(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156430
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】リニアモータ、およびそれを用いた医療用診療装置
(51)【国際特許分類】
H02K 41/02 20060101AFI20241029BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20241029BHJP
A61B 1/24 20060101ALI20241029BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20241029BHJP
H02K 41/03 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H02K41/02 A
G02B26/10 105Z
A61B1/24
G01B11/24 A
H02K41/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070882
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000138185
【氏名又は名称】株式会社モリタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 剛
【テーマコード(参考)】
2F065
2H045
4C161
5H641
【Fターム(参考)】
2F065AA53
2F065BB05
2F065DD03
2F065FF09
2F065FF10
2F065HH04
2F065HH05
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065MM07
2H045AF01
2H045AF02
4C161AA08
4C161BB06
4C161PP12
4C161PP13
4C161RR19
4C161RR26
5H641BB06
5H641GG02
5H641GG04
5H641GG07
5H641GG10
5H641GG12
5H641HH03
5H641HH07
5H641JA09
(57)【要約】
【課題】本開示は、小型化が可能で、かつ制御が簡単で、製造コストを抑えることができるリニアモータ、およびそれを用いた医療用診療装置を提供する。
【解決手段】リニアモータ801は、永久磁石53を有する可動子190と、永久磁石53に対向する位置に配置されたコイル52を有する固定子と、可動子190が直線運動するように案内するリニアガイド60と、を備える。リニアガイド60に設けられた支持部180と、支持部180に対応して可動子190に設けられた保持部160とを嵌合することで、可動子190がリニアガイド60に取り付けられている。コイル52は、板状のヨーク51と、ヨーク51に巻き付ける巻き線54とを含む。巻き線54は、第1巻き方向でヨーク51に巻き付ける第1領域51aと、第1巻き方向と反対方向となる第2巻き方向でヨーク51に巻き付ける第2領域51bとを有するように、ヨーク51に連続で巻き付けてある。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線運動をするリニアモータであって、
永久磁石を有する可動子と、
前記永久磁石に対向する位置に配置されたコイルを有する固定子と、
前記可動子が直線運動するように案内するリニアガイドと、を備え、
前記リニアガイドに設けられた支持部と、前記支持部に対応して前記可動子に設けられた保持部とを嵌合することで、前記可動子が前記リニアガイドに取り付けられ、
前記コイルは、板状のヨークと、前記ヨークに巻き付ける巻き線とを含み、
前記巻き線は、第1巻き方向で前記ヨークに巻き付ける第1領域と、前記第1巻き方向と反対方向となる第2巻き方向で前記ヨークに巻き付ける第2領域とを有するように、前記ヨークに連続で巻き付けてある、リニアモータ。
【請求項2】
前記ヨークは、前記第1領域の巻き始めに位置する第1樹脂部と、前記第2領域の巻き終わりに位置する第2樹脂部と、前記第1領域と前記第2領域との境界に位置する第3樹脂部とをアウトサート成形で一体成形してある、請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記巻き線は、前記第3樹脂部で前記第1巻き方向と前記第2巻き方向とを切り替えて前記ヨークに連続で巻き付けてある、請求項2に記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記第1領域と前記第2領域とは同じ面積である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【請求項5】
