(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156466
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】燃料噴射装置
(51)【国際特許分類】
F02M 61/10 20060101AFI20241029BHJP
F02M 45/04 20060101ALI20241029BHJP
F02M 47/02 20060101ALI20241029BHJP
F02M 47/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
F02M61/10 S
F02M45/04
F02M47/02
F02M61/10 D
F02M61/10 F
F02M61/10 K
F02M61/10 L
F02M47/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070951
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】吉冨 和宣
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066BA51
3G066CC01
3G066CC08T
(57)【要約】
【課題】初期噴射率を可変とするに際して、制御性及び消費電力を改善可能な燃料噴射装置を提供する。
【解決手段】燃料噴射装置1は、制御室24aにおける燃料Fの圧力を調整するための調整機構10を備える。調整機構10は、第1燃料路7a及び第2燃料路7bによって制御室24aに連通された弁室27と、弁室27に収容され第1燃料路7a及び第2燃料路7bの開閉を行うためのコントロールバルブ4と、弾性部材41の弾性力に抗してコントロールバルブ4を移動させる第1ソレノイド5a及び第2ソレノイド5bと、を有する。第1ソレノイド5aは、第1移動量だけコントロールバルブ4を移動させて第1燃料路7aを開放させる。第2ソレノイド5bは、第1移動量よりも大きな第2移動量だけコントロールバルブ4を移動させて第1燃料路7a及び第2燃料路7bを開放させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの燃焼室に向けて燃料を噴射するための燃料噴射装置であって、
前記燃料の噴射孔が形成され、前記燃料が導入される本体と、
前記本体に収容され、前記噴射孔の開閉を行うための第1弁体と、
前記燃料が導入されることで当該燃料の圧力を前記第1弁体に付加する制御室と、
前記制御室における前記燃料の圧力を調整するための調整機構と、
を備え、
前記調整機構は、
前記制御室に連通すると共に前記燃料が流通する第1燃料路及び第2燃料路と、
前記第1燃料路及び前記第2燃料路の開口が形成された底面を有し、前記第1燃料路及び前記第2燃料路によって前記制御室に連通された弁室と、
前記弁室に収容され、前記底面に交差する第1方向に沿って移動することにより、前記第1燃料路及び第2燃料路の開閉を行うための第2弁体と、
前記底面に向けて前記第2弁体を付勢する弾性部材と、
前記弾性部材の弾性力に抗して前記第2弁体を磁力により前記底面から離れるように移動させる第1ソレノイド及び第2ソレノイドと、
を有し、
前記第1ソレノイドは、第1移動量だけ前記第2弁体を前記底面から離れるように移動させて前記第1燃料路を開放させ、
前記第2ソレノイドは、前記第1移動量よりも大きな第2移動量だけ前記第2弁体を前記底面から離れるように移動させて前記第1燃料路及び前記第2燃料路を開放させる、
燃料噴射装置。
【請求項2】
前記第2弁体は、前記第1方向に沿って配列され、前記第2燃料路に介在する第1部分及び第2部分を含み、
前記第2部分には、溝部が形成されており、
前記第1部分は、前記第2弁体の移動量が前記第2移動量未満であるときに、前記第2燃料路に介在して前記第2燃料路を閉塞し、
前記第2部分は、前記第2弁体の移動量が前記第2移動量となったときに、前記第2燃料路に介在し、前記溝部を前記第2燃料路に一致させて前記第2燃料路を開放する、
請求項1に記載の燃料噴射装置。
