
第2辺部材72と第3辺部材73とは、連結部材16により、以下のようにして連結されている。連結部材16は、水平方向(床面30と略平行)に配置される第5接続片161と該第5接続片の壁面29とは反対側の端部から下方に延設される第6接続片162とによりL字形に形成されている。第5接続片161は、ねじ座を備えている。よって、第5接続片161を第2辺部材72(第1押出形材70)の切欠き部722に当接し、第2辺部材72の壁面29とは反対側の端部に設けられた通し穴に挿通されたビスS15を第5接続片161に螺合することで、連結部材16が第2辺部材72に固定される。第6接続片162は、第3辺部材73(第1押出形材70)の第1端面702に当接された状態で、ビスS18が挿通される。そして、このビスS18は、さらに第3辺部材73の通し穴731(
図6参照)に挿通された上、第3辺部材73(第1押出形材70)の中空部701に挿入された下部ブラケット122に螺合される。これにより、下部ブラケット122が第3辺部材73に固定されるとともに、連結部材16が第3辺部材73に固定される。なお、下部ブラケット122と第3辺部材73との間には、下部ブラケット122の枕木方向の位置調整のため、スペーサ17が適宜挿入される。以上のように、連結部材16が第2辺部材72と第3辺部材73に固定されることで、第2辺部材72と第3辺部材73とが連結される。
【0064】
なお、第3辺部材73には、上部ブラケット121もビスS19により連結される。 ビスS19を、第3辺部材73(第1押出形材70)の第1端面702の側から、通し穴732(
図5参照)に挿通した上、第3辺部材73(第1押出形材70)の中空部701に挿入された上部ブラケット121に螺合する。これにより、上部ブラケット121が第3辺部材73に固定される。なお、上部ブラケット121と第3辺部材73との間には、上部ブラケット121の枕木方向の位置調整のため、スペーサ18が適宜挿入される。
【0065】
以上のように、第1辺部材71、第2辺部材72、第3辺部材73が相互に連結されることで、仕切板枠7が形成される。そして、仕切板枠7の内周面の全周には、一連の仕切板受け705、取付溝704が形成される。よって、仕切板受け705の受け面705aと、取付溝704に取り付けられるクサビゴム11とで、仕切板6を挟持することで、仕切板6を仕切板枠7内に保持することが可能となっている。
【0066】
また、第1辺部材71、第2辺部材72、第3辺部材73は、ビスS11,S12,S14,S15,S17,S18を用いて連結されるものであるため、仕切板枠7の形成に溶接を行う必要がない。よって、溶接歪による意匠性の低下を防止することができる。
【0067】
また、本実施形態における仕切板枠7の形状は、仕切板6の形状に合わせて略扇状とされているが、これに限定されるものではない。第1押出形材70の曲げ加工が可能な範囲であれば、異なった意匠を具える仕切板枠とすることが可能である。
【0068】
さらに、ビスS11,S12,S14,S15,S17,S18は、全て第1端面702側から、各辺部材71,72,73に挿通されているため、仕切板枠7内に保持された仕切板6に隠れて見えなくなる。よって、袖仕切り5Aの意匠性の向上を図ることができる。なお、上部ブラケット121を第3辺部材73に固定するビスS19も、第1端面702側から第3辺部材73に挿通されるものであるため、仕切板枠7内に保持された仕切板6に隠れて見えなくなる。
【0069】
次にベース枠8について説明する。ベース枠8は、客室28の壁面29に固定され、仕切板枠7を支持するための部材である。ベース枠8は、第2押出形材80を、所定の長さに切断した上、必要な加工を施すことで得られたものである。
【0070】
上記の所定の長さとは、例えば、仕切板枠7と接続部材10と座席用骨組み9とを連結した垂直方向の高さと略同一の長さである。ベース枠8は、第2押出形材80により形成されているため、仕切板枠7等の大きさに合わせて自由に長さ変更可能という利点がある。また、上記の必要な加工とは、例えば、通し穴81,82(
図5参照)および切欠き部83(
図8参照)を設ける加工である。
【0071】
通し穴81は、ベース枠8(第2押出形材80)の第1溝部801と第2溝部802とを連通する貫通穴である。この通し穴81を設ける位置は、ベース枠8の第1溝部801に挿し込まれる第1辺部材71(第1押出形材70)のねじ穴711に対応する位置である。ビスS13を、ベース枠8(第2押出形材80)の第2溝部802の側から通し穴81に挿通し、第1辺部材71(第1押出形材70)のねじ穴711に螺合することで、仕切板枠7とベース枠8とが連結される。仕切板枠7とベース枠8とを連結するビスS13は、第2溝部802内に位置しており、袖仕切り5Aの外部からは視認できないため、意匠性の低下を防ぐことができる。
