(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156484
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】情報処理装置、運転制御装置、運転制御システム、コンピュータプログラム、情報処理方法及び学習モデル生成方法
(51)【国際特許分類】
B65B 57/00 20060101AFI20241029BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20241029BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20241029BHJP
【FI】
B65B57/00 A
B65B57/00 D
A61M25/00
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070986
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓実
【テーマコード(参考)】
4C267
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
4C267AA34
4C267BB13
5L049CC03
5L050CC03
(57)【要約】
【課題】包装袋を適切に封止することを可能にする情報処理装置、運転制御装置、運転制御システム、コンピュータプログラム、情報処理方法及び学習モデル生成方法を提供する。
【解決手段】情報処理装置は、制御部を備え、制御部は、収納物を収納するための開口部を有する包装袋の包装袋情報を取得し、包装袋に収納された収納物の収納物情報を取得し、包装袋情報及び収納物情報を入力した場合、包装条件を出力する学習モデルに、取得した包装袋情報及び収納物情報を入力して、包装袋の包装条件を出力する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部を備え、
前記制御部は、
収納物を収納するための開口部を有する包装袋の包装袋情報を取得し、
前記包装袋に収納された収納物の収納物情報を取得し、
包装袋情報及び収納物情報を入力した場合、包装条件を出力する学習モデルに、取得した包装袋情報及び収納物情報を入力して、前記包装袋の包装条件を出力する、
情報処理装置。
【請求項2】
収容物が収容された包装袋を撮影した包装袋画像を取得し、
前記学習モデルは、包装袋画像をさらに入力した場合、包装条件を出力し、
取得した包装袋画像を前記学習モデルに入力して、前記包装袋の包装条件を出力する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記包装袋は、
フィルムと、前記フィルムに貼り合わせた不織布とを有し、
前記包装袋情報は、
前記開口部での前記フィルム及び前記不織布それぞれの厚みを含む、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記収納物情報は、
長尺状の医療器具の種類、個数、長さ及び外径の少なくとも一つを含む、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記包装条件は、
前記包装袋の開口部を、対向配置した加熱部の間に搬送させる搬送速度、前記加熱部の間の距離、及び前記加熱部の温度の少なくとも一つを含む、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
出力した包装条件によって前記開口部が封止された包装袋の封止強度及び破れの有無の少なくとも一つを含む包装後情報を取得し、
取得した包装後情報に基づいて前記学習モデルを再学習する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の情報処理装置が出力する包装条件に基づいて、包装袋を包装する包装機の運転を制御する運転制御装置。
【請求項8】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の情報処理装置と、
請求項7に記載の運転制御装置と
を備える、
運転制御システム。
【請求項9】
収納物を収納するための開口部を有する包装袋の包装袋情報を取得し、
前記包装袋に収納された収納物の収納物情報を取得し、
