(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156485
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】繰出容器
(51)【国際特許分類】
A45D 40/20 20060101AFI20241029BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A45D40/20 F
B65D83/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070988
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000134589
【氏名又は名称】株式会社トンボ鉛筆
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】岡本 吉憲
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014AC04
3E014AC08
(57)【要約】
【課題】棒状部材が繰出容器本体に対して着脱可能で、且つ簡単な構造の繰出容器を提供する。
【解決手段】本発明の棒状部材Bの繰出容器は、内周に雌ネジ部17が設けられた後筒1と、後筒1に対して相対回転可能に連結された前筒2と、雌ネジ部17と螺合し、前筒2と共に後筒1に対して相対回転しつつ、前後に移動する雄ネジ部材3と、棒状部材Bを先端に保持するチャック部材6と、雄ネジ部材3の先端またはチャック部材6の後端のいずれか一方に設けられた軸部7と、雄ネジ部材3の先端とチャック部材6の後端とのいずれか他方に設けられた孔部34と、軸部7の外面または孔部34の内面に配置された弾性部材5と、を備え、軸部7が孔部34に対して弾性部材5を介して着脱可能に嵌合し、棒状部材Bを保持するチャック部材6が交換可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に雌ネジ部が設けられた後筒と、
前記後筒に対して相対回転可能に連結された前筒と、
前記雌ネジ部と螺合し、前記前筒と共に前記後筒に対して相対回転しつつ、前後に移動する雄ネジ部材と、
棒状部材を先端に保持するチャック部材と、
前記雄ネジ部材の先端または前記チャック部材の後端のいずれか一方に設けられた軸部と、
前記雄ネジ部材の前記先端と前記チャック部材の前記後端とのいずれか他方に設けられた孔部と、
前記軸部の外面または前記孔部の内面に配置された弾性部材と、を備え、
前記軸部が前記孔部に対して前記弾性部材を介して着脱可能に嵌合し、
前記棒状部材を保持する前記チャック部材が交換可能な、
前記棒状部材の繰出容器。
【請求項2】
前記雄ネジ部材に縦リブが設けられ、
前記前筒に縦溝が設けられ、
前記縦リブが前記縦溝の内部を前後に移動することにより、前記前筒に対して前記雄ネジ部材が前後移動可能且つ相対回転不能である、
請求項1に記載の繰出容器。
【請求項3】
前記軸部が前記チャック部材の後端に設けられ、
前記孔部が前記雄ネジ部材の先端に設けられ、
前記孔部の内面に前記弾性部材が配置されている、
請求項1に記載の繰出容器。
【請求項4】
前記雄ネジ部材は、先端にストッパー部材を備え、
前記弾性部材は、前記孔部の底面と、前記ストッパー部材との間に挟持されている、
請求項3に記載の繰出容器。
【請求項5】
前記弾性部材が、Oリングである。
請求項1から4のいずれか1項に記載の繰出容器。
【請求項6】
前記弾性部材が、ゴムまたはエラストマーである、
請求項1から4のいずれか1項に記載の繰出容器。
【請求項7】
前記前筒と前記チャック部材とが相対回転不能に係合している、
請求項1から4のいずれか1項に記載の繰出容器。
【請求項8】
前記棒状部材における、前記チャック部材に保持されたときに前記チャック部材の先端よりも出ている有効部の長さを有効長さL1とし、
前記チャック部材の先端から前記雄ネジ部材の先端までの長さをL2としたときに、L1<L2である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状部材の繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
