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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156489
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】光学材料
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/22 20060101AFI20241029BHJP
   G02B 1/04 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
C08F20/22
G02B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070995
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100224605
【弁理士】
【氏名又は名称】畠中 省伍
(72)【発明者】
【氏名】工藤 宏人
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100BA02P
4J100BA02Q
4J100BA06Q
4J100BB05P
4J100BC43P
4J100CA01
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA22
4J100DA63
4J100FA03
4J100FA19
4J100FA28
4J100JA33
4J100JA43
(57)【要約】      (修正有)
【課題】成形加工性に優れ、溶解プロセスを経ずとも成形加工により光学部品を製造可能な、新規な高屈折率高分子材料である光学材料の提供。
【解決手段】式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-(LO)-TIP
[式中、
TIPはトリヨードフェニル基であり、
は水素原子、メチル基又はハロゲン原子であり、
は-O-又は-NH-であり、
はそれぞれ独立して炭素数1以上10以下のアルキレン基であり、
pは1以上5以下である。]
で表されるトリヨードフェニル基含有アクリルモノマー(1)から誘導された繰り返し単位を含む含ヨウ素ポリマーを含む、光学材料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-(LO)-TIP
[式中、
TIPはトリヨードフェニル基であり、
は水素原子、メチル基又はハロゲン原子であり、
は-O-又は-NH-であり、
はそれぞれ独立して炭素数1以上10以下のアルキレン基であり、
pは1以上5以下である。]
で表されるトリヨードフェニル基含有アクリルモノマー(1)から誘導された繰り返し単位を含む含ヨウ素ポリマーを含む、光学材料。
【請求項2】
がそれぞれ独立して炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、
pは1~3である、請求項1に記載の光学材料。
【請求項3】
-Y-(LO)-が
式:
-O-CHCH-O-
で表される、請求項1に記載の光学材料。
【請求項4】
成形加工用である、請求項1に記載の光学材料。
【請求項5】
自立膜形成用である、請求項1に記載の光学材料。
【請求項6】
前記含ヨウ素ポリマーが下記
式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-R
[式中、TIPは前記トリヨードフェニル基であり、
は水素原子、メチル基又はハロゲン原子であり、
は-O-又は-NH-であり、
Rは炭素数2~30の有機基である。]
で表されるトリヨードフェニル基非含有アクリルモノマー(2)から誘導された繰り返し単位を有する、請求項1に記載の光学材料。
【請求項7】
Rがアルキレン基又は(ポリ)オキシアルキレン基である、請求項6に記載の光学材料。
【請求項8】
前記モノマー(1)から誘導された繰り返し単位の含有量は、含ヨウ素ポリマー中、75重量%以上である、請求項1に記載の光学材料。
【請求項9】
前記含ヨウ素ポリマーが分子量制御剤から誘導された構造を有する、請求項1に記載の光学材料。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の光学材料を含む、光学部品。
【請求項11】
前記光学材料の成形加工品である、請求項10に記載の光学部品。
【請求項12】
自立膜である、請求項10に記載の光学部品。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載の光学材料を成形加工する工程を含む、光学部品の製造方法。
【請求項14】
基材上で前記成形加工を行い光学材料の膜を形成し、前記基材から前記膜を分離する工程を含む、請求項13に記載の光学部品の製造方法。
【請求項15】
請求項10に記載の光学部品を備える光学物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は特に、高屈折率高分子材料に用いられる、含ヨウ素ポリマーを含む光学材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高屈折率高分子材料の研究・開発が進められている。特許文献1は、高屈折率高分子材料として、トリヨードフェニル基含有アクリルモノマーから誘導された繰り返し単位を含む含ヨウ素ポリマーを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-131503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、高屈折高分子材料を適切な溶媒に溶解させてそれを基材にキャスティングすることにより光学部品を形成している。しかしながら、斯かる製造方法においては溶媒の選定、溶媒の管理、溶解、塗布、溶媒除去等が必要となり、生産性に劣り工業的に不利となり得る。
【0005】
本開示においては、成形加工性に優れ、溶解プロセスを経ずとも成形加工により光学部品を製造可能な、新規な高屈折率高分子材料である光学材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における一実施形態は次のとおりである:
[項1]
式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-(LO)-TIP
[式中、
TIPはトリヨードフェニル基であり、
は水素原子、メチル基又はハロゲン原子であり、
は-O-又は-NH-であり、
