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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156419
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】油圧機器の管理システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20241029BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01H17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070864
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼谷 英明
(72)【発明者】
【氏名】末田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】吉川 雅司
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024BA11
2G024BA27
2G024CA13
2G024CA30
2G024FA06
2G024FA15
2G064AA11
2G064AB02
2G064AB22
2G064BA02
2G064BD02
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】油圧機器の管理システムおよび方法において、油圧機器を停止させることなくメンテナンスや交換の必要性を判断可能とする。
【解決手段】油圧機器の稼働状態を検出する稼働状態検出部と、稼働状態検出部の検出結果に基づいて油圧機器の積算稼働時間を算出する稼働時間算出部と、稼働時間算出部が算出した積算稼働時間が予め設定された判定時間を超えるとメンテナンスが必要であると判定する判定部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧機器の稼働状態を検出する稼働状態検出部と、
前記稼働状態検出部の検出結果に基づいて前記油圧機器の積算稼働時間を算出する稼働時間算出部と、
前記稼働時間算出部が算出した前記積算稼働時間が予め設定された判定時間を超えるとメンテナンスが必要であると判定する判定部と、
を備える油圧機器の管理システム。
【請求項2】
前記稼働状態検出部は、予め設定された所定時間ごとに前記油圧機器の稼働時間を検出し、前記稼働時間算出部は、前記油圧機器の稼働時間を積算して前記積算稼働時間を算出する、
請求項1に記載の油圧機器の管理システム。
【請求項3】
前記稼働状態検出部は、前記油圧機器を稼働させるための電流値を検出する電流センサを有し、前記稼働時間算出部は、前記電流センサが検出した電流値が予め設定された基準値を超えた時間を積算して前記積算稼働時間を算出する、
請求項1または請求項2に記載の油圧機器の管理システム。
【請求項4】
前記稼働状態検出部は、前記油圧機器から排出された作動油の温度を検出する温度センサを有し、前記稼働時間算出部は、前記温度センサが検出した作動油の温度が予め設定された基準値を超えた時間を積算して前記積算稼働時間を算出する、
請求項1または請求項2に記載の油圧機器の管理システム。
【請求項5】
前記稼働状態検出部は、前記油圧機器により作動する加工装置の振動を検出する振動センサを有し、前記稼働時間算出部は、前記振動センサが検出した振動値が予め設定された基準値を超えた時間を積算して前記積算稼働時間を算出する、
請求項1または請求項2に記載の油圧機器の管理システム。
【請求項6】
前記稼働状態検出部は、前記油圧機器を稼働させるための電流値を検出する電流センサと、前記油圧機器から排出された作動油の温度を検出する温度センサと、前記油圧機器により作動する加工装置の振動を検出する振動センサとを有し、前記稼働時間算出部は、前記電流センサが検出した電流値が予め設定された第1基準値を超えた時間を積算して第1積算稼働時間を算出し、前記温度センサが検出した作動油の温度が予め設定された第2基準値を超えた時間を積算して第2積算稼働時間を算出し、前記振動センサが検出した振動値が予め設定された第3基準値を超えた時間を積算して第3積算稼働時間を算出し、前記第1積算稼働時間を前記第2積算稼働時間および前記第3積算稼働時間により補正して前記積算稼働時間を算出する、