棒状部材として、例えばアイブロウやアイライナーなどの化粧品が収容された繰出容器が販売されている。従来、このような繰出容器は、棒状部材を使い終わると、繰出容器ごと廃棄されているものが多かった。そこで、廃棄物を少なくするために、棒状部材を交換可能とした繰出容器が開発されている。このような繰出容器として、例えば、棒状部材を保持する芯チャックに磁石を取り付け、また繰出容器本体にも磁石を取り付け、棒状部材を保持する芯チャックを磁力により繰出容器本体に対して着脱可能とした繰出容器がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の繰出容器は、芯チャック及び繰出容器本体に磁石を装着する必要があり、構造が複雑化する。
【0005】
本発明は、棒状部材が繰出容器本体に対して着脱可能で、且つ簡単な構造の繰出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のものを提供する。
内周に雌ネジ部が設けられた後筒と、前記後筒に対して相対回転可能に連結された前筒と、前記雌ネジ部と螺合し、前記前筒と共に前記後筒に対して相対回転しつつ、前後に移動する雄ネジ部材と、棒状部材を先端に保持するチャック部材と、前記雄ネジ部材の先端または前記チャック部材の後端のいずれか一方に設けられた軸部と、前記雄ネジ部材の前記先端と前記チャック部材の前記後端とのいずれか他方に設けられた孔部と、前記軸部の外面または前記孔部の内面に配置された弾性部材と、を備え、前記軸部が前記孔部に対して前記弾性部材を介して着脱可能に嵌合し、前記棒状部材を保持する前記チャック部材が交換可能な、前記棒状部材の繰出容器。
【0007】
前記雄ネジ部材に縦リブが設けられ、前記前筒に縦溝が設けられ、前記縦リブが前記縦溝の内部を前後に移動することにより、前記前筒に対して前記雄ネジ部材が前後移動可能且つ相対回転不能であってもよい。
【0008】
前記軸部が前記チャック部材の後端に設けられ、前記孔部が前記雄ネジ部材の先端に設けられ、前記孔部の内面に前記弾性部材が配置されていてもよい。
【0009】
前記雄ネジ部材は、先端にストッパー部材を備え、前記弾性部材は、前記孔部の底面と、前記ストッパー部材との間に挟持されていてもよい。
【0010】
前記弾性部材が、Oリングであってもよい。
【0011】
前記弾性部材が、ゴムまたはエラストマーであってもよい。
【0012】
前記前筒と前記チャック部材とが相対回転不能に係合していてもよい。
【0013】
前記棒状部材における、前記チャック部材に保持されたときに前記チャック部材の先端よりも出ている有効部の長さを有効長さL1とし、前記チャック部材の先端から前記雄ネジ部材の先端までの長さをL2としたときに、L1<L2であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、棒状部材が繰出容器本体に対して着脱可能で、且つ簡単な構造の繰出容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態の繰出容器100の斜視図である。
【
図2】第1実施形態の繰出容器100の分解斜視図である。
【
図3】第1実施形態の繰出容器100の後部の断面斜視図である。
【
図4】第1実施形態の繰出容器100の後部の断面分解斜視図である。
【
図5】第1実施形態の繰出容器100の前部の断面斜視図である。
【
図6】第1実施形態の繰出容器100の前部の断面分解斜視図である。
【
図7】第1実施形態の繰出容器100の断面図であり、(a)は棒状部材Bが未使用状態で繰出容器本体100Aの内部に収納された状態、(b)は棒状部材Bが最も短くかつチャック部材6の先端が開口部21の位置にある状態、(c)は(b)よりも着脱部材100Bが繰り出された状態を示す。
【
図8】第2実施形態の繰出容器における、弾性部材205、ストッパー部材204、及び軸部207の分解斜視図である。
【
図9】第3実施形態の繰出容器300の断面図である。
【
図10】第3実施形態の繰出容器300の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態の繰出容器100の斜視図である。