はそれぞれ独立して炭素数1以上10以下のアルキレン基であり、
pは1以上5以下である。]
で表されるトリヨードフェニル基含有アクリルモノマー(1)から誘導された繰り返し単位を含む含ヨウ素ポリマーを含む、光学材料。
[項2]
がそれぞれ独立して炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、
pは1~3である、項1に記載の光学材料。
[項3]
-Y-(LO)-が
式:
-O-CHCH-O-
で表される、項1又は2に記載の光学材料。
[項4]
成形加工用である、項1~3のいずれか一項に記載の光学材料。
[項5]
自立膜形成用である、項1~4のいずれか一項に記載の光学材料。
[項6]
前記含ヨウ素ポリマーが下記
式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-R
[式中、TIPは前記トリヨードフェニル基であり、
は水素原子、メチル基又はハロゲン原子であり、
は-O-又は-NH-であり、
Rは炭素数2~30の有機基である。]
で表されるトリヨードフェニル基非含有アクリルモノマー(2)から誘導された繰り返し単位を有する、項1~5のいずれか一項に記載の光学材料。
[項7]
Rがアルキレン基又は(ポリ)オキシアルキレン基である、項6に記載の光学材料。
[項8]
前記モノマー(1)から誘導された繰り返し単位の含有量は、含ヨウ素ポリマー中、75重量%以上である、項1~7のいずれか一項に記載の光学材料。
[項9]
前記含ヨウ素ポリマーが分子量制御剤から誘導された構造を有する、項1~8のいずれか一項に記載の光学材料。
[項10]
項1~9のいずれか一項に記載の光学材料を含む、光学部品。
[項11]
前記光学材料の成形加工品である、項10に記載の光学部品。
[項12]
自立膜である、項10又は11に記載の光学部品。
[項13]
項1~9のいずれか一項に記載の光学材料を成形加工する工程を含む、光学部品の製造方法。
[項14]
基材上で前記成形加工を行い光学材料の膜を形成し、前記基材から前記膜を分離する工程を含む、項13に記載の光学部品の製造方法。
[項15]
項10~12のいずれか一項に記載の光学部品を備える光学物品。
【発明の効果】
【0007】
本開示における光学材料は、成形加工性に優れ、かつ、高屈折率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<光学材料>
本開示における光学材料は各種光学部品の原料となる材料であって、特にその高屈折率を活かした光学部品に用いられる。本開示における光学材料は、下記にて説明する含ヨウ素ポリマーを含むものである。
【0009】
〔含ヨウ素ポリマー〕
本開示における含ヨウ素ポリマーは、トリヨードフェニル基含有アクリルモノマー(1)から誘導された繰り返し単位を含む。
【0010】
[含ヨウ素ポリマーの特性等]
本開示における含ヨウ素ポリマーは成形加工性に優れる。成形加工性に優れるとは、例えば、成形に適した可塑性及び粘性を示し、所定の形状を形成できることをいう。成形加工は熱成形加工であってもよく、加熱により軟化させた状態で成形加工を行ってもよい。成形加工の例としては、圧縮成形、押出成形や射出成形等が挙げられる。従来の含ヨウ素ポリマーは十分な成形加工性・軟化性を示さない等の問題があり、成形に適していなかった。
【0011】
また、本開示における含ヨウ素ポリマーは、成形後、自立膜として扱える。自立膜とは基材や基板がなく膜自身でその形状を保持可能なものを言う。従来の含ヨウ素ポリマーは成形加工性が十分ではなく、仮に膜化させたとしてもポリマーの柔軟性や機械強度が劣るため、砕かれる等して基材から分離することが困難であり、自立膜たり得なかった。
【0012】
また、本開示の光学材料は、屈折率及び成形加工性のみならず、溶解性、成膜性、及び/又は耐熱性等においても優れ得る。
【0013】
(含ヨウ素ポリマーの屈折率)
本開示における含ヨウ素ポリマーの屈折率は、1.65以上、1.70以上、1.72以上、1.76以上、1.78以上、1.80以上、又は1.82以上であってよく、好ましくは1.72以上、より好ましくは1.78以上である。
【0014】
(含ヨウ素ポリマーの耐熱性)
本開示における含ヨウ素ポリマーの耐熱温度(窒素ガス雰囲気中、10℃/分の昇温速度で昇温させたときに、5%の重量減少が認められる温度)は、250℃以上、260℃以上、270℃以上、280℃以上、290℃以上、300℃以上、310℃以上、又は320℃以上であってよく、好ましくは260℃以上、より好ましくは280℃以上である。
【0015】
(含ヨウ素ポリマーの分子量)
本開示における含ヨウ素ポリマーの重量平均分子量は10000以上、25000以上、50000以上、75000以上、100000以上、150000以上、200000以上、250000以上、又は300000以上であってよく、好ましくは50000以上、より好ましくは75000以上である。本開示における含ヨウ素ポリマーの数平均分子量は3000000以下、2000000以下、1000000以下、500000以下、250000以下、150000以下、又は100000であってよい。分子量が上記範囲、特に上記下限値以上にあることで、含ヨウ素ポリマーの成形加工性及び屈折率にとって好適である。なお、上記重量平均分子量はポリスチレン換算分子量であってよい。
【0016】
本開示における含ヨウ素ポリマーの分散指数(Mw/Mn)は1.5以上、2以上、3以上、又は4以上であってよい。本開示における含ヨウ素ポリマーの分散指数(Mw/Mn)は7.5以下、5以下、4以下、又は3以下であってよい。
【0017】
[含ヨウ素ポリマーの構造]
含ヨウ素ポリマーは直鎖状又は分岐鎖状であってもよいが、好ましくは直鎖状である。
【0018】
((1)トリヨードフェニル基含有アクリルモノマー)
含ヨウ素ポリマーはトリヨードフェニル基含有アクリルモノマー(1)から誘導された繰り返し単位を有する。従来、含ヨウ素含有ポリマーはその成形加工性が十分ではないという課題があった。本願発明者は、ヨウ素含有モノマーの中でもトリヨードフェニル基含有アクリルモノマー(1)を選択することで、高屈折率を有しつつ、それら課題も解消し得ることを予想外にも見出した。
【0019】
本開示におけるモノマー(1)は下記
式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-(LO)-TIP
[式中、
TIPはトリヨードフェニル基であり、
は水素原子、メチル基又はハロゲン原子であり、
は-O-又は-NH-であり、
はそれぞれ独立して炭素数1以上10以下のアルキレン基であり、
pは1以上5以下である。]
で表されてよい。
【0020】
