IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TDK株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-圧電デバイス及び音響デバイス 図1
  • 特開-圧電デバイス及び音響デバイス 図2
  • 特開-圧電デバイス及び音響デバイス 図3
  • 特開-圧電デバイス及び音響デバイス 図4
  • 特開-圧電デバイス及び音響デバイス 図5
  • 特開-圧電デバイス及び音響デバイス 図6
  • 特開-圧電デバイス及び音響デバイス 図7
  • 特開-圧電デバイス及び音響デバイス 図8
  • 特開-圧電デバイス及び音響デバイス 図9
  • 特開-圧電デバイス及び音響デバイス 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156477
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】圧電デバイス及び音響デバイス
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/10 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
H04R17/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070972
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】太田 佳生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 美帆
(72)【発明者】
【氏名】坂本 英也
(72)【発明者】
【氏名】三井 拓樹
(72)【発明者】
【氏名】川端 倭佳
【テーマコード(参考)】
5D004
【Fターム(参考)】
5D004AA04
5D004CD02
5D004CD09
5D004FF08
(57)【要約】
【課題】振動特性の劣化を抑制する圧電デバイスを提供する。
【解決手段】
圧電デバイス1は、圧電素子2、振動体3、配線部材4、壁体5、及び樹脂被覆6を含む。振動体3は、圧電素子2が配置されている主面3aを含む。配線部材4は、圧電素子2に接続されている接続部分42を含む。壁体5は、発泡樹脂からなり、主面3a上に、圧電素子2が位置する領域R1を画成する。樹脂被覆6は、領域R1に配置されており、圧電素子2と接続部分42とを覆っていると共に壁体5と接している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子と、
前記圧電素子が配置されている主面を含む振動体と、
前記圧電素子に接続されている接続部分を含む配線部材と、
発泡樹脂からなり、前記主面上に、前記圧電素子が位置する領域を画成する壁体と、
前記領域に配置されており、前記圧電素子と前記接続部分とを覆っていると共に前記壁体と接している樹脂被覆と、を備える、圧電デバイス。
【請求項2】
前記主面に垂直な方向から見た場合に、前記壁体は、前記圧電素子の全周を囲んでいる、請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記主面に垂直な方向から見た場合に、前記壁体は、前記主面の縁よりも内側に位置している、請求項1又は2に記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記樹脂被覆は、シリコーン樹脂からなる、請求項1又は2に記載の圧電デバイス。
【請求項5】
前記壁体は、前記壁体の表面に開口している複数の孔を有する多孔質構造であり、
前記樹脂被覆の一部は、前記複数の孔内に位置している部分を含む、請求項1又は2に記載の圧電デバイス。
【請求項6】
前記壁体は、互いに離間している一対の部分を含み、
前記配線部材は、前記一対の部分の間に位置する部分を含む、請求項1又は2に記載の圧電デバイス。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の圧電デバイスを備える、音響デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、圧電デバイスに関する。本発明の別の態様は、音響デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
知られている圧電デバイスは、圧電素子と、振動体と、配線部材と、壁体と、樹脂被覆と、を含む(たとえば、特許文献1参照)。振動体は、圧電素子が配置されている主面を含む。配線部材は、圧電素子に物理的かつ電気的に接続されている接続部分を含む。壁体は、主面上に、圧電素子が位置する領域を画成する。樹脂被覆は、壁体が画成する領域に配置されていると共に、圧電素子と接続部分とを覆っている。樹脂被覆は、壁体と接している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6016945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような圧電デバイスでは、振動体の振動を受けて壁体が共振することがある。壁体の共振は、振動体の振動に影響を与えることがある。したがって、壁体の共振は、圧電デバイスの振動特性を劣化させるおそれがある。
【0005】
