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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156435
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/291 20210101AFI20241029BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20241029BHJP
【FI】
H01M50/291
H01M50/204 401Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070891
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】トヨタバッテリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】村石 康輔
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA37
5H040AS04
5H040AS07
5H040AT01
5H040AT02
5H040AY05
5H040NN01
5H040NN03
5H040NN05
(57)【要約】
【課題】電池セルの内部から漏れた可燃性ガスが発火を引き起こす可能性を低減した安全性の高い電池モジュールを提供すること。
【解決手段】電池モジュールは、直列接続された複数の電池セルが第1方向に積層された第1電池スタック50aと、第1電池スタック50aと直列接続され、直列接続された複数の電池セルが第1方向に積層された第2電池スタック50bと、第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bを第2方向に並べて収容するスタックケース40aと、を有し、スタックケース40aは、第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bの少なくとも一方の電池スタック50と第2方向で対向する隔壁部43を有し、隔壁部43は、第2方向の外側から圧力Fが加えられたときに、セル間電圧差が小さい領域ほど電池スタック50との間の絶縁距離が短くなるように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを有する電池モジュールであって、
一端部に配置された前記電池セルに設けられた負極端子を負極入出力端子とし、直列接続された複数の前記電池セルが第1方向に積層された第1電池スタックと、
一端部に配置された前記電池セルに設けられた正極端子を正極入出力端子とし、他端部に配置された前記電池セルに設けられた正極端子が前記第1電池スタックの他端部に配置された前記電池セルに設けられた負極端子と直列接続され、直列接続された複数の前記電池セルが前記第1方向に積層された第2電池スタックと、
前記第1電池スタック及び前記第2電池スタックを前記第1方向と水平面内で直交する第2方向に並べて収容するスタックケースと、を有し、
前記スタックケースは、前記第1電池スタック及び前記第2電池スタックの少なくとも一方の電池スタックと前記第2方向で対向する隔壁部を有し、
前記隔壁部は、前記第2方向の外側から圧力が加えられたときに、前記第1電池スタックの前記電池セルと前記第2電池スタックの前記電池セルとの間の電圧差が小さい領域ほど前記電池スタックとの間の絶縁距離が短くなるように構成されている電池モジュール。
【請求項2】
前記隔壁部は、前記第2方向の一端に配置された第1隔壁部と、
前記第2方向の他端に配置された第2隔壁部と、
前記第1電池スタック及び前記第2電池スタックの間に配置された第3隔壁部と、
のうち少なくとも1つである請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記隔壁部は、前記第1方向の一方側から他方側へ向けて前記第2方向の厚さが漸次増加する請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記隔壁部は、前記電池スタックに向けてそれぞれ突出する複数の凸部を有し、
前記第1方向の他方側に配置された前記凸部は、前記第1方向の一方側に配置された前記凸部よりも突出量が大きい請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記スタックケースは、
前記第2方向の一端に配置された第1隔壁部と、
前記第2方向の他端に配置された第2隔壁部と、をそれぞれ隔壁部として有し、
前記第1方向の一端に配置され、前記第1隔壁部及び前記第2隔壁部を繋ぐ第1端壁部と、
前記第1方向の他端に配置され、前記第1隔壁部及び前記第2隔壁部を繋ぐ第2端壁部と、を有し、
前記第2端壁部は、前記第1端壁部より剛性が低い請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記スタックケースは、
前記第2方向の一端に配置された第1隔壁部と、
前記第2方向の他端に配置された第2隔壁部と、をそれぞれ隔壁部として有し、
前記第1方向の一端に配置され、前記第1隔壁部及び前記第2隔壁部を繋ぐ第1端壁部と、
前記第1方向の他端に配置され、前記第1隔壁部及び前記第2隔壁部を繋ぐ第2端壁部と、を有し、
前記第1端壁部及び前記第2端壁部のそれぞれは、前記第2方向の長さが縮まるように前記第1方向の外側に向けて屈曲する請求項1に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層された複数の電池セルをスタックケースに収容した電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