TIPはトリヨードフェニル基であり、2,3,5-トリヨードフェニル基又は2,4,6-トリヨードフェニル基であってよく、好ましくは2,4,6-トリヨードフェニル基である。
【0021】
は水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0022】
は-O-であることが好ましい。
【0023】
の炭素数は1以上、2以上、3以上、4以上、又は5以上であってよく、10以下、8以下、6以下、4以下、又は2以下であってよく、例えば4以下である。
【0024】
pは1以上、2以上、3以上、又は4であってよく、5以下、4以下、3以下、2以下、又は1であってよく、例えば3以下である。
【0025】
-(LO)-の繰り返し単位である-LO-の具体例としては、
-CHCHO-
-CHCH(CH)O-
-CHCH(C)O-
-CHC(CHO-
-CHCHCHCHO-
等が挙げられる。
【0026】
((2)トリヨードフェニル基非含有アクリルモノマー)
含ヨウ素ポリマーは、トリヨードフェニル基非含有アクリルモノマー(2)から誘導された繰り返し単位を含んでよい。
【0027】
トリヨードフェニル基非含有アクリルモノマー(2)はトリヨードフェニル基を有しない。トリヨードフェニル基非含有アクリルモノマー(2)はヨードフェニル基を有しなくてもよく、ヨウ素原子を有しなくてもよい。
【0028】
本開示におけるモノマー(2)は下記
式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-R
[式中、
は、水素原子、メチル基又はハロゲン原子であり、
は、-O-又は-NH-
Rは、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1~30の有機基である。]
で表されてよい。
【0029】
は水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0030】
は-O-であることが好ましい。
【0031】
Rは、脂肪族基又は芳香族基であってよく、好ましくは脂肪族基であり、特にアルキル基又は(ポリ)オキシアルキレン基である。
【0032】
Rがアルキル基である場合、Rの炭素数は1以上、2以上、3以上、5以上、又は10以上であってよく、30以下、25以下、20以下、15以下、又は10以下であってよい。
【0033】
Rが(ポリ)オキシアルキレン基である場合、Rにおける酸素原子の数は1以上、2以上、又は3以上であってよく、25以下、7以下、又は5以下であってよい。
【0034】
Rが(ポリ)オキシアルキレン基である場合、Rは次式:
-(RO)-R
[式中、Rはそれぞれ独立して炭素数1以上10以下のアルキレン基であり、Rは、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基、qは1以上100以下である。]
で表されてよい。
【0035】
の炭素数は1以上、2以上、3以上、又は5以上であってよく、10以下、7以下、5以下、又は3以下であってよい。
【0036】
qは1以上、3以上、5以上、10以上、25以上、又は50以上であってよく、100以下、80以下、60以下、40以下、20以下、10以下、又は5以下であってよい。
【0037】
-(RO)-の繰り返し単位である-RO-の具体例としては、
-CHCHO-
-CHCH(CH)O-
-CHCH(C)O-
-CHC(CHO-
-CHCHCHCHO-
等が挙げられる。
【0038】
がアルキル基である場合、Rの炭素数は1以上、2以上、3以上、又は5以上であってよく、10以下、7以下、5以下、又は3以下であってよい。
【0039】
(含硫黄構造)
本開示における含ヨウ素ポリマーは、硫黄原子を有してもよい。硫黄原子を有することで、含ヨウ素ポリマーの屈折率が向上し得る。硫黄原子は主鎖中又は側鎖中に存在してよく、主鎖中に存在することが好ましい。
【0040】
(分子量制御剤から誘導された構造)
本開示における含ヨウ素ポリマーは、分子量制御剤から誘導された構造を有してもよい。分子量制御剤とは、重合を抑制して分子量範囲を制御できる添加剤のことであり、代表的には連鎖移動剤である。分子量制御剤は、芳香族化合物であることが好ましい。芳香族であることにより、含ヨウ素ポリマーの屈折率が向上し得る。分子量制御剤の例としては、各種連鎖移動剤、RAFT剤、NMP剤、ATRP剤、及びTERP剤が挙げられ、チオール型連鎖移動剤及びRAFT剤等の硫黄含有連鎖移動剤が好ましい。
【0041】
チオール型連鎖移動剤は、モノチオール化合物、ジチオール化合物、トリチオール化合物、テトラチオール以上のポリチオール化合物であってよいが、モノチオール化合物又はジチオール化合物であることが好ましい。チオール型連鎖移動剤はチオール基以外に硫黄原子を有するチオール化合物であってよい。チオール化合物は、炭素、水素及び硫黄のみからなる分子であってもよい。
【0042】
チオール型連鎖移動剤の具体例としては、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、シクロヘキサンチオール等の脂肪族モノチオール化合物;
【0043】
メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,1-プロパンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール、2,2-プロパンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、1,1-シクロヘキサンジチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジチオール、3,4-ジメトキシブタン-1,2-ジチオール、2-メチルシクロヘキサン-2,3-ジチオール、1,1-ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、チオリンゴ酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール(2-メルカプトアセテート)、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール(3-メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,2-ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3-ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパンビス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパンビス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラキス(メルカプトメチル)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物;
