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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156447
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 39/02 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
D06F39/02 Z
D06F39/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070916
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 拓馬
【テーマコード(参考)】
3B166
【Fターム(参考)】
3B166AA01
3B166AB06
3B166AD03
3B166AE02
3B166AE05
3B166AE07
3B166AE12
3B166BA48
3B166BA82
3B166BA84
3B166CA02
3B166CA03
3B166CA04
3B166CA05
3B166CA11
3B166CB01
3B166CB11
3B166DC45
3B166DC47
3B166FA01
3B166FA06
3B166FA12
3B166FA14
3B166FB01
3B166FB08
(57)【要約】
【課題】限られたスペースで効率よく処理剤を自動投入および手動投入することが可能な洗濯機を提供する。
【解決手段】処理剤投入ユニット10には、給水弁に接続され、処理剤の自動投入時に発生させた負圧によりタンクから処理剤を引き込む給水経路50が設けられている。給水経路50には、上流側から押圧可能に設けられた弁体が前記タンクの下流側に備えられている。処理剤の手動投入部は、給水弁と、処理剤の自動投入部との間に配設されている。給水経路50は、前記弁体の下部領域および前記自動投入部の下部領域にまたがって配設され、前記手動投入部の下部領域には、給水経路50からの排出口52が設けられている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水弁を通じた水の供給を受けて処理剤の自動投入が可能な洗濯機であって、
中心軸が鉛直方向に沿って設けられた槽と、
前記槽に投入される複数回分の処理剤を収容する少なくとも1つのタンクを含む自動投入部と、
前記槽に投入される1回分の処理剤を収容する手動投入部と、
前記給水弁に接続され、処理剤の自動投入時に発生させた負圧により前記タンクから処理剤を引き込む給水経路とを備え、
前記給水経路には、上流側から押圧可能に設けられた弁体が前記タンクの下流側に備えられ、
前記給水弁と前記自動投入部との間に、前記弁体を備える弁機構および前記手動投入部が配設され、
前記給水経路は、前記弁機構の下部領域および前記自動投入部の下部領域にまたがって配設されるとともに、前記手動投入部の下部領域には、前記給水経路から前記槽への排出口が設けられていることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記自動投入部は、処理剤としての液体洗剤を収容する第1タンクと、前記第1タンクに隣接し、前記液体洗剤以外の処理剤を収容する第2タンクとを備え、
前記第1タンクは、前記給水弁に対して前記第2タンクよりも離れて配設されていることを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記給水経路は、前記給水弁から、前記弁機構の下部領域を通って前記自動投入部の下部領域で折り返され、再び前記弁機構の下部領域に導かれていることを特徴とする洗濯機。
【請求項4】
請求項3に記載の洗濯機において、
前記給水経路は、前記弁体から前記手動投入部の下部領域を通って前記排出口へ接続されていることを特徴とする洗濯機。
【請求項5】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記タンク内における処理剤の最大液面高さよりも、前記弁体の高さが高くなるように設けられていることを特徴とする洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
洗剤等の処理剤をタンク内にあらかじめ複数回分貯留しておき、洗濯運転時に必要量を自動的にタンクから槽内に投入する洗濯機が提案されている。例えば、特許文献1には、処理剤の自動投入装置として、水槽の上側後方の左側寄りに処理剤タンクおよび供給ポンプを設けて、処理剤を自動で水槽に供給することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-80918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
