(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156494
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】コネクタ及び電源回路遮断装置
(51)【国際特許分類】
H01R 13/193 20060101AFI20241029BHJP
H01R 13/629 20060101ALI20241029BHJP
H01R 13/703 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H01R13/193
H01R13/629
H01R13/703
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071004
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 大祐
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB07
5E021FC31
5E021HB02
5E021KA09
5E021MA25
(57)【要約】
【課題】互いに接続される一対のタブ端子とクリップ状端子における高い接続信頼性を維持させることが可能なコネクタ及び電源回路遮断装置を提供すること。
【解決手段】コネクタ1は、第1コネクタハウジング10に設けられた一対のタブ端子13と、第2コネクタハウジング20に設けられ、複数対の接触片26a,26bを有して一対のタブ端子13を挟持するクリップ状端子24と、を備える。一対のタブ端子13は、コネクタ1の中途嵌合状態では一部の接触片26aが非接触とされる切欠き部15を有する。第1コネクタハウジング10の絶縁板部17における切欠き部15に対応した部分には、切欠き部15に補完的に嵌合されて一部の接触片26aが接触する補完突出部18が形成される。コネクタ1の完全嵌合状態では、接触片26a,26bの全てが一対のタブ端子13に接触状態とされる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コネクタハウジングと、
前記第1コネクタハウジングに嵌合及び離脱される第2コネクタハウジングと、
前記第1コネクタハウジングに設けられ、前記第2コネクタハウジングとの嵌合方向に突設された一対のタブ端子と、
前記第2コネクタハウジングに設けられ、互いに対向位置に配置された複数対の接触片を有して前記一対のタブ端子を挟持する側面視略U字状のクリップ状端子と、を備え、
前記第1コネクタハウジングは、前記一対のタブ端子を電気的に絶縁状態に重ね合わせるために形成された絶縁板部を有し、
前記一対のタブ端子は、前記第1コネクタハウジングに対して前記第2コネクタハウジングが途中まで嵌合される中途嵌合状態では前記複数対の接触片の一部が非接触とされる切欠き部を有し、
前記絶縁板部における前記切欠き部に対応した部分には、前記切欠き部に補完的に嵌合されて前記複数対の接触片の一部が接触する補完突出部が形成され、
前記第1コネクタハウジングに対して前記第2コネクタハウジングが完全嵌合される完全嵌合状態では、前記複数対の接触片の全てが前記一対のタブ端子に接触状態とされる、
コネクタ。
【請求項2】
前記第2コネクタハウジングは、
回動可能に支持されたレバーを備え、
前記レバーが回動されることで、前記第1コネクタハウジングに対する嵌合力及び離脱力が付与される、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
請求項2に記載のコネクタからなり、
前記一対のタブ端子と前記クリップ状端子とが、前記第1コネクタハウジングに対する前記第2コネクタハウジングの嵌合及び離脱によってオン・オフされる電源回路のスイッチ部とされている、
電源回路遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ及び電源回路遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車やハイブリッド車等の車両には、電気系統のメンテナンス等での作業安全性を確保するために、電源と負荷との間の通電を遮断するサービスプラグといわれる電源回路遮断装置が設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この電源回路遮断装置は、互いに嵌合される第1コネクタハウジング及び第2コネクタハウジングと、これらコネクタハウジング同士を着脱させる際に回動操作されるレバーとを備えている。そして、第1コネクタハウジングに対して第2コネクタハウジングが嵌合されると、第2コネクタハウジングの第2端子(クリップ状端子)が第1コネクタハウジングの一対の第1端子(タブ端子)を挟持することで、一対の第1端子同士を電気的に接続するように構成されている。