【0044】
ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2-メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3-メルカプトプロピル)メタン、1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2-(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,2-(3-メルカプトプロピル)エタン、1,3-ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,3-ビス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、2-メルカプトエチルチオ-1,3-プロパンジチオール、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3-ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5-ジメルカプト-1,4-ジチアン、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)ジスルフィド、4-メルカプトメチル-3,6-ジチアオクタン-1,8-ジチオール、ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチア-1,11-ウンデカンジチオール、ビス(1,3-ジメルカプト-2-プロピル)スルフィド、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(2-メルカプトアセテート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ジチアン-2,5-ジオールビス(2-メルカプトアセテート)、1,4-ジチアン-2,5-ジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、チオグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、4,4’-チオジブチル酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、4,4’-ジチオジブチル酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、チオジグリコール酸ビス(2,3-ジメルカプトプロピルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2,3-ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2,3-ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオジプロピオン酸(2,3-ジメルカプトプロピルエステル)等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する脂肪族チオール;
【0045】
ベンゼンチオール、o-メチル-α-トルエンチオール、o-トルエンチオール、m-トルエンチオール、p-トルエンチオール、1-ナフタレンチオール、2-ナフタレンチオール等の芳香族モノチオール化合物;
【0046】
1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3-トリメルカプトベンゼン、1,2,4-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、2,5-トルエンジチオール、3,4-トルエンジチオール、1,3-ジ(p-メトキシフェニル)プロパン-2,2-ジチオール、1,3-ジフェニルプロパン-2,2-ジチオール、フェニルメタン-1,1-ジチオール、及び2,4-ジ(p-メルカプトフェニル)ペンタン等の芳香族ポリチオール;
【0047】
1,2-ビス(メルカプトメチレンチオ)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチレンチオ)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチレンチオ)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチレンチオ)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチレンチオ)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチレンチオ)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトプロピレンチオ)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトプロピレンチオ)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトプロピレンチオ)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチレンチオメチレン)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチレンチオメチレン)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチレンチオメチレン)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトプロピレンチオメチレン)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトプロピレンチオメチレン)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトプロピレンチオメチレン)ベンゼン、ビス(4-メルカプトフェニル)スルフィド、ビス(3-メルカプトフェニル)スルフィド、4,4’-オキシビスベンゼンチオール、4,4’-ビフェニルジチオール、1,2-ビス