(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156462
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】レーザモジュール
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02253 20210101AFI20241029BHJP
H01S 5/14 20060101ALI20241029BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20241029BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H01S5/02253
H01S5/14
G02B3/00
G02B3/00 Z
G02B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070941
(22)【出願日】2023-04-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム、「海洋マイクロプラスチックの迅速分析を可能にする中赤外レーザー分光顕微鏡装置の開発」、委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100183081
【弁理士】
【氏名又は名称】岡▲崎▼ 大志
(72)【発明者】
【氏名】落合 隆英
(72)【発明者】
【氏名】杉山 厚志
(72)【発明者】
【氏名】枝村 忠孝
【テーマコード(参考)】
2H249
5F173
【Fターム(参考)】
2H249AA07
2H249AA13
2H249AA50
2H249AA64
2H249AA68
5F173MA10
5F173MB04
5F173MC01
5F173MC30
5F173MD33
5F173MD36
5F173MD51
5F173MD84
5F173ME64
5F173ME85
5F173MF02
5F173MF13
5F173MF39
(57)【要約】
【課題】レーザモジュールの歩留まりの低下を抑制しつつ、レーザモジュールを好適に小型化することができるレーザモジュールを提供する。
【解決手段】レーザモジュール1は、QCL素子2と、QCL素子2の端面2aから出射される光L1を回折及び反射させて光L1の一部である光L2を端面2aに帰還させる回折格子部64と、端面2aと回折格子部64との間に配置され、光L1及び光L2を通過させるレンズ部材6と、QCL素子2の端面2bに対向する位置に配置され、端面2bから出射される光L3を通過させるレンズ部材8と、QCL素子2、回折格子部64、及びレンズ部材6を収容するパッケージ3と、を備える。光L1が入射するレンズ部材6の入射面と端面2aとのX軸方向における距離d1は、光L3が入射するレンズ部材8の入射面8aと端面2bとのX軸方向における距離d2よりも短い。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性層及び前記活性層の両側に配置される一対のクラッド層を含む積層構造と、前記積層構造の積層方向である第1方向に直交する第2方向に互いに対向する第1端面及び第2端面と、を有し、前記第1端面及び前記第2端面の各々から光を出射する量子カスケードレーザ素子と、
前記第1端面から出射される第1光を回折及び反射させて前記第1光の一部である第2光を前記第1端面に帰還させる回折格子部と、
前記第1端面と前記回折格子部との間に配置され、前記第1光及び前記第2光を通過させる第1レンズ部材と、
前記第2端面に対向する位置に配置され、前記第2端面から出射される第3光を通過させる第2レンズ部材と、
前記量子カスケードレーザ素子、前記回折格子部、及び前記第1レンズ部材を収容し、前記回折格子部と前記第2レンズ部材における前記第3光の入射面との間の光路が配置されるパッケージと、を備え、
前記第1光が入射する前記第1レンズ部材の入射面と前記第1端面との前記第2方向における第1距離は、前記第3光が入射する前記第2レンズ部材の入射面と前記第2端面との前記第2方向における第2距離よりも短い、レーザモジュール。
【請求項2】
前記第1距離は、前記第2距離の1/2以下である、
請求項1に記載のレーザモジュール。
【請求項3】
前記第1レンズ部材を支持する支持部材を更に備え、
前記量子カスケードレーザ素子に対向する前記第1レンズ部材の面は、前記支持部材に支持されていない、
請求項1又は2に記載のレーザモジュール。
【請求項4】
前記支持部材は、
前記回折格子部側に開口する第1孔部と、
前記第2方向から見た場合に前記第1孔部を含み且つ前記第1孔部よりも大きく前記量子カスケードレーザ素子側に開口する第2孔部と、
前記第1孔部と前記第2孔部とを接続し、前記第2方向に交差する面に沿って延在する座ぐり面と、を有し、
前記第1レンズ部材は、前記第2孔部に挿入されており、
前記第1レンズ部材のうち前記回折格子部に対向する少なくとも一部は、前記座ぐり面に面接触して支持されている、
請求項3に記載のレーザモジュール。
【請求項5】
前記第1レンズ部材を支持する支持部材を更に備え、
前記第1レンズ部材は、
前記第1光をコリメートするコリメートレンズを構成する第1部分と、
前記第2方向から見た場合に、前記第1部分の外縁部において前記第1部分と接続され、前記コリメートレンズを構成しない第2部分と、を有し、
前記第2部分は、前記支持部材に直接的に支持されており、
前記第1部分は、前記支持部材に直接的に支持されていない、
請求項1に記載のレーザモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
外部共振型レーザモジュール(以下、単に「レーザモジュール」という。)として、量子カスケードレーザ素子(以下、「QCL素子」という。)と、回折格子部と、QCL素子と回折格子部との間に配置されたレンズと、を備えるものが知られている(例えば特許文献1参照)。上記レーザモジュールでは、QCL素子からの光が回折格子部によって回折及び反射され、特定波長の光がQCL素子に帰還する。これにより、当該特定波長の光が、QCL素子と回折格子部との間で増幅され、QCL素子の端面(回折格子部側とは反対側の端面)から外部に出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開2008/0298406号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなレーザモジュールにおいては、更なる小型化が求められている。また、レーザモジュールを小型化するにあたっては、レーザモジュールの小型化による製造難易度の増大に起因する歩留まりの低下を抑制することが重要である。
【0005】
そこで、本開示の一側面は、レーザモジュールの歩留まりの低下を抑制しつつ、レーザモジュールを好適に小型化することができるレーザモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の[1]~[5]のレーザモジュールを含む。
【0007】
[1]活性層及び前記活性層の両側に配置される一対のクラッド層を含む積層構造と、前記積層構造の積層方向である第1方向に直交する第2方向に互いに対向する第1端面及び第2端面と、を有し、前記第1端面及び前記第2端面の各々から光を出射する量子カスケードレーザ素子と、
前記第1端面から出射される第1光を回折及び反射させて前記第1光の一部である第2光を前記第1端面に帰還させる回折格子部と、
前記第1端面と前記回折格子部との間に配置され、前記第1光及び前記第2光を通過させる第1レンズ部材と、
前記第2端面に対向する位置に配置され、前記第2端面から出射される第3光を通過させる第2レンズ部材と、
前記量子カスケードレーザ素子、前記回折格子部、及び前記第1レンズ部材を収容し、前記回折格子部と前記第2レンズ部材における前記第3光の入射面との間の光路が配置されるパッケージと、を備え、
前記第1光が入射する前記第1レンズ部材の入射面と前記第1端面との前記第2方向における第1距離は、前記第3光が入射する前記第2レンズ部材の入射面と前記第2端面との前記第2方向における第2距離よりも短い、レーザモジュール。
【0008】
第1距離を短くすることにより、レーザモジュール(パッケージ)の第2方向における長さを短くできると共に、第1レンズ部材を介して回折格子部へと向かう第1光のビーム径を小さくすることができるため、回折格子部を小型化することができる。従って、第1距離を短くすることにより、第2距離を短くするよりもレーザモジュールを効果的に小型化することができる。すなわち、第1距離を短くする方が、第2距離を同じ距離だけ短くする場合よりも、レーザモジュールの小型化に寄与する。一方、第2距離についても第1距離と同様に短くすることによって、レーザモジュールの第2方向における長さを短くできる。しかし、第1距離及び第2距離の両方を同様に短くした場合、レーザモジュールの製造時(例えば、QCL素子に対する第1レンズ部材及び第2レンズ部材の位置決め時等)において、QCL素子の第1端面又は第2端面と第1レンズ部材又は第2レンズ部材とが接触し、QCL素子のレーザ発振において重要な役割を果たす第1端面又は第2端面が破損するリスクが増大する。上記[1]のレーザモジュールによれば、第1距離を優先的に短くする(すなわち、第2距離よりも短くする)ことにより、上述したようにレーザモジュールを効果的に小型化できるという利点を享受しつつ、第2距離を第1距離よりも長くすることにより、QCL素子の第2端面と第2レンズ部材との間の空間的な余裕を確保し、上述したような製造時におけるQCL素子の破損のリスクを低減できる。すなわち、レーザモジュールの歩留まりの低下を抑制しつつ、レーザモジュールを好適に小型化することができる。
【0009】
[2]前記第1距離は、前記第2距離の1/2以下である、[1]のレーザモジュール。
【0010】
上記[2]の構成によれば、上記[1]の効果をより確実に得ることができる。
【0011】
[3]前記第1レンズ部材を支持する支持部材を更に備え、