請求項1または請求項2に記載の油圧機器の管理システム。
【請求項7】
前記稼働状態検出部は、複数の前記油圧機器の稼働状態を検出可能であり、前記稼働時間算出部は、複数の前記油圧機器の積算稼働時間を算出可能であり、前記判定部は、複数の前記油圧機器におけるメンテナンスの必要性を判定可能であり、前記判定部がメンテナンスの必要があると判定した複数の前記油圧機器に対するメンテナンス時期を調整するメンテナンス時期調整部を有する、
請求項1に記載の油圧機器の管理システム。
【請求項8】
前記稼働状態検出部は、ワイヤレスネットワークを通して前記稼働時間算出部に接続可能である、
請求項1に記載の油圧機器の管理システム。
【請求項9】
油圧機器の稼働状態を検出するステップと、
前記油圧機器の稼働状態に基づいて前記油圧機器の積算稼働時間を算出するステップと、
前記積算稼働時間が予め設定された判定時間を超えるとメンテナンスが必要であると判定するステップと、
を有する油圧機器の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、油圧機器の管理システムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、圧延機は、上下一対の作業ロールと、油圧式圧下装置とを有する。圧延機は、駆動回転する上下一対の作業ロールの間に金属製の板材を挿入し、油圧式圧下装置により上下一対の作業ロールに挟持圧を作用させ、板材を所定の厚さおよび幅に圧延加工する。圧延機は、油圧源と油圧式圧下装置との間に油圧機器としてのサーボバルブが配置される。サーボバルブは、油圧源からの油圧式圧下装置への油圧を制御することで、上下一対の作業ロールの挟持圧を調整する。
【0003】
サーボバルブは、長期の使用により劣化し、メンテナンスや交換が必要になる。サーボバルブの故障診断装置として、例えば、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載されたサーボバルブの故障診断装置は、サーボバルブの劣化状態を診断してサーボバルブのメンテナンスや交換の必要性を判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6112085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、サーボバルブの劣化状態を診断してサーボバルブのメンテナンスや交換の必要性を判断する場合、サーボバルブの検査時間が長くなってします。そのため、圧延機を長時間にわたって停止する必要があり、稼働率が低下してしまうという課題がある。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、油圧機器を停止させることなくメンテナンスや交換の必要性を判断可能とする油圧機器の管理システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本開示の油圧機器の管理システムは、油圧機器の稼働状態を検出する稼働状態検出部と、前記稼働状態検出部の検出結果に基づいて前記油圧機器の積算稼働時間を算出する稼働時間算出部と、前記稼働時間算出部が算出した前記積算稼働時間が予め設定された判定時間を超えるとメンテナンスが必要であると判定する判定部と、を備える。
【0008】
また、本開示の油圧機器の管理方法は、油圧機器の稼働状態を検出するステップと、前記油圧機器の稼働状態に基づいて前記油圧機器の積算稼働時間を算出するステップと、前記積算稼働時間が予め設定された判定時間を超えるとメンテナンスが必要であると判定するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の油圧機器の管理システムおよび方法によれば、油圧機器を停止させることなくメンテナンスや交換の必要性を判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態の圧延システムを表す概略構成図である。
図2図2は、第1実施形態の油圧機器の管理システムを表す概略構成図である。
図3図3は、稼働状態検出部の検出結果を表すグラフである。
