IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIエアロスペースの特許一覧

<>
  • 特開-出力装置 図1
  • 特開-出力装置 図2
  • 特開-出力装置 図3
  • 特開-出力装置 図4
  • 特開-出力装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156414
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】出力装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/282 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
G01S7/282 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070855
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】小川 誠仁
(72)【発明者】
【氏名】小澤 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 直浩
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB01
5J070AD03
5J070AD10
(57)【要約】
【課題】NLTL(Non-linear Transmission Line)を用いる場合に適切な位相制御を行うことが難しい場合がある。
【解決手段】出力装置は、生成するパルス信号の立ち上がり時間を指示する制御信号を送信する制御部と、制御信号に応じた立ち上がり時間のパルス信号を生成するパルス電源と、パルス電源が生成したパルス信号が入力され、入力されたパルス信号を高周波のパルス信号に変換して出力する非線形回路と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生成するパルス信号の立ち上がり時間を指示する制御信号を送信する制御部と、
前記制御信号に応じた立ち上がり時間の前記パルス信号を生成するパルス電源と、
前記パルス電源が生成した前記パルス信号が入力され、入力に応じた高周波出力を行う非線形回路と、
を有する
出力装置。
【請求項2】
前記パルス電源は、生成したパルス電圧の重ね合わせを行うことで前記パルス信号を生成するよう構成され、前記制御信号に応じて重ね合わせ前のパルス電圧に対する立ち上がりタイミングを制御することで、生成する前記パルス信号の立ち上がり時間を制御する
請求項1に記載の出力装置。
【請求項3】
前記パルス電源は、前記制御信号に応じてパルス生成時に用いる磁性体物質に対してDC(Direct Current)電圧を印加することで、前記パルス信号の立ち上がり時間を制御する
請求項1に記載の出力装置。
【請求項4】
前記非線形回路の出力波形情報を検出する検出部を有し、
前記制御部は、前記検出部が検出した前記出力波形情報に基づいて、前記制御信号が指示する立ち上がり時間を補正する
請求項1に記載の出力装置。
【請求項5】
前記検出部は、電気光学効果を利用して非接触で電界測定を行うことで前記出力波形情報を取得する
請求項4に記載の出力装置。
【請求項6】
前記パルス電源と前記非線形回路とを有する出力器を複数有し、
前記制御部は、複数の前記出力器それぞれに対して前記制御信号を送信する
請求項1に記載の出力装置。
【請求項7】
出力装置が、
生成するパルス信号の立ち上がり時間を指示する制御信号を送信し、
前記制御信号に応じた立ち上がり時間の前記パルス信号を生成し、
生成した前記パルス信号を非線形回路に入力して、前記非線形回路からの高周波出力を得る
出力方法。
【請求項8】
非線形回路に入力するパルス信号を生成するパルス電源に対して、前記パルス信号の立ち上がり時間を指示する制御信号を送信する指示部を有する
制御装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力装置、出力方法、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナ素子をアレイ状に配置したフェーズドアレイシステムなど、電波を出力する際に用いられる技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、発振器と、複数のアンテナ素子と、移相器と、分配手段と、移相器や分配手段を制御する制御手段と、アンテナ素子から放射される電波の電力を検出する受信手段から出力される受信信号を入力する信号入力部と、を備えるフェーズドアレイアンテナの位相校正方法が開示されている。また、特許文献1には、発振器としてクライストロンやマグネトロンなどを用いることが開示されている。
