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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156480
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】直動案内装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/06 20060101AFI20241029BHJP
   F16C 33/76 20060101ALI20241029BHJP
   F16J 15/16 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
F16C29/06
F16C33/76 Z
F16J15/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070978
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】多治見 秀幸
【テーマコード(参考)】
3J043
3J104
3J216
【Fターム(参考)】
3J043AA11
3J043CB13
3J104AA03
3J104AA23
3J104AA36
3J104AA65
3J104AA69
3J104AA74
3J104AA76
3J104AA77
3J104BA62
3J104CA01
3J104CA11
3J104CA13
3J104DA04
3J104DA05
3J216AA02
3J216AA16
3J216BA01
3J216CA01
3J216CA04
3J216CB19
3J216CC70
3J216DA02
3J216DA11
(57)【要約】
【課題】スライダ内部の潤滑剤漏出を抑制し、長期に亘り潤滑性を維持することが可能な直動案内装置を提供する。
【解決手段】直動案内装置は、転動体と、前記転動体の転動溝が形成された案内レールと、前記案内レールの転動溝とともに前記転動体の転走路をなす転動溝と、前記転走路を転動した前記転動体を循環させるための戻し路が形成されたスライダ本体と、前記転走路と前記戻し路とを連通する方向転換路が形成されており、前記スライダ本体の両端に配置される一対のエンドキャップとを有し、前記エンドキャップは、前記転走路の前記転動体をすくい上げて前記方向転換路へ導くために、前記案内レールの転動溝へ向かって突出したタング部を備え、前記タング部に、前記転動溝に接するシール部を設けている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転動体と、
前記転動体の転動溝が形成された案内レールと、
前記案内レールの転動溝とともに前記転動体の転走路をなす転動溝と、前記転走路を転動した前記転動体を循環させるための戻し路が形成されたスライダ本体と、
前記転走路と前記戻し路とを連通する方向転換路が形成されており、前記スライダ本体の両端に配置される一対のエンドキャップとを有し、
前記エンドキャップは、前記転走路の前記転動体をすくい上げて前記方向転換路へ導くために、前記案内レールの転動溝へ向かって突出したタング部を備え、
前記タング部に、前記転動溝に接するシール部を設けた、ことを特徴とする直動案内装置。
【請求項2】
前記シール部は、前記タング部と一体である、
ことを特徴とする請求項1に記載の直動案内装置。
【請求項3】
前記シール部は、前記タング部と別体である、
ことを特徴とする請求項1に記載の直動案内装置。
【請求項4】
前記シール部は、潤滑油が通過可能なスリットまたは切欠を、一つもしくは複数有する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の直動案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直動案内装置は、案内レールの軌道面とスライダ本体の軌道面との間に形成される転動体の転動通路と、スライダ本体に形成された転動体の戻し通路と、エンドキャップに形成された転動体の方向転換路と、が連通されてなる略環状の循環経路を備えており、この循環経路内を転動体が循環するようになっている。
【0003】
特許文献1に開示された直動案内装置においては、タング部が転動通路の端部に向かって突出するようにエンドキャップが設けられており、タング部の突出先端に形成された掬い上げ部に、転動通路の終点の転動体が接触することにより、転動体が転動通路から掬い上げられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-121709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、通常は、タング部とレールの間に隙間が設けられているため、スライダを移動させるたびに、レール転走面側に付着した内部の潤滑剤が、その隙間からスライダの外側に排出されてしまい、それによりスライダ内の潤滑剤が減少して潤滑性が低下する虞ががある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、潤滑剤がスライダ内部から漏出するのを抑制し、潤滑性を長期に亘り維持することのできる直動案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の直動案内装置は、
転動体と、
前記転動体の転動溝が形成された案内レールと、
前記案内レールの転動溝とともに前記転動体の転走路をなす転動溝と、前記転走路を転動した前記転動体を循環させるための戻し路が形成されたスライダ本体と、
