(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156436
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】補助計器システム
(51)【国際特許分類】
G01D 7/00 20060101AFI20241029BHJP
B60K 35/00 20240101ALI20241029BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20241029BHJP
G08C 15/06 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
G01D7/00 K
B60K35/00 Z
B60R11/02 C
G08C15/06 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070892
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今井 裕二
【テーマコード(参考)】
2F041
2F073
3D020
3D344
【Fターム(参考)】
2F041EA01
2F041EA07
2F073AA01
2F073AB05
2F073BB04
2F073BC01
2F073CC02
2F073CC03
2F073CC08
2F073CD01
2F073CD11
2F073DD01
2F073EF08
2F073FG04
2F073GG01
3D020BA04
3D020BC02
3D344AA19
3D344AB01
3D344AD02
3D344AD13
(57)【要約】
【課題】 後付けで設置する補助計器システムを様々な車両に設置可能とする
【解決手段】 車載センサからアナログ信号Asを取り込む配線に容易にアクセスできない車両V2に従来の補助計器システムS1を搭載するために、本開示の補助計器システムS2は、ゲートウェイユニット3を備える。従来の補助計器システムS1は、補助計器1と、アナログ信号Asを取り込んで補助計器1に車両情報を表示させるコントローラユニット2を備える。ゲートウェイユニット3は、車両V2の車載ネットワークCNから取得した車両情報データVdをアナログ信号Asに変換して従来の補助計器システムS1のコントローラユニット2に出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車両用計器とは別に後付けで設置する補助計器システムであって、
表示データに基づいて車両情報を表示する補助計器、
入力されたアナログ信号に基づいて前記表示データを生成し前記補助計器に出力するコントローラユニット、
前記車両との通信により取得した前記車両情報を表す車両情報データをD/A変換して前記コントローラユニットに出力するゲートウェイユニット、
を備えた補助計器システム。
【請求項2】
前記ゲートウェイユニットは、
前記表示データが入力され、前記表示データに基づいて前記コントローラユニットに出力する前記アナログ信号をフィードバック補正するフィードバック制御部を備えた、
請求項1に記載の補助計器システム。
【請求項3】
前記コントローラユニットは、前記アナログ信号が所定の電圧範囲外であるときにシステムエラーと判定し、
前記ゲートウェイユニットは、前記車両情報データの異常、前記車両情報データの通信異常、前記表示データの異常、前記表示データの通信異常、前記フィードバック補正の範囲外のいずれかを検出したとき、前記コントローラユニットが前記システムエラーと判定する電圧の前記アナログ信号を前記コントローラに出力する、
請求項2に記載の補助計器システム。
【請求項4】
前記ゲートウェイユニットは、前記通信が確立し前記車両情報の取得が開始されるまでの間において、前記コントローラユニットが前記システムエラーと判定しない電圧の初期アナログ信号を前記コントローラユニットに出力する、
請求項3に記載の補助計器システム。
【請求項5】
前記初期アナログ信号の電圧は、基準となる計測値に対応する電圧である、
請求項4に記載の補助計器システム。
【請求項6】
前記補助計器は、前記車両情報を更新表示する通常表示モード、前記車両情報のピーク値を表示するピーク値表示モード、の動作モードを備え、
前記表示データは、前記動作モードの情報を含み、
前記ゲートウェイユニットは、前記動作モードが通常表示モードのときに前記フィードバック制御部による補正を実行する、
請求項2~5の何れか1項に記載の補助計器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載された車両用計器とは別に後付けで設置する補助計器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の補助計器システムとして、特許文献1に開示されたものがある。この補助計器システムは、指針式の補助計器と、車載センサから車両情報を表すアナログ信号を取り込み、取り込んだアナログ信号が表す車両情報に対応する指示角度を補助計器に送信するコントローラユニットと、から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では車両の電子化が進み、車載センサからアナログ信号を取り込む配線にアクセスできない車両が増加している。このような車両の場合、特許文献1のようなアナログ信号を取り込んで表示する補助計器システムを搭載することができない。