【0004】
第1端子は、本嵌合状態及び仮嵌合状態で第2端子の接触片がそれぞれ弾性的に接触される本接触部及び仮接触部を有する。仮接触部は、本接触部よりも挿抜方向の離脱側に配置されると共に本接触部よりも低い接触荷重で接触するように形成されている。
従って、嵌合作業時に要する操作力が一度に大きくなることによる作業者へ負担を軽減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、
図12に示すよう、クリップ形状の第2端子524は、一方向に延在して設けられる基端部525と、基端部525の延在方向に沿って並設される複数対の接触片526と、を備えている。そこで、第2端子524は、複数対の接触片526が一対の第1端子との接触開始から完全嵌合時まで全接点接触するため、第1端子と第2端子524の間の摩擦力が高くなる。
【0007】
そこで、第1端子と第2端子524の間の摩擦力が高いことにより、耐久操作時にめっき摩耗が大きく生じるおそれがある。すると、第1端子と第2端子524の間の電気抵抗が上昇し、第1端子と第2端子524の接続信頼性が低下するおそれがある。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、互いに接続される一対のタブ端子とクリップ状端子における高い接続信頼性を維持させることが可能なコネクタ及び電源回路遮断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 第1コネクタハウジングと、前記第1コネクタハウジングに嵌合及び離脱される第2コネクタハウジングと、前記第1コネクタハウジングに設けられ、前記第2コネクタハウジングとの嵌合方向に突設された一対のタブ端子と、前記第2コネクタハウジングに設けられ、互いに対向位置に配置された複数対の接触片を有して前記一対のタブ端子を挟持する側面視略U字状のクリップ状端子と、を備え、前記第1コネクタハウジングは、前記一対のタブ端子を電気的に絶縁状態に重ね合わせるために形成された絶縁板部を有し、前記一対のタブ端子は、前記第1コネクタハウジングに対して前記第2コネクタハウジングが途中まで嵌合される中途嵌合状態では前記複数対の接触片の一部が非接触とされる切欠き部を有し、前記絶縁板部における前記切欠き部に対応した部分には、前記切欠き部に補完的に嵌合されて前記複数対の接触片の一部が接触する補完突出部が形成され、前記第1コネクタハウジングに対して前記第2コネクタハウジングが完全嵌合される完全嵌合状態では、前記複数対の接触片の全てが前記一対のタブ端子に接触状態とされる、コネクタ。
【0010】
(2) 上記(1)に記載のコネクタからなり、前記一対のタブ端子と前記クリップ状端子とが、前記第1コネクタハウジングに対する前記第2コネクタハウジングの嵌合及び離脱によってオン・オフされる電源回路のスイッチ部とされている、電源回路遮断装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、互いに接続される一対のタブ端子とクリップ状端子における高い接続信頼性を維持させることが可能なコネクタ及び電源回路遮断装置を提供できる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るコネクタの嵌合前状態における第1コネクタハウジング及び第2コネクタハウジングの長手方向に沿う断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した第1コネクタハウジングの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示したコネクタの内部に設けられるタブ端子及びクリップ状端子の斜視図である。
【
図4】
図4は、コネクタの嵌合開始状態における第1コネクタハウジングのタブ端子とクリップ状端子を説明するための断面図である。