セルケースの内部に発電要素を収容した電池セルの過充電等の異常状態に対する安全性を確保するために、発電要素の構成部材とセルケースとを意図的に短絡させる技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、発電要素を内部に収容するとともに一方の極性の電極端子となる外装ケースと、発電要素に設けられた他方の極性の集電体と、外装ケースの内圧上昇に伴ってピストン部材を出退動作するシリンダ機構と、シリンダ機構の出退動作によって集電体と外装ケースを短絡させるねじりコイルばねなどの短絡機構とを備え、過充電の程度に応じて内圧が上昇して所定の圧力になるとシリンダ機構が作動し、短絡機構にて集電体と外装ケースが短絡されて短絡電流が流れ、電池の熱暴走反応が発生する前に電池エネルギーが放散されるようにした二次電池が開示されている。この二次電池は、過充電による熱暴走反応の発生を未然にかつ確実に防止することができ安全性が高いとされている。
【0004】
特許文献2には、電極群を内蔵するケースと、前記ケースの開口に結合して密閉するキャッププレートと、前記キャッププレートの外面と内面にそれぞれ提供される外側インシュレータ及び内側インシュレータと、前記外側インシュレータ、前記キャッププレート、及び前記内側インシュレータを貫いて前記電極群に一対で接続し、一対のいずれか一つが前記ケースに電気的に接続し、他の一つが前記ケースに電気的に絶縁する電極端子と、前記ケースの外面に形成される絶縁層と、前記ケースのスウェリング時、前記ケースに絶縁した前記電極端子を前記ケースに短絡させる短絡部とを含む2次電池及び2次電池モジュールが開示されている。この2次電池及び2次電池モジュールによれば、過充電から安全性を確保するとされている。
【0005】
特許文献3には、第1セパレータを介して第1極性の電位の第1電極板と第2極性の電位の第2電極板とが積層された積層電極体と、前記積層電極体を密閉して収納し且つ前記第1極性の電位に帯電した電池容器と、前記電池容器に収納された前記積層電極体と前記電池容器との間に配置される壁面用樹脂とを有し、前記第1セパレータが溶融又は収縮をしてそれ自体の消滅又は破壊を引き起こす第1温度よりも、前記壁面用樹脂が溶融又は収縮をしてそれ自体の消滅又は破壊を引き起こす第2温度は低い温度であり、前記電池容器の内部が前記第2温度以上の温度となった場合に、前記電池容器と前記第2電極板とが接触又は電気的に短絡する電池が開示されている。この電池は、複数の種類のセパレータを利用して電池異常の際の電池の安全性を向上することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-303447号公報
【特許文献2】特開2010-205728号公報
【特許文献3】特開2012-138287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車等の車両駆動用電源には、高い出力電圧と大電力が求められるため、複数の電池セルを接続した電池モジュールを含む電池パックが用いられる。
【0008】
電池パックを車両に搭載して使用する際、車両が衝突した時の外部からの衝撃によって電池パックが潰れる場合がある。電池パックが潰れると、電池セルの内部でガスが発生することに伴う内圧上昇によりセルケースに設けられたガス排出弁が開弁したり、電池セルが破損したりするため、電池モジュールを構成するいずれかの電池セルの内部から可燃性ガスが漏れる虞がある。
【0009】
積層された複数の電池セルをスタックケースに収容した電池モジュールでは、電池セルの内部から漏れた可燃性ガスは、電池モジュールの内部に滞留する可能性がある。しかしながら、特許文献1~3に記載の技術では、滞留した可燃性ガスが電池モジュールの発火を引き起こす可能性があるという問題があった。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、電池セルの内部から漏れた可燃性ガスが発火を引き起こす可能性を低減した安全性の高い電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施の形態にかかる電池モジュールは、複数の電池セルを有する電池モジュールであって、一端部に配置された電池セルに設けられた負極端子を負極入出力端子とし、直列接続された複数の電池セルが第1方向に積層された第1電池スタックと、一端部に配置された電池セルに設けられた正極端子を正極入出力端子とし、他端部に配置された電池セルに設けられた正極端子が第1電池スタックの他端部に配置された電池セルに設けられた負極端子と直列接続され、直列接続された複数の電池セルが第1方向に積層された第2電池スタックと、第1電池スタック及び第2電池スタックを第1方向と水平面内で直交する第2方向に並べて収容するスタックケースと、を有し、スタックケースは、第1電池スタック及び第2電池スタックの少なくとも一方の電池スタックと第2方向で対向する隔壁部を有し、隔壁部は、第2方向の外側から圧力が加えられたときに、第1電池スタックの電池セルと第2電池スタックの電池セルとの間の電圧差が小さい領域ほど電池スタックとの間の絶縁距離が短くなるように構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、電池セルの内部から漏れた可燃性ガスが発火を引き起こす可能性を低減した安全性の高い電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1にかかる電池モジュールを適用した電池パックを示す平面図である。
図2図1に示す電池モジュールに用いられる電池セルを示す斜視図である。
図3】第1電池スタックの電池セルと第2電池スタックの電池セルとの電圧差が相対的に小さい領域で短絡した後の電池モジュールについて説明する平面図である。
図4】実施の形態2にかかる電池モジュールを適用した電池パックを示す平面図である。
図5】実施の形態3にかかる電池モジュールを適用した電池パックを示す平面図である。
図6】変形例を説明するための電池モジュールの平面図である。
図7】比較例の電池モジュールを適用した電池パックを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。さらに、以下の説明において同一又は同等の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