【0004】
また、発振器としてクライストロンなどを用いる代わりに、特許文献2に記載されているような非線形伝送線路(NLTL:Non-linear Transmission Line)を用いることがある。上記のようなNLTLを用いる場合においては、非特許文献1や非特許文献2に記載されている技術を用いることで、出力パルスの位相を制御可能であることが知られている。例えば、非特許文献1には、NLTLに入力する入力パルスの立ち上がりタイミングを変化させることで、NLTLから出力される出力パルスの位相を制御可能である旨が開示されている。また、非特許文献2には、NLTLに対してDC(Direct Current)バイアスを印加することで非線形特性を変化させることにより、出力パルスの位相を制御可能である旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-122874号公報
【特許文献2】特開2012-151746号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】I.V.Romanchenko et al. “High power microwave beam steering based on gyromagnetic nonlinear transmission lines” JOURNAL OF APPLIED PHYSICS 117, 214907 (2015)
【非特許文献2】N Seddon et al.“RF PULSE FORMATION IN NONLINEAR TRANSMISSION LINES” IEEE 34th International Conference on Plasma Science ・July 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1に記載のように入力パルスの立ち上がりタイミングを制御することで位相制御を行う場合、電源制御側の時間分解能に限度があることから、高周波化に際し細かな制御が困難になるおそれがあった。また、非特許文献2に記載のようにDCバイアスを印加する場合、各系統にバイアス回路が必要となる。そのため、システムが大型化したりバイアス電流により総合効率が低下したりするおそれがあった。例えば、以上のように、NLTLを用いる場合に非特許文献1や非特許文献2に記載の技術を用いたとしても、適切な位相制御を行うことが難しい場合がある、という課題が生じていた。
【0008】
そこで、本発明は、上述した課題を解決することが可能な出力装置、出力方法、制御装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため本開示の一形態である出力装置は、
生成するパルス信号の立ち上がり時間を指示する制御信号を送信する制御部と、
前記制御信号に応じた立ち上がり時間の前記パルス信号を生成するパルス電源と、
前記パルス電源が生成した前記パルス信号が入力され、入力に応じた高周波出力を行う非線形回路と、
を有する
という構成をとる。
【0010】
また、本開示の他の形態である出力方法は、
出力装置が、
生成するパルス信号の立ち上がり時間を指示する制御信号を送信し、
前記制御信号に応じた立ち上がり時間の前記パルス信号を生成し、
生成した前記パルス信号を非線形回路に入力して、前記非線形回路からの高周波出力を得る
という構成をとる。
【0011】
また、本開示の他の形態である制御装置は、
非線形回路に入力するパルス信号を生成するパルス電源に対して、前記パルス信号の立ち上がり時間を指示する制御信号を送信する指示部を有する
という構成をとる。
【発明の効果】
【0012】
上述したような各構成によると、上述したような課題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の第1の実施形態における出力システムの概要を説明するための図である。
図2】出力システムの構成例を示す図である。
図3】立ち上がり時間に応じた位相変化の一例を示す図である。
図4】制御ユニットの構成例を示すブロック図である。
図5】制御ユニットの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施形態]
本開示の第1の実施形態を図1から図5までを参照して説明する。図1は、出力システム100の概要を説明するための図である。図2は、出力システム100の構成例を示す図である。図3は、立ち上がり時間に応じた位相変化の一例を示す図である。図4は、制御ユニット300の構成例を示すブロック図である。図5は、制御ユニット300の動作例を示すフローチャートである。
【0015】
