(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156431
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】生体情報解析装置、生体情報処理方法および生体情報プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/397 20210101AFI20241029BHJP
【FI】
A61B5/397
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070886
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】相馬 弘和
(72)【発明者】
【氏名】豊田 悟史
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127AA04
4C127BB05
4C127DD03
4C127HH16
(57)【要約】
【課題】被検者の横隔膜の状態をより正確に監視することができる生体情報解析装置、生体情報処理方法および生体情報プログラムを提供する。
【解決手段】生体情報処理装置は、横隔膜に対して1または複数回の刺激が与えられる被検者の複合筋活動電位を解析する生体情報処理装置であって、前記複合筋活動電位の計測結果を受信する受信部と、前記刺激ごとに、前記計測結果の解析対象となる期間を設定する設定部と、各前記期間の前記計測結果に対して解析を行う解析部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横隔膜に対して1または複数回の刺激が与えられる被検者の複合筋活動電位を解析する生体情報処理装置であって、
前記複合筋活動電位の計測結果を受信する受信部と、
前記刺激ごとに、前記計測結果の解析対象となる期間を設定する設定部と、
各前記期間の前記計測結果に対して解析を行う解析部と、を備える、生体情報処理装置。
【請求項2】
前記設定部は、作業者による前記期間の設定に関する入力操作を受け付け、前記入力操作の内容に基づいて、前記期間を設定する、請求項1に記載の生体情報処理装置。
【請求項3】
前記受信部は、さらに、各前記刺激の付与タイミングを示すタイミング情報を取得し、
前記設定部は、前記付与タイミングから前記期間の開始タイミングまでの長さである第1時間、および前記期間の長さである第2時間に関する前記入力操作を受け付け、前記第1時間および前記第2時間に基づいて、各前記期間を設定する、請求項2に記載の生体情報処理装置。
【請求項4】
前記生体情報処理装置は、さらに、
前記計測結果として、前記複合筋活動電位の時系列変化を示す波形を画面に表示させる表示処理部を備え、
前記設定部は、前記画面に表示される前記波形上での前記入力操作を受け付ける、請求項2に記載の生体情報処理装置。
【請求項5】
前記受信部は、さらに、各前記刺激の付与タイミングを示すタイミング情報を取得し、
前記設定部は、予め設定された、前記付与タイミングから前記期間の開始タイミングまでの長さである第1時間、および前記期間の長さである第2時間に基づいて、各前記期間を設定する、請求項1に記載の生体情報処理装置。
【請求項6】
前記生体情報処理装置は、さらに、
前記計測結果として、前記複合筋活動電位の時系列変化を示す波形を画面に表示させる表示処理部を備え、
前記解析部は、前記刺激ごとに、前記波形の最小値と最大値との差を算出し、基準値に対する前記差の割合を算出し、
前記表示処理部は、各前記割合を前記画面に表示させる、請求項1に記載の生体情報処理装置。
【請求項7】
前記生体情報処理装置は、さらに、
前記計測結果として、前記複合筋活動電位の時系列変化を示す波形を画面に表示させる表示処理部を備え、
前記表示処理部は、前記画面において、前記設定部により設定された各前記期間を視覚的に認識可能に表示させる、請求項1に記載の生体情報処理装置。
【請求項8】
前記表示処理部は、前記割合が所定値以上である場合と、前記割合が前記所定値未満である場合とでは、前記画面における前記割合の表示態様を変更する、請求項6に記載の生体情報処理装置。
【請求項9】
横隔膜に対して1または複数回の刺激が与えられる被検者の複合筋活動電位を解析する生体情報処理装置における生体情報処理方法であって、
前記複合筋活動電位の計測結果を受信するステップと、
前記刺激ごとに、前記計測結果の解析対象となる期間を設定するステップと、
各前記期間の前記計測結果に対して解析を行うステップと、を含む、生体情報処理方法。
【請求項10】
横隔膜に対して1または複数回の刺激が与えられる被検者の複合筋活動電位を解析する生体情報処理装置において実行される生体情報処理プログラムであって、
前記複合筋活動電位の計測結果を受信するステップと、