図4図4は、第1実施形態の油圧機器の管理方法を表すフローチャートである。
図5図5は、第2実施形態の油圧機器の管理システムを表す概略構成図である。
図6図6は、第2実施形態の油圧機器の管理方法を説明するための説明図である。
図7図7は、第3実施形態の圧延システムを表す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0012】
[第1実施形態]
<圧延システム>
図1は、第1実施形態の圧延システムを表す概略構成図である。
【0013】
図1に示すように、圧延システム10は、圧延機(加工装置)11と、油圧装置12と、制御装置13と、管理システム14とを備える。この場合、圧延機11と油圧装置12と制御装置13は、製造会社に配置され、管理システム14は、製造会社またはメンテナンス会社に配置される。管理システム14は、例えば、ネットワークにより圧延機11、油圧装置12、制御装置13に接続可能であってもよい。また、管理システム14は、メンテナンス会社の社員が操作する端末からネットワークにより管理システム14に接続可能である。
【0014】
圧延機11は、ハウジング(図示略)と、上下一対の作業ロール21,22と、上下一対の中間ロール23,24と、上下一対の補強ロール25,26と、油圧式圧下装置27と、ロードセル28と、位置検出器29とを有する。
【0015】
作業ロール21,22は、水平方向に沿うと共に、上下に対接可能に配置され、ハウジングに回転自在に支持される。作業ロール21,22は、図示しない駆動装置により同期して駆動回転可能である。中間ロール23,24は、水平方向に沿うと共に、作業ロール21,22の上方および下方で、作業ロール21,22にそれぞれ対接可能に配置され、ハウジングに回転自在に支持される。中間ロール23,24は、図示しない駆動装置により同期して駆動回転可能である。なお、作業ロール21,22と中間ロール23,24は、いずれか一方または両方が駆動される。補強ロール25,26は、水平方向に沿うと共に、中間ロール23,24の上方および下方で、中間ロール23,24にそれぞれ対接可能に配置され、ハウジングに回転自在に支持される。
【0016】
油圧式圧下装置27は、補強ロール26の下方に配置され、ハウジングに支持される。油圧式圧下装置27は、油圧シリンダを有し、補強ロール26を上方に押圧する。ロードセル28は、補強ロール25の上方に配置され、ハウジングに支持される。ロードセル28は、補強ロール25に作用する荷重を検出し、荷重を電気信号に変換して出力する。位置検出器29は、油圧式圧下装置27における油圧シリンダの位置(ピストンの位置)を検出して出力する。
【0017】
圧延機11は、作業ロール21,22の間に金属製の板材(例えば、鉄鋼やアルミニウムなど)が供給され、油圧式圧下装置27により中間ロール23,24を介して作業ロール21,22に挟持圧を作用させることで、板材を所定の厚さ(および幅)に圧延加工する。
【0018】
油圧装置12は、貯留タンク31と、油圧ポンプ32と、サーボバルブ(油圧機器)33とを有する。
【0019】
貯留タンク31は、所定量の作動油を貯留する。油圧ポンプ32は、配管34により貯留タンク31に連結されると共に、配管35によりサーボバルブ33に連結される。油圧ポンプ32は、貯留タンク31の作動油を加圧し、所定圧力の作動油をサーボバルブ33に供給する。サーボバルブ33は、スプールバルブであって、ケースと、スプールと、駆動部とを有する。スプールは、ロッドに複数の弁体を有して構成され、ケースに軸方向に移動自在に支持される。駆動部は、スプールを軸方向に移動可能である。サーボバルブ33は、配管35により油圧ポンプ32に連結されると共に、配管36により圧延機11の油圧式圧下装置27に連結される。また、サーボバルブ33は、配管37により貯留タンク31に連結される。
【0020】
サーボバルブ33は、例えば、スプールが軸方向の中立位置にあるとき、配管35,36との連通が遮断される。そして、サーボバルブ33は、スプールが軸方向に移動して位置が変更することで、作動油の流路、流量、圧力を調整し、配管36を経由して油圧式圧下装置27に供給され、補強ロール25,26、中間ロール23,24、作業ロール21,22を押し付ける荷重を調整する。油圧式圧下装置27に供給された作動油は、配管36、サーボバルブ33、配管37を経由して貯留タンク31に戻され、循環して利用される。