処理剤の自動投入機能を備える洗濯機であっても、洗濯運転時にユーザが処理剤を手動投入するための手動投入部も設けられることがある。ところが、洗濯機における槽の上側後方には、給水ホースや風呂水ホースなどを接続して水を供給する給水接続口が設けられており、処理剤の自動投入部と手動投入部との両方を設けるには設置スペースが限られている。そのため、自動投入用のタンクの大きさに制約を受けやすく、タンク容量が十分でないと、頻繁に処理剤を補充しなければならず、処理剤を補充する手間がかかる。
【0005】
本発明は、前記のような課題にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、限られたスペースでタンク容量を確保しつつ手動投入部を設けて、効率よく処理剤を自動投入および手動投入することが可能な洗濯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、給水弁を通じた水の供給を受けて処理剤の自動投入が可能な洗濯機であって、中心軸が鉛直方向に沿って設けられた槽と、前記槽に投入される複数回分の処理剤を収容する少なくとも1つのタンクを含む自動投入部と、前記槽に投入される1回分の処理剤を収容する手動投入部と、前記給水弁に接続され、処理剤の自動投入時に発生させた負圧により前記タンクから処理剤を引き込む給水経路とを備え、前記給水経路には、上流側から押圧可能に設けられた弁体が前記タンクの下流側に備えられ、前記給水弁と前記自動投入部との間に、前記弁体を備える弁機構および前記手動投入部が配設され、前記給水経路は、前記弁機構の下部領域および前記自動投入部の下部領域にまたがって配設されるとともに、前記手動投入部の下部領域には、前記給水経路から前記槽への排出口が設けられていることを特徴とする。
【0007】
前記構成を有する洗濯機において、前記自動投入部は、処理剤としての液体洗剤を収容する第1タンクと、前記第1タンクに隣接し、前記液体洗剤以外の処理剤を収容する第2タンクとを備え、前記第1タンクは、前記給水弁に対して前記第2タンクよりも離れて配設されることが好ましい。
【0008】
また、前記構成を有する洗濯機において、前記給水経路は、前記給水弁から、前記弁機構の下部領域を通って前記自動投入部の下部領域で折り返され、再び前記弁機構の下部領域に導かれることが好ましい。
【0009】
また、前記構成を有する洗濯機において、前記給水経路は、前記弁体から前記手動投入部の下部領域を通って前記排出口へ接続されることが好ましい。
【0010】
また、前記構成を有する洗濯機において、前記タンク内における処理剤の最大液面高さよりも、前記弁体の高さが高くなるように設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、限られたスペースでタンク容量を確保しつつ手動投入部を設けて、効率よく処理剤を自動投入および手動投入することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る洗濯機を示す斜視図である。
図2】前記洗濯機を示す平面図である。
図3】前記洗濯機に備えられる処理剤投入ユニットの外観を示す斜視図である。
図4】前記処理剤投入ユニットに設けられる手動投入部の一部を示す斜視図である。
図5】前記処理剤投入ユニットの構成を模式的に示すブロック図である。
図6】前記処理剤投入ユニットを示す底面図である。
図7図3に示す処理剤投入ユニットのB-B断面図である。
図8図3に示す処理剤投入ユニットのC-C断面図である。
図9】前記処理剤投入ユニットにおける処理剤自動投入機構を示すブロック図である。
図10】前記処理剤投入ユニットにおける処理剤自動投入動作を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る洗濯機1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、実施形態に係る洗濯機1の斜視図であり、図2は、洗濯機1の平面図である。なお、本実施形態においては、図1に示すように、洗濯機1が設置された状態における方向を、説明の便宜上、幅方向に相当する左右方向X(左側X1、右側X2)、奥行方向に相当する前後方向Y(前方Y1、後方Y2)、および高さ方向Z(上方Z1、下方Z2)として示すが、これにより洗濯機1の設置形態や使用形態等を限定するものではない。
【0014】