【0072】
通し穴82は、
図5および
図6に示すように、ベース枠8(第2押出形材80)の段差部803から第2溝部802に貫通する貫通穴であり、ベース枠8を壁面29に固定するために用いられる。
【0073】
壁面29には、アングル19,20がビス等により固定されているため、ビスS20を、ベース枠8の座席側から通し穴82に挿通し、第2溝部802内のアングル19,20に螺合することで、ベース枠8を壁面29に固定することができる。ベース枠8は仕切板枠7と連結されるため、ベース枠8が壁面29に固定されることで、仕切板枠7はベース枠8に支持されるようにして壁面29に固定される。なお、ビスS20の頭は、ベース枠8(第2押出形材80)に段差部803が設けられているため、ベース枠8(第2押出形材80)の表面から突出しないようにされている。また、ベース枠8(第2押出形材80)は、段差部803が座席側を向くように位置されているため、ビスS20は、ロングシートの背ずれで隠すことができる。
【0074】
さらにまた、
図6に示すように、ベース枠8の床面30側の端部では、アングル20がベース枠8から座席側に突出して設けられているが、ロングシートの座面で隠すことができる。なお、このように座面で隠すことが可能な部分は、アングル20の代わりに、
図9に示すようにフランジ部材84を用いることとしても良い。
図9は、袖仕切り5Aの変形例を示す図であり、ベース枠8の部分のみ図示した、
図2のB-B断面図に対応する図である。
【0075】
フランジ部材84は、ベース枠8の第2溝部802を塞ぐように位置された状態で、ベース枠8に溶接されている。よって、フランジ部材84を、壁面29にビス等により固定することで、ベース枠8が壁面29に固定される。溶接を行うと、溶接痕がベース枠8やフランジ部材84の表面に残るが、ロングシートの座面で隠すことが可能な個所であれば、意匠性が害されることがない。
【0076】
切欠き部83は、ベース枠8(第2押出形材80)の床面30側の端部の、壁面29側に、ベース枠8(第2押出形材80)が先細り形状となるように設けられている。先細り形状としているのは、壁面29の床面30側の端部が客室28に向かって傾斜していることから、ベース枠8(第2押出形材80)の形状を、この傾斜に合わせるためである。なお、壁面29に傾斜が設けられておらず、垂直面である場合には、ベース枠8(第2押出形材80)に切欠き部83を設ける必要はない。
【0077】
次に接続部材10について説明する。接続部材10は、座席用骨組み9を仕切板枠7に連結するための部材である。接続部材10は、第2押出形材80を、所定の長さに切断した上、必要な加工を施すことで得られたものである。
【0078】
上記の所定の長さとは、例えば、仕切板枠7の第2辺部材72の長さと略同一の長さである。接続部材10は、第2押出形材80により形成されているため、仕切板枠7の大きさに合わせて自由に長さ変更可能という利点がある。また、上記の必要な加工とは、例えば、通し穴101および切欠き部102(
図7参照)を設ける加工である。
【0079】
通し穴101は、
図7に示すように、接続部材10(第2押出形材80)の第1溝部801と第2溝部802とを連通する貫通穴である。この通し穴101を設ける位置は、接続部材10の第1溝部801に挿し込まれる第2辺部材72(第1押出形材70)のねじ穴721に対応する位置である。接続部材10の第2溝部802に挿し込まれる座席用骨組み9にも、ねじ穴721に対応する位置に通し穴91が設けられており、ビスS16を、ベース枠8(第2押出形材80)の第2溝部802の側から通し穴91および通し穴101に挿通し、第2辺部材72のねじ穴721に螺合することで、仕切板枠7と座席用骨組み9とが接続部材10を介して連結される。仕切板枠7と座席用骨組み9とを連結するビスS16は、第2溝部802内に位置しており、袖仕切り5Aの外部からは視認できないため、意匠性の低下を防ぐことができる。
【0080】
切欠き部102は、通路側から袖仕切り5Aを見たときに接続部材10と座席用骨組み9とが略同一平面上に位置するように、第2押出形材80の一部を切除したものである。なお、座席用骨組み9の座席側はロングシートの座面が位置するため、外部からは視認できない。
【0081】
(組み立て工程について)
次に、袖仕切り5Aの組み立て工程について説明する。
【0082】