前記支持部は、前記可動子側に向けて外部に突出する凸部を含み、
前記保持部は、前記凸部に嵌合する凹部を含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【請求項6】
前記凸部は、前記可動子側に向けて外部に突出した円柱または球の形状を有し、
前記凹部は、円柱または球の形状を有する前記凸部に嵌合する形状を有する、請求項5に記載のリニアモータ。
【請求項7】
前記永久磁石と、前記永久磁石に対向する位置に配置された前記コイルとの複数の組み合わせを有している、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【請求項8】
前記可動子は、直線運動方向に対して垂直な面の少なくとも一方の面に弾性部材を有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【請求項9】
前記リニアガイドは、前記可動子が直線運動するように案内する二つの平行に設けられている、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【請求項10】
前記可動子は、直線運動方向に開口部を有し、当該開口部に光学備品を保持することができる、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【請求項11】
前記可動子は、切削工具を保持する切削保持部を有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【請求項12】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の前記リニアモータと、
前記可動子が前記リニアガイドに沿って直線運動できるように前記リニアモータを保持するハウジングと、を備える医療用診療装置。
【請求項13】
手持ち式の3次元スキャナである、請求項12に記載の医療用診療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リニアモータ、およびそれを用いた医療用診療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、口腔内の歯および周辺軟組織を走査して3次元の形状データを取得する医療用診療装置として3次元スキャナが知られている。たとえば、特許文献1(特許第6883559号公報)には、レンズやカウンタウェイトをリニアモータで直線運動させるスキャナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された3次元スキャナでは、物体側に設けられた複数の支持部と、複数のリニアガイド側のそれぞれに設けられた保持部とを、遊びをもって嵌合させることで、装置の組立上の誤差の影響を極力受けずにレンズやカウンタウェイトをリニアモータで直線運動させて口腔内の歯および周辺軟組織の3次元の形状データを取得することができる。しかし、特許文献1に開示されたリニアモータでは、レンズを挟んで直線運動方向の前後でコイルに流す電流の向きを反対にする必要があり、平板状のスパイラルコイルを円弧状に成形したコイルを採用している。そのため、コイル自体が大きくなり、リニアモータが大型化し、構造が複雑化する要因となってしまう。また、レンズを挟んで直線運動方向の前後で異なるコイルを配置するリニアモータが考えられるが、2つのコイルの制御が複雑になると共に、製造コストが高くなる問題があった。
【0005】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、小型化が可能で、かつ制御が簡単で、製造コストを抑えることができるリニアモータ、およびそれを用いた医療用診療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るリニアモータは、直線運動をするリニアモータであって、永久磁石を有する可動子と、永久磁石に対向する位置に配置されたコイルを有する固定子と、可動子が直線運動するように案内するリニアガイドと、を備える。リニアガイドに設けられた支持部と、支持部に対応して可動子に設けられた保持部とを嵌合することで、可動子がリニアガイドに取り付けられている。コイルは、板状のヨークと、ヨークに巻き付ける巻き線とを含む。巻き線は、第1巻き方向でヨークに巻き付ける第1領域と、第1巻き方向と反対方向となる第2巻き方向でヨークに巻き付ける第2領域とを有するように、ヨークに連続で巻き付けてある。
【0007】