図1および図2に示すように、洗濯機1は、筐体11を備えている。筐体11は、洗濯機1の構成部品を収容する内部空間を有する。筐体11は、例えば、平面視形状が略矩形の筒状に設けられている。矩形には、長方形のみならず、正方形が含まれる。詳細には、筐体11は、前壁11aと、第1の側壁11bと、第2の側壁11cと、後壁11dとを有し、洗濯機1が設置された状態において中心軸が鉛直方向(高さ方向Z)に沿って延びる箱形状に設けられている。
【0015】
筐体11内には、槽13が収容されている。洗濯機1は、設置時において槽13の中心軸が鉛直方向に沿って設けられた、いわゆる縦型洗濯機とされている。筐体11は、これらの前壁11a、第1および第2の側壁11b、11cならびに後壁11dにより囲われた領域に、槽13を収容するための内部空間が設けられ、蓋12で覆われている。
【0016】
槽13は、筐体11内に配置されている。槽13は、洗濯機1が設置された状態で中心軸が鉛直方向(高さ方向Z)に沿って延びるように配置された円筒形状を有している。槽13は、例えば、洗い工程や濯ぎ工程を行う際に水を貯めるための水槽と、水槽に対して相対的に回転可能とされた洗濯槽とを含む。
【0017】
図3は、洗濯機1に備えられる処理剤投入ユニット10の外観を示す斜視図である。例示の形態に係る洗濯機1では、水の供給を受けて槽13に処理剤を投入可能な処理剤投入ユニット10が備えられている。処理剤投入ユニット10は、槽13の上方Z1の上部領域に設けられている。また、図2に示すように、処理剤投入ユニット10は、筐体11の後方Y2寄りに配設され、第1の側壁11bと第2の側壁11cとの間の左右方向Xの幅全体にわたって設けられている。
【0018】
処理剤投入ユニット10は、給水弁20と、槽13に投入される複数回分の処理剤を収容する少なくとも1つのタンクを含む自動投入部30と、手動で投入する1回分の処理剤を収容する手動投入部40とを備えている。ここで、処理剤は、洗濯機1の槽13へ投入される洗剤類をいい、液体洗剤、粉末洗剤、および柔軟剤などの種々の洗濯用洗剤を含む。
【0019】
給水弁20は、給水接続口201を有する弁機構であり、処理剤投入ユニット10に対して水を供給する。給水接続口201は、水道蛇口等とホースで接続されて、水道水等の水の供給を受けることができる。給水弁20の内部には、後述する複数の電磁弁が備えられており、これらの電磁弁の開閉を適宜制御することにより、処理剤投入ユニット10に対して異なる給水経路で水を供給できるように構成されている。
【0020】
図3に示すように、処理剤投入ユニット10は、左右方向Xに長いユニットとされている。処理剤投入ユニット10は、筐体11の幅方向である左右方向Xを長手方向として、この長手方向に沿って、給水弁20、手動投入部40、および自動投入部30は、この順で配設されている。給水弁20と、自動投入部30との間には、手動投入部40と弁機構60とが配設されている。この場合、左右方向Xにおいて、給水弁20が左側X1に配置され、自動投入部30が右側X2に配置されている。弁機構60は、手動投入部40の後方Y2に配設され、後述するフロート弁107、108を備えている。
【0021】
自動投入部30は、ケース本体100に収納された洗剤タンク(第1タンク)301および柔軟剤タンク(第2タンク)302を備えている。洗剤タンク301および柔軟剤タンク302は、洗濯機1の槽13へ自動投入される液体の処理剤(液剤)を収容する液剤タンクである。洗剤タンク301には液体洗剤が収容され、柔軟剤タンク302には柔軟剤などの液体洗剤以外の液剤が収容される。
【0022】
洗剤タンク301は、給水弁20に対して、柔軟剤タンク302よりも離れて配設されている。例示の形態では、左右方向Xの左側X1に設けられた給水弁20に対して、洗剤タンク301は柔軟剤タンク302よりも給水弁20から離れた右側X2端部に配設され、洗剤タンク301の左側X1に柔軟剤タンク302が配設されている。
【0023】
図2に戻って、筐体11の上面には、蓋12の後方Y2に、第1蓋121および第2蓋122が設けられている。第1蓋121を開くと、洗剤タンク301および柔軟剤タンク302が露出し、洗剤タンク301や柔軟剤タンク302を抜き差しすることができる。第2蓋122は、例えば風呂水等を洗濯に利用する際に使用できるホース差込口を覆って設けられている。
【0024】
図3に示すように、手動投入部40は、引き出し型の洗剤ケース401を備えている。洗剤ケース401はケース本体100に装着されており、液体洗剤または粉末洗剤等を手動投入可能な容器として、内部が複数に区画されている。
【0025】
図4に示すように、手動投入部40の洗剤ケース401は、蓋12を開放した状態で、ケース本体100から手前側(前方Y1)に引き出すことが可能である。洗剤ケース401の前面は、蓋12を開放した状態で、槽13の上方Z1に露出して設けられており、前方Y1に引き出して、洗剤(液体洗剤または粉末洗剤)や柔軟剤等の処理剤を補充可能とされている。