【請求項3】
前記第2弁体は、
前記第1方向に沿って延在する軸部と、
前記第1方向における前記底面側の前記軸部の一端部において前記軸部から突出するように前記軸部に設けられた第1フランジと、
前記第1方向における前記底面と反対側の前記軸部の一端部において前記軸部から突出するように前記軸部に設けられた第2フランジと、
を含み、
前記調整機構は、前記第1フランジと前記第2フランジとの間において、前記第1方向に沿って前記軸部に対して摺動可能に前記軸部に取り付けられたプレートを有し、
前記弾性部材は、
前記第1フランジと前記プレートとの間に介在された第1スプリングと、
前記第2フランジの前記第1フランジと反対側の面上に配置された第2スプリングと、
を含み、
前記第1ソレノイドは、前記第2スプリングの弾性力に抗して前記プレートを引き付けることにより、前記プレート及び前記第2弁体を移動させ、
前記第2ソレノイドは、前記第1スプリング及び前記第2スプリングの弾性力に抗して前記第2弁体を引き付けることにより、前記プレート及び前記第2弁体を移動させる、
請求項1又は2に記載の燃料噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料噴射装置が記載されている。この燃料噴射装置は、噴孔を開閉するニードル弁を開駆動させる電磁吸引力を通電に応じて発生する第1及び第2電磁ソレノイドを有している。これら第1及び第2電磁ソレノイドへの通電制御を行う電子制御装置は、噴射初期の噴射率の増加速度を最大とするときにはニードル弁の開駆動中に第1及び第2電磁ソレノイドへの通電を維持する。また、電子制御装置は、噴射初期の噴射率の増加速度を抑制するときにはニードル弁の開駆動中に第2電磁ソレノイドへの通電を維持したまま、第1電磁ソレノイドへの通電を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の燃料噴射装置のように、当該技術分野にあっては、噴射初期の噴射率(初期噴射率)を可変とする要求がある。これに対して、特許文献1に記載の燃料噴射装置では、第1ソレノイド及び第2ソレノイドの両方に使用する場合と、第2ソレノイドのみを使用する場合とで、初期噴射率の可変化を図っている。しかし、特許文献1に記載の燃料噴射装置では、初期噴射率の増加速度を最大とする場合には、第1ソレノイド及び第2ソレノイドの両方に通電を行う必要があることから、制御性及び消費電力に改善の余地がある。
【0005】
本開示は、初期噴射率を可変とするに際して、制御性及び消費電力を改善可能な燃料噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る燃料噴射装置は、エンジンの燃焼室に向けて燃料を噴射するための燃料噴射装置であって、燃料の噴射孔が形成され、燃料が導入される本体と、本体に収容され、噴射孔の開閉を行うための第1弁体と、燃料が導入されることで当該燃料の圧力を第1弁体に付加する制御室と、制御室における燃料の圧力を調整するための調整機構と、を備え、調整機構は、制御室に連通すると共に燃料が流通する第1燃料路及び第2燃料路と、第1燃料路及び第2燃料路の開口が形成された底面を有し、第1燃料路及び第2燃料路によって制御室に連通された弁室と、弁室に収容され、底面に交差する第1方向に沿って移動することにより、第1燃料路及び第2燃料路の開閉を行うための第2弁体と、底面に向けて第2弁体を付勢する弾性部材と、弾性部材の弾性力に抗して第2弁体を磁力により底面から離れるように移動させる第1ソレノイド及び第2ソレノイドと、を有し、第1ソレノイドは、第1移動量だけ第2弁体を底面から離れるように移動させて第1燃料路を開放させ、第2ソレノイドは、第1移動量よりも大きな第2移動量だけ第2弁体を底面から離れるように移動させて第1燃料路及び第2燃料路を開放させる。
【0007】
