(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156490
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】情報処理システム及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20241029BHJP
G06F 9/50 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
G06F3/12 340
G06F3/12 312
G06F3/12 373
G06F3/12 329
G06F9/50 150C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070997
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 嘉則
(57)【要約】
【課題】分散した画像を一又は複数の処理装置にラスタライズさせることができる情報処理システム、及び情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】情報処理システムはプロセッサを備え、プロセッサは、物理的に独立した処理装置、又は物理的な装置内において仮想的に構成された処理装置の少なくとも一方を含む一又は複数の処理装置により、印刷物に含まれる複数の画像を分散してラスタライズし、ラスタライズしてできた複数のラスタ画像を一又は複数の画像形成装置が印刷する場合に、一又は複数の処理装置に対して画像をそれぞれラスタライズさせる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
物理的に独立した処理装置、又は物理的な装置内において仮想的に構成された処理装置の少なくとも一方を含む一又は複数の処理装置により、印刷物に含まれる複数の画像を分散してラスタライズし、ラスタライズしてできた複数のラスタ画像を一又は複数の画像形成装置が印刷する場合に、
前記一又は複数の処理装置に対して前記画像をそれぞれラスタライズさせる、
情報処理システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、
複数の前記画像のうちラスタライズ済の前記ラスタ画像について、ラスタライズに要する処理時間の実測値と、前記ラスタ画像を前記画像形成装置に転送する転送時間の実測値と、をそれぞれ取得し、
複数の前記画像のうちラスタライズされていない未処理画像について、前記処理時間の実測値及び前記転送時間の実測値に基づいて、前記処理時間及び前記転送時間を合計した合計時間の予測値を予測し、
前記処理装置別の前記合計時間の予測値の差が予め定めた範囲内になるように割り当てた前記未処理画像を、前記一又は複数の処理装置にそれぞれラスタライズさせる、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記未処理画像とデータの構成が最も近い前記ラスタ画像から、前記構成の近さの順位が予め定められた順位までの前記ラスタ画像までの前記処理時間の実測値及び前記転送時間の予測値に基づいて、前記未処理画像の前記合計時間の予測値を予測する、
請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記予め定められた順位は、前記データの種類の数以上である、請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
物理的に独立した処理装置、又は物理的な装置内において仮想的に構成された処理装置の少なくとも一方を含む一又は複数の処理装置により、印刷物に含まれる複数の画像を分散してラスタライズし、ラスタライズしてできた複数のラスタ画像を一又は複数の画像形成装置が印刷する場合に、
前記一又は複数の処理装置に対して前記画像をそれぞれラスタライズさせる、
処理をコンピュータに実行させる、