【0026】
また、図3に示すように、手動投入部40は、処理剤投入ユニット10において給水弁20と自動投入部30との間にあって、左右方向Xの中央寄りに位置している。そのため、筐体11においては、手動投入部40は槽13の上方Z1の中央寄りに設けられ、洗剤ケース401に処理剤を補充する作業を行いやすく、操作性を高めることができる。
【0027】
ケース本体100は、給水接続口201から導入される水の経路を給水弁20によって切り替え、所定の経路で手動投入部40の洗剤ケース401に給水できるように構成されている。手動投入部40に供給された水は、洗剤ケース401内の洗剤または柔軟剤等と混合され、排出口52から槽13に排出され、給水される。排出口52は、手動投入部40の下部領域に設けられた液剤排出部51の前方Y1に開口して設けられている。
【0028】
図5は、処理剤投入ユニット10の構成を模式的に示すブロック図である。図示するように、給水弁20、手動投入部40、および自動投入部30は、この順に一方向に並んで配設されている。処理剤投入ユニット10は、処理剤の自動投入時に発生させた負圧により自動投入部30から処理剤を引き込んで槽13へと排水する給水経路50を備えている。
【0029】
給水経路50は、給水弁20から自動投入部30に接続され、さらに槽13へと排水する排出口52に繋がる流路を備えている。手動投入部40は、自動投入部30よりも給水弁20寄りに設けられており、給水弁20から手動投入部40への給水経路P0は、給水弁20から自動投入部30への給水経路50よりも短いものとなっている。
【0030】
洗濯機1に接続される水道の水圧は、地域や家庭によって異なることがある。給水弁20から手動投入部40への給水経路P0は、給水経路50よりも短く、経路内の圧損を抑えることができる。そのため、水道の水圧が低い場合であっても、手動投入部40の洗剤ケース401に効率よく給水でき、洗剤残りが発生することを抑制し得る。特に、粉末洗剤の洗剤残りや、サイフォン構造部での洗剤残りのおそれを低減することが可能となる。
【0031】
図6は、処理剤投入ユニット10の底面図である。図6では、自動投入部30の洗剤タンク301および柔軟剤タンク302から液剤を引き込む給水経路50である第1流路P1および第2流路P2について模式的に示している。
【0032】
処理剤投入ユニット10の底面側には、液剤交換室101が設けられている。液剤交換室101は裏蓋101aで覆われており、内部に給水経路50の一部が形成されている。
【0033】
第1経路P1および第2経路P2を含む給水経路50は、給水弁20の下部領域A1から、手動投入部40の後方Y2であって、弁機構60の下部領域A2と自動投入部30の下部領域A3とにまたがって配設されている。図示するように、給水経路50は、処理剤投入ユニット10の長手方向である左右方向Xに長く設けられている。
【0034】
給水経路50のうち、第1経路P1は、給水弁20からの流入口501を有し、弁機構60の下部領域A2から自動投入部30の下部領域A3へと連通して、下部領域A3で折り返されている。さらに、第1経路P1は、洗剤タンク301との接続部502を経由して、再び弁機構60の下部領域A2へと連通されている。
【0035】
給水経路50の第2経路P2は、給水弁20からの流入口504を有し、弁機構60の下部領域A2から自動投入部30の下部領域A3へと連通して、下部領域A3で折り返されている。さらに、第2経路P2は、柔軟剤タンク302との接続部505を経由して、再び弁機構60の下部領域A2へ連通されている。弁機構60は、手動投入部40の後方Y2側に位置する。手動投入部40の下部領域には給水経路50は設けられておらず、液剤排出部51が設けられている。
【0036】
前記のとおり、洗剤タンク301は、給水弁20に対して柔軟剤タンク302よりも離れて配設されているので、第1経路P1は、弁機構60の下部領域A2から自動投入部30の下部領域A3にかけての経路が長くなり、全体として、第2経路P2よりも長い経路を有している。一方、第2経路P2は、弁機構60の下部領域A2から自動投入部30の下部領域A3にかけての経路が長いものの、全体としては、第1経路P1よりも短い経路となっている。
【0037】
給水経路50の第1経路P1には、洗剤タンク301との接続部502よりも下流側に、弁機構60が含まれる。第1経路P1には、弁機構60の後述するフロート弁107が設けられている。液剤交換室101において、第1経路P1上には、フロート弁107への流入口503が配置されている。同様に、第2経路P2は、柔軟剤タンク302との接続部505の下流側に、後述するフロート弁108が接続されており、液剤交換室101ではフロート弁108への流入口506が配置されている。