本開示に係る医療用診療装置は、上記のリニアモータと、可動子がリニアガイドに沿って直線運動できるようにリニアモータを保持するハウジングと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示では、第1巻き方向でヨークに巻き付ける第1領域と、第1巻き方向と反対方向となる第2巻き方向でヨークに巻き付ける第2領域とを有するように、巻き線をヨークに連続で巻き付けたコイルを採用しているので、小型化が可能で、かつ制御が簡単で、製造コストを抑えることができるリニアモータ、およびそれを用いた医療用診療装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る3次元スキャナの構成を示す模式図である。
【
図2】(A)は実施の形態に係るハンドピースの構成を示す模式図である。(B)は実施の形態に係るハンドピースのX-Z断面を示す模式図である。
【
図3】実施の形態に係る3次元スキャナにおいてレンズとカウンタウェイトとの位置関係を説明するための図である。
【
図4】実施の形態に係るリニアモータの斜視図である。
【
図5】実施の形態に係るリニアモータの分解斜視図である。
【
図6】実施の形態に係るリニアモータのX-Y断面での断面図である。
【
図10】実施の形態に係るリニアモータの磁気回路を説明するための図である。
【
図11】変形例に係る医療用診療装置である切削装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について図に基づいて説明する。
<実施の形態>
まず、本開示の実施の形態における医療用診療装置の構成について説明する。実施の形態では診療装置の一例として、歯科診療に用いることが可能な3次元スキャナについて説明する。3次元スキャナは、口腔内の歯の3次元形状を取得するための口腔内スキャナである。実施の形態に係る3次元スキャナは、口腔内スキャナに限定されるものではなく、同様の構成を有する他の3次元スキャナにも適用可能であり、たとえば、口腔内以外に人の耳の内部を撮像することで外耳内の3次元形状を取得するスキャナにも適用可能である。また、医療用診療装置は、3次元スキャナに限らず、切削工具を駆動する医療用診療装置にも適用可能である。
【0011】
また、実施の形態に係る医療用診療装置は、歯科に限らず、眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、内科、外科、および獣医科など、あらゆる医科の診療にも適用可能である。なお、診療には、診断および治療が含まれる。
【0012】
[3次元スキャナの構成]
図1は、実施の形態に係る3次元スキャナ100の構成を示す模式図である。3次元スキャナ100は、「医療用診療装置」の一実施の形態に対応する。
図1に示すように、3次元スキャナ100は、ハンドピース70と、制御部40と、表示部50と、電源45とを備える。ハンドピース70は、手持ち式の部材であり、プローブ10と、接続部20と、光学計測部30とを含む。
【0013】
プローブ10は、口腔内に差し込まれ、歯などの対象物99にパターンを有する光(以下、単にパターンともいう)を投影する。プローブ10は、パターンが投影された対象物99からの反射光を光学計測部30に導く。プローブ10は、接続部20の先端部外周を覆って当該接続部20に着脱可能に装着されている。このため、術者は、感染対策として、生体に接触する可能性のあるプローブ10のみを光学計測部30から取り外して滅菌処理(たとえば、高温高湿環境でのオートクレープ処理)を施すことが可能である。
【0014】
接続部20は、光学計測部30の一部であって当該光学計測部30から突出しており、プローブ10の根元と嵌合可能な形状を有する。接続部20は、プローブ10で採光した光を光学計測部30へ導くためのレンズ系や、カバーガラス、光学フィルタ、および位相差板(1/4波長板)などの光学部品を含んでいる。
【0015】
光学計測部30は、プローブ10を介して対象物99にパターンを投影し、投影したパターンを撮像する。なお、実施の形態に係る光学計測部30は、以下で説明されるように、合焦法の原理を用いて3次元形状を取得する構成であるが、合焦法、三角法、または共焦点法などの原理を用いて3次元形状を取得する構成であってもよい。つまり、光学計測部30は、投影パターンや光学センサの焦点の位置を変化させる構成を含み、光学的な手法を用いて3次元形状を取得する構成であればいずれの原理を用いた構成であってもよい。
【0016】
制御部40は、光学計測部30の動作を制御するとともに、光学計測部30で撮像した画像を処理して3次元形状を取得する。図示は省略するが、制御部40は、制御中枢としてのCPU(Central Processing Unit)と、CPUが動作するためのプログラムや制御データなどを記憶するROM(Read Only Memory)と、CPUのワークエリアとして機能するRAM(Random Access Memory)と、周辺機器との間で信号の整合性を保つための入出力インターフェイスとを含む。また、制御部40は、取得した3次元形状を表示部50に出力することも可能であり、光学計測部30の設定などの情報を図示しない入力装置などで入力することも可能である。