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチレンオキシメチレン)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチレンオキシメチレン)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチレンオキシメチレン)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトプロピレンオキシメチレン)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトプロピレンオキシメチレン)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトプロピレンオキシメチレン)ベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する芳香族ポリチオール化合物;
【0048】
3,4-チオフェンジチオール、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する複素環化合物;
【0049】
2-メルカプトエタノール、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、グリセリンジ(メルカプトアセテート)、1-ヒドロキシ-4-メルカプトシクロヘキサン、2,4-ジメルカプトフェノール、2-メルカプトハイドロキノン、4-メルカプトフェノール、3,4-ジメルカプト-2-プロパノール、1,3-ジメルカプト-2-プロパノール、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、1,2-ジメルカプト-1,3-ブタンジオール、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールモノ(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(チオグリコレート)、ジペンタエリスリトールペンタキス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチル-トリス(メルカプトエチルチオメチル)メタン、1-ヒドロキシエチルチオ-3-メルカプトエチルチオベンゼン等のメルカプト基以外にヒドロキシ基を含有する化合物、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、又は二種類以上を併用して用いてもよい。
【0050】
RAFT剤の具体例としては、2-シアノ-2-プロピルベンゾジチオエート及び4-シアノ-4-(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタン酸等のジチオエステル類;2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカーボネート、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸及びシアノメチルドデシルトリチオカーボネート等のトリチオカーボネート類;シアノメチルメチル(フェニル)カルバモジチオエート等のジチオカーバメート類;及びビス(チオベンゾイル)ジスルフィド及びビス(ドデシルスルファニルチオカルボニル)ジスルフィド等のジスルフィド類が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、又は二種類以上を併用して用いてもよい。
【0051】
(その他の原料から誘導された構造)
本開示の含ヨウ素ポリマーは、上記以外に、その他の原料から誘導された構造を有していてよい。その他の原料の具体例としては、スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、ビニル安息香酸、4-ビニルベンゼンスルホン酸、4-ビニルベンゼンスルホン酸エステル、4-ビニルベンゼンスルホン酸アミド等のスチレン系モノマー;(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ビニルモノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N-t-ブチルアミノエチル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリル等の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド系モノマー;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニルモノマー;ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、酢酸ビニル等のその他モノマーが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、又は二種類以上を併用して用いてもよい。
【0052】
[含ヨウ素ポリマーの組成]
モノマー(1)からから誘導された繰り返し単位の含有量は、含ヨウ素ポリマー中、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、又は95重量%以上であってよく、好ましくは70重量%以上である。モノマー(1)からから誘導された繰り返し単位の含有量は、含ヨウ素ポリマー中、95重量%以下、85重量%以下、75重量%以下、65重量%以下、55重量%以上、又は45重量%以下であってよい。屈折率向上の観点からはモノマー(1)の量が多いほど好ましい。
【0053】
モノマー(2)からから誘導された繰り返し単位の含有量は、含ヨウ素ポリマー中、2.0重量%以上、4.0重量%以上、6.0重量%以上、8.0重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、又は20重量%以上であってよい。モノマー(2)からから誘導された繰り返し単位の含有量は、含ヨウ素ポリマー中、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、又は7.5重量%以下であってよい。モノマー(2)から誘導された繰り返し単位の存在により、高分子量体が形成可能であり、合成されたポリマーの密度が上昇することで屈折率が高くなり得る。また、成形加工性の観点からも好適となり得る。
【0054】