前記刺激ごとに、前記計測結果の解析対象となる期間を設定するステップと、
各前記期間の前記計測結果に対して解析を行うステップと、を前記生体情報処理装置に実行させるための、生体情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体情報解析装置、生体情報処理方法および生体情報プログラムに関するものである。
【0002】
従来、被検者に対するアブレーションが行われる際の合併症として、横隔膜神経障害が生じてしまうことがあり、これを予防するために、複合筋活動電位(CMAP(Compound Motor Action Potential))を計測することが有効であることが知られている。特許文献1には、人または動物の横隔膜の機能を評価するため、横隔膜に電気的または磁気的な刺激を与え、刺激に対する横隔膜の応答状況を測定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、横隔膜への刺激に起因するノイズ等がCMAPの計測結果に混入する場合があり、このような場合には、被検者の横隔膜の状態を正確に監視することが困難になる可能性がある。
【0005】
本開示は、被検者の横隔膜の状態をより正確に監視することができる生体情報解析装置、生体情報処理方法および生体情報プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る生体情報処理装置は、
横隔膜に対して1または複数回の刺激が与えられる被検者の複合筋活動電位を解析する生体情報処理装置であって、
前記複合筋活動電位の計測結果を受信する受信部と、
前記刺激ごとに、前記計測結果の解析対象となる期間を設定する設定部と、
各前記期間の前記計測結果に対して解析を行う解析部と、を備える。
【0007】
本開示の一態様に係る生体情報処理方法は、
横隔膜に対して1または複数回の刺激が与えられる被検者の複合筋活動電位を解析する生体情報処理装置における生体情報処理方法であって、
前記複合筋活動電位の計測結果を受信するステップと、
前記刺激ごとに、前記計測結果の解析対象となる期間を設定するステップと、
各前記期間の前記計測結果に対して解析を行うステップと、を含む。
【0008】
本開示の一態様に係る生体情報処理プログラムは、
横隔膜に対して1または複数回の刺激が与えられる被検者の複合筋活動電位を解析する生体情報処理装置において実行される生体情報処理プログラムであって、
前記複合筋活動電位の計測結果を受信するステップと、
前記刺激ごとに、前記計測結果の解析対象となる期間を設定するステップと、
各前記期間の前記計測結果に対して解析を行うステップと、を前記生体情報処理装置に実行させるための生体情報処理プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、被検者の横隔膜の状態をより正確に監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の一態様に係る生体情報処理システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す生体情報処理装置の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す生体情報処理装置により表示される画面の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す設定部による解析対象期間の設定を説明するための図である。
【
図5】
図5は、
図2に示す解析部によるCMAPの解析を説明するための図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施の形態に係る生体情報処理装置が生体情報処理方法を用いて被検者のCMAPを解析する際の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る生体情報処理装置、生体情報処理方法および生体情報プログラムの実施形態の一例を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
[生体情報処理システムの構成]
図1は、本開示の一態様に係る生体情報処理システム100の構成を示す図である。生体情報処理システム100は、生体情報処理装置10と、診断用刺激装置11と、アンプ12と、接続装置13と、アブレータ14とを備える。作業者は、生体情報処理システム100を用いることにより、被検者Xに対するアブレーション、当該被検者Xの心内心電図の計測、および当該被検者XのCMAPの計測を行うことができる。
【0013】
(アブレーション)
作業者は、被検者Xに対するアブレーションを行う際、焼灼用カテーテル16を被検者Xの心臓内に挿入する。そして、作業者は、アブレータ14を操作することにより、焼灼用カテーテル16を介して、被検者Xの不整脈の元となる異常な部分等に高周波電流を流すなどによって、当該部分の焼灼を行う。