【0021】
制御装置13は、圧延機11のロードセル28と位置検出器29が接続される。また、制御装置13は、サーボバルブ33が接続される。制御装置13は、ロードセル28から入力された圧下荷重と位置検出器29から入力された油圧シリンダの位置(ピストンの位置)に基づいてサーボバルブ33を制御する。
【0022】
なお、制御装置13は、コントローラであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などにより、記憶部に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。
【0023】
管理システム14は、管理装置41と、記憶装置42と、表示装置43とを有する。また、管理システム14は、稼働状態検出部としての電流センサ44と、温度センサ45と、振動センサ46とを有する。
【0024】
電流センサ44は、制御装置13からサーボバルブ33に出力する電流値を検出し、管理装置41に出力する。温度センサ45は、サーボバルブ33が油圧式圧下装置27に供給する作動油の温度を検出し、管理装置41に出力する。なお、温度センサ45は、作動油の温度を検出することができればどの位置でもよく、例えば、貯留タンク31に配置してもよい。振動センサ46は、圧延機11の振動(振動値)を検出し、管理装置41に出力する。ここで、温度センサ45は、例えば、熱電対であり、振動センサ46は、例えば、加速度計である。
【0025】
管理装置41は、電流センサ44と温度センサ45と振動センサ46が接続される。管理装置41は、記憶装置42と表示装置43が接続される。管理装置41は、電流センサが検出したサーボバルブ33の電流値と、温度センサ45が検出した油圧式圧下装置27の作動油の温度と、振動センサ46が検出した圧延機11の振動が入力される。管理装置41は、サーボバルブ33の電流値と、油圧式圧下装置27の作動油の温度と、圧延機11の振動を記憶装置42に記憶させる。記憶装置42は、サーボバルブ33の電流値、油圧式圧下装置27の作動油の温度、圧延機11の振動以外に、後述する各種の基準値や判定値などを記憶する。また、管理装置41は、サーボバルブ33の稼働状態を表示装置43に表示させる。
【0026】
なお、管理装置41は、制御装置であり、制御装置は、コントローラであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などにより、記憶部に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。
【0027】
<油圧機器の管理システム>
図2は、第1実施形態の油圧機器の管理システムを表す概略構成図、図3は、稼働状態検出部の検出結果を表すグラフである。
【0028】
図2に示すように、管理装置41は、データ取得部51と、稼働時間算出部52と、判定部53とを有する。
【0029】
データ取得部51は、サーボバルブ33の電流値と、油圧式圧下装置27の作動油の温度と、圧延機11の振動を取得し、記憶装置42に記憶させる。記憶装置42は、電流値と作動油の温度と振動における計測回数、計測値、稼働時間を記憶する。図3に示すように、例えば、電流値が基準値(例えば、0)を超えると、インターバル時間の経過ごとに計測回数のカウントを開始し、このときの計測値と計測時間(稼働時間)を取得する。ここでは、時間t1,t2にて、電流値が基準値を超えたことから、計測回数を2カウントし、時間t3~t7にて、電流値が基準値を超えたことから、計測回数を7カウントし、時間t8,t9にて、電流値が基準値を超えたことから、計測回数を2カウントし、合計の計測回数は、9カウントとなる。そして、計測値を取得すると共に、電流値が基準値を超えた稼働時間T1,T2,T3を取得する。
【0030】
記憶装置42は、作動油の温度と振動についても同様に、計測回数と計測値と稼働時間を記憶する。例えば、作動油の温度と振動が基準値(例えば、0)を超えると、インターバル時間の経過ごとに計測回数のカウントを開始し、このときの計測値と計測時間(稼働時間)を取得する。ここでは、時間t1,t3,t8にて、作動油の温度と振動が基準値を超えたことから、合計の計測回数を9カウントとし、計測値を取得すると共に、作動油の温度と振動が基準値を超えた稼働時間T1,T2,T3を取得する。