前記量子カスケードレーザ素子に対向する前記第1レンズ部材の面は、前記支持部材に支持されていない、[1]又は[2]のレーザモジュール。
【0012】
上記[3]の構成によれば、QCL素子に対向する第1レンズ部材の面とQCL素子との間に支持部材の一部が配置される場合と比較して、第1レンズ部材の上記面をQCL素子の第1端面になるべく近接させて配置することが容易となる。すなわち、第1距離をより一層短くすることが可能となる。
【0013】
[4]前記支持部材は、
前記回折格子部側に開口する第1孔部と、
前記第2方向から見た場合に前記第1孔部を含み且つ前記第1孔部よりも大きく前記量子カスケードレーザ素子側に開口する第2孔部と、
前記第1孔部と前記第2孔部とを接続し、前記第2方向に交差する面に沿って延在する座ぐり面と、を有し、
前記第1レンズ部材は、前記第2孔部に挿入されており、
前記第1レンズ部材のうち前記回折格子部に対向する少なくとも一部は、前記座ぐり面に面接触して支持されている、[3]のレーザモジュール。
【0014】
上記[4]の構成によれば、第1孔部、第2孔部、及び座ぐり面を有する支持部材を用いて、第1レンズ部材を座ぐり面に面接触させて支持することにより、上記[3]の構成を実現しつつ、第1レンズ部材を安定的に支持することができる。その結果、レーザモジュールの信頼性を高めることができ、歩留まりの向上を図ることができる。
【0015】
[5]前記第1レンズ部材を支持する支持部材を更に備え、
前記第1レンズ部材は、
前記第1光をコリメートするコリメートレンズを構成する第1部分と、
前記第2方向から見た場合に、前記第1部分の外縁部において前記第1部分と接続され、前記コリメートレンズを構成しない第2部分と、を有し、
前記第2部分は、前記支持部材に直接的に支持されており、
前記第1部分は、前記支持部材に直接的に支持されていない、[1]~[4]のいずれかのレーザモジュール。
【0016】
上記[5]の構成によれば、第1距離を短くすることにより、第1レンズ部材のうちコリメートレンズを構成する第1部分を小さくし、その外縁部にコリメートレンズを構成しない第2部分を設けることができる。これにより、レンズ機能を有さない第2部分のみを支持部材で直接的に支持することにより、レンズ機能を有する第1部分が支持部材と接触することによって損傷することを防止できる。その結果、レーザモジュールの信頼性を高めることができ、歩留まりの向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の一側面によれば、レーザモジュールの歩留まりの低下を抑制しつつ、レーザモジュールを好適に小型化することができるレーザモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、一実施形態のレーザモジュールの斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のレーザモジュールのY軸方向中央部における斜視断面図である。
【
図3】
図3は、
図2においてY軸方向から見たレーザモジュールの断面図である。
【
図5】
図5は、
図4のV-V線に沿った回折格子部の断面図である。
【
図6】
図6は、第1レンズ部材の構成を示す図である。
【
図7】
図7は、QCL素子、第1レンズ部材、及び回折格子部の位置関係を示す図である。
【
図8】
図8は、比較例及び実施例の各々のレーザモジュールの波長及び出力の測定結果を示す図である。
【
図9】
図9は、第1レンズ部材の第1~第3変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。また、「上」、「下」等の語は図面に示される状態に基づく便宜的なものである。
【0020】
[レーザモジュールの全体構成]
図1~
図3に示されるように、レーザモジュール1は、量子カスケードレーザ素子(以下「QCL素子)2と、QCL素子2を気密に収容するパッケージ3と、を備えている。レーザモジュール1は、出力光(レーザ光L)の波長が可変とされた波長可変光源である。レーザモジュール1は、例えば、グルコース等の生体計測、VOCガス(揮発性有機化合物)等の光吸収バンドを有する分析対象の吸収スペクトルの計測等に用いられ得る。例えば、このような吸収スペクトルの測定時には、光透過性の容器内に収容された分析対象が、レーザモジュール1と光検出器(不図示)との間に配置される。そして、レーザモジュール1は、出力光(レーザ光L)の波長を高速に変化させることにより、所定の波長範囲(例えば、中赤外領域)において波長掃引を行う。これにより、光検出器の検出結果に基づいて、吸収スペクトルが算出される。なお、分析対象は、気体、液体及び固体のいずれであってもよい。
【0021】
パッケージ3は、QCL素子2と、マウント部材4と、回折格子ユニット5と、レンズ部材6(光学部材、第1レンズ部材)を支持(保持)するレンズホルダ7(支持部材)と、レンズ部材8(第2レンズ部材)を支持(保持)するレンズホルダ9と、を収容する筐体である。パッケージ3内には、回折格子ユニット5(回折格子部64)とレンズ部材8の入射面8aとの間の光路が配置される。本実施形態では一例として、パッケージ3は、バタフライパッケージとして構成されている。パッケージ3は、底壁31と、側壁32と、天壁33と、を有している。
図1及び
図2においては、パッケージ3の天壁33の図示が省略されている。
【0022】
底壁31は、矩形板状の部材である。底壁31は、例えば銅タングステン等の金属材料によって形成されている。底壁31は、マウント部材4が搭載されるベース部材である。本明細書では便宜上、底壁31の長手方向をX軸方向(第2方向)と表し、底壁31の短手方向をY軸方向(第3方向)と表し、底壁31に垂直な方向(すなわち、X軸方向及びY軸方向の両方に直交する方向)をZ軸方向(第1方向)と表す。本実施形態では、X軸方向は、後述するQCL素子2の端面2a,2b同士が対向する方向(すなわち、端面2a,2bに直交する方向)であり、QCL素子2から出射されるレーザ光Lの光軸に沿った方向(光軸方向)でもある。
【0023】
側壁32は、底壁31上に立設されている。側壁32は、Z軸方向から見た場合に、QCL素子2等が収容される内部空間を包囲するように環状(本実施形態では、矩形環状)に形成されている。本実施形態では、側壁32は、矩形筒状に形成されている。側壁32は、コバール等の金属材料によって形成されている。側壁32は、例えば、Ni/Auメッキが施されたコバールフレームである。本実施形態では、側壁32は、底壁31の長手方向(X軸方向)における中央部に設けられている。側壁32の短手方向(Y軸方向)に沿った幅は底壁31の短手方向の幅と一致しており、側壁32の長手方向(X軸方向)に沿った幅は底壁31の長手方向の幅よりも短い。すなわち、底壁31の長手方向における両側には、側壁32よりも外側に突出して延在する突出部31aが形成されている。突出部31aにおける底壁31の四隅に対応する部分には、パッケージ3(底壁31)を他の部材に取り付けるためのネジ孔31bが設けられている。
【0024】
天壁33(
図3参照)は、側壁32の底壁31側とは反対側の開口を塞ぐ部材である。天壁33は、矩形板状を呈している。Z軸方向から見た天壁33の外形(長手方向及び短手方向の幅)は、側壁32の外形と略一致している。天壁33は、例えば、側壁32と同じ金属材料(例えばコバール等)によって形成されている。天壁33は、パッケージ3の内部を真空又は窒素で置換した状態で、例えばシーム溶接等によって、側壁32の底壁31側とは反対側の端部32aに接合されている。
【0025】
側壁32のうち長手方向(X軸方向)に沿って延在する一対の第1側壁321(すなわち、短手方向(Y軸方向)に交差する部分)の各々には、第1側壁321の外側及び内側の両方に張り出した突出壁34が設けられている。突出壁34は、Z軸方向における第1側壁321の中央位置よりも上方(天壁33側)において、X軸方向に沿って延在する庇状の部材である。突出壁34の上面には、パッケージ3内の各部材(例えば、QCL素子2、可動回折格子51(コイル65)等)に給電するための複数(本実施形態では、各突出壁34に7個ずつの計14個)の平板状の電極端子10が配置されている。各電極端子10は、第1側壁321を貫通している。
図1に示されるように、各電極端子10のうち第1側壁321の外側に位置する部分は、外部電源と電気的に接続されるリードピン11と電気的に接続されている。各電極端子10は、X軸方向に沿って略等間隔で、突出壁34の上面に配置されている。各リードピン11は、X軸方向に沿って略等間隔で、各電極端子10のうち第1側壁321の外側に位置する部分の上に配置されている。各電極端子10のうち第1側壁321の内側に位置する部分は、パッケージ3内の各部材と図示しないワイヤ等を介して電気的に接続される。以上の構成により、図示しないワイヤ、電極端子10、及びリードピン11を介して、外部電源から各部材へと給電される。
【0026】
側壁32のうち短手方向(Y軸方向)に沿って延在する第2側壁322(すなわち、長手方向(X軸方向)に交差する部分)の一方には、QCL素子2の一方の端面2bから出射されるレーザ光Lを通過させる光出射窓12が設けられている。光出射窓12は、例えば、中赤外領域の波長のレーザ光Lを透過させる材料(例えば、ゲルマニウム等)によって形成されている。本実施形態では一例として、光出射窓12は、円板状に形成されている。光出射窓12は、一方の第2側壁322に形成された円形状の開口部に固着されている。
【0027】
次に、パッケージ3に収容される各部材について説明する。
図2及び
図3に示されるように、QCL素子2、回折格子ユニット5、レンズホルダ7、及びレンズホルダ9は、マウント部材4を介して、底壁31上に配置されている。マウント部材4は、例えば、接合又はネジ留め等によって、底壁31に固定されている。マウント部材4は、例えば銅等の熱伝導性に優れた材料によって形成されている。なお、本実施形態では、マウント部材4は底壁31上に直接配置されているが、マウント部材4と底壁31との間には、例えばペルチェモジュール等の冷却素子が配置されてもよい。また、本実施形態では、マウント部材4は単一の部材であるが、マウント部材4は、複数の部材(部品)を組み合わせたものであってもよい。