図2は、繰出容器100の分解斜視図である。第1実施形態の繰出容器100は、例えばアイブロウ、アイライナー、軟質色鉛筆芯等の棒状部材Bを繰り出す容器である。以下、繰出容器100における棒状部材Bが繰り出される側を前、その反対側を後とし、繰出容器100の中心に沿って延びる方向を軸A方向として説明する。
【0017】
繰出容器100は、後筒1と、後筒1に対して相対回転可能に連結されている前筒2と、後筒1の内部を軸A方向に延びる筒孔11に配置される雄ネジ部材3と、雄ネジ部材3の前側に設けられた孔部34の開口に装着されるストッパー部材4と、孔部34の内面に配置される弾性部材5と、棒状部材Bを保持するチャック部材6と、チャック部材6の後部から後側に延びる軸部7と、を備える。
【0018】
本実施形態では、後筒1と、前筒2と、雄ネジ部材3と、ストッパー部材4と、孔部34の内面に配置される弾性部材5とを含む繰出容器本体100Aに対して、棒状部材Bと、チャック部材6と、軸部7とを含む着脱部材100Bが着脱可能となっている。
【0019】
(後筒1)
図3は、繰出容器100の後部の断面斜視図である。
図4は繰出容器100の後部の断面分解斜視図である。後筒1は、後筒本体10と、後筒本体10の内側に配置される雌ネジ部材15とを備える。
【0020】
(後筒本体10)
後筒本体10は、外径が略一定で、前側が開口し、後側が閉じた有底円筒部材である。後筒本体10の内面は、軸A方向の略中央部より前側の径が後側の径より大きく、径が変化する部分に段部12が形成されている。段部12から前側に向かって、等しい長さで互いに平行に軸A方向に延びる複数の内面突条部13Aが円周方向に略等間隔で設けられている。後筒本体10の内面の前側には、周方向に延びる後筒周溝14が設けられている。
【0021】
(雌ネジ部材15)
雌ネジ部材15は円筒部材である。雌ネジ部材15の外面には、軸A方向に延びる複数の外面突条部16が円周方向に略等間隔で設けられている。雌ネジ部材15の外面突条部16の外径は、後筒本体10の前側の内径と略等しい。外面突条部16と、後筒本体10に設けられた内面突条部13Aの数は等しい。後筒本体10の内側に雌ネジ部材15が配置されると、隣り合う内面突条部13A間の溝に外面突条部16が嵌る。そして、雌ネジ部材15の後端は、後筒本体10の段部12と当接し、雌ネジ部材15の先端は、後述の前筒後部25の後端と当接する。これにより、雌ネジ部材15は、繰出容器本体100Aの内部において軸A方向への移動が制限されるとともに、雌ネジ部材15と後筒本体10との相対回転が防止される。
【0022】
雌ネジ部材15の内面の軸A方向の略中央部には、周方向の2か所に、後述の雄ネジ部31と螺合する雌ネジ部17が設けられている。
【0023】
(雄ネジ部材3)
雄ネジ部材3は、前側に配置される収容筒部32と、収容筒部32から後側に延びる雄ネジ部31と、ストッパー部材4とを備える。
【0024】
(収容筒部32)
収容筒部32の外面には、周方向の2か所に軸A方向に延びる突条の縦リブ33が設けられている。収容筒部32の前側には、孔部34が設けられている。
孔部34は、前側の大径孔部34aと後側の小径孔部34bとが設けられている。小径孔部34bの内径は、軸部7の外径より僅かに大きい。
【0025】
(雄ネジ部31)
雄ネジ部31は、外面に雄ネジ31Aが形成された円柱部材で、雌ネジ部17と螺合している。
【0026】
(ストッパー部材4)
ストッパー部材4は、軸部7が挿通可能で軸A方向に貫通した開口41が中央に設けられている。本実施形態では、開口41の内径は収容筒部32の小径孔部34bの内径と略同一であり、軸部7の外径より僅かに大きい。ストッパー部材4は、外径が収容筒部32の外径と略等しいストッパー前部42と、ストッパー前部42より小径で収容筒部32の大径孔部34aの径と略等しい外径を有し、ストッパー前部42から後方に延びるストッパー後部43とを有している。ストッパー後部43の外周には、軸A方向に突条のリブ44が複数設けられており(
図2に図示、
図4にはわずかに図示)、ストッパー後部43が収容筒部32の大径孔部34aに差し込まれると、ストッパー後部43の外周の突条のリブ44が大径孔部34aの内周面に圧接され、ストッパー部材4は収容筒部32の前側に保持される。ストッパー前部42の前面は、前側から後ろ側に向かって径が小さくなるテーパ面になっている。
【0027】
(弾性部材5)