なお、以下の説明では、電池セル10の厚さ方向であって複数の電池セル10を積層した第1方向をX方向、X方向と水平面内で直交する第2方向であって、電池セル10の幅方向をY方向、X方向及びY方向に直交する上下方向であって、電池セル10の高さ方向をZ方向とする。
【0016】
まず、図1は、実施の形態1にかかる電池モジュールを適用した電池パックを示す平面図である。図1に示すように、電池パック1は、機器モジュール2と本実施形態にかかる電池モジュール3aとを有する。機器モジュール2と電池モジュール3aとは、X方向に並んで設けられ、互いに機械的及び電気的に接続されている。電池モジュール3aは、機器モジュール2を介して外部からの電気を充電し、機器モジュール2を介して外部へ電気を放電することができる。
【0017】
電池パック1は、例えばモータによって駆動可能な電気自動車やハイブリッド自動車等の車両に搭載される。電池パック1は、例えば車両の座席下の設置空間に配置される。電池パック1は、例えば電池モジュール3aに蓄電された電力をモータに供給する。但し、電池パック1は、車両に搭載されるものに限定されるものではなく、他の用途に用いられるものであってもよい。
【0018】
電池パック1において、機器モジュール2は、X方向の一方側に設けられている。機器モジュール2は、機器ケース20と、機器30と、を有する。機器ケース20は、機器30が配置される機器収容空間21を形成する筐体である。機器ケース20は、例えばZ方向(上方向)に開口する有底の箱形状を有する。
【0019】
機器ケース20は、後述するスタックケース40aに連結されている。図1に示す機器ケース20は、スタックケース40aと一体に形成され、スタックケース40aと共有するように第1端壁部44aを含んでいる。なお、本実施形態では、スタックケース40aと機器ケース20とが一体であり、スタックケース40aと機器ケース20とが第1端壁部44aを共有する構成を例示するが、スタックケース40aと機器ケース20とが別体であり、互いに機械的に連結される構成を採用することもできる。
【0020】
機器ケース20は、金属等の導電性の材料により形成されている。本実施形態において、機器ケース20は、アルミニウムにより形成されている。アルミニウムにより形成された機器ケース20は、例えばアルミダイカスト法によって製造することができる。機器30は、モータ等に電気的に接続されて外部との信号の伝達を行うためのコネクタ等を有していてもよい。
【0021】
電池パック1において、電池モジュール3aは、X方向の他方側に設けられている。電池モジュール3aは、スタックケース40aと、電池スタック50と、を有する。図1に示す電池モジュール3aは、2つの電池スタック50を有している。2つの電池スタック50の一方は、Y方向の一方側に配置された第1電池スタック50aである。2つの電池スタック50の他方は、Y方向の他方側に配置された第2電池スタック50bである。
【0022】
スタックケース40aは、電池スタック50が配置されるスタック収容空間41を形成する筐体である。スタックケース40aは、例えばZ方向(上方向)に開口する有底の箱形状を有する。スタックケース40aは、全体としてX方向に長い略直方体形状を有する。なお、電池パック1は、機器ケース20の開口及びスタックケース40aの開口を閉塞するカバー(不図示)を有している。
【0023】
スタックケース40aは、金属等の導電性の材料により形成されている。本実施形態において、スタックケース40aは、アルミニウムにより形成されている。アルミニウムにより形成されたスタックケース40aは、例えばアルミダイカスト法によって製造することができる。
【0024】
スタックケース40aは、第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bをY方向に並ぶように収容する。図1に示すスタックケース40aは、第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bをY方向に隣り合って並ぶように収容する。スタックケース40aは、スタックケース40aの底面を形成する底壁部42と、Y方向で離間して並ぶ3つの隔壁部43と、X方向で離間して並ぶ一対の端壁部44と、を有する。3つの隔壁部43は、第1隔壁部43a、第2隔壁部43b、及び第3隔壁部43cである。一対の端壁部44は、第1端壁部44a及び第2端壁部44bである。第1隔壁部43a、第2隔壁部43b、第1端壁部44a、及び第2端壁部44bは、スタックケース40aの周壁を構成している。
【0025】
スタックケース40aは、2つのスタック収容空間41を形成している。2つのスタック収容空間41の一方は、Y方向の一方側に配置され、底壁部42、第1隔壁部43a、第3隔壁部43c、第1端壁部44a、及び第2端壁部44bによって区画された第1スタック収容空間41aである。2つのスタック収容空間41の他方は、Y方向の他方側に配置され、底壁部42、第2隔壁部43b、第3隔壁部43c、第1端壁部44a、及び第2端壁部44bによって区画された第2スタック収容空間41bである。
【0026】
底壁部42は、XY平面に沿う矩形板状に形成されている。第1隔壁部43a、第2隔壁部43b、及び第3隔壁部43cは、それぞれ底壁部42の底面から上方に延び、XZ平面に沿う矩形板状に形成されている。第1隔壁部43aは、Y方向の一端に配置されている。第2隔壁部43bは、Y方向の他端に配置されている。第3隔壁部43cは、第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bの間に配置されている。つまり、第1隔壁部43aと第3隔壁部43cとは、第1電池スタック50aを間に挟むようにY方向で互いに対向して配置されている。第2隔壁部43bと第3隔壁部43cとは、第2電池スタック50bを間に挟むようにY方向で互いに対向して配置されている。
【0027】