【0028】
図2及び
図3に示されるように、マウント部材4は、X軸方向に長尺な部材である。マウント部材4には、QCL素子2、回折格子ユニット5、レンズホルダ7、及びレンズホルダ9が搭載されている。マウント部材4は、第1搭載部41、第2搭載部42、第3搭載部43、及び第4搭載部44を有している。第1搭載部41、第2搭載部42、第3搭載部43、及び第4搭載部44は、X軸方向に沿って、レンズホルダ9側から回折格子ユニット5側に向かって順に配置されている。第1搭載部41には、例えば光硬化性樹脂(例えばUV硬化性樹脂等)からなる接着層B1を介して、レンズホルダ9が搭載されている。第2搭載部42には、QCL素子2が搭載されている。第3搭載部43には、接着層B1と同様の光硬化性樹脂(例えばUV硬化性樹脂等)からなる接着層B2を介して、レンズホルダ7が搭載されている。第4搭載部44には、回折格子ユニット5が搭載されている。すなわち、光出射窓12、レンズ部材8、QCL素子2、レンズ部材6、及び回折格子ユニット5は、X軸方向に沿ってこの順に配置されている。
【0029】
第1搭載部41及び第3搭載部43は、Z軸方向において、同一の厚さを有している。すなわち、底壁31を基準として、第1搭載部41の上面41aの高さ位置は、第3搭載部43の上面43aの高さ位置と一致している。レンズホルダ9は、接着層B1を介して、第1搭載部41の上面41aに接着固定されている。同様に、レンズホルダ7は、接着層B2を介して、第3搭載部43の上面43aに接着固定されている。X軸方向におけるレンズホルダ7の長さは、例えば2.2mm程度である。
【0030】
マウント部材4に対してレンズホルダ7,9を固着させるための接着剤(接着層B1,B2)としては、光硬化性樹脂を用いることが好ましい。その理由は、以下の通りである。レンズホルダ7,9をマウント部材4に対して固着する際、レンズホルダ7,9(レンズ部材6,8)をXYZ方向に調芯する必要がある。このため、上記接着剤を硬化させる処理は、レンズホルダ7,9をマウント部材4に対して十分に押圧した状態では行われない。このような場合、上記接着剤として熱硬化性樹脂を用いるよりも、光硬化性樹脂を用いた方が、マウント部材4に対してレンズホルダ7,9を高い位置精度で接着することができる。また、レンズホルダ7,9の間にはQCL素子2等の精密部材が配置される。上記接着剤として熱硬化性樹脂を用いた場合、上記接着剤を硬化させるための加熱処理が、QCL素子2の品質に影響を及ぼす可能性がある。以上の理由から、本実施形態では、レンズホルダ7,9は、光硬化性樹脂からなる接着層B1,B2を介して、マウント部材4に固着されている。
【0031】
第2搭載部42は、第1搭載部41と第3搭載部43との間に設けられている。第2搭載部42は、Z軸方向において、第1搭載部41及び第3搭載部43よりも厚くされている。すなわち、第2搭載部42の上面42aは、第1搭載部41の上面41a及び第3搭載部43の上面43aよりも高い位置にある。QCL素子2は、サブマウント13を介して、第2搭載部42の上面42aに固定されている。サブマウント13は、QCL素子2が載置される矩形板状の部材である。本実施形態では、QCL素子2及びサブマウント13は、上面42aのY軸方向における中央位置(パッケージ3のY軸方向における中央位置)に配置されている。サブマウント13は、QCL素子2と近い熱膨張係数を有する材料(例えば、窒化アルミニウム等)によって形成されている。QCL素子2は、例えばAuSn系の半田材料を介して、サブマウント13に接合されている。また、サブマウント13は、例えばIn系(InSn、InAg等)の半田材料を介して、マウント部材4(上面42a)に接合されている。上述したように、QCL素子2はサブマウント13と一体化されているため、QCL素子2及びサブマウント13の両方を合わせたものを「QCL素子」と見做し得る。
【0032】
第2搭載部42の上面42aには、サブマウント13以外に、電極パッド14及び温度センサ(不図示)等が配置されている。電極パッド14及び温度センサ等は、例えば樹脂接着剤等を介して、マウント部材4(上面42a)に接合されている。本実施形態では、電極パッド14は、電極端子10とQCL素子2との電気的接続を中継する。本実施形態では、2つの電極パッド14が、第2搭載部42の上面42aに設けられている。具体的には、QCL素子2のカソード(本実施形態では、QCL素子2の上面(メサ上面))と電気的に接続される一方の電極パッド14と、QCL素子2のアノード(例えば、サブマウント13)と電気的に接続される他方の電極パッド14とが、第2搭載部42の上面42aに設けられている。
【0033】
第4搭載部44は、第1搭載部41及び第3搭載部43よりも薄くされている。すなわち、第4搭載部44の上面44aは、第1搭載部41の上面41a及び第3搭載部43の上面43aよりも低い位置にある。第4搭載部44には、配置孔44b(孔部)が形成されている。
図3に示されるように、回折格子ユニット5は、後述するヨーク53の一部である突出部53cが配置孔44bに挿入された状態で、例えば熱硬化性樹脂等の樹脂接着剤B3を用いて第4搭載部44に固定されている。
【0034】
QCL素子2は、X軸方向(第2方向)に互いに対向する端面2a(第1端面)及び端面2b(第2端面)を有している。端面2aは、レンズ部材6に対向する面であり、端面2bは、レンズ部材8に対向する面である。QCL素子2は、端面2a,2bの各々から、中赤外領域(例えば4μm~12μm)の光を出射する。端面2a,2bは、X軸方向に垂直な平坦面(劈開面)であり、QCL素子2から出射されるレーザ光Lの光軸は、X軸方向に沿っている。QCL素子2は、例えば、複数の量子井戸層(例えばInGaAs)及び複数の量子障壁層(例えばInAlAs)からなる活性層と、活性層を挟んで活性層の両側に配置される一対のクラッド層(例えばInP)と、を含む積層構造を有している。本実施形態では、上記積層構造の積層方向は、Z軸方向と一致している。なお、QCL素子2は、互いに異なる中心波長を有する複数の活性層と一対のクラッド層とを含んでいてもよく、この場合でも上記のような広帯域の光を出射することができる。端面2aには無反射コーティングが施されてもよく、共振面として機能する端面2bには低反射コーティングが施されてもよい。
【0035】
レンズ部材8は、QCL素子2に対して可動回折格子51(回折格子ユニット5)が位置する側とは反対側に配置されている。すなわち、レンズ部材8は、QCL素子2の端面2bと対向する位置に配置されている。レンズ部材8は、例えば、セレン化亜鉛(ZnSe)からなる非球面レンズである。レンズ部材8の表面には無反射コーティングが施されてもよい。レンズ部材8は、QCL素子2(端面2b)から出射される光L3(第3光)を通過させる。例えば、レンズ部材8は、光L3をコリメートする。レンズ部材8によりコリメートされた光L3は、光出射窓12を通って、出力光(レーザ光L)として外部に出力される。
【0036】
レンズ部材6は、QCL素子2の端面2aと可動回折格子51(回折格子ユニット5)との間に配置されている。すなわち、レンズ部材6は、QCL素子2の端面2aと対向する位置に配置されている。レンズ部材6は、QCL素子2の端面2aから出射された光L1(第1光)及び可動回折格子51からQCL素子2へと帰還する光L2(第2光)を通過させる。レンズ部材6は、光L1をコリメートする。
【0037】
レンズホルダ7,9は、略直方体状の外形を有している。レンズ部材6,8は、樹脂接着剤等によって、レンズホルダ7,9に支持(保持)されている。レンズホルダ7,9の表面は、例えばアルマイト処理等によって、黒色加工されている。レンズホルダ7,9によるレンズ部材6,8の支持構造(保持構造)の詳細については後述する。
【0038】
回折格子ユニット5は、可動回折格子51と、磁石52と、ヨーク53と、を備えている。可動回折格子51は、略板状に形成されている。磁石52は、可動回折格子51に対してQCL素子2とは反対側に配置されている。可動回折格子51はヨーク53に固定されており、磁石52はヨーク53内に収容されている。可動回折格子51、磁石52及びヨーク53は、一体化されており、1つのユニットを構成している。
【0039】
レンズ部材6によりコリメートされた光L1は、回折格子ユニット5の可動回折格子51に入射する。可動回折格子51は、入射した光L1を回折及び反射させることにより、当該光L1の一部(特定波長の光L2)を、レンズ部材6を介して、QCL素子2の端面2aに帰還させる。すなわち、可動回折格子51は、QCL素子2の端面2aから出射される光L1についての外部共振器を構成している。本実施形態では、可動回折格子51とQCL素子2の端面2bとによって、リトロー型の外部共振器が構成されている。これにより、レーザモジュール1は、特定波長の光L2を増幅させて、出力光(レーザ光L)として外部に出力することができる。
【0040】
また、可動回折格子51では、入射した光L1を回折及び反射させる回折格子部64の向きを高速に変化させることができる。これにより、可動回折格子51からQCL素子2の端面2aに帰還する光L2の波長が可変となっており、ひいてはレーザモジュール1の出力光(レーザ光L)の波長が可変となっている。レーザ光Lの波長を変化させることで、例えば、QCL素子2のゲインバンドの範囲内において波長掃引を行うことができる。
【0041】
(回折格子ユニットの詳細構成)
図4及び
図5に示されるように、可動回折格子51は、支持部61と、一対の連結部62と、可動部63と、回折格子部64と、コイル65と、を備えている。可動回折格子51は、軸線A周りに可動部63を揺動させるMEMSデバイスとして構成されている。MEMSデバイスとは、MEMS技術と呼ばれる微細加工技術(パターニング、エッチング等)を用いて形成された装置であり、半導体微細加工技術を用いて形成された半導体装置を含む。
【0042】