情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理システム及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、印刷装置と、印刷装置を利用している複数のクライアントコンピュータとを含む分散印刷システムが開示されている。複数のクライアントコンピュータにおいては、ユーザからの印刷データの印刷指示の入力を受け付ける受付部と、印刷指示が入力された場合に、印刷装置に複数のクライアントコンピュータのアドレス情報を問い合わせて取得するアドレス情報取得部と、を含む。また、複数のクライアントコンピュータにおいては、印刷データを複数の分割データへと分割する分割部と、複数のクライアントコンピュータのアドレス情報で指定される宛先へと、複数の分割データを分配する分配部と、を含む。また、複数のクライアントコンピュータにおいては、他のクライアントコンピュータから分割データを受信する受信部と、受信した分割データをラスタライズし分割印刷ジョブを生成する生成部と、生成した分割印刷ジョブを、印刷装置に送信する送信部と、を含む。また、印刷装置においては、アドレス情報取得部からの問い合わせに応じて、複数のクライアントコンピュータのアドレス情報をアドレス情報取得部へと通知するアドレス情報通知部と、分割印刷ジョブを受信する受信部と、を含む。また、印刷装置においては、受信部により受信された分割印刷ジョブを、分割データに示される印刷データ内での順番で印刷する印刷部を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
処理装置により画像をラスタライズし、ラスタライズしてできたラスタ画像を一又は複数の画像形成装置で印刷する技術がある。印刷物を1つの処理装置で同じタイミングでラスタライズするのでは、例えば、印刷物に含まれる画像が多い程、処理装置の負荷が大きくなる。処理装置の負荷を軽減するには、印刷物に含まれる画像のラスタライズを分散処理することが考えられる。しかし、分散した画像のいずれを一又は複数の処理装置のいずれにラスタライズさせるかを定める仕組みはなかった。
【0005】
本開示は、分散した画像を一又は複数の処理装置にラスタライズさせることができる情報処理システム、及び情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1態様に係る情報処理システムは、プロセッサを備え、前記プロセッサは、物理的に独立した処理装置、又は物理的な装置内において仮想的に構成された処理装置の少なくとも一方を含む一又は複数の処理装置により、印刷物に含まれる複数の画像を分散してラスタライズし、ラスタライズしてできた複数のラスタ画像を一又は複数の画像形成装置が印刷する場合に、前記一又は複数の処理装置に対して前記画像をそれぞれラスタライズさせる。
【0007】
また、第2態様に係る情報処理システムは、第1態様に係る情報処理システムにおいて、前記プロセッサは、複数の前記画像のうちラスタライズ済の前記ラスタ画像について、ラスタライズに要する処理時間の実測値と、前記ラスタ画像を前記画像形成装置に転送する転送時間の実測値と、をそれぞれ取得し、複数の前記画像のうちラスタライズされていない未処理画像について、前記処理時間の実測値及び前記転送時間の実測値に基づいて、前記処理時間及び前記転送時間を合計した合計時間の予測値を予測し、前記処理装置別の前記合計時間の予測値の差が予め定めた範囲内になるように割り当てた前記未処理画像を、前記一又は複数の処理装置にそれぞれラスタライズさせる。
【0008】
また、第3態様に係る情報処理システムは、第2態様に係る情報処理システムにおいて、前記プロセッサは、前記未処理画像とデータの構成が最も近い前記ラスタ画像から、前記構成の近さの順位が予め定められた順位までの前記ラスタ画像までの前記処理時間の実測値及び前記転送時間の予測値に基づいて、前記未処理画像の前記合計時間の予測値を予測する。
【0009】
また、第4態様に係る情報処理システムは、第3態様に係る情報処理システムにおいて、前記予め定められた順位は、前記データの種類の数以上である。
【0010】
また、第5態様に係る情報処理プログラムは、物理的に独立した処理装置、又は物理的な装置内において仮想的に構成された処理装置の少なくとも一方を含む一又は複数の処理装置により、印刷物に含まれる複数の画像を分散してラスタライズし、ラスタライズしてできた複数のラスタ画像を一又は複数の画像形成装置が印刷する場合に、前記一又は複数の処理装置に対して前記画像をそれぞれラスタライズさせる、処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
第1態様又は第5態様によれば、分散した画像を一又は複数の処理装置にラスタライズさせることができる。
【0012】
第2態様によれば、合計時間の予測値の差が予め定めた範囲内になるように分散させた画像を一又は複数の処理装置にラスタライズさせることができる。
【0013】
第3態様によれば、未処理画像とデータの構成が最も近いラスタ画像から、構成の近さの順位が予め定められた順位までのラスタ画像までの処理時間の実測値及び転送時間の予測値を用いない場合に比較して、未処理画像の合計時間の予測値を高精度に予測できる。
【0014】