弾性部材5は、本実施形態ではOリングであり、材質はゴムまたはエラストマーである。弾性部材5は、雄ネジ部材3の孔部34の内部において、外周が大径孔部34aの内面に当接するように配置され、大径孔部34aの底面とストッパー部材4におけるストッパー後部43の後端面との間に挟持され、固定保持される。
弾性部材5は、力がかかっていない状態の内径が軸部7の外径より小さく、軸部7が挿入されると、弾性によって軸部7を保持する。
なお、本実施形態と異なり、弾性部材5は、例えば、二色成型により雄ネジ部材3の孔部34の内面に一体的に設けられていてもよい。また、ストッパー部材4が設けられていなくてもよい。
【0028】
(前筒2)
図5は、繰出容器100の前部の断面斜視図である。
図6は繰出容器100の前部の断面分解斜視図である。前筒2は、前筒前部20と、前筒前部20から後側に延びる前筒後部25とを備える。
【0029】
(前筒前部20)
前筒前部20は、全体として略円錐台形状であり、前筒前部20の軸A方向に直交する平面における外面の形状は、後端が後筒本体10と略同一の外径の円形であり、後側から前側に向かって徐々に細くなるとともに楕円形に変化する。前筒前部20の先端には、棒状部材Bが繰り出される開口部21が設けられている。前筒前部20の内部を軸A方向に延びる前筒孔部22は、後側から前側に向かって第1孔22a、第2孔22b、第3孔22cを有し、第1孔22a、第2孔22b、第3孔22cの順に内側形状が小さくなっている。
第1孔22a及び第2孔22bは、軸A方向に直交する平面において円形であり、第3孔22cは、軸A方向に直交する平面において楕円形である。
【0030】
第1孔22aの後部には、周方向に延びる係合周溝24と、前筒前部20の後端から前側に向かって軸A方向に延びる2か所の係合縦溝23aとが設けられている。
【0031】
第2孔22bには、第2孔22bの後端から前側に向かって軸A方向に延びる縦溝前部23bが2か所に設けられている。
【0032】
第2孔22bの内径は、ストッパー部材4のストッパー前部42及び収容筒部32の外径と略等しく、ストッパー部材4が取り付けられた雄ネジ部材3の先端が第2孔22bの内部まで進入可能である。
【0033】
第3孔22cは、開口部21まで延びる孔で、軸A方向に直交する平面において楕円形状である。第3孔22cにおける楕円形状の短軸の対向する内面には、軸A方向に延びるチャックガイド溝23cが2か所形成されている。チャックガイド溝23cは、第3孔22cの後端から先端の開口部21まで延びている。第3孔22cの内側形状は、ストッパー前部42及び雄ネジ部材3の先端の収容筒部32の外径より小さく、雄ネジ部材3の第3孔22cへの進入が防止されている。
【0034】
(前筒後部25)
前筒後部25は略円筒形である。前筒後部25の内面には、縦溝後部25bが2か所設けられている。前筒前部20と前筒後部25とが連結されると、前筒後部25の縦溝後部25bと前筒前部20の縦溝前部23bとが連続して雄ネジ部材3の縦リブ33を直進案内する2か所の縦溝2bとなる。雄ネジ部材3の縦リブ33が縦溝2b内に直進案内されることにより、雄ネジ部材3が前筒2に対して、相対回転せずに前後移動可能となる。
【0035】
前筒後部25の外面には、周方向に延びる前側周凸部26と、前側周凸部26よりも後側において周方向に延びる後側周凸部27と、後側周凸部27よりも前側において、前側周凸部26を超えて前側に向かって軸A方向に延びる2か所の係合縦リブ25aとが設けられている。
【0036】
前筒前部20と前筒後部25とが連結されて前筒2が形成されると、係合周溝24は、前筒後部25の前側周凸部26と係合し、前筒前部20と前筒後部25との軸A方向の相対移動が防止される。係合縦溝23aは、前筒後部25の係合縦リブ25aと係合し、前筒前部20と前筒後部25との周方向の相対移動が防止される。
【0037】
これにより、前筒前部20と前筒後部25とが一体となって前筒2を構成する。そして、前筒2に対して後筒1が取り付けられると、後筒周溝14が前筒後部25の後側周凸部27と係合し、前筒2は後筒1に対して相対回転可能に連結される。
【0038】
(チャック部材6)