そして、第1隔壁部43aは、第1電池スタック50aとY方向で対向している。第2隔壁部43bは、第2電池スタック50bとY方向で対向している。第3隔壁部43cは、第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bのそれぞれとY方向で対向している。このように、スタックケース40aは、第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bの少なくとも一方の電池スタック50とY方向で対向する隔壁部43を有している。なお、スタックケース40aは、第1隔壁部43a、第2隔壁部43b、及び第3隔壁部43cをそれぞれ隔壁部43として有する構成に限らず、第1隔壁部43a、第2隔壁部43b、及び第3隔壁部43cのうち少なくとも1つを隔壁部43として有していればよい。
【0028】
第1端壁部44a及び第2端壁部44bは、それぞれ底壁部42の底面から上方に延び、YZ平面に沿う矩形板状に形成されている。第1端壁部44a及び第2端壁部44bは、第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bを間に挟むようにX方向で互いに対向して配置されている。そして、第1端壁部44aは、X方向の一端に配置され、第1隔壁部43a、第2隔壁部43b、及び第3隔壁部43cを繋いでいる。第2端壁部44bは、X方向の他端に配置され、第1隔壁部43a、第2隔壁部43b、及び第3隔壁部43cを繋いでいる。
【0029】
第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bは、機器30にそれぞれ電気的に接続されている。また、第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bは、電気的に直列接続されているため、電池モジュール3aの出力電圧は、第1電池スタック50aと第2電池スタック50bとのそれぞれが含む複数の電池セル10の出力電圧を総和した電圧になっている。
【0030】
なお、本実施形態では電池モジュール3aが第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bの2つの電池スタック50を有する例を示しているが、電池モジュール3aは他にも電池スタック50を有していてもよい。例えば電池モジュール3aは、第1電池スタック50aと第2電池スタック50bとを1つのスタックユニットとした場合に、複数のスタックユニットを有する構成を採用してもよい。複数のスタックユニットを有する電池モジュール3aである場合、例えばY方向で隣り合う一方のスタックユニットの第1電池スタック50aと他方のスタックユニットの第2電池スタック50bとが電気的に直列接続され、Y方向の両端に配置された第1電池スタック50aと第2電池スタック50bとのそれぞれが機器30に電気的に接続される。
【0031】
第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bは、それぞれX方向に積層された複数の電池セル10を含む。複数の電池セル10が積層されることにより、第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bのそれぞれは、X方向に長い略直方体形状を有する。第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bは、それぞれ同じ数量の電池セル10を有している。そして、第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bは、それぞれ偶数個の電池セル10を有している。但し、第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bのそれぞれに含まれる電池セル10の数量はこのような構成に限定されない。
【0032】
続いて、図2を参照して、電池セル10の詳細な構成を説明する。図2は、図1に示す電池モジュールに用いられる電池セルを示す斜視図である。電池セル10は、電気を充放電可能な二次電池であるとよい。二次電池は、例えばリチウムイオン二次電池等の電解液又は固体電解質の非水電解質を用いた二次電池であることが好ましい。なお、電池セル10は、リチウムイオン二次電池に限定されるものではなく、ニッケル水素二次電池や、その他の二次電池によって構成されていてもよい。このような電池セル10は、化学反応によって起電圧を生成する。
【0033】
図2に示す電池セル10は、密閉型の角型電池である。ただし、電池セル10は、角型電池に限らず、円筒型電池等であってもよい。電池セル10は、セルケース11を有している。セルケース11は、例えばY方向に長い扁平な直方体形状を有する六面体をなしている。セルケース11は、Z方向で離間して互いに対向する上面部11a及び下面部11bを有している。セルケース11は、X方向で離間して互いに対向する相対的に面積の広い一対の主面部11c、及びY方向で離間して対向する相対的に面積の狭い一対の側面部11dを有する。上面部11a及び下面部11bは、それぞれXY平面に沿って形成されている。一対の主面部11cは、それぞれYZ平面に沿って形成されている。一対の側面部11dは、それぞれXZ平面に沿って形成されている。
【0034】
上面部11aの中央付近には、セルケース11内のガスを排出するためのガス排出弁12と、電解液を注入するための注入口13と、が設けられている。ガス排出弁12は、セルケース11の内部が所定圧力に達した場合に開弁して、セルケース11の内部で発生した可燃性ガスを含むガスをセルケース11の外部に排出する機能を果たす。注入口13は、封止部材14により気密に封止される。上面部11aのY方向における両端部には、正極端子15と負極端子16とが設けられている。正極端子15及び負極端子16は、金属等の導電性を有する材料により形成されている。
【0035】