包装袋情報及び収納物情報を入力した場合、包装条件を出力する学習モデルに、取得した包装袋情報及び収納物情報を入力して、前記包装袋の包装条件を出力する、
処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項10】
収納物を収納するための開口部を有する包装袋の包装袋情報を取得し、
前記包装袋に収納された収納物の収納物情報を取得し、
包装袋情報及び収納物情報を入力した場合、包装条件を出力する学習モデルに、取得した包装袋情報及び収納物情報を入力して、前記包装袋の包装条件を出力する、
情報処理方法。
【請求項11】
収納物を収納するための開口部を有する包装袋の包装袋情報、前記包装袋に収納された収納物の収納物情報、及び前記包装袋の包装条件を含む訓練データを取得し、
取得した訓練データに基づいて、前記包装袋情報及び前記収納物情報を入力した場合、包装条件を出力するように学習モデルを生成する、
学習モデル生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、運転制御装置、運転制御システム、コンピュータプログラム、情報処理方法及び学習モデル生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテル、ガイドワイヤ等の長尺状の医療用器具は、使用前の保管時や輸送時、ピール袋等の包装袋(収容部材)に収容される。
【0003】
特許文献1には、2枚のシートの外周を貼り合わせて形成された収容空間と、収容空間から医療用器具を取り出す取出口を開封可能に封止する開封部とを備え、開封部を引きはがすことにより、収容空間に収容された医療用器具を取り出すことができる包装袋(収容部材)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような包装袋は、製造工程において包装袋の取出口から医療用器具を収容した後、包装機(シール機)を用いて医療用器具が収容された包装袋の取出口を封止(シール)しているが、適切な封止が行われず、減菌性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、包装袋を適切に封止することを可能にする情報処理装置、運転制御装置、運転制御システム、コンピュータプログラム、情報処理方法及び学習モデル生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る情報処理装置は、制御部を備え、前記制御部は、収納物を収納するための開口部を有する包装袋の包装袋情報を取得し、前記包装袋に収納された収納物の収納物情報を取得し、包装袋情報及び収納物情報を入力した場合、包装条件を出力する学習モデルに、取得した包装袋情報及び収納物情報を入力して、前記包装袋の包装条件を出力する。
【0008】
ここで、本発明の実施形態は、
(2)上記(1)の情報処理装置は、収容物が収容された包装袋を撮影した包装袋画像を取得し、前記学習モデルは、包装袋画像をさらに入力した場合、包装条件を出力し、取得した包装袋画像を前記学習モデルに入力して、前記包装袋の包装条件を出力する。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)の情報処理装置において、前記包装袋は、フィルムと、前記フィルムに貼り合わせた不織布とを有し、前記包装袋情報は、前記開口部での前記フィルム及び前記不織布それぞれの厚みを含む。
【0010】
(4)上記(1)から(3)のいずれか一つの情報処理装置において、前記収納物情報は、長尺状の医療器具の種類、個数、長さ及び外径の少なくとも一つを含む。
【0011】
(5)上記(1)から(4)のいずれか一つの情報処理装置において、前記包装条件は、前記包装袋の開口部を、対向配置した加熱部の間に搬送させる搬送速度、前記加熱部の間の距離、及び前記加熱部の温度の少なくとも一つを含む。
【0012】
(6)上記(1)から(5)のいずれか一つの情報処理装置は、出力した包装条件によって前記開口部が封止された包装袋の封止強度及び破れの有無の少なくとも一つを含む包装後情報を取得し、取得した包装後情報に基づいて前記学習モデルを再学習する。
【0013】
(7)本発明に係る運転制御装置は、前述の情報処理装置が出力する包装条件に基づいて、包装袋を包装する包装機の運転を制御する。
【0014】
(8)本発明に係る運転制御システムは、前述の情報処理装置と、前述の運転制御装置とを備える。
【0015】