本発明の一つの態様は、振動特性の劣化を抑制する圧電デバイスを提供することを目的とする。本発明の別の態様は、音響特性の劣化を抑制する音響デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様に係る圧電デバイスは、圧電素子と、振動体と、配線部材と、壁体と、樹脂被覆と、を備える。振動体は、圧電素子が配置されている主面を含む。配線部材は、圧電素子に接続されている接続部分を含む。壁体は、発泡樹脂からなり、上記主面上に、圧電素子が位置する領域を画成する。樹脂被覆は、上記領域に配置されており、圧電素子と接続部分とを覆っていると共に壁体と接している。
【0007】
上記一つの態様では、発泡樹脂からなる壁体が、圧電素子の周囲の少なくとも一部を囲んでいる。発泡樹脂からなる壁体は、発泡樹脂の構造に起因して、振動体から伝わる振動を減衰させる。したがって、振動体が振動する場合でも、壁体は、振動しがたい。すなわち、壁体は、共振しがたい。上記一つの態様では、壁体の共振が振動体の振動に影響を与えがたい。この結果、上記一つの態様は、振動特性の劣化を抑制する。
【0008】
上記一つの態様では、主面に垂直な方向から見た場合に、壁体は、圧電素子の全周を囲んでいてもよい。
壁体が、上述したように、圧電素子の全周を囲んでいる構成は、圧電素子が位置する領域を確実に画成する。上記構成は、樹脂被覆を形成する際に、樹脂被覆が形成される領域を確実に規定する。したがって、上記構成では、樹脂被覆が確実かつ容易に形成され得る。
【0009】
上記一つの態様では、主面に垂直な方向から見た場合に、壁体は、主面の縁よりも内側に位置していてもよい。
樹脂被覆は、主面上に画成される上記領域に配置される。したがって、樹脂被覆は、振動体を拘束するおそれがある。振動体の拘束は、振動体の振動を阻害する傾向がある。
壁体が、上述したように、主面の縁よりも内側に位置する構成は、樹脂被覆が配置される領域を減少し得る。したがって、樹脂被覆は、振動体を拘束しがたい。この結果、上記構成は、振動特性の劣化をより一層抑制する。
【0010】
上記一つの態様では、樹脂被覆は、シリコーン樹脂からなってもよい。
樹脂被覆がシリコーン樹脂からなる構成では、樹脂被覆は、振動体を拘束しがたい。したがって、上記構成は、振動特性の劣化をより一層抑制する。
【0011】
上記一つの態様では、壁体は、壁体の表面に開口している複数の孔を有する多孔質構造であってもよい。樹脂被覆の一部は、複数の孔内に位置している部分を含んでもよい。
樹脂被覆の一部が、壁体における複数の孔内に位置している部分を含む構成は、壁体と樹脂被覆との物理的な接続を強固にする。したがって、上記構成は、壁体と樹脂被覆との剥離を抑制する。
【0012】
上記一つの態様では、壁体は、互いに離間している一対の部分を含んでもよい。配線部材は、上記一対の部分の間に位置する部分を含んでもよい。
配線部材が、壁体に含まれる上記一対の部分の間に位置する部分を含む構成では、配線部材の厚みが圧電デバイスの厚みに影響を与えない。したがって、上記構成は、圧電デバイスを低背化し得る。
【0013】
本発明の別の態様に係る音響デバイスは、上記一つの態様に係る圧電デバイスを備える。
壁体の共振が圧電デバイスに生じると、ノイズが音響デバイスからの音響出力に重畳するおそれがある。ノイズは、音響特性を劣化させる。
上記別の態様では、上述したように、壁体が共振しがたい。したがって、ノイズが音響デバイスからの出力に重畳しがたい。この結果、上記別の態様は、音響特性の劣化を抑制する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一つの態様は、振動特性の劣化を抑制する圧電デバイスを提供する。本発明の別の態様は、音響特性の劣化を抑制する音響デバイスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一実施形態に係る圧電デバイスを示す平面図である。
図2図2は、本実施形態に係る圧電デバイスを示す斜視図である。
図3図3は、本実施形態に係る圧電デバイスの断面構成を示す図である。
図4図4は、本実施形態に係る圧電デバイスの断面構成を示す図である。
図5図5は、壁体と樹脂被覆との断面構成を示す図である。
図6図6は、本実施形態の一変形例に係る圧電デバイスを示す平面図である。
図7図7は、本変形例に係る圧電デバイスの製造過程を示す図である。
図8図8は、本実施形態の別の一変形例に係る圧電デバイスの断面構成を示す図である。
図9図9は、壁体と配線部材とを示す図である。
図10図10は、別の一実施形態に係る音響デバイスの断面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0017】
(圧電デバイス)
図1図4を参照して、本実施形態に係る圧電デバイス1の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る圧電デバイスを示す平面図である。図2は、本実施形態に係る圧電デバイスを示す斜視図である。図3及び図4は、本実施形態に係る圧電デバイスの断面構成を示す図である。図3及び図4では、断面を表すハッチングが省略されている。
【0018】
図1図4に示されるように、圧電デバイス1は、圧電素子2と、振動体3と、配線部材4と、壁体5と、樹脂被覆6と、を備える。圧電デバイス1は、たとえば、平面視で、多角形状を呈している。本実施形態では、圧電デバイス1は、矩形状を呈している。たとえば、圧電デバイス1は、平面視で、方向Xに延在する一対の長辺と、方向Yに延在する一対の短辺とを含む、矩形状を呈する。本明細書では、矩形状は、角が取られている形状、又は、角が丸められている形状を含む。圧電デバイス1は、方向Zに厚みを有する。方向Xと方向Yと方向Zとは、互いに直交している。圧電デバイス1は、たとえば、音響デバイスに適用できる。
