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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156442
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】光硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/66 20060101AFI20241029BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C08G59/66
C08G59/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070906
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】川島 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】名和 穂菜美
【テーマコード(参考)】
4J036
【Fターム(参考)】
4J036AA01
4J036AD08
4J036DC26
4J036DD02
4J036FA11
4J036GA29
4J036HA02
4J036JA06
4J036JA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】樹脂基材に対する密着性がより向上した硬化物を得ることができる光硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】A成分として1分子内に2個以上のグリシジル基を有する第1グリシジル化合物、B成分として1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物、C成分として1分子内に1個のグリシジル基を有する第2グリシジル化合物、および、D成分として活性エネルギー線照射によって塩基を発生する塩基発生剤を含み、A成分のグリシジル基とB成分のチオール基とのモル比が100:85~100:105である、光硬化性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性組成物であって、
A成分として、1分子内に2個以上のグリシジル基を有する第1グリシジル化合物、
B成分として、1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物、
C成分として、1分子内に1個のグリシジル基を有する第2グリシジル化合物、および
D成分として、活性エネルギー線照射によって塩基を発生する塩基発生剤
を含み、
前記A成分の前記グリシジル基と前記B成分の前記チオール基とのモル比が100:85~100:105である、光硬化性組成物。
【請求項2】
前記C成分の割合は、前記光硬化性組成物の総質量基準で0.3質量%以上2.5質量%以下である、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
前記D成分の割合は、前記光硬化性組成物の総質量基準で1質量%以上10質量%以下である、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
前記C成分の前記第2グリシジル化合物は、1分子中に1個の前記グリシジル基を有しつつ、更にマレイミド構造、オキシエチレン構造およびアルキル基から成る群から選択される少なくとも1種を有するグリシジル化合物である、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
前記C成分の前記第2グリシジル化合物が、1分子内にマレイミド構造および1個のグリシジル基を有する化合物、1分子内に重合度が3以上のオキシエチレン構造および1個のグリシジル基を有する化合物、ならびに、炭素数が5以上のアルキル基と1個のグリシジル基のエーテル化合物から成る群から選択される少なくとも1種である、請求項1~4のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
前記D成分の前記塩基発生剤は、前記活性エネルギー線照射によって、アミジン類、グアニジン類およびビグアニド類から成る群から選択される少なくとも1種を発生する化合物である、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
前記A成分の前記第1グリシジル化合物が芳香環構造を有する、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項8】
前記光硬化性組成物が、樹脂基材用途の組成物である、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線などの活性エネルギー線の照射により液状から固体状に変化する光硬化性樹脂は、主に熱により硬化する熱硬化性樹脂と比較して、より低い温度で硬化し得ることから省エネルギーの材料として、各種の用途で使用され得る。
【0003】
例えば、特許文献1、特許文献2に開示されているエポキシ樹脂、チオール化合物を主成分とする光硬化性組成物は、低腐食性のポッティング、モールディング、シール剤または塗料などに使用され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6036703号公報
【特許文献2】特許第6959245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献における光硬化性組成物は、光塩基発生剤を使用していることから金属製基材への低腐食性が期待できる。しかしながら、かかる光硬化性組成物は、当該特許文献の実施例で示されているように、エポキシ樹脂としてビスフェノール型エポキシ樹脂、チオール化合物として脂肪族構造チオール化合物が使用されており、当該光硬化性組成物から形成される硬化物は樹脂基材への密着性の点で必ずしも満足のいくものとならないことが考えられる。
【0006】
本発明はかかる課題に鑑みて為されたものである。即ち、本発明の主たる目的は、樹脂基材に対する密着性がより向上した硬化物を得ることができる光硬化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、従来技術の延長線上で対応するのではなく、新たな方向で対処することによって上記課題の解決を試みた。その結果、上記主たる目的が達成された光硬化性組成物の発明に至った。
【0008】
具体的には、本願発明では、
A成分として、1分子内に2個以上のグリシジル基を有する第1グリシジル化合物、
B成分として、1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物、
C成分として、1分子内に1個のグリシジル基を有する第2グリシジル化合物、および
D成分として、活性エネルギー線照射によって塩基を発生する塩基発生剤
を含んで成り、
前記A成分の前記グリシジル基と前記B成分の前記チオール基とのモル比が100:85~100:105である、光硬化性組成物が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本願発明では、樹脂基材に対する密着性がより向上した硬化物を得ることが可能な光硬化性組成物がもたらされる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の基礎となった知見等]