【0017】
なお、撮像した画像を処理して3次元形状を取得するための演算の少なくとも一部は、制御部40のCPUによってソフトウェアとして実現されてもよいし、当該CPUとは別に処理を行うハードウェアとして実現されてもよい。当該CPUやハードウェアなどの処理部のうちの少なくとも一部は、光学計測部30の内部に組み込まれてもよい。
図1では3次元スキャナ100の各構成要素(30,40,45,50)がケーブル(図中の太線)によって配線されているように描かれているが、これらの配線のうちの一部または全部が無線通信によって接続されてもよい。制御部40が片手で持ち上げられるほど十分に小型かつ軽量であれば、制御部40は、ハンドピース70の内部に設けられてもよい。
【0018】
表示部50は、制御部40で得られた対象物99の3次元形状の計測結果を表示する。表示部50は、光学計測部30の設定情報、患者情報、スキャナの起動状態、取扱説明書、およびヘルプ画面など、その他の情報も表示可能である。表示部50には、たとえば据え置き式の液晶ディスプレイや、ヘッドマウント式やメガネ式のウェアラブルディスプレイなどが適用できる。また、表示部50は複数あってもよく、3次元形状の計測結果やその他の情報が、複数の表示部50上に同時表示あるいは分割表示されてもよい。
【0019】
電源45は、光学計測部30および制御部40に電力を供給する。電源45は、
図1に示すように制御部40の外部に設けられてもよいが、制御部40の内部またはハンドピース70の内部に設けられてもよい。また、電源45は、制御部40、光学計測部30、および表示部50のそれぞれに個別に給電できるように複数設けられてもよい。
【0020】
[ハンドピースの構成]
図2(A)は、実施の形態に係るハンドピース70の構成を示す模式図である。
図2(B)は実施の形態に係るハンドピース70のX-Z断面を示す模式図である。なお、
図2に示すハンドピース70内の各部材は、
図1に示す光学計測部30に収納されている。
【0021】
図2に示すように、ハンドピース70は、ハウジング77の内部に、投影光発生部75と、レンズ81と、光学センサ71と、プリズム72とを含む。ハンドピース70は、これら以外に、対象物99に向けて光を反射させる反射板などを含んでもよい。レンズ81は、後述するリニアモータの可動子に保持されている。なお、以下で説明する実施の形態においては、説明の便宜上、レンズ81が往復直線運動する方向を表す仮想直線をLで示し、直線Lに平行な軸をX軸(第1軸)、直線Lに垂直であって
図2における紙面の上向きの軸をZ軸、X軸およびZ軸のそれぞれに垂直な軸をY軸(第2軸)と称する。
【0022】
投影光発生部75は、光源となるレーザー素子やLED(Light Emitting Diode)などである。投影光発生部75からの光は、当該投影光発生部75の前方に配置される投影パターンを発生させる投影パターンスクリーン(図示は省略する)を経由してプリズム72およびレンズ81を通過し、プローブ10に設けられた反射部66を介して対象物99に照射され、当該対象物99で反射される。対象物99で反射された光は、反射部66を介して再びレンズ81を通過してプリズム72内に進入する。プリズム72は、対象物99からの光の進行方向を、光学センサ71が位置する方向(この例では、Z軸方向)に変化させる。プリズム72によって進行方向が変化した光は、光学センサ71によって検出される。なお、
図2(B)に示す例においては、投影光発生部75からの光と対象物99で反射してプリズム72に導かれる光とが別々に示されているが、これは分かり易く説明するためのものであり、実際には両者の光が同軸上に導かれるようにハンドピース70が構成されている。
【0023】
合焦法の技術を用いて3次元形状を取得する場合、レンズ81と対象物99との間に設けられたパターン生成素子(図示せず)を通過した光が対象物99に投影される。レンズ81が同一直線(たとえば、図示上の直線L)上を往復直線運動すると、投影パターンの焦点位置が変化する。光学センサ71は、その変化ごとで対象物99からの光を検出する。上述した制御部40は、レンズ81の位置と、そのときの光学センサ71による検出結果とに基づいて、対象物99の形状情報を演算する。
【0024】