この燃料噴射装置では、本体に収容された第1弁体が、制御室内の燃料の圧力が付加されることで、燃料の噴射孔が閉塞されている状態とされる。また、調整機構が、制御室内の燃料の圧力を低減させることで、第1弁体の押圧力が低減されて第1弁体による噴射孔の閉塞が解除され、燃料噴射が行われる。調整機構は、第1燃料路及び第2燃料路によって制御室に連通する弁室と、弁室に収容されて第1燃料路及び第2燃料路の開閉を行うための第2弁体を有する。したがって、第2弁体が第1燃料路のみを開放し、第1燃料路を介して制御室から弁室に燃料を導出させて制御室内の圧力を低減させる場合と、第2弁体が第1燃料路及び第2燃料路の両方を開放し、第1燃料路及び第2燃料路を介して制御室から弁室に燃料を導出させて制御室内の圧力を低減させる場合とで、初期噴射率が可変とされる。特に、この調整機構では、第1ソレノイドが、第1移動量だけ第2弁体を移動させて第1燃料路を開放させ、第2ソレノイドが、第1移動量よりも大きな第2移動量だけ第2弁体を移動させて第1燃料路及び第2燃料路を開放させる。つまり、この燃料噴射装置では、第1ソレノイド及び第2ソレノイドのいずれか一方の通電により、初期噴射率が可変とされる。よって、制御性が向上されると共に、消費電力が低減される。
【0008】
本開示に係る燃料噴射装置では、第2弁体は、第1方向に沿って配列され、第2燃料路に介在する第1部分及び第2部分を含み、第2部分には、溝部が形成されており、第1部分は、第2弁体の移動量が第2移動量未満であるときに、第2燃料路に介在して第2燃料路を閉塞し、第2部分は、第2弁体の移動量が第2移動量となったときに、第2燃料路に介在し、溝部を第2燃料路に一致させて第2燃料路を開放してもよい。
【0009】
この場合、第2弁体の第1方向に沿った移動量の増減に応じて、第1燃料路のみが開放された状態と、第1燃料路及び第2燃料路が開放された状態とを、簡単な構成により容易に切り替えることが可能となる。
【0010】
本開示に係る燃料噴射装置では、第2弁体は、第1方向に沿って延在する軸部と、第1方向における底面側の軸部の一端部において軸部から突出するように軸部に設けられた第1フランジと、第1方向における底面と反対側の軸部の一端部において軸部から突出するように軸部に設けられた第2フランジと、を含み、調整機構は、第1フランジと第2フランジとの間において、第1方向に沿って軸部に対して摺動可能に軸部に取り付けられたプレートを有し、弾性部材は、第1フランジとプレートとの間に介在された第1スプリングと、第2フランジの第1フランジと反対側の面上に配置された第2スプリングと、を含み、第1ソレノイドは、第2スプリングの弾性力に抗してプレートを引き付けることにより、プレート及び第2弁体を移動させ、第2ソレノイドは、第1スプリング及び第2スプリングの弾性力に抗して第2弁体を引き付けることにより、プレート及び第2弁体を移動させてもよい。
【0011】
この場合、第1ソレノイドの磁力が作用する部材(プレート)と、第2ソレノイドの磁力が作用する部材(第2弁体)とを異ならせることで、第1燃料路のみが開放された状態と、第1燃料路及び第2燃料路が開放された状態とを、簡単な構成により容易に切り替えることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、初期噴射率を可変とするに際して、制御性及び消費電力を改善可能な燃料噴射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るエンジンの一部を示す模式的な断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された燃料噴射装置を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示された調整機構による圧力調整の様子を示す部分的な断面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示された燃料噴射装置の効果を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して一実施形態に係る燃料噴射装置について説明する。なお、各図において、同一の要素又は相当する要素には、互いに同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、一実施形態に係るエンジンの一部を示す模式的な断面図である。