【0019】
圧電素子2は、図3及び図4に示されるように、圧電素体21を含む。圧電素体21は、たとえば、直方体形状を呈している。圧電素体21は、たとえば、方向Xに長手方向を有し、方向Yに短手方向を有し、方向Zに厚み方向を有する。圧電素体21の厚み方向は、圧電デバイス1の厚み方向と一致する。直方体形状は、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、又は、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状を含む。
圧電素体21は、互いに対向している一対の面21a、21bを含む。本実施形態では、一対の面21a、21bは、方向Zに互いに対向している。各面21a,21bは、方向Xに延在する一対の長辺と、方向Yに延在する一対の短辺とを含む、矩形状を呈する。
方向Xでの圧電素体21の長さは、20mm以上70mm以下であってもよい。方向Yでの圧電素体21の長さは、5mm以上30mm以下であってもよい。Z方向での圧電素体21の長さ、すなわち、圧電素体21の厚みは、0.2mm以上0.6mm以下であってもよい。圧電素体21の厚みは、部分的に異なっていてもよく、均一であってもよい。
【0020】
圧電素体21は、複数の圧電体層が積層されて構成されている。圧電素体21は、積層されている複数の圧電体層を含む。本実施形態では、圧電素体21は、五つの圧電体層を含む。圧電素体21では、複数の圧電体層が積層されている方向が方向Zと一致する。本実施形態では、圧電素子2は積層型圧電素子である。
複数の圧電体層は、圧電材料からなる。本実施形態では、各圧電体層は、圧電セラミック材料からなる。圧電セラミック材料は、たとえば、PZT[Pb(Zr、Ti)O]、PT(PbTiO)、PLZT[(Pb,La)(Zr、Ti)O]、又はチタン酸バリウム(BaTiO)を含む。各圧電体層は、たとえば、上述した圧電セラミック材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。実際の圧電素体21では、各圧電体層は、各圧電体層の間の境界が認識できない程度に一体化されている。
【0021】
圧電素子2は、図3及び図4に示されるように、圧電素体21内に配置されている複数の内部電極22を含む。内部電極22は、複数の圧電体層のうち対応する圧電体層の間に配置されている。複数の内部電極22は、圧電素体21の表面には露出していない。各内部電極22は、導電性材料からなる。この導電性材料は、たとえば、Ag、Pd、又はAg-Pd合金を含む。各内部電極22は、たとえば、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。
複数の内部電極22は、複数の内部電極22aと、複数の内部電極22bとを含む。複数の内部電極22aと複数の内部電極22bとは、方向Zで互いに隣り合うように、交互に配置されている。内部電極22aと内部電極22bとは、方向Zにおいて異なる位置(層)に配置されている。内部電極22aと内部電極22bとは、方向Zに間隔を有して互いに対向している。互いに隣り合う内部電極22aと内部電極22bとの間には、少なくとも一つの圧電体層が位置する。
【0022】
圧電素子2は、圧電素体21上に配置されている複数の外部電極23を含む。複数の外部電極23は、面21a上に位置している。各外部電極23は、導電性材料からなる。この導電性材料は、たとえば、Ag、Pd、又はAg-Pd合金を含む。各外部電極23は、たとえば、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。
複数の外部電極23は、外部電極23aと外部電極23bとを含む。本実施形態では、複数の外部電極23は、二つの外部電極23a,23bを含む。外部電極23aと外部電極23bとは、面21a上において、互いに離間している。外部電極23aと外部電極23bとは、方向Xに配置されている。
【0023】
圧電素子2は、複数のビア導体24と複数の接続導体25とを含む。複数のビア導体24と複数の接続導体25とは、圧電素体21内に配置されている、ビア導体24は、複数の圧電体層のうち対応する圧電体層に形成されている。接続導体25は、複数の圧電体層のうち対応する圧電体層の間に配置されている。各ビア導体24及び各接続導体25は、導電性材料からなる。この導電性材料は、たとえば、Ag、Pd、又はAg-Pd合金を含む。各ビア導体24及び各接続導体25は、たとえば、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。
複数のビア導体24は、複数のビア導体24aと複数のビア導体24bとを含む。複数の接続導体25は、複数の接続導体25aと複数の接続導体25bとを含む。接続導体25aは、内部電極22bと同じ層に位置する。接続導体25aは、同じ層に位置する内部電極22bから離間している。接続導体25bは、内部電極22aと同じ層に位置する。接続導体25bは、同じ層に位置する内部電極22aから離間している。ビア導体24aと接続導体25aとは、物理的かつ電気的に接続されている。外部電極23aは、ビア導体24a及び接続導体25aを通して、複数の内部電極22aと電気的に接続されている。ビア導体24bと接続導体25bとは、物理的かつ電気的に接続されている。外部電極23bは、ビア導体24b及び接続導体25bを通して、複数の内部電極22bと電気的に接続されている。複数の外部電極23は、複数の内部電極22のうち対応する内部電極22と電気的に接続されている。
