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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156417
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】電極支持体
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/80 20060101AFI20241029BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H01M4/80 C
H01M4/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070860
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 絵美
(72)【発明者】
【氏名】若元 佑太
(72)【発明者】
【氏名】川野 明彦
(72)【発明者】
【氏名】多羅尾 隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 政尚
(72)【発明者】
【氏名】森下 正典
【テーマコード(参考)】
5H017
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017CC25
5H017DD05
5H017DD06
5H017EE07
5H017HH01
5H017HH02
5H017HH05
5H017HH07
(57)【要約】
【課題】割れが生じ難く、500mAh/g以上の比容量を有する高容量の電気化学素子を提供可能な電極を実現できると共に、電気伝導に優れた電極を実現できる、電極支持体を提供すること。
【解決手段】本発明の電極支持体は、有機樹脂から構成された電極シートを含み、目付が2g/m以上25g/m未満であり、空隙率が64%より大きく100%未満である。この構成を有していることで、電極の割れが原因で起こる電気化学素子の容量減少が起こりにくく、しかも電気化学素子の電気抵抗が増大しにくい電極を実現できる、電極支持体である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機樹脂を含み構成された繊維シートを備える電極支持体であって、
前記電極支持体の目付が2g/m以上25g/m未満であり、
前記電極支持体の空隙率が64%より大きく100%未満である、
500mAh/g以上の比容量を有する電気化学素子を構成する電極に使用される、電極支持体。
【請求項2】
たて方向の5%モジュラス強度が60N/50mm幅以下である、請求項1に記載の電極支持体。
【請求項3】
JIS L1913:2010 6.8.1に規定されたフラジール法による通気量が300cm/cm・s以上である、請求項1に記載の電極支持体。
【請求項4】
前記電極支持体が備える繊維シートの表面に、導電性粒子および/または導電性繊維状体が付着している、請求項1に記載の電極支持体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比容量が500mAh/g以上の高容量な電池などの電気化学素子を構成する電極に使用する電極支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
電池などの電気化学素子の高容量化を検討する際に、例えばリチウムイオン電池におけるシリコン負極材料などの、理論容量が高い電極活物質を電極に使用することが検討されている。しかし、理論容量が高い電極活物質を電気化学素子の電極として用いた場合、電気化学素子の充放電時に当該電極活物質が大きく膨張収縮することがあった。そして、この膨張収縮が繰り返されることで、電極に割れ(クラック)が生じることがあった。
【0003】
他にも、電極を構成する電極活物質の量を増やすことで電気化学素子の高容量化を図ることがあるが、この場合、電極活物質の量を増やすと、電極を構成する柔軟性が小さく脆い電極活物質の層が厚くなり、電気化学素子の作製時に電極に割れが生じ易くなった。
【0004】
これらの要因で発生する電極の割れが原因で、電気化学素子のサイクル寿命の低下、及び電気化学素子の容量低下が生じることがあった。特に500mAh/g以上の比容量を有する高容量の電気化学素子を実現するため、電極に理論容量が高い電極活物質を採用した場合には、電気化学素子の充放電時に電極がより大きく膨張収縮する傾向があり、顕著に電極に割れが生じ易くなった。
【0005】