【0014】
(心内心電図の計測)
また、作業者は、例えば、アブレーションと並行して、焼灼用カテーテル16を用いて被検者Xの心内心電図の計測を行う。より詳細には、被検者Xの心臓内に挿入される焼灼用カテーテル16には、先端に複数の電極が取り付けられている。焼灼用カテーテル16は、これら複数の電極により得られた心臓の各部位の電気信号を、接続装置13を介してアンプ12へ送信する。
【0015】
アンプ12は、焼灼用カテーテル16からの電気信号を増幅して、生体情報処理装置10へ送信する。生体情報処理装置10は、焼灼用カテーテル16から送信された複数の電気信号に基づいて、被検者Xの心臓の各部位の状態を記録する。なお、作業者は、焼灼用カテーテル16とは別のカテーテルを用いて、被検者Xの心内心電図の計測を行ってもよい。
【0016】
(CMAPの計測)
また、作業者は、アブレーションの合併症として被検者Xに生じる可能性のある横隔膜神経障害を予防するために、当該被検者Xの複合筋活動電位(CMAP(compound motor action potential))を監視する。具体的には、作業者は、刺激用カテーテル15を被検者Xの体内に挿入し、診断用刺激装置11を操作することにより、アンプ12経由で被検者Xの横隔膜神経に対して1または複数回、電気的な刺激を与える。
【0017】
また、診断用刺激装置11は、生体情報処理装置10と接続されており、例えば、被検者Xの横隔膜神経への刺激ごとに、刺激の付与タイミングtaを示すタイミング情報を生体情報処理装置10へ送信する。
【0018】
被検者Xの体表には、CMAP計測用電極17が貼り付けられている。被検者Xの横隔膜神経を電気的に刺激した場合、CMAP計測用電極17を介して、刺激に対する横隔膜神経の応答、すなわちCMAPを示す信号が、接続装置13を介してアンプ12へ送信される。アンプ12は、CMAP計測用電極17からの電気信号を増幅して、生体情報処理装置10へ送信する。
【0019】
生体情報処理装置10は、CMAP計測用電極17から送信された信号に基づいて、被検者XのCMAPの時系列変化を示すCMAP波形を生成する。そして、生体情報処理装置10は、生成したCMAP波形をモニタ等の画面に表示させる。また、生体情報処理装置10は、CMAPの計測結果を解析する。以下、生体情報処理装置10の詳細について説明する。
【0020】
[生体情報処理装置10の構成]
図2は、
図1に示す生体情報処理装置10の構成を示す図である。
図2を参照して、生体情報処理装置10は、情報処理部21と、受信部22と、記憶部23と、表示処理部24とを含む。情報処理部21は、設定部31と、解析部32とを有する。
【0021】
(心内心電図、CMAP波形および刺激の付与タイミングの表示)
図3は、
図2に示す生体情報処理装置10により表示される画面の一例を示す図である。
図2および
図3を参照して、受信部22は、焼灼用カテーテル16から送信された電気信号を接続装置13およびアンプ12を介して受信し、当該電気信号を情報処理部21へ出力する。
【0022】
記憶部23は、例えば、フラッシュメモリ等であって、プログラムや各種データを格納するように構成されている。記憶部23には、生体情報処理装置10により用いられる動作プログラムである生体情報処理プログラムが組み込まれてもよい。
【0023】
情報処理部21における解析部32は、焼灼用カテーテル16からの電気信号に基づいて、被検者Xの心臓の各部位の状態を示す心電図波形を生成し、当該心電図波形を示すデータを表示処理部24へ出力する。表示処理部24は、心電図波形を示すデータを受けると、心電図波形を示すデータに基づいて、被検者Xの心電図波形を画面に表示させる処理を行う。
【0024】
また、受信部22は、CMAP計測用電極17から送信された信号を受信し、当該信号を情報処理部21へ出力する。情報処理部21における解析部32は、CMAP計測用電極17からの信号に基づいてCMAP波形を生成し、生成したCMAP波形を示すデータを表示処理部24へ出力する。表示処理部24は、CMAP波形を示すデータに基づいて、CMAP波形を画面に表示させる処理を行う。
【0025】
また、受信部22は、診断用刺激装置11から送信されたタイミング情報を受信し、受信したタイミング情報を情報処理部21へ出力する。情報処理部21における解析部32は、診断用刺激装置11からのタイミング情報に基づいて、被検者Xの横隔膜神経への各刺激の付与タイミングtaを特定し、特定した付与タイミングtaを表示処理部24に通知する。そして、表示処理部24は、解析部32から通知された各付与タイミングtaを画面に表示させる処理を行う。