光硬化性組成物として、アニオン種を反応活性種とする組成物がある。かかる光硬化性組成物は、従来広く使用されているラジカル種を反応活性種とするものや、カチオン種を反応活性種とするものと比べて、酸素または水分による硬化阻害が生じ難い、反応開始剤に起因して硬化物又はその周辺部材に腐食および/もしくは黄変が生じにくい等の理由から注目を集めている。
【0011】
このような光硬化性組成物は、種々の基材に対して使用することが考えられる。例えば、金属製ではなく樹脂製の基材、即ち、樹脂基材に対して用いることが考えられる。
【0012】
本願発明者は、光硬化性組成物が樹脂基材に対して用いられる場合、特に電子デバイスの樹脂基材に対して用いられる場合には克服すべき課題が依然あることに気付き、そのた対策を取る必要性を見出した。
【0013】
光塩基発生剤を含む光硬化性組成物は、その発生剤の点で金属基材への低腐食性が期待できるものの、樹脂基材への密着性の点では必ずしも満足のいくものと限らない点に本願発明者は着目した。例えば、上記特許文献1および2の実施例で示されている組成物は、エポキシ樹脂としてビスフェノール型エポキシ樹脂、チオール化合物として脂肪族構造チオール化合物が使用されており、樹脂基材に対して使用された際に所望の密着性は得られ難いと考えられる。
【0014】
このように光硬化性組成物は、その硬化物として樹脂基材への密着性が課題となり得る場合がある。特に、電子デバイス用途の樹脂基材(例えば、電子デバイスに用いられる樹脂テープまたは樹脂フィルム等)に光硬化性組成物が使用された場合には所望の密着性が必ずしも得られるわけではないことを本願発明者は見出した。
【0015】
具体的には、光硬化性組成物から得られる硬化物は、電子デバイスの製造時において浸漬処理などに付されることがあり、当該硬化物が関与する接合箇所は密着性の点で課題を呈し得ることが分かった。例えば、光硬化性組成物から得られるレジスト材「以下、「レジスト光硬化物」とも称する」が樹脂テープ(例えば給電テープ等)に供される場合では、レジスト光硬化物と当該樹脂テープとの接合箇所が電子デバイスの製造時にて不都合に影響を受ける場合がある。より具体的には、レジスト光硬化物と樹脂テープとがプロセス液体が関与する処理など(例えば重合浸漬処理など)に付されると、それらの接合箇所において剥離現象が引き起こされ易くなり、ひいては、所望の電子デバイスにとって不都合になり得ることを見出した。
【0016】
本願発明者は、そのような課題に対して従来技術の延長線上で対応するのではなく、新たな方向で対処することによって当該課題の解決を試みた。その結果、樹脂基材に対して硬化物として所望の密着性を呈する光硬化性組成物の発明に至った。
【0017】
以下では、本発明の実施形態を具体的に説明する。出願人は、本発明を当業者が十分に理解するために以下の説明および実施例を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではないことに留意されたい。つまり、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、その目的の範囲で適宜変更して実施できる。また、以下の具体的な説明では、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細な説明、あるいは実質的に同一の事項について重複説明を省略する場合がある。これは、説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0018】
本明細書で言及する各種の数値範囲は、特段の言及がない限り(例えば“未満”やその数値を含まないこと等が明示されない限り)、下限および上限の数値そのものも含むことを意図している。つまり、例えば1~10といった数値範囲を例にとれば、下限値の“1”を含むと共に、上限値の“10”をも含むものとして解釈され得る。
【0019】
<光硬化性組成物>
本発明の一実施形態(以下、“本実施形態”とも称する)に係る光硬化性組成物は、
A成分、B成分、C成分およびD成分を少なくとも含んで成り、
A成分として、1分子内に2個以上のグリシジル基を有する第1グリシジル化合物、
B成分として、1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物、
C成分として、1分子内に1個のグリシジル基を有する第2グリシジル化合物、および
D成分として、活性エネルギー線照射によって塩基を発生する塩基発生剤
を含み、
A成分とB成分との官能基(本発明として特に意図される官能基)のモル比が100:85~100:105となっている組成物である。
【0020】
本実施形態に係る光硬化性組成物において、A成分はグリシジル基(特に、1分子内に2個以上のグリシジル基を有するA成分中の当該グリシジル基)によって少なくとも特徴付けられ、B成分はチオール基(特に、1分子内に2個以上のチオール基を有するB成分中の当該チオール基)によって特徴付けられるところ、A成分のグリシジル基とB成分のチオール基とのモル比が100:85~100:105となっており、例えば100:90~100:105、100:90~100:100、または、100:95~100:100などとなっていてよい。樹脂基材への密着性がより向上した硬化物をもたらす光硬化性組成物が得られ易くなるからである。
【0021】
本実施形態に係る光硬化性組成物は、活性エネルギー線が照射されることを通じて、所望の硬化物を形成し得る組成物である。つまり、本実施形態に係る光硬化性組成物は、活性エネルギー線照射によって塩基を発生する塩基発生剤を含んでおり、当該活性エネルギー線照射を通じて光硬化性組成物を硬化に付すことができる。ある好適な一態様では、光硬化性組成物は、活性エネルギー線の照射後に付加的に加熱を行うことで所望の硬化がより促進される。このような本実施形態に係る光硬化性組成物から得られる硬化物は、樹脂基材に対する密着性の点でより優れたものとなり得る。
【0022】
特定の理論に拘束されるわけではないが、樹脂基材へのより優れた密着性は、本実施形態に係る光硬化性組成物がC成分を含んでいることが理由の1つと考えられ得る。つまり、A成分の第1グリシジル化合物に加えて、C成分として第2グリシジル化合物がB成分およびD成分と共に本実施形態に係る光硬化性組成物に含まれており、そのような特徴に起因して樹脂基材への密着性により優れた硬化物を形成できる光硬化性組成物がもたらされている。
【0023】
より具体的には、特定の理論に拘束されるわけではないが、C成分自体が有し得る高極性構造、および/または、硬化物における柔軟性供与のC成分作用が関与していると推察され得る。つまり、A成分の第1グリシジル化合物とは別成分として含まれるC成分の第2グリシジル化合物における高極性構造および/または硬化物に対する柔軟性供与の作用に少なくとも起因して、本実施形態に係る光硬化性組成物から得られる硬化物は樹脂基材との分子間力および濡れ性が向上し得、それによって、樹脂基材への密着性がより優れたものになり得ると推察される。
【0024】