(9)本発明に係るコンピュータプログラムは、収納物を収納するための開口部を有する包装袋の包装袋情報を取得し、前記包装袋に収納された収納物の収納物情報を取得し、包装袋情報及び収納物情報を入力した場合、包装条件を出力する学習モデルに、取得した包装袋情報及び収納物情報を入力して、前記包装袋の包装条件を出力する、処理をコンピュータに実行させる。
【0016】
(10)本発明に係る情報処理方法は、収納物を収納するための開口部を有する包装袋の包装袋情報を取得し、前記包装袋に収納された収納物の収納物情報を取得し、包装袋情報及び収納物情報を入力した場合、包装条件を出力する学習モデルに、取得した包装袋情報及び収納物情報を入力して、前記包装袋の包装条件を出力する。
【0017】
(11)本発明に係る学習モデル生成方法は、収納物を収納するための開口部を有する包装袋の包装袋情報、前記包装袋に収納された収納物の収納物情報、及び前記包装袋の包装条件を含む訓練データを取得し、取得した訓練データに基づいて、前記包装袋情報及び前記収納物情報を入力した場合、包装条件を出力するように学習モデルを生成する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、包装袋を適切に封止することを可能にし、減菌性の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】本実施形態の運転制御システムの構成の一例を示す図である。
【
図5】学習モデルによる包装条件出力処理の第1例を示す図である。
【
図6】包装袋情報、収納物情報及び包装条件の一例を示す図である。
【
図7】学習モデルによる包装条件出力処理の第2例を示す図である。
【
図8】医療器具が収納された封止前の包装袋の状態を模式的に示す図である。
【
図9】学習モデルの生成処理の一例を示す図である。
【
図10】情報処理装置の処理手順の一例を示す図である。
【
図11】運転制御装置の処理手順の一例を示す図である。
【
図12】情報処理装置による学習モデルの生成処理手順の一例を示す図である。
【
図13】情報処理装置による学習モデルの再学習処理手順の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態の包装袋10の一例を示す図である。包装袋10は、例えば、医療器具等の包装に一般的に使用されているピール袋を用いることができる。
図1Aは、医療器具20が収納された包装袋10の開口部14が封止(シール)されていない状態を示し、
図1Bは医療器具20が収納された包装袋10の開口部14が包装機で封止(シール)された状態を示す。
【0021】
包装袋10は、正面視が略矩形状の台紙11と、その上に貼り付けられた略同形状のフィルム12とにより、医療器具20を収納する収納空間が形成されている。台紙11とフィルム12との対応する3辺部は、台紙11とフィルム12とが貼り合わされて接合された接合部13をなす。台紙11とフィルム12との対応する残りの1辺部は、医療器具20を収納又は取り出すための開口部14をなす。開口部14付近の当該1辺部は、シール部15として、包装機200によって開封可能に封止される。
図1Bに示すように、シール部15は、包装機200によって封止されることにより開封部16となる。台紙11は、例えば、ガス透過性の不織布であり、包装袋10に医療器具20を収納した状態で、エチレンオキサイドガス(EOG)による減菌を可能にする。本実施形態では、台紙11を不織布として説明する。フィルム12は、例えば、透明又は半透明のポリエチレン等を用いることができる。術者は、
図1Bの状態で、開封部16を剥がす(ピール)ことにより、開口部14から医療器具20を取り出すことができる。なお、包装袋10の形状は、
図1の例に限定されない。
【0022】
図2は、本実施形態の運転制御システムの構成の一例を示す図である。運転制御システムは、情報処理装置50、及び運転制御装置100を備える。運転制御システムは、包装機200を備えてもよい。情報処理装置50は、包装袋10の包装条件を運転制御装置100へ出力する。運転制御装置100は、情報処理装置50が出力する包装条件に基づいて、包装機200の運転を制御する。
【0023】