支持部61は、平面視において矩形状を呈する平板状の枠体である。支持部61は、一対の連結部62を介して可動部63を支持している。各連結部62は、平面視において矩形棒状を呈する平板状の部材であり、軸線Aに沿って延在している。各連結部62は、可動部63が軸線A周りに揺動自在となるように、軸線A上において可動部63を支持部61に連結している。
【0043】
可動部63は、支持部61の内側に位置している。可動部63は、上述したように軸線A周りに揺動可能となっている。可動部63は、平面視において略矩形状を呈する平板状の部材である。本実施形態では一例として、可動部63の四隅は、R状に面取りされている。すなわち、可動部63の四隅は、平面視において円弧状に湾曲している。これにより、可動部63の慣性モーメントを低減することができ、可動部63の揺動を高速化することができる。この例では、可動部63は、長辺が方向D1(軸線Aと直交する方向)(第4方向)に平行な略長方形状に形成されており、方向D1における可動部63の長さは、方向D2(軸線Aと平行な方向)(第5方向)における可動部63の長さよりも長くなっている。一例として、方向D1における支持部61の長さは6~7mm程度であり、方向D2における支持部61の長さは6mm程度である。また、方向D1における可動部63の長さは5mm程度であり、方向D2における可動部63の長さは4mm程度であり、可動部63の厚さは30μm程度である。支持部61、連結部62及び可動部63は、例えば1つのSOI(Silicon on Insulator)基板に作り込まれることにより、一体に形成されている。
【0044】
可動部63におけるQCL素子2の側の表面には、回折格子部64が設けられている。回折格子部64は、複数の格子溝64aを有し、QCL素子2から出射された光L1を回折及び反射させる。回折格子部64は、例えば、可動部63の表面上に設けられ、回折格子パターンが形成された樹脂層と、当該回折格子パターンに沿うように樹脂層の表面上にわたって設けられた金属層と、を含んでいる。或いは、回折格子部64は、可動部63上に設けられると共に回折格子パターンが形成された金属層のみにより構成されてもよい。回折格子パターンとしては、例えば、本実施形態のような鋸歯状断面のブレーズドグレーティングの他、矩形状断面のバイナリグレーティング、正弦波状断面のホログラフィックグレーティング等を用いることができる。回折格子パターンは、例えばナノインプリントリソグラフィ法により樹脂層に形成される。金属層は、例えば、金からなる金属反射膜であり、蒸着により形成される。
【0045】
図5に示されるように、複数の格子溝64aは、方向D1に等間隔で並んでいる。各格子溝64aは、方向D2に真っ直ぐに延在している。方向D1における格子溝64aの繰り返し周期(隣り合う格子溝64a間の距離)dは、例えば4μm~13μmである。回折格子部64の法線(格子面Sに垂直な直線)Nに平行な法線方向DNに対する格子溝64aの角度(ブレーズド角)θは、例えば20度~35度である。
【0046】
回折格子部64は、平面視において可動部63よりも一回り小さく形成されており、回折格子部64の外縁は、可動部63の外縁から一定の間隔を空けて、可動部63の外縁に沿って延在している。この例では、回折格子部64は、平面視において可動部63と相似な略長方形状に形成されている。すなわち、回折格子部64は、長辺が方向D1に平行な略長方形状に形成されており、方向D1における回折格子部64の長さW1は、方向D2における回折格子部64の長さW2よりも長くなっている。このように、方向D1における回折格子部64の長さW1が長いことで、
図3に示されるように回折格子部64が傾斜して配置された場合でも、QCL素子2からの光L1を回折格子部64によって良好に受けることができる。また、方向D2における回折格子部64の長さW2が低減されていることで、レーザモジュール1の小型化を図ることができると共に、回折格子部64の大型化を抑制して消費電力の増大を抑制することができる。また、後述するように、QCL素子2から出射される光L1のZ軸方向のビーム幅は、Y軸方向のビーム幅よりも長くなる。従って、X軸方向から見た場合にZ軸方向に沿った方向となる方向D1における回折格子部64の長さW1を長くすることで、Z軸方向に拡散する光L1を回折格子部64に好適に入射させることが可能になると共に、Y軸方向両側における回折格子部64の無駄な領域(すなわち、光L1が入射しない領域)を低減できる。
【0047】
コイル65は、例えば、銅等の金属材料からなり、可動部63の表面に形成された溝内に埋め込まれたダマシン構造を有している。コイル65は、可動回折格子51を駆動させる(すなわち、可動部63を揺動させる)ための電流を流す駆動コイルである。
【0048】
磁石52は、コイル65に作用する磁界(磁力)を発生させる。磁石52は、例えば、略直方体状に形成されたネオジウム磁石(永久磁石)である。
【0049】
ヨーク53は、磁石52の磁力を増幅させ、磁石52と共に磁気回路を形成する。ヨーク53の表面は、例えば亜鉛メッキ処理によって、黒色加工されている。ヨーク53は、傾斜面53aと、下面53bと、突出部53cと、位置決め面53dと、を有している。
【0050】
傾斜面53aは、QCL素子2の端面2aに対して傾斜している。このような傾斜面53a上に可動回折格子51が固定されることにより、可動回折格子51の回折格子部64の法線Nを端面2aに対して傾斜させることができる。この例ではZ軸方向の一方側(天壁33側)を向くように回折格子部64が傾斜しているが、Z軸方向の他方側(底壁31側)を向くように回折格子部64が傾斜していてもよい。傾斜面53aの傾斜角度(すなわち、Y軸方向から見た場合における法線NのX軸方向に対する角度θ1)は、QCL素子2の発振波長、並びに回折格子部64における格子溝の溝本数及びブレーズド角等に応じて設定される。例えば、発振波長が7μm帯、溝本数が150本/mmである場合、角度θ1は30度程度に設定される。
【0051】
ヨーク53は、Y軸方向から見た場合に略コ字状(逆C字状)に形成されており、傾斜面53aに開口した配置空間SPを画定している。この配置空間SP内に磁石52が配置されて、磁石52がヨーク53内に収容されている。ヨーク53は、Y軸方向から見た場合に、磁石52を包囲している。可動回折格子51は、配置空間SPの開口を覆うように、支持部61の縁部において傾斜面53aに固定されている。
【0052】
下面53bは、第4搭載部44の上面44aに対向する面である。下面53bには、下方に突出する突出部53cが設けられている。位置決め面53dは、傾斜面53aと下面53bとを接続するようにX軸方向に交差する面である。本実施形態では、位置決め面53dは、X軸方向に直交している。位置決め面53dは、第3搭載部43の側面(第3搭載部43の上面43aと第4搭載部44の上面44aとを接続するX軸方向に直交する面)に当接されている。これにより、X軸方向における回折格子ユニット5の位置決めがなされている。
【0053】
可動回折格子51では、コイル65に電流が流れると、磁石52及びヨーク53により形成される磁界により、コイル65内を流れる電子に所定の方向にローレンツ力が生じる。これにより、コイル65は所定の方向に力を受ける。このため、コイル65に流れる電流の向き又は大きさ等を制御することで、可動部63(回折格子部64)を軸線A周りに揺動させることができる。また、可動部63の共振周波数に対応する周波数の電流をコイル65に流すことで、可動部63を共振周波数レベルで(例えば1kHz以上の周波数で)高速に揺動させることができる。このように、コイル65、磁石52及びヨーク53は、可動部63を揺動させるアクチュエータ部として機能する。
【0054】
(第1レンズ部材の詳細構成)
図6を参照して、レンズ部材6(第1レンズ部材)の構成について詳細に説明する。
図6の左部分は、レンズ部材6のY軸方向中央部における断面図を示している。
図6の右部分は、レンズ部材6を回折格子ユニット5側からX軸方向に沿って見た場合の平面図を示している。
図6に示されるように、レンズ部材6は、全体として略円板状の外形を有している。レンズ部材6は、第1部分601(レンズ部)と、第2部分602と、を有している。本実施形態では、レンズ部材6は、カルコゲナイド(カルコゲナイドガラス)によって形成されている。これにより、中赤外光を透過する材料の中でモールド精密成形を比較的容易に行うことが可能なカルコゲナイドを用いることにより、第1部分601及び第2部分602を有するレンズ部材6を容易且つ安定的に製造することができる。より具体的には、第1部分601と第2部分602とを一体型にした複雑な形状であっても、モールド成形によって低コストで製造することができるため、特にレンズ部材6を量産する場合において、高いコスト低減効果が得られる。
【0055】
第1部分601は、QCL素子2の端面2aから出射される光L1をコリメートするコリメートレンズを構成する部分である。本実施形態では、第1部分601は、数mm以下の直径を有する短焦点マイクロレンズである。第1部分601は、X軸方向から見た場合において、レンズ部材6の中央部に形成された略円柱状の部分である。第1部分601は、第1面6aと、第2面6bと、を含んでいる。
【0056】
第1面6aは、回折格子ユニット5(回折格子部64)に対向する面であり、回折格子部64に向かって凸の曲面状に形成されている。第2面6bは、QCL素子2の端面2aに対向する面であり、平面状に形成されている。
【0057】
第2部分602は、X軸方向から見た場合に、第1部分601の外縁部に接続され、コリメートレンズを構成しない部分である。すなわち、第2部分602は、レンズ部材6のうち、光L1をコリメートする役割を担っておらず、後述するようにレンズホルダ7に支持される役割を主に有する部分である。X軸方向から見た場合に、第2部分602は、第1部分601を包囲している。本実施形態では、X軸方向から見た場合に、第2部分602は、第1部分601の周囲において、円環状に形成されている。上記構成によれば、レンズとして機能する第1部分601の外縁部の全周に亘って第2部分602を設けることにより、第1部分601の支持安定性を向上させることができる。また、例えば、レンズ部材6の第2部分602を接着等によってレンズホルダ7に取り付ける場合において、当該接着に係る応力(外力)を第1部分601の外縁部の1箇所に集中させることなく、第1部分601の外縁部の全周に分散させることができる。これにより、第1部分601のレンズ機能を低下させるような第1部分601の局所的な変形を抑制できる。第2部分602は、第3面6cと、第4面6dと、を含んでいる。