この電極に割れが生じる問題を解決する方法として、特表2015-518643号公報(特許文献1)には、有機樹脂を含み構成された繊維シートを備える電極支持体を含む二次電池用電極が開示されている。当該繊維シートを備える電極であることにより、柔軟性が高く、また、電極の膨張収縮が生じた際、あるいは、電極に外力が掛かった際であっても、当該繊維シートが緩衝作用を発揮することで、電極に割れが生じる現象を防止できる。その結果、電池の容量減少を防ぐことが出来ることが開示されている。なお、特許文献1には、電極支持体が備える繊維シートの最適な目付・空隙率については特に検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2015-518643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した特許文献1のような従来技術にかかる電極では、電極支持体が備える繊維シートが電気伝導を阻害し、当該電極を使用した電気化学素子の抵抗増大を招くことがあった。また、電極支持体が備える繊維シートによっては、繊維シートが緩衝作用を十分に発揮できず、電極の膨張収縮が生じた際、あるいは、電極に外力が掛かった際に電極に割れが生じることがあった。
【0008】
本発明は、このような状況下においてなされたものであり、割れが生じ難く、500mAh/g以上の比容量を有する高容量の電気化学素子を提供可能な電極を実現できると共に、電気伝導に優れた電極を実現できる、電極支持体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1にかかる発明は、「有機樹脂を含み構成された繊維シートを備える電極支持体であって、前記電極支持体の目付が2g/m以上25g/m未満であり、前記電極支持体の空隙率が64%より大きく100%未満である、500mAh/g以上の比容量を有する電気化学素子を構成する電極に使用される、電極支持体。」である。
【0010】
本発明の請求項2にかかる発明は、「たて方向の5%モジュラス強度が60N/50mm幅以下である、請求項1に記載の電極支持体。」である。
【0011】
本発明の請求項3にかかる発明は、「JIS L1913:2010 6.8.1に規定されたフラジール法による通気量が300cm/cm・s以上である、請求項1に記載の電極支持体。」である。
【0012】
本発明の請求項4にかかる発明は、「前記電極支持体が備える繊維シートの表面に、導電性粒子および/または導電性繊維状体が付着している、請求項1に記載の電極支持体。」である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1にかかる500mAh/g以上の比容量を有する、高容量な電気化学素子を構成する電極に使用される電極支持体は、有機樹脂から構成された繊維シートを含むため、柔軟性に優れる。そのため、電極に割れが生じる現象を防止できる電極支持体である。
【0014】
そして、本発明にかかる電極支持体の目付は2g/m以上25g/m未満である。電極支持体の目付が2g/m以上であることで、電極支持体が緩衝作用を発揮でき、前記電極支持体を備える電極が割れにくい。また、電極支持体の目付が25g/m以下であることで、電極支持体を構成する繊維が活物質間の接触を阻害しにくく、電気化学素子の電気伝導が低下しにくいことから、前記電極支持体を備える電極を使用した電気化学素子の電気抵抗が増大しにくい。
【0015】
更に、電極支持体の空隙率が64%より大きく100%未満と高い。そのため、電気化学素子の充放電時に電極が膨張収縮した際、あるいは、電気化学素子の作製時に外力が掛かった際に、電極支持体が変形し易いことでより高い緩衝作用を発揮でき、前記電極支持体を備える電極が割れにくい。
【0016】
以上のことから、電極の割れが原因で起こる電気化学素子の容量減少が起こりにくく、しかも電気化学素子の電気抵抗が増大しにくい電極を実現できる、電極支持体である。
【0017】
本発明の請求項2にかかる電極支持体は、電極支持体のたて方向の5%モジュラス強度が60N/50mm幅以下と低い。そのため、電気化学素子の充放電時に電極が膨張収縮する際や、電気化学素子の作製時に外力が掛かった際に、電極支持体が変形し易いことでより高い緩衝作用を発揮でき、前記電極支持体を備える電極が割れにくい。その結果、電極の割れが原因で起こる電気化学素子の容量減少が起こりにくく、高容量な電極を実現できる、電極支持体である。
【0018】
本発明の請求項3にかかる電極支持体は、電極支持体のフラジール法による通気量が300cm/cm・s以上と大きい。前記通気量が大きいということは電極支持体が疎な構造であることから、電極支持体が活物質間の接触を阻害しにくく、電極の電気伝導が低下しにくい。また、電極の充放電時にガスが発生してもガスが電極支持体を通り抜けやすいことからガスが電極の電気伝導を阻害しにくく、結果として電気化学素子の電気抵抗が増大しにくい。そのため、電気化学素子の電気抵抗が増大しにくい電極を実現できる、電極支持体である。
【0019】