包装機200は、所要の離隔距離Lを有して対向配置された加熱部としての第1加熱板(例えば、上側加熱板)31と第2加熱板(例えば、下側加熱板)32、第1加熱板31を離隔距離Lの向きに沿って移動させる移動装置33、第1加熱板31及び第2加熱板32の間の隙間を移動するベルトコンベア41、ベルトコンベア41を支持するローラ42、ベルトコンベア41を所要の速度で移動させるベルトコンベア駆動装置40、開口部14が封止される前の包装袋10のフィルム12及び不織布11それぞれの厚みを計測する計測器35、開口部14が封止される前の包装袋10の画像を撮影する撮影装置(例えば、カメラなど)36を備える。第1加熱板31はヒータ部31aを有し、第2加熱板32はヒータ部32aを有する。
【0024】
情報処理装置50は、計測器35から包装袋10の包装袋情報を取得する。包装袋情報は、開口部14でのフィルム12及び不織布11それぞれの厚みを含む。また、情報処理装置50は、撮影装置36から、医療器具20が収容された包装袋10を撮影した包装袋画像を取得する。包装袋画像は、例えば、包装袋10を正面から撮影して得られた画像、包装袋10の4つの側面から撮影して得られた画像の少なくとも一つを含めばよい。
【0025】
運転制御装置100は、情報処理装置50が出力する包装条件に基づいて、(1)第1加熱板31及び第2加熱板32それぞれの温度を設定する、(2)移動装置33を制御する制御信号を移動装置33へ出力することで、第1加熱板31と第2加熱板32との間の離隔距離Lを調整する、(3)ベルトコンベア41の速度を設定することができる。
【0026】
ベルトコンベア41に載置された包装袋10は、シール部15が、第1加熱板31及び第2加熱板32の間の隙間を移動するようになっている。シール部15のフィルム12側には、接着剤が付けられており、シール部15が第1加熱板31及び第2加熱板32の間を移動する際に加熱され、シール部15のフィルム12と不織布11とが接着されてシール部15が封止される。
【0027】
図3は、情報処理装置50の構成の一例を示す図である。情報処理装置50は、装置全体を制御する制御部51、通信部52、メモリ53、表示部54、操作部55、及び記憶部56を備える。
【0028】
制御部51は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)等が所要数組み込まれて構成されている。また、制御部51は、DSP(Digital Signal Processors)、FPGA(Field-Programmable Gate Arrays)などを組み合わせて構成してもよい。
【0029】
通信部52は、例えば、通信モジュールを備え、運転制御装置100との間の通信機能を有する。また、通信部52は、通信ネットワークに接続されている外部の装置(不図示)との間の通信機能を備えてもよい。
【0030】
メモリ53は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリで構成することができる。
【0031】
表示部54は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどで構成することができる。なお、表示部54に代えて、外部の表示装置を情報処理装置50に接続するようにしてもよい。
【0032】
操作部55は、例えば、キーボード、マウス、タッチパッド又はタッチパネル等で構成され、表示部54に表示される情報に対する操作を受け付けることができる。
【0033】
記憶部56は、例えば、ハードディスク又は半導体メモリ等で構成することができ、コンピュータプログラム(プログラム製品)57、学習モデル58、及び所要の情報を記憶することができる。学習モデル58は、学習前のモデル、学習途中のモデル、又は学習済みモデルを含む。学習モデル58の詳細は後述する。
【0034】
コンピュータプログラム57は、メモリ53に展開されて、制御部51により実行される。コンピュータプログラム57は、通信部52を介して、外部の装置からダウンロードして記憶部56に格納してもよい。また、記録媒体(例えば、CD-ROM等の光学可読ディスク記憶媒体)に記録されたコンピュータプログラム57を記録媒体読取部で読み取って記憶部56に格納してもよい。コンピュータプログラム57は、単一のコンピュータ上で、または1つのサイトにおいて配置されるか、もしくは複数のサイトに亘って分散され、通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開することができる。
【0035】
図4は、運転制御装置100の構成の一例を示す図である。運転制御装置100は、装置全体を制御する制御部101、通信部102、表示部103、操作部104、インタフェース部105及び記憶部106を備える。