【0031】
図2に戻り、稼働時間算出部52は、データ取得部51が取得し、記憶装置42に記憶された電流値と作動油の温度と振動における計測回数、計測値、稼働時間に基づいてサーボバルブ33の積算稼働時間を算出する。ここで、積算稼働時間とは、稼働時間T1,T2,T3の合計値である。稼働時間算出部52は、電流値と作動油の温度と振動ごとにそれぞれ積算稼働時間を算出する。
【0032】
すなわち、サーボバルブ33が作動する場合、制御装置13が制御指令としての電流をサーボバルブ33に出力する。そのため、制御装置13がサーボバルブ33に電流を出力している時間がサーボバルブ33の稼働時間となる。また、サーボバルブ33が作動すると、所定圧力の作動油が配管36通して油圧式圧下装置27に供給される。配管36を流れる作動油は、油圧ポンプ32により高圧に加圧されていることから、サーボバルブ33が稼働していないときの配管36の作動油に比べて温度が高い。そのため、配管36の作動油の温度が高い時間がサーボバルブ33の稼働時間となる。さらに、サーボバルブ33から油圧式圧下装置27に作動油が供給されて圧延機11が作動すると、圧延機11が振動する。そのため、圧延機11の振動が高い時間がサーボバルブ33の稼働時間となる。なお、サーボバルブ33の稼働状態の判定は、その他、例えば、サーボバルブ33の内部の作動油の変動を検出する差動変圧式変位センサなどを用いてもよい。
【0033】
判定部53は、稼働時間算出部52が算出した積算稼働時間が予め設定された判定時間を超えるとサーボバルブ33のメンテナンス(または、交換)が必要であると判定する。判定部53は、サーボバルブ33のメンテナンス(または、交換)が必要であると判定すると、表示装置43にサーボバルブ33のメンテナンス(または、交換)が必要であることを表示する。
【0034】
<油圧機器の管理方法>
図4は、第1実施形態の油圧機器の管理方法を表すフローチャートである。
【0035】
図2および図4に示すように、ステップS11にて、管理装置41は、前回の計測時期から所定時間が経過したか否かを判定する。ここで、所定時間とは、予め設定されたインターバル時間であり、例えば、1分から10分の範囲であり、適宜設定される。ここで、管理装置41は、前回の計測時期から所定時間が経過していないと判定(No)すると、この状態で待機する。一方、管理装置41は、前回の計測時期から所定時間が経過したと判定(Yes)すると、ステップS12にて、計測回数を1つ加算する。
【0036】
ステップS13にて、データ取得部51は、サーボバルブ33の電流値を取得する。ステップS14にて、取得したサーボバルブ33の電流値が第1基準値を超えたか否かを判定する。ここで、サーボバルブ33の電流値が第1基準値を超えていないと判定(No)すると、ステップS28に移行する。一方、サーボバルブ33の電流値が第1基準値を超えたと判定(Yes)すると、ステップS15にて、計測回数を1つ加算する。
【0037】
ステップS16にて、データ取得部51は、サーボバルブ33の電流値が基準値を超えた第1稼働時間Ta1,Ta2,Ta3・・・を記憶装置42に記憶する。ステップS17にて、稼働時間算出部52は、記憶装置42に記憶されデータ過去の複数のサーボバルブ33の複数の第1稼働時間Ta1,Ta2,Ta3・・・を積算することで、サーボバルブ33の第1積算稼働時間TAを算出する。
【0038】
ステップS13~S17の処理と並行して、ステップS18~S22の処理とステップS23~S27の処理を行う。
【0039】
すなわち、ステップS18にて、データ取得部51は、油圧式圧下装置27の作動油の温度を取得する。ステップS19にて、取得した油圧式圧下装置27の作動油の温度が第2基準値を超えたか否かを判定する。ここで、油圧式圧下装置27の作動油の温度が第2基準値を超えていないと判定(No)すると、ステップS28に移行する。一方、油圧式圧下装置27の作動油の温度が第2基準値を超えたと判定(Yes)すると、ステップS20にて、計測回数を1つ加算する。
【0040】
ステップS21にて、データ取得部51は、油圧式圧下装置27の作動油の温度が基準値を超えた第2稼働時間Tb1,Tb2,Tb3・・・を記憶装置42に記憶する。ステップS22にて、稼働時間算出部52は、記憶装置42に記憶されデータ過去の複数の油圧式圧下装置27の作動油の温度の複数の第2稼働時間Tb1,Tb2,Tb3・・・を積算することで、サーボバルブ33(油圧式圧下装置27)の第2積算稼働時間TBを算出する。