本発明の請求項4にかかる電極支持体は、電極支持体が備える繊維シートの表面に、導電性粒子および/または導電性繊維状体が付着していることで、電極支持体の電気伝導性が高い。そのため、電気化学素子の電気抵抗が増大しにくい電極を実現できる、電極支持体である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の電極支持体は、有機樹脂を含み構成された繊維シートを備える。この繊維シートにより電極支持体の柔軟性が高く、また、電気化学素子の充放電時に電極が膨張収縮した際、あるいは、電極に外力が掛かった際に繊維シートが緩衝作用を発揮できることで、電極に割れが生じる現象を防止でき、電気化学素子の容量減少を防ぐことができる。
【0021】
本発明の電極支持体に備えられた繊維シートは、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、エポキシ系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、ニトリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリル樹脂など)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂など)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂など)、セルロース系樹脂(レーヨン繊維など)、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステル樹脂あるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)、ビニロン系樹脂(酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂など)、ポリフェニレンサルファイド樹脂などの公知の有機樹脂で構成されている。なお、繊維シートは単一の有機樹脂から構成されていてもよいし、2種類以上の複数の有機樹脂から構成されていてもよい。
【0022】
本発明の電極支持体に備えられた繊維シートにおける有機樹脂の含有量の百分率は、高ければ高いほど電極支持体の柔軟性が高く、電極に割れが生じる現象を防止でき、電気化学素子の容量減少を防ぐことができることから、80mass%以上が好ましく、90mass%以上がより好ましく、100mass%(すなわち、繊維シートが全て有機樹脂で構成されている)が更に好ましい。なお、「繊維シートにおける有機樹脂の含有量の百分率」の対象になる繊維シートは、繊維シートを構成する繊維、及び、繊維シートを構成する繊維同士や前記繊維と導電性粒子および/または導電性繊維状体とを接着するバインダのことを指し、後述の導電性粒子および/または導電性繊維状体は繊維シートに含まない。
【0023】
本発明の電極支持体に備えられた繊維シートの種類は、例えば、不織布や織物、編物であることができる。これらの中でも、高い空隙率を実現できる不織布が好ましい。繊維シートが不織布である場合、例えば、カード法やエアレイ法などで形成する乾式不織布、湿式法で形成する湿式不織布、また、樹脂を熱や溶媒により溶融させ紡糸する直接紡糸不織布(スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、静電紡糸不織布など)であることができるが、薄手で繊維分布が均一で、かつ空隙率が高い不織布を提供できることから、本発明の電極支持体に含まれる繊維シートは、湿式不織布であるのが好ましい。
【0024】
繊維シートを構成する繊維の繊度は、繊維シート及び前記繊維シートを含む電極支持体が十分な強度を有するように、0.01~20dtexが好ましく、0.02~15dtexがより好ましく、0.03~10dtexが更に好ましい。なお、本発明における繊度は、JIS L 1015(2010)「化学繊維ステープル試験方法」8.5.1に記載のA法に規定されている方法により測定できる。
【0025】
繊維シートの目付は、電気化学素子の作製時に外力が掛かった際や、電気化学素子の充放電時に電極が膨張収縮した際に電極支持体が緩衝作用を発揮でき電極が割れにくいように、また、電極支持体を構成する繊維が活物質間の接触を阻害しにくく、電気化学素子の電気伝導が低下しにくいように、2g/m以上25g/m未満が好ましく、3g/m~20g/mがより好ましく、4g/m~15g/mが更に好ましい。なお、本発明の目付は、JIS L 1913(2010)「一般不織布試験方法」の6.2に規定されている単位面積当たりの質量を目付と定義する。
【0026】
本発明の電極支持体は、繊維シートのみから構成されていてもよいが、電極支持体の電気伝導度を高め、電極支持体により電気化学素子の電気抵抗が増大しにくいように、電極支持体に含まれる繊維シートの表面に、導電性粒子および/または導電性繊維状体が付着していてもよい。なお、アスペクト比が100以上のものを導電性繊維状体、100未満のものを導電性粒子と定義する。10個の導電性粒子および/または導電性繊維状体の(長軸の長さ(nm)/短軸の長さ(nm))の平均値をアスペクト比と定義する。