図3に示す例では、刺激ごとの付与タイミングtaとして、付与タイミングta1,ta2,ta3が表示されている。
【0026】
(解析対象期間の設定)
図2に示す設定部31は、画面に表示されているCMAP波形の解析対象となる期間(以下、「解析対象期間AT」と称する)を設定する。
図4は、
図2に示す設定部31による解析対象期間の設定を説明するための図である。
図4は、
図3に示す画面のうち、CMAP波形を含む当該画面の一部を拡大した図である。
【0027】
より詳細には、例えば、記憶部23には、被検者Xの横隔膜神経への刺激の付与タイミングtaから、解析対象期間ATの開始タイミングtbまでの長さである第1時間Txの初期値が保存されている。また、例えば、記憶部23には、解析対象期間ATの長さである第2時間Tyの初期値が保存されている。
【0028】
設定部31は、記憶部23に保存されている第1時間Txの初期値および第2時間Tyの初期値、ならびに解析部32により特定された各刺激の付与タイミングtaに基づいて、刺激ごとに、解析対象期間ATを設定する。そして、設定部31は、設定内容を表示処理部24に通知する。
【0029】
表示処理部24は、設定部31により設定された各解析対象期間ATを、画面において視覚的に認識可能に表示させる処理を行う。
図4に示すように、例えば、解析対象期間ATと、解析対象期間AT以外の期間とは、画面において互い異なる背景色で表示される。
【0030】
このように、設定部31が、予め設定された第1時間Txおよび第2時間Tyに基づいて刺激ごとの解析対象期間ATを設定可能であるため、各解析対象期間ATを自動的に設定することができる。また、解析対象期間ATが視覚的に認識可能に表示されることにより、作業者において、解析対象期間ATを容易に把握することができる。
【0031】
さらに、設定部31は、作業者による解析対象期間ATの設定に関する入力操作を受け付けることができる。設定部31は、作業者からの入力操作を受け付けた場合、当該入力操作の内容に基づいて、解析対象期間ATを変更する。
【0032】
具体的には、作業者は、生体情報処理装置10に接続されているマウス等を操作することにより、
図4に示すように、画面における解析対象期間ATの表示領域の端部であって、当該解析対象期間ATの開始タイミングtbに相当する端部E1を選択することができる。そして、作業者は、端部E1を右方向へ移動させて開始タイミングtbを遅らせたり、端部E1を左方向へ移動させることにより、開始タイミングtbを早めたりすることができる。
【0033】
また、作業者は、画面における解析対象期間ATの表示領域の端部であって、当該解析対象期間ATの終了タイミングtcに相当する端部E2を選択することができる。そして、作業者は、端部E2を右方向へ移動させることにより、終了タイミングtcを遅らせたり、端部E2を左方向へ移動させることにより、終了タイミングtcを早めたりすることができる。
【0034】
上記のように、表示処理部24が、CMAP波形を画面に表示させ、設定部31が、画面に表示されるCMAP波形上での作業者による入力操作を受け付ける。このような構成により、作業者は、画面に表示されているCMAP波形を確認しながら、
図4に示す破線Nの枠で囲む範囲に含まれるような、横隔膜神経への刺激に起因するノイズ等の有無を把握したうえで、CMAP波形上で解析対象期間ATの設定に関する入力操作を行うことができる。
【0035】
設定部31は、作業者により開始タイミングtbおよび終了タイミングtcの少なくとも1つが変更されると、変更後の第1時間Txおよび第2時間Tyに基づいて、各解析対象期間ATを設定する。
【0036】
例えば、作業者が、画面において、解析対象期間ATのうちの1つである解析対象期間AT1の開始タイミングtb1および終了タイミングtc1を変更したとする。この場合、設定部31は、解析対象期間AT1の直前の付与タイミングta1、ならびに解析対象期間AT1の開始タイミングtb1および終了タイミングtc1に基づいて、第1時間Txおよび第2時間Tyを算出する。そして、設定部31は、
図3に示す、解析対象期間AT1以降の他の解析対象期間AT2,AT3,・・・についても、第1時間Txおよび第2時間Tyを用いて、各解析対象期間ATを設定する。
【0037】
また、設定部31は、設定した各解析対象期間ATを表示処理部24に通知する。さらに、設定部31は、変更後の第1時間Txおよび第2時間Tyを記憶部23に保存することより、記憶部23に保存されている第1時間Txおよび第2時間Tyを更新する。表示処理部24は、設定部31により通知内容に応じて、画面における各解析対象期間ATに相当する領域を変更して表示させる処理を行う。
【0038】
なお、端部E1,E2の移動可能範囲は、予め定められていてもよい。例えば、端部E1は、第1時間Txが10msecから30msecの範囲内となるように、移動可能である。また、例えば、端部E2は、解析対象期間ATの長さである第2時間Tyが50msecから70msecの範囲内となるように、移動可能である。