【0041】
また、ステップS23にて、データ取得部51は、圧延機11の振動を取得する。ステップS24にて、取得した圧延機11の振動値が第3基準値を超えたか否かを判定する。ここで、圧延機11の振動値が第3基準値を超えていないと判定(No)すると、ステップS28に移行する。一方、圧延機11の振動値が第3基準値を超えたと判定(Yes)すると、ステップS25にて、計測回数を1つ加算する。
【0042】
ステップS26にて、データ取得部51は、圧延機11の振動が基準値を超えた第3稼働時間Tc1,Tc2,Tc3・・・を記憶装置42に記憶する。ステップS27にて、稼働時間算出部52は、記憶装置42に記憶されデータ過去の複数の圧延機11の振動の複数の第3稼働時間Tc1,Tc2,Tc3・・・を積算することで、サーボバルブ33(圧延機11)の第3積算稼働時間TCを算出する。
【0043】
ステップS28にて、サーボバルブ33の総合積算稼働時間Tを下記数式により算出する。ここで、ka,kb,kcは、積算稼働時間TA,TB,TCに対する係数である。つまり、係数ka,kb,kcは、積算稼働時間TA,TB,TCに対する重み付け係数であり、係数ka,kb,kcの合計は、1.0である。
T=ka・TA+kb・TB+kc・TC
【0044】
ここで、第1積算稼働時間TAの寄与度が第2積算稼働時間TBおよび第3積算稼働時間TCの寄与度より高い場合、総合積算稼働時間Tは、下記となる。
T=0.4TA+0.3TB+0.3TC
なお、係数ka,kb,kcは、適宜設定すればよい。
【0045】
なお、総合積算稼働時間Tの算出方法は、上述した方法に限定されるものではない。例えば、第1積算稼働時間TAと第2積算稼働時間TBと第3積算稼働時間TCのいずれか1つまたは2つに基づいて総合積算稼働時間Tを算出してもよい。また、第1積算稼働時間TAを第2積算稼働時間TBや第3積算稼働時間TCに基づいて補正して総合積算稼働時間Tを算出してもよい。すなわち、第1積算稼働時間TAと第2積算稼働時間TBや第3積算稼働時間TCを比較し、第2積算稼働時間TBや第3積算稼働時間TCが第1積算稼働時間TAより長い場合、第1積算稼働時間TAに増加係数(例えば、1.1)を乗算して総合積算稼働時間Tを算出する。また、第2積算稼働時間TBや第3積算稼働時間TCが第1積算稼働時間TAより短い場合、第1積算稼働時間TAに減少係数(例えば、0.9)を乗算して総合積算稼働時間Tを算出する。
【0046】
ステップS29にて、判定部53は、総合積算稼働時間Tが予め設定された判定値以上であるか否かを判定する。判定値は、判定時間であり、サーボバルブ33の耐久性などを考慮して設定される。ここで、判定部53は、総合積算稼働時間Tが判定値以上ではないと判定(No)すると、サーボバルブ33のメンテナンスの必要がないとしてこのルーチンを抜ける。一方、判定部53は、総合積算稼働時間Tが判定値以上であると判定(Yes)すると、ステップS30にて、サーボバルブ33のメンテナンスが必要であることを表示装置43により通知する。
【0047】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態の油圧機器の管理システムを表す概略構成図、図6は、第2実施形態の油圧機器の管理方法を説明するための説明図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0048】
図5に示すように、管理システム14は、管理装置41と、記憶装置42と、表示装置43とを有する。管理装置41は、記憶装置42と表示装置43が接続されると共に、電流センサ44と温度センサ45と振動センサ46が接続される。管理装置41は、データ取得部51と、稼働時間算出部52と、判定部53と、通信装置54とを有する。管理装置41は、通信装置54を介してネットワーク(ワイヤレスネットワーク)60に接続可能である。また、メンテナンス会社に配置される総合管理装置61は、ネットワーク60を介して複数の製造会社の管理装置41,41A,41B・・・に接続可能である。
【0049】