ある好適な態様において、C成分の第2グリシジル化合物は、1分子中に1個のグリシジル基(1個のみのグリシジル基)を有しつつも、更にマレイミド構造(またはマレイミド基)、オキシエチレン構造、およびアルキル基から成る群から選択される少なくとも1種を有する化合物となっている。かかる第2グリシジル化合物を含む光硬化性組成物では、樹脂基材への密着性がより向上した硬化物がもたらされ易くなる。より具体的には、C成分の第2グリシジル化合物は、1分子内にマレイミド構造と1個のグリシジル基を有する化合物、1分子内に重合度が3以上のオキシエチレン構造(またはポリオキシエチレン構造もしくはポリエチレングリコール構造)と1個のグリシジル基を有する化合物、および、炭素数が5以上のアルキル基と1個のグリシジル基のエーテル化合物から成る群から選択される少なくとも1種であってよい。特定の理論に拘束されるわけではないが、「1分子内にマレイミド構造および1個のグリシジル基を有する化合物」および「1分子内に重合度が3以上のオキシエチレン構造(またはポリオキシエチレン構造もしくはポリエチレングリコール構造)および1個のグリシジル基を有する化合物」は、特に、より好適な高極性構造を有し得る第2グリシジル化合物がもたらされ易い。同様に特定の理論に拘束されるわけではないが、「炭素数が5以上のアルキル基および1個のグリシジル基のエーテル化合物」は、特に、硬化物にて柔軟性供与の作用をより好適に供し得る第2グリシジル化合物がもたらされ易い。
【0025】
本実施形態に係る光硬化性組成物は、D成分として、活性エネルギー線照射によって塩基を発生する塩基発生剤を含んでいる。ここで、本明細書における「活性エネルギー線」とは、例えば、紫外線(UV)、電子線、α線、および/またはβ線等であってよい。ある好適な一態様では、活性エネルギー線が紫外線である。なお、塩基発生剤は、このように光によって塩基を生じるので、当該塩基発生剤を“光塩基発生剤”と称すこともできる。
【0026】
活性エネルギー線に関して詳述しておく。本実施形態に係る光硬化性組成物に対して行われ得る活性エネルギー線の照射は、常温(例えば25℃)またはそれに近い温度で行ってよい。例えば、活性エネルギー線の照射は、特に限定されないが、20℃以上30℃以下の温度下で行ってよい。また、活性エネルギー線照射後に温度をより高くする処理に付してもよい。特に限定されないが、光硬化性組成物は、活性エネルギー線照射後において、例えば80℃以上(より具体的には80℃以上150℃以下、例えば80℃以上100℃以下)の温度条件に付してもよい。
【0027】
以下、本実施形態に係る光硬化性組成物の各成分について更に詳細に説明する。
【0028】
[A成分:1分子内に2個以上のグリシジル基を有する第1グリシジル化合物]
A成分は、1分子単位で2個以上のグリシジル基を有する化合物である。別の切り口で捉えれば、A成分は、1分子内に2個以上又は複数のグリシジル基を有するエポキシ化合物であってよい。かかる観点でいえば、A成分の第1グリシジル化合物は、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物であってよい。
【0029】
A成分につきより詳述しておく。A成分の第1グリシジル化合物は、例えば、当該A成分の1分子中にグリシジル基を2個以上6個以下有していてよく、好ましくはグリシジル基を2個以上5個以下、例えばグリシジル基を2個以上4個以下、あるいはグリシジル基を2個以上3個以下(例えば2個)有していてよい。本実施形態に係る光硬化性組成物から形成される硬化物が、樹脂基材への密着性の点でより優れた硬化物として供され易くなるからである。なお、他成分との相違でいえば、A成分はチオール基を含んでいなくてよく、また、活性エネルギー線照射によって塩基を発生する構造(分子構造)を有していなくてよい。
【0030】
例えば、A成分は、主鎖に脂肪族構造および芳香族構造のうちの1以上を有する第1グリシジル化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。ある好適な態様において、A成分の第1グリシジル化合物は、特に主鎖に脂肪族構造を有していてよく、例えば主鎖に脂環式構造を有していてよい。
【0031】
本明細書において「脂肪族構造」とは、炭素間結合を有し、直鎖構造、分枝構造および/または脂環式構造を形成しているものをいい、芳香族構造を取らないものをいう。一方、本明細書において「芳香族構造」とは、炭素間結合を有し、かつsp2混成軌道を有し、環状の不飽和有機化合物を形成している構造をいい、多環芳香族構造および複素芳香族構造も含む。また、本明細書において「主鎖」とは、最も多く連続している炭素鎖を意味し、エポキシ化合物、アクリルエステル化合物およびイソシアネート化合物などの場合、該主鎖は、エポキシ構造、エステル構造およびイソシアネート構造をそれぞれ有するものを意味し得る。本明細書において「側鎖」とは、主鎖から枝分かれしている炭素鎖の部分をいう。さらに、本明細書において「炭素間結合」および「炭素鎖」との文言は、場合によっては、酸素原子または窒素原子等のヘテロ原子が間に含まれていてもよい。
【0032】
本実施形態に係る光硬化性組成物に含まれるA成分の第1グリシジル化合物としては、限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール系エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、アントラセン環骨格含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、芳香族構造および/または脂環式構造を有するブロム含有エポキシ樹脂、骨格に脂環式構造を有する脂肪族エポキシ樹脂、脂環式構造を有する脂肪族ポリエーテル系エポキシ樹脂、ならびに、トリグリシジルイソシアヌレート等から成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0033】
ある好適な一態様において、A成分の第1グリシジル化合物は芳香環構造を有している。つまり、A成分は、1分子内に2個以上のグリシジル基を有するところ、そのようなA成分が芳香環構造を備えた第1グリシジル化合物となっていてよい。かかる場合、耐熱性がより向上した光硬化性組成物となりつつも、得られる硬化物が樹脂基材への密着性の点でより優れた硬化物として供され得る。なお、ここでいう「芳香環」は、上述した通り、好ましくは、炭素間結合を有し、かつsp2混成軌道を有し、環状の不飽和有機化合物を形成している構造であり、そのような構造をA成分の第1グリシジル化合物が有していてよい。そのような第1グリシジル化合物の具体例としては、例えば、2,2’-ジアリルビスフェノールジアリルエーテルのエポキシ化反応生成物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等の化合物を挙げることができる。別の切り口でいえば、ある好適な一態様において、A成分の第1グリシジル化合物は、2,2-ビス(3-グリシジル-4-グリシジルオキシフェニル)プロパンなどであってよい。
【0034】
[B成分:1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物]
B成分は、1分子単位で2個以上のチオール基を有する化合物であって、チオール系化合物である。かかる化合物は、アニオン重合により反応する化合物であり得、光硬化性組成物の硬化により効果的に寄与し得る。このようなB成分の化合物は、1分子中にチオール基を有する化合物であれば、特に限定されない。
【0035】
B成分につきより詳述しておく。B成分の化合物は、当該B成分の1分子中にチオール基を2個以上有しており、例えば1分子中にチオール基を2個以上6個以下有していてよく、好ましくはチオール基を2個以上5個以下、例えばチオール基を2個以上4個以下、あるいはチオール基を2個以上3個以下(例えば2個)有していてよい。B成分はグリシジル基を含んでいなくてよく、また、活性エネルギー線照射によって塩基を発生する構造(分子構造)を有していなくてよい。