分子量制御剤から誘導された構造の含有量は、含ヨウ素ポリマー中、1.0重量%以上、3.0重量%以上、5.0重量%以上、又は10重量%以上であってよく、好ましくは3重量%以上である。分子量制御剤から誘導された構造の含有量は、含ヨウ素ポリマー中、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、又は25重量%以下であってよく、好ましくは40重量%以下である。
【0055】
その他の原料から誘導された構造の含有量は、含ヨウ素ポリマー中、1.0重量%以上、3.0重量%以上、5.0重量%以上、又は10重量%以上であってよい。その他の原料から誘導された構造の含有量は、含ヨウ素ポリマー中、30重量%以下、20重量%以下、又は10重量%以下であってよい。
【0056】
ヨウ素の含有量は、含ヨウ素ポリマー中、10重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、又は45重量%以上であってよく、好ましくは30重量%以上である。ヨウ素の含有量は、含ヨウ素ポリマー中、55重量%以下、50重量%以下、又は45重量%以下であってよい。
【0057】
硫黄の含有量は、含ヨウ素ポリマー中、1.0重量%以上、2.0重量%以上、3.0重量%以上、4.0重量%以上、5.0重量%以上、又は7.5重量%以上であってよく、好ましくは2.0重量%以上である。硫黄の含有量は、含ヨウ素ポリマー中、30重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、又は10重量%以下であってよく、好ましくは10重量%以下である。
【0058】
モノマー(1)から誘導された繰り返し単位の含有量は、含ヨウ素ポリマー中、分子量制御剤から誘導された構造1モル部に対して、2.0モル部以上、3.0モル部以上、5.0モル部以上、10モル部以上、15モル部以上、又は20モル部以上であってよく、好ましくは3モル部以上である。モノマー(1)から誘導された繰り返し単位の量は、分子量制御剤から誘導された構造1モル部に対して、50モル部以下、45モル部以下、40モル部以下、35モル部以下、30モル部以下、又は25モル部以下であってよく、好ましくは40モル部以下である。
【0059】
モノマー(2)から誘導された繰り返し単位の含有量は、含ヨウ素ポリマー中、分子量制御剤から誘導された構造1モル部に対して、0.2モル部以上、0.3モル部以上、0.5モル部以上、1.0モル部以上、1.5モル部以上、又は2モル部以上であってよく、好ましくは0.3モル部以上である。モノマー(1)から誘導された繰り返し単位の量は、分子量制御剤から誘導された構造1モル部に対して、5.0モル部以下、4.5モル部以下、4.0モル部以下、3.5モル部以下、3.0モル部以下、又は2.5モル部以下であってよく、好ましくは4.0モル部以下である。
【0060】
モノマー(2)から誘導された繰り返し単位の含有量は、含ヨウ素ポリマー中、モノマー(1)から誘導された繰り返し単位1モル部に対して、0.01モル部以上、0.02モル部以上、0.03モル部以上、0.05モル部以上、0.1モル部以上、0.15モル部以上、又は0.2モル部以上であってよく、好ましくは0.03モル部以上、例えば0.1モル部以上である。モノマー(2)の使用量は、モノマー(1)1モル部に対して、0.5モル部以下、0.45モル部以下、0.4モル部以下、0.35モル部以下、0.3モル部以下、0.25モル部以下、0.15モル部以下、又は0.10モル部以下であってよく、好ましくは0.4モル部以下である。
【0061】
上記範囲で各成分を含有することで、含ヨウ素ポリマーが高屈折率及び成形加工性を有しつつ、溶解性、成膜性、耐熱性及び透明性が適度にバランス良く優れ得る。
【0062】
[含ヨウ素ポリマーの製造方法]
本開示における含ヨウ素ポリマーの製造方法は原料である上記モノマーを重合する工程により得ることができる。
本開示における含ヨウ素ポリマーの製造方法は、
分子量制御剤の存在下、モノマーを重合する工程
を含んでもよい。分子量制御剤の存在下、モノマーを重合することにより、上述した範囲に分子量を制御することが容易となる。
【0063】
原料の使用量は、上述した含ヨウ素ポリマーが得られるように適宜、使用量を変化させて決定することができる。モノマー(1)の使用量は、分子量制御剤1モル部に対して、2.0モル部以上、3.0モル部以上、5.0モル部以上、10モル部以上、15モル部以上、又は20モル部以上であってよく、好ましくは3モル部以上、例えば10モル部以上である。モノマー(1)の使用量は、分子量制御剤1モル部に対して、50モル部以下、45モル部以下、40モル部以下、35モル部以下、30モル部以下、又は25モル部以下であってよく、好ましくは40モル部以下である。例えば、分子量制御剤の量を増やすことにより、重合を抑制することができ、分子量の増大を抑制することが可能である。
【0064】
モノマー(2)の使用量は、分子量制御剤1モル部に対して、0.2モル部以上、0.3モル部以上、0.5モル部以上、1.0モル部以上、1.5モル部以上、又は2モル部以上であってよく、好ましくは0.3モル部以上、例えば1モル部以上である。モノマー(2)の使用量は、分子量制御剤1モル部に対して、5.0モル部以下、4.5モル部以下、4.0モル部以下、3.5モル部以下、3.0モル部以下、又は2.5モル部以下であってよく、好ましくは4.0モル部以下である。例えば、分子量制御剤の量を増やすことにより、重合を抑制することができ、分子量の増大を抑制することが可能である。
【0065】
モノマー(2)の使用量は、モノマー(1)1モル部に対して、0.01モル部以上、0.02モル部以上、0.03モル部以上、0.05モル部以上、0.1モル部以上、0.15モル部以上、又は0.2モル部以上であってよく、好ましくは0.03モル部以上、例えば0.1モル部以上である。モノマー(2)の使用量は、モノマー(1)1モル部に対して、0.5モル部以下、0.45モル部以下、0.4モル部以下、0.35モル部以下、0.3モル部以下、0.25モル部以下、0.15モル部以下、又は0.10モル部以下であってよく、好ましくは0.4モル部以下である。モノマー(2)の存在により、成膜性が向上し得る。
【0066】
本開示において、重合方法は、特に制限されず、例えば塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法で行うことができるが、好ましくは溶液重合である。また、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の公知の重合方法を選択できるが、好ましくはラジカル重合が選択される。モノマーの種類、重合温度等によって適当な重合方法を選択することができる。
【0067】