【0058】
第3面6cは、回折格子ユニット5(回折格子部64)に対向する面であり、内側平面6c1と、傾斜面6c2と、外側平面6c3と、を含んでいる。内側平面6c1は、X軸方向から見た場合に、第1部分601の第1面6aの外縁部に接続された平面状の部分であり、本実施形態では一例として、X軸方向に直交する平面(YZ平面)に沿っている。外側平面6c3は、内側平面6c1よりも回折格子部64側に位置する平面状の部分であり、本実施形態では一例として、X軸方向に直交する平面(YZ平面)に沿っている。傾斜面6c2は、内側平面6c1の外側縁部と外側平面6c3の内側縁部とを接続する平面状の部分である。Y軸方向から見た場合に、傾斜面6c2は、Z軸方向に対して傾斜している。より具体的には、傾斜面6c2は、Z軸方向に沿ってレンズ部材6の中心部から外側に向かうにつれて、第4面6dから離れていくように傾斜している。外側平面6c3は、第1部分601の第1面6aの中央部(最も回折格子部64側に位置する部分)よりも回折格子部64側に位置している。すなわち、本実施形態では、コリメートレンズを構成する第1部分601は、傾斜面6c2及び外側平面6c3により構成される円環状の壁部に囲まれている。
【0059】
第4面6dは、QCL素子2の端面2aに対向する面であり、X軸方向から見た場合に、第1部分601の第2面6bの外縁部に接続された平面状の部分を有する面である。本実施形態では、第4面6dの全体が、第2面6bと連続する(面一となる)平面として構成されている。
【0060】
上述したように、第1部分601の第1面6aは曲面状に形成されており、第2部分602の内側平面6c1は平面状に形成されている。これにより、レンズ部材6に対して回折格子部64が位置する側における第1部分601と第2部分602との境界部において、第1部分601に含まれる曲面状の部分(すなわち、第1面6a)と第2部分602に含まれる平面状の部分(すなわち、内側平面6c1)とが互いに接続されている。すなわち、回折格子部64側における第1部分601と第2部分602との境界部を境目として、回折格子部64に対向するレンズ部材6の面の曲率が変化している。上記構成によれば、レンズとして機能する部分(第1部分601)とその外側の部分(第2部分602)とを視覚的に容易に判別することができる。また、レンズ部材6に曲面状の部分同士が接続される形状が含まれていると、レンズ部材6を製造するために必要な金型の形状が複雑化してしまい、上記曲面状の部分同士の境界部の形状が乱れるおそれがある。従って、上記構成によれば、レンズ部材6の製造を容易化することができる。
【0061】
第1部分601及び第2部分602におけるQCL素子2に対向する面(すなわち、第2面6b及び第4面6d)及び回折格子部64に対向する面(すなわち、第1面6a及び第3面6c)の少なくとも一方(本実施形態では両方)に反射防止膜が形成されている。本実施形態では、反射防止膜603が、第1面6a及び第3面6c上に成膜されており、反射防止膜604が、第2面6b及び第4面6d上に成膜されている。反射防止膜603,604は、例えば、YF3,CeF3,BaF2等のフッ化物、ZnS,ZnSe等の硫化物、Si,Ge等の高屈折率材料を用いた多層膜等によって形成されている。X軸方向から見た場合において、反射防止膜603,604の外縁部603a,604aは、第2部分602の外縁部(すなわち、レンズ部材6の側面6e)よりも内側に位置している。本実施形態では、反射防止膜603の外縁部603aは、外側平面6c3上に位置している。これにより、第2部分602の円環状の周縁部(外側平面6c3の周縁部)が露出した状態とされている。上記のように反射防止膜603,604を設けることにより、第1部分601の第1面6a又は第2面6bにおける光L1及び光L2の反射を抑制し、光L1を好適に回折格子部64に導くと共に光L2を好適にQCL素子2に導くことができる。また、反射防止膜603,604は、第1部分601を確実に覆うように、第1部分601だけでなく第2部分602にも設けられているが、反射防止膜603,604の外縁部603a,604aは第2部分602の外縁部(側面6e)まで達していない。これにより、例えば、後述するように接着剤等を介して第2部分602をレンズホルダ7に固定(接着)する場合等において、反射防止膜603,604が設けられていない第2部分602の一部(本実施形態では、外側平面6c3の一部)を接着領域として用いることができる。また、レンズホルダ7に対するレンズ部材6の接着の影響が反射防止膜603,604に及ばないため、反射防止膜603,604の剥がれを抑制できる。また、反射防止膜603,604を第2部分602の外縁部(側面6e)まで達するように設けた場合、反射防止膜603,604の成膜過程において上記外縁部の近傍でバリが発生し、当該バリを起点として反射防止膜603,604が剥がれ易くなるおそれがある。上述したように反射防止膜603,604の外縁部603a,604aを第2部分602の外縁部よりも内側に設ける構成によれば、このようなバリの発生を抑制し、反射防止膜603,604の剥がれを抑制できる。
【0062】
本実施形態では一例として、レンズ部材6の全体(第1部分601及び第2部分602を合わせた部分)の径は5mmであり、コリメートレンズとして機能する第1部分601の径は1.4mmである。また、X軸方向における第1面6aの頂部(中心)から第2面6bまでの長さは1mmであり、X軸方向における外側平面6c3から第4面6dまでの長さは1.1mmである。
【0063】
また、
図6の右部分に示されるように、X軸方向から見た場合に、第2部分602の面積(本実施形態では、中央部の円形領域を除いた円環状の領域の面積)は、第1部分601の面積(本実施形態では、中央部の円形領域の面積)よりも大きい。上記構成によれば、レンズ部材6を支持(保持)するための部分として利用可能な第2部分602の面積をレンズ部分(第1部分601)の面積よりも大きくすることにより、レンズ部材6を支持するための構造の設計の自由度を向上させることができる。また、レンズ部材6を保持するための第2部分602を大きくすることにより、レンズ部材6のハンドリング性を向上させることができるため、ハンドリングミスに起因するレンズ部材6(特にレンズ部分である第1部分601)の損傷のリスクを低減できる。また、第2部分602がレンズホルダ7に接着される部分から第1部分601までの距離を確保できるため、第1部分601へと接着剤が流入するリスクを低減できる。さらに、レンズホルダ7と第2部分602とが接着されることにより生じる接着応力が第1部分601に及ぼす影響を低減できる。
【0064】
(第1レンズ部材の支持構造)
図3を参照して、レンズホルダ7によるレンズ部材6(第1レンズ部材)の支持構造(保持構造)の一例について説明する。本実施形態では、レンズ部材6の第2部分602が、レンズホルダ7に直接的に支持(保持)されており、レンズ部材6の第1部分601は、レンズホルダ7に直接的に支持(保持)されていない。より具体的には、第1部分601は、レンズホルダ7と直接的に接触しておらず、接着剤等を介してレンズホルダ7と間接的にも接触していない。上記構成によれば、レンズ機能を有さない第2部分602のみをレンズホルダ7で直接的に支持することにより、レンズ機能を有する第1部分601がレンズホルダ7と接触して損傷することを防止できる。これにより、レーザモジュール1の信頼性を高めることができる。また、第1部分601にレンズホルダ7が接触しないことにより、第1部分601を通過する光L1の一部がレンズホルダ7に遮蔽されることを防ぐこともできる。
【0065】
さらに、QCL素子2に対向するレンズ部材6の面(本実施形態では、第2面6b及び第4面6d)は、レンズホルダ7に支持されていない。すなわち、第2面6b及び第4面6dは、レンズホルダ7と直接的に接触しておらず、接着剤等を介してレンズホルダ7と間接的にも接触していない。上記構成によれば、QCL素子2に対向するレンズ部材6の面がレンズホルダ7に支持される場合、すなわち、QCL素子2に対向するレンズ部材6の面(第2面6b及び第4面6d)とQCL素子2との間にレンズホルダ7の一部が配置される場合と比較して、レンズ部材6の上記面(特に、レンズとして機能する第1部分601の第2面6b)をQCL素子2の端面2aになるべく近接させて配置することが容易となる。これにより、QCL素子2の端面2aから出射される光L1の大部分をレンズ部材6のレンズ部分(第1部分601)に通過させることが容易となる。その結果、回折格子部64への光L1の入射量の増大、ひいてはレーザモジュール1の出力の向上を好適に図ることができる。
【0066】
本実施形態では一例として、上述した支持構造を実現するために、レンズホルダ7は、略直方体状の外形を有している。また、レンズホルダ7は、小径孔7a(第1孔部)と、大径孔7b(第2孔部)と、座ぐり面7cと、を有している。小径孔7aは、レンズ部材6の光軸方向(X軸方向)において、回折格子部64側に開口している。大径孔7bは、X軸方向において、QCL素子2側に開口している。大径孔7bは、X軸方向から見た場合に、小径孔7aを含み且つ小径孔7aよりも大きい形状を有している。X軸方向から見た場合に、小径孔7a及び大径孔7bの各々は、円形状に形成されており、大径孔7bの径は、小径孔7aの径よりも大きい。一例として、小径孔7aの中心軸及び大径孔7bの中心軸は、レンズ部材6の光軸と略一致している。座ぐり面7cは、小径孔7aと大径孔7bとを接続し、X軸方向に交差する面に沿って延在する環状の面である。より具体的には、座ぐり面7cは、小径孔7aの大径孔7b側の端部と大径孔7bの小径孔7a側の端部とを接続している。
【0067】