まず、第1辺部材71とベース枠8とをビスS13により連結する。この第1辺部材71とベース枠8とを連結したものを第1組立体51とする。さらに、第2辺部材72と接続部材10と座席用骨組み9とをビスS16により連結する。この第2辺部材72と接続部材10と座席用骨組み9とを連結したものを第2組立体52とする。さらに、第3辺部材73と上部ブラケット121とをビスS19により連結する。この第3辺部材73と上部ブラケット121とを連結したものを第3組立体53とする。なお、第1組立体51、第2組立体52、第3組立体53のうち、どの組立体から組み立ててもかまわない。また、第1組立体51、第2組立体52、第3組立体53を、客室28内で組み立てるか、客室28外で組み立てるかについても問わない。
【0083】
次に、第1組立体51と、第2組立体52と、第3組立体53とを客室28内で連結する。
【0084】
まず、第1組立体51を壁面29に固定する。第1組立体51の壁面29への固定は、壁面29に固定されたアングル19,20に、ベース枠8をビスS20を用いて取付けることで行われる。そして、壁面29に固定した第1組立体51に対し、第2組立体52と、第3組立体53とを連結する。第1組立体51と第2組立体52との連結は、ビスS12,S14と連結部材15とを用いて、第1辺部材71と第2辺部材72とを連結することで行われる。また、第1組立体51と第3組立体53との連結は、ビスS11,S17と連結部材13とねじ座14とを用いて、第1辺部材71と第3辺部材73とを連結することで行われる。さらに、第2組立体52と第3組立体53との連結を行う。第2組立体52と第3組立体53との連結は、ビスS15,S18と連結部材16とを用いて、第2辺部材72と第3辺部材73とを連結することで行われる。同時に、ビスS18により下部ブラケット122が第3辺部材73に対して連結される。
【0085】
第1組立体51と第2組立体52と第3組立体53の連結が完了した後、座席側から、仕切板枠7に対して仕切板6を取り付ける。具体的には、仕切板6を座席側から仕切板枠7内に入れ、受け面705aに当接するように位置させる。そして、クサビゴム11を取付溝704に取り付ける。クサビゴム11は、仕切板枠7の内周全周に渡って取り付けられる。これにより、仕切板受け705の受け面705aとクサビゴム11とが仕切板6を挟持し、仕切板6が仕切板枠7内に保持される。なお、仕切板6は、クサビゴム11を取付溝704から取り外すことで、簡単に仕切板枠7から取り外すことができるようになるため、メンテナンス等において、仕切板6の交換を容易に行うことができる。
【0086】
(変形例について)
ここまで説明した袖仕切り5Aの仕切板枠7は、第1辺部材71、第2辺部材72、第3辺部材73を、全て第1端面702が仕切板枠7の内周側を向くように、かつ、厚み方向において、仕切板受け705が通路側に位置された状態で連結することで形成されている。したがって、仕切板6の仕切板枠7への取り付け、または、仕切板6の交換は、座席側から行うことになる(以下、仕切板6の仕切板枠7への取り付け、仕切板6の交換のことを、単に取付作業という)。仕切板6の取付作業を座席側から行うこととすることで、クサビゴム11が通路側から見えないようになるため、袖仕切りの意匠性の向上を図ることができる。
【0087】
しかし、座席側から取付作業を行うのは、座席が取付作業の邪魔になるおそれがある。したがって、作業効率の観点からは、取付作業を通路側から行うことが望ましい。作業効率を重視する場合には、
図10に示す袖仕切り5Bのように、仕切板枠7を形成するのが良い。具体的には、第1辺部材71、第2辺部材72、第3辺部材73を、全て第1端面702が仕切板枠7の内周側を向くように、かつ、厚み方向において、仕切板受け705が座席側に位置された状態で連結して、仕切板枠7を形成する。これにより、取付作業を通路側から行うことが出来るようになる。なお、
図10に示す袖仕切り5Bは、仕切板枠7を形成する第1押出形材70の向き以外は全て、袖仕切り5Aと同一の構成である。このように、第1押出形材70の向きにより、取付作業を座席側と通路側のどちら側から行うかを選択可能という点で、自由度が高くなる。
【0088】
以上説明したように、本実施形態に係る袖仕切り5A,5Bは、(1)鉄道車両1の車内空間(例えば客室28)における座席(例えばロングシート)と通路の間に位置する袖仕切り5A,5Bにおいて、座席と通路を仕切るための仕切板6と、仕切板6を保持する仕切板枠7と、車内空間(客室28)の壁面29に固定され、仕切板枠7を支持するベース枠8と、を備えること、仕切板枠7は、それぞれ所定の長さに切断した少なくとも3本の第1押出形材70により形成されること、ベース枠8は、所定の長さに切断した第2押出形材80により形成されること、を特徴とする。