【0036】
制御部101は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、等が所要数組み込まれて構成されている。また、制御部101は、DSP(Digital Signal Processors)、FPGA(Field-Programmable Gate Arrays)などを組み合わせて構成してもよい。
【0037】
通信部102は、例えば、通信モジュールを備え、情報処理装置50との間の通信機能を有する。
【0038】
表示部103は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどで構成することができる。なお、表示部103に代えて、外部の表示装置を運転制御装置100に接続するようにしてもよい。
【0039】
操作部104は、例えば、キーボード、マウス、タッチパッド又はタッチパネル等で構成され、表示部103に表示される情報に対する操作を受け付けることができる。
【0040】
インタフェース部105は、包装機200との間のインタフェース機能を有する。運転制御装置100は、インタフェース部105を介して包装機200との間で情報(加熱板設定温度、加熱板距離制御信号、ベルトコンベア設定速度、加熱板温度など)の授受を行う。
【0041】
記憶部106は、例えば、ハードディスク又は半導体メモリ等で構成することができ、所要の情報を記憶することができる。
【0042】
次に、情報処理装置50による包装袋10の包装条件の出力について説明する。
【0043】
カテーテルやガイドワイヤなどの長尺状の医療器具の製造工程において、包装袋10の開口部14から医療器具を収納した後、包装機(シール機)を用いて開口部14を封止(シール)しているが、適切な封止が行われず、減菌性が低下するおそれがある。出願人は、適切に封止できない主な原因として、(1)包装袋10のフィルム12や不織布11の厚みにばらつきがある、また、フィルム12に付いている接着剤の量が不均一であること、(2)長尺状の医療器具とともに包装袋10に収納される付属の医療器具(シリンジやYコネクタなど)の種類や形状により包装袋10のフィルム12や不織布11の浮きや膨らみが異なることに着目した。そして出願人は、(1)フィルム12や不織布11の厚みにばらつきがある、あるいはフィルム12に付いている接着剤の量が不均一であるにもかかわらず、同一条件で開口部14の封止を行っていること、(2)様々な医療器具が収納された包装袋10に対して、同一条件で開口部14の封止を行っていることに着目した。
【0044】
情報処理装置50(制御部51)は、医療器具(収納物)を収納するための開口部14を有する包装袋10の包装袋情報を取得し、包装袋10に収納された医療器具(収納物)の収納物情報を取得する。なお、収納物情報は、操作部55でのオペレータによる入力操作を受け付け、受け付けた収納物情報を取得すればよい。制御部51は、包装袋情報及び収納物情報を入力した場合、包装条件を出力する学習モデル58に、取得した包装袋情報及び収納物情報を入力して、包装袋10の包装条件を出力することができる。
【0045】
図5は、学習モデル58による包装条件出力処理の第1例を示す図である。
図5に示すように、学習モデル58は、包装袋10の包装袋情報及び収納物情報が入力されると、包装袋10を包装(シール)するための包装条件を出力する。具体的には、制御部51は、取得した包装袋情報及び収納物情報に対して一義的なベクトルを生成するベクトル化演算を行って包装袋情報ベクトル及び収納物情報ベクトルを生成し、生成した包装袋情報ベクトル及び収納物情報ベクトルを学習モデル58に入力することができる。
【0046】
学習モデル58は、包装袋10に関する包装袋情報及び収納物情報が入力された場合、当該包装袋10の包装条件を出力するように生成(学習)されている。包装条件についても、学習モデル58は、包装条件に対して一義的に定まる包装条件ベクトルを出力することができる。学習モデル58は、例えば、ニューラルネットワーク、SVM(サポート・ベクター・マシン)、決定木、ランダムフォレスト、アダブーストなどで構成することができる。
【0047】
図6は、包装袋情報、収納物情報及び包装条件の一例を示す図である。