チャック部材6は、棒状部材Bを保持する部材である。チャック部材6の先端には、断面が略楕円形の保持孔61が設けられている。保持孔61の外側の形状も略楕円形である。棒状部材Bは保持孔61に挿入されて、チャック部材6によって保持される。チャック部材6の外面は、第3孔22cの内側形状によりガイドされる。本実施例においてチャック部材6の外面の楕円形の短軸の対向する面には軸A方向に延びる凸条のスライド部63が周方向の2か所、設けられている。スライド部63が、第3孔22cのチャックガイド溝23cに嵌ることによりチャック部材6が前筒2に対して相対回転不能となるとともに、チャックガイド溝23cにガイドされて軸A方向に直進移動可能となる。
【0039】
このように、チャック部材6のスライド部63と第3孔22cのチャックガイド溝23cを係合させることで、チャック部材6の周方向への動きが規制されるのでチャック部材6の軸A方向の動きが安定する。これに加え、前述したチャック部材6の後側(軸部7)を保持する雄ネジ部材3の縦リブ33と、棒状部材Bに近い位置にあるチャック部材6のスライド部63との2か所で周方向への動きも規制されることで、チャック部材6の軸A方向の動きが、より安定する。更に、チャック部材6の先端側の形状が、円形ではなく、楕円形のような方向性のある形状であることにより、チャック部材6を周方向に位置決めできるので、棒状部材Bを安定して繰り出すことができる。また、スライド部63と第3孔22cのチャックガイド溝23cとの係合は、後述のチャック部材6の交換時の周方向の位置合わせとして機能する。
【0040】
(軸部7)
チャック部材6の後端には細長い円柱状の軸部7が設けられている。軸部7は、雄ネジ部材3の先端に設けられた孔部34に対して弾性部材5を介して着脱可能に嵌合している。
なお、軸部7と弾性部材5との嵌合力よりも、ストッパー部材4と雄ネジ部材3の収容筒部32との嵌合力が大きいので、チャック部材6(軸部7)を雄ネジ部材3から着脱する際に、ストッパー部材4が収容筒部32から外れてしまうことはない。
【0041】
(棒状部材B)
実施形態で棒状部材Bは、例えばアイブロウ、アイライナー、軟質色鉛筆芯等の細長い部材で、断面は略菱形であるが、これに限定されない。実施形態で断面が略菱形の棒状部材Bは、2つの対角線の長さが、断面が略楕円形の保持孔61の長径及び短径と、それぞれ略等しい。
【0042】
棒状部材Bの後端がチャック部材6の保持孔61に差し込まれると、棒状部材Bの対角線の角部が保持孔61の断面が略楕円形の内面と当接することで棒状部材Bがチャック部材6に保持される。ただし、これに限定されず、チャック部材6の保持孔61の先端に複数の爪部を設けて爪部を棒状部材Bに食い込ませて棒状部材Bを保持してもよく、また保持孔61を形成する側面にスリットを設けて棒状部材Bをチャック部材6の側面の弾性によって保持してもよい。
【0043】
前筒2の第3孔22cの先端の開口部21は、着脱部材100Bが開口部21から着脱可能なように、着脱部材100B、すなわちチャック部材6よりも大きい。しかし、棒状部材Bの使用時、すなわち棒状部材Bが開口部21から突出しつつ、チャック部材6の先端が開口部21より後方に位置している状態で、開口部21と棒状部材Bとの間の隙間が大きいと、棒状部材Bのガタツキが大きくなる。ゆえに、チャック部材6の棒状部材Bを保持する部分の肉厚をなるべく薄くして、開口部21と棒状部材Bとの間の隙間を小さくすることが好ましい。
【0044】
図7は、繰出容器100の断面図である。
図7(a)は、棒状部材Bが、未使用状態、すなわち最も長い状態で繰出容器本体100Aの内部に収納された状態を示す。雄ネジ部材3の軸A方向の後端が、後筒1の内側の底面と当接しており、これ以上、雄ネジ部材3が後退しない状態である。
図7(b)は、棒状部材Bが最も短く、棒状部材Bのチャック部材6に保持されている部分の先端が開口部21の位置にある状態である。なお、棒状部材Bが未使用の状態の長さを点線で示す。
図7(c)は、
図7(b)よりも着脱部材100Bがさらに繰り出された、着脱部材100Bが最も繰り出された状態を示す。雄ネジ部材3の軸A方向の先端であるストッパー部材4が、第2孔22bの軸A方向の前端面(第3孔22cと第2孔22bと間の段差の面)に当接しており、これ以上、雄ネジ部材3が前進しない状態である。
【0045】
図示するように、棒状部材Bがチャック部材6に保持されたときにチャック部材6よりも軸A方向に突出している有効部の長さを有効長さL1とする。L1は、棒状部材Bの使用可能な長さである。チャック部材6の先端から雄ネジ部材3の先端までの距離をL2とする。そして、前筒2の第3孔22cの長さをL3とする。さらに、チャック部材6の先端から後端(すなわち軸部7の後端)までの距離をL4とする。本実施形態では、L1<L3<L2<L4である。