第4態様によれば、予め定められた順位がデータの種類の数未満である場合に比較して、簡易に未処理画像の合計時間の予測値を予測できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係るラスタライズシステムのハードウェア構成の一例を示す模式図である。
【
図2】実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る情報処理装置における情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態に係る画像データベースの構成の一例を示す模式図である。
【
図5】実施形態に係る情報処理装置における予測処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一又は等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係るラスタライズシステム100は、情報処理装置10と、一又は複数の処理装置20A、20B・・・と、一又は複数の画像形成装置30と、を備えている。以下では、処理装置20A、20B・・・を区別しない場合は、単に「処理装置20」という。なお、処理装置20の数は
図1に示した数に限られない。また、画像形成装置30の数も
図1に示した数に限られない。
【0018】
情報処理装置10と、処理装置20と、画像形成装置30とは、通信手段Nを介して相互に通信可能とされている。なお、本実施形態では、通信手段Nとしてインターネット又は電話回線等の公共の通信回線を適用している。しかし、この例に限られない。例えば、通信手段Nとして、LAN(Local Area Network)、又はWAN(Wide Area Network)等の企業内の通信回線を適用してもよいし、企業内の通信回線及び公共の通信回線を組み合わせて適用してもよい。また、本実施形態では、通信手段Nとして無線の通信回線を適用している。しかし、この例に限られない。通信手段Nとして、有線の通信回線を適用してもよいし、有線及び無線の各通信回線を組み合わせて適用してもよい。
【0019】
処理装置20は、画像をラスタライズ(rasterize)する装置である。処理装置20は、ラスタライズしてできたラスタ画像を、通信手段Nを介して画像形成装置30に送信する。なお、処理装置20は、物理的に独立していてもよいし、物理的な装置内において仮想的に構成されていてもよい。言い換えると、ラスタライズシステム100が備える処理装置20は、物理的に独立した処理装置20、又は物理的な装置内において仮想的に構成された処理装置20の少なくとも一方を含む。
【0020】
画像形成装置30は、処理装置20によりラスタライズしてできた複数のラスタ画像を印刷する。
【0021】
情報処理装置10は、印刷物に含まれる複数の画像を分散して処理装置20にラスタライズさせる。情報処理装置10は情報処理システムの一例である。なお、本実施形態における「システム」とは、複数の装置によって構成されたもの及び単一の装置によって構成されたものの両方を含む。
【0022】
図2に示すように、情報処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ14、及び通信インタフェース(通信I/F)17の各構成を有する。各構成は、バス19を介して相互に通信可能に接続されている。
【0023】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12又はストレージ14からプログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12又はストレージ14に記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM12又はストレージ14に、情報処理プログラム及び画像データベース12Aが記憶されている。
【0024】
ROM12は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM13は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ14は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0025】
通信I/F17は、処理装置20及び画像形成装置30等の他の機器と通信するためのインタフェースであり、たとえば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0026】
次に、