本開示において、モノマーの種類、重合温度等によって適当な重合開始剤を選択して使用することができる。重合開始剤の例として、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,2-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジイヒドロクロリド等のアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クミルパーオキシド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、エチル3,3-ジ(t-アミルペルオキシ)ブチレート、硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化物系開始剤が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、又は二種類以上を併用して用いてもよい。
【0068】
重合を溶液重合で行う場合には、モノマーやラジカル開始剤の溶解性、及び重合温度等を考慮して適当な溶剤を選択し、その溶剤中で重合を行うことができる。溶剤の例としては、DMF、N-メチル-2-ピロリドン、アセトン、THF、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クロロベンゼン、メチルエチルケトン、乳酸エチル、イソプロピルアルコール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、又は二種類以上を併用して用いてもよい。
【0069】
重合温度は、重合開始剤が分解し重合が開始する温度であればよく、例えば、0℃以上、20℃以上、40℃以上、60℃以上、又は70℃以上であってよく、好ましくは40℃以上であり、100℃以下、90℃以下、80℃以下、又は70℃以下であってよい。
【0070】
最適な重合時間は、選択されるモノマー、重合開始剤あるいは重合温度等により決定することができるが、例えば1時間以上、5時間以上、10時間以上、15時間以上、又は20時間以上であってよく、72時間以下、60時間以下、48時間以下、36時間以下、又は24時間以下であってよい。
【0071】
重合開始剤の使用量は、モノマーの種類開始剤の種類に応じて変動し得るが、用いるモノマーの合計に対して、例えば、0.1モル%以上、1モル%以上、3モル%以上、5モル%以上、10モル%以上、15モル%以上、20モル%以上、又は25モル%以上であってよく、50モル%以下、40モル%以下、30モル%以下、20モル%以下、又は10モル%以下であってよい。
【0072】
重合溶媒の使用量は、特に制限されないが、原料濃度が5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、又は20重量%以上であってよく、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下になる範囲であってよい。
【0073】
<光学部品及びその製造方法>
光学部品は上述した含ヨウ素ポリマーを含む光学材料を含むものである。光学部品の例としては、コーティング、フィルム、シート、プリズム、レンズ、ファイバー等が挙げられる。本開示の光学材料は成形加工性に優れるため、光学部品は上記光学材料を成形加工(例えば、熱成形加工)することにより作製されたものであってもよい。すなわち、光学部品は上記光学材料の成形加工品であってよい。
【0074】
本開示における光学部品は、成形後、自立膜として扱える。これは、含ヨウ素ポリマーが柔軟性や機械強度等に優れ、基材から分離することが容易であるからである。
【0075】
本開示における光学部品の製造方法は、光学材料を成形加工する工程を含んでよい。成形加工は圧縮成形、押出成形、射出成形等の各種成形装置を利用することができる。成形温度としては、成形加工であれば特に限定されないが、光学材料が常圧で軟化する温度以上、分解温度以下の温度であってもよい。成形温度は、例えば120℃以上、140℃以上、160℃以上、180℃以上、又は200℃以上であってよく、300℃以下、275℃以下、250℃以下、225℃以下、200℃以下、又は175℃以下であってよい。
【0076】
本開示における光学部品の製造方法は、基材上で前記成形加工を行い光学材料の膜を形成し、基材から当該膜を分離する工程を含んでよい。分離の方法としては、特に限定されず、物理的に膜又は基材の一部を掴み引き剥がす方法や、刃物などの鋭利な器具を用いて膜と基材とを分離する方法等が挙げられる。
【0077】
光学材料を溶媒に溶解させて、基材に適用して、その後溶媒を乾燥させる方法により光学部品を形成することも可能である。光学材料を基材に適用する際は、含ヨウ素ポリマーを溶解する溶媒を含む溶液として用いてもよい。溶媒の種類は、含ヨウ素ポリマーを溶解するものであれば、特に限定されないが、例えば、THF、クロロホルム、DMF、DMSO等の有機溶媒を用いることが可能である。液中、含ヨウ素ポリマーの濃度は0.01wt%以上、0.1wt%以上、0.5wt%以上、又は1wt%以上であってよく、5wt%以下、3wt%以下、1.5wt%以下、又は0.5wt%以下であってよい。ヨウ素ポリマーを含有する溶液を基剤に適用し、必要により溶媒を除去させることにより、コーティング等を得てもよい。適用の方法としては、ディッピングコート、スプレーコート、フローコート、シャワーコート、ロールコート、スピンコート、グラビアコート、マイクログラビアコート、コンマロールコート、メイヤーバーコート、スロットバイコート、エアーナイフコート、リップコート、キスコート、刷毛塗り等、一般に用いられる適用の方法が使用できる。溶媒の除去は、特に限定されるものではないが、例えば0~200℃で行うことができる。
【0078】
基材の種類は特に限定されず、樹脂、ガラス、金属、セラミック等であってよい。
【0079】
光学部品の膜厚は、0.1μm以上、1μm以上、又は3μm以上であってよく、1m以下、500μm以下、200μm以下であってよい。
【0080】
<光学部品を備える光学物品>
上記コーティング等の光学部品を備える光学物品の例は、特に限定されないが、高屈折率発光ダイオード(LED)やイメージセンサ等の光デバイス;反射防止膜、レンズ、レンズ用塗膜等の高屈折率材料;望遠鏡、双眼鏡、顕微鏡、カメラ、内視鏡(ファイバースコープ)、プラネタリウム、測長器、コンパレータ、測距儀、分光計、干渉計、旋光計等の光学機器が挙げられる。
【0081】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例0082】
以下に、本開示の実施形態を実施例により詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0083】