前記転走路と前記戻し路とを連通する方向転換路が形成されており、前記スライダ本体の両端に配置される一対のエンドキャップとを有し、
前記エンドキャップは、前記転走路の前記転動体をすくい上げて前記方向転換路へ導くために、前記案内レールの転動溝へ向かって突出したタング部を備え、
前記タング部に、前記転動溝に接するシール部を設けた、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スライダ内部の潤滑剤が漏出するのを抑制し、潤滑性を長期に亘り維持することのできる直動案内装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態に係る直動案内装置の斜視図である。
図2図2は、本実施形態の直動案内装置の転送路及び循環路を示すXY断面図である。
図3図3(a)は、エンドキャップを示す斜視図であり、図3(b)は、エンドキャップのタング部の構成を示す図2の部分拡大断面図である。
図4図4(a)は、エンドキャップをX方向に見た正面図であり、図4(b)はタング部付近を拡大して示す図である。
図5図5(a)は、変形例にかかるエンドキャップを示す図3(a)と同様な斜視図であり、図5(b)は、変形例にかかるエンドキャップのタング部の構成を示す図3(b)と同様な部分拡大断面図である。
図6図6は、変形例にかかるエンドキャップのタング部付近を拡大して示す図4(b)と同様な図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る直動案内装置を添付図面に基づいて説明する。
図1に、本実施形態に係る直動案内装置10の斜視図を示す。図2は、直動案内装置10の転送路及び循環路を示すXY断面図である。本実施形態に係る直動案内装置10は、工作機械、搬送装置、その他の生産設備に用いられるものである。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る直動案内装置10は、案内レール1と、この案内レール1のX方向の長手方向に沿って移動可能に取り付けられたスライダ2とを備えている。案内レール1は、外面11を有すると共にX方向に沿って延伸している。スライダ2は、図示していないが、案内レール1の外面11と対向する内面を有している。
【0012】
また、直動案内装置10は、転動体としての複数のボール5と、この複数のボール5が循環する無端状の循環経路とを備えている。ボール5としては、例えば金属製またはセラミック製のボールが用いられている。
【0013】
スライダ2は、スライダ本体20と、このスライダ本体20の移動方向の両端部にそれぞれ設けられたエンドキャップ40と、この各々のエンドキャップ40のスライダ本体20側とは反対側にそれぞれ設けられたサイドシール50とを備えている。エンドキャップ40は、不図示のネジ部材によってスライダ本体20の移動方向の端面に締結固定されている。また、サイドシール50は、ネジ部材9によってエンドキャップ40のスライダ本体20側の端面とは反対側の端面に締結固定されている。
【0014】
案内レール1の外面11は、案内レール1の長手方向と直交するZ方向の高さ方向において互いに反対側に位置する主面部(おもて面部)11a及び裏面部11bと、案内レール1の長手方向(X方向)及び高さ方向(Z方向)と直交するY方向の幅方向において互いに反対側に位置する2つの側面部11c,11dとを有している。そして、主面部11aと側面部と11c,11dとが交差する稜線部には、ボール5が転動する転動溝12aが設けられている。また、2つの側面部11c,11dの各々のZ方向の中間部には、ボール5が転動する転動溝12bが設けられている。
【0015】
転動溝12aは、案内レール1の長手方向と直交する断面が略1/4円弧の凹面形状になっている。転動溝12bは、案内レール1の長手方向と直交する断面が略1/2円弧の凹面形状になっている。転動溝12a,12bは、案内レール1の厚さ方向に2段配列で配置され、案内レール1の長手方向に沿って延伸している。転動溝12bには、X方向に沿って延在する逃げ溝12c(図4)が形成され、直動案内装置の組立時にボールを保持して脱落を防止する保持ワイヤ(不図示)を収容している。
【0016】
図3(a)は、エンドキャップ40を示す斜視図であり、図3(b)は、エンドキャップ40のタング部7の構成を示す図2の部分拡大断面図である。図4(a)は、エンドキャップ40をX方向に見た正面図であり、図4(b)はタング部7付近(図4(a)の領域A)を拡大して示す図であるが、理解しやすいように突起8をハッチングで示している。なお図示を省略するが、直動案内装置10は、転動溝12aに対向する位置でも同様の構成を有する。したがって、以下、転動溝12bを中心に説明を行うが、転動溝12aについても同様である。
【0017】
スライダ本体20は、案内レール1の長手方向へ延在し断面が略コ字状をした金属製部材からなり、案内レール1に跨嵌されている。スライダ本体20において案内レール1の両側面に対向する部分、即ち両側の脚部の内側面には、案内レール1の転動溝12a、12bに対向して長手方向へ延びる転動溝3aが2本ずつ形成されている。
【0018】
図2において、スライダ本体20の転動溝3aと案内レール1の転動溝12b(12a)とは、ボール5の転走路Rを構成している。
【0019】
スライダ本体20の両側の脚部には、転動溝3aと平行にスライダ本体20の長手方向へ貫通した直線状の戻し路3bが2本ずつ形成されている。
【0020】