【0036】
このようなB成分の化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、テトラヒドロ-1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトエチル)-イミダゾ[4,5-d]イミダゾール-2,5(1H,3H)-ジオン、テトラヒドロ-1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)-イミダゾ[4,5-d]イミダゾール-2,5(1H,3H)-ジオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、および1,3,5-トリス(2-(3-スルファニルブタノイルオキシ)エチル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン等から成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0037】
光硬化性組成物の硬化物の耐熱性をより向上させる観点をより重視する場合では、B成分の化合物は、例えばテトラヒドロ-1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトエチル)-イミダゾ[4,5-d]イミダゾール-2,5(1H,3H)-ジオン、および/または、テトラヒドロ-1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)-イミダゾ[4,5-d]イミダゾール-2,5(1H,3H)-ジオンであってよい。
【0038】
[C成分:1分子内に1個のグリシジル基を有する第2グリシジル化合物]
C成分は、1分子単位で1個のグリシジル基を有する第2グリシジル化合物である。1分子内に1個のみのグリシジル基を有するので、C成分は単官能性グリシジル化合物と称すこともできる。C成分の第2グリシジル化合物は、当該C成分の1分子中にグリシジル基またはエポキシ基を1個有する化合物であれば、特に限定されない。なお、他成分との違いでいえば、C成分はチオール基を含んでいなくてよく、また、活性エネルギー線照射によって塩基を発生する構造(分子構造)を有していなくてよい。
【0039】
本発明の光硬化性組成物は、C成分の単官能性グリシジル化合物を付加的に含むことで、当該光硬化性組成物から得られる組成物が樹脂基材への密着性の点でより優れた硬化物となり易くなる。
【0040】
C成分につきより詳述しておく。C成分の単官能性グリシジル化合物は、上述した如く、1分子中に1個のグリシジル基(1個のみのグリシジル基)を有しつつも、更にマレイミド構造、オキシエチレン構造(またはポリオキシエチレン構造もしくはオキシエチレン鎖)およびアルキル基から成る群から選択される少なくとも1種を有するグリシジル単官能性の化合物となっていてよい。光硬化性組成物の硬化物と樹脂基材との密着性がより向上する効果が顕在化し得るからである。より具体的には、C成分の第2グリシジル化合物が、1分子内にマレイミド構造および1個(または単数)のグリシジル基を有する化合物、1分子内に重合度が3以上のオキシエチレン構造および1個(または単数)のグリシジル基を有する化合物、ならびに、炭素数が5以上のアルキル基および1個(または単数)のグリシジル基を有するエーテル化合物から成る群から選択される少なくとも1種となっていることが好ましい。当該光硬化性組成物の硬化物と樹脂基材との密着性がより向上する効果がより顕在化し得るからである。
【0041】
C成分の「1分子内にマレイミド構造および1個のグリシジル基を有する化合物」は、例えば、N-グリシジルフタルイミド、およびN-(2,3-エポキシプロピル)フタルイミドから成る群から選択される少なくとも1種であってよい。上記の「1分子内に重合度が3以上のオキシエチレン構造および1個のグリシジル基を有する化合物」における「重合度」(即ち、オキシエチレン単位に関する重合度)は、3以上であるところ、例えば4以上、または、5以上であってもよい。また、かかる「重合度」の上限は特に制限はなく、例えば20であり、好ましくは10、より好ましくは8である(例えば、7または6であってもよい)。そのようなC成分として供される「1分子内に重合度が3以上のオキシエチレン構造および1個のグリシジル基を有する化合物」は、例えば、フェノールEO付加物グリシジルエーテル(即ち、フェノールにエチレンオキサイドを付加して得られるグリシジルエーテル)、ラウリルアルコールEO付加物グリシジルエーテル(即ち、ラウリルアルコールにエチレンオキサイドを付加して得られるグリシジルエーテル(例えばナガセケムテックス製「EX-171」))、およびポリエチレングリコールグリシジルエーテルから成る群から選択される少なくとも1種であってよい。なお、特に制限されるわけではないが、ここでいう重合度は、例えば数平均分子量に基づくものであってよく、また、試薬メーカー(「C成分」の化合物を市販している業者等)から入手できる情報に基づくものであってもよい。上記の炭素数が5以上のアルキル基および1個のグリシジル基のエーテル化合物における「炭素数」は、5以上であるところ、その上限は特に制限はなく、例えば15であり、好ましくは10である。そのようなC成分として供される「炭素数が5以上のアルキル基および1個のグリシジル基のエーテル化合物」は、例えば、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、およびC12混合アルコールグリシジルエーテルから成る群から選択される少なくとも1種であってよい。なお、このようなエーテル化合物における炭素数の下限は、必ずしも5に限らず、例えば4、3または2などであってよい。
【0042】
ある好適な一態様において、光硬化性組成物に含まれるC成分の割合は、当該光硬化性組成物の総質量基準で好ましくは0.3質量%以上2.5質量%以下、例えば、0.4質量%以上2.5質量%以下、あるいは、0.5質量%以上2.5質量%以下などあってよい。このような含有範囲でC成分が含まれることにより、光硬化性組成物から形成される硬化物の樹脂基材への密着性が良好となる効果がより顕在化し得る。より詳述すると、C成分の第2グリシジル化合物の含有率が、上記範囲よりも大きくなると(即ち、上記範囲の上限値よりも大きくなると)、C成分が光硬化性組成物に溶解しきれない傾向が出やすくなる。つまり、溶解しきれないC成分が光硬化性組成物中で沈降することで品質管理が難しくなり得り、結果として所望の密着性を有する硬化物が得られない。一方、C成分の含有率が上記範囲よりも低くなると(即ち、上記範囲の下限値よりも小さくなると)、光硬化性組成物から形成される硬化物の樹脂基材への密着性が不十分となる傾向が出やすくなる。
【0043】
ある好適な態様では、光硬化性組成物に含まれるC成分の割合は、当該光硬化性組成物の総質量基準で、1.0質量%以上2.5質量%以下、1.5質量%以上2.5質量%以下、1.7質量%以上2.5質量%以下、1.0質量%以上2.4質量%以下、1.0質量%以上2.3質量%以下、1.8質量%以上2.5質量%以下、1.8質量%以上2.4質量%以下、1.8質量%以上2.3質量%以下、1.8質量%以上2.2質量%以下、1.8質量%以上2.1質量%以下、あるいは1.9質量%以上2.1質量%以下等となっている。かかる光硬化性組成物では、それから得られる硬化物と樹脂基材との密着性がより向上する効果がより顕在化し得る。