電池セル10は、さらにセルケース11の内部に収容された電極体、集電部品、及び電解質として電解液等を有している。電極体は、正極基材上に正極活物質を含む正極合材層が形成された正極板、負極基材上に負極活物質を含む負極合材層が形成された負極板、及び正極板と負極板との間に介在する絶縁性のセパレータを有する発電要素である。電極体は、それぞれ長尺な正負の極板が捲回軸回りに捲回された捲回体であってもよく、それぞれ複数の平板状の正負の極板が積層された積層体であってもよく、他の形態であってもよい。電極体の正極板は、正極側の集電部品を介して正極端子15に電気的に接続される。また、電極体の負極板は、負極側の集電部品を介して負極端子16に電気的に接続される。
【0036】
正極基材としては、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金等の金属により形成される集電箔を用いることができる。正極活物質は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵放出可能な材料であればよく、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)等を用いることができる。正極合材層は、正極活物質の他に導電材、結着剤などの任意の成分を含み得る。
【0037】
負極基材としては、例えば銅又は銅合金等の金属により形成される集電箔を用いることができる。負極活物質は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵放出可能な材料であればよく、例えば黒鉛等を用いることができる。負極合材層は、負極活物質の他に、結着剤、増粘剤等の任意の成分を含み得る。
【0038】
電解液としては、例えば、カーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の非水溶媒を単独で用いた溶媒又は複数混合した溶媒にLiPF等のリチウム塩(支持電解質)を溶解したものを用いることができる。
【0039】
第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bのそれぞれを構成する複数の電池セル10は、電気的に直列接続されている。第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bのそれぞれを構成する複数の電池セル10は、正極端子15と負極端子16とがX方向で隣り合うように配置されている。第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bのそれぞれを構成する複数の電池セル10は、X方向に隣り合う電池セル10の正極端子15と負極端子16とが、バスバー等の導電性部材により電気的に接続されている。それぞれ複数の電池セル10を直列接続した第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bは、高電圧を出力可能である。
【0040】
なお、第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bのそれぞれは、積層された複数の電池セル10の間に挿入される複数のスペーサ、積層された複数の電池セル10をX方向の両側から挟持する一対のエンド部材、積層された複数の電池セル10を束ねる拘束部材等の他の部材を含んでもよい。
【0041】
図1に示すように、第1電池スタック50aは、第1電池スタック50aのX方向の一方側の端部である一端部に配置された電池セル10に設けられた負極端子16を負極入出力端子16aとしている。そして、負極入出力端子16aから導出されたリード線61は、機器30に接続されている。一方、第2電池スタック50bは、第2電池スタック50bのX方向の一方側の端部である一端部に配置された電池セル10に設けられた正極端子15を正極入出力端子15aとしている。そして、正極入出力端子15aから導出されたリード線62は、機器30に接続されている。
【0042】
また、第1電池スタック50aのX方向の他方側の端部である他端部に配置された電池セル10に設けられた正極端子15と第2電池スタック50bの他端部に配置された電池セル10に設けられた負極端子16とは、リード線63を介して互いに電気的に接続されている。
【0043】
上記した電気的な接続により、充放電時の電池モジュール3aでは、それぞれ一端部に配置された第1電池スタック50aの電池セル10と第2電池スタック50bの電池セル10との間の電圧差が最も大きく、それぞれ他端部に配置された第1電池スタック50aの電池セル10と第2電池スタック50bの電池セル10との間の電圧差が最も小さくなる。すなわち、充放電時の電池モジュール3aでは、X方向の他方側から一方側に向かうにしたがって第1電池スタック50aの電池セル10と第2電池スタック50bの電池セル10との間の電圧差(セル間電圧差)が大きくなる。
【0044】
本実施形態にかかる電池モジュール3aは、セル間電圧差の大小に応じて第1隔壁部43a、第2隔壁部43b、及び第3隔壁部43cのそれぞれY方向の厚さが異なっている。ここで、電池モジュール3aの第1電池スタック50a側の構造と第2電池スタック50b側の構造は、第1電池スタック50aと第2電池スタック50bとで電気的な接続関係が反対になっていることを除いて同様である。そのため、以下の説明では、第1電池スタック50aと第2電池スタック50bとを区別する必要がない場合はそれぞれを「電池スタック50」と称する。また、第1スタック収容空間41a及び第2スタック収容空間41bを区別する必要が無い場合はそれぞれを「スタック収容空間41」と称する。また、第1隔壁部43a、第2隔壁部43b、及び第3隔壁部43cを区別する必要がない場合はそれぞれを「隔壁部43」と称する。
【0045】
電池モジュール3aにおいて、スタックケース40aの各隔壁部43は、X方向の一方側から他方側へ向けてY方向の厚さが漸次増加している。具体的には、第1隔壁部43aは、X方向の一方側から他方側へ向けて第1電池スタック50aとの間の絶縁距離が漸次短くなるようにY方向の厚さが漸次増加している。また、第2隔壁部43bは、X方向の一方側から他方側へ向けて第2電池スタック50bとの間の絶縁距離が漸次短くなるようにY方向の厚さが漸次増加している。さらに、第3隔壁部43cは、X方向の一方側から他方側へ向けて第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bのそれぞれとの間の絶縁距離が漸次短くなるようにY方向の厚さが漸次増加している。