レンズ81は、第1駆動部80によって駆動し、往復直線運動する。レンズ81が直線Lの方向(X軸方向)に往復直線運動すると、レンズ81の質量分だけハンドピース70の重心位置が移動することになり当該ハンドピース70を保持するユーザの手に振動として伝わる。その振動を打ち消すために、ハンドピース70は、ハウジング77の内部において、カウンタウェイト91をさらに設ける。カウンタウェイト91は、第2駆動部90によって駆動し、レンズ81と相対する方向に往復直線運動する。
【0025】
カウンタウェイト91は、対象物99とレンズ81との間の光路、およびレンズ81と光学センサ71との間の光路を遮らないように、X軸方向における投影光発生部75の背面側に設けられている。
【0026】
具体的には、
図2(B)に示すように、ハンドピース70は、ハウジング77内において、当該ハンドピース70の前方に位置する第1収容部501と、当該ハンドピース70の後方に位置する第2収容部502とが設けられている。第1収容部501には、レンズ81が収容され、第2収容部502には、カウンタウェイト91が収容される。さらに、ハンドピース70は、第1収容部501と第2収容部502との間において、第1収容部501によって保持されたレンズ81と第2収容部502によって保持されたカウンタウェイト91とを連結する連結収容部500が設けられている。連結収容部500には、上述した光学センサ71、プリズム72、および投影光発生部75が収容されている。
【0027】
図3は、実施の形態に係る3次元スキャナ100においてレンズ81とカウンタウェイト91との位置関係を説明するための模式図である。なお、
図3に示す例では、ハウジング77が省略されている。
図3に示すように、レンズ81は、直線Lに平行なリニアガイド60によって、直線Lの方向に往復直線運動するように支持されている。
【0028】
さらに、第1駆動部80は、可動子に保持されたレンズ81を磁気回路構成85によって直線Lの方向に往復直線運動させる。つまり、第1駆動部80は、リニアモータで構成されている。
【0029】
カウンタウェイト91は、レンズ81の直線運動方向の直線L上に設けられかつ当該レンズ81と同じ質量を有する錘である。カウンタウェイト91は、直線Lに平行なリニアガイド65によって、直線Lの方向に往復直線運動するように支持されている。実施の形態においては、リニアガイド60とリニアガイド65とは異なる部材であるが、リニアガイド60とリニアガイド65とを一つながりの部材で構成してもよい。
【0030】
さらに、第2駆動部90は、可動子に保持されたカウンタウェイト91を磁気回路構成95によって直線Lの方向に往復直線運動させる。つまり、第2駆動部90は、リニアモータで構成されている。
【0031】
なお、リニアモータである第1駆動部80および第2駆動部90の具体的な構成は、後述する。なお、以下では、第1駆動部80および第2駆動部90をまとめて単に「リニアモータ」ともいう。第1駆動部80および第2駆動部90のそれぞれは、制御部40によって制御される。なお、実施の形態においては、第1駆動部80および第2駆動部90が共通の制御部40によってそれぞれ制御されるが、第1駆動部80および第2駆動部90が互いに異なる制御部によってそれぞれ制御されてもよい。
【0032】
第1駆動部80によって、レンズ81が光軸となる直線Lの方向に往復直線運動すると、第2駆動部90によって、カウンタウェイト91は、レンズ81と相対する方向にレンズ81と同じ距離だけ往復直線運動する。たとえば、レンズ81が対象物99に近づく方向に直線L上を10mm移動すると、カウンタウェイト91は、対象物99から遠ざかる方向に直線L上を10mm移動する。また、レンズ81が対象物99から遠ざかる方向に直線L上を15mm移動すると、カウンタウェイト91は、対象物99に近づく方向に直線L上を15mm移動する。
【0033】
このように、レンズ81と相対する方向に当該レンズ81と同じ距離だけカウンタウェイト91が往復直線運動することで、レンズ81の往復直線運動に起因するハンドピース70の重心の偏りを相殺することができる。これにより、カウンタウェイト91によって、レンズ81の往復直線運動による振動を打ち消すことができる。
【0034】
[リニアモータの構成]
次に、リニアモータの具体的な構成について図面を用いて説明する。
図4は、実施の形態に係るリニアモータ801の斜視図である。
図5は、実施の形態に係るリニアモータ801の分解斜視図である。
図6は、実施の形態に係るリニアモータ801のX-Y断面での断面図である。なお、
図4~
図6に示す例では、リニアモータのうち、第1駆動部80に対応するリニアモータ801の構成を説明するが、第2駆動部90に対応するリニアモータの構成もリニアモータ801の構成と同様である。すなわち、第2駆動部90に対応するリニアモータの場合、
図4~
図6に示す例において、レンズ81がカウンタウェイト91に置き換えられるが、その他の構成はリニアモータ801の構成と同様である。