長軸の長さは、測定対象全体を撮影した電子顕微鏡写真から、測定対象の延びる方向の軸(長軸)に沿った長さを測定した値であり、短軸の長さは、前記電子顕微鏡写真から測定した、前記長軸と直交する方向の、測定対象の外縁を結ぶ線分の中で最も短い長さの値である。
【0027】
導電性粒子としては、例えば、炭素、金属単体、金属酸化物、導電性ポリマーなどであることができる。これらの中でも導電性粒子が炭素であると、比較的高い導電性を有し、かつ金属と異なり、腐食せず電気抵抗の増大が起こりにくいことから、電極支持体が高い導電性を維持でき好ましい。また、導電性粒子の形状は、特に限定するものではないが、球状(略球状や真球状)、針状、平板状、多面体状、羽毛状、鱗片状などであることができる。
【0028】
導電性繊維状体としては例えば、金属繊維やカーボンナノチューブなどであることができる。これらの中でも導電性繊維状体が炭素で構成されたカーボンナノチューブであると、比較的高い導電性を有し、かつ金属で構成された導電性繊維状体と異なり、腐食せず電気抵抗の増大が起こりにくいことから、電極支持体が高い導電性を維持でき好ましい。
【0029】
導電性粒子の場合、粒径が10μm以上と大きいものを含んでいると、粒径が小さい導電性粒子と比べて、電極支持体に含まれる導電性粒子同士、あるいは導電性粒子と導電性粒子の他に含まれる導電性繊維状体の接触箇所が少なく、これにより導電性粒子同士の間、あるいは導電性粒子と導電性繊維状体の間の接点が原因となる電気化学素子の電気抵抗増大が起こりにくいため好ましい。導電性粒子の粒径が大きすぎると、導電性粒子が電極支持体から脱離しやすい傾向があり、電極支持体の導電性が低下することにより起こる電気化学素子の電気抵抗増大が起こるおそれがあることから、1mm以下が好ましい。なお、粒径は、電子顕微鏡写真から、50個の粒子サイズを測定した値の平均であり、対象となる導電性粒子の粒径に合わせて適宜倍率を変更し測定する。なお、球状でない粒子状の導電性粒子の粒子サイズは、導電性粒子の全体を撮影した電子顕微鏡写真における、導電性粒子の最も長い長さを粒子サイズとする。
【0030】
導電性繊維状体の場合、電極支持体の導電性を向上できるように、また、電極支持体から導電性繊維状体が脱落しにくいように、アスペクト比は100~50000が好ましく、150~30000がより好ましく、200~10000が更に好ましい。
【0031】
電極支持体に備えられた繊維シートの表面に、導電性粒子および/または導電性繊維状体が付着している場合、導電性粒子、導電性繊維状体の繊維シートの表面への付着は、例えば、繊維シートに含まれる芯鞘型複合繊維の表面に存在する鞘成分の融解固化による接着、バインダによる接着などであることができる。
【0032】
電極支持体が備える繊維シートの表面における、導電性粒子および/または導電性繊維状体の付着量は、多ければ多いほど電極支持体の電気伝導性が高く、電気化学素子の電気抵抗が増大しにくい電極を実現できることから、0.05g/m以上が好ましく、0.1g/m以上がより好ましく、0.2g/m以上が更に好ましい。一方、導電性粒子および/または導電性繊維状体の付着量が多すぎると、電極支持体を電極に組み込んだ際に、導電性粒子および/または導電性繊維状体が電極に含まれる活物質同士の接触を阻害し、電極のイオン伝導度が低下し、結果として電気化学素子の容量が低下するおそれがあること、また、導電性粒子および/または導電性繊維状体が電気化学素子の充放電過程で発生したガスの通気を阻害し、ガスにより電極の電気伝導を阻害し、結果として電気化学素子の電気抵抗が増大するおそれがあることから、10g/m以下が好ましい。
【0033】
本発明の電極支持体の目付は、電気化学素子の作製時に外力が掛かった際や、電気化学素子の充放電時に電極が膨張収縮した際に電極支持体が緩衝作用を発揮でき電極が割れにくいように、また、電極支持体を構成する繊維が活物質間の接触を阻害しにくく、電気化学素子の電気伝導が低下しにくいように、2g/m以上25g/m未満である。より電極が割れにくいように、また、より電極支持体を構成する繊維が活物質間の接触を阻害しにくく、電気化学素子の電気伝導が低下しにくいように、電極支持体の目付は3g/m~20g/mがより好ましく、4g/m~15g/mが更に好ましい。
【0034】
本発明の電極支持体は電極活物質と支持体がより密着した状態で存在することができ、電極支持体が電気伝導を阻害しにくく、電気化学素子の充放電時に電極が膨張収縮する際や、電気化学素子の作製時に外力が掛かった際に電極支持体が緩衝作用を発揮でき電極が割れにくいように、電極支持体の空隙率は64%より大きく100%未満である。電極支持体が電極の電気伝導を阻害しにくいように、また、電極支持体が緩衝作用をより発揮できるように、電極支持体の空隙率は70~90%であるのがより好ましく、82~88%であるのが更に好ましい。この「空隙率(P)」(単位:%)は次の式から得られる値をいう。