図1に示されるように、エンジン100は、例えば車両に搭載されている。エンジン100は、シリンダブロック102と、シリンダブロック102の上側に配置されたシリンダヘッド103と、シリンダブロック102に圧入された複数(
図1では1つのみ図示)のシリンダライナ104と、シリンダライナ104内に往復昇降可能に配置されたピストン105と、を備えている。シリンダヘッド103とシリンダライナ104とピストン105とで囲まれる空間は、燃焼室106を画成している。
【0016】
シリンダヘッド103には、燃焼室106と連通された吸気ポート107及び排気ポート108が設けられている。吸気ポート107は、吸気バルブ109により開閉される。排気ポート108は、排気バルブ110により開閉される。また、シリンダヘッド103には、燃焼室106に燃料を噴射するための燃料噴射装置1が取り付けられている。
【0017】
図2は、
図1に示された燃料噴射装置を示す概略断面図である。
図2に示される燃料噴射装置1は、エンジン100の燃焼室106に燃料Fを噴射する装置である。燃料Fは、例えば、ガソリン、軽油、又は水素等、任意である。
【0018】
燃料噴射装置1は、ニードル(第1弁体)3を備えている。ニードル3は、本体2の内部に収容されている。ニードル3は、噴射孔21pの開閉を行うと共に、燃料Fを噴射孔21pから噴射させるための弁体として機能する。ニードル3は、例えば、円柱状に形成される。本体2は、円筒状に形成され、ニードル3を軸方向に対し摺動可能に収容している。ニードル3は、先端側からバルブ部31(第1弁体)、拡径部32及びピストン部33を形成している。
【0019】
バルブ部31は先端を先細りとした形状に形成され、その先端が弁体として機能する。バルブ部31は、バルブ部31より大きく形成される第1室22に収容されている。噴射孔21pは、第1室22の先端に形成されている。拡径部32は、バルブ部31の基端側に形成され、バルブ部31より拡径した形状となっている。拡径部32は、第1室22に収容されている。拡径部32の外径は、第1室22の内径と同じ又はほぼ同じ径とされている。拡径部32の外周面と第1室22の内周面の間に隙間ができないように、拡径部32が形成されている。
【0020】
拡径部32にはスプリング23が掛止されている。スプリング23は、本体2に反力をとってニードル3を先端側へ付勢する付勢部材である。拡径部32の基端側には、ピストン部33が形成されている。ピストン部33は、円柱状に形成され、第2室24に収容されている。ピストン部33の外径は、第2室24の内径と同じ又はほぼ同じ径とされている。ピストン部33の外周面と第2室24の内周面の間に隙間ができないように、ピストン部33が形成されている。第2室24には、制御室24aが形成されている。制御室24aは、第2室24のうちピストン部33の端面33aで区画される領域である。
【0021】
本体2には、燃料Fの供給路26が形成されている。供給路26は、本体2の外部から注入された燃料Fを本体2の先端側へ供給するための燃料供給路である。例えば、燃料Fは、図示しない燃料タンクからフィルタ、ポンプ及びコモンレールを介して燃料噴射装置1に供給され、高圧状態となっている。供給路26は、途中で分岐しており、第1室22及び制御室24aに連通している。
【0022】
本体2の先端部21には、噴射孔21p及びサック部21aが形成されている。噴射孔21pは、燃料噴射装置1から燃料Fを噴射させるための孔である。噴射孔21pは、例えば複数形成される。サック部21aは、噴射孔21pに連通する領域である。サック部21a及び噴射孔21pは、バルブ部31の閉弁動作により第1室22から遮断され、且つ、バルブ部31の開弁動作により第1室22と連通される。このように、本体2の先端部21は、弁体としてのバルブ部31と対を成す弁座部として機能する。
【0023】