【0024】
振動体3は、互いに対向している一対の主面3a,3bを含む。本実施形態では、一対の主面3a、3bは、方向Zに互いに対向している。方向Zは、各主面3a、3bに垂直な方向である。振動体3は、たとえば、平面視で、矩形状を呈する。各主面3a,3bは、方向Xに延在する一対の長辺と、方向Yに延在する一対の短辺とを含む、矩形状を呈する。主面3aは、縁3aを含む。縁3aは、たとえば、主面3aが呈する矩形状に含まれる一対の長辺と一対の短辺とにより規定される。本実施形態では、振動体3は、板状の部材である。振動体3は、たとえば、金属からなる。振動体3は、たとえば、Ni-Fe合金、Ni、黄銅、又はステンレス鋼を含む。振動体3は、合成樹脂からなっていてもよい。振動体3が合成樹脂からなる場合、振動体3は、たとえば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂)、塩化ビニル系樹脂、又は、PET樹脂(ポリエチレンテレフタラート樹脂)を含む。
方向Xでの振動体3の長さは、30mm以上80mm以下であってもよい。方向Yでの振動体3の長さは、15mm以上60mm以下であってもよい。Z方向での振動体3の長さ、すなわち、振動体3の厚みは、0.1mm以上0.3mm以下であってもよい。振動体3の厚みは、部分的に異なっていてもよく、均一であってもよい。
【0025】
圧電素子2は、振動体3の主面3a上に配置されている。圧電素体21の面21bと、主面3aとが、方向Zに互いに対向している。圧電素子2は、たとえば、樹脂層7によって振動体3に接合されている。樹脂層7は、面21bと主面3aとの間に位置している。面21bと主面3aとが、樹脂層7によって接合されている。主面3aは、圧電素子2に覆われている領域と、圧電素子2から露出している領域と、を含む。方向Zから見て、圧電素子2は、振動体3(主面3a)の略中央に位置している。樹脂層7は、合成樹脂からなる。この場合、合成樹脂は、たとえば、エポキシ樹脂又はアクリル系樹脂を含む。樹脂層7は、導電性のフィラーを含んでおらず、電気絶縁性を有している。
【0026】
配線部材4は、圧電素子2に物理的かつ電気的に接続されている。本実施形態では、配線部材4は、複数のリード線41を含む。各リード線41は、絶縁被覆が形成された導線を含む。各リード線41の一端では、導線が絶縁被覆から露出している。配線部材4は、複数のリード線41の代わりに、フレキシブルプリント基板(FPC)を含んでもよい。
複数のリード線41は、たとえば、リード線41aとリード線41bとを含む。リード線41aは、導線が絶縁被覆から露出した一端41aを含む。リード線41aは、一端41aにおいて、外部電極23aに物理的かつ電気的に接続されている。リード線41bは、導線が絶縁被覆から露出した一端41bを含む。リード線41bは、導線が絶縁被覆から露出した一端41bにおいて、外部電極23bに物理的かつ電気的に接続されている。
複数のリード線41のそれぞれは、導線が絶縁被覆から露出した一端において、複数の外部電極23のうち対応する外部電極23と物理的かつ電気的に接続されている。互いに対応するリード線41と外部電極23とは、たとえば、はんだ45により、物理的かつ電気的に接続されている。互いに対応するリード線41と外部電極23とは、導電性樹脂により、物理的かつ電気的に接続されてもよい。リード線41aの一端41aとリード線41bの一端41b、すなわち、複数のリード線41のそれぞれに含まれる上記一端は、圧電素子2に物理的かつ電気的に接続されている接続部分42を含む。したがって、配線部材4は、接続部分42を含む。
【0027】
壁体5は、振動体3の主面3a上に配置されている。壁体5は、主面3aにおける、圧電素子2から露出している上記領域上に配置されている。壁体5は、たとえば、枠状の部材である。本実施形態では、壁体5は、矩形状の輪郭を含む枠状を呈している。壁体5は、互いに対向している一対の面5a,5bと、互いに対向している一対の面5c,5dを含む。本実施形態では、一対の面5a,5bは、方向Zで互いに対向しており、一対の面5c,5dは、方向Zに直交する方向で互いに対向している。一対の面5c,5dは、面5aと面5bとを連結している。面5cは、壁体5の内周面を含み、面5dは、壁体5の外周面を含む。
壁体5の面5bと、主面3aとが、方向Zに互いに対向している。壁体5は、たとえば、接合部材8によって振動体3に接続されている。接合部材8は、面5bと主面3aとの間に位置している。面5bと主面3aとが、接合部材8によって接続されている。接合部材8は、たとえば、互いに対向する面が粘着性を有する、テープ状の部材からなる。接合部材8は、導電性のフィラーを含んでおらず、電気絶縁性を有している。
方向Zでの一対の面5a,5bの間隔、すなわち、壁体5の厚みは、0.5mm以上2mm以下であってもよい。方向Zに直交する方向での一対の面5c,5dの間隔は、すなわち、壁体5の幅は、1mm以上3mm以下であってもよい。
【0028】