【0038】
図7は、図3における処理剤投入ユニット10のB-B断面図である。図7に示すように、手動投入部40の後方Y2には、弁機構60が設けられている。弁機構60は、弁室601の内部に、上流側から押圧可能に設けられ、上流側から押し上げることで経路を開放する弁体としてのフロート弁107、108を備えている。これらのフロート弁107、108は、弁室601において上流側である下方から押圧可能に収容され、弁室601の上流側に連通する開口を開閉するように構成されている。給水経路50の第1経路P1は、液剤交換室101における流入口503から、弁機構60の弁室601に流路をとり、弁室601の上部で下方Z2へと折り返すように設けられている。
【0039】
弁室601からの経路の下流側には受け部507が設けられている。受け部507は、弁室601と液剤排出部51との接続部として、弁室601よりも下方Z2に配設され、弁室601と液剤排出部51との間に前後方向Yに所定の距離を有して設けられている。液剤排出部51は、受け部507よりもさらに下方Z2に配設されている。第1経路P1は、受け部507で前方Y1に流路をとり、さらに下方Z2の液剤排出部51に連通して、排出口52へと繋がっている。給水経路50の第2経路P2もこれと同様に設けられている。
【0040】
第1経路P1および第2経路P2は、受け部507を通じて、手動投入部40の下方Z2の液剤排出部51へと導かれている。第1経路P1および第2経路P2は、手動投入部40の後方Y2に流路をとり、受け部507の前方の通路を経てから液剤排出部51へと流れることができるので、第1経路P1および第2経路P2を流れる水が撥ねるなどで、手動投入部40の洗剤ケース401に流入するおそれが低減されている。
【0041】
図8は、図3における処理剤投入ユニット10のC-C断面図である。第1経路P1および第2経路P2を含む給水経路50は、給水弁20から、下方Z2の液剤交換室101へと連通し、弁機構60の下部領域A2および自動投入部30の下部領域A3を連通し、下部領域A3で折り返して、弁機構60の弁室601に導かれる。給水経路50は、処理剤投入ユニット10の長手方向である左右方向Xに長く設けられている。第1経路P1は、弁機構60の下部領域A2から自動投入部30の下部領域A3にかけての経路が長く、全体として、第2経路P2よりも長い経路を有している。
【0042】
自動投入部30の洗剤タンク301および柔軟剤タンク302には、補充された液剤量が最大液量であるときの最大液面高さV1、V2がそれぞれ規定されている。処理剤投入ユニット10においては、洗剤タンク301および柔軟剤タンク302における最大液面高さV1、V2よりも、弁機構60の弁の下流側通路の高さHが高くなるように設けられることが好ましい。
【0043】
図6に戻って、第1経路P1および第2経路P2は、弁機構60の下流側で合流する。フロート弁107、108を含む弁機構60を経由して、受け部507から流出する水と処理剤との混合液は、手動投入部40の底面側に設けられた液剤排出部51を通って排出口52から槽13へと供給される。
【0044】
このように構成される処理剤投入ユニット10における処理剤自動投入動作について、図9および図10を参照して説明する。図9は、処理剤投入ユニット10の処理剤自動投入機構を示すブロック図であり、図10は、処理剤自動投入動作を説明するタイミングチャートである。
【0045】
図9に示すように、給水弁20において、給水接続口201からの給水経路は第3経路P3および第4経路P4に分離され、第3経路P3は下流側の第1経路P1に接続され、第4経路P4は第2経路P2に接続されている。第3経路P3には、上流側から順に電磁弁202と負圧管204とが配置されている。第4経路P4には、上流側から順に電磁弁203と負圧管205とが配置されている。
【0046】
負圧管204、205は、ベンチュリ効果によって第5経路P5に負圧を発生させることができる。また、負圧管204、205は、第5経路P5で接続されており、第5経路P5には流量計206が配置されている。なお、図9は、給水弁20におけるすべての給水経路および電磁弁を示したものではない。
【0047】
第1経路P1には、逆止弁104よりも下流側にフロート弁107が設けられている。第2経路P2には、逆止弁105よりも下流側にフロート弁108が設けられている。前記のとおり、第1経路P1および第2経路P2は、フロート弁107、108の下方Z2に設けられた受け部507で合流し、合流後は手動投入部40の底面側の液剤排出部51から排出口52へ接続される。
【0048】