図3を参照して、本実施形態の情報処理装置10における情報処理の流れについて説明する。情報処理は、CPU11がROM12又はストレージ14から情報処理プログラムを読み出して、RAM13に展開して実行することにより、行なわれる。
【0027】
図3のステップS100において、CPU11は、各処理装置20に対して、同一の印刷物を送信する。以下では、CPU11が各処理装置20に対して送信した同一の印刷物を単に「印刷物」という。本実施形態では、CPU11は、ラスタライズシステム100に含まれる全ての処理装置20(
図1に示す例では、処理装置20A及び処理装置20B)に対して印刷物を送信する。
【0028】
ステップS102において、CPU11は、印刷物に含まれる複数の画像に対してラスタライズを開始するラスタライズ開始指示を受け付けるまで待機する。CPU11は、ラスタライズ開始指示を受け付けると(ステップS102:YES)、ステップS104に移行する。
【0029】
ステップS104において、CPU11は、ラスタライズ開始指示に係る画像のうち、同一の複数の画像のラスタライズを各処理装置20に指示する。例えば、CPU11は、100枚の画像に対するラスタライズ開始指示を受け付けた場合、当該100枚の画像のうち1枚目から15枚目までの画像のラスタライズを、ステップS100において印刷物を送信した全ての処理装置20に指示する。以下では、ステップS104においてCPU11がラスタライズを指示した同一の複数の画像を初期画像と総称する。なお、本実施形態では、初期画像の枚数は情報処理装置10のユーザによって予め定められている。
【0030】
ステップS106において、CPU11は、初期画像毎のラスタライズ後のラスタ容量と処理装置20別のラスタライズに要する処理時間の実測値とを、各処理装置20から取得するまで待機する。言い換えると、CPU11は、ラスタライズ済のラスタ画像毎のラスタ容量と処理装置20別の処理時間の実測値とを、ステップS104においてラスタライズを指示した全ての処理装置20から取得するまで待機する。例えば、CPU11がステップS104において初期画像のラスタライズを処理装置20A及び処理装置20Bに指示した場合、1枚目の初期画像については、ラスタ容量と、処理装置20Aにおける処理時間の実測値と、処理装置20Bにおける処理時間の実測値と、を取得する。CPU11は、初期画像毎のラスタ容量と処理装置20別の処理時間の実測値とを各処理装置20から取得すると(ステップS106:YES)、ステップS108に移行する。
【0031】
ステップS108において、CPU11は、ステップS106において受け付けた初期画像毎のラスタ容量と処理装置20別の処理時間の実測値とを画像データベース12Aに記憶する。
【0032】
図4に画像データベース12Aの構成の一例を示す。
図4に示すように、画像データベース12Aには、画像毎に、容量、処理時間、処理装置20から画像形成装置30に画像を転送する転送時間、及び処理時間及び転送時間を合計した合計時間が関連付けられて記憶されている。容量については、画像を構成する文字データの容量、画像を構成するベクタデータの容量、画像を構成するイメージデータの容量、及びラスタ容量が記憶されている。そして、処理時間、転送時間、及び合計時間については、処理装置20別の予測値及び実測値がそれぞれ記憶されている。なお、
図4に示す例では、画像1から画像15までが初期画像を表す。
【0033】
ステップS110において、CPU11は、処理装置20毎に初期画像の転送時間の予測値を予測する。本実施形態では、CPU11は、初期画像のラスタ容量と、処理装置20から画像形成装置30までの転送帯域とに基づいて、初期画像の転送時間の予測値を予測する。具体的に、CPU11は、初期画像のラスタ容量を、転送帯域における通信速度で除した値を初期画像の転送時間の予測値として予測する。例えば、CPU11は、処理装置20Aから画像形成装置30までの転送帯域における通信速度が秒速2[GB]であり、処理装置20Bから画像形成装置30までの転送帯域における通信速度が秒速1[GB]である場合、ラスタ容量が400[MB]の初期画像の転送時間の予測値を、処理装置20Aについては0.2秒、処理装置20Bについては0.4秒と予測する。そして、CPU11は、算出した処理装置20毎の転送時間の予測値を画像データベース12Aに記憶する。
【0034】
ステップS112において、CPU11は、処理装置20毎の転送時間の予測値の合計の差が予め定めた範囲内になるように、初期画像の転送の割り当てを決定する。例えば、CPU11は、初期画像の1枚目から5枚目、及び10枚目から15枚目を処理装置20Aが転送するように決定し、初期画像の6枚目から9枚目を処理装置20Bが転送するように決定する。なお、本実施形態では、上記予め定められた範囲は、情報処理装置10のユーザによって予め定められている。