壁体5は、一対の部分51と、一対の部分52と、複数の部分53とを含む。一対の部分51のそれぞれは、縁3aを規定する一対の長辺のうち対応する長辺に沿っている。一対の部分51は、方向Yで、互いに離間していると共に互いに対向している。各部分51は、方向Xに延在している。一対の部分52のそれぞれは、縁3aを規定する一対の短辺のうち対応する短辺に沿っている。一対の部分52は、方向Xで、互いに離間していると共に互いに対向している。各部分52は、方向Yに延在している。複数の部分53のそれぞれは、壁体5の複数の角のうち対応する角に位置している。部分53は、部分51と部分52とを連結している。一対の部分51のそれぞれは、一対の部分52と間接的に連結されている。一対の部分51のそれぞれは、一対の部分52と直接的に連結されもよい。各部分51,52,53は、一対の面5a,5bと一対の面5c,5dとを含む。
方向Z、すなわち、主面3aに垂直な方向から見た場合に、壁体5(各部分51,52,53)は、主面3aの縁3aよりも内側に位置している。主面3aに垂直な方向から見た場合に、壁体5(各部分51,52,53)の面5dは、主面3aの縁3aから離間している。
【0029】
壁体5は、壁体5の内側に、領域R1を画成している。壁体5の面5cが、領域R1を画成している。領域R1は、主面3a上に、画成されている。領域R1は、壁体5に囲まれている。圧電素子2は、領域R1に位置している。領域R1は、方向Zから見て、矩形状を呈している。領域R1の厚みは、たとえば、壁体5の厚みと同等である。方向Zから見て、壁体5は、圧電素子2と、縁3aとの間に位置している。方向Z、すなわち、主面3aに垂直な方向から見た場合に、壁体5は、圧電素子2の少なくとも一部を囲んでいる。本実施形態では、主面3aに垂直な方向から見た場合に、壁体5は、圧電素子2の全周を囲んでいる。
【0030】
樹脂被覆6は、領域R1に配置されている。方向Zから見て、樹脂被覆6は、領域R1の全体に位置している。樹脂被覆6は、圧電素子2、振動体3、及び壁体5に接している。樹脂被覆6は、圧電デバイス1外に露出している面6aと、面6aと略対向している面6bとを含む。面6aと面6bとは、方向Zで互いに略対向している。面6bは、圧電素子2に接している領域と、振動体3に接している領域とを含む。樹脂被覆6には、圧電素子2に対応する形状を有する窪みが形成されている。圧電素子2は、振動体3と樹脂被覆6との間に位置している。圧電素子2は、面21bを除き、樹脂被覆6に、直接的にほぼ覆われている。樹脂被覆6は、はんだ45を直接的に覆っている。樹脂被覆6は、接続部分42を間接的に覆っている。
方向Zでの主面3aと面6aとの間隔は、方向Zでの主面3aと面21aとの間隔より大きい。方向Zでの主面3aと面6aとの間隔は、主面3aと、主面3aに平行であり、かつ、はんだ45の先端に接する仮想面との、方向Zでの間隔より大きい。方向Zでの主面3aと面6aとの間隔は、樹脂被覆6の最大厚みであってもよい。
【0031】
樹脂被覆6は、一対の面6cと一対の面6dとを含む。一対の面6cと一対の面6dとは、面6aと面6bとを連結している。一対の面6cと一対の面6dとは、壁体5と接している。一対の面6cは、方向Yで互いに対向している。一対の面6cのそれぞれは、一対の部分51のうち対応する部分51と接している。一対の面6dは、方向Xで互いに対向している。一対の面6dのそれぞれは、一対の部分52のうち対応する部分52と接している。樹脂被覆6は、部分53と接する面も含む。主面3aに垂直な方向から見た場合に、樹脂被覆6は、主面3aの縁3aよりも内側に位置している。一対の面6cは、方向Yでの、樹脂被覆6の端を規定する。一対の面6dは、方向Xでの、樹脂被覆6の端を規定する。
【0032】
図3及び図4に示されるように、本実施形態では、方向Zでの主面3aと面6aとの間隔は、方向Zでの主面3aと面5aとの最小間隔より小さい。方向Zでの主面3aと面6aとの間隔は、方向Zでの主面3aと面5aとの最小間隔より大きくてもよい。この場合、樹脂被覆6が、面5aの少なくとも一部上に位置していてもよい。すなわち、樹脂被覆6が、面5aの少なくとも一部を覆っていてもよい。方向Zでの主面3aと面6aとの間隔は、方向Zでの主面3aと面5aとの最小間隔と同等であってもよい。方向Zでの主面3aと面6aとの間隔は、0.5mm以上2mm以下であってもよい。
【0033】
壁体5は、図5にも示されるように、発泡樹脂からなる。壁体5は、たとえば、連続気泡構造体又は半独立半連続気泡構造体を含む。壁体5は、たとえば、発泡ポリウレタンからなる。壁体5は、壁体5の表面に開口している複数の孔を有する多孔質構造である。図5では、面5cに開口している複数の孔54が図示されている。面5cには、複数の孔54に起因する複数の窪みが形成されている。図5は、壁体と樹脂被覆との断面構成を示す図である。図5では、樹脂被覆6にハッチングが付されている。図示は省略するが、面5dにも、複数の孔が開口していてもよい。面5dにも、複数の孔に起因する複数の窪みが形成されていてもよい。
樹脂被覆6の一部は、複数の孔54内に位置している部分61を含む。部分61は、面5cに形成されている複数の窪み内に位置している。樹脂被覆6は、たとえば、シリコーン樹脂からなる。
壁体5(発泡樹脂)及び樹脂被覆6の各硬度は、例えば、引張強度を用いて規定することができる。例えば、硬度は、引張強度が高いほど高い傾向がある。壁体5の引張強度は、例えば、0.5MPaであってもよい。樹脂被覆6の引張強度は、例えば、1.5MPaであってもよい。
【0034】