本体2には、制御室24aにおける燃料Fの圧力を調整する調整機構10が設けられている。調整機構10は、コントロールバルブ4(第2弁体)及び弁室27を含む。コントロールバルブ4は、制御室24aの燃料Fの圧力を調整してニードル3を移動させる弁体である。コントロールバルブ4は、弁室27に収容されている。弁室27は、制御室24aと連通路27aを通じて連通している。また、調整機構10は、弁室27に収容された弾性部材41及びソレノイド5を含む。コントロールバルブ4は、弾性部材41の弾性力により付勢され、連通路27aの入り口に押し付けられている。
【0024】
また、調整機構10は、制御室24aに連通すると共に、制御室24aからの燃料Fが流通する第1燃料路7a及び第2燃料路7bを有している。第1燃料路7aは、一端が制御室24aに開口すると共に、他端が弁室27に開口している。第2燃料路7bは、一端が第1燃料路7aに接続され(第1燃料路7aから分岐され)、他端が制御室24aに開口している。すなわち、弁室27は、第1燃料路7a及び第2燃料路7bの開口が形成された底面27sを有している。コントロールバルブ4は、弾性部材41により付勢されることにより、当該底面27sに押し付けられ、第1燃料路7a及び第2燃料路7bの開口を閉塞している。
【0025】
コントロールバルブ4は、第1軸部4a(軸部)、第2軸部4b、第1フランジ4c、及び、第2フランジ4dを有している。第1軸部4aは、弁室27内に配置されて底面27sに交差(直交)する第1方向に延在している。第1フランジ4cは、第1軸部4aにおける底面27s側の一端部において第1軸部4aから突出するように第1軸部4aに設けられている。第2フランジ4dは、第1軸部4aにおける底面27sと反対側の他端部において第1軸部4aから突出するように第1軸部4aに設けられている。
【0026】
さらに、調整機構10は、第1フランジ4cと第2フランジ4dとの間において、第1方向に沿って第1軸部4aに対して摺動可能に第1軸部4aに取り付けられたプレート6を有している。プレート6は、少なくとも第2フランジ4dよりも大きく構成されており、第1軸部4aに対して底面27sから離れるように摺動したときに、第2フランジ4dに突き当てられて係止される。
【0027】
第2軸部4bは、弁室27における制御室24aとの連通路27a内に配置されている。第1軸部4a及び第2軸部4bは、第1方向に沿って配列されている。第2燃料路7bは、連通路27aを跨ぐように形成されており、第2軸部4bは、連通路27aにおいて第2燃料路7bに介在している。より具体的には、第2軸部4bは、第1方向に沿って配列され、第2燃料路7bに介在する第1部分4ba及び第2部分4bbを含む。第2部分4bbは、第1部分4baよりも制御室24a側に位置している。そして、第1部分4ba及び第2部分4bbのうちの第2部分4bbには、溝部4g(外周面の溝であってもよいし、貫通孔であってもよい)が形成されている。この溝部4gが第2燃料路7bに一致させられると、第2燃料路7bにおける連通路27aの一方側と他方側とが溝部4gを介して連通される。
【0028】
弾性部材41は、第1スプリング41a及び第2スプリング41bを含む。第1スプリング41aは、第1フランジ4cとプレート6との間に介在されている。第2スプリング41bは、第2フランジ4dにおける第1フランジ4cと反対側の面上に配置されている。
【0029】
ソレノイド5は、図示しない電子制御ユニットからの制御信号に従って作動する。ソレノイド5は、第1ソレノイド5a及び第2ソレノイド5bを含む。第1ソレノイド5a及び第2ソレノイド5bは、弾性部材41の弾性力に抗してコントロールバルブ4を磁力により底面27sから離れるように移動させる。
【0030】
より具体的には、第1ソレノイド5aは、プレート6における第1方向からみたときに第2フランジ4dから外側に延出する部分上に配置されている。第1ソレノイド5aは、第2スプリング41bの弾性力に抗してプレート6を引き付けることにより、プレート6及びコントロールバルブ4を一体的に移動させる。
【0031】
第2ソレノイド5bは、第2フランジ4d上において第2スプリング41b内に配置されている。第2ソレノイド5bは、第1スプリング41a及び第2スプリング41bの弾性力に抗してコントロールバルブ4を引き付けることにより、プレート6及びコントロールバルブ4を一体的に移動させる。調整機構10では、第1ソレノイド5a及び第2ソレノイド5bによってコントロールバルブ4の移動量を互いに異ならせることにより、制御室24aの燃料Fの圧力調整の態様を変化させる。この点について、より具体的に説明する。