【0089】
(2)(1)に記載の袖仕切り5A,5Bにおいて、仕切板枠7は、壁面29に平行な仕切板枠7の第1辺部材71を形成する第1押出形材70と、第1辺部材71に対して垂直に接続され、車内空間(客室28)の床面30に平行な仕切板枠7の第2辺部材72を形成する第1押出形材70と、湾曲された状態で第1辺部材71と第2辺部材72を接続する仕切板枠7の第3辺部材73を形成する第1押出形材70と、からなること、が好ましい。
【0090】
上記袖仕切り5A,5Bによれば、仕切板6を保持する仕切板枠7は、それぞれ所定の長さに切断した少なくとも3本の第1押出形材70により形成されることを特徴とするため、第1押出形材70の、本数や長さ、曲げ加工の実施等に応じ、様々な形状の仕切板枠7を得ることが可能となる。具体的には、例えば(2)に記載の袖仕切り5A,5Bのように、3本の第1押出形材70を用い、仕切板枠7を、壁面29に平行な仕切板枠7の第1辺部材71を形成する第1押出形材70と、第1辺部材71に対して垂直に接続され、床面30に平行な仕切板枠7の第2辺部材72を形成する第1押出形材70と、湾曲された状態で第1辺部材71と第2辺部材72を接続する仕切板枠7の第3辺部材73を形成する第1押出形材70と、から形成することが可能である。なお、第1押出形材70の所定の長さとは、仕切板枠7に求められる大きさや意匠に応じて設定される。
【0091】
また、車内空間(客室28)の壁面29に固定され、仕切板枠7を支持するベース枠8は、仕切板枠7を壁面29に固定するための部材であるところ、所定の長さに切断した第2押出形材80により形成されることを特徴とするため、第1押出形材70により得られる仕切板枠7の形状に合わせた形状を得ることが可能である。具体的には、例えば壁面29に平行な仕切板枠7の第1辺部材71を形成する第1押出形材70を支持するために十分な長さに切断した第2押出形材80を用いることで、仕切板枠7を壁面29に固定することができる。
【0092】
以上のように、袖仕切り5A,5Bを汎用性の高い第1押出形材70および第2押出形材80により形成することで、種々の意匠への部材の共通化を図ることが容易となる。
【0093】
(3)(1)または(2)に記載の袖仕切り5A,5Bにおいて、仕切板枠7を形成する第1押出形材70同士は、第1押出形材70にビス止めされる連結部材13,15、16により連結されること、が好ましい。
【0094】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の袖仕切り5A,5Bにおいて、第2押出形材80は、第2押出形材80の押出方向と平行に延在するとともに、相反する方向に開口する第1溝部801および第2溝部802により、略H字状の断面形状を備えること、が好ましい。
【0095】
(5)(4)に記載の袖仕切り5A,5Bにおいて、仕切板枠7は、ベース枠8を形成する第2押出形材80の第1溝部801に挿し込まれること、第1溝部801に挿し込まれた仕切板枠7は、第2溝部802に挿し込まれるビスS13により、第2押出形材80と結合すること、が好ましい。
【0096】
(6)(4)または(5)に記載の袖仕切り5A,5Bにおいて、仕切板枠7の、車内空間(客室28)の床面30側の端部に、所定の長さに切断した、ベース枠8とは別体の第2押出形材80(例えば接続部材10)を介して、座席(ロングシート)を支持するための座席用骨組み9が結合されていること、前記端部は、第1溝部801に挿し込まれること、座席用骨組み9は、第2溝部802に挿し込まれること、が好ましい。
【0097】
従来、袖仕切りは、袖仕切りを構成する部材を溶接することにより組み立てることが一般的であった。しかし、溶接を行うと部材に歪が生じることから、袖仕切りの意匠性が低下するおそれがあった。
【0098】
この点、(3)に記載の袖仕切り5A,5Bによれば、仕切板枠7を形成する第1押出形材70同士は、第1押出形材70にビス止めされる連結部材13,15、16により連結されることを特徴とするため、仕切板枠7の形成に溶接を用いる必要がない。よって、溶接歪による意匠性の低下を防止することができる。また、連結部材13,15、16を袖仕切り5A,5Bの外部から視認できない箇所に設けることでも意匠性の向上を図ることができる。
【0099】