【0044】
[D成分:塩基発生剤]
D成分は、塩基発生剤である。好ましくは、D成分の塩基発生剤は、活性エネルギー線の照射により分解して塩基を発生させる化合物である。より好ましくはD成分から生じた塩基により、B成分の化合物、具体的にはB成分に含まれるチオール基から水素が引き抜かれ易くなり、A成分の第1グリシジル化合物のグリシジル基とより効果的に反応し得る。
【0045】
D成分につきより詳述しておく。D成分は、活性エネルギーに対して潜在化されている。即ち、D成分は、活性エネルギー(例えば、光、具体的には、紫外線)を照射することによって塩基が発生する化合物であり、活性エネルギーの不存在下ではアニオンが非所望に発生しない化合物である。このような光塩基発生剤を用いることによって、保管中では、意図しない重合反応が進行せず、光硬化性組成物の粘度が非所望に増加しない。なお、他成分との相違でいえば、D成分は、グリシジル基および/またはチオール基を含んでいなくてよい。
【0046】
より具体的なD成分の塩基発生剤は、2-ニトロフェニル基を有するカルバメート化合物、ボレートアニオンを含む塩、アントラキノン骨格を有するカルバメート化合物、キサントン骨格を有するカルボン酸塩、ならびに、ケトプロフェン骨格を有するカルボン酸塩から成る群から選択される少なくとも1種を含んだものであってよい。
【0047】
また、D成分の塩基発生剤は、ビグアニド、グアニジン、アミジン、および/またはホスファゼン塩基等の強塩基を発生させ得る化合物であってよい。ある好適な一態様において、光硬化性組成物に含まれるD成分の塩基発生剤は、活性エネルギー線照射によって、アミジン類、グアニジン類およびビグアニド類から成る群から選択される少なくとも1種を発生する化合物となっている。このような化合物をD成分として用いると、当該D成分の分解により発生する塩基によってB成分の化合物から水素がより効果的に引き抜かれ易くなり、A成分の化合物に由来するグリシジル基と反応し易くなる。つまり、そのようなD成分では、光硬化性組成物における反応が特に速やかに進行し得、それゆえ、光硬化性組成物がより良好に硬化し得る。
【0048】
上記の強塩基を発生し得る具体的なD成分としては、1,2-ジシクロヘキシル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウム=テトラキス(3-フルオロフェニル)ボラート、1,2-ジシクロヘキシル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウム=n-ブチルトリフェニルボラート、2-(2-ニトロフェニル)プロピロキシカルボニル-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、および、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン等から成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0049】
また、活性エネルギー線の照射により強塩基を発生し得ることから、D成分は、1,2-ジシクロヘキシル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウム=テトラキス(3-フルオロフェニル)ボラート、および/または、2-(2-ニトロフェニル)プロピロキシカルボニル-1,1,3,3-テトラメチルグアニジンなどであってもよい。以下で説明する観点でより好適な光硬化性組成物のD成分として作用し得るからである。
【0050】
ある好適な一態様において、光硬化性組成物におけるD成分の割合は、当該光硬化性組成物の総質量基準で1質量%以上(より具体的には1.0質量%以上)10質量%以下である。このような含有範囲でD成分が含まれることにより、光硬化性組成物の硬化反応が良好に進行し得る。より詳述すると、D成分の塩基発生剤の含有率が、上記範囲よりも小さくなると(即ち、上記範囲の下限値よりも小さくなると)、光照射により発生する塩基の量が少なくなり得、当該D成分から発生する塩基とB成分のチオール基が反応して生じるチオールアニオン種の濃度が小さくなり得る。よって、チオールアニオン種とA成分のグリシジル基との反応速度が低下し、実用的な硬化時間の観点、具体的には活性エネルギー線の照射後に加熱して10分以内に光硬化性組成物を硬化させるなど点で不十分となり得る。
【0051】
一方、D成分の塩基発生剤の含有率が、上記範囲よりも大きくなると(即ち、上記範囲の上限値よりも大きくなると)、光硬化性組成物中に遊離した塩基が多く存在し得ることになり、D成分に含まれる遊離の塩基の濃度が高くなり得る。遊離の塩基の濃度が高くなると、活性エネルギー線が照射されていない光硬化組成物中において、遊離の塩基がB成分のチオール基と反応して生じるチオールアニオン種がA成分のグリシジル基と反応してしまい光硬化性組成物の硬化が進行することになり得、保管中の粘度が非所望に上昇する、または不都合に硬化してしまう可能性がある。すなわち、光硬化性組成物の保管安定性が損なわれる傾向が出やすくなる。
【0052】
ある好適な態様では、D成分の割合は、光硬化性組成物の総質量基準で1質量%以上9質量%以下、1質量%以上8質量%以下、1質量%以上7質量%以下、1質量%以上6質量%以下、1質量%以上5質量%以下、1質量%以上4質量%以下、あるいは、1質量%以上3質量%以下であってよい。そのような光硬化性組成物では、得られる硬化物と樹脂基材との密着性がより向上するといった効果がより顕在化し得る。
【0053】
上述したように、本実施形態に係る光硬化性組成物において、A成分のグリシジル基とB成分のチオール基とのモル比は100:85~100:105であり、それにより、樹脂基材への密着性がより向上した硬化物を形成できる光硬化性組成物が得られ易くなる。このようなモル比は、A成分のグリシジル基のモル数を100とすると、B成分のチオール基とのモル数が85~105であることを意味している。ここで、かかるB成分のチオール基のモル数の下限は、85に限らず、81またはそれより大きい値であってよく、例えば82、83、84であってよく、あるいは、例えば86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97などであってよい。同様にして、当該B成分のチオール基のモル数の上限は、105に限らず、109又はそれより小さい値であってよく、例えば108、107、106であってよく、あるいは、104、103、102、101または100であってよい。したがって、本実施形態に係る光硬化性組成物では、A成分のグリシジル基とB成分のチオール基とのモル比が、例えば100:90~100:100、100:95~100:100、100:96~100:100、100:97~100:100、または、100:98~100:100などであってもよい。
【0054】
このような含有範囲でA成分およびB成分が含まれることにより、光硬化性組成物から形成される硬化物の密着性がより良好となる。より具体的には、A成分のグリシジル基に対するB成分のチオール基のモル比が上記の値を下回ると、A成分が過剰に残存し易くなる。このような場合、光硬化性組成物の硬化が不十分となり易く、光硬化性組成物から得られる硬化物の樹脂基材への密着性が低下し得る。一方、A成分のグリシジル基に対するB成分のチオール基のモル比が上記の値を上回ると、光硬化性組成物が硬化して得られる硬化物中に、未反応のチオール基または未反応のB成分が過剰に残存し易くなる。よって、光硬化性組成物の硬化が不十分となり易い(つまり、所望の硬化が得られ難くなる)。また、当該硬化物の経年劣化および/または未反応のB成分の滲みだしが生じ易くもなる。