【0035】
ステップS114において、CPU11は、予測処理を実行する。具体的に、CPU11は、印刷物に含まれるラスタライズされていない未処理画像のうち、予め定められた枚数の未処理画像について、処理装置20毎に合計時間の予測値を予測する。なお、予測処理については詳細を後述する。また、以下では、CPU11が予測処理において合計時間の予測値を予測する未処理画像を対象画像という。
【0036】
また、本実施形態では、対象画像の枚数は、初期画像の枚数と同一である。しかし、この例に限られない。対象画像の枚数は初期画像の枚数と異なってもよい。
【0037】
ステップS116において、CPU11は、処理装置20毎の合計時間の予測値の差が予め定めた範囲内になるように、対象画像を分散してラスタライズするための割り当てを決定する。本実施形態では、上記予め定めた範囲は、情報処理装置10のユーザによって予め定められている。
【0038】
ステップS118において、CPU11は、ステップS116において決定した割り当てで対象画像をラスタライズするように各処理装置20に指示する。例えば、CPU11は、対象画像の1枚目から5枚目、及び10枚目から15枚目を処理装置20Aがラスタライズするように指示し、対象画像の6枚目から9枚目を処理装置20Bがラスタライズするように各処理装置20に指示する。
【0039】
ステップS120において、CPU11は、対象画像毎のラスタ容量と処理時間の実測値とを、各処理装置20から取得するまで待機する。言い換えると、CPU11は、ラスタ画像毎のラスタ容量と処理時間の実測値とを、ステップS118においてラスタライズを指示した全ての処理装置20から取得するまで待機する。例えば、CPU11がステップS118において1枚目の対象画像のラスタライズを処理装置20Aに指示した場合、処理装置20Aからラスタ容量と、処理装置20Aにおける処理時間の実測値と、を取得する。CPU11は、対象画像毎のラスタ容量と処理時間の実測値とを各処理装置20から取得すると(ステップS120:YES)、ステップS122に移行する。
【0040】
ステップS122において、CPU11は、ステップS120において受け付けた対象画像毎のラスタ容量と処理時間の実測値とを画像データベース12Aに記憶する。
【0041】
ステップS124において、CPU11は、印刷物を画像形成装置30で印刷する印刷指示を受け付けたか否かを判定する。CPU11は、印刷物を画像形成装置30で印刷する印刷指示を受け付けた場合(ステップS124:YES)、ステップS126に移行する。一方、CPU11は、印刷物を画像形成装置30で印刷する印刷指示を受け付けていない場合(ステップS124:NO)、ステップS114に戻る。
【0042】
ステップS126において、CPU11は、各処理装置20に対して、全てのラスタ画像を画像形成装置30に転送するように転送指示を送信する。
【0043】
情報処理装置10から転送指示を受信した処理装置20は、ラスタ画像を画像形成装置30に転送する。具体的に、処理装置20は、初期画像については、ステップS112において決定された割り当てで画像形成装置30に転送する。そして、処理装置20は、初期画像以外のラスタ画像については、自装置がラスタライズをしたラスタ画像を画像形成装置30に転送する。
【0044】
ステップS128において、CPU11は、各処理装置20から、ラスタ画像の転送時間の実測値を取得するまで待機する。CPU11は、各処理装置20から、ラスタ画像の転送時間の実測値を取得すると(ステップS128:YES)、ステップS130に移行する。
【0045】
ステップS130において、CPU11は、ステップS128において受け付けたラスタ画像の転送時間の実測値を画像データベース12Aに記憶する。
【0046】
ステップS132において、CPU11は、ラスタライズ開始指示に係る全ての画像のラスタライズが完了したか否かを判定する。CPU11は、ラスタライズ開始指示に係る全ての画像のラスタライズが完了した場合(ステップS132:YES)、本情報処理は終了する。一方、CPU11は、ラスタライズ開始指示に係る全ての画像のラスタライズが完了していない場合(ステップS132:NO)、ステップS114に戻る。
【0047】
次に、
図5を参照して、本実施形態における情報処理において実行される予測処理の流れについて説明する。
【0048】