本開示の第1の実施形態では、非線形伝送線路(NLTL:Non-linear Transmission Line)を有する非線形回路220の出力位相を制御可能な出力装置である出力システム100について説明する。図1で例示するように、出力システム100は、非線形回路220に対して入力する入力パルスの立ち上がり時間を制御することで、非線形回路220からの出力位相を制御する。換言すると、出力システム100は、入力側の波形制御を行うことで、出力位相を制御することができる。
【0016】
なお、入力パルスの立ち上がり時間制御は、入力パルスの生成方法に応じた方法で実現することができる。例えば、パルス電圧の重ね合わせを行うことで入力パルスである高電圧パルス信号を生成する場合、入力パルスの立ち上がり時間制御は、重ね合わせ前のパルス電圧に対する立ち上がりタイミングの制御を行うことなどにより実現することができる。また、入力パルスの立ち上がり時間制御は、パルス生成時に用いる磁性体物質に対してDC(Direct Current)電圧を印加して磁性体の特性を変更することなどにより実現してもよい。入力パルスの立ち上がり時間制御は、上記例示した以外の方法で実現されてもよい。なお、立ち上がり時間とは、パルスの瞬時値が下限値に到達した後上限値に到達するまでの時間のことをいう。例えば、下限値が10%であり、上限値が90%である。下限値や上限値は上記例示した以外であってもよい。
【0017】
図2は、出力システム100の構成例を示している。図2を参照すると、出力システム100は、1つまたは複数の出力器200と、制御ユニット300と、を有している。一例として、出力システム100は、複数の出力器200にそれぞれ含まれるアンテナ素子230を規則的に設置したフェーズドアレイ方式の出力装置である。出力システム100は、出力位相を制御可能な上記例示した以外の出力装置であってもよい。
【0018】
出力器200は、制御ユニット300からの指示に応じてマイクロ波などの電波を出力する。この際、出力器200は、制御ユニット300からの指示に応じた出力位相の出力を行うことができる。
【0019】
図2で例示するように、出力器200は、高電圧パルス電源210と、非線形回路220と、アンテナ素子230と、検出部240と、を有している。なお、出力器200の構成は図2で例示した場合に限定されない。例えば、出力器200は、非線形回路220に対してDCバイアスを印加可能なようにバイアス回路を有していてもよいし、増幅器など図2で例示した以外の構成を有してもよい。また、出力器200は、検出部240を有さないなど図2で例示した構成のうちの一部を有さなくてもよい。
【0020】
高電圧パルス電源210は、制御ユニット300からの指示に応じて高電圧パルス信号を出力する。この際、高電圧パルス電源210は、制御ユニット300からの指示に応じて、指示に応じた立ち上がり時間の高電圧パルス信号を生成することができる。図2を参照すると、例えば高電圧パルス電源210は、小信号部211と、高電圧生成部212とを有している。
【0021】
小信号部211は、制御ユニット300から受信した動作トリガ信号に応じて、高電圧パルス信号の生成を指示する小信号を高電圧生成部212に対して送信する。また、高電圧生成部212は、小信号部211からの指示に応じて高電圧パルス信号を生成する。例えば、高電圧生成部212は、複数のパルス電圧を生成して生成したパルス電圧の重ね合わせを行うことで高電圧パルス信号を生成するなど、既知の方法を用いて高電圧パルス信号の生成を行うことができる。
【0022】
また、小信号部211や高電圧生成部212は、立ち上がり時間を制御するための制御信号を制御ユニット300から受信する。小信号部211や高電圧生成部212は、受信した制御信号に応じて生成する高電圧パルス信号の立ち上がり時間を制御することができる。換言すると、小信号部211や高電圧生成部212は、受信した制御信号に応じた立ち上がり時間の高電圧パルス信号を生成することができる。例えば、小信号部211や高電圧生成部212は、制御信号に応じて重ね合わせ前のパルス電圧に対する立ち上がりタイミングの制御を行うことなどにより、重ね合わせ後の高電圧パルス信号の立ち上がり時間を制御することができる。例えば、小信号部211や高電圧生成部212は、制御信号に応じて一部のパルス電圧の立ち上がりタイミングを遅くすることにより、重ね合わせ後の高電圧パルス信号の立ち上がり時間を長くすることができる。なお、小信号部211や高電圧生成部212は、立ち上がりタイミングを遅らせるパルス電圧の数や遅らせる時間の長さなどを調整することで、重ね合わせ後の高電圧パルス信号の立ち上がり時間を制御してもよい。また、小信号部211や高電圧生成部212は、制御信号に応じてパルス生成時に用いる磁性体物質に対してDC電圧を印加することで、高電圧パルス信号の立ち上がり時間を制御することができる。小信号部211や高電圧生成部212は、上記例示した方法のいずれか、または、その組み合わせを用いて立ち上がり時間を制御することができる。小信号部211や高電圧生成部212は、上記例示した以外の方法を用いて立ち上がり時間を制御してもよい。なお、制御信号の入力先は、高電圧パルス信号の生成方法などに応じて適宜設定してよい。