P=100-(Fr+Fr+・・+Fr
ここで、Frは電極支持体を構成するn成分の充填率(単位:%)を示し、次の式から得られる値をいう。
Fr={(M×Pr)/(T×SG)}×100
ここで、Mは電極支持体の目付(単位:g/cm)、Tは電極支持体の厚さ(単位:cm)、Prは電極支持体におけるn成分の存在質量比率、SGはn成分の密度(単位:g/cm)をそれぞれ意味する。
【0035】
本発明の電極支持体の厚さは、電気化学素子の充放電時に電極が膨張収縮する際や、電気化学素子の作製時に外力が掛かった際に、電極支持体が緩衝作用を発揮でき電極が割れにくいように、また、電極支持体が電極の電気伝導を阻害しにくいように、10~200μmが好ましく、15~150μmがより好ましく、18~100μmが更に好ましい。なお、本発明の厚さは、JIS B 7502(2016)「マイクロメータ」の3.1に規定されている外側マイクロメータ(測定範囲:0~25mm)を用いて、荷重150kPaで、無作為に選んで測定した10点の平均値をいう。
【0036】
本発明の電極支持体のたて方向の5%モジュラス強度は、電気化学素子の充放電時に電極が膨張収縮する際や、電気化学素子の作製時に外力が掛かった際に、電極が柔軟に曲がり、電極が割れにくく、フレキシブルかつ電極の割れが原因で起こる電気化学素子の容量減少が起こりにくく、高容量な電気化学素子であることができることから、60N/50mm幅以下であるのが好ましく、50N/50mm幅以下であるのがより好ましく、40N/50mm幅以下であるのが更に好ましい。本発明の電極支持体のたて方向の5%モジュラス強度の下限値については、特に限定するものではないが、3N/50mm幅以上が現実的である。
【0037】
ここでいう「電極支持体のたて方向」とは、電極支持体に備えられた繊維シートの製造方向(機械方向)のことを指し、この「たて方向の5%モジュラス強度」は、以下に述べる方法で測定できる。
(たて方向の5%モジュラス強度の測定方法)
(1)測定対象の電極支持体から長方形の試料(たて方向:200mm、たて方向に直交するよこ方向:50mm)を採取する。
(2)引張り試験機(オリエンテック社製、商品名:テンシロン(登録商標)、TM-111-100)を使用し、つかみ間隔100mm、引張り速度300mm/min.の条件で、試料を5mm長辺方向へ引張った際に測定された、強度の値(N/5cm)を求める。
(3)同様に合計10枚の試料について強度を求め、得られた各値の平均値を、測定対象における試料の長辺方向と平行をなす、たて方向の5%モジュラス強度(N/5cm)とする。
【0038】
本発明の電極支持体の、JIS L1913:2010 6.8.1に規定されたフラジール法による通気量(以下、通気量と称することがある)は、大きければ大きいほど、電極支持体が疎な構造であり、電極支持体が活物質間の接触を阻害しにくく、電極の電気伝導が低下しにくい。また、電極の充放電時にガスが発生してもガスが電極支持体を通り抜けやすいことからガスが電極の電気伝導を阻害しにくく、結果として電気化学素子の電気抵抗が増大しにくいことから、300cm/cm・s以上が好ましく、350cm/cm・s以上がより好ましく、400cm/cm・s以上が更に好ましい。通気量の上限は特に限定するものではない。
【0039】
本発明の電極支持体を有する電極における、電極支持体の存在態様は、電極を支持し、電気化学素子の充放電時に電極が膨張収縮した際に、あるいは、電気化学素子の作製時に外力が掛かった際に電極支持体が緩衝作用を発揮できるように、例えば、電極において、集電体と接する活物質で形成された層を被覆するように電極支持体が存在する態様、集電体と活物質で形成された層の間に挟まるように電極支持体が存在する態様、活物質で形成された層の内部の一部又は全体に電極支持体が存在し、活物質で形成された層と集電体が接触する態様などであることができる。なお、集電体と接する活物質で形成された層を被覆するように電極支持体が存在する態様、および、集電体と活物質で形成された層の間に挟まるように電極支持体が存在する態様の場合、電極支持体に活物質が入り込んでいても、電極支持体と活物質層で形成された層が完全に分離されていてもよい。これらの中でも、電極支持体が電気伝導を阻害しにくいように、また、電極から活物質が脱離しにくいように、電極において電極支持体は、集電体と接する活物質で形成された層を被覆するように電極支持体が存在する態様、かつ、電極支持体に活物質が入り込んでいる態様が好ましい。
【0040】