図5のステップS200において、CPU11は、対象画像毎に、ラスタ画像とのデータの構成の近さの度合いを算出する。本実施形態では、CPU11は、1のラスタ画像と1の対象画像との文字データの容量の差分の2乗、ベクタデータの容量の差分の2乗、及びイメージデータの容量の差分の2乗の和である二乗和Rを算出する。二乗和Rが小さいほど、データの構成が近いラスタ画像であることを示す。
【0049】
具体的に、CPU11は、式(1)を用いて、対象画像毎に二乗和Rを算出する。なお、式(1)において、xnはラスタ画像を構成する文字データの容量を、ynはラスタ画像を構成するベクタデータの容量を、znはラスタ画像を構成するイメージデータの容量を表す。そして、xは対象画像を構成する文字データの容量を、yは対象画像を構成するベクタデータの容量を、zは対象画像を構成するイメージデータの容量を表す。
【0050】
【0051】
なお、本実施形態では、印刷物に含まれる画像が構成するデータが文字データ、ベクタデータ、及びイメージデータの3種類であるため、二乗和Rとして、1のラスタ画像と1の対象画像とのこれら3種類のデータの容量の差分の2乗の総和を適用していた。しかし、この例に限られない。印刷物に含まれる画像が構成するデータが上述した種類ではない場合、二乗和Rとして、上述した値を適用しなくてもよい。
【0052】
また、対象画像とラスタ画像とのデータの構成の近さの度合いは二乗和Rに限定されない。例えば、上記構成の近さの度合いとして、データの容量の差分の2乗の総和を2分の1乗した値、又はデータの容量の差分の総和等を適用してもよい。
【0053】
ステップS202において、CPU11は、二乗和Rが最も小さいラスタ画像から、二乗和Rの小ささが予め定められた順位までのラスタ画像を、対象画像毎に決定する。言い換えると、ステップS202において、CPU11は、データの構成が最も近いラスタ画像から、上記構成の近さの順位が予め定められた順位までのラスタ画像を、対象画像毎に決定する。以下では、ステップS202において、CPU11が決定した、二乗和Rが最も小さいラスタ画像から、二乗和の小ささが予め定められた順位までのラスタ画像を「類似画像」と総称する。例えば、CPU11は、1枚目の対象画像の類似画像として、2、4、7、9枚目のラスタ画像として決定する。
【0054】
なお、上記予め定められた順位は、印刷物に含まれる画像が構成するデータの種類の数以上の数である。本実施形態では上記データの種類が3種類であるため、予め定められた順位は3以上である4とする。しかし、この例に限られない。上記予め定められた順位は、印刷物に含まれる画像が構成するデータの種類の数未満の数であってもよい。
【0055】
ステップS204において、CPU11は、画像データベース12Aから、類似画像の処理時間の実測値、及び転送時間の実測値を処理装置20別に取得する。なお、類似画像の転送時間の実測値が画像データベース12Aに記憶されていない場合、CPU11は、転送時間の実測値に代えて類似画像の転送時間の予測値を取得する。
【0056】
ステップS206において、CPU11は、類似画像の処理時間の実測値に基づき、対象画像の処理時間の予測値を処理装置20別に予測する。本実施形態では、CPU11は、文字データの容量xに係数arを乗じた値、ベクタデータの容量yに係数brを乗じた値、イメージデータの容量zに係数crを乗じた値、及び切片drの和で表される画像の処理時間の予測値trを予測する式(2)の左辺に、類似画像が構成するデータの種類毎の容量を代入する。そして、CPU11は、式(2)の右辺(すなわち、処理時間の予測値tr)に類似画像の処理時間の実測値を代入する。そして、CPU11は、類似画像毎の値が代入された式(2)を連立方程式として解くことで、処理装置20別の係数ar、係数br、係数cr、及び切片drを算出する。そして、CPU11は、算出した係数ar、係数br、係数cr、及び切片drを式(2)に代入し、かつ対象画像における文字データの容量x、ベクタデータの容量y、及びイメージデータの容量zも式(2)に代入することで、処理装置20別に対象画像の処理時間の予測値trを予測する。そして、CPU11は、算出した処理装置20別の対象画像の処理時間の予測値trを画像データベース12Aに記憶する。
【0057】
【0058】
なお、対象画像の処理時間の予測値の予測方法は上述した例に限られない。例えば、CPU11は、二乗和Rが最も小さいラスタ画像の処理時間の実測値を、対象画像の処理時間の予測値として予測してもよい。また、ラスタ画像と当該ラスタ画像の処理時間の実測値との組を教師データとして学習された処理時間予測モデルに、CPU11が対象画像を入力することで、対象画像の処理時間の予測値を予測してもよい。
【0059】