レンズ部材6は、大径孔7bに挿入されている。また、レンズ部材6の第2部分602のうち回折格子部64に対向する少なくとも一部(本実施形態では、外側平面6c3のうち反射防止膜603が設けられていない部分)が、座ぐり面7cに面接触して支持されている。一例として、第2部分602の周縁部(外側平面6c3のうち反射防止膜603が設けられていない部分)は、例えば、樹脂接着剤等によって、座ぐり面7cに固着されている。或いは、レンズ部材6は、レンズ部材6の側面6eと大径孔7bの内面とが樹脂接着剤等によって接合されることにより、レンズホルダ7に固定されてもよい。上記構成によれば、小径孔7a、大径孔7b、座ぐり面7cを有するレンズホルダ7を用いて、第2部分602のうち回折格子部64に対向する部分(本実施形態では、第3面6cの外側平面6c3の一部)を座ぐり面7cに面接触させて支持することにより、上述したようにレンズ部材6とQCL素子2との間にレンズホルダ7の一部が配置されない構成を実現しつつ、レンズ部材6を安定的に支持することができる。
【0068】
(第2レンズ部材の支持構造)
図3を参照して、レンズホルダ9によるレンズ部材8(第2レンズ部材)の支持構造(保持構造)の一例について説明する。レンズ部材8は、QCL素子2の端面2bから出射される光L3が入射する入射面8aと、レンズ部材8の内部を通過した光L3を光出射窓12に向けて出射する出射面8bと、を有している。一例として、入射面8aは、QCL素子2の端面2bに対向する平面状の面であり、出射面8bは、光出射窓12に対向する曲面状の面である。入射面8a及び出射面8bには、反射防止膜603,604と同様の反射防止膜が設けられてもよい。
【0069】
レンズホルダ9は、一例として、略直方体状の外形を有している。また、レンズホルダ9は、小径孔9aと、大径孔9bと、座ぐり面9cと、を有している。小径孔9aは、レンズ部材8の光軸方向(X軸方向)において、回折格子部64側に開口している。大径孔9bは、X軸方向において、光出射窓12側に開口している。大径孔9bは、X軸方向から見た場合に、小径孔9aを含み且つ小径孔9aよりも大きい形状を有している。X軸方向から見た場合に、小径孔9a及び大径孔9bの各々は、円形状に形成されており、大径孔9bの径は、小径孔9aの径よりも大きい。一例として、小径孔9aの中心軸及び大径孔9bの中心軸は、レンズ部材8の光軸と略一致している。座ぐり面9cは、小径孔9aと大径孔9bとを接続し、X軸方向に交差する面に沿って延在する環状の面である。より具体的には、座ぐり面9cは、小径孔9aの大径孔9b側の端部と大径孔9bの小径孔9a側の端部とを接続している。レンズ部材8は、大径孔9bに挿入されている。また、レンズ部材8の入射面8aの周縁部が、座ぐり面9cに面接触して支持されている。一例として、入射面8aの周縁部は、例えば、樹脂接着剤等によって、座ぐり面9cに固着されている。或いは、レンズ部材8は、レンズ部材8の側面(大径孔9bの内面と対向する面)と大径孔9bの内面とが樹脂接着剤等によって接合されることにより、レンズホルダ9に固定されてもよい。
【0070】
上述したように、本実施形態では、レンズ部材8を支持するレンズホルダ9の座ぐり面9cがレンズ部材8とQCL素子2(端面2b)との間に設けられているのに対して、レンズ部材6を支持するレンズホルダ7の座ぐり面7cは、レンズ部材6に対してQCL素子2(端面2a)が位置する側とは反対側に設けられている。上記構成によれば、レンズホルダ7の一部がレンズ部材6とQCL素子2との間に介在しないため、すなわち、第2面6bと端面2aとを近づける際にレンズホルダ7の一部が干渉しないため、第2面6bと端面2aとをなるべく近づけることが可能になる。一方、レンズ部材8については、レンズ部材8とQCL素子2との間に座ぐり面9cが介在するため、レンズ部材8の入射面8aとQCL素子2(端面2b)とをより確実に離間させることができる。これにより、製造時(例えば、QCL素子2に対してレンズ部材8を配置する作業時等)において、入射面8aと端面2bとが接触するおそれを低減できる。
【0071】
(QCL素子、第1レンズ部材、及び第2レンズ部材の位置関係)
図3に示されるように、QCL素子2の端面2aから出射される光L1が入射するレンズ部材6(第1レンズ部材)の入射面(すなわち、第1部分601の第2面6b)と端面2aとのX軸方向における距離d1(第1距離)は、QCL素子2の端面2bから出射される光L3が入射するレンズ部材8(第2レンズ部材)の入射面8aと端面2bとのX軸方向における距離d2(第2距離)よりも短い。すなわち、レーザモジュール1では、レンズ部材6(具体的には、コリメートレンズとして機能する第1部分601)のワーキングディスタンス(距離d1)は、レンズ部材8のワーキングディスタンス(距離d2)よりも短くなるように構成されている。本実施形態では一例として、距離d1は0.3mmであり、距離d2は1mmである。
【0072】
(QCL素子、第1レンズ部材、及び回折格子部の位置関係)
図7を参照して、QCL素子2、レンズ部材6(第1レンズ部材)、及び回折格子部64の位置関係の一例について説明する。
図7に示されるように、QCL素子2の端面2aから出射される光L1は、レンズ部材6の第1部分601の第2面6bに入射する。このとき、光L1が第2面6bにおいて屈折することにより、第2面6bに入射した光L1の進行方向のX軸方向に対する平行度は、第2面6bに入射する前の光L1の進行方向のX軸方向に対する平行度よりも高くなる。また、第1部分601の内部を通過した光L1は、第1部分601の第1面6aから回折格子部64に向けて出射される。このとき、光L1が第1面6aにおいて屈折することにより、第1面6aから出射した光L1の進行方向のX軸方向に対する平行度は、第1面6aから出射する前の光L1の進行方向のX軸方向に対する平行度よりも高くなる。このように、光L1は、第1部分601の第2面6b及び第1面6aの各々で屈折することにより、平行化される。なお、本実施形態において、第1部分601による光L1の平行化(コリメート)とは、第1部分601を通過して回折格子部64に向かう光L1を、第1部分601を通過する前の光L1よりも平行光に近づけるものであればよく、第1部分601により平行化された光L1の進行方向は、理想的な平行光よりも若干収束方向又は拡散方向にずれたものであってもよい。
【0073】
上述したように、Y軸方向から見た場合に、回折格子部64は、Z軸方向に対して傾斜している。そして、第1部分601によりコリメートされた光L1のビームウェストの位置Pは、X軸方向において、Z軸方向における回折格子部64の上端(一端)の位置P1(第1位置)と、Z軸方向における回折格子部64の下端(他端)の位置P2(第2位置)と、の間に位置している。すなわち、Y軸方向から見た場合に、光L1のビームウェストの位置Pは、X軸方向における位置P1と位置P2との間の領域R1に含まれている。上記のように、レーザモジュール1では、光L1のビームウェストの位置PがX軸方向において回折格子部64が存在する範囲(すなわち、位置P1と位置P2との間の領域R1)に含まれるように、第1部分601と回折格子部64との相対的な位置関係が調整されている。これにより、平行度が比較的高い状態の光L1を回折格子部64に入射させることが可能となる。その結果、回折格子部64における光L1の回折効率が向上し、適切にQCL素子2へと帰還する光L2の光量が増大する。以上により、レーザモジュール1によれば、レーザモジュールの出力の向上を図ることができる。なお、上述した光L1のビームウェストの位置Pは、可動部63が揺動可能な範囲において、回折格子部64が最も寝た状態になるとき(すなわち、Z軸方向に対する回折格子部64の傾斜(角度θ1)が最大となるとき)の位置P1と位置P2との間の領域R1(すなわち、可動部63の揺動によって変化する領域R1のうち最も広い範囲の領域)に含まれるように構成されればよい。ただし、上述した光L2の光量の増大効果を波長掃引幅に含まれる各波長について好適に発揮する観点から、光L1のビームウェストの位置Pは、可動部63が揺動可能な範囲の任意の状態において、位置P1と位置P2との間の領域R1に含まれるように構成されることが好ましい。すなわち、光L1のビームウェストの位置Pは、可動部63の揺動によって変化する領域R1のうち最も狭い範囲の領域(すなわち、Z軸方向に対する回折格子部64の傾斜(角度θ1)が最小となるときの領域R1)に含まれるように構成されることが好ましい。
【0074】
また、本実施形態では、回折格子部64は、光L1のビーム幅領域Rの全体が回折格子部64に入射するように、配置されている。ここで、「光L1のビーム幅領域R」とは、Z軸方向において、光L1の強度がピーク強度の1/e2になる2点間の領域(いわゆる、1/e2幅)である。上記構成によれば、回折格子部64に入射する光L1のロスを効果的に低減できるため、光L2の光量をより一層増大させることができ、ひいてはレーザモジュール1の出力をより一層向上させることができる。
【0075】
さらに、光L1のビームウェストの位置Pは、X軸方向において、回折格子部64に入射した光L1のビーム幅領域RのZ軸方向における上端(一端)の位置P3(第3位置)と、回折格子部64に入射した光L1のビーム幅領域RのZ軸方向における下端(他端)の位置P4(第4位置)と、の間に位置している。すなわち、Y軸方向から見た場合に、光L1のビームウェストの位置Pは、X軸方向における位置P3と位置P4との間の領域R2に含まれている。ここで、
図7に示されるように、光L1のビーム幅領域Rの全体が回折格子部64の方向D1(
図4参照)における両側縁部を除く領域に入射する場合、位置P3は、位置P1よりも左側(レンズ部材6側)に位置する。また、位置P4は、位置P2よりも右側(レンズ部材6から離れる側)に位置する。すなわち、領域R2は、領域R1に含まれ、且つ、領域R1よりも狭い領域となる。上記構成によれば、よりビームウェスト(位置P)に近い位置で光L1を回折格子部64に入射させることができる。すなわち、平行度がより高い状態の光L1を回折格子部64に入射させることが可能となる。その結果、レーザモジュール1の出力をより一層効果的に向上させることができる。
【0076】