また、仕切板枠7とベース枠8の連結についても、(4)に記載の袖仕切り5A,5Bによれば、第2押出形材80は、第2押出形材80の押出方向と平行に延在する第1溝部801および第2溝部802により、略H字状の断面形状を備えること、を特徴とするため、例えば、(5)に記載の通り、仕切板枠7は、ベース枠8を形成する第2押出形材80の第1溝部801に挿し込まれること、第1溝部801に挿し込まれた仕切板枠7は、第2溝部802に挿し込まれるビスにより、第2押出形材80と結合することとすれば、仕切板枠7を第2押出形材80(ベース枠8)に固定するビスS13は、第2溝部802に隠れた状態になる。よって、仕切板枠7と第2押出形材80(ベース枠8)との結合箇所は、袖仕切り5A,5Bの外部からは視認できず、意匠性の向上を図ることができる。さらには、(4)に記載の袖仕切り5A,5Bによれば、第2押出形材80を利用して、例えば(6)に記載のように、座席(ロングシート)を支持するための座席用骨組み9を、仕切板枠7に結合可能である。
【0100】
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載の袖仕切り5A,5Bにおいて、第1押出形材70には、仕切板枠7の内周面を形成する端面(第1端面702)の、袖仕切り5A,5Bの厚み方向の両端部のうちの一端に、他端の側から仕切板6を受ける仕切板受け705が立設、かつ、押出方向に延在していること、前記端面(第1端面702)において、仕切板受け705の前記他端の側に、仕切板受け705と所定の距離Dを置いて、クサビゴム11を取り付け可能な取付溝704が、押出方向に延在していること、が好ましい。
【0101】
従来、仕切板は、メンテナンス時に交換する場合があるが、袖仕切り内に固定されており、交換が容易でなかった。上記袖仕切り5A,5Bによれば、第1押出形材70には、仕切板枠7の内周面を形成する端面(第1端面702)の、袖仕切り5A,5Bの厚み方向の両端部のうちの一端に、他端の側から仕切板6を受ける仕切板受け705が立設、かつ、押出方向に延在しており、端面(第1端面702)において、仕切板受け705の他端の側に、仕切板受け705と所定の距離Dを置いて、クサビゴム11を取り付け可能な取付溝704が、押出方向に延在しているため、このような第1押出形材70を用いれば、仕切板6が仕切板受け705とクサビゴム11とに挟持されることで仕切板枠7内に保持されるように、仕切板枠7を構成可能である。したがって、クサビゴム11を取付溝704から取り外すだけで、仕切板6を仕切板枠7から取り外すことが可能であるため、仕切板6の交換が容易になる。なお、所定の距離Dとは、仕切板6の厚みに応じて適宜設定されるものである。
【0102】
また、袖仕切り5A,5Bの座席の側から通路の側に向かって、クサビゴム11、仕切板6、仕切板受け705の順に並ぶようにするか(
図5-
図7参照)、その逆(
図10参照)とするかは、仕切板枠7を構成する第1押出形材70の向きにより選定可能である。よって、通路の側からクサビゴム11が視認可能であることを避けたい等、求められる意匠性に応じて仕切板枠7を構成することができる。
【0103】
(8)(7)に記載の袖仕切り5A,5Bにおいて、第1押出形材70は、端面(第1端面702)の裏側に、押出方向に延在する中空部701を備えること、が好ましい。
【0104】
第1押出形材70は、端面(第1端面702)の裏側に、押出方向に延在する中空部701を備えるため、適宜中空部701を利用して、袖仕切り5A,5Bに追加的に部材(追加部材)を接続することが可能になる。具体的には、例えば、第1押出形材70に、中空部701に外部からアクセス可能な開口部を設けることで、当該開口部から、中空部701に追加部材を挿し込むことが可能になる。追加部材とは、例えば、手すりを袖仕切り5A,5Bに接続するための部材(例えば上部ブラケット121や下部ブラケット122)等が考えられる。
【0105】
また、本実施形態に係る鉄道車両1は、(9)車内空間(客室28)における座席(ロングシート)と通路の間に位置する袖仕切り5A,5Bを備える鉄道車両1において、袖仕切り5A,5Bは、上記(1)乃至(8)のいずれか1つに記載の袖仕切り5A,5Bであること、を特徴とするので、袖仕切り5A,5Bを構成する部材について、種々の意匠への共通化を図ることが容易となり、製造コストの低減を図ることができる。
【0106】
なお、上記実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、仕切板6はガラス板に限定されるものでなく、化粧板などであっても良い。
【符号の説明】
【0107】
1 鉄道車両
5A 袖仕切り
6 仕切板
7 仕切板枠
8 ベース枠
28 客室(車内空間の一例)
70 第1押出形材
80 第2押出形材