【0023】
非線形回路220は、伝送線路に可変容量ダイオードなどの非線形素子を複数備えたNLTLを有している。NLTLは、非線形特性を有するコンデンサやインダクタなどを備えてもよい。図2で例示する場合、非線形回路220には、高電圧パルス電源210が出力した高電圧パルス信号が入力される。これに応じて、非線形回路220は、入力した高電圧パルス信号を高周波の高電圧パルス信号に変換して出力する。
【0024】
図3は、非線形回路220における入力パルスの立ち上がり時間と出力パルスの位相変化例を示している。図3を参照すると、入力パルスの立ち上がり時間が変化することで、出力パルスの位相が変化していることが分かる。例えば、図3で例示する場合、実線で示す例から破線で示す例へと立ち上がり時間を長くすることで、出力パルスのピークが少し遅れていることが分かる。上述したように、本開示の場合、非線形回路220に入力する高電圧パルス信号の立ち上がり時間は、制御ユニット300が送信する制御信号に応じて変化する。その結果、図3で例示したように、非線形回路220に入力する高電圧パルス信号の立ち上がり時間に応じて、非線形回路220から出力する高周波の高電圧パルス信号の位相も変化する。つまり、出力位相が変化することとなる。
【0025】
なお、出力パルスの位相制御は、上述した立ち上がり時間の制御とともに、非特許文献1や非特許文献2に記載されている技術を併用して行ってもよい。換言すると、出力パルスの位相制御は、立ち上がり時間の制御と、立ち上がりタイミングの制御を併用することで行ってもよい。また、出力パルスの位相制御は、立ち上がり時間の制御と、非線形回路220に対するDCバイアスの印加を併用することで行ってもよい。出力パルスの位相制御は、上記例示した方法を組み合わせて行ってもよい。
【0026】
アンテナ素子230は、非線形回路220が出力する高周波の高電圧パルス信号に応じて、マイクロ波などの電波を出力する。本開示においては、アンテナ素子230については特に限定しない。
【0027】
検出部240は、非線形回路220の出力波形情報を検出する。また、検出部240は、検出した出力波形情報を制御ユニット300に対して送信する。
【0028】
例えば、検出部240は、アンテナ素子230などと接続されており、アンテナ素子230における電圧や位相などを測定することで出力波形情報を取得することができる。また、検出部240は、非線形回路220やアンテナ素子230と非接触な状態で電界測定を行うことにより出力波形情報を取得してもよい。一例として、検出部240は、非線形回路220近傍の所定箇所に予め設置されており、非線形回路220やアンテナ素子230と非接触な状態で電界測定を行うことができる。なお、電界測定は、金属のアンテナなどを用いて行ってもよいが、ポッケルス効果などの電気光学効果を利用して行う方がより望ましい。ここで、ポッケルス効果とは、結晶に印加する電界に応じて複屈折率が変化する現象のことをいう。検出部240は、偏光変化に応じた光強度変化の検出などにより複屈折率の変化を検出することで、結晶などに印加された電界波形を測定することができる。
【0029】
制御ユニット300は、出力器200に対して制御信号の送信などを行うことで、出力器200に対する出力位相の制御を行う位相制御回路(制御装置、制御部)である。また、制御ユニット300は、出力器200に対して動作トリガ信号の送信を行ったり、非線形回路220に対するDCバイアスの印加制御を行ったりすることができる。出力システム100に複数の出力器200が含まれる場合、制御ユニット300は、各出力器200に対して出力位相をそれぞれ指示してよい。
【0030】
例えば、出力システム100がフェーズドアレイ方式の出力装置である場合、制御ユニット300が各出力器200に対して出力位相を指示することで、出力する電波の方向を制御する。具体的に、制御ユニット300は、ある出力器200を基準として、他の出力器200に対して位相差を与えることで、出力する電波の方向を制御する。この際、制御ユニット300は、各出力器200に与える位相差に応じた制御信号をそれぞれの出力器200に対して送信することで、各出力器200に対して位相差を与えることができる。なお、制御ユニット300は、制御信号による立ち上がり時間の制御とともに、動作トリガ信号の送信タイミングを制御したり、非線形回路220に対して印加するDCバイアスを制御したりしてもよい。
【0031】
また、制御ユニット300は、検出部240から受信した出力波形情報に基づく指示を行うことができる。例えば、制御ユニット300は、検出部240から受信した出力波形情報に基づいて、上述した制御信号などを補正することができる。つまり、制御ユニット300は、出力波形情報に基づいて立ち上がり時間を補正することができる。例えば、非線形回路220のバラツキや温度環境の影響によって出力位相が変化することがある。制御ユニット300は、出力波形情報に基づく制御信号などの補正を行うことで、非線形回路220のバラツキや温度環境の影響などを反映したより的確な指示を行うことができる。