【0046】
ここで、このような電池モジュール3aを含む電池パック1を搭載した車両が衝突した時等に、衝撃による外部からの圧力Fが電池パック1に加わって電池パック1が潰れる場合がある。電池パック1に圧力Fが加わると、電池セル10の内部でガスが発生することに伴う内圧上昇によりガス排出弁12が開弁したり、電池セル10が破損したりするため、電池モジュール3aを構成するいずれかの電池セル10の内部から可燃性ガスが漏れる虞がある。なお、可燃性ガスは、例えば電極体の電極材料や電解液に起因して電池セル10の内部で発生し得る。
【0047】
電池セル10の内部から可燃性ガスが漏れた場合に生じ得る問題について、図7に示す比較例の電池モジュール300を例に挙げて説明する。図7は、比較例の電池モジュールを適用した電池パックを示す平面図である。図7に示す電池モジュール300は、電池モジュール3aに代わって機器モジュール2に機械的及び電気的に接続され、電池パック100を構成している。
【0048】
電池モジュール300は、スタックケース40aの代わりにスタックケース400を有していることを除いて、電池モジュール3aと同様の構成を有する。スタックケース400は、第1隔壁部43a、第2隔壁部43b、及び第3隔壁部43cがそれぞれ隔壁部430に置き換えられていることを除いて、スタックケース40aと同様の構成を有する。すなわち、スタックケース400は、Y方向の一端に配置された隔壁部430と、Y方向の他端に配置された隔壁部430と、第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bの間に配置された隔壁部430と、を有している。各隔壁部430は、第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bの少なくとも一方の電池スタック50とY方向で対向している。
【0049】
そして、各隔壁部430は、X方向の一方側から他方側へ向けて対向する電池スタック50との間の絶縁距離が一定となるように、X方向の一方側から他方側に向けて厚さが一定である。そのため、電池モジュール300は、セル間電圧差の大小に関わらず各隔壁部430と電池スタック50との間の絶縁距離がX方向の一方側から他方側に亘って一定である。
【0050】
各隔壁部430にY方向の外側から圧力Fが加えられた加圧時に、例えばセル間電圧差が相対的に大きい電池セル10のセルケース11に隔壁部430のいずれかが短絡すると、セル間電圧差が相対的に小さい電池セル10のセルケース11に隔壁部430のいずれかが短絡した場合と比べて、大きなスパークが発生する。例えば電池セル10の内部から可燃性ガスが漏れた後に大きなスパークが発生すると、スタック収容空間41に存在する可燃性ガスにスパークが引火しやすいため、電池モジュール300が発火する可能性が高いという問題がある。
【0051】
これに対し、本実施形態にかかる電池モジュール3aは、Y方向の外側から圧力Fが加えられたときに、セル間電圧差が小さい領域ほど電池スタック50との間の絶縁距離が短くなるように構成されている隔壁部43を有している。電池モジュール3aの隔壁部43は、X方向の一方側から他方側へ向けてY方向の厚さが漸次増加している。そして、電池モジュール3aは、第1隔壁部43a、第2隔壁部43b、及び第3隔壁部43cをそれぞれ隔壁部43として有している。そのため、各隔壁部43に圧力Fが加えられると、各隔壁部43の相対的に厚さが厚い部分は、各隔壁部43の相対的に厚さが薄い部分よりも先にセルケース11に短絡する。
【0052】
図3は、セル間電圧差が相対的に小さい領域で短絡した後の電池モジュールについて説明する平面図である。隔壁部43の相対的に厚さが厚い部分とセルケース11との短絡後、図3に示すように、電池モジュール3aは、短絡した箇所においてY方向に隣り合って並ぶ電池セル10間の回路を形成する。そのため、隔壁部43の相対的に厚さが厚い部分とセルケース11とが短絡する前と比べて、それぞれ一端部に配置された第1電池スタック50aの電池セル10と第2電池スタック50bの電池セル10との間のセル間電圧差が減少して中程度となる。これにより、高いセル間電圧差に起因する大きなスパークの発生が抑制される。
【0053】
このように、電池モジュール3aでは、セル間電圧差の小さい領域から大きい領域に向かって順次にセルケース11とスタックケース40aの隔壁部43とを電気的に短絡させることにより、スパークの発生量を低減することができる。
【0054】
スパークの発生量が低減された電池モジュール3aは、電池セル10の内部から可燃性ガスが漏れたとしても、スタック収容空間41に存在する可燃性ガスにスパークが引火しにくいため、スタック収容空間41において可燃性ガスにスパークが引火することを抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、電池セル10の内部から漏れた可燃性ガスが発火を引き起こす可能性を低減した安全性の高い電池モジュール3aを提供することができる。
【0055】
実施の形態2
実施の形態2では、実施の形態1のスタックケース40aの別形態となるスタックケース40bについて説明する。実施の形態2にかかる電池モジュール3bは、スタックケース40bを除いて実施の形態1と同様の構成を有する。図4は、実施の形態2にかかる電池モジュールを適用した電池パックを示す平面図である。図4に示す電池モジュール3bは、電池モジュール3aに代わって機器モジュール2に機械的及び電気的に接続され、電池パック1を構成している。
【0056】