【0039】
また、解析対象期間ATを変更するための入力操作は、端部E1,E2を移動する操作に限定されない。例えば、設定部31は、作業者が第1時間Txおよび第2時間Tyの値を入力する操作等を受け付けてもよい。
【0040】
(CMAPの解析および警告処理)
図2に示す解析部32は、解析対象期間ATごとに、CMAPの解析を行う。
図5は、
図2に示す解析部32によるCMAPの解析を説明するための図である。
図5は、
図4に示す画面において解析対象期間ATが変更された後の、CMAP波形および解析対象期間ATを示している。
【0041】
図2および
図5を参照して、より詳細には、例えば、記憶部23には、CMAPの解析に用いられる基準値が保存されている。基準値は、被検者Xの心臓内での焼灼が行われていない通常状態における当該被検者XのCMAP波形の最小値と最大値との差などである。
【0042】
解析部32は、解析対象期間ATごとに、CMAP波形の最小値と最大値との差を算出する。そして、解析部32は、記憶部23に保存されている基準値に対する差の割合Rを算出し、算出した割合Rを表示処理部24へ通知する。表示処理部24は、解析対象期間ATごとに、解析部32から通知された割合Rを認識可能に表示する処理を行う。
【0043】
具体的には、
図5に示すように、例えば、解析対象期間AT1における割合Rである「97%」の数字が、CMAPの最大値と最小値とをつなぐ直線M1と共に表示される。また、解析対象期間AT2における割合Rである「48%」の数字が、CMAPの最大値と最小値とをつなぐ直線M2と共に表示される。さらに、解析対象期間AT3における割合Rである「54%」の数字が、CMAPの最大値と最小値とをつなぐ直線M3と共に表示される。
【0044】
このように、解析部32が、横隔膜神経への刺激ごとに差、および基準値に対する当該差の割合Rを算出し、表示処理部24が、各割合Rを画面に表示させる処理を行う。このような構成により、作業者において、割合Rを確認することで、被検者Xの通常状態における横隔膜の状態と、当該被検者Xの現在の横隔膜の状態とを容易に比較することができる。
【0045】
また、解析部32は、算出した割合Rが閾値以下であるか否かを判断する。そして、解析部32は、割合Rが閾値以下である場合、当該割合Rを表示処理部24に通知する。表示処理部24は、解析部32からの通知に応じて、閾値以下である割合Rと、閾値より大きい割合Rとの表示態様を変更する等の警告処理を行う。
【0046】
具体的には、閾値は、70%であると仮定する。
図5に示す例では、解析対象期間AT1における割合Rは97%であり、解析対象期間AT2における割合Rは48%であり、解析対象期間AT3における割合Rは54%である。この場合、表示処理部24は、画面において、「97%」の数値の背景色と、「48%」および「54%」の数値の背景色とが異なるように表示させる処理を行う。
【0047】
このように、表示処理部24が、閾値以上である割合Rと、閾値未満である割合Rとの間で画面における表示態様を変更する構成により、被検者Xの横隔膜の状態が通常状態と比べて異なる状態であることを、作業者に対して明確に知らせることができる。
【0048】
なお、表示処理部24は、警告処理として、アブレーションの停止を促す通知等を画面に表示させてもよい。また、生体情報処理装置10における図示しない出力部が、警告処理として、警告音を出力してもよい。
【0049】
また、表示処理部24は、解析対象期間ATごとの割合Rを画面に表示させる構成に限定されず、例えば、解析対象期間ATごとの差を表示させてもよいし、解析対象期間ATごとのCMAP波形に、通常状態における被検者XのCMAP波形の一部を重畳表示させてもよい。
【0050】
また、表示処理部24は、解析対象期間AT以外の期間については、CMAPの値をゼロにするなど、CMAP波形の一部をフラットにして表示させる処理を行ってもよい。
【0051】
[動作の流れ]
図6は、本開示の実施の形態に係る生体情報処理装置10が生体情報処理方法を用いて被検者XのCMAPを解析する際の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図1および
図6を参照して、まず、生体情報処理装置10は、被検者Xの横隔膜神経への刺激ごとに、刺激の付与タイミングtaを示すタイミング情報を診断用刺激装置11から受信する(ステップS11)。
【0052】
次に、生体情報処理装置10は、ステップS11において受信したタイミング情報に基づいて、CMAP波形が表示されている画面において、被検者Xの横隔膜神経への各刺激の付与タイミングtaを認識可能に表示させる処理を行う(ステップS12)。