【
図5】
図5は、コネクタの中途嵌合状態における第1コネクタハウジングのタブ端子とクリップ状端子を説明するための断面図である。
【
図8】
図8は、コネクタの完全嵌合状態における第1コネクタハウジングのタブ端子とクリップ状端子とを説明するための断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第2実施形態に係るコネクタの第1コネクタハウジングのタブ端子とクリップ状端子を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るコネクタ1の嵌合前状態における第1コネクタハウジング10及び第2コネクタハウジング20の長手方向に沿う断面図である。
図2は、
図1に示した第1コネクタハウジング10の分解斜視図である。
図3は、
図1に示したコネクタ1の内部に設けられるタブ端子13及びクリップ状端子24の斜視図である。
【0015】
図1に示すように、本第1実施形態に係るコネクタ1は、第1コネクタハウジング10と、第2コネクタハウジング20とを備えている。第1コネクタハウジング10及び第2コネクタハウジング20は、いずれも電気絶縁性を有する合成樹脂から成形されている。第2コネクタハウジング20は、第1コネクタハウジング10に対して挿抜方向Aに沿って嵌合及び離脱される。第2コネクタハウジング20は、合成樹脂製のレバー40を備えている。
【0016】
レバー40は、第2コネクタハウジング20に対して回動可能に設けられており、このレバー40を回動させることで、第2コネクタハウジング20と第1コネクタハウジング10との間に嵌合力及び離脱力を付与する。このように、コネクタ1は、レバー40の回動操作によって第1コネクタハウジング10に対して第2コネクタハウジング20を嵌合及び離脱させるレバー式のコネクタである。
【0017】
本第1実施形態のコネクタ1は、例えば、電気自動車やハイブリッド車などの車両において、電気系統のメンテナンス等での作業安全性を確保するため、電源部と負荷との間の通電を遮断する、いわゆるサービスプラグといわれる電源回路遮断装置として用いられる。具体的には、第1コネクタハウジング10に対して第2コネクタハウジング20が嵌合されることで、電源部と負荷間が通電可能とされ、第1コネクタハウジング10から第2コネクタハウジング20が離脱されることで、電源部と負荷間の通電が遮断される。
【0018】
図2に示すように、第1コネクタハウジング10は、電気絶縁性を有する合成樹脂から成形されている。第1コネクタハウジング10は、外周へ張り出すフランジ部10aを有しており、このフランジ部10aをケースに固定することで電源装置等に取り付けられる。第1コネクタハウジング10は、上部が開放された収容筒部12を有している。収容筒部12は、平面視長方形状に形成されている。収容筒部12の内方には、後述する一対のタブ端子13を電気的に絶縁状態に重ね合わせるために形成された絶縁板部17が設けられている。
【0019】
第2コネクタハウジング20は、電気絶縁性を有する合成樹脂から成形されたもので、筒部22を有している。第2コネクタハウジング20の筒部22は、第1コネクタハウジング10の収容筒部12の外形よりも僅かに小さな平面視長方形状に形成されている。第2コネクタハウジング20は、筒部22が第1コネクタハウジング10の収容筒部12に嵌合されるように、収容筒部12の上方から嵌め込まれる。
【0020】
第1コネクタハウジング10の収容筒部12の内部には、導電性金属材料から形成された側面視L字状のバスバーからなる一対のタブ端子13が設けられている。
タブ端子13は、
図3に示すように、その一端部が板状の端子板部14とされており、端子板部14に対して直交する方向に延びる他端部が板状の接続部16とされている。それぞれのタブ端子13の端子板部14は、第1コネクタハウジング10の一部からなる絶縁板部17を挟んで配置される。タブ端子13の接続部16には、電源装置等から延びた電源線2が接続される。
【0021】
タブ端子13の端子板部14には、その上端に、誘い込みテーパ14c及び矩形の切欠き部15が形成されている。本第1実施形態では、矩形の切欠き部15が端子板部14の上端中央に形成されている。
【0022】