また、電極支持体は1つの電極あたり1枚のみ用いていてもよいし、2枚以上用いていてもよい。さらに、このときの電極支持体は、活物質と少なくとも一部が一体化していてもよく、活物質と一体化していなくてもよいが、電極支持体が活物質と少なくとも一部が一体化していると、電極支持体が電気伝導を阻害しにくいことから、好ましい。なお、「活物質と一体化している」は、電極から電極支持体を分離する際に、活物質が電極支持体と活物質を有する層に含まれるバインダや電極支持体の構成樹脂により接着して電極支持体単独で分離できない状態を意味する。
【0041】
本発明の電極支持体を有する電極は、電気化学素子において、正極、負極のいずれにも用いることができる。また、前記正極、負極と、正極と負極を分離するためのセパレータと積層されて電気化学素子が構成される。電気化学素子に組み込まれた電極の中で、電極支持体を有する電極は、正極または負極のいずれか一方のみであってもよいし、正極と負極の両方であってもよい。
【0042】
次に、本発明の電極支持体の製造方法について説明する。
【0043】
まず、電極支持体に含まれる繊維シートを準備する。繊維シートが織物や編物である場合、糸を、織るあるいは編むことで調製できる。繊維シートが不織布である場合、まず、乾式法(例えば、カード法、エアレイ法など)や湿式法、直接紡糸法により繊維ウエブを形成し、繊維ウエブの構成繊維同士を融着、絡合、あるいは結合させることで繊維シートを形成する。この方法としては、例えば、構成繊維の少なくとも一部(芯鞘型複合繊維など)を融解固化して繊維同士を融着する方法、ニードルや水流によって繊維同士を絡合する方法、バインダにより繊維同士を結合する方法などであることができる。
【0044】
このとき、電極支持体に電気化学素子の電解液が浸透しやすくするなどの目的のために、繊維シートを活性剤処理、プラズマ処理、スルホン化処理やフッ素ガス処理など、公知の方法で親水化処理してもよい。
【0045】
電極支持体に導電性粒子、導電性繊維状体のいずれも含まない場合、上述の繊維シートをそのまま電極支持体として用いる。電極支持体に含まれる繊維シートの表面に、導電性粒子および/または導電性繊維状体が付着している電極支持体の場合、繊維シートの表面に導電性粒子、導電性繊維状体のうち少なくとも一方を付着させる。繊維シートの表面に付着させる方法としては、例えば、繊維シートの構成繊維の表面を融解固化又は軟化により変形させて付着させる方法や、バインダにより接着させる方法であることができる。
【0046】
本発明の電極支持体は、500mAh/g以上と高い比容量を有する電気化学素子を構成する電極に使用される。電気化学素子の比容量が高ければ高いほど、より電気化学素子の充放電中に起こる電極の膨張収縮が大きく、電極に割れが発生しやすい傾向があり、電極支持体による電極の割れ抑制の効果が大きいことから、550mAh/g以上の比容量を有する電気化学素子を構成する電極に使用されるのが好ましく、600mAh/g以上の比容量を有する電気化学素子を構成する電極に使用されるのが更に好ましい。なお、ここでいう「比容量」は、電気化学素子を構成する正極に含まれる活物質1gあたりの電気化学素子の容量である正極の比容量(mAh/g)と、電気化学素子を構成する負極に含まれる活物質1gあたりの電気化学素子の容量である負極の比容量(mAh/g)のうち、数値の大きい方を「比容量」という。電気化学素子の容量は、対象となる正極または負極を電気化学素子に組み込み、0.1Cの充電速度で電気化学素子の電圧が4.2Vになるまで充電(満充電時の電圧が4.2V未満の電気化学素子の場合、満充電まで充電)した後、15分間放置し、その後、放電速度0.1Cで電気化学素子の電圧が0.001Vになるまで放電した際の実測値を指す。
【実施例0047】
以下、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、通気量は、750cm/cm・s以上の場合正確な値を測定できなかったため、750cm/cm・s以上と記載した。
【0048】
(実施例1)
芯鞘型複合繊維(芯成分がポリプロピレン(融点:160℃)、鞘成分がポリエチレン(融点:130℃)、繊度:0.8dtex、繊維長:5mm)のみにより、湿式法により繊維ウエブを調製した。
その後、前記繊維ウエブを温度130℃の熱風で処理し、芯鞘型複合繊維の鞘成分のみが融着した、芯鞘型複合繊維のみから構成された、電極支持体A(目付:2g/m、厚さ:18μm、空隙率:88%、通気量:750cm/cm・s以上、たて方向の5%モジュラス強度:4N/50mm幅)を調製した。
【0049】
(実施例2)
目付が5g/mであることを除いては、実施例1と同様にして、芯鞘型複合繊維のみから構成された、電極支持体B(目付:5g/m、厚さ:30μm、空隙率:82%、通気量:750cm/cm・s以上、たて方向の5%モジュラス強度:8N/50mm幅)を調製した。
【0050】
(実施例3)
目付が10g/mであることを除いては、実施例1と同様にして、芯鞘型複合繊維のみから構成された、電極支持体C(目付:10g/m、厚さ:75μm、空隙率:86%、通気量:484cm/cm・s、たて方向の5%モジュラス強度:35N/50mm幅)を調製した。