【0053】
次に、生体情報処理装置10は、CMAPの計測結果を示す信号をCMAP計測用電極17から受信し(ステップS13)、当該信号に基づいて、CMAP波形を画面に表示させる処理を行う(ステップS14)。
【0054】
次に、生体情報処理装置10は、予め設定されている第1時間Txおよび第2時間Tyに基づいて、刺激ごとにCMAPの解析対象期間を設定し、画面において各解析対象期間を認識可能に表示させる処理を行う(ステップS15)。
【0055】
次に、生体情報処理装置10は、解析対象期間を変更する入力操作、すなわち画面に表示されている解析対象期間ATの開始タイミングtbおよび終了タイミングtcの少なくとも一方を変更する操作を受けたとする(ステップS16において「YES」)。この場合、生体情報処理装置10は、作業者による入力操作の内容に基づいて、第1時間Txおよび第2時間Tyを変更することにより、各解析対象期間ATを変更する(ステップS17)。
【0056】
次に、生体情報処理装置10は、解析対象期間ATごとに、CMAP波形の最小値と最大値との差を算出し(ステップS18)、基準値に対する差の割合Rを算出する(ステップS19)。
【0057】
次に、生体情報処理装置10は、算出した割合Rが閾値以下であるか否かを判断する(ステップS20)。そして、生体情報処理装置10は、割合Rが閾値以下であると判断した場合(ステップS20において「YES」)、例えば、画面において、割合Rの数値の背景色を変更させたり、アブレーションの停止を促す通知を画面に表示させたりする警告処理を行う(ステップS21)。
【0058】
一方、生体情報処理装置10は、割合Rが閾値より大きいと判断した場合(ステップS20において「NO」)、警告処理を行わず、CMAPの解析を継続する。
【0059】
また、生体情報処理装置10は、解析対象期間ATを変更する入力操作を受けていない場合(ステップS16において「NO」)、各解析対象期間ATの変更(ステップS17)を行うことなく、解析対象期間ATごとに、差の算出(ステップS18)および割合Rの算出(ステップS19)を行う。
【0060】
上記のように、本開示の一態様に係る生体情報処理装置10は、横隔膜に対して1または複数回の刺激が与えられる被検者XのCMAPを解析する装置である。受信部22は、CMAPの計測結果を受信する。設定部31は、刺激ごとに、CMAPの計測結果の解析対象となる解析対象期間ATを設定する。そして、解析部32は、各解析対象期間ATにおけるCMAPの計測結果に対して解析を行う。
【0061】
このように、CMAPの解析対象となる解析対象期間ATを刺激ごとに設定可能である構成により、例えば、刺激の付与に起因するノイズ等が計測結果に混入する期間を避けて解析を行うことができ、CMAPをより正確に解析することができる。この結果、被検者Xの横隔膜の状態をより正確に監視することができる。
【0062】
また、本開示の一態様に係る生体情報処理装置10では、設定部31は、作業者による解析対象期間ATの設定に関する入力操作を受け付け、当該入力操作の内容に基づいて、各解析対象期間ATを設定する。このような構成により、作業者が、例えば、被検者Xの症状や状況を考慮しながら解析対象期間ATを決定することができる。このため、より適切な解析対象期間ATを設定することができる。
【0063】
また、本開示の一態様に係る生体情報処理装置10では、受信部22は、さらに、各刺激の付与タイミングtaを示すタイミング情報を取得する。そして、設定部31は、付与タイミングtaから解析対象期間ATの開始タイミングtbまでの長さである第1時間Tx、および解析対象期間ATの長さである第2時間Tyに関する入力操作を受け付け、第1時間Txおよび第2時間Tyに基づいて各解析対象期間ATを設定する。
【0064】
このような構成により、作業者においては、解析対象期間ATの変更を行うための操作として、第1時間Txおよび第2時間Tyに関する入力操作を行うことで足りるため、入力操作が複雑化することを避けることができる。
【0065】
以上、本開示の実施形態について説明をしたが、本願の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではない。本実施形態は一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本願の技術的範囲は、特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0066】
10:生体情報処理装置、11:診断用刺激装置、12:アンプ、13:接続装置、14:アブレータ、15:刺激用カテーテル、16:焼灼用カテーテル、17:CMAP計測用電極、21:情報処理部、22:受信部、23:記憶部、24:表示処理部、31:設定部、32:解析部、100:生体情報処理システム