【0005】
本開示は、上述した課題を考慮して、車載センサからアナログ信号を取り込む配線に容易にアクセスできない車両であっても、従来のアナログ信号を取り込んで表示する補助計器システムを利用可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の補助計器システムは、
車両に搭載された車両用計器とは別に後付けで設置する補助計器システムであって、
表示データに基づいて車両情報を表示する補助計器、
入力されたアナログ信号に基づいて前記表示データを生成し前記補助計器に出力するコントローラユニット、
前記車両との通信により取得した前記車両情報を表す車両情報データをD/A変換して前記コントローラユニットに出力するゲートウェイユニット、
を備えた。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、車載センサからアナログ信号を取り込む配線に容易にアクセスできない車両であっても、アナログ信号を取り込んで表示する補助計器システムを利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
従来の補助計器システムS1と本開示の補助計器システムS2を以下に説明する。これら補助計器システムS1、S2は、車両にあらかじめ搭載された車両用計器とは別に後付けで設置するものである。
【0010】
(従来の補助計器システム)
図1を参照して従来の補助計器システムS1の構成を説明する。従来の補助計器システムS1は、補助計器1、補助計器1を制御するコントローラユニット2、から構成される。従来の補助計器システムS1は、車載センサSNから車両情報を表すアナログ信号Asが取得可能な車両V1に搭載できる。
【0011】
車載センサSNは、計測した車両情報に対応する電圧のアナログ信号Asを出力する。車載センサSNは、例えば、車両V1のエンジンの冷却水の温度を計測する温度センサ、車両V1のエンジンを潤滑するエンジンオイルの圧力を計測する圧力センサ、エンジンオイルの温度を計測する温度センサ、などである。つまり、車載センサSNは、冷却水の温度、エンジンオイルの圧力、エンジンオイルの温度などの車両情報に対応する電圧のアナログ信号Asを出力する。
【0012】
補助計器1は、文字板に形成された計測値指標を指針で指し示す指針式計器であり、コントローラユニット2から送信される表示データDdに基づいて車両情報を表示する。補助計器1は、例えば、冷却水の温度を表示する水温計1A、エンジンオイルの圧力を表示する油圧計1B、エンジンオイルの温度を表示する油温計1Cである。
【0013】
補助計器1は、表示データDdに含まれる表示モード設定値に応じて表示モードを切り替えて動作する。表示モードは、表示データDdに含まれる車両情報に更新して表示する通常表示モードと、表示データDdに含まれる車両情報のピーク値を表示するピーク値表示モードを含む。表示モード設定値は、所定のモードを表す情報であり、この例においては、通常表示モードまたはピーク値表示モードの何れかを表す値である。
【0014】
コントローラユニット2は、操作部21、アナログ信号入力部(A/D変換入力部)22、表示データ出力部23、制御部24、を備える。
【0015】
操作部21は、トグルスイッチやボタンなどの操作スイッチである。操作部21の操作により、補助計器1の表示モードを切り替える表示モード設定値を変更することができる。
【0016】
アナログ信号入力部22は、入力されたアナログ信号Asの電圧をデジタルデータに変換するA/Dコンバータである。アナログ信号入力部22は、変換後のデジタルデータを制御部24に出力する。
【0017】
表示データ出力部23は、制御部24が生成した表示データDdをシリアルデータとして出力する。表示データ出力部23は、例えば、I2C(Inter-Integrated Circuit)、SPI(Serial Peripheral Interface)などのシリアル通信プロトコルで表示データDdを送信する。
【0018】
制御部24は、アナログ信号入力部22が取り込んだアナログ信号Asの電圧が正常な範囲(0.5V~4.5V)である場合は、アナログ信号Asの電圧に基づいて補助計器1の指針が指示すべき指示角度を算出し、この指示角度と表示モード設定値を含む表示データDdを生成し、表示データ出力部23に表示データDdを出力させる。制御部24は、例えば、CPU、RAM、ROM、を備えたマイクロコントローラである。
【0019】