図6に示すように、包装袋10の包装袋情報は、開口部14でのフィルム12及び不織布11それぞれの厚みを含む。収納物情報は、長尺状の医療器具の種類、個数、長さ及び外径の少なくとも一つを含む。医療器具の種類としては、例えば、カテーテル、ガイドワイヤ、シリンジ、Yコネクタ、ガイドワイヤをカテーテルに固定可能なストッパー、ワイヤクリップ、インサータなどが含まれるが、これらに限定されない。包装条件は、包装袋10の開口部14を封止するための包装機200の動作条件を含み、例えば、加熱板設定温度、加熱板間距離、ベルトコンベア速度(包装袋10の開口部14を、対向配置した加熱板間に搬送させる搬送速度)の少なくとも一つを含む。なお、収納物情報は、
図6の例に限定されない。
【0048】
上述のように、学習モデル58は、包装袋の包装袋情報及び収納物情報が入力された場合、当該包装袋の包装条件を出力することができる。これにより、学習モデル58は、フィルム12や不織布11の厚みのばらつきや接着剤の量に応じた包装条件を出力することができるため、包装袋10を適切に封止することを可能にし、減菌性の低下を防止できる。また、学習モデル58は、包装袋10に収納された医療器具の種類、個数、長さ又は外形に応じた包装条件を出力することができるため、包装袋10を適切に封止することを可能にし、減菌性の低下を防止できる。
【0049】
図7は、学習モデル58による包装条件出力処理の第2例を示す図である。
図5に示す第1例との相違点は、学習モデル58に、包装袋情報及び収納物情報に加えて、包装袋画像が入力される点である。学習モデル58は、包装袋10に関する包装袋情報、収納物情報及び包装袋画像が入力された場合、当該包装袋10の包装条件を出力するように生成(学習)されている。学習モデル58は、例えば、CNN(Convolutional Neural Network)、Transformer等で構成することができる。
【0050】
情報処理装置50(制御部51)は、医療器具(収納物)を収納するための開口部14を有する包装袋10の包装袋情報、包装袋10に収納された医療器具(収納物)の収納物情報、及び収容物が収容された包装袋10を撮影した包装袋画像を取得する。制御部51は、包装袋情報、収納物情報及び包装袋画像を入力した場合、包装条件を出力する学習モデル58に、取得した包装袋情報、収納物情報及び包装袋画像を入力して、包装袋10の包装条件を出力することができる。
【0051】
前述のように、包装袋10に収納される長尺状の医療器具の長さや外径は異なり、長尺状の医療器具とともに収納される医療器具の種類や個数も異なる。このため、様々な医療器具が収納された包装袋10は、開口部14でのフィルム12と不織布11との間の離れ具合、フィルム12の浮きや膨らみが異なる。
【0052】
図8は、医療器具が収納された封止前の包装袋10の状態を模式的に示す図である。
図8Aは、包装袋10に収納される長尺状の医療器具の数が少ない場合、医療器具の長さが短い場合、医療器具の外径が小さい場合を模式的に示したものである。
図8Aでは、包装袋10の開口部14付近でのフィルム12と不織布11との間の離れ具合は比較的小さく、フィルム12の浮きや膨らみも少ない。一方、
図8Bは、包装袋10に収納される長尺状の医療器具の数が多い場合、医療器具の長さが長い場合、医療器具の外径が大きい場合(例えば、シリンジやYコネクタ等)を模式的に示したものである。
図8Bでは、
図8Aと比較して、包装袋10の開口部14付近でのフィルム12と不織布11との間の離れ具合は大きく、フィルム12の浮きや膨らみも多い。なお、医療器具は、模式的に描いているので実際の医療器具とは異なる場合がある。
【0053】
包装袋画像は、
図8に示す包装袋10を、正面から(符号Fの方向)撮影した画像、包装袋10の4側面から(符号S1~S4)撮影した画像を含む。包装袋画像は、正面及び4側面の全ての方向から撮影した画像を含めてもよく、正面及び4側面のうちの少なくとも一方向から撮影した画像でもよい。
【0054】
学習モデル58は、包装袋情報及び収納物情報に加えて、包装袋画像が入力された場合、適切な包装条件を出力するように生成(学習)されている。このため、学習モデル58は、開口部14でのフィルム12と不織布11との間の離れ具合やフィルム12の浮きや膨らみに応じて適切な包装条件を出力することができ、包装袋10の所要のシール強度(封止強度)を確保できる。
【0055】
次に、学習モデル58の生成(学習)方法について説明する。
【0056】