次に、圧電デバイス1の製造過程を説明する。圧電デバイス1の製造過程は、たとえば、圧電素子2が配置されている振動体3と、壁体5とを準備することと、壁体5を振動体3に接続することと、樹脂被覆6を形成することとを含む。
圧電素子2が配置されている振動体3を準備することは、配線部材4を圧電素子2に電気的かつ物理的に接続することを含んでもよい。圧電素子2が配置されている振動体3を準備することは、樹脂層7によって圧電素子2と振動体3とを接合することを含んでもよい。
壁体5を振動体3に接続することは、領域R1を画成することを含む。壁体5を振動体3に接続することは、接合部材8によって振動体3と壁体5とを接続することを含んでもよい。
樹脂被覆6を形成することは、領域R1に未硬化の樹脂を付与することと、付与された未硬化の樹脂を硬化することとを含んでもよい。この場合、壁体5は、未硬化の樹脂を付与する領域を規定する。硬化した樹脂が、樹脂被覆6を構成する。未硬化の樹脂は、複数の孔54内に浸入してもよい。部分61は、たとえば、複数の孔54内に浸入した未硬化の樹脂が硬化することにより形成される。
【0035】
配線部材4は、図1及び図4に示されるように、領域R1に位置する部分と、壁体5と振動体3との間に位置する部分と、壁体5の外側に位置する部分と、を含む。配線部材4は、壁体5と振動体3との間に位置する上記部分において、接合部材8によって壁体5に接続されている。配線部材4は、壁体5が接合部材8によって振動体3に接続されるときに、振動体3に位置決めされる。配線部材4は、壁体5と振動体3との間に位置する上記部分において、振動体3に間接的に固定される。配線部材4は、樹脂被覆6が領域R1に形成されるときに、樹脂被覆6によって振動体3に接続される。配線部材4は、領域R1に位置する上記部分において、振動体3に直接的に固定される。樹脂被覆6は、配線部材4の、領域R1に位置する上記部分を覆っている。配線部材4は、配線部材4における、壁体5の外側に位置する上記部分は、たとえば、方向Yに延在している。
【0036】
たとえば、極性が異なる電圧が、配線部材4を通して、外部電極23aと外部電極23bとに印加されると、内部電極22aと内部電極22bとの間で電界が発生する。圧電体層における、内部電極22aと内部電極22bとの間に位置する領域が、圧電的に活性な領域となり、圧電的に活性な領域に変位が発生する。たとえば、圧電素子2は、外部電極23a,23bに交流電圧が印加されると、印加された交流電圧の周波数に応じて伸縮を繰り返す。圧電素子2と振動体3とは接合されている。したがって、振動体3は、圧電素子2における伸縮の繰り返しに応じて、圧電素子2と一体に撓み振動を繰り返す。
【0037】
圧電デバイス1では、発泡樹脂からなる壁体5が、圧電素子2が位置する領域R1を画成している。壁体5が、圧電素子2の周囲の少なくとも一部を囲んでいる。発泡樹脂からなる壁体5は、発泡樹脂の構成に起因して、振動体3から伝わる振動を減衰させる。したがって、振動体3が振動する場合でも、壁体5は振動しがたい。すなわち、壁体5は共振しがたい。圧電デバイス1では、壁体5の共振が振動体3の振動に影響を与えがたい。この結果、圧電デバイス1は、振動特性の劣化を抑制する。
壁体が金属又は硬質ゴムからなる構成では、振動体から伝わる振動を受けて壁体が振動するおそれがある。したがって、壁体が金属又は硬質ゴムからなる構成は、圧電デバイスの振動特性を劣化させるおそれがある。
【0038】
圧電デバイス1では、主面3aに垂直な方向から見た場合に、壁体5が、圧電素子2の全周を囲んでいる。
壁体5が、上述したように、圧電素子2の全周を囲んでいる構成は、領域R1を確実に画成する。上記構成は、樹脂被覆6を形成する際に、樹脂被覆6が形成される領域を確実に規定する。したがって、上記構成では、樹脂被覆6が確実かつ容易に形成され得る。
【0039】
圧電デバイス1では、主面3aに垂直な方向から見た場合に、壁体5は、主面3aの縁3aよりも内側に位置している。
樹脂被覆6は、領域R1に配置される。したがって、樹脂被覆6は、振動体3を拘束するおそれがある。振動体3の拘束は、振動体3の振動を阻害する傾向がある。
壁体5が、上述したように、縁3aよりも内側に位置する構成は、樹脂被覆6が配置される領域R1を減少し得る。したがって、樹脂被覆6は、振動体3を拘束しがたい。この結果、上記構成は、振動特性の劣化をより一層抑制する。
【0040】
圧電デバイス1では、樹脂被覆6が、シリコーン樹脂からなる。
樹脂被覆6がシリコーン樹脂からなる構成では、樹脂被覆6は、振動体3を拘束しがたい。したがって、上記構成は、振動特性の劣化をより一層抑制する。
シリコーン樹脂は、溶剤耐性に優れている。したがって、シリコーン樹脂は、劣化しがたい。
たとえば、樹脂被覆6がアクリル樹脂からなる構成は、以下のような問題点を含むおそれがある。
アクリル樹脂の溶剤耐性は、シリコーン樹脂の溶剤耐性に劣るおそれがある。したがって、アクリル樹脂は、使用環境の影響を受けて、劣化する傾向がある。
一般に、アクリル樹脂は、シリコーン樹脂より固い。したがって、アクリル樹脂からなる樹脂被覆は、振動体3を拘束する傾向がある。すなわち、アクリル樹脂からなる樹脂被覆は、振動特性を劣化させる傾向がある。
【0041】
圧電デバイス1では、壁体5は、壁体5の表面(面5c)に開口している複数の孔54を有する多孔質構造である。樹脂被覆6の一部は、複数の孔54内に位置している部分61を含む。
樹脂被覆6の一部が、壁体5における複数の孔54内に位置している部分61を含む構成は、壁体5と樹脂被覆6との物理的な接続を強固にする。したがって、上記構成は、壁体5と樹脂被覆6との剥離を抑制する。