【0032】
図3は、
図2に示された調整機構による圧力調整の様子を示す部分的な断面図である。
図3の(a)は、第1ソレノイド5aのみが通電されている状態を示し、
図3の(b)は、第2ソレノイド5bのみが通電されている状態を示す。
図3の(a)に示されるように、第1ソレノイド5aが通電されると、第1ソレノイド5aが、第2スプリング41bの弾性力に抗してプレート6を引き付けることにより、プレート6及びコントロールバルブ4を底面27sから離れるように一体的に移動させる。このときのコントロールバルブ4の第1方向への移動量を第1移動量とする。
【0033】
これにより、コントロールバルブ4の第1フランジ4cが弁室27の底面27sから離間し、底面27sにおける第1燃料路7a及び第2燃料路7bの開口が開放される。この結果、制御室24aからの燃料Fが第1燃料路7aを流通して弁室27に導出される。これにより、制御室24aの圧力が低減され、ニードル3が制御室24a側へ移動し、バルブ部31が第1室22の壁面から離間する。そして、燃料Fが第1室22からサック部21aへ流入し、噴射孔21pから噴射される。
【0034】
一方で、このとき、第2燃料路7bには、連通路27aにおいてコントロールバルブ4の第2軸部4bの第1部分4baが介在されている。したがって、弁室27における第2燃料路7bの開口は開放されるものの、第2燃料路7bは、連通路27aにおいて閉塞(断絶)されている。この結果、制御室24aからの燃料Fが第2燃料路7bを流通して弁室27に導出されることはない。
【0035】
他方、第2ソレノイド5bが通電されると、第2ソレノイド5bは、第1スプリング41a及び第2スプリング41bの弾性力に抗してコントロールバルブ4を引き付けることにより、プレート6及びコントロールバルブ4を一体的に移動させる。このときのコントロールバルブ4の第1方向への移動量は、第1移動量よりも大きな第2移動量となる。
【0036】
これにより、コントロールバルブ4の第1フランジ4cが弁室27の底面27sから離間し、底面27sにおける第1燃料路7a及び第2燃料路7bの開口が開放される。また、このとき、第2燃料路7bには、連通路27aにおいてコントロールバルブ4の第2軸部4bの第2部分4bbが介在され、溝部4gが第2燃料路7bに一致させられる。これにより、第2燃料路7bが、溝部4gを介して連通路27aを跨いで連通される。
【0037】
この結果、制御室24aからの燃料Fが第2燃料路7bを流通して弁室27に導出される。すなわち、この場合には、制御室24aからの燃料Fが、第1燃料路7a及び第2燃料路7bの両方を通じて弁室27に導出される。これにより、制御室24aの圧力がより迅速に低減され、より早い初速でニードル3が制御室24a側へ移動し、バルブ部31が第1室22の壁面から離間する。そして、燃料Fが第1室22からサック部21aへ流入し、噴射孔21pから噴射される。
【0038】
このように、調整機構10では、第1ソレノイド5aが、第1移動量だけコントロールバルブ4を底面27sから離れるように移動させて第1燃料路7aを開放させ、第2ソレノイド5bが、第1移動量よりも大きな第2移動量だけコントロールバルブ4を底面27sから離れるように移動させて第1燃料路7a及び第2燃料路7bを開放させる。
【0039】
換言すれば、調整機構10では、コントロールバルブ4の第1部分4baが、コントロールバルブ4の移動量が第2移動量未満であるときに、第2燃料路7bに介在して第2燃料路7bを閉塞し、第2部分4bbが、コントロールバルブ4の移動量が第2移動量となったときに、第2燃料路7bに介在し、溝部4gを第2燃料路7bに一致させて第2燃料路7bを開放する。
【0040】
調整機構10では、以上のように、第1ソレノイド5aを用いることで第1燃料路7aのみを開放して制御室24aの圧力を相対的に遅く低減させる第1の態様と、第2ソレノイド5bを用いることで第1燃料路7a及び第2燃料路7bの双方を開放して制御室24aの圧力を相対的に早く低減させる第2の態様とが可能とされている。