また、本実施形態では、第1部分601(レンズ部材6)は、回折格子部64に対向する第1面6aを光L1が通過する際において、光L1のビーム幅領域Rの全体が第1面6aに収まるという要件を満たすように、配置されている。上記構成によれば、QCL素子2の端面2aから出射された光L1を、第1部分601を介して、効率良く回折格子部64に導くことができる。すなわち、光L1のうち第1部分601から外れる光(平行化されず回折格子部64に入射されない光)の発生を抑制し、光L1のロスを低減できる。これにより、レーザモジュール1の出力をより一層効果的に向上させることができる。本実施形態では、一例として、QCL素子2の積層構造は、波長、ゲインバンド幅、出力等の観点において最適化されており、当該最適化された積層構造において、QCL素子2の端面2aから出射される光L1の垂直方向(Z軸方向)の放射角度(1/e2幅)が104度、水平方向(Y軸方向)の放射角度(1/e2幅)が70度となっている。また、上述したように、第1部分601の第2面6bとQCL素子2の端面2aとの距離d1(ワーキングディスタンス)が0.30mmに設定され、第1部分601の径が1.4mmに設定され、第1部分601の厚さ(第1面6aの中央部から第2面6bまでのX軸方向における長さ)が1.1mmに設定されている。本実施形態では、このように各パラメータが設定されることによって、上記要件を満たす構造が実現されている。
【0077】
本実施形態では、光L1のビームウェストとレンズ部材6との距離、すなわち、X軸方向における第1面6aの中央部とビームウェストの位置Pとの距離d3は、2mm~3mm(本実施形態では一例として2.5mm)である。上記構成によれば、QCL素子2、レンズ部(第1部分601)、及び回折格子部64を同一の筐体(パッケージ3)内に収容してパッケージ化する場合において、上述した条件(すなわち、位置Pが領域R1又はR2に含まれるという条件)を満たすようにレンズ部材6及び回折格子部64の位置関係を調整することにより、パッケージ3を適切に小型化(すなわち、レーザモジュール1の小型化)できると共に、上述したような効果(すなわち、平行度の高い光L1を回折格子部64に入射させることによるレーザモジュール1の出力の向上)を得ることができる。
【0078】
上記について補足すると、従来のレーザモジュールの構成においては、レンズ部材8と同一のレンズ部材がQCL素子2と回折格子部64との間に配置されることがあった。ここで、レーザモジュール1からの出射光(レーザ光L)を通過させるための出射側のレンズ部材8では、パッケージ3の外側で出射光(レーザ光L)が平行光となるように、ビームウェスト位置が比較的遠い位置に設定されている。このため、このようなレンズ部材8と同様のレンズ部材をQCL素子2と回折格子部64との間に配置する従来の構成においては、当該レンズ部材を通過した光L1のビームウェスト位置が、回折格子部64よりも遠い位置(回折格子部64に対してQCL素子2が配置される側とは反対側の位置)に位置していた。このため、回折格子部64に入射する光L1は、比較的平行度が低いものとなっていた。また、回折格子部64に含まれる複数の格子溝64aは、回折格子部64に入射する光が平行光であることを想定して設計されている。このため、平行度の低い光L1が回折格子部64に入射してしまうと、設計値からのずれによって、適切に帰還する光L2の量が低減したり、波長掃引幅が縮小したりするといった問題が生じ得る。これに対して、上述したレーザモジュール1によれば、マイクロレンズ(第1部分601)を用いてビームウェストの位置Pが回折格子部64の位置と合うように調整されていることにより、平行度の高い光L1を回折格子部64に入射させることが可能となる。その結果、上述した問題の解消を図ることができる。すなわち、従来の構成よりも、光L2の量を増大させ、レーザモジュール1の出力(レーザ光Lの出力)を向上させることができると共に、波長掃引幅の拡大を図ることができる。なお、仮に、レンズ部材8のビームウェスト位置がパッケージ3内に存在すると、レーザモジュール1から出射されるレーザ光Lが測定対象に照射される位置(パッケージ3の外側)において、ビーム(レーザ光L)が拡がってしまうため、レーザモジュール1を分光計測に用いることが困難となる。このような理由から、レーザモジュール1では、レンズ部材8として、レンズ部材6のようなマイクロレンズが用いられていない。
【0079】
以上述べたレーザモジュール1では、QCL素子2と回折格子部64との間に配置される光学部材(本実施形態では、レンズ部材6)は、光L1をコリメートするコリメートレンズを構成する第1部分601と、第1部分601の外縁部に接続され、コリメートレンズを構成しない第2部分602と、を有する。別の表現を用いると、レンズ部材6は、回折格子部64に向かって凸の曲面状に形成された第1面6aを有する第1部分601(すなわち、QCL素子2から回折格子部64へと向かう光L1のビーム拡がりを抑制するレンズとして機能する部分)と、第1部分601の外縁部に接続された第2部分602と、を有している。上記構成によれば、第1部分601によって、従来よりもレンズ径が小さいレンズ(本実施形態では、直径が1.4mmのマイクロレンズ)を容易に実現できる。ここで、回折格子部64は、なるべくレンズのビームウェスト位置に近い位置に配置されることが好ましい。すなわち、回折格子部64には、平行光に近いビームが照射されることが好ましい。従って、上記のように従来よりもレンズ径が小さいレンズ(第1部分601)を構成することにより、ビームウェスト位置をレンズに近づけることができ、回折格子部64をレンズ部材6に近接して配置することが可能となる。その結果、レーザモジュール1の小型化(コンパクト化)を図ることができる。また、第2部分602において、第1部分601によるレンズ機能を妨げることなくレンズ部材6を支持(保持)することが可能となる。これにより、コリメートレンズとして機能する第1部分601の小型化とレンズ部材6の支持容易性の両立を図ることができる。以上により、レーザモジュール1によれば、レーザモジュール1の出力の向上を図りつつ、QCL素子2と回折格子部64との間に配置されるレンズ(すなわち、レンズ部材6に含まれる第1部分601)の支持を容易化することができる。また、レンズ部材6を第1部分601及び第2部分602を有するように構成することにより、レンズ部材6をレンズホルダ7に取り付ける際のレンズ部材6のハンドリングが容易となる。例えば、レンズ機能を有する部分を保持する場合には、レンズの傷つき、損傷等を抑制する観点から慎重に当該部分を保持する必要が生じる。これに対して、レンズ部材6にレンズ機能を有さない第2部分602を設けることにより、レンズ部材6を保持するために第2部分602を保持することが可能となる。
【0080】
レーザモジュール1は、QCL素子2、回折格子部64、及びレンズ部材6を収容し、回折格子部64とレンズ部材8の入射面8aとの間の光路が配置されるパッケージ3を備えている。また、
図3に示されるように、光L1が入射するレンズ部材6の入射面(第1部分601の第2面6b)とQCL素子2の端面2aとのX軸方向における距離d1は、光L3が入射するレンズ部材8の入射面8aとQCL素子2の端面2bとのX軸方向における距離d2よりも短い。距離d1を短くすることにより、レーザモジュール1(パッケージ3)のX軸方向における長さを短くできると共に、レンズ部材6を介して回折格子部64へと向かう光L1のビーム径を小さくすることができるため、回折格子部64を小型化することができる。従って、距離d1を短くすることにより、距離d2を短くするよりもレーザモジュール1を効果的に小型化することができる。すなわち、距離d1を短くする方が、距離d2を同じ距離だけ短くする場合よりも、レーザモジュール1の小型化に寄与する。一方、距離d2についても距離d1と同様に短くすることによって、レーザモジュール1のX軸方向における長さを短くできる。しかし、距離d1,d2の両方を同様に短くした場合、レーザモジュール1の製造時(例えば、QCL素子2に対するレンズ部材6及びレンズ部材8の位置決め時等)において、QCL素子2の端面2a又は端面2bとレンズ部材6又はレンズ部材8とが接触し、QCL素子2のレーザ発振において重要な役割を果たす端面2a,2bが破損するリスクが増大する。これに対して、レーザモジュール1によれば、距離d1を優先的に短くする(すなわち、距離d2よりも短くする)ことにより、上述したようにレーザモジュール1を効果的に小型化できるという利点を享受しつつ、距離d2を距離d1よりも長くすることにより、QCL素子2の端面2bとレンズ部材8との間の空間的な余裕を確保し、上述したような製造時におけるQCL素子2の破損のリスクを低減できる。すなわち、レーザモジュール1の歩留まりの低下を抑制しつつ、レーザモジュール1を好適に小型化することができる。
【0081】
距離d1は、距離d2の1/2以下である。本実施形態では、距離d1は0.3mmであり、距離d2は1mmである。上記構成によれば、上述した効果をより確実に得ることができる。すなわち、レーザモジュール1の歩留まり低下の抑制と小型化をより効果的に両立させることができる。
【0082】
レンズ部材6の第2面6b及び第4面6dは、レンズホルダ7に支持されていない。すなわち、レンズ部材6とQCL素子2の端面2aとの間に、レンズホルダ7が配置されていない。これにより、距離d1(第2面6bと端面2aとの距離)をより一層短くすることが可能となる。より具体的には、仮にレンズ部材6とQCL素子2との間にレンズホルダ7の一部が配置される場合には、当該一部が干渉することによって上記距離d1を一定以上短くできないという制約が生じ得るが、上記のようにレンズ部材6とQCL素子2との間にレンズホルダ7が配置されないことにより、このような制約を排除できる。
【0083】
レンズ部材6は、レンズホルダ7の大径孔7bに挿入されており、レンズ部材6のうち回折格子部64に対向する少なくとも一部(本実施形態では、外側平面6c3の一部)は、座ぐり面7cに面接触して支持されている。上記構成によれば、小径孔7a、大径孔7b、及び座ぐり面7cを有するレンズホルダ7を用いて、レンズ部材6を座ぐり面7cに面接触させて支持することにより、上述したようにレンズ部材6とQCL素子2の端面2aとの間にレンズホルダ7が配置されない構成を実現しつつ、レンズ部材6を安定的に支持することができる。その結果、レーザモジュール1の信頼性を高めることができ、歩留まりの向上を図ることができる。