試験方法は以下のとおりである。
【0084】
<NMR測定>
化合物の同定はNMRを用いて行った。400MHz-NMR 日本電子(株)製 JOEL ECS-400K又は400MHz-NMR 日本電子(株)製 JOEL ECZ-400を用いた。
【0085】
<SEC測定>
以下の機器及び条件において行った。
東ソー(株)製 HLC-8320GPC
カラム;TSKgel SuperMultiporeHZ-M×2 (4.6mmI.D.×15cm×2)
標準;ポリスチレンSRM706 (NIST)
溶離液;THF
検出器;RI;ポラリティ(+)、レスポンス(0.5s)
UV;波長(254nm)、ポラリティ(+)、レスポンス(0.5s)
【0086】
<屈折率>
含ヨウ素ポリマーの屈折率は、含ヨウ素ポリマーをシリコンウエハー上に製膜し、エリプソメータ(株式会社フォトニックラティス社製SE-101)を用いて、波長632nmのレーザーで30点測定し、それらを平均化することにより測定した。結果を下記表に示す。
【0087】
<耐熱性>
TGA測定装置(島津社製Model TGA-50/50H)を用いて、窒素ガス雰囲気中、10℃/分の昇温速度で、25℃から450℃までの温度範囲で測定した。5%の重量減少が認められる温度Tを下記表に示した。
【0088】
<成形加工性試験>
得られた含ヨウ素ポリマーを、真空プレス機(井元製作所製、手動油圧真空加熱プレス機)を用いて成形した。金型に樹脂を入れ、金属板(アルミニウム版)で挟み込み、真空プレス機に入れて、0.1MPa以下まで減圧して、その後、成形温度が200℃になるまで加熱した。成形温度に達した後、プレス圧力を2MPaにしてから2分間加熱した。続いて、3分間かけてプレス圧力を上げ、5分間、15MPaを維持して成形を行った。成形後、大気圧に戻し、室温になるまで冷却した。
成形加工性を下記の基準で判断した。
○:均一に膜化可能であり得られた膜を基材から分離可能である
×:不均一な膜が形成される、及び/又は、基材から分離しようとすると破損してしまい膜として分離不可能である
【0089】
[モノマー(1)前駆体(TIPE)の合成]
100mlのナスフラスコに、2,4,6-triiodophenol 10mmol(4,71g)、塩基触媒として、炭酸セシウム12mmol(3.90g)、触媒として、臭化テトラブチルアンモニウム(tetrabutylammonium bromide,TBAB)0.5mmol(0.16g)、そして溶媒としてN-メチルピロリドン(N-Methyl-pyrolidone, NMP)20mlを60℃で1時間かけて予備攪拌後、2-クロロエタノール(2-chloroethanol) 15mmol(1.2g)を加えてさらに60℃で24時間攪拌した。黄色固体を得た。エバポレーションして酢酸エチルを加えた。濾過して塩を取り除き、分液操作(1N HCl, sat NaHCO3, sat NaCl)を各3回行った。有機層にMgSO4を入れて脱水をして減圧乾燥し、黄色粉末固体(2,4,6-triiodophonoxyethanol(TIPE))を4.46g得た。収率は81%であった。
【0090】
[モノマー(1)(TIPEA)の合成]
100mlのナスフラスコに、前記の合成で得られた2,4,6-triiodophonoxyethanol(TIPE)50mmol(25.7g)、トリエチルアミン70mmol(7.08g)、溶媒として、ジクロロメタン(DCM)150mlを入れて、氷浴でジクロロメタン(DCM)7mlで希釈した Acryl chloride75mmol(6.74g)を添加して、室温で8時間攪拌した。黄色固体を得た。カラムクロマトグラフィーにて、クロロホルム:ヘキサン=3:1の展開溶媒で溶出させて、減圧乾燥して、白色固体粉末(2,4,6-triiodo2-Phenoxyethyl Acrylate (TIPEA))14.89gを得た。収率は52%であった。
【0091】
[実施例1:含ヨウ素ポリマー(poly(TIPEA))の合成]
10mlのナスフラスコに、前記の合成で得られた2,4,6-triiodo2-Phenoxyethyl Acrylate (TIPEA)6mmol(3.41g)、重合開始剤として、Azobisisobutyronitrile(AIBN)0.18mmol(0.029g)、溶媒として、ジメチルホルムアミド(DMF)1.8mlを入れて、脱気風乾を行い、60℃オイルバス中で20時間攪拌した。ジエチルエーテルで再沈殿してメンブレンろ過した後、減圧乾燥して、含ヨウ素ポリマー3gを得た。収率は88%であった。
【0092】
[実施例2:含ヨウ素ポリマー(poly(TIPEA-co-EEA))の合成]
重合管に前記の合成で得られたTIPEA 0.95mmol, 2-(2-Ethoxyethoxy)ethyl Acrylate(EEA) 0.05mmol, THF 0.3ml, AIBN (TIP-ACとEEAの合計量に対して3mol%),を入れて脱気封管を行い60℃オイルバス中で20h攪拌した。THFで希釈後、ジエチルエーテルで再沈殿してメンブレン濾過した後、減圧乾燥して含ヨウ素ポリマーを得た。得られた含ヨウ素ポリマーについて、熱重量測定、溶解性試験、屈折率測定を行った。
【0093】
[実施例3~5:含ヨウ素ポリマー(poly(TIPEA-co-EEA))の合成]
TIPEAとEEAのモル比を下記表に示すとおりに変更した以外は、実施例2と同様にして、poly(TIPEA-co-EEA)を合成した。
【0094】
[比較例1:含ヨウ素ポリマー(poly(TIPA))の合成]
TIPEAに代えて、下記式:
で表されるTIPA(triiodophenyl acrylate)を同モル量用いた以外は、実施例1と同様にして、poly(TIPA)を合成した。なお、TIPAは特開2022-131503号公報に記載の方法で合成した。
【0095】
[比較例2:含ヨウ素ポリマーpoly(TIPA-EEA)の合成]
TIPEAに代えて、下記式:
で表されるTIPAを同モル量用いた以外は、実施例3と同様にして、poly(TIPA-EEA)を合成した。
【0096】
[結果]
得られた含ヨウ素ポリマーについての組成及び測定結果を下記表にまとめる。
[表1]
【産業上の利用可能性】
【0097】
本開示の含ヨウ素ポリマーは、高屈折率発光ダイオード(LED)やイメージセンサ等の光デバイス、反射防止膜、レンズ材料、レンズ用塗膜等の高屈折率高分子材料等の高屈折率材料、望遠鏡、双眼鏡、顕微鏡、カメラ、内視鏡(ファイバースコープ)、プラネタリウム、測長器、コンパレータ、測距儀、分光計、干渉計、旋光計等の光学機器に利用できる。