更に、端子板部14の表面には、挿抜方向Aに沿う複数の突条部14a,14bが形成されている。本第1実施形態では、二つずつの突条部14a,14bがそれぞれの端子板部14に形成されており、これらの突条部14a,14bは互いに等間隔をあけて配置されている。
【0023】
そして、一対の突条部14bが切欠き部15に対応して端子板部14の幅方向中央に配置され、一対の突条部14aが一対の突条部14bを挟んで端子板部14の幅方向両側に配置されている。そこで、切欠き部15に対応して配置された一対の突条部14bは、一対の突条部14aよりも挿抜方向Aに沿う長さが短く、上端位置が低くなっている。
【0024】
第2コネクタハウジング20には、その内部に、導電性金属材料から形成されたクリップ状端子24が設けられている。
クリップ状端子24は、
図3に示すように、互いに対向位置に配置された複数対の接触片26a,26bを有して一対のタブ端子13を挟持する側面視略U字状に形成されている。本実施形態では、クリップ状端子24が、一方向(
図1中、左右方向)に延在して設けられる基端部25と、基端部25の延在方向に沿って並設される四対の接触片26a,26bと、を有している。これらの接触片26a,26bは、内側(タブ端子13の端子板部14側)へ突出する接点27を有している。そして、第2コネクタハウジング20内に収容されたクリップ状端子24は、筒部22に嵌合されたロアハウジング50により固定される。
【0025】
そして、クリップ状端子24には、第1コネクタハウジング10の絶縁板部17を挟んで配置された一対のタブ端子13の端子板部14が挿し込まれる。一対のタブ端子13の端子板部14がクリップ状端子24に奥まで挿し込まれると、一対のタブ端子13にそれぞれ接続された電源線2同士がクリップ状端子24を介して電気的に接続される。
【0026】
更に、第1コネクタハウジング10の絶縁板部17における切欠き部15に対応した部分には、
図1に示すように、切欠き部15に補完的に嵌合されて複数対の接触片26a,26bの一部(四対の接触片26a,26bにおける中央の二対の接触片26b)が接触する補完突出部18が形成されている。
【0027】
そこで、第1コネクタハウジング10に対して第2コネクタハウジング20が途中まで嵌合される中途嵌合状態では、端子板部14に形成された切欠き部15によって、クリップ状端子24における中央の二対の接触片26bが一対のタブ端子13の端子板部14に非接触とされ、補完突出部18に接触する(
図4,6参照)。
そして、第1コネクタハウジング10に対して第2コネクタハウジング20が完全嵌合される完全嵌合状態では、四対の接触片26a,26bの全てが一対のタブ端子13の端子板部14に接触状態となる(
図7~9参照)。
【0028】
次に、本第1実施形態に係るコネクタ1において、第1コネクタハウジング10に対して第2コネクタハウジング20を嵌合及び離脱させる場合のタブ端子13とクリップ状端子24の作用について説明する。
【0029】
図4は、コネクタの嵌合開始状態における第1コネクタハウジングのタブ端子とクリップ状端子を説明するための断面図である。
図5~
図7は、コネクタ1の中途嵌合状態における第1コネクタハウジング10のタブ端子13とクリップ状端子24を説明するための断面図である。
図8~
図10は、コネクタ1の完全嵌合状態における第1コネクタハウジング10のタブ端子13とクリップ状端子24とを説明するための断面図である。なお、これら
図4~
図10の断面図においては、タブ端子13に対するクリップ状端子24の接触状態を判り易くするために第2コネクタハウジング20の図示を省略する。
【0030】
先ず、第1コネクタハウジング10に第2コネクタハウジング20を嵌合させるには、
図1に示したように、第1コネクタハウジング10に対して、レバー40を離脱操作位置に配置させた第2コネクタハウジング20を近接させる。
【0031】
そして、第1コネクタハウジング10の収容筒部12に、第2コネクタハウジング20の筒部22が嵌め込まれたこの着脱操作状態では、
図4に示すように、クリップ状端子24の各接点27は、絶縁板部17の先端部に接触し、タブ端子13の端子板部14から離間されている。つまり、コネクタ1はオフ状態であり、電源線2同士が非接続状態とされている。
【0032】
次に、この着脱操作状態において、離脱操作位置のレバー40を完全嵌合操作位置へ向かって回動させる。これにより、第1コネクタハウジング10と第2コネクタハウジング20との間に嵌合力が付与され、