【0035】
リニアモータ801は、ヨーク51、コイル52、および永久磁石53を含む磁気回路構成85を有している。また、リニアモータ801は、レンズ81の外周を取り囲むようにして、レンズ81を保持する可動子190を有し、可動子190の図中上下に永久磁石53が設けられている。なお、永久磁石53に対向する位置に配置されているヨーク51およびコイル52の部分がリニアモータ801の固定子を構成している。永久磁石53は、たとえば、N極53aがX軸の正方向、S極53bがX軸の負方向に向くように配置して可動子190に固定している。
【0036】
可動子190は、直線運動方向に開口部を有し、当該開口部にレンズ81(光学部品)を保持しているので、対象物99と光学センサ71との間の光路が当該開口部を通ることになる。レンズ81を保持している可動子190の一端には、バネ55aが当接し、可動子190の他端には、バネ55bが当接している。
【0037】
図6に示すように、リニアモータ801は、可動子190の外周部に、レール57およびブロック56で構成されるリニアガイド60が2つ平行に設けられている。2つのリニアガイド60は、可動子190の外周側で互いに異なる位置に配置されている。
【0038】
より具体的には、2つのリニアガイド60は、レンズ81の直線運動方向と平行でかつレンズ81の中心を通る光軸(直線L)を回転軸として、それぞれが回転対称となる位置で互いに平行に配置されている。
【0039】
リニアガイド60は、ブロック56と、レール57とを含む。ブロック56は、可動子190およびレンズ81を支持するとともにレール57に嵌合しており、レール57に沿って直線方向に移動することで、レンズ81を往復直線運動させる。ブロック56には、レール57の接続面との間において、グリスなどの粘性を有する潤滑剤が塗布されてもよいし、ボールやローラなどの転がり軸受が設けられてもよい。
【0040】
さらに、バネ55aおよびバネ55bは、
図5に示すように、レンズ81の中心部における光路を遮らないように当該レンズ81の外周を取り囲むように設けられている。バネ55aおよびバネ55bは、弾性部材の一実施の形態に対応する。バネ55aおよびバネ55bには、コイルバネなどが適用される。なお、弾性部材には、バネに限らず、ゴムなど、力を加えたときに変形する一方で力を除いたときには元に戻るものであればいずれの部材が適用されてもよい。
【0041】
バネ55aおよびバネ55bは、それぞれ、その一端が可動子190に当接し、その他端はリニアモータ801の筐体59で固定されている。さらに、バネ55aおよびバネ55bは、X方向の変形が許容され、Y-Z方向に変形し難くなるように筐体59内で保持されている。このように配置されたバネ55aおよびバネ55bによって、可動子190に対して直線運動方向に弾性力が与えられる。バネ55aおよびバネ55bのそれぞれの直径は、レンズ81を通る光路を遮らないようにレンズ81の直径と略同じでることが好ましい。
【0042】
レンズ81は、可動子190とともに、支持部180および保持部160を介してリニアガイド60によって往復直線運動可能に支持されている。具体的には、レンズ81を保持する可動子190の一部には、保持部160が設けられている。レール57上を移動するブロック56の一部には、支持部180がネジ止めされている。支持部180と、保持部160とは嵌合している。
【0043】
このように、リニアガイド60側にネジ止めされた支持部180と、可動子190側に設けた保持部160とが嵌合することで、レンズ81を含む可動子190が、レール57に沿って往復直線運動することができる。
【0044】
コイル52は、平板状のスパイラルコイルではなく、板状のヨークに巻き線を巻き付けたソレノイドコイルである。具体的に、
図7は、実施の形態に係るコイル52の斜視図である。
図8は、実施の形態に係るコイル52の断面図である。
図9は、実施の形態に係るヨーク51の斜視図である。コイル52は、
図7に示すように、X軸の正方向に向いて反時計回りの方向(第1巻き方向)に巻き線54をヨーク51に巻き付ける第1領域52aと、X軸の正方向に向いて時計回りの方向(第2巻き方向)に巻き線54をヨーク51に巻き付ける第2領域52bとを有している。巻き線54は、樹脂部51aの切り欠き部510aから巻き始めて、第1領域52aおよび第2領域52bを連続で巻き付けて、樹脂部51bの切り欠き部510bで巻き終わっている。第1領域52aと第2領域52bとで巻き線54の巻き方向が変わるため、樹脂部51cの切り欠き部510cで巻き線54の巻き方向を切り替えている。
【0045】
コイル52は、