【0055】
ある好適な一態様において、光硬化性組成物は、樹脂基材用途の組成物となっている。つまり、本実施形態に係る光硬化性組成物は、好ましくは樹脂基材に対して用いられる組成物であって、樹脂基材に対して硬化に付される組成物である。このような光硬化性組成物では、硬化物として基材に対する密着性がより向上する効果がより好適に発現され得ることになる。
【0056】
樹脂基材は、特に、フィルム形状および/またはテープ形状を有していてよい。これにつき、樹脂基材は、その厚さがマイクロメートル(μm)のオーダー、すなわち、1000μm未満となっていてよく、例えば5μm以上1000μm未満の厚さを有する基材であってよい。ある好適な態様では、樹脂基材は、10μm以上1000μm以下となっており、例えば100μm以上900μm以下、200μm以上900μm以下、300μm以上900μm以下、400μm以上900μm以下などの厚さを有する樹脂フィルムまたは樹脂テープであってよい。
【0057】
樹脂基材における“樹脂成分”は、特に制限されるわけではないが、ポリエチレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイソプレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリスチレン樹脂、耐衝撃性ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン樹脂(MBS樹脂)、メチルメタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(MABS樹脂)、アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン樹脂(AAS樹脂)、ポリメチル(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート等)、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK樹脂)、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリチオエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、液晶ポリマー樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、およびジアリルフタレート樹脂から成る群から選択される少なくとも1種であってよい。
【0058】
ある好適な態様では、光硬化性組成物は、電子デバイスの樹脂基材に用いられる組成物である。つまり、本実施形態に係る光硬化性組成物は、電子デバイス用樹脂基材のための組成物であってよい。かかる場合、硬化物として基材に対する密着性がより向上する効果がより顕在化し易い。電子デバイス用樹脂基材としては、電子デバイス用樹脂テープであってよく(あくまでも例示にすぎないが、例えばポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、およびポリアミドイミド樹脂から成る群から選択される樹脂を含んで成るテープであってよく)、例えば給電テープ等であってよい。
【0059】
樹脂基材は、粘着材を含んだ基材であってよく、そのような粘着材を樹脂層として含んでいてよい。つまり、樹脂基材は、例えば基材層および粘着層を有するものであってよい(そのような基材層と粘着層とは互いに積層された形態を有していてよい)。換言すれば、樹脂基材は、基材樹脂層および粘着樹脂層から構成された基材であってよい。このような粘着材・粘着樹脂層を含む場合、樹脂基材が“粘着テープ”または“接着テープ”に相当するものであってよい。ある好適な態様では、粘着材・粘着樹脂層は、樹脂基材において樹脂サブ層に相当し得、同様に上記の基材層・基材樹脂層も樹脂サブ層に相当し得る。基材層・基材樹脂層および粘着材・粘着樹脂層における具体的樹脂成分は、上記に例示列挙した樹脂であってよい。なお、特に粘着材・粘着樹脂層における樹脂成分についていえば、例えば、アクリル酸エステル共重合体等のアクリル系粘着剤、天然ゴム等のゴム系粘着剤、シリコーンゴム等のシリコーン系粘着剤、ウレタン樹脂等のウレタン系粘着剤、α-オレフィン系粘着剤、エーテル系粘着剤、エチレン-酢酸ビニル樹脂系粘着剤、エポキシ樹脂系粘着剤、塩化ビニル樹脂系粘着剤、クロロプレンゴム系粘着剤、シアノアクリレート系粘着剤、水性高分子-イソシアネート系粘着剤、スチレン-ブタジエンゴム系粘着剤、ニトリルゴム系粘着剤、ニトロセルロース系粘着剤、反応性ホットメルト系粘着剤、フェノール樹脂系粘着剤、変性シリコーン系粘着剤、ポリアミド樹脂系粘着剤、ポリイミド系粘着剤、ポリウレタン樹脂系粘着剤、ポリオレフィン樹脂系粘着剤、ポリ酢酸ビニル樹脂系粘着剤、ポリスチレン樹脂溶剤系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン樹脂系粘着剤、ポリビニルブチラール樹脂系粘着剤、ポリベンズイミダソール系粘着剤、ポリメタクリレート樹脂系粘着剤、メラミン樹脂系粘着剤、ユリア樹脂系粘着剤、および/またはレゾルシノール系粘着剤等であってもよい。
【0060】
[光硬化性組成物の製造方法]
本実施形態に係る光硬化性組成物は、A成分~D成分を前述した官能基のモル比および質量%の範囲内になるように秤量し、各成分を互いに混合することによって調製できる。A成分~D成分は、それぞれ市販のものを用いることができる。さらに必要に応じてその他の成分を添加してもよい。混合方法は、特に限定されず、例えば当業者に公知の混合装置等を用いることができる。
【0061】
[光硬化性組成物の使用法]
本実施形態に係る光硬化性組成物は、活性エネルギー線の照射により硬化させることが可能な組成物である。そのような硬化を経て当該組成物から得られる硬化物は、樹脂基材への密着性がより高い硬化物として供され得る。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、あくまでも典型例を例示したに過ぎない。従って、本発明はこれに限定されず、種々の態様が考えられることを当業者は容易に理解されよう。
【0063】
例えば、本実施形態に係る光硬化性組成物は、上記のA成分~D成分に加えて、光硬化性組成物の硬化性を損なわない範囲で各種の添加剤等のその他の成分が配合されていてもよい。本発明の範囲を制限するわけではないが、具体的なその他の成分としては、例えば、光増感剤、溶剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、および/または各種の他の樹脂等を挙げることができる。なお、そのような添加剤に相当するその他の成分は、A成分~D成分の各成分よりも含有量が少なく、即ち、光硬化性組成物の総質量基準でいう質量%がA成分~D成分の各成分の質量%よりも小さくなっていてよい。更にいえば、光硬化性組成物の製造過程や硬化過程などにて偶発的又は非所望に混入されてしまう微量成分が本実施形態に係る光硬化性組成物に含まれていてもよい。
【0064】
本開示の光硬化性組成物の態様は、以下の通りであることを確認的に述べておく。
<1>光硬化性組成物であって、