制御部24は、アナログ信号入力部22が取り込んだアナログ信号Asの電圧が正常な範囲(0.5V~4.5V)でない場合は、システムエラーと判定し、補助計器1に警告を表示させる。より具体的には、制御部24はアナログ信号Asの電圧が0.5V未満である場合は、車載センサSNの配線が断線した断線エラーと判定し、補助計器1に断線エラー警告を表示させる。制御部24はアナログ信号Asの電圧が4.5V以上である場合は、車載センサSNの配線が短絡した短絡エラーと判定し、補助計器1に短絡エラー警告を表示させる。
【0020】
以上が、従来の補助計器システムS1の構成である。従来の補助計器システムS1は、車載センサSNから車両情報を表すアナログ信号Asが伝送する配線に容易にアクセスできない車両V2には、搭載が困難であった。
【0021】
以下に示す本開示の補助計器システムS2は、この課題を解決するものである。
【0022】
(本開示の補助計器システム:第1実施形態)
図2を参照して本開示の補助計器システムS2を説明する。補助計器システムS2は、従来の補助計器システムS1を構成する補助計器1及びコントローラユニット2にゲートウェイユニット3を加えたものである。以降、補助計器システムS2と従来の補助計器システムS1との差分を説明する。
【0023】
補助計器システムS2は、車載センサSNから車両情報を表すアナログ信号Asが伝送する配線に容易にアクセスできない代わりに、車両情報を表す車両情報データVdを車載ネットワークCNとの通信により取得可能である車両V2に搭載できる。
【0024】
車載ネットワークCNは、CAN(Controller Area Network)や車載イーサネットなどの通信プロトコルで車両情報を通信するネットワークである。車載ネットワークCNには、エンジン制御電子ユニット、ABS制御電子ユニット、車両用計器などの車両情報を扱う各種制御ユニットが接続されている。車載ネットワークCNに接続することで、車両の走行速度、エンジン回転数、冷却水の温度、エンジンオイルの圧力、エンジンオイルの温度などの車両情報を表す車両情報データVdを取得できる。
【0025】
ゲートウェイユニット3は、車載ネットワークCNから取得した車両情報を表す車両情報データVdをアナログ信号Asに変換してコントローラユニット2に出力するユニットである。
【0026】
ゲートウェイユニット3は、車載通信部31、アナログ信号出力部(D/A変換出力部)32、表示データ入力部33、制御部(フィードバック制御部)34、を備える。
【0027】
車載通信部31は、車載ネットワークCNと通信を行い、車両情報を表す車両情報データVdを取得する通信コントローラICである。
【0028】
アナログ信号出力部32は、デジタルデータをアナログ信号Asに変換して出力するD/Aコンバータである。
【0029】
表示データ入力部33は、コントローラユニット2が出力した表示データDdを取得する通信コントローラICである。
【0030】
制御部34は、車載通信部31が取得した車両情報データVdをアナログ信号出力部32によってアナログ信号Asに変換し、この変換後のアナログ信号Asをコントローラユニット2に出力する。制御部24は、例えば、CPU、RAM、ROM、を備えたマイクロコントローラである。
【0031】
制御部34は、車載通信部31が車両情報データVdを車載ネットワークCNから受信するまでの間、初期値としてアナログ信号出力部32が出力するアナログ信号Asの電圧値を基準となる電圧とする。この基準となる電圧値は、補助計器1が原点(例えば、水温計1Aであれば0℃を指示する点)を表示するアナログ信号Asの電圧値である。
【0032】
上述したゲートウェイユニット3によれば、車載センサSNから車両情報を表すアナログ信号Asが伝送する配線に容易にアクセスできない車両V2においても、従来の補助計器システムS1を搭載することができる。
【0033】
また、本開示の出願人は、従来の補助計器システムS1のコントローラユニット2がアナログ信号Asをデジタルデータに変換する際の変換誤差によって、車載通信部31が取得した車両情報データVdと一致しない可能性があり、この変換誤差を考慮することが好ましいと考えた。従って、制御部34は、アナログ信号出力部32に車両情報データVdをアナログ信号Asに変換させるにあたって、以下に説明するフィードバック制御を行うことが好ましい。
【0034】
(フィードバック制御)
制御部34は、表示データ入力部33が取得した表示データDdに含まれた車両情報と、車載通信部31が取得した車両情報データVdに含まれた車両情報との差分を算出する。制御部34は、この差分に基づいてアナログ信号出力部32が変換するアナログ信号Asの電圧を補正する。
【0035】
フィードバック制御の具体例を示す。例えば、水温計1Aが冷却水の温度80℃を表示しており、表示データDdに冷却水の温度80℃という車両情報が含まれているものとする。そして、車載ネットワークCNから取得した車両情報データVdに冷却水の温度82℃という車両情報が含まれているものとする。