【0051】
(実施例4)
実施例2の電極支持体Bに、以下の(導電性粒子の組成)に示した導電性粒子を塗布し、130℃で加熱し、導電性粒子を電極支持体Bに付着させた。
(導電性粒子の組成)
単層カーボンナノチューブ(平均径:2nm、平均長さ:5μm):48.5mass%
鱗片状黒鉛(粒径:20μm):34.0mass%
アセチレンブラック(粒径:700nm):14.5mass%
PVDFバインダ:3.0mass%
これにより、芯鞘型複合繊維と導電性粒子から構成された、電極支持体D(目付:5.2g/m、厚さ:40μm、空隙率:86%、通気量:450cm/cm・s、たて方向の5%モジュラス強度:12N/50mm幅)を調製した。
【0052】
(比較例1)
目付が25g/mであることを除いては、実施例1と同様にして、芯鞘型複合繊維のみから構成された、電極支持体E(目付:25g/m、厚さ:145μm、空隙率:81%、通気量:226cm/cm・s、たて方向の5%モジュラス強度:69N/50mm幅)を調製した。
【0053】
(比較例2)
繊維ウエブを熱風処理した後、熱カレンダー処理(温度:40℃、圧力:4MPa)を行ったことを除いては、実施例3と同様にして、電極支持体F(目付:10g/m、厚さ:30μm、空隙率:64%、通気量:175cm/cm・s、たて方向の5%モジュラス強度:22N/50mm幅)を調製した。
【0054】
実施例1~4、比較例1~2で調製した電極支持体A~Fの目付、厚さ、空隙率、通気度、たて方向の5%モジュラス強度を以下の表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
また、次の方法で実施例1~4、比較例1~2の電極支持体を組み合わせた模擬電極の物性を評価した。
【0057】
(模擬電極の作製)
(1)市販のアルミホイルの上に、以下の組成の模擬活物質スラリーをたて方向600mm×よこ方向500mm×厚さ0.1mmになるように塗布した。
(模擬活物質スラリーの組成)
鱗片状黒鉛(粒径:5μm):95.0mass%
PVDFバインダ:5.0mass%
(2)模擬活物質スラリーの上を完全に覆うように、実施例及び比較例の電極支持体A~Fをかぶせた。なお、参考例1として、支持体を用いないものも準備した。
(3)(2)を130℃で加熱し、模擬電極を作製した。このとき、実施例及び比較例の電極支持体を有する模擬電極は、集電体と接する活物質で形成された層を被覆するように電極支持体が存在し、かつ、電極支持体の一部に活物質が入り込んでいた。
【0058】
(電極支持体による抵抗増加率測定)
(1)実施例、比較例、参考例の模擬電極の表面抵抗率を測定した。なお、表面抵抗率の測定は、JIS K 7194:1994「導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法」に記載の方法により模擬電極の抵抗率を測定し、これを表面抵抗率(Ω/□)とした。また、装置は三菱化学アナリテック製Loresta-GP MCP-T610を用いた。
(2)以下の式により、模擬電極の電極支持体による抵抗増加率(%)を算出した。
(式)=(R-RRef)/RRef×100
R:実施例1~4、比較例1~2の模擬電極の表面抵抗率
Ref:参考例1の模擬電極の表面抵抗率
【0059】
(折り曲げ抵抗増加率測定)
(1)(電極支持体による抵抗増加率測定)に記載された実施例、比較例、及び参考例の模擬電極の抵抗の測定方法と同じ方法で抵抗を測定し、この結果を初期表面抵抗率R(Ω/□)とした。
(2)模擬電極を、たて方向を2等分するように2つ折りに180度曲げた後、元に戻した。
(3)測定装置の4探針の、左から2つ目の探針と左から3つ目の探針の間に(2)の折り曲げ箇所がまたがる位置で再度模擬電極の表面抵抗率を測定し、この結果を曲げ後表面抵抗率R(Ω/□)とした。
(4)以下の式で、折り曲げ抵抗増加率(%)を算出した。
(式)=(R-R)/R×100
【0060】
(クラック発生試験)
(折り曲げ抵抗変化率測定)で2つ折りに曲げた模擬電極で、模擬電極の表面にクラック(ひび割れ)が発生しているか目視で確認し、以下の指標で評価した。
〇:目視でクラックが発生していることが確認できない
×:目視でクラックが発生していることが確認できる
【0061】
模擬電極の物性を評価した結果を、以下の表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
実施例と比較例の比較から、本発明の構成を有する電極支持体を電極に組み込むことで、電極支持体による抵抗増加率が低いにもかかわらず、折り曲げても電極にクラック(ひび割れ)が発生しにくいものであった。このことから、本発明の構成を有する電極支持体を電極に組み込むことで、電極の割れが原因で起こる、電気化学素子のサイクル寿命の低下、及び電気化学素子の容量低下が起こりにくく、また、電極支持体による電気化学素子の電気抵抗増加が起こりにくいものと考えられるものであった。