洗剤タンク301から規定量の液体洗剤を自動投入する場合、自動投入動作における第1段階(図10の期間t1)では、電磁弁202、203の両方を開きながら、給水接続口201からの給水を行う。このとき、第1経路P1および第2経路P2を流れる水が、フロート弁107、108をそれぞれ押し上げて開状態とする。この第1段階の動作により、第1ないし第4経路P1~P4のすべてが水で満たされ、排出口52へ流出する。このとき、第1および第2経路P1、P2内のいずれにも負圧は発生せず、逆止弁104、105はともに閉状態となっており、洗剤タンク301および柔軟剤タンク302から第1経路P1および第2経路P2への液剤流入は生じない。また、第5経路P5における流れも殆ど発生しない。
【0049】
第1段階の動作によって第1ないし第4経路P1~P4のすべてが水で満たされると、続く第2段階(図10の期間t2)として、電磁弁202のみが一旦閉じられる。このとき、第4経路P4から第2経路P2に向けての流れにより、負圧管205において負圧が発生するが、第3経路P3から第1経路P1に向けての流れは電磁弁202によって堰き止められており、負圧管204には負圧が発生しない。したがって、負圧管205で発生した負圧により、第5経路P5では、負圧管204から負圧管205に向かう方向に水流が生じる。
【0050】
第2段階の動作において、フロート弁108は開状態であって、フロート弁108における水流は順方向(上流から下流に向かう方向)となる。一方、フロート弁107は、フロート弁108から吐出される水流によって持ち上げられた状態が維持され、フロート弁108からの水流が途切れない限りは閉状態とはならない。このため、フロート弁107では、水流が逆方向(下流から上流に向かう方向)に切り替わって第1経路P1へと流入する水流が生じる。
【0051】
第1経路P1内を逆流した水流は、負圧管204から第5経路P5に供給されて、上述の負圧管204から負圧管205に向かう方向の水流となる。第2段階においても、第1および第2経路P1、P2内のいずれにも負圧は発生せず、逆止弁104、105はともに閉状態となっており、洗剤タンク301および柔軟剤タンク302から第1経路P1および第2経路P2への液剤流入は生じない。
【0052】
第2段階の動作では、流量計206によって第5経路P5における流量を測定することができる。このとき、流量計206によって測定される単位時間当たりの流量は、負圧管205で発生した負圧によるものであり、給水接続口201からの水圧に応じて変化する。したがって、第2段階の動作では、洗濯機1への給水の水圧を、流量計206で測定される単位時間当たりの流量に基づいて検知することができる。
【0053】
第3段階(図10の期間t3)の動作では、電磁弁202、203の両方が閉じられる。これにより、第1経路P1および第2経路P2の水流が一旦途切れ、フロート弁107、108がともに下がって閉状態となる。
【0054】
第4段階(図10の期間t4)の動作では、電磁弁203のみを開いて給水接続口201からの給水を行う。このとき、第4経路P4から第2経路P2に向けての流れにより、負圧管205において負圧が発生し、第5経路P5では負圧管204から負圧管205に向かっての水流が生じる。また、第4段階の動作では、第2経路P2における順方向の水流によってフロート弁108は開状態となるが、フロート弁107は閉状態に維持される。
【0055】
第4段階では、電磁弁202およびフロート弁107はともに閉状態であるため、負圧管205で発生した負圧によって第1経路P1内が負圧となり、この負圧によって逆止弁104が開き、洗剤タンク301から第1経路P1へ液体洗剤が引き込まれる。
【0056】
なお、逆止弁104についての詳細な構成は省略するが、その内部の弁部材がバネによって洗剤タンク301側に付勢されることで閉状態に保持されるものであり、この弁部材が第1経路P1からの負圧によって引き出された場合に開状態となる。また、第2経路P2に設けられる逆止弁105も、逆止弁104と同様の構成である。
【0057】
第4段階の動作では、第5経路P5を流れた水と同量の液体洗剤が、洗剤タンク301から第1経路P1へ引き込まれる。このため、第4段階では、第5経路P5を流れる水の流量が流量計206によって計測され、流量計206の計測値が規定値に到達すると、閉じていた電磁弁202を開いて第4段階の動作を終了する。第4段階の終了時点では、洗剤タンク301から引き込まれた液体洗剤は第1経路P1内のみに留まっており、第5経路P5へは流入していない。
【0058】