図5に示すように、第2コネクタハウジング20が第1コネクタハウジング10に引き込まれ、中途嵌合状態となる。
【0033】
第2コネクタハウジング20と第1コネクタハウジング10とが中途嵌合状態となると、クリップ状端子24では、各接触片26a,26bが外側へ弾性変形されることで、弾性力によって絶縁板部17へ向かって付勢される。
【0034】
従って、中央の二対の接触片26bを挟んで両側に配置された二対の接触片26aにおける各接点27は、
図6に示すように、端子板部14の突条部14aに弾性的に接触される。一方、中央の二対の接触片26bにおける各接点27は、
図7に示すように、絶縁板部17の補完突出部18に弾性的に接触され、端子板部14の突条部14bには非接触とされる。
【0035】
そこで、第2コネクタハウジング20と第1コネクタハウジング10との中途嵌合状態では、クリップ状端子24における中央の二対の接触片26bは、樹脂部分である絶縁板部17の補完突出部18と接触し、摩擦力が低下する。そのため、第2コネクタハウジング20と第1コネクタハウジング10との嵌合及び離脱操作時には、タブ端子13の端子板部14とクリップ状端子24との間の摩擦力が低減し、嵌合操作力が低下する。
【0036】
そして、レバー40が完全嵌合操作位置へ回動されると、
図8に示すように、第1コネクタハウジング10と第2コネクタハウジング20とが完全嵌合状態となる。中央の二対の接触片26bを挟んで配置された二対の接触片26aにおける各接点27は、
図9に示すように、端子板部14の突条部14aに弾性的に接触されたままの状態となる。また、中央の二対の接触片26bにおける各接点27は、
図10に示すように、絶縁板部17の補完突出部18を通過し、端子板部14の突条部14bに弾性的に接触された状態となる。
【0037】
これにより、第2コネクタハウジング20と第1コネクタハウジング10との完全嵌合状態では、クリップ状端子24の各接触片26a,26bが、一対のタブ端子13の端子板部14に全て接触した状態となり、タブ端子13に接続された電源線2同士がクリップ状端子24を介して電気的に接続される。
【0038】
このように、第2コネクタハウジング20と第1コネクタハウジング10との嵌合及び離脱操作時には、クリップ状端子24における中央の二対の接触片26bが、樹脂部分である絶縁板部17の補完突出部18と接触する。そのため、二対の接触片26bは耐久操作時にめっき摩耗が軽減され、タブ端子13とクリップ状端子24の間のめっき摩耗による抵抗上昇を抑制することができ、タブ端子13とクリップ状端子24の接続信頼性が向上する。
【0039】
したがって、本第1実施形態に係るコネクタ1によれば、互いに接続される一対のタブ端子13とクリップ状端子24における高い接続信頼性を維持させると共に、第2コネクタハウジング20と第1コネクタハウジング10との嵌合操作力の上昇を抑えることができる。
【0040】
また、本第1実施形態に係るコネクタ1によれば、レバー40を回動させることで、第1コネクタハウジング10に対する第2コネクタハウジング20の嵌合及び離脱を小さな操作力で容易に行うことができる。これにより、より操作性に優れたコネクタ1を提供できる。
【0041】
また、本第1実施形態に係るコネクタ1が用いられる電源回路遮断装置によれば、一対のタブ端子13とクリップ状端子24とが、第1コネクタハウジング10に対する第2コネクタハウジング20の嵌合及び離脱によってオン・オフされる電源回路のスイッチ部とされる。そこで、互いに接続される一対のタブ端子13とクリップ状端子24における高い接続信頼性を維持させると共に、第1コネクタハウジング10に対する第2コネクタハウジング20の嵌合操作力の上昇を抑えることができる電源回路遮断装置を提供することができる。
【0042】
次に、本発明の他の実施形態に係るコネクタについて説明する。
図11は、本発明の第2実施形態に係るコネクタ1Aの第1コネクタハウジング10Aのタブ端子13Aとクリップ状端子24を説明するための断面図である。なお、上記第1実施形態に係るコネクタ1の構成部材と略同様のコネクタ1Aの構成部材については、同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0043】
本第2実施形態に係るコネクタ1Aは、第1コネクタハウジング10Aと、第2コネクタハウジング20とを備えている。