【0032】
図4は、上述した出力波形情報に基づく指示を行う際に用いる制御ユニット300の構成例を示している。図4を参照すると、制御ユニット300は、受信部310と比較部320と指示部330とを有することができる。例えば、制御ユニット300は、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置と記憶装置とを有しており、記憶装置に格納されたプログラムを演算装置が実行することで、各処理部を実現することができる。
【0033】
受信部310は、検出部240から出力波形情報を受信する。
【0034】
比較部320は、指示した位相と実際の出力位相とを比較することにより指示した位相と実際の出力位相との間に差異が生じているか否かを判別することで、制御信号などによる指示に補正が必要であるか否か判断する。比較部320は、出力システム100に含まれる各出力器200に対して上記比較を行うことで、上記判断を各出力器200に対して行ってよい。
【0035】
例えば、比較部320は、出力器200に対して指示した位相を特定する。比較部320は、指示に用いた制御信号の特定を行うことなど任意の方法を用いて上記特定を行ってよい。また、比較部320は、出力波形情報に基づいて実際の出力位相を特定する。この際、比較部320は、検出部240の設置位置などに応じた修正を行ったうえで、出力波形情報に基づく出力位相の特定を行ってよい。その後、比較部320は、指示した位相と、出力波形情報から判断される実際の出力位相と、を比較する。
【0036】
例えば、比較の結果として、基準となる信号に対して変化させるべく指示した位相と実際の出力位相との間に差異がないと判断される場合、比較部320は、出力器200に対する指示に変更はないと判断する。この場合、出力器200に対して送信する制御信号などの補正は行わない。一方、指示した位相と実際の出力位相との間に差異があると判断される場合、比較部320は、当該差異を埋めるように、制御信号などの補正を行う旨を判断する。これに応じて、制御信号などの補正を行うことができる。
【0037】
指示部330は、比較部320による判断の結果に応じた指示を出力器200や非線形回路220に対して行うことができる。
【0038】
例えば、比較部320が制御信号などの補正を行う旨を判断した場合、指示部330は、補正した制御信号などを出力器200に対して送信することができる。比較部320が制御信号などの補正を行う旨を判断した場合、指示部330は、動作トリガ信号を送信するタイミングを補正したり、非線形回路220に対するDCバイアス印加制御を補正したりしてもよい。一方、比較部320が制御信号などの補正を行わない旨を判断した場合、指示部330は、新たな補正を行わずに制御信号などを送信してよい。
【0039】
以上が、出力システム100の構成例である。続いて、図5を参照して、制御ユニット300の動作例について説明する。
【0040】
図5は、制御ユニット300の動作例を示すフローチャートである。図5を参照すると、受信部310は、検出部240から出力波形情報を受信する(ステップS101)。
【0041】
比較部320は、基準となる信号に対して変化させるべく指示した位相と実際の出力位相とを比較することで、制御信号などの指示に補正が必要であるか否か判断する(ステップS102)。例えば、指示した位相と実際の出力位相との間に差異がないと判断される場合、比較部320は、出力器200に対する指示に変更はないと判断する。この場合、出力器200に対して送信する制御信号などの補正は行わない。一方、指示した位相と実際の出力位相との間に差異があると判断される場合、比較部320は、当該差異を埋めるように、制御信号などの補正を行う旨を判断する。
【0042】
指示部330は、比較部320による判断の結果に応じた指示を出力器200に対して行う(ステップS103)。例えば、比較部320が制御信号などの補正を行う旨を判断し
た場合、指示部330は、補正した制御信号などを出力器200に対して送信することができる。
【0043】
以上が、制御ユニット300の動作例である。
【0044】
このように、出力システム100は、非線形回路220と制御ユニット300とを有している。このような構成によると、制御ユニット300による指示に応じた立ち上がり時間を有するパルス信号を非線形回路220に対して入力することができる。その結果、入力するパルス信号の立ち上がり時間に応じて変化する非線形回路220の出力位相を制御することができる。これにより、出力パルスの位相をより適切に制御することができる。
【0045】