【0084】
第2部分602は、レンズホルダ7に直接的に支持されており、第1部分601は、レンズホルダ7に直接的に支持されていない。上記のように、距離d1を短くすることにより、レンズ部材6のうちコリメートレンズを構成する第1部分601を小さくし、その外縁部にコリメートレンズを構成しない第2部分602を設けることができる。これにより、レンズ機能を有さない第2部分602のみをレンズホルダ7で直接的に支持することにより、レンズ機能を有する第1部分601がレンズホルダ7と接触することによって損傷することを防止できる。その結果、レーザモジュール1の信頼性を高めることができ、歩留まりの向上を図ることができる。また、第1部分601にレンズホルダ7が接触しないことにより、第1部分601を通過する光L1の一部がレンズホルダ7に遮蔽されることを防ぐこともできる。
【0085】
図8の(A)は、従来の構成、すなわち、レンズ部材6として、レンズ部材8と同様のレンズ径(5mm)及び材料(ZnSe)で形成されたレンズ部材を用いた構成(比較例)の波長(横軸)及び出力(縦軸)の測定結果を示している。
図8の(B)は、実施例(すなわち、上述したレーザモジュール1の構成)の波長(横軸)及び出力(縦軸)の測定結果を示している。
図8の(A)及び(B)に示されるように、実施例(レーザモジュール1)によれば、比較例と比較して、レーザモジュールの出力光(レーザ光L)の出力を、従来の200mW程度の出力から1000mW程度の出力まで向上させることができることが確認された。また、可動回折格子51による波長掃引幅についても、実施例の波長掃引幅SW2は、従来の構成(比較例)の波長掃引幅SW1(200cm
-1程度)の1.5倍程度(300cm
-1程度)まで拡大されることも確認された。このような出力向上及び波長掃引幅の拡大の効果は、以下の作用により発揮されたと考えられる。すなわち、回折格子部64は、平行光が照射されることを前提として設計されている。言い換えれば、回折格子部64は、平行光が照射されるときに最も回折効率が高くなるように構成されている。また、回折効率が高い程、回折格子部64からQCL素子2へとフィードバックされる光出力が増大する。また、このようにQCL素子2へとフィードバックされる光出力が大きいことは、QCL素子2及び回折格子部64によって構成される共振器の性能が高く(すなわち、共振器の発振閾値が低く)、レーザ発振し易いことを意味する。そして、発振閾値が低い場合、ゲインピークから離れたゲインの低い波長領域(ゲインの裾)においてもレーザ発振が得られることになる。その結果、波長掃引幅が広くなる。実施例(レーザモジュール1)では、平行光に近い光L1が回折格子部64に照射するように構成されていることにより、上述したような作用が生じる結果、出力向上及び波長掃引幅の拡大の効果が好適に発揮されたと考えられる。
【0086】
[変形例]
本開示は、上記実施形態に限られない。各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。また、上記実施形態に係るレーザモジュール1に含まれる一部の構成は、適宜省略又は変更されてもよい。例えば、上記実施形態では、レーザモジュール1に含まれるいくつかの特徴的な構成、及び各構成によって発揮されるいくつかの効果について説明したが、本開示に係るレーザモジュールは、必ずしも、上記実施形態で説明された全ての効果を発揮するように構成される必要はなく、上記実施形態で説明された一部の効果のみを発揮するように構成されてもよい。後者の場合には、レーザモジュールは、少なくとも当該一部の効果を発揮するために必須の構成を備えていればよく、当該一部の効果を発揮するために必須ではない構成は適宜省略又は変更されてもよい。なお、一の効果に着目した場合において、当該一の効果を発揮するために必須の構成は、当業者を基準として、技術常識及び本明細書の記載に基づいて、合理的に把握されるべきである。以下、本開示のレーザモジュールについて、いくつかの具体的な変形例を例示する。
【0087】
第2部分602は、第1部分601とは別部材によって形成されてもよい。例えば、第2部分602は、第1部分601の側面を包囲して第1部分601を支持する金属部材によって形成されてもよい。上記変形例によれば、
図7に示したように光L1,L2を通過させることが想定されておらず(すなわち、レンズとして機能する必要がなく)、光学設計が不要な第2部分602を、第1部分601とは別部材(例えば、レンズホルダ7に固定し易い金属等)で構成することにより、レンズ部材6の設計の自由度を広げることができると共に、レーザモジュールの信頼性を向上させることができる。また、第2部分602とレンズホルダ7との接着部の機械的強度を確保できるため、レンズホルダ7に第2部分602を接着する際における接着部の欠けや損傷を抑制できる。
【0088】
また、レンズ部材6の第1部分601及び第2部分602の形状等の構成は、上記実施形態(
図6参照)で例示した構成に限られない。
図9に、QCL素子2と回折格子部64との間に配置されるレンズ部材の3つの変形例を示す。
【0089】
図9の(A)に示される第1変形例に係るレンズ部材6Aでは、第1部分601における第1面6aを含む凸部を除いた部分の厚さは、第2部分602の厚さと同一とされている。すなわち、レンズ部材6Aの第2部分602は、内側平面6c1、傾斜面6c2、及び外側平面6c3を有していない。この例において、レンズ部材6Aの全体(第1部分601及び第2部分602を合わせた部分)の径は5mmであり、コリメートレンズとして機能する第1部分601の径は2.0mmである。また、X軸方向における第2部分602の厚さは1.085mmであり、X軸方向における第1面6aの頂部(中心)から第2面6bまでの長さは1.3mmである。また、レンズ部材6Aのワーキングディスタンス(距離d1)は、0.40mmである。
【0090】
図9の(B)に示される第2変形例に係るレンズ部材6Bは、第1部分601の第2面6bが、外側(QCL素子2側)に凸な曲面状に形成されている点において、レンズ部材6Aと相違している。レンズ部材6Bの他の構成は、レンズ部材6Aと同様である。
図9の(C)に示される第3変形例に係るレンズ部材6Cは、第1部分601の第2面6bが、内側(回折格子部64側)に凸な曲面状に形成されている点(すなわち、第2面6bが内側に窪んでいる点)において、レンズ部材6Aと相違している。レンズ部材6Cの他の構成は、レンズ部材6Aと同様である。レンズ部材6B,6Cのように、第1部分601の第2面6bは、曲面状に形成されてもよい。レンズ部材6B,6Cによれば、レンズ設計の自由度が向上し、各種収差の小さいレンズを作製し易くなる。また、レンズ部材6Bによれば、レーザ発振に悪影響を及ぼす戻り光(第2面6bで反射してQCL素子2の端面2aへと向かう光)を低減できる効果も得られる。
【0091】
また、QCL素子2の端面2bに対向して配置されるレンズ部材8は、パッケージ3の外側に設けられてもよい。すなわち、パッケージ3は、QCL素子2、回折格子部64(回折格子ユニット5)、及びレンズ部材6を収容し、回折格子部64とレンズ部材8の入射面8aとの間の光路が配置されていればよく、レンズ部材8自体は、パッケージ3の外側に配置されてもよい。例えば、第2側壁322の開口部に、光出射窓12ではなくレンズ部材8が設けられてもよい。この場合、光出射窓12、レンズホルダ9、及びマウント部材4の第1搭載部41を省略することができる。また、レンズホルダ9及び第1搭載部41を省略することにより、X軸方向におけるパッケージ3の長さを短くすることができる。
【0092】
また、レーザモジュールは、レンズホルダ7を備えなくてもよい。例えば、レンズ部材6は、第2部分602の下部が、接着材(例えば、光硬化性樹脂等)によって、第3搭載部43の上面43aに直接固定されてもよい。この場合、上記接着材(硬化した状態の接着材)が、レンズ部材6を支持する支持部材として機能する。レンズホルダ9も、レンズホルダ7と同様に省略されてもよい。
【0093】
また、
図7に示した要件(すなわち、光L1のビームウェストの位置Pが領域R1又はR2に含まれる要件)を満たす構造を実現する上で、第2部分602が設けられることは必須ではない。例えば、第1部分601のみによって構成されるレンズ部材(レンズ部)が、当該レンズ部の大きさに合わせて用意されたレンズホルダ等によって直接支持されてもよい。ただし、上記実施形態で述べたとおり、第1部分601のみによって構成されるレンズ(マイクロレンズ)を直接的且つ安定的に保持することは困難であるため、上記実施形態のように第2部分602を設けることが支持構造の容易化を図る観点からは好ましい。
【0094】
また、上記実施形態では、第2部分602は、X軸方向から見た場合に第1部分601の全周を囲む環状に形成されたが、第2部分は、X軸方向から見た場合に、第1部分の外側縁部の一部のみに接続されてもよい。例えば、第2部分は、X軸方向から見た場合に、第1部分の下側半分の外側縁部に接続されて下方に延びる棒状の部材として構成されてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1…レーザモジュール、2…QCL素子(量子カスケードレーザ素子)、2a…端面(第1端面)、2b…端面(第2端面)、3…パッケージ、6,6A,6B,6C…レンズ部材(光学部材、第1レンズ部材)、6a…第1面、6b…第2面、6c…第3面、6d…第4面、7…レンズホルダ(支持部材)、7a…小径孔(第1孔部)、7b…大径孔(第2孔部)、7c…座ぐり面、8…レンズ部材(第2レンズ部材)、8a…入射面、64…回折格子部、64a…格子溝、601…第1部分(レンズ部)、602…第2部分、603,604…反射防止膜、603a,604a…外縁部、d1…距離(第1距離)、d2…距離(第2距離)、L1…光(第1光)、L2…光(第2光)、L3…光(第3光)、P…ビームウェストの位置、P1…位置(第1位置)、P2…位置(第2位置)、P3…位置(第3位置)、P4…位置(第4位置)、R…ビーム幅領域。