第1コネクタハウジング10Aの収容筒部12の内部には、導電性金属材料から形成された側面視L字状のバスバーからなる一対のタブ端子13Aが設けられている。
【0044】
タブ端子13Aは、
図11に示すように、その一端部が板状の端子板部14Aとされている。端子板部14には、その上端に、誘い込みテーパ14c及び矩形の切欠き部15が形成されている。本第2実施形態では、一対の矩形の切欠き部15が端子板部14Aの上端両側に形成されている。
【0045】
更に、端子板部14Aの表面には、挿抜方向Aに沿う複数の突条部14a,14bが形成されている。本第2実施形態では、二つずつの突条部14a,14bがそれぞれの端子板部14に形成されており、これらの突条部14a,14bは互いに等間隔をあけて配置されている。
【0046】
そして、一対の突条部14bが一対の切欠き部15にそれぞれ対応して端子板部14の幅方向両側に配置され、一対の突条部14aが端子板部14の幅方向中央に配置されている。そこで、切欠き部15に対応して配置された一対の突条部14bは、一対の突条部14aよりも挿抜方向Aに沿う長さが短く、上端位置が低くなっている。
【0047】
更に、第1コネクタハウジング10Aの絶縁板部17における一対の切欠き部15に対応した部分には、
図11に示すように、切欠き部15に補完的に嵌合されて複数対の接触片26a,26bの一部(四対の接触片26a,26bにおける両側の二対の接触片26a)が接触する一対の補完突出部18が形成されている。
【0048】
そこで、第1コネクタハウジング10Aに対して第2コネクタハウジング20が途中まで嵌合される中途嵌合状態では、中央の二対の接触片26bにおける各接点27は、端子板部14Aの突条部14aに弾性的に接触される。一方、中央の二対の接触片26bを挟んで両側に配置された二対の接触片26aにおける各接点27は、端子板部14Aに形成された一対の切欠き部15によって、端子板部14の突条部14bには非接触とされ、絶縁板部17の一対の補完突出部18にそれぞれ弾性的に接触される。
【0049】
そこで、第2コネクタハウジング20と第1コネクタハウジング10Aとの中途嵌合状態では、クリップ状端子24における両側の二対の接触片26aは、樹脂部分である絶縁板部17の補完突出部18と接触し、摩擦力が低下する。そのため、第2コネクタハウジング20と第1コネクタハウジング10Aとの嵌合及び離脱操作時には、タブ端子13Aの端子板部14Aとクリップ状端子24との間の摩擦力が低減し、嵌合操作力が低下する。
【0050】
そして、第1コネクタハウジング10Aと第2コネクタハウジング20との完全嵌合状態では、四対の接触片26a,26bの全てが一対のタブ端子13の端子板部14Aに接触状態となる。
【0051】
このように、第2コネクタハウジング20と第1コネクタハウジング10Aとの嵌合及び離脱操作時には、クリップ状端子24における両側の二対の接触片26aが、樹脂部分である絶縁板部17の補完突出部18と接触する。そのため、二対の接触片26aは耐久操作時にめっき摩耗が軽減され、タブ端子13Aとクリップ状端子24の間のめっき摩耗による抵抗上昇を抑制することができ、タブ端子13Aとクリップ状端子24の接続信頼性が向上する。
【0052】
したがって、本第2実施形態に係るコネクタ1A及びこのコネクタ1Aを用いた電源回路遮断装置によれば、互いに接続される一対のタブ端子13Aとクリップ状端子24における高い接続信頼性を維持させると共に、第2コネクタハウジング20と第1コネクタハウジング10Aとの嵌合操作力の上昇を抑えることができる。
【0053】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0054】
例えば、上記実施形態では、電源回路遮断装置として用いられるコネクタを例に説明したが、本発明のコネクタはこれに限らない。第1コネクタハウジングに設けられ、第2コネクタハウジングとの嵌合方向に突設された一対のタブ端子と、第2コネクタハウジングに設けられ、互いに対向位置に配置された複数対の接触片を有する側面視略U字状のクリップ状端子と、を備えたコネクタであれば、ジョイントコネクタ等の種々のコネクタに適用できることは云うまでもない。
【0055】