ステップS208において、CPU11は、類似画像の転送時間の実測値に基づき、対象画像の転送時間の予測値を処理装置20別に予測する。本実施形態では、CPU11は、文字データの容量xに係数asを乗じた値、ベクタデータの容量yに係数bsを乗じた値、イメージデータの容量zに係数csを乗じた値、及び切片dsの和で表される画像の転送時間の予測値tsを予測する式(3)の左辺に、類似画像が構成するデータの種類毎の容量を代入する。そして、CPU11は、式(3)の右辺(すなわち、転送時間の予測値ts)に類似画像の転送時間の実測値を代入する。そして、CPU11は、類似画像毎の値が代入された式(3)を連立方程式として解くことで、処理装置20別の係数as、係数bs、係数cs、及び切片dsを算出する。そして、CPU11は、算出した係数as、係数bs、係数cs、及び切片dsを式(3)に代入し、かつ対象画像における文字データの容量x、ベクタデータの容量y、及びイメージデータの容量zも式(3)に代入することで、処理装置20別に対象画像の転送時間の予測値tsを予測する。そして、CPU11は、算出した処理装置20別の対象画像の転送時間の予測値tsを画像データベース12Aに記憶する。
【0060】
【0061】
なお、対象画像の転送時間の予測値の予測方法は上述した例に限られない。例えば、CPU11は、二乗和Rが最も小さいラスタ画像の転送時間の実測値を、対象画像の転送時間の予測値として予測してもよい。また、ラスタ画像と当該ラスタ画像の転送時間の実測値との組を教師データとして学習された転送時間予測モデルに、CPU11が対象画像を入力することで、対象画像の転送時間の予測値を予測してもよい。
【0062】
ステップS210において、CPU11は、対象画像毎に、処理時間及び転送時間を合計した合計時間の予測値を処理装置20別に予測する。本実施形態では、CPU11は、ステップS208において予測した処理時間の予測値、及びステップS210において予測した転送時間の予測値の和を対象画像の合計時間の予測値として予測する。そして、CPU11は、算出した処理装置20別の対象画像の合計時間の予測値を画像データベース12Aに記憶する。そして、CPU11は予測処理を終了し、情報処理のステップS116に移行する。
【0063】
以上、実施の形態を説明したが、本開示の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0064】
また、上記実施の形態は、請求項にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の組み合わせにより種々の発明が抽出される。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0065】
例えば、上記実施形態では、単一の装置である情報処理装置10が情報処理を実行していた。しかし、この例に限られない。例えば、複数の装置が情報処理を実行してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、CPU11は合計時間の予測値の差が予め定めた範囲内になるように対象画像を割り当てていた。しかし、この例に限られない。例えば、CPU11は処理時間又は転送時間等の予測値の差が予め定めた範囲内になるように対象画像を割り当ててもよい。また、CPU11は合計時間、処理時間、又は転送時間等が処理装置20毎に予め定めた時間になるように対象画像を割り当ててもよい。
【0067】
また、上記実施形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC: Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0068】
また、上記実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は上記実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0069】