図8(a)に示すようにヨーク51の両側に巻き線54が巻き付けられている。ヨーク51に巻き線54を1層巻き付ける構成で説明したが、巻き線54を2層以上ヨーク51に巻き付けてもよい。樹脂部51cは、
図8(b)に示すように切り欠き部510cのみ巻き線54があり他の部分には巻き線54が存在していない。一方、樹脂部51a~51cを設けていない部分は、
図8(c)に示すようにヨーク51を取り囲むように巻き線54が存在していない。なお、ヨーク51の側面には、巻き付けた巻き線54がヨーク51の角で傷つかないように樹脂部51dを設けている。
【0046】
ヨーク51は、
図9に示すように板状に成形した金属板(たとえば、パーマロイ、ケイ素鋼板、低炭素鋼など)にアウトサート成形で樹脂部51a~51dを一体成形してある。つまり、樹脂部51a~51dはコイル52のボビンとして機能しており、ヨーク51に樹脂部51a~51dをアウトサート成形することでヨークとボビンとを一体成形できる。もちろん、樹脂部51a~51dを別に成形し、ヨーク51に樹脂部51a~51dを個別に取り付けてもよい。また、樹脂部51aと樹脂部51cとの間の領域が第1領域52aで、樹脂部51bと樹脂部51cとの間の領域が第2領域52bである。3次元スキャナのように、レンズ81を中心位置から往復直線運動させるのであれば、第1領域52aと第2領域52bとの面積が同じであることが好ましい。もちろん、第1領域52aと第2領域52bとの面積を異ならせてもよい。
【0047】
さらに、コイル52は、樹脂部51cを設けて、巻き線54の巻き方向を第1領域52aと第2領域52bとで切り替えているが、樹脂部51cを設けずに巻き方向の切り替え位置で巻き線54の巻き終わりを固定してもよい。樹脂部51cの幅(X軸方向の長さ)は、駆動する対象に応じて適切に決めればよいが、細くすることでコイル52をより小型化することが可能となる。また、巻き線54の巻き始めを樹脂部51a、巻き終わりを樹脂部51bと説明したが逆でもよく、樹脂部51a,51bを設けずに巻き始めの位置、巻き終わりの位置で巻き線54の巻き終わりを固定してもよい。
【0048】
リニアモータ801が、ソレノイドコイルのコイル52を採用した場合の磁気回路について説明する。
図10は、実施の形態に係るリニアモータ801の磁気回路を説明するための図である。コイル52に対して、
図10に示すような位置関係でN極53aおよびS極53bが位置するように永久磁石53を配置すると、点線で示す矢印方向に磁界が生じる。コイル52において、
図10に示すような電流(Y軸に沿って紙面の手前から奥に向かう方向の電流を「×」、Y軸に沿って紙面の奥から手前に向かう方向の電流を「・」で示す)をコイル52の第1領域52aおよび第2領域52bのそれぞれに流す。
【0049】
コイル52に電流を流すと、フレミングの左手の法則に従って、実線で示す矢印方向(X軸方向)に電磁力(F)が生じる。このようにして生じた電磁力(F)の反作用力が可動子190に設けた永久磁石53に作用することで、レンズ81が電磁力(F)と反対の方向に動く。コイル52に流す電流の方向を反対にすることでレンズ81を逆方向に動かすことができるので、リニアモータ801は、コイル52に流す電流の方向を周期的に変更して、レンズ81を往復直線運動させることができる。
【0050】
コイル52は、
図10に示すようにヨーク51を挟んで永久磁石53と対向している側に流れる電流が電磁力(F)に寄与しているが、反対側に流れる電流は電磁力(F)に寄与していない。また、コイル52は、1本の巻き線54で、巻き方向が異なる第1領域52aと第2領域52bとを構成している。そのため、コイル52は、巻き線54に電流を流すだけで、第1領域52aと第2領域52bとに同移相で磁気回路構成上、反対方向の電流を流すことができる。第1領域52aと第2領域52bとを異なる巻き線でコイルを構成した場合、2つのコイルの制御が複雑になると共に、製造コストが高くなるが、コイル52では、1本の巻き線54で第1領域52aと第2領域52bとを構成しているので、その様な問題が生じない。
【0051】
[変形例]
本開示は、上記の実施例に限られず、さらに種々の変形、応用が可能である。以下、本開示に適用可能な変形例について説明する。
【0052】
前述のリニアモータ801の構成は一例であり、バネの数およびその配置場所、さらに、リニアガイドの数およびその配置場所は、ハンドピース内のスペースを考慮して適宜組み合わせて設計可能である。また、リニアモータ801では、
図5に示すように、永久磁石53と、永久磁石53に対向する位置に配置されたコイル52との組み合わせを、可動子190の上下に2つ有しているが、いずれか一方でも、3つ以上有してもよい。
【0053】