第5段階の動作(図10の期間t5)では、電磁弁202、203の両方を開きながら、給水接続口201から給水する。これにより、第1経路P1からは水と液体洗剤との混合液が液剤排出部51へ送られ、第2経路P2からは水が液剤排出部51へ送られる。上述の第4段階で液剤交換室101に引き込まれた液体洗剤が、第5段階において排出口52から槽13へと排水される。第1ないし第4経路P1~P4のすべてが水に置き換わるのに十分な量の給水が行われると、電磁弁202、203が閉じられ、液体洗剤の自動投入動作が終了する。流量計206は、自動投入動作の間、常にON(計測状態)とされている必要はなく、図10に示すように、第5経路P5の流量を測定する第2段階および第4段階の動作中(期間t2および期間t4)のみONとされていればよい。
【0059】
また、柔軟剤タンク302から規定量の柔軟剤を自動投入する場合、柔軟剤の自動投入動作は、液体洗剤の自動投入動作と同様に行うことができる。柔軟剤の自動投入動作では、第2段階および第4段階において電磁弁202のみが開かれる。これにより、柔軟剤の自動投入動作では、第2経路P2内に負圧が発生し、第4段階においては逆止弁105が開いて、柔軟剤タンク302から第2経路P2へ柔軟剤を引き込むことができる。
【0060】
液体洗剤の自動投入動作では、第4段階において、規定量の液体洗剤が洗剤タンク301から第1経路P1へ引き込まれる。洗剤タンク301に接続された第1経路P1は、前記のとおり、柔軟剤タンク302に接続された第2経路P2よりも長い経路を有しているので、引き込み可能な液体洗剤の量を第2経路P2よりも多く確保することができる。
【0061】
このように、本実施形態では、フロート弁107、108が確実に閉じることによって経路内を負圧にすることができ、逆止弁104、105を動作させる。したがって、第1経路P1および第2経路P2に水が流れないときはフロート弁107、108を確実に閉じる必要がある。このため、前述のように、フロート弁107、108の下流側通路の高さHを、洗剤タンク301または柔軟剤タンク302の最大液面高さV1、V2よりも高くなるように設けられることで、液剤が受ける大気圧により逆止弁104、105が開かないようにする。
【0062】
以上のように、給水経路内に負圧を発生させることでタンクから液剤を給水経路内に引き込む構成の自動投入部30は、ポンプなどの機構部品を有さないため信頼性や耐久性に優れた構成であるが、給水経路50や弁機構60のために大きな領域を必要とする。そこで、本実施形態の処理剤投入ユニット10は、筐体11の幅方向である左右方向Xを長手方向として、筐体11の幅全体に設けられるので、前後方向Yに沿う奥行寸法を抑えることができる。このため、給水経路50や弁機構60のために大きな領域を確保する場合であっても、洗濯機1の全体としての寸法増大を抑制しながらタンク容量および設置スペースを確保することが可能となる。
【0063】
以上説明したように、洗濯機1においては、限られたスペースで処理剤投入ユニット10を備えて、効率よく処理剤を自動投入および手動投入することが可能となる。また、処理剤投入ユニット10は、処理剤の自動投入時に発生させた負圧により自動投入部30から処理剤を引き込んで槽13へと排水する。前記のとおり、自動投入部30から排出口52への経路は、手動投入部40の下部領域であって、左右方向Xの中央寄りに設けられるので振動の影響を受けにくく、製品信頼性を向上させることができる。
【0064】
なお、本発明において、「洗濯機」とは、洗濯物(被洗濯物)の洗濯などの各種処理を行う機器全般を意味する。洗濯物の処理としては、例えば、洗いや乾燥、脱臭、除菌等が挙げられる。洗濯物は特に限定されず、例えば、布製品が挙げられる。洗濯物の具体例としては、例えば、衣服、帽子、手袋などの衣類、靴、カバン、ハンカチ、タオル等の持ち物、カーテン、毛布、タオルケット、ふとんカバー等の寝具、カーペット、ぬいぐるみ等が挙げられる。
【0065】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術的思想に含まれる技術的事項のすべてが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能であり、そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0066】
1 洗濯機
10 処理剤投入ユニット
100 ケース本体
101 液剤交換室
107、108 フロート弁(弁体)
11 筐体
12 蓋
121 第1蓋
122 第2蓋
13 槽
20 給水弁
201 給水接続口
30 自動投入部
301 洗剤タンク(第1タンク)
302 柔軟剤タンク(第2タンク)
40 手動投入部
401 洗剤ケース
50 給水経路
P1 第1経路
P2 第2経路
51 液剤排出部
52 排出口
60 弁機構
601 弁室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10