【0041】
なお、本体2には、リターン路28が形成されている。リターン路28は、弁室27と連通している。リターン路28は、供給路26に流入した燃料Fのうちの一部を燃料タンクへ戻すための流路である。つまり、リターン路28は、供給路26に流入し、噴射孔21pから噴射されなかった燃料Fを燃料タンクへ戻す。
【0042】
また、コントロールバルブ4により第1燃料路7a及び第2燃料路7bが閉じられている状態では、制御室24aから弁室27への燃料Fの流入はない。したがって、制御室24aと第1室22は、同じ圧力となっており、ニードル3は、スプリング23の付勢により先端側へ移動し閉弁した状態となっている。このように、制御室24aは、燃料Fが導入されることでニードル3に圧力を付加している。
【0043】
図4の(a)は、第1の態様(グラフG1)での燃料噴射率と第2の態様(グラフG2)の燃料噴射率とを示すグラフである。
図4の(a)に示されるように、第1の態様と第2の態様とで、初期噴射率を可変とすることが可能となる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係る燃料噴射装置1では、本体2(第1室22)に収容されたニードル3が、制御室24a内の燃料Fの圧力が付加されることで、燃料Fの噴射孔21pが閉塞されている状態とされる。また、調整機構10が、制御室24a内の燃料Fの圧力を低減させることで、ニードル3の押圧力が低減されてニードル3による噴射孔21pの閉塞が解除され、燃料噴射が行われる。
【0045】
調整機構10は、第1燃料路7a及び第2燃料路7bによって制御室24aに連通する弁室27と、弁室27に収容されて第1燃料路7a及び第2燃料路7bの開閉を行うためのコントロールバルブ4とを有する。したがって、コントロールバルブ4が第1燃料路7aのみを開放し、第1燃料路7aを介して制御室24aから弁室27に燃料を導出させて制御室24a内の圧力を低減させる場合(第1の態様)と、コントロールバルブ4が第1燃料路7a及び第2燃料路7bの両方を開放し、第1燃料路7a及び第2燃料路7bを介して制御室24aから弁室27に燃料を導出させて制御室24a内の圧力を低減させる場合(第2の態様)とで、初期噴射率が可変とされる。
【0046】
特に、この調整機構10では、第1ソレノイド5aが、第1移動量だけコントロールバルブ4を移動させて第1燃料路7aを開放させ、第2ソレノイド5bが、第1移動量よりも大きな第2移動量だけコントロールバルブ4を移動させて第1燃料路7a及び第2燃料路7bを開放させる。つまり、燃料噴射装置1では、第1ソレノイド5a及び第2ソレノイド5bのいずれか一方の通電により、初期噴射率が可変とされる。よって、制御性(噴射精度)が向上されると共に、消費電力が低減される。
【0047】
特に、燃料噴射装置1によれば、噴射精度の向上に伴い、次のような効果を奏することが可能となる。すなわち、
図4の(b)の上部に示されるように、噴射精度が向上されることで、多段噴射における各段の噴射率(例えばグラフP1~P4に示されるように)を変更できる。これにより、筒内容積の変化に合わせた熱量を連続的に精度よく投入でき、上死点付近での圧力上昇を一定値に抑えることができる(例えば、
図4の(c)の下部のグラフP5参照)。これを等圧燃焼のための制御とする。なお、グラフP1,P3は、第1燃料路7a及び第2燃料路7bの両方を開放した場合の噴射率を示し、グラフP2,P4は、第1燃料路7aのみを開放した場合の噴射率を示す。また、グラフR1は、従来の噴射パターンによる噴射率を示す。グラフR2に示される従来の噴射パターンによると、上死点付近での圧力上昇が顕著となる。
【0048】
また、等圧燃焼が成立した際の効果として、
図4の(b)の下部の実施形態に係るグラフP6と従来のグラフR3との比較により示されるように、熱発生時期を進角側から開始できること、その際、ピストンが上死点付近にあるものの、少ない噴射量をパターンを変えて噴射しているので、燃焼室壁面に当たりにくい。また、噴射最後の量が多い段数では、ピストンが上死点から離れ始めており、噴射量が多くても壁面に当たる火炎が少ない。これらから、