また、出力システム100は、検出部240を有している。このような構成によると、制御ユニット300は、検出部240から受信した出力波形情報に基づいて、立ち上がり時間などを補正することができる。例えば、NLTLを有する非線形回路220のバラツキや温度環境の影響を受けて、非線形回路220からの出力位相が変化することがある。そのような場合でも、出力波形情報に基づく補正を行うことで、出力システム100は適切に位相制御することができる。
【0046】
また、検出部240は、ポッケルス効果などの電気光学効果を利用して出力波形情報を取得するよう構成することができる。電気光学効果を利用することで、出力波形情報を取得する際に電界に影響を与えるおそれを低減させることができ、より適切な制御を実現することができる。例えば、NLTLは、印加電圧によって出力インピーダンスが時間変化するという特性を持つ。そのため、NLTLを有する非線形回路220に対して、一般的な50オームの高周波計測回路を使うことは難しい。一方、上述した場合では、電気光学効果を利用することで、出力波形情報を取得することができる。その結果、出力波形情報を取得する際にNLTLの動作に影響を与えるおそれを排除し、より適切な制御を実現することができる。
【0047】
なお、出力システム100の構成は、例示した以外であってもよい。例えば、出力器200が有する検出部240周辺には、他の出力器200で生じる電界の影響を低減させるためのシールドなどを設けてもよい。また、出力システム100が有する複数の出力器200のうち、一部の出力器200のみが検出部240を有していてもよい。出力システム100は、そのほか既知の変形例を有していてもよい。
【0048】
<付記>
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうる。以下、本発明における出力装置などの概略を説明する。但し、本発明は、以下の構成に限定されない。
【0049】
(付記1)
生成するパルス信号の立ち上がり時間を指示する制御信号を送信する制御部と、
前記制御信号に応じた立ち上がり時間の前記パルス信号を生成するパルス電源と、
前記パルス電源が生成した前記パルス信号が入力され、入力に応じた高周波出力を行う非線形回路と、
を有する
出力装置。
(付記2)
前記パルス電源は、生成したパルス電圧の重ね合わせを行うことで前記パルス信号を生成するよう構成され、前記制御信号に応じて重ね合わせ前のパルス電圧に対する立ち上がりタイミングの制御を行うことで、生成する前記パルス信号の立ち上がり時間を制御する
付記1に記載の出力装置。
(付記3)
前記パルス電源は、前記制御信号に応じてパルス生成時に用いる磁性体物質に対してDC(Direct Current)電圧を印加することで、前記パルス信号の立ち上がり時間を制御する
付記1または付記2に記載の出力装置。
(付記4)
前記非線形回路の出力波形情報を検出する検出部を有し、
前記制御部は、前記検出部が検出した前記出力波形情報に基づいて、立ち上がり時間を補正する
付記1から付記3までのうちのいずれか1項に記載の出力装置。
(付記5)
前記検出部は、電気光学効果を利用して非接触で電界測定を行うことで前記出力波形情報を取得する
付記4に記載の出力装置。
(付記6)
前記パルス電源と前記非線形回路とを有する出力器を複数有し、
前記制御部は、複数の前記出力器それぞれに対して前記制御信号を送信する
付記1から付記5までのうちのいずれか1項に記載の出力装置。
(付記7)
出力装置が、
生成するパルス信号の立ち上がり時間を指示する制御信号を送信し、
前記制御信号に応じた立ち上がり時間の前記パルス信号を生成し、
生成した前記パルス信号を非線形回路に入力して、前記非線形回路からの高周波出力を得る
出力方法。
(付記8)
非線形回路に入力するパルス信号を生成するパルス電源に対して、前記パルス信号の立ち上がり時間を指示する制御信号を送信する指示部を有する
制御装置。
【0050】
なお、本開示において記載したプログラムは、記憶装置に記憶されていたり、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていたりする。例えば、記録媒体は、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、及び、半導体メモリ等の可搬性を有する媒体である。
【0051】
以上、上記各実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることが出来る。
【符号の説明】
【0052】
100 出力システム(出力装置)
200 出力器
210 高電圧パルス電源
211 小信号部
212 高電圧生成部
220 非線形回路
230 アンテナ素子
240 検出部
300 制御ユニット(制御装置、制御部)
310 受信部
320 比較部
330 指示部

図1
図2
図3
図4
図5