前述の実施の形態においては、可動子190に向けて突出した凸部184を有する支持部180をリニアガイド60側に設け、凸部184と嵌合する凹部164を有する保持部160を可動子190側に設けているが、支持部180を可動子190側に設け、保持部160をリニアガイド60側に設けてもよい。また、凸部184および凹部164の形状は、円柱形状に限定されず、その他の形状であってもよい。たとえば、凸部184は、可動子190側に向けて外部に突出した球の形状を有し、凹部164は、球の形状の窪みを有してもよい。
【0054】
実施の形態においては、医療用診療装置の1つの例示として3次元スキャナについて説明したが、医療用診療装置は他の用途にも適用可能である。たとえば、医療用診療装置として、切削工具(たとえば、スケーラ―チップ、根管治療用ファイルなど)を用いて対象物を切ったり削り取ったりする切削装置がある。
【0055】
図11は、変形例に係る医療用診療装置である切削装置370の構成を示す模式図である。
図11に示すように、切削装置370は、筐体375と、切削工具385と、切削工具385を保持する切削保持部381と、切削保持部381を往復直線運動させる第1駆動部580と、切削保持部381の直線運動方向の直線上に設けられかつ切削保持部381と同じ質量を有するカウンタウェイト391と、カウンタウェイト391を往復直線運動させる第2駆動部590と、切削保持部381が往復直線運動するように切削保持部381を案内するリニアガイド360と、カウンタウェイト391が往復直線運動するようにカウンタウェイト391を案内するリニアガイド365と、第1駆動部580および第2駆動部590を制御する制御部340とを備えている。なお、カウンタウェイト391は、切削保持部381に切削工具385を加えた質量と同じ質量を有していてもよい。制御部340は、切削保持部381とカウンタウェイト391とが相対する方向にそれぞれ同じ距離だけ往復直線運動するように第1駆動部580および第2駆動部590をそれぞれ制御する。
【0056】
このように、切削装置370においては、切削保持部381を往復直線運動させる第1駆動部580と、カウンタウェイト391を往復直線運動させる第2駆動部590とを、制御部340がそれぞれ独立して制御することによって、切削保持部381によって保持された切削工具385で物体(たとえば、歯)を切ったり削り取ったりしつつ、カウンタウェイト391によって切削保持部381の往復直線運動による残留振動を極力抑えることができる。
【0057】
なお、
図11に示す切削装置370においては、制御部340が筐体375内に収納されているが、
図1に示す3次元スキャナ100のように、制御部340が筐体375の外に配置されるとともに、配線によって第1駆動部580および第2駆動部590と接続されてもよい。
【0058】
また、医療用診療装置としては、口腔内や外耳内、または胃や腸などの消化器を撮影する医療用のカメラが適用されてもよい。この場合、リニアモータの可動子に保持する物体としてカメラのレンズを適用し、別の可動子にカウンタウェイトを適用してもよい。
【0059】
また、医療用診療装置としては、顕微鏡が適用されてもよい。この場合、リニアモータの可動子に保持する物体として顕微鏡内のレンズを適用し、別の可動子にカウンタウェイトを適用してもよい。
【0060】
さらに、医療用診療装置としては、レーザー光線を用いて図などの対象物を指し示すレーザーポインタや歯を切削するレーザー装置が適用されてもよい。この場合、リニアモータの可動子に保持する物体としてレンズを適用し、別の可動子にカウンタウェイトを適用してもよい。
【0061】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。なお、実施の形態で例示された構成および変形例で例示された構成は、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0062】
10 プローブ、20 接続部、30 光学計測部、40,340 制御部、45 電源、50 表示部、51 ヨーク、51a~51d 樹脂部、52 コイル、52a 第1領域、52b 第2領域、53 永久磁石、55a,55b バネ、56 ブロック、57 レール、60,65,360,365 リニアガイド、66 反射部、70 ハンドピース、71 光学センサ、72 プリズム、75 投影光発生部、77 ハウジング、80,580 第1駆動部、81 レンズ、85,95 磁気回路構成、90,590 第2駆動部、91,391 カウンタウェイト、99 対象物、100 3次元スキャナ、160 保持部、161 保持部本体、164 凹部、180 支持部、181 支持部本体、184 凸部、190 可動子、370 切削装置、375 筐体、381 切削保持部、385 切削工具、500 連結収容部、501 第1収容部、502 第2収容部、801 リニアモータ。