また、上記実施形態のコネクタでは、四対の接触片を一体に有するクリップ状端子を例に説明したが、本発明のクリップ状端子はこれに限定されるものではなく、二対以上の複数対の接触片を一体に有するクリップ状端子を用いたり、一対以上の接触片を有するクリップ状端子を第2コネクタハウジングに複数設けたりすることもできる。
【0056】
ここで、上述した本発明に係るコネクタ及び電源回路遮断装置の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 第1コネクタハウジング(10)と、
前記第1コネクタハウジング(10)に嵌合及び離脱される第2コネクタハウジング(20)と、
前記第1コネクタハウジング(10)に設けられ、前記第2コネクタハウジング(20)との嵌合方向に突設された一対のタブ端子(13)と、
前記第2コネクタハウジング(20)に設けられ、互いに対向位置に配置された複数対の接触片(26a,26b)を有して前記一対のタブ端子(13)を挟持する側面視略U字状のクリップ状端子(24)と、を備え、
前記第1コネクタハウジング(10)は、前記一対のタブ端子(13)を電気的に絶縁状態に重ね合わせるために形成された絶縁板部(17)を有し、
前記一対のタブ端子(13)は、前記第1コネクタハウジング(10)に対して前記第2コネクタハウジング(20)が途中まで嵌合される中途嵌合状態では前記複数対の接触片(26a,26b)の一部が非接触とされる切欠き部(15)を有し、
前記絶縁板部(17)における前記切欠き部(15)に対応した部分には、前記切欠き部(15)に補完的に嵌合されて前記複数対の接触片(26a,26b)の一部が接触する補完突出部(18)が形成され、
前記第1コネクタハウジング(10)に対して前記第2コネクタハウジング(20)が完全嵌合される完全嵌合状態では、前記複数対の接触片(26a,26b)の全てが前記一対のタブ端子(13)に接触状態とされる、
コネクタ(1)。
【0057】
上記[1]の構成のコネクタ(1)によれば、第2コネクタハウジング(20)と第1コネクタハウジング(10)との嵌合及び離脱操作時には、クリップ状端子(24)における複数対の接触片(26a,26b)の一部が、樹脂部分である絶縁板部(17)の補完突出部(18)と接触する。そのため、複数対の接触片(26a,26b)の一部は耐久操作時にめっき摩耗が軽減され、タブ端子(13)とクリップ状端子(24)の間のめっき摩耗による抵抗上昇を抑制することができ、タブ端子(13)とクリップ状端子(24)の接続信頼性が向上する。
また、第2コネクタハウジング(20)と第1コネクタハウジング(10)との中途嵌合状態では、クリップ状端子(24)における複数対の接触片(26a,26b)の一部は、樹脂部分である絶縁板部(17)の補完突出部(18)と接触し、摩擦力が低下する。そのため、第2コネクタハウジング(20)と第1コネクタハウジング(10)との嵌合及び離脱操作時には、タブ端子(13)とクリップ状端子(24)との間の摩擦力が低減し、嵌合操作力が低下する。
【0058】
[2] 前記第2コネクタハウジング(20)は、
回動可能に支持されたレバー(40)を備え、
前記レバー(40)が回動されることで、前記第1コネクタハウジング(10)に対する嵌合力及び離脱力が付与される、
上記[1]に記載のコネクタ(1)。
【0059】
上記[2]の構成のコネクタ(1)によれば、レバー(40)を回動させることで、第1コネクタハウジング(10)に対する第2コネクタハウジング(20)の嵌合及び離脱を小さな操作力で容易に行うことができる。
【0060】
[3] 上記[2]に記載のコネクタ(1)からなり、
前記一対のタブ端子(13)と前記クリップ状端子(24)とが、前記第1コネクタハウジング(10)に対する前記第2コネクタハウジング(20)の嵌合及び離脱によってオン・オフされる電源回路のスイッチ部とされている、
電源回路遮断装置。
【0061】
上記[3]の構成の電源回路遮断装置によれば、互いに接続される一対のタブ端子(13)とクリップ状端子(24)における高い接続信頼性を維持させると共に、第1コネクタハウジング(10)に対する第2コネクタハウジング(20)の嵌合操作力の上昇を抑えることができる。
【符号の説明】
【0062】
1…コネクタ
10…第1コネクタハウジング
13…タブ端子
14…端子板部
15…切欠き部
17…絶縁板部
18…補完突出部
20…第2コネクタハウジング
24…クリップ状端子
26a,26b…接触片