【0046】
前筒前部20の先端側の外側形状は、棒状部材Bの外側形状に合わせて細い形状とすることが、使用時の視認性の観点から好ましい。一方、後筒1の外側形状や雄ネジ部材3は、使用時の持ちやすさや繰出しの操作性・精度の観点から、一定以上の太さがあることが好ましい。
【0047】
チャック部材6は、前筒前部20の第3孔22cの先端に設けられた開口部21から交換可能であるため、前筒前部20の先端側の外側形状(細さ)は、棒状部材Bを保持するチャック部材6のスライド部63及び前筒孔部22の第3孔22cにより形状が定まる。
【0048】
一方、雄ネジ部材3は、チャック部材6と雄ネジ部材3とが、交換可能に連結する構造とする場合、雄ネジ部材3の先端の外径が太くなりやすい。そして、後筒1の外径は、内部に雄ネジ部材3及び雌ネジ部17を収納するため通常円筒形状となる。
【0049】
本実施形態では、雄ネジ部材3の先端の外径が第3孔22cより大きいので、雄ネジ部材3の第3孔22cへの進入が防止される。
【0050】
また、チャック部材6の先端から後端までの長さL4が第3孔22cの長さL3よりも長い。ゆえに、チャック部材6の先端が、第3孔22cの先端から突出した状態においても、チャック部材6の後端に設けられた軸部7は、雄ネジ部材3の先端に設けられた孔部34に弾性部材5を介して嵌合している状態を維持することができる。
【0051】
このような本実施形態の構成とすることで、チャック部材6が前筒前部20の先端の開口部21から交換可能であるとともに、前筒前部20の先端側の外側形状は、棒状部材Bの外側形状に合わせた細い形状とすることが可能である。
【0052】
図7(a)の状態は棒状部材Bが、未使用状態、すなわち最も長い状態で繰出容器本体100Aの内部に収納された状態である。本実施形態ではL1<L3であるので、棒状部材Bにおける有効長さL1の部分は、前筒2の先端の、最も内側形状が小さい第3孔22cの内部に保持されている。ゆえに、棒状部材Bと第3孔22cの内面との間の隙間は小さいので、棒状部材Bを保護することができる。
【0053】
図7(a)の状態で、前筒2を後筒1に対して相対回転させると、前筒2とともに雄ネジ部材3も後筒1に対して回転する。雄ネジ部31の雄ネジ31Aが雌ネジ部材15と螺合しているので、雄ネジ部材3とともに、着脱部材100Bである軸部7を後端に設けたチャック部材6及び棒状部材Bも、後筒1に対して軸A方向前側に相対移動し、棒状部材Bが繰り出されて開口部21から突出する。そうすると、棒状部材Bが使用可能となる。
【0054】
図7(b)は棒状部材Bが最も短く、すなわち棒状部材Bのチャック部材6に保持されている部分以外の使用可能な部分が全て使用(消耗)された状態で、チャック部材6の先端が開口部21の位置にある。
図7(b)の状態は、
図7(a)の状態から、着脱部材100Bが軸A方向前側にL1だけ移動した状態である。
【0055】
このとき、チャック部材6の先端は第3孔22cの先端である開口部21と軸A方向に同じ位置になる。チャック部材6の先端からストッパー部材4の先端(すなわち、雄ネジ部材3の先端)までの長さはL2であり、第3孔22cの長さL3より長い。ゆえに、雄ネジ部材3の先端は、第3孔22cよりも後側にある。したがって雄ネジ部材3の先端が第3孔22cと第2孔22bとの間の段差の面に当接して移動が制限されることがなく、棒状部材Bの有効部の全長L1を開口部21よりも外に出すことができる。
【0056】
図7(b)に示すように、棒状部材Bの有効長さL1である有効部を使い切ったとき、着脱部材100Bの交換が必要となる。このとき
図7(b)の状態では、チャック部材6が前筒2の内部にあるので着脱部材100Bを引き出すことができない。しかし、実施形態では、チャック部材6の先端から雄ネジ部材3の先端までの長さはL2であり、第3孔22cの長さL3より長い。ゆえに、
図7(c)に示すように、前筒2を後筒1に対してさらに相対回転させて、チャック部材6の先端をさらに前側に繰り出すことができる。
なお、本実施形態において雄ネジ部材3の前後方向への移動可能距離(
図7(a)から