この場合、制御部34は、車両情報である冷却水の温度の差分Δ2℃を算出し、この差分に基づいてアナログ信号出力部32が変換するアナログ信号Asの電圧を、Δ2℃に対応する電圧分昇圧するフィードバック制御を行う。つまり、補助計器1が表示している計測値と車載ネットワークCNから取得した計測値を比較し、車載ネットワークCNから取得した計測値を補助計器1が表示する値と一致するように、アナログ信号出力部32が出力するアナログ信号Asの電圧を補正する。
【0036】
尚、制御部34は、上記のフィードバック制御を表示データDdに含まれた表示モード設定値が通常表示モードである場合に実行する。言い換えれば、制御部34は、通常表示モードである補助計器1が表示する車両情報のみにフィードバック制御を行い、ピーク値表示モードである補助計器1が表示する車両情報にはフィードバック制御を行わない。
【0037】
以上のフィードバック制御によれば、変換誤差を考慮したアナログ信号Asを従来の補助計器システムS1に出力できるため、補助計器1の表示精度が向上する。
【0038】
また、制御部34は、以下に示すエラー処理を備える。
【0039】
(エラー処理:車両情報データVdの異常)
制御部34は、車載通信部31が取得した車両情報データVdに異常を検出したとき、アナログ信号出力部32に0.5V未満の電圧または4.5V以上の電圧のアナログ信号Asを出力させる。つまり、制御部34はアナログ信号出力部32に、コントローラユニット2がシステムエラーと判定する電圧のアナログ信号Asを出力させる。制御部34は、例えば、水温計1Aが表示可能な車両情報の範囲が0~120℃であった場合、この範囲外の冷却水の温度が車両情報データVdに含まれていたときに、車両情報データVdが異常であると判定する。
【0040】
(エラー処理:車両情報データVdの通信異常)
制御部34は、車載通信部31が車載ネットワークCNとの通信の状態に異常を検出したとき、システムエラーと判定する電圧のアナログ信号Asをアナログ信号出力部32に出力させる。制御部34は、例えば、車載通信部31が所定の時間経過しても車載ネットワークCNから車両情報データVdが取得できなかった場合に、車載ネットワークCNとの通信の状態が異常であると判定する。
【0041】
(エラー処理:表示データDdの異常)
制御部34は、表示データ入力部33が取得した表示データDdに異常を検出したとき、システムエラーと判定する電圧のアナログ信号Asをアナログ信号出力部32に出力させる。制御部34は、例えば、水温計1Aが表示可能な車両情報の範囲が0~120℃であった場合、この範囲外の冷却水の温度が表示データDdに含まれていたときに、表示データDdが異常であると判定する。
【0042】
(エラー処理:表示データDdの通信異常)
制御部34は、表示データ入力部33の通信の状態に異常を検出したとき、システムエラーと判定する電圧のアナログ信号Asをアナログ信号出力部32に出力させる。制御部34は、例えば、表示データDdを所定時間(例えば、1秒)以上の受信できない状態にあると、表示データ入力部33の通信の状態が異常であると判定する。
【0043】
(エラー処理:フィードバック補正範囲外)
制御部34は、フィードバック補正の際に、表示データDdと車両情報データVdに含まれた各車両情報の差分が所定値以上である場合に、フィードバック補正範囲外であると判定し、システムエラーと判定する電圧のアナログ信号Asをアナログ信号出力部32に出力させる。例えば、冷却水の温度に係るフィードバック補正の範囲が±10℃とした場合、制御部34は、冷却水の温度の差分が20℃であるときにフィードバック補正範囲外であると判定する。
【0044】
以上のエラー処理によれば、従来の補助計器システムS1が判定不能なエラーについても警告が可能となる。
【0045】
以上が、本開示の補助計器システムS2の説明である。
【0046】
本開示の補助計器システムS2は、水温計1A、油圧計1B、油温計1Cに限らず、種々の車両情報を表示する補助計器に適用してもよい。
【0047】
補助計器1は、指針式計器の他に、画像で車両情報を表示する画像式計器であってもよい。この場合、表示データDdは、アナログ信号Asの電圧に基づいて補助計器1の指針が指示すべき指示角度の代わりに、アナログ信号Asの電圧に基づいて補助計器1が画像で表示すべき計測値を含むようにすればよい。
【符号の説明】
【0048】
S1 …補助計器システム(従来の補助計器システム)
S2 …補助計器システム(第1実施形態の補助計器システム)
1 …補助計器
1A …水温計(補助計器)
1B …油圧計(補助計器)
1C …油温計(補助計器)
2 …コントローラユニット
21 …操作部
22 …アナログ信号入力部(A/D変換入力部)
23 …表示データ出力部
24 …制御部
3 …ゲートウェイユニット
31 …車載通信部
32 …アナログ信号出力部(D/A変換出力部)
33 …表示データ入力部
34 …制御部(フィードバック制御部)
V1、V2…車両
SN …センサ
CN …車載ネットワーク
As …アナログ信号(車両情報)
Vd …車両情報データ(車両情報)
Dd …表示データ