上記実施形態では、各プログラムがROM又はストレージにインストールされている形態を説明したが、これに限定されるものではない。上記実施形態に係る各プログラムを、コンピュータ読取可能な記憶媒体に記録した形態で提供してもよい。例えば、上記実施形態に係る各プログラムを、CD(Compact Disc)-ROM及びDVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の光ディスクに記録した形態、若しくはUSB(Universal Serial Bus)メモリ及びメモリカード等の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。また、上記実施形態に係る各プログラムを、通信I/F17を介して外部の装置から取得するようにしてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、情報処理装置10における処理を、プログラムを実行することにより、コンピュータを利用してソフトウェア構成により実現する場合について説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば、情報処理装置10における処理を、ハードウェア構成や、ハードウェア構成とソフトウェア構成の組み合わせによって実現する形態としてもよい。
【0071】
その他、上記実施形態で説明した情報処理装置10と、処理装置20と、画像形成装置30と、の構成は一例であり、本開示の主旨を逸脱しない範囲内において不要な部分を削除したり、新たな部分を追加したりしてもよいことは言うまでもない。
【0072】
また、上記実施形態で説明した情報処理装置10における処理の流れ(
図3、
図5参照)も一例であり、本開示の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【0073】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0074】
(((1)))
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
物理的に独立した処理装置、又は物理的な装置内において仮想的に構成された処理装置の少なくとも一方を含む一又は複数の処理装置により、印刷物に含まれる複数の画像を分散してラスタライズし、ラスタライズしてできた複数のラスタ画像を一又は複数の画像形成装置が印刷する場合に、
前記一又は複数の処理装置に対して前記画像をそれぞれラスタライズさせる、
情報処理システム。
【0075】
(((2)))
前記プロセッサは、
複数の前記画像のうちラスタライズ済の前記ラスタ画像について、ラスタライズに要する処理時間の実測値と、前記ラスタ画像を前記画像形成装置に転送する転送時間の実測値と、をそれぞれ取得し、
複数の前記画像のうちラスタライズされていない未処理画像について、前記処理時間の実測値及び前記転送時間の実測値に基づいて、前記処理時間及び前記転送時間を合計した合計時間の予測値を予測し、
前記処理装置別の前記合計時間の予測値の差が予め定めた範囲内になるように割り当てた前記未処理画像を、前記一又は複数の処理装置にそれぞれラスタライズさせる、
(((1)))に記載の情報処理システム。
【0076】
(((3)))
前記プロセッサは、
前記未処理画像とデータの構成が最も近い前記ラスタ画像から、前記構成の近さの順位が予め定められた順位までの前記ラスタ画像までの前記処理時間の実測値及び前記転送時間の予測値に基づいて、前記未処理画像の前記合計時間の予測値を予測する、
(((2)))に記載の情報処理システム。
【0077】
(((4)))
前記予め定められた順位は、前記データの種類の数以上である、(((3)))に記載の情報処理システム。
【0078】
(((5)))
物理的に独立した処理装置、又は物理的な装置内において仮想的に構成された処理装置の少なくとも一方を含む一又は複数の処理装置により、印刷物に含まれる複数の画像を分散してラスタライズし、ラスタライズしてできた複数のラスタ画像を一又は複数の画像形成装置が印刷する場合に、
前記一又は複数の処理装置に対して前記画像をそれぞれラスタライズさせる、
処理をコンピュータに実行させる、
情報処理プログラム。
【0079】
(((1)))又は(((5)))によれば、分散した画像を一又は複数の処理装置にラスタライズさせることができる。
【0080】
(((2)))によれば、合計時間の予測値の差が予め定めた範囲内になるように分散させた画像を一又は複数の処理装置にラスタライズさせることができる。
【0081】
(((3)))によれば、未処理画像とデータの構成が最も近いラスタ画像から、構成の近さの順位が予め定められた順位までのラスタ画像までの処理時間の実測値及び転送時間の予測値を用いない場合に比較して、未処理画像の合計時間の予測値を高精度に予測できる。
【0082】
(((4)))によれば、予め定められた順位がデータの種類の数未満である場合に比較して、簡易に未処理画像の合計時間の予測値を予測できる。
【符号の説明】
【0083】
10 情報処理装置(情報処理システム)
11 CPU(プロセッサ)
12 ROM
13 RAM
14 ストレージ
17 通信I/F
19 バス
20 処理装置
30 画像形成装置
100 ラスタライズシステム