図7(c)の移動距離)は、第3孔22cの長さL3と略同じ長さである。よって、チャック部材6の先端から雄ネジ部材3の先端までの長さL2は、雄ネジ部材3の前後方向への移動可能距離よりも長い。
【0057】
図7(c)に示す、前筒2の先端からチャック部材6の先端が繰り出された状態で、チャック部材6の先端(スライド部63の外面)を持って、着脱部材100Bを矢印方向に引き抜くことができる。
このとき、チャック部材6の軸部7の後端は、Oリングである弾性部材5に保持されているだけなので、容易に引き抜くことができる。そして、使用済みの着脱部材100Bを廃棄して、新たな着脱部材100Bを繰出容器本体100Aに取り付ける。弾性部材5による嵌合であるため、弾性部材5と軸部7との着脱を繰返しても嵌合力が低下しにくく、着脱部材100Bを繰返し交換することができる。
【0058】
使用済みの着脱部材100Bは、軸部7を後端に設けたチャック部材6、及び棒状部材Bの一部におけるチャック部材6の保持孔61に保持されている使用不能な部分である。ゆえに廃棄部材が少なくて済み、また磁石などを含んでいないので、廃棄処理も容易である。
【0059】
次いで、有効長さがL1である棒状部材Bを有する新たな着脱部材100Bを、繰出容器本体100Aに取り付ける。なお、着脱部材100Bにおいて、棒状部材Bの有効部の保護のためにカバーをつけていてもよい。このとき、着脱部材100Bを、チャック部材6の後端の軸部7側から、繰出容器本体100Aにおける前筒2の開口部21に挿入し、軸A方向後側に押し込む。そうすると、ストッパー前部42の前面がテーパ面になっているので、軸部7を押し込んだ時に、軸部7の中心が開口41の位置よりも多少ずれていても、軸部7をテーパ面によって開口41内へと案内することができる。また、チャック部材6の後端(軸部7の後端)は、孔部34への案内や、弾性部材5を傷つけないように、R形状や面取りされていることが好ましい。本実施形態では、半球状になっている。軸部7の後端は、ストッパー部材4の開口41より孔部34に入り、弾性部材5の中央の孔を通り抜けて、孔部34の小径孔部34bの底部に当接するまで入りこむ。軸部7は弾性部材5の弾性によって孔部34内に保持されて、固定され、所定以上の力が加わらない限り、雄ネジ部材3に対して回転不能且つ軸A方向の移動不能に保持することができる。
【0060】
ここで、チャック部材6の先端から後端までの距離L4は、チャック部材6の先端から雄ネジ部材3の先端までの長さL2より大きい。ゆえに、チャック部材6の先端が第3孔22cの先端から突出した状態で、チャック部材6の軸部7の後端が雄ネジ部材3の先端の孔部34に入り、チャック部材6が弾性部材5を介して雄ネジ部材3と嵌合可能にすることができる。
【0061】
以上の様に新たな着脱部材100Bを繰出容器本体100Aに取り付けた後、前筒2を後筒1に対して先ほどとは逆方向に相対回転させると、雄ネジ部材3とともに着脱部材100Bが後筒1に対して軸A方向後側に相対移動し、棒状部材Bが繰出容器本体100Aの内部に収納されて、再び
図7(a)の状態になる。
【0062】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態の繰出容器における、弾性部材205、ストッパー部材204、及び軸部207の分解斜視図である。第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、弾性部材205及び軸部207の後部の形状である。その他については第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0063】
弾性部材205は、ドーナツ型のOリングではなく、雄ネジ部材3の収容筒部32の孔部34の内面に当接する外側円筒部205aと、軸部207の凹溝207aに嵌る内側円筒部205bと、外側円筒部205aと内側円筒部205bとを連結する連結前輪205cとを有する。円柱状の軸部207は、後端部の軸A方向の一定領域に、内側円筒部205bの長さと略等しい凹溝207a有する。
【0064】
本実施形態によると、凹溝207aに内側円筒部205bが嵌るので、第1実施形態の効果に加えて、着脱部材をより強固に保持することができる。
また、本実施形態のように軸部207に凹溝207aを設けることで、使用者が凹溝207aに内側円筒部205bが嵌る感触により、所定の位置に嵌合されたことを知ることができる。