図4に示すように、スタックケース40bは、スタックケース40aと同様の底壁部42、第1端壁部44a、及び第2端壁部44bを有している。スタックケース40bは、その他に、X方向の一端に配置された第1隔壁部43dと、X方向の他端に配置された第2隔壁部43eと、第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bの間に配置された第3隔壁部43fと、をそれぞれ隔壁部43として有している。なお、スタックケース40bは、第1隔壁部43d、第2隔壁部43e、及び第3隔壁部43fをそれぞれ隔壁部43として有する構成に限らず、第1隔壁部43d、第2隔壁部43e、及び第3隔壁部43fのうち少なくとも1つを隔壁部43として有していればよい。第1隔壁部43d、第2隔壁部43e、第1端壁部44a、及び第2端壁部44bは、スタックケース40bの周壁を構成している。
【0057】
第1隔壁部43dは、第1電池スタック50aとY方向で対向している。第2隔壁部43eは、第2電池スタック50bとY方向で対向している。第3隔壁部43fは、第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bのそれぞれとY方向で対向している。このように、スタックケース40bは、第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bの少なくとも一方の電池スタック50とY方向で対向する少なくとも1つの隔壁部43を有している。以下、第1隔壁部43d、第2隔壁部43e、及び第3隔壁部43fを区別する必要がない場合はそれぞれを「隔壁部43」と称する。
【0058】
各隔壁部43は、本体部45と、その隔壁部43が対向する電池スタック50に向けてそれぞれ突出した複数の凸部として凸部46a、46bを有する。具体的には、第1隔壁部43dは、本体部45と、本体部45の第1電池スタック50aと対向する側面から第1電池スタック50aに向かってそれぞれ突出した凸部46a、46bと、を有する。第2隔壁部43eは、本体部45と、本体部45の第2電池スタック50bと対向する側面から第2電池スタック50bに向かってそれぞれ突出した凸部46a、46bと、を有する。第3隔壁部43fは、本体部45と、本体部45の第1電池スタック50aと対向する側面から第1電池スタック50aに向かってそれぞれ突出した凸部46a、46bと、本体部45の第2電池スタック50bと対向する側面から第2電池スタック50bに向かってそれぞれ突出した凸部46a、46bと、を有する。
【0059】
本体部45は、一定の厚さを有する。本体部45は、例えばアルミダイカスト法によって製造されたアルミニウム製の矩形平板状部材である。凸部46a、46bとしては、例えばアルミニウム製のブラケット等の導電性部材を用いることができる。第1隔壁部43d、第2隔壁部43e、及び第3隔壁部43fは、これに限らず、例えば本体部45と凸部46a、46bとを一体的に形成したものであってもよい。
【0060】
凸部46a、46bは、X方向に互いに離間して配置されている。凸部46aは、本体部45のX方向の中央部に設けられている。凸部46bは、本体部45のX方向の他端部に設けられている。なお、凸部46a、46bの配置は、圧力Fの入力箇所に応じて適宜変更することができる。そして、凸部46bの突出量は、凸部46aの突出量よりも大きくなっている。したがって、凸部46bと電池スタック50との間の絶縁距離は、凸部46aと電池スタック50との間の絶縁距離より短くなっている。
【0061】
本実施形態にかかる電池モジュール3bは、Y方向の外側から圧力Fが加えられたときに、セル間電圧差が小さい領域ほど電池スタック50との間の絶縁距離が短くなるように構成されている隔壁部43を有している。電池モジュール3bの隔壁部43は、電池スタック50に向けてそれぞれ突出する凸部46a、46bを有し、X方向の他方側に配置された凸部46bは、X方向の一方側に配置された凸部46aよりも突出量が大きい。そして、電池モジュール3bは、第1隔壁部43d、第2隔壁部43e、及び第3隔壁部43fを隔壁部43として有している。そのため、各隔壁部43に圧力Fが加えられると、凸部46bが凸部46aよりも先にセルケース11に短絡する。
【0062】
このように、電池モジュール3bでは、セル間電圧差の小さい領域から大きい領域に向かって順次にセルケース11とスタックケース40bの隔壁部43とを電気的に短絡させることにより、スパークの発生量を低減することができる。したがって、本実施形態によれば、電池セル10の内部から漏れた可燃性ガスが発火を引き起こす可能性を低減した安全性の高い電池モジュール3bを提供することができる。
【0063】
なお、本実施形態では、両側面に凸部46a、46bを設けた第3隔壁部43fを例に挙げて説明したが、両側面のいずれか一方にのみ凸部46a、46bを設けた構成を採用してもよい。また、本実施形態では、一側面あたり凸部46a、46bの2つの凸部を設けた場合について説明したが、セル間電圧差の大小に応じて突出量の大小が調整されていれば、一側面あたりの凸部の数量は3つであってもよく、4つ以上であってもよい。
【0064】
実施の形態3
実施の形態3では、実施の形態1のスタックケース40aの別形態となるスタックケース40cについて説明する。実施の形態3にかかる電池モジュール3cは、スタックケース40cを除いて実施の形態1と同様の構成を有する。図5は、実施の形態3にかかる電池モジュールを適用した電池パックを示す平面図である。図5に示す電池モジュール3cは、電池モジュール3aに代わって機器モジュール2に機械的及び電気的に接続され、電池パック1を構成している。なお、図5には、リード線61~63の図示を省略している。
【0065】
図5に示すように、スタックケース40cは、スタックケース40aと同様の底壁部42を有している。スタックケース40cは、その他に、Y方向の一端に配置された第1隔壁部43gと、Y方向の他端に配置された第2隔壁部43hと、をそれぞれ隔壁部43として有している。さらに、スタックケース40cは、第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bの間に配置された第3隔壁部43iを有している。
【0066】
第1隔壁部43gは、第1電池スタック50aとY方向で対向している。第2隔壁部43hは、第2電池スタック50bとY方向で対向している。第3隔壁部43iは、第1電池スタック50a及び第2電池スタック50bのそれぞれとY方向で対向している。以下、第1隔壁部43g及び第2隔壁部43hを区別する必要がない場合はそれぞれを「隔壁部43」と称する。