A成分として、1分子内に2個以上のグリシジル基を有する第1グリシジル化合物、
B成分として、1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物、
C成分として、1分子内に1個の(または単一のもしくは単数の)グリシジル基を有する第2グリシジル化合物、および
D成分として、活性エネルギー線照射によって塩基を発生する塩基発生剤
を含み、
前記A成分の前記グリシジル基と前記B成分の前記チオール基とのモル比が100:85~100:105である、光硬化性組成物。
<2>前記C成分の割合は、前記光硬化性組成物の総質量基準で0.3質量%以上2.5質量%以下である、上記<1>に記載の光硬化性組成物。
<3>前記D成分の割合は、前記光硬化性組成物の総質量基準で1質量%以上10質量%以下である、上記<1>または<2>に記載の光硬化性組成物。
<4>前記C成分の前記第2グリシジル化合物は、1分子中に1個の前記グリシジル基を有しつつも、更にマレイミド構造(またはマレイミド基)、エチレングリコール基、オキシエチレン構造(またはオキシエチレン単位、ポリオキシンエチレン構造もしくはポリオキシンエチレン単位)、およびアルキル基から成る群から選択される少なくとも1種の分子構造または官能基を有するグリシジル化合物である、上記<1>~<3>のいずれかに記載の光硬化性組成物。
<5>前記C成分の前記第2グリシジル化合物が、1分子内にマレイミド構造と1個のグリシジル基を有する化合物、1分子内に重合度が3以上のオキシエチレン構造(またはオキシエチレン部、オキシエチレン鎖、ポリオキシエチレン構造、ポリオキシエチレン鎖、エチレングリコール構造、もしくはポリエチレングリコール構造)と1個のグリシジル基を有する化合物、および、炭素数が5以上のアルキル基と1個のグリシジル基のエーテル化合物から成る群から選択される少なくとも1種である、上記<1>~<4>のいずれかに記載の光硬化性組成物。
<6>前記D成分の塩基発生剤は、前記活性エネルギー線照射によって、アミジン類、グアニジン類およびビグアニド類から成る群から選択される少なくとも1種を発生する化合物である、上記<1>~<5>のいずれかに記載の光硬化性組成物。
<7>前記A成分の第1グリシジル化合物が芳香環構造を有する、上記<1>~<6>のいずれかに記載の光硬化性組成物。
<8>前記光硬化性組成物が、樹脂基材用途の組成物(即ち、樹脂基材のための組成物/樹脂基材に供される組成物)である、上記<1>~<7>のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【実施例0065】
以下、本発明について実施例を用いてより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。また、特に明記しない限り、実施例における%は質量基準である。
【0066】
本発明の効果を確認するために、実施例1~6および比較例1~7を実施した。以下では実施例1を中心に詳述するが、他の実施例および比較例は、表1に示される通り成分配合量が相違する例に相当する。
【0067】
[実施例1]
(A成分~D成分の準備)
A成分として、1分子内に2個以上のグリシジル基を有する第1グリシジル化合物を準備した。具体的には、2,2’-ジアリルビスフェノールジアリルエーテルのエポキシ化反応生成物(株式会社レゾナック製「BATG」)を準備した。別の切り口でいえば、2,2-ビス(3-グリシジル-4-グリシジルオキシフェニル)プロパンを第1グリシジル化合物(株式会社レゾナック製「BATG」)として用いた。
【0068】
B成分として、1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物を準備した。具体的には、B成分として、テトラヒドロ-1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)-イミダゾ[4,5-d]イミダゾール-2,5(1H,3H)-ジオン(四国化成工業株式会社製「C3TS-G」を用いた。なお、他の実施例などにおいては、B成分として、テトラヒドロ-1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトエチル)-イミダゾ[4,5-d]イミダゾール-2,5(1H,3H)-ジオン(四国化成工業株式会社製「TS-G」を用いた。
【0069】
C成分として、1分子内に1個のグリシジル基を有する第2グリシジル化合物を準備した。特に、1分子中に1個のグリシジル基を有しつつも、更にマレイミド構造、オキシエチレン構造およびアルキル基から成る群から選択される少なくとも1種の官能基を有する第2グリシジル化合物を用意した。より具体的には、C成分として1分子内にマレイミド構造と1個のグリシジル基を有する合物である、N-グリシジルフタルイミド(ナガセケムテックス株式会社製「EX-731」)を第2グリシジル化合物として用いた。なお、後述する実施例3などでは、C成分として1分子内に重合度が3以上のオキシエチレン構造と1個のグリシジル基を有する化合物である、フェノールEO付加物グリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製「EX―145」)を第2グリシジル化合物として用い、同じく後述する実施例4などでは、C成分として炭素数が5以上のアルキル基と1個のグリシジル基のエーテル化合物である、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル(四日市合成株式会社製「エポゴーセーEH」)を第2グリシジル化合物として用いた。
【0070】
D成分として、活性エネルギー線照射によって塩基を発生する塩基発生剤を準備した。具体的には、1,2-ジシクロヘキシル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウム=テトラキス(3-フルオロフェニル)ボラート(富士フイルム和光純薬株式会社製「WPBG-345」)を塩基発生剤として用いた。なお、後述する実施例5では、D成分として、2-(2-ニトロフェニル)プロピロキシカルボニル-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(DOI:10.1002/anie.201810118文献に基づいて合成した化合物)を塩基発生剤として用いた。
【0071】
その他成分として、光硬化性組成物にて任意成分となる光増感剤を準備した。具体的には光増感剤として作用し得る2-アミルアントラキノン(山本化成株式会社製「AAQ-H」)をその他成分として用いた。
【0072】
(光硬化性組成物の調製)
A成分~D成分およびその他成分の配合量の合計が20gとなるように、まず、A成分10.2g、C成分0.4g、D成分0.6gおよびその他成分0.1gとを、自転公転脱泡撹拌機を用いて均一に混合し、次いで、B成分8.7gを加えたのち、自転公転脱泡撹拌機を用いて同様に均一に混合して実施例1の光硬化性組成物を作製した。表1に実施例1の光硬化性組成物の組成を示す。
【0073】
[実施例2~6および比較例1~7]
表1に示す組成および/または含有量に変更した以外は、実施例1と同様にして光硬化性組成物をそれぞれ調製した。
【0074】
表1には、実施例1~6および比較例1~7の光硬化性組成物の組成を載せている。より具体的には、実施例1~6および比較例1~7の各光硬化性組成物についてA~D成分の具体的な成分およびそれぞれの配合量(単位:g)等を当該表1に示している。