【0064】
さらに、次の方法で、電極支持体を電極に組み込んだ際の電池性能を評価した。
【0065】
(電池性能評価)
(実施例5)
(1)正極の準備
まず、以下の(正極ペーストの組成)で示した組成を有する正極ペーストを準備した。
(正極ペーストの組成)
NCM811(LiNi0.8Co0.1Mn0.1):94.0mass%
アセチレンブラック:3.0mass%
PVDFバインダ:3.0mass%
次に、得られたペーストを厚さ10μmのアルミ箔上に塗布し、130℃で加熱して、厚さ130μm、活物質量6.2gの正極を得た。
【0066】
(2)負極の準備
まず、以下の(負極ペーストの組成)で示した組成を有する負極ペーストを準備した。
(負極ペーストの組成)
黒鉛:66.0mass%
Si:2.0mass%
SiO:17.0mass%
アセチレンブラック:9.5mass%
カーボンナノチューブ:0.5mass%
PI(ポリイミド)バインダ:5.0mass%
次に、得られたペーストを厚さ10μmの銅箔上に塗布し、その上から実施例2で調製した電極支持体Bを重ねて130℃で加熱して、厚さ105μm、活物質量2.0gの負極を得た。
【0067】
(3)非水系電解液の準備
EC(エチレンカーボネート):50vol%
DEC(ジメチルカーボネート):50vol%
上述の電解液に対し、1mol/L LiPFの電解質塩と1.0mass% VC(ビニレンカーボネート)の電解液添加剤を加えて、非水系電解液を準備した。
【0068】
(4)セパレータの準備
5.5g/mのポリエチレンテレフタレート繊維の層と、3.5g/mのアラミド樹脂のパルプ状繊維とポリエチレンテレフタレート繊維が混合した層が積層され、3.0g/mのSiOでコーティングされた湿式不織布(目付:12.0g/m、厚さ:20μm)を準備した。
【0069】
(5)電池の作製
前記(1)で得られた正極、前記(2)で得られた負極、前記(3)で用意した電解液、前記(4)で得られたセパレータを用いて、リチウムイオン二次電池(電極サイズΦ11mm、2032型コインセル)を作製した。
【0070】
(比較例3)
負極に電極支持体Bを用いなかったことを除いては、実施例5と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0071】
(6)負極の比容量測定
まず、(5)で作成した実施例及び比較例のリチウムイオン二次電池を、0.1Cの充電速度でリチウムイオン二次電池の電圧が4.2Vになるまで充電した後、15分間放置した。
その後、放電速度0.1Cで、リチウムイオン二次電池の電圧が0.001Vになるまで放電した。この時の、各リチウムイオン二次電池の放電速度0.1Cにおける放電容量A(mAh)を測定し、この放電容量(mAh)を負極の質量(g)で除し、負極の比容量H(mAh/g)を確認した。
【0072】
(7)充放電試験
まず、(5)で作成した実施例及び比較例のリチウムイオン二次電池を、0.1Cの充電速度でリチウムイオン二次電池の電圧が4.2Vになるまで充電した後、15分間放置した。
その後、放電速度0.1Cで、リチウムイオン二次電池の電圧が2.0Vになるまで放電した。この時の、各リチウムイオン二次電池の放電速度0.1Cにおける放電容量A(mAh)を測定し、この放電容量(mAh)を負極の質量(g)で除し、負極の初期電池比容量H(mAh/g)を確認した。
次に、上述と同様の充放電試験を50回繰り返した。
次に、充放電を50回繰り返した後の負極の電池比容量Hを確認した。
次に、以下の(式)から、電池比容量維持率(%)を求めた。
(式)=H/H×100
【0073】
負極の比容量の測定結果、及び、充放電試験の結果を、以下の表3に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
実施例と比較例の比較から、本発明の構成を有する電極支持体を電極に組み込むことで、初期電池比容量が同等なとき、比容量維持率が高く、電気化学素子の容量が減少しにくく高容量な電気化学素子であることができることがわかった。これは、電極支持体により、充放電時に電極の膨張収縮が抑制され、また、膨張収縮した際に電極支持体が緩衝作用を発揮できることで、電極が割れにくくなったためと考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の電極支持体は、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、ナトリウムイオン電池、カリウムイオン電池、リチウム硫黄電池、有機正極二次電池、リチウム金属電池、ニッケル水素電池、アルカリ一次電池、電気二重層キャパシタなどの電気化学素子の電極を支持する電極体に適しているが、特に、リチウムイオン電池などの二次電池の電極を支持する支持体に適している。