総合管理装置61は、サーボバルブ33のメンテナンス時期を調整するメンテナンス時期調整部として機能する。管理装置41,41A,41B・・・が複数の製造会社のサーボバルブ33に対して、メンテナンスの必要があると判定した場合、総合管理装置61は、複数のサーボバルブ33に対するメンテナンス時期を設定する。そして、総合管理装置61は、複数のサーボバルブ33に対するメンテナンス時期が重複した場合、メンテナンス時期を調整する。
【0050】
図6に示すように、A期間とD期間にサーボバルブ33のメンテナンス台数が台数限界値を超えた場合、A期間とD期間に実施するサーボバルブ33のメンテナンス時期を、台数限界値を超えていないB期間とC期間に変更し、各期間におけるサーボバルブ33のメンテナンス台数を平準化する。このとき、メンテナンス台数が台数限界値を超えているA期間とD期間に実施するサーボバルブ33に対して、優先度を設定する。例えば、使用年数の長いサーボバルブ33のメンテナンスを先行して実施し、使用年数の短いサーボバルブ33のメンテナンスを遅らせる。また、交換していないサーボバルブ33のメンテナンスを先行して実施し、新規交換したサーボバルブ33のメンテナンスを遅らせる。また、圧延機11が熱間圧延設備に設置されているサーボバルブ33のメンテナンスを先行して実施し、冷間圧延設備に設置されているサーボバルブ33のメンテナンスを遅らせる。
【0051】
総合管理装置61は、複数のサーボバルブ33に対するメンテナンス時期が重複した場合、メンテナンス台数が台数限界値を超えた期間のメンテナンスを、台数限界値を超えていない期間に変更することで、各期間におけるサーボバルブ33のメンテナンス台数を平準化することができ、作業効率を向上することができる。
【0052】
[第3実施形態]
図7は、第3実施形態の圧延システムを表す概略構成図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0053】
図7に示すように、管理システム14は、管理装置41と、記憶装置42と、表示装置43とを有する。管理装置41は、記憶装置42と表示装置43が接続される。また、管理装置41は、複数の圧延機11,11A,11B・・・の電流センサ44と温度センサ45と振動センサ46がネットワーク60を介して接続される。そのため、管理装置41は、複数の圧延機11,11A,11Bに対応するサーボバルブ33の稼働状態をネットワーク60により取得することができ、複数のサーボバルブ33のメンテナンス時期を調整することができる。
【0054】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る油圧機器の管理システムは、サーボバルブ(油圧機器)33の稼働状態を検出する稼働状態検出部と、稼働状態検出部の検出結果に基づいてサーボバルブ33の積算稼働時間を算出する稼働時間算出部52と、稼働時間算出部52が算出した積算稼働時間が予め設定された判定時間を超えるとメンテナンスが必要であると判定する判定部53とを備える。
【0055】
第1の態様に係る油圧機器の管理システムによれば、サーボバルブ33の稼働状態に基づいて算出したサーボバルブ33の積算稼働時間が判定時間を超えるとメンテナンスが必要であると判定することから、サーボバルブ33を停止させることなくメンテナンスや交換の必要性を判断することができる。
【0056】
第2の態様に係る油圧機器の管理システムは、第1の態様に係る油圧機器の管理システムであって、さらに、稼働状態検出部は、予め設定された所定時間ごとにサーボバルブ33の稼働時間を検出し、稼働時間算出部52は、サーボバルブ33の稼働時間を積算して積算稼働時間を算出する。これにより、サーボバルブ33の稼働時間を適切に検出することができる。
【0057】
第3の態様に係る油圧機器の管理システムは、第1の態様または第2態様に係る油圧機器の管理システムであって、さらに、稼働状態検出部は、サーボバルブ33を稼働させるための電流値を検出する電流センサ44を有し、稼働時間算出部52は、電流センサ44が検出した電流値が予め設定された基準値を超えた時間を積算して積算稼働時間を算出する。これにより、サーボバルブ33の電流値に基づいてサーボバルブ33の稼働時間を高精度に検出することができる。
【0058】