エンドキャップ40は、略コ字状の樹脂製部材からなる。図3(a)にも示すように、エンドキャップ40のスライダ本体20側の面には、方向転換路4aが両側の脚部に2箇所ずつ形成されている。方向転換路4aは、上記転走路Rとスライダ本体20の戻し路3bとを連通するものであり半円弧状をしている。なお、エンドキャップ40は樹脂製に限らず金属製でもよい。
【0021】
スライダ本体20の戻し路3bとエンドキャップ40の方向転換路4aとは、ボール5を転走路Rへ循環させるための循環路Cを構成している。
【0022】
循環路C及び転走路Rには、ボール5として多数の負荷ボールが装填されている。負荷ボールは球形の金属製部材からなり、直動案内装置10にかかる外部荷重や予圧による負荷を転走路Rで受ける。負荷ボールの材料は、金属に限られずセラミックス等でもよい。
【0023】
以上の構成により、スライダ2はボール5が転走路Rを転動することによって案内レール1上を直線運動することができる。なお、転走路R内を転動したボール5は、循環路Cを経て再度転走路Rへ導かれ、転走路Rと循環路Cを循環することができる。
【0024】
ここで、図3(a)及び図3(b)に示すように、エンドキャップ40の両側の脚部の内側には、方向転換路4aの案内レール1側の端部をなしており、案内レール1の転動溝12b(12a)へ沿うように突出したタング部7が一体的に形成されている。
【0025】
タング部7は、図3(a)に示すように案内レール1の長手方向へ延在した略円柱形状(詳しくは半円柱形状又は1/4円柱形状)をしている。このタング部7により、ボール5が転走路Rからエンドキャップ40の方向転換路4aへ進入する際に、ボール5をすくい上げて方向転換路4aへ導くことができ、ボール5がエンドキャップ40の方向転換路4aから転走路Rへ進入する際にはボール5を転走路Rへスムーズに送り出すことができる。
【0026】
本実施形態では、タング部7の先端(ボール5をすくい上げる転動体すくい上げ部)、詳細にはタング部7の案内レール1側の側面7aであって方向転換路4aの近傍位置に突起(シール部)8が形成されている。突起8は、図3(b)に示すように略半円断面形状を有しており、タング部7の側面7aから突出して筋状に円周方向へ取り巻くように延在し(タング部7の先端からボール5の循環路まで連続し)、図3(b)、図4(b)に示すように転動溝12b(12a)の内周面に接している。突起8は、タング部7と一体でもよいし、別体でもよい。また、別体とする場合、突起8はタング部7と同じ材質を有する必要はない。なお、突起8は、逃げ溝12cには接していない。
【0027】
仮に突起8が配設されないとした場合、案内レール1に沿ってスライダ2を走行させた際に、タング部7と転動溝12b(12a)との間に隙間が生じるため、転動溝12b(12a)に付着した内部の潤滑剤が、その隙間からスライダ本体20の外側に排出されてしまい、それによりスライダ内部の潤滑剤が減少して潤滑性が悪化するという課題がある。
【0028】
本実施形態によれば、タング部7に突起8を設けて、転動溝12b(12a)に接するようにしているため、案内レール1に沿ってスライダ2を走行させた際に、レール転走面である転動溝12b(12a)に付着した潤滑剤を、突起8によってかき取り、さらにタング部7に沿ってボール5の循環路内に戻すことができる。このため、潤滑剤がスライダ本体20の外側に排出されてしまうことを抑制し、直動案内装置10の安定した潤滑状態を確保することができる。
【0029】
上述した実施形態によれば、突起8を設けることで、潤滑剤がスライダ本体20の外側に排出されることを抑制するが、それによりエンドキャップ40の外側に配置されたサイドシール50への潤滑剤の供給量が減少するおそれがある。以下の変形例によれば、かかる課題を解決できる。
【0030】
(変形例)
図5(a)は、変形例にかかるエンドキャップ40Aを示す図3(a)と同様な斜視図であり、図5(b)は、変形例にかかるエンドキャップ40Aのタング部7Aの構成を示す図3(b)と同様な部分拡大断面図である。図6は、変形例にかかるエンドキャップ40Aのタング部7A付近を拡大して示す図5(b)と同様な図であるが、理解しやすいように突起8Aをダブルハッチングで示している。
【0031】
本変形例においては、エンドキャップ40Aのタング部7Aの構成のみが異なる。それ以外の構成は、上述した実施の形態と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0032】
上述した実施の形態と同様に、タング部7Aの側面7aに沿って突出して円周方向へ取り巻くように延在する突起8Aが形成されているが、突起8Aは、延在方向に沿って所定感覚で複数のスリット(または切欠)8Aaを有している。スリット8Aaは、一つでもよい。
【0033】
本変形例によれば、案内レール1に沿ってスライダ2を走行させた際に、レール転走面である転動溝12b(12a)に付着した潤滑剤の一部は、突起8Aによってかき取られるが、潤滑剤の残りは、スリット8Aaを介してサイドシール50側へと通過可能となっている。このため、サイドシール50における潤滑剤不足の課題を解決できる。なお、サイドシール50に供給する潤滑剤の量は、スリット8Aaの大きさにより調整可能である。
【0034】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
10 直動案内装置
1 レール
2 スライダ
3a 転動溝
3b 戻し路
5 ボール
7、7A タング部
8、8A 突起(シール部)
8Aa スリット
12a、12b 転動溝
20 スライダ本体
40,40A エンドキャップ
50 サイドシール
図1
図2
図3
図4
図5
図6