【0067】
さらに、スタックケース40cは、X方向の一端に配置され、第1隔壁部43g及び第2隔壁部43hを繋ぐ第1端壁部44cと、X方向の他端に配置され、第1隔壁部43g及び第2隔壁部43hを繋ぐ第2端壁部44dと、をそれぞれ端壁部44として有している。図5に示す第1端壁部44c及び第2端壁部44dは、第1隔壁部43g、第2隔壁部43h、及び第3隔壁部43iを繋いでいる。
【0068】
第1隔壁部43g、第2隔壁部43h、第3隔壁部43i、第1端壁部44c、及び第2端壁部44dのそれぞれは、例えばアルミダイカスト法によって製造されたアルミニウム製の矩形平板状部材である。第1隔壁部43g、第2隔壁部43h、第1端壁部44c、及び第2端壁部44dは、スタックケース40cの周壁を構成している。
【0069】
そして、第2端壁部44dは、第1端壁部44cより剛性が低くなっている。第1端壁部44cより剛性を低くするために、例えば第2端壁部44dのX方向の厚さは、第1端壁部44cのX方向の厚さよりも薄く形成されている。相対的に剛性が低い第2端壁部44dは、相対的に剛性が高い第1端壁部44cに比べて、大きく変形する。
【0070】
図5中の破線は、圧力Fにより変形した後のスタックケース40cの周壁の形状を示している。本実施形態にかかる電池モジュール3cでは、各隔壁部43にY方向の外側から圧力Fが加えられた加圧時に、第2端壁部44dが第1端壁部44cよりもY方向の長さが縮まるように大きく変形する。変形した後、隔壁部43の他端と電池スタック50との間の絶縁距離が最も短くなり、隔壁部43の一端と電池スタック50との間の絶縁距離が最も長くなる。そのため、各隔壁部43に圧力Fが加えられると、隔壁部43のX方向の一方側の部分が他方側の部分よりも先にセルケース11に短絡する。
【0071】
このように、電池モジュール3cでは、セル間電圧差の小さい領域から大きい領域に向かって順次にセルケース11とスタックケース40cの隔壁部43とを電気的に短絡させることにより、スパークの発生量を低減することができる。したがって、本実施形態によれば、電池セル10の内部から漏れた可燃性ガスが発火を引き起こす可能性を低減した安全性の高い電池モジュール3cを提供することができる。
【0072】
なお、本実施形態では、第1端壁部44cの厚さより第2端壁部44dの厚さを薄くすることにより第2端壁部44dの方が変形しやすくなるようにしたが、これに限らない。例えば第1端壁部44cに用いた材料よりもヤング率の低い材料を用いて第2端壁部44dを形成することで、第2端壁部44dの方が変形しやすくなるようにしてもよい。
【0073】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。さらに、図6を参照して、電池モジュール3cの変形例について説明する。図6は、変形例を説明するための電池モジュールの平面図である。図6には、変形例を適用した電池モジュール3cを示しており、機器モジュール2及びリード線61~63の図示を省略している。
【0074】
図6に示すように、第1端壁部44c及び第2端壁部44dのそれぞれは、Y方向の長さが縮まるようにX方向の外側に向けて屈曲するように構成されている。図6中の破線は、圧力Fにより変形した後のスタックケース40cの周壁の形状を示している。図6に示す例では、第1隔壁部43gと第3隔壁部43iとの間にそれぞれ存在する第1端壁部44c及び第2端壁部44dのZ方向に延びるY方向の各中央部分の断面係数をそれぞれ他の部分の断面係数より小さくしている。同様に、図6に示す例では、第2隔壁部43hと第3隔壁部43iとの間にそれぞれ存在する第1端壁部44c及び第2端壁部44dのZ方向に延びるY方向の各中央部分の断面係数をそれぞれ他の部分の断面係数より小さくしている。
【0075】
このように第1端壁部44c及び第2端壁部44dのそれぞれZ方向に延びる一部の断面係数を小さくして剛性を低下させることで、圧力Fによって、第1端壁部44c及び第2端壁部44dのそれぞれがX方向の外側に向けて屈曲する。第1端壁部44c及び第2端壁部44dのそれぞれが屈曲することに伴って、第1隔壁部43gは第1電池スタック50aに接近し、第2隔壁部43hは第2電池スタック50bに接近する。そのため、電池モジュール3cでは、圧力Fが加えられたときに、セルケース11とスタックケース40cの隔壁部43とをより短時間で電気的に短絡させることができる。これにより、スパークの発生量をより確実に低減することができる。
【0076】
上記した第1端壁部44c及び第2端壁部44dのそれぞれがX方向の外側に向けて屈曲する構成は、スタックケース40aの第1端壁部44a及び第2端壁部44b、スタックケース40bの第1端壁部44a及び第2端壁部44bのいずれにも適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1、100 電池パック
2 機器モジュール
3a、3b、3c、300 電池モジュール
10 電池セル
11 セルケース
11a 上面部
11b 下面部
11c 主面部
11d 側面部
12 ガス排出弁
13 注入口
14 封止部材
15 正極端子
15a 正極入出力端子
16 負極端子
16a 負極入出力端子
20 機器ケース
21 機器収容空間
30 機器
40a、40b、40c、400 スタックケース
41 スタック収容空間
41a 第1スタック収容空間
41b 第2スタック収容空間
42 底壁部
43、430 隔壁部
43a、43d、43g 第1隔壁部
43b、43e、43h 第2隔壁部
43c、43f、43i 第3隔壁部
44 端壁部
44a、44c 第1端壁部
44b、44d 第2端壁部
45 本体部
46a、46b 凸部
50 電池スタック
50a 第1電池スタック
50b 第2電池スタック
61、62、63 リード線
F 圧力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7