図4の(c)に示されるように、冷却損失の低減も加わり、進角効果とともに熱効率向上に寄与している。また、燃焼室内の空間を十分に活用できているため、スモークも低減する。
【0049】
ここで、本実施形態に係る燃料噴射装置1では、コントロールバルブ4は、第1方向に沿って配列され、第2燃料路7bに介在する第1部分4ba及び第2部分4bbを含み、第2部分4bbには、溝部4gが形成されている。第1部分4baは、コントロールバルブ4の移動量が第2移動量未満であるときに、第2燃料路7bに介在して第2燃料路7bを閉塞し、第2部分4bbは、コントロールバルブ4の移動量が第2移動量となったときに、第2燃料路7bに介在し、溝部4gを第2燃料路7bに一致させて第2燃料路7bを開放する。
【0050】
この構成によって、コントロールバルブ4の第1方向に沿った移動量の増減に応じて、第1燃料路7aのみが開放された状態と、第1燃料路7a及び第2燃料路7bが開放された状態とを、簡単な構成により容易に切り替えることが可能となる。
【0051】
また、本実施形態に係る燃料噴射装置1では、コントロールバルブ4は、第1方向に沿って延在する第1軸部4aと、第1方向における底面27s側の第1軸部4aの一端部において第1軸部4aから突出するように設けられた第1フランジ4cと、第1方向における底面27sと反対側の第1軸部4aの一端部において第1軸部4aから突出するように設けられた第2フランジ4dと、を含む。また、調整機構10は、第1フランジ4cと第2フランジ4dとの間において、第1方向に沿って第1軸部4aに対して摺動可能に第1軸部4aに取り付けられたプレート6を有する。また、弾性部材41は、第1フランジ4cとプレート6との間に介在された第1スプリング41aと、第2フランジ4dの第1フランジ4cと反対側の面上に配置された第2スプリング41bと、を含む。そして、第1ソレノイド5aは、第2スプリング41bの弾性力に抗してプレート6を引き付けることにより、プレート6及びコントロールバルブ4を移動させ、第2ソレノイド5bは、第1スプリング41a及び第2スプリング41bの弾性力に抗してコントロールバルブ4を引き付けることにより、プレート6及びコントロールバルブ4を移動させてもよい。
【0052】
このように、第1ソレノイド5aの磁力が作用する部材(プレート6)と、第2ソレノイド5bの磁力が作用する部材(コントロールバルブ4)とを異ならせることで、第1燃料路7aのみが開放された状態と、第1燃料路7a及び第2燃料路7bが開放された状態とを、簡単な構成により容易に切り替えることが可能となる。
【0053】
以上の実施形態は、本発明に係る燃料噴射装置の一態様を説明したものである。したがって、本発明に係る燃料噴射装置は、上記実施形態に係る燃料噴射装置1に限定されることなく、任意に変形され得る。
【0054】
例えば、上記実施形態では、コントロールバルブ4の移動量に応じて、第2燃料路7bの中途に介在されたコントロールバルブ4の一部が第2燃料路7bの開閉が切り替えられる構造について説明した。しかし、第1燃料路7aのみが開放された状態と第1燃料路7a及び第2燃料路7bの両方が開放された状態とを切り替える構造については、上記構造に限定されない。第1ソレノイド5aを使用したときのコントロールバルブ4の移動量と、第2ソレノイド5bを使用したときのコントロールバルブ4の移動量との相違に基づいて、第1燃料路7aのみが開放された状態と第1燃料路7a及び第2燃料路7bの両方が開放された状態とを切り替える任意の構造が採用され得る。
【符号の説明】
【0055】
1…燃料噴射装置、3…ニードル(第1弁体)、4…コントロールバルブ(第2弁体)、4a…第1軸部(軸部)、4ba…第1部分、4bb…第2部分、4c…第1フランジ、4d…第2フランジ、5a…第1ソレノイド、5b…第2ソレノイド、6…プレート、7a…第1燃料路、7b…第2燃料路、10…調整機構、24a…制御室、27…弁室、27s…底面、41…弾性部材、41a…第1スプリング、41b…第2スプリング。