【0042】
次に、図6を参照して、本実施形態の一変形例に係る圧電デバイス1Aの構成を説明する。図6は、本実施形態の一変形例に係る圧電デバイスを示す平面図である。
圧電デバイス1Aは、概ね、上述した圧電デバイス1と類似又は同じであるが、圧電デバイス1Aは、壁体5の構成に関して、圧電デバイス1と相違する。以下、圧電デバイス1と圧電デバイス1Aとの相違点を主として説明する。
【0043】
圧電デバイス1Aは、圧電デバイス1と同様に、圧電素子2と、振動体3と、配線部材4と、壁体5と、樹脂被覆6と、を備える。
壁体5は、一対の部分51を含む。壁体5は、一対の部分52と、複数の部分53とを含まない。たとえば、圧電デバイス1Aでは、壁体5は、一対の部分51のみを含む。
壁体5は、方向Yのみにおいて、領域R1を画成している。主面3aに垂直な方向から見た場合に、壁体5は、圧電素子2の周囲の少なくとも一部を囲んでいる。
一対の面6cのそれぞれは、一対の部分51のうち対応する部分51と接している。主面3aに垂直な方向から見た場合に、一対の面6dのそれぞれの位置は、縁3aを規定する一対の短辺のうち対応する短辺の位置と略一致している。一対の面6dは、圧電デバイス1外に露出している。
【0044】
次に、図7を参照して、圧電デバイス1Aの製造過程を説明する。図7は、本変形例に係る圧電デバイスの製造過程を示す図である。圧電デバイス1Aの製造過程は、たとえば、母体振動体BVと母体壁体BWとを準備することと、母体壁体BWを母体振動体BVに接続することと、樹脂被覆RCを形成することと、母体振動体BVを切断することとを含む。
母体振動体BVは、複数の部分BVaを含む。複数の部分BVaのそれぞれは、上述した振動体3に対応する。複数の部分BVaは、たとえば、方向Xで連続している。母体振動体BVを準備することは、複数の部分BVaのそれぞれに圧電素子2を配置することを含んでもよい。母体振動体BVを準備することは、配線部材4を圧電素子2に電気的かつ物理的に接続することを含んでもよく、樹脂層7によって圧電素子2と部分BVaとを接合することを含んでもよい。
母体壁体BWは、複数の部分BWaを含む。複数の部分BWaのそれぞれは、上述した壁体5(部分51)に対応する。複数の部分BWaは、たとえば、方向Xで連続している。母体壁体BWは、たとえば、枠状を呈している(図示を省略)。母体壁体BWを母体振動体BVに接続することは、複数の領域R1が連続している領域を母体振動体BV上に画成することを含む。複数の領域R1は、たとえば、方向Xで連続している。母体壁体BWを母体振動体BVに接続することは、上述した接合部材8によって母体振動体BVと母体壁体BWとを接続することを含んでもよい。
樹脂被覆RCを形成することは、複数の領域R1が連続している領域に未硬化の樹脂を付与することと、付与された未硬化の樹脂を硬化することとを含んでもよい。この場合、母体壁体BWは、未硬化の樹脂を付与する領域を規定する。硬化した樹脂が、樹脂被覆RCを構成する。本製造過程でも、未硬化の樹脂は、図5に示されるように、上述した複数の孔54内に浸入してもよい。
母体振動体BVを切断することは、母体振動体BVを個片化することを含む。母体振動体BVを切断することは、切断線CLに沿って、母体振動体BVを樹脂被覆RCと共に切断することを含んでもよい。切断線CLは、複数の部分BVaのうち互いに隣り合う部分BVaの間に位置している。本製造過程により、複数の圧電デバイス1Aが得られる。
【0045】
圧電デバイス1Aでは、壁体5が、圧電素子2の周囲の少なくとも一部を囲んでいる。したがって、振動体3が振動する場合でも、壁体5は振動しがたい。すなわち、壁体5は共振しがたい。圧電デバイス1Aでは、壁体5の共振が振動体3の振動に影響を与えがたい。この結果、圧電デバイス1Aは、振動特性の劣化を抑制する。
【0046】
次に、図8及び図9を参照して、本実施形態の別の一変形例に係る圧電デバイス1Bの構成を説明する。図8は、本実施形態の別の一変形例に係る圧電デバイスの断面構成を示す図である。図9は、壁体と配線部材とを示す図である。図9では、説明のため、配線部材4に、ハッチングが付されている。
圧電デバイス1Bは、概ね、上述した圧電デバイス1と類似又は同じであるが、圧電デバイス1Bは、壁体5の構成に関して、圧電デバイス1と相違する。以下、圧電デバイス1と圧電デバイス1Bとの相違点を主として説明する。
【0047】
圧電デバイス1Bは、圧電デバイス1と同様に、圧電素子2と、振動体3と、配線部材4と、壁体5と、樹脂被覆6と、を備える。
図9の(a)に示されるように、壁体5には、貫通孔THが形成されている。圧電デバイス1Bでは、貫通孔THは、一つの部分51に形成されている。壁体5(部分51)は、互いに離間している一対の部分56a,56bを含む。一対の部分56a,56bは、方向Xで離間している。一対の部分56a,56bは、貫通孔THを画成する。
配線部材4は、一対の部分56a,56bの間に位置する部分43を含む。部分43は、貫通孔TH内に位置している。配線部材4は、貫通孔THに挿通されている。
圧電デバイス1Bでは、配線部材4の厚みが圧電デバイス1の厚みに影響を与えない。したがって、本変形例は、圧電デバイス1Bを低背化し得る。
【0048】