図9は、学習モデル58の生成処理の一例を示す図である。制御部51は、包装袋10の包装袋情報、当該包装袋10に収納された収納物の収納物情報、及び当該包装袋10の包装条件を含む訓練データを取得する。ここで、訓練データに含まれる包装条件は、教師データとして用いることができる。制御部51は、訓練データに含まれる包装袋情報及び収納物情報を学習用入力データとして学習モデル58に入力する。制御部51は、学習モデル58が出力する包装条件が、教師データとしての包装条件に近づくように学習モデル58のパラメータを調整して学習モデル58を生成する。
【0057】
図9に示す学習モデル58の生成処理は、
図5に示す第1例に対応している。
図7に示す第2例の場合にも同様に学習モデル58を生成できる。具体的には、制御部51は、包装袋10の包装袋情報、当該包装袋10に収納された収納物の収納物情報、当該包装袋10の包装袋画像及び当該包装袋10の包装条件を含む訓練データを取得する。ここで、訓練データに含まれる包装条件は、教師データとして用いることができる。制御部51は、訓練データに含まれる包装袋情報、収納物情報及び包装袋画像を学習用入力データとして学習モデル58に入力する。制御部51は、学習モデル58が出力する包装条件が、教師データとしての包装条件に近づくように学習モデル58のパラメータを調整して学習モデル58を生成することができる。
【0058】
図10は、情報処理装置50の処理手順の一例を示す図である。処理の主体は便宜上、制御部51として説明する。
図10に示す処理は、例えば、医療器具が収納された包装袋10を製造する場合の製造ロット毎に行うことができる。制御部51は、包装袋10の収納物情報を取得する(S11)。収納物情報は、例えば、オペレータが操作部55を通じて入力することができ、制御部51は、操作部55を通じて入力された収納物情報を取得できる。
【0059】
制御部51は、包装袋10の包装袋情報を取得する(S12)。制御部51は、例えば、計測器35で計測したフィルム12及び不織布11それぞれの厚みを包装袋情報として取得できる。計測器35は、レーザ同軸変位計のように自動で計測するタイプでもよく、あるいはゲージのようにオペレータが手動で計測するタイプでもよい。フィルム12及び不織布11の厚みの計測は、ロットの中からサンプリングした(抜き取った)包装袋10について行ってもよく、全数行ってもよい。
【0060】
制御部51は、包装袋10の包装袋画像を取得する(S13)。包装袋画像は、カメラ等の撮影装置36で包装袋10を撮影することにより得ることができる。包装袋画像は、医療器具が収納された封止前の包装袋10の正面及び4側面のうちの少なくとも一方向から撮影した画像でよい。なお、ステップS13の処理は、必須ではない。
【0061】
制御部51は、取得した包装袋情報、収納物情報及び包装袋画像を学習モデル58に入力し、学習モデル58が出力する包装条件を取得し(S14)、取得した包装条件を出力し(S15)、処理を終了する。包装条件を出力する出力先は、例えば、表示部54とすることができる。この場合、制御部51は、学習モデル58が出力した包装条件を記憶部56に記憶する。これにより、オペレータは、情報処理装置50が出力する包装条件を事前に確認することができる。オペレータは、包装条件を確認し、包装条件が適切であると判断した場合、記憶部56に記憶した包装条件を運転制御装置100へ送信する操作を行う。また、包装条件を出力する出力先は、運転制御装置100でもよい。運転制御装置100は、受信した包装条件を記憶部106に記憶する。運転制御装置100のオペレータは、包装機200の運転を開始する前に、情報処理装置50から受信した包装条件を表示部103に表示させて包装条件を確認することができる。
【0062】
図11は、運転制御装置100の処理手順の一例を示す図である。処理の主体は便宜上、制御部101として説明する。制御部101は、情報処理装置50が出力した包装条件を取得する(S21)。制御部101は、包装条件に応じて、第1加熱板31及び第2加熱板32それぞれ(加熱板)の温度を設定し(S22)、移動装置33を制御して第1加熱板31及び第2加熱板32の間の離隔距離Lを設定し(S23)、ベルトコンベア41の速度を設定する(S24)。
【0063】
制御部101は、医療器具が収納された封止対象の所定数の包装袋10が順番にベルトコンベア41に載置されるようにセットされると、包装機200の運転を開始し(S25)、封止対象の包装袋10のシール部15を封止する。制御部101は、運転終了を受け付けた否かを判定し(S26)、運転終了を受け付けていない場合(S26でNO)、ステップS26の処理を続ける。運転終了を受け付けた場合(S26でYES)、制御部101は、処理を終了する。