【0075】
[評価方法]
(光硬化性組成物の硬化性)
光硬化性組成物をスライドガラス上に幅が7mm以上になるように塗布し、塗布膜を形成した。次いで、卓上型ロボット(岩下エンジニアリング株式会社製「EzROBO-Ace ST4040」)に備え付けた365nmLED紫外線照射機(ウシオ電機株式会社製)を用いて、塗布膜に紫外線を照射した。紫外線照射条件は、365nmにおける紫外線照度が1000mW/cmであり、照射時間を20秒とし、積算照射光量を20000mJ/cmとした。紫外線照射後に、光硬化性組成物を塗布したスライドガラスを100℃で10分保持した。これにより得られた塗膜については、タックフリー評価を行い、硬化性を下記基準に基づき確認した。なお、前述の硬化条件後に硬化しなかったものについては、硬化物の密着性評価を実施しなかった。

(硬化性の判定基準)
・硬化:硬化条件後の塗膜に対してラテックス手袋(アズワン株式会社製「クアラテック手袋」)を装着した指を押し付け、塗膜表面に目視で傷が観察されず、かつ当該ラテックス手袋に光硬化性組成物の残留物が付着しない状態
・未硬化:硬化条件後に同上の操作により、塗膜表面に目視で傷が観察されるか、あるいは、上記ラテックス手袋に光硬化性組成物の残留物が付着する状態
【0076】
(硬化物の樹脂製基材に対する密着性)
前述の硬化性の評価で光硬化性組成物の塗布膜が硬化したものについて、樹脂基材に対する密着性を評価した。より具体的には、“樹脂基材”として幅が7.5mmのテープ状・フィルム状の樹脂基材を長さ50mmで硬化した塗布膜上に貼付した供試体を密着性評価の試験片として用いた。
【0077】
次いで、樹脂基材の一端を速度1mm/秒でスライドガラスに対して垂直に上方向に引き上げた際の荷重を荷重測定装置(アイコーエンジニアリング株式会社製RZ-2)で測定した。当該測定値は、光硬化性組成物の硬化物と樹脂基材との間の密着強度の指標として採用し、硬化物の樹脂基板に対する密着性を以下の基準で評価した。

(密着性の判定基準)
密着強度≧2.0N:密着性が良好
密着強度<2.0N:密着性が不足

(※ 密着強度2.0N以上であると、特に電子デバイス用途の樹脂基材に対して光硬化性組成物が用いられた際に所望の密着性が呈され、密着強度2.0N未満だと当該所望の密着性が呈され得ない)
【0078】
(総合判定)
硬化性および密着強度の評価において、硬化し、かつ密着強度2.0N以上を「+」、すなわち「良い」と評価した(なかでも、密着強度2.2N以上を「++」、すなわち「特に良い」と評価した)。一方、紫外線照射後に未硬化または密着強度が2.0N未満を「-」、すなわち「悪い」と評価した。
【0079】
(実施例1~6および比較例1~7の条件および結果)
実施例1~6および比較例1~7の条件ならびにそれらの結果を表1に纏めて示す。
【表1】
【0080】
表1から以下の事項を把握することができる。

・実施例1~6の光硬化性組成物は、A成分(1分子内に2個以上のグリシジル基を有する第1グリシジル化合物)、B成分(1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物)、C成分(1分子内に1個のグリシジル基を有する第2グリシジル化合物)およびD成分(活性エネルギー線照射によって塩基を発生する塩基発生剤)を含んで成り、A成分のグリシジル基とB成分の前記チオール基とのモル比が100:85~100:105の範囲内である。つまり、実施例1~6の光硬化性組成物は、請求項1に係る発明の光硬化性組成物に包含されている組成物に相当する。

・かかる実施例1~6の光硬化性組成物では、いずれも所望の硬化を達成し、かつ、いずれも密着強度評価結果が2.0N以上であり、樹脂基材への密着性がより向上した硬化物を得ることができた。

・比較例1~7の光硬化性組成物は、請求項1に係る発明の光硬化性組成の範囲外である。そのような比較例1~7の光硬化性組成物では、硬化性の評価が“未硬化”となるか、あるいは“硬化”であっても密着強度が2.0N未満(「-」/「悪い」)の評価結果となった。

・より具体的には、比較例1の光硬化性組成物では、C成分が含まれないため、実施例1~6と比較して、密着強度が低下し、2.0N未満となった。比較例2の光硬化性組成物では、A成分とB成分の官能基のモル比(即ち、A成分のグリシジル基とB成分のチオール基とのモル比)が100:85~100:105の範囲外となる100:80であるため、C成分が含まれるもののA成分が相対的に過剰となり、密着強度が低下し、2.0N未満となった。比較例3の光硬化性組成物では、A成分とB成分の官能基のモル比(即ち、A成分のグリシジル基とB成分のチオール基とのモル比)が100:85~100:105の範囲外となる100:110であるため、B成分が相対的に過剰となり、未硬化となった。比較例4の光硬化性組成物では、A成分とB成分の官能基のモル比(即ち、A成分のグリシジル基とB成分のチオール基とのモル比)が100:85~100:105の範囲外となる100:80であるため、C成分が含まれるもののA成分が相対的に過剰となり、密着強度が低下し、2.0N未満となった。比較例5の光硬化性組成物では、A成分とB成分の官能基のモル比(即ち、A成分のグリシジル基とB成分のチオール基とのモル比)が100:85~100:105の範囲外となる100:110であるため、B成分が相対的に過剰となり、未硬化となった。比較例6の光硬化組成物では、A成分とB成分の官能基のモル比(即ち、A成分のグリシジル基とB成分のチオール基とのモル比)が100:85~100:105の範囲外となる100:80であるため、C成分が含まれるもののA成分が相対的に過剰となり、密着強度が低下し、2.0N未満となった。比較例7の光硬化性組成物では、A成分とB成分の官能基のモル比(即ち、A成分のグリシジル基とB成分のチオール基とのモル比)が100:85~100:105の範囲外となる100:110であるため、B成分が相対的に過剰となり、未硬化となった。
【0081】
以上から、実施例1~6の光硬化性組成物は比較例1~7の光硬化性組成物に比べ、”硬化性”および“樹脂基材への密着強度”の点で優れた硬化物が得られることが分かった。
【0082】
なお、付言しておくと、本発明の光硬化性組成物に含まれるA成分~D成分の種類については、ガスクロマトグラフ質量分析計および/または液体クロマトグラフ質量分析から特定できる。より具体的には、飛行時間型ガスクロマトグラフ質量分析計(日本電子株式会社製JMS-T200GC)および/または四重極-飛行時間型液体クロマトグラフ質量分析計(Waters社製Xevo G2-XS Qtof)を使用し、検出される分子イオン種の精密質量解析および同位体パターン解析の結果をA成分~D成分の構造に帰属することで光硬化性組成物のA成分~D成分を特定できる。また、A成分とB成分の官能基のモル比(特に、A成分の前記グリシジル基とB成分のチオール基とのモル比)は、核磁気共鳴分析装置(Bruker社製AVANCE NEO 400)を使用し、当該官能基の検出ピーク強度から定量することで求めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の光硬化性組成物は、各種基板に対して用いることができる。特に、得られる硬化物は樹脂基材に対してより高い密着強度を呈するので、当該樹脂基材が関係する用途に好適に用いることができる。例えば、電子デバイス用途の樹脂基材に対して用いられるレジスト材用途や、あるいは、樹脂基材同士をつなぐ接着材用途等としてより好適に用いることが可能である。