図9の(b)に示されるように、部分51は、複数の部分56a,56bに分割されていてもよい。部分51は、たとえば、二つの部分56a,56bに分割されている。部分56aと部分56bとは、方向Xに配置されている。部分56aと部分56bとは、方向Xで離間している。部分56aと部分56bとの間には、空間SPが形成されている。すなわち、部分56aと部分56bとは、空間SPを画成している。配線部材4に含まれる部分43は、空間SP内に位置している。配線部材4は、空間SPに挿通されている。
【0049】
図9の(c)に示されるように、壁体5には、窪みREが形成されていてもよい。窪みREは、一つの部分51に形成されている。壁体5(部分51)は、互いに離間している一対の部分56a,56bを含む。窪みREは、振動体3(主面3a)との間に、空間SPを画成している。図9の(c)に示された構成でも、配線部材4に含まれる部分43は、空間SP内に位置している。配線部材4は、空間SPに挿通されている。
【0050】
(音響デバイス)
図10を参照して、別の一実施形態に係る音響デバイス10について説明する。図10は、別の一実施形態に係る音響デバイスの断面構成を示す図である。
【0051】
音響デバイス10は、圧電デバイス1を備える。音響デバイス10は、圧電デバイス1の他に、たとえば、構造体12を備える。圧電デバイス1は、構造体12に配置されている。構造体12は、圧電デバイス1が配置されている面12aを含む。面12aは、方向Zで主面3bと対向している。圧電デバイス1は、たとえば、接合部材11によって構造体12に接続されている。接合部材11は、主面3bと面12aとの間に位置している。主面3bと面12aとが、接合部材11によって接続されている。接合部材11は、たとえば、互いに対向する面が粘着性を有する、テープ状の部材からなる。接合部材11は、導電性のフィラーを含んでおらず、電気絶縁性を有している。接合部材11は、樹脂層からなっていてもよい。接合部材11が樹脂層からなる場合、この樹脂層は、たとえば、エポキシ樹脂又はアクリル系樹脂を含む。構造体12は、たとえば、ディスプレイパネル、電子機器の筐体、又は車両のボディパネルを含む。
【0052】
圧電デバイス1の振動は、構造体12に伝わる。構造体12は、圧電デバイス1の振動に応答して、振動する。構造体12は、圧電デバイス1の振動に応答して、音響出力を生成する。
壁体5の共振が圧電デバイス1に生じると、ノイズが音響デバイス10からの音響出力に重畳するおそれがある。ノイズは、音響特性を劣化させる。
これに対し、音響デバイス10では、上述したように、壁体5が共振しがたい。したがって、ノイズが音響デバイス10からの音響出力に重畳しがたい。この結果、音響デバイス10は、音響特性の劣化を抑制する。
【0053】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明してきた。しかしながら、本発明は必ずしも上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0054】
壁体5は、方向Xのみにおいて、領域R1を画成していてもよい。壁体5が、方向Xのみにおいて、領域R1を画成している構成では、壁体5は、たとえば、一対の部分52のみを含む。この構成でも、主面3aに垂直な方向から見た場合に、壁体5は、圧電素子2の周囲の少なくとも一部を囲んでいる。
壁体5は、一つの部分51と、この部分51に連結される一対の部分52を含んでもよい。壁体5は、一つの部分52と、この部分52に連結される一対の部分51を含んでもよい。壁体5は、一対の部分51及び一対の部分52のうち一つのみを含んでもよい。
配線部材4は、壁体5と振動体3との間に位置することなく、壁体5上に位置していてもよい。
圧電デバイス1は、たとえば、平面視で、円形状を呈していてもよい。
圧電素子2は、複数の内部電極22を含まなくてもよい。
【0055】
上述した実施形態及び変形例の記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す態様の開示を含んでいる。
(付記1)
圧電素子と、
前記圧電素子が配置されている主面を含む振動体と、
前記圧電素子に接続されている接続部分を含む配線部材と、
発泡樹脂からなり、前記主面上に、前記圧電素子が位置する領域を画成する壁体と、
前記領域に配置されており、前記圧電素子と前記接続部分とを覆っていると共に前記壁体と接している樹脂被覆と、を備える、圧電デバイス。
(付記2)
前記主面に垂直な方向から見た場合に、前記壁体は、前記圧電素子の全周を囲んでいる、付記1に記載の圧電デバイス。
(付記3)
前記主面に垂直な方向から見た場合に、前記壁体は、前記主面の縁よりも内側に位置している、付記1又は2に記載の圧電デバイス。
(付記4)
前記樹脂被覆は、シリコーン樹脂からなる、付記1~3のいずれか一つに記載の圧電デバイス。
(付記5)
前記壁体は、前記壁体の表面に開口している複数の孔を有する多孔質構造であり、
前記樹脂被覆の一部は、前記複数の孔内に位置している部分を含む、付記1~4のいずれか一つに記載の圧電デバイス。
(付記6)
前記壁体は、互いに離間している一対の部分を含み、
前記配線部材は、前記一対の部分の間に位置する部分を含む、付記1~5のいずれか一つに記載の圧電デバイス。
(付記7)
付記1~6の何れかに記載の圧電デバイスを備える、音響デバイス。
【符号の説明】
【0056】
1,1A,1B…圧電デバイス、2…圧電素子、3…振動体、3a…振動体の主面、4…配線部材、5…壁体、6…樹脂被覆、10…音響デバイス、42…接続部分、R1…圧電素子が位置する領域。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10