【0064】
加熱板の設定温度がそれぞれ異なる複数のロットの包装袋10について包装する場合には、設定温度の低いロットから設定温度の高いロットの順に包装を行うことが好ましい。加熱板の温度を下げるのに要する時間よりも温度を上げるのに要する時間の方が短く、かつ容易に設定できるので、複数のロットの包装に要する時間を短縮できる。
【0065】
図12は、情報処理装置50による学習モデル58の生成処理手順の一例を示す図である。制御部51は、包装袋10の包装袋情報、当該包装袋10に収納された収納物の収納物情報、当該包装袋10の包装袋画像及び当該包装袋10の包装条件を含む訓練データを取得する(S31)。ここで、訓練データに含まれる包装条件は、教師データとして用いることができる。制御部51は、訓練データに含まれる包装袋情報、収納物情報及び包装袋画像を学習モデル58に入力した場合、学習モデル58が出力する包装条件が、教師データとしての包装条件に近づくように学習モデル58のパラメータを調整して学習モデル58を生成し(S32)、処理を終了する。
【0066】
上述の例では、情報処理装置50が学習モデル58の生成処理を行う構成であったが、これに限定されるものではない。例えば、情報処理装置50と異なる別の学習処理装置で学習モデル58を生成し、情報処理装置50は、学習処理装置が生成した学習モデル58を取得するようにしてもよい。
【0067】
図13は、情報処理装置50による学習モデル58の再学習処理手順の一例を示す図である。制御部51は、包装条件に基づいて包装(封止)した包装袋10の強度試験データを取得する(S41)。強度試験データは、例えば、シール強度(封止強度)、包装袋の破れの有無などのデータを含む。シール強度は、包装袋10の開封部16を両辺から引っ張った際の最大荷重である。強度試験データは、包装袋10毎に、包装袋情報、収納物情報、包装袋画像及び包装条件が対応付けられている。
【0068】
制御部51は、強度試験に合格した包装袋10の包装条件及び当該包装条件に対応する包装袋情報、収納物情報、及び包装袋画像を取得する(S42)。制御部51は、取得した包装袋情報、収納物情報、包装袋画像及び包装条件を訓練データとして収集する(S43)。
【0069】
制御部51は、強度試験に合格した他の包装条件の有無を判定し(S44)、他の包装条件がある場合(S44でYES)、ステップS41以降の処理を続ける。他の包装条件がない場合(S44でNO)、制御部51は、収集した訓練データを用いて学習モデル58を再学習し(S45)、処理を終了する。ステップS45の処理は、
図9に示す処理と同様に行うことができる。
【0070】
上述の例では、情報処理装置50が学習モデル58の再学習を行う構成であったが、これに限定されるものではない。例えば、情報処理装置50と異なる別の学習処理装置で学習モデル58を再学習し、情報処理装置50は、学習処理装置が再学習した学習モデル58を取得するようにしてもよい。
【0071】
上述のように、制御部51は、出力した包装条件によって開口部14が封止された包装袋10の封止強度及び破れの有無の少なくとも一つを含む包装後情報を取得し、取得した包装後情報に基づいて学習モデル58を再学習することができる。学習モデル58の再学習に、包装後の包装袋の強度試験データ(包装後情報)を用いることにより、再学習後の学習モデル58が出力する包装条件が一層最適化されたものとなることが期待できる。
【0072】
上述のように、本実施形態によれば、包装袋10の包装工程における包装条件を画一的ではなく、包装袋情報や収納物情報に合わせて適切な条件に動的に調整することができるため、シール強度不足の発生を低減できる。これにより、医療器具は、包装袋10に適切に封止されるため、減菌性の低下を防止できる。
【符号の説明】
【0073】
10 包装袋
11 不織布
12 フィルム
13 接合部
14 開口部
15 シール部
16 開封部
20 医療器具
31 第1加熱板
32 第2加熱板
33 移動装置
35 計測器
36 撮影装置
40 ベルトコンベア駆動装置
41 ベルトコンベア
50 情報処理装置
51 制御部
52 通信部
53 メモリ
54 表示部
55 操作部
56 記憶部
57 コンピュータプログラム
58 学習モデル
100 運転制御装置
101 制御部
102 通信部
103 表示部
104 操作部
105 インタフェース部
106 記憶部
200 包装機