【0065】
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態の繰出容器300の断面図である。
図10は繰出容器300の分解斜視図である。第3実施形態において第1実施形態と同様の部分には同様の符号を付し、説明を省略する。第3実施形態が第1実施形態と異なる点は、棒状部材Bが円柱形状で径が大きい点である。また、チャック部材306は保持孔361の内面に、内側に突出した凸部306aを周方向に均等に6本有している。棒状部材Bは凸部306aが食い込むことにより、チャック部材306に保持されている。
【0066】
軸部307は第1実施形態と比べて短い。さらに、前筒302は前筒前部と前筒後部とに分かれておらず、一体部材である。前筒302の内部の孔322の径は円形で略一定である。
【0067】
チャック部材306の外径と雄ネジ部材3の先端側の収容筒部32の外径は略同じであり、前筒302の内部の孔322の内径より僅かに小さい。雄ネジ部材3の収容筒部32の外周には縦リブ33が設けられており、前筒302の内部の孔322には開口部321の近くまで、雄ネジ部材3の縦リブ33と係合する縦溝2bが設けられている。雄ネジ部材3は前筒302と相対回転不能となり、雄ネジ部材3が前筒302の内部の孔322を前後移動可能である。
【0068】
第1実施形態と異なり、前筒302の開口部321の近くまで雄ネジ部材3の先端が前進することが可能であるため、チャック部材306に設けられた軸部307を短くしても、開口部321からチャック部材306の先端を繰り出して、チャック部材306(着脱部材300B)が交換可能である。
【0069】
さらに、第1実施形態と異なり、チャック部材306の外周には、前筒302の内部の孔322と相対回転不能になるような係合部が設けられていない。棒状部材B及びチャック部材306の外周が円柱形状で方向性がないため、周方向の位置合わせをしないでチャック部材306を雄ネジ部材3に着脱可能である。
【0070】
本実施形態においては、第1実施形態の効果に加えて、太い棒状部材Bも、凸部306aによってしっかりと保持できる。また、チャック部材306の軸部307の長さを短くできるので、繰出容器300の全長を短くすることができる。
【0071】
(変形形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、種々の変更が可能である。例えば、上述の実施形態では、チャック部材6の後端に細長い円柱状の軸部7が設けられていたが、これに限定されず軸部7は雄ネジ部材3の先端から前側に向かって延びていてもよい。この場合、例えば、チャック部材6の後端に孔部を設けて孔部の内面に配置されるよう弾性部材を保持し、その孔部の後端にストッパー部材を設ける構造とすることができる。この場合、棒状部材、チャック部材、弾性部材及びストッパー部材が着脱部材100Bとなる。
【0072】
また、例えば、チャック部材6の軸部7の後端側の外周に溝を設けOリング(弾性部材5)を保持し、雄ネジ部材3の先端に設けられた孔部34の内面と嵌合可能にしてもよい。この場合、棒状部材、チャック部材、弾性部材が着脱部材100Bとなる。廃棄物が少なくなる観点から、弾性部材5は、雄ネジ部材3に設けられていることが好ましい。
第1実施形態において、孔部34は、前側の大径孔部34aと後側の34bとが設けられていたが、小径孔部34bが設けられてなくてもよい。
【符号の説明】
【0073】
A 軸
B 棒状部材
1 後筒
10 後筒本体
11 筒孔
12 段部
13A 内面突条部
14 後筒周溝
15 雌ネジ部材
16 外面突条部
17 雌ネジ部
2 前筒
2b 縦溝
20 前筒前部
21 開口部
22 前筒孔部
22a 第1孔
22b 第2孔
22c 第3孔
23a 係合縦溝
23b 縦溝前部
23c チャックガイド溝
24 係合周溝
25 前筒後部
25a 係合縦リブ
25b 縦溝後部
26 前側周凸部
27 後側周凸部
3 雄ネジ部材
31 雄ネジ部
32 収容筒部
33 縦リブ
34 孔部
4 ストッパー部材
41 開口
42 ストッパー前部
43 ストッパー後部
5 弾性部材
6 チャック部材
61 保持孔
63 スライド部
7 軸部
100 繰出容器
100A 繰出容器本体
100B 着脱部材