第4の態様に係る油圧機器の管理システムは、第1の態様から第3の態様のいずれか一つに係る油圧機器の管理システムであって、さらに、稼働状態検出部は、サーボバルブ33から排出された作動油の温度を検出する温度センサ45を有し、稼働時間算出部52は、温度センサ45が検出した作動油の温度が予め設定された基準値を超えた時間を積算して積算稼働時間を算出する。これにより、サーボバルブ33の油温に基づいてサーボバルブ33の稼働時間を高精度に検出することができる。
【0059】
第5の態様に係る油圧機器の管理システムは、第1の態様から第4の態様のいずれか一つに係る油圧機器の管理システムであって、さらに、稼働状態検出部は、サーボバルブ33により作動する圧延機(加工装置)11の振動を検出する振動センサ46を有し、稼働時間算出部52は、振動センサ46が検出した振動値が予め設定された基準値を超えた時間を積算して積算稼働時間を算出する。これにより、圧延機11の振動に基づいてサーボバルブ33の稼働時間を高精度に検出することができる。
【0060】
第6の態様に係る油圧機器の管理システムは、第1の態様から第5の態様のいずれか一つに係る油圧機器の管理システムであって、さらに、稼働時間算出部52は、電流センサ44が検出した電流値が予め設定された第1基準値を超えた時間を積算して第1積算稼働時間を算出し、温度センサ45が検出した作動油の温度が予め設定された第2基準値を超えた時間を積算して第2積算稼働時間を算出し、振動センサ46が検出した振動値が予め設定された第3基準値を超えた時間を積算して第3積算稼働時間を算出し、第1積算稼働時間を第2積算稼働時間および第3積算稼働時間により補正して積算稼働時間を算出する。これにより、積算稼働時間を高精度に算出することができる。
【0061】
第7の態様に係る油圧機器の管理システムは、第1の態様から第6の態様のいずれか一つに係る油圧機器の管理システムであって、さらに、稼働状態検出部は、複数のサーボバルブ33の稼働状態を検出可能であり、稼働時間算出部52は、複数のサーボバルブ33の積算稼働時間を算出可能であり、判定部53は、複数のサーボバルブ33におけるメンテナンスの必要性を判定可能であり、判定部53がメンテナンスの必要があると判定した複数のサーボバルブ33に対するメンテナンス時期を調整する総合管理装置(メンテナンス時期調整部)61を有する。これにより、所定の期間におけるサーボバルブ33のメンテナンス台数を平準化することができ、作業効率を向上することができる。
【0062】
第8の態様に係る油圧機器の管理システムは、第1の態様から第7の態様のいずれか一つに係る油圧機器の管理システムであって、さらに、稼働状態検出部は、ネットワーク(ワイヤレスネットワーク)60を通して稼働時間算出部52に接続可能である。これにより、管理装置41は、複数のサーボバルブ33の稼働状態を把握することができ、サーボバルブ33のメンテナンス作業を適切に調整することができる。
【0063】
第9の態様に係る油圧機器の管理方法は、サーボバルブ(油圧機器)33の稼働状態を検出するステップと、稼働状態検出部の検出結果に基づいてサーボバルブ33の積算稼働時間を算出するステップと、稼働時間算出部52が算出した積算稼働時間が予め設定された判定時間を超えるとメンテナンスが必要であると判定するステップとを有する。これにより、サーボバルブ33を停止させることなくメンテナンスや交換の必要性を判断することができる。
【0064】
なお、上述した実施形態では、油圧機器をサーボバルブ33として説明したが、油圧機器は、サーボバルブ33に限らず、油圧を使用して作動する機器であればよく、例えば、油圧ポンプ、油圧モータ、油圧シリンダなどであってもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 圧延システム
11 圧延機(加工装置)
12 油圧装置
13 制御装置
14 管理システム
21,22 作業ロール
23,24 中間ロール
25,26 補強ロール
27 油圧式圧下装置
28 ロードセル
29 位置検出器
31 貯留タンク
32 油圧ポンプ
33 サーボバルブ(油圧機器)
34,35,36 配管
41 管理装置
42 記憶装置
43 表示装置
44 電流センサ(稼働状態検出部)
45 温度センサ(稼働状態検出部)
46 振動センサ(稼働状態検出部)
51 データ取得部
52 稼働時間算出部
53 判定部
54 通信装置
60 ネットワーク
61 総合管理装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7