(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156495
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20241029BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20241029BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H01L29/78 652E
H01L29/78 652T
H01L29/78 658A
H01L29/78 652D
H01L29/78 658E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071005
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 健
(57)【要約】
【課題】所望のしきい値と低抵抗の両立を図ることが可能なn型チャネルのプレーナ型の縦型半導体素子を有する半導体装置を提供する。
【解決手段】チャネル領域6をそれぞれ異なるアクセプタ濃度に調整された第1チャネル領域6aおよび第2チャネル領域6bによって構成する。第1チャネル領域6aについては、しきい値の制御を第2チャネル領域6bから独立して行うことができ、縦型MOSFETとして好適なしきい値に設定できる。また、第2チャネル領域6bについては、第1チャネル領域6aよりも低アクセプタ濃度に設定できる。これにより、所望のしきい値と低抵抗の両立を図ることが可能な半導体装置にできる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GaNで構成されるn型チャネルのプレーナ型の縦型半導体素子を有する半導体装置であって、
表面(1a)および裏面(1b)を有するn型またはp型のGaN基板(1)と、
前記GaN基板の表面上に形成され、前記GaN基板よりも低ドナー濃度とされたn型のドリフト領域(2)と、
前記ドリフト領域の上に形成されたp型のベース領域(3)と、
前記ベース領域の上または該ベース領域の表層部に備えられたp型のコンタクト領域(4)と、
前記ベース領域の上に形成され、前記ドリフト領域よりも高いドナー濃度とされたn型のソース領域(5)と、
前記ベース領域の上に形成され、前記ソース領域を挟んで前記コンタクト領域と反対側に配置されたp型のチャネル領域(6)と、
前記ドリフト領域の上において、前記ベース領域および前記チャネル領域に接して配置されたJFET領域(7)と、
前記チャネル領域の上に形成されたゲート絶縁膜(8)と、
前記チャネル領域の上における前記ゲート絶縁膜の上に形成されたゲート電極(9)と、
前記コンタクト領域および前記ソース領域に接続されたソース電極(10)と、
前記GaN基板の裏面に接続されたドレイン電極(11)と、を有し、
前記チャネル領域は、前記コンタクト領域よりもアクセプタ濃度が低くされていると共に、チャネル長方向において、異なるアクセプタ濃度で構成された第1チャネル領域(6a)と第2チャネル領域(6b)とを含んでいる、半導体装置。
【請求項2】
前記チャネル領域は、Mgが導入されていることでp型GaNとされていると共にBが導入されており、前記第1チャネル領域よりも前記第2チャネル領域の方がBの導入量が多くされ、前記第1チャネル領域のアクセプタ濃度(P3)が前記第2チャネル領域のアクセプタ濃度(P4)よりも高くなっている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記チャネル領域のうち前記ソース領域から前記JFET領域に向う方向の寸法をチャネル長として、該チャネル長の方向において、前記第2チャネル領域の寸法が前記第1チャネル領域の寸法よりも大きくされている、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記チャネル領域のうち前記ソース領域から前記JFET領域に向う方向の寸法をチャネル長として、該チャネル長の方向において、前記第1チャネル領域の寸法が前記第2チャネル領域の寸法よりも大きくされている、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2チャネル領域は前記ソース領域に接し、前記第1チャネル領域は前記JFET領域に接している、請求項2ないし4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1チャネル領域は前記ソース領域に接し、前記第2チャネル領域は前記JFET領域に接している、請求項2ないし4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
GaNで構成されるn型チャネルのプレーナ型の縦型半導体素子を有する半導体装置の製造方法であって、
表面(1a)および裏面(1b)を有するn型またはp型のGaN基板(1)を用意することと、
前記GaN基板の表面上に、前記GaN基板よりも低ドナー濃度となるn型のドリフト領域(2)を形成することと、
前記ドリフト領域の上にp型のベース領域(3)を形成することと、
前記ベース領域の上に、または該ベース領域の表層部にて、p型のコンタクト領域(4)を形成することと、
前記ドリフト領域の上において、前記コンタクト領域の表面から前記ベース領域よりも深い位置までn型のJFET領域(7)を形成することと、
前記コンタクト領域に対してn型不純物をイオン注入し、前記ベース領域の上に、前記ドリフト領域よりも高いドナー濃度となるn型のソース領域(5)を形成することと、
前記コンタクト領域にBをイオン注入することで前記コンタクト領域のアクセプタ濃度を低くし、前記ベース領域の上における前記ソース領域を挟んだ前記コンタクト領域と反対側に、p型のチャネル領域(6)を形成することと、
前記チャネル領域の上にゲート絶縁膜(8)を形成することと、
前記チャネル領域の上における前記ゲート絶縁膜の上にゲート電極(9)を形成することと、
前記コンタクト領域および前記ソース領域に接続されるソース電極(10)を形成することと、
前記GaN基板の裏面に接続されるドレイン電極(11)を形成することと、を含み、
前記チャネル領域を形成することは、
前記コンタクト領域よりもアクセプタ濃度が低くされ、チャネル長方向において、異なるアクセプタ濃度となるように第1チャネル領域(6a)と第2チャネル領域(6b)とを形成することであり、
前記コンタクト領域のうちの前記チャネル領域の形成予定領域にBのイオン注入を行うことで前記第1チャネル領域を形成し、さらに、前記第1チャネル領域のうち前記第2チャネル領域の形成予定領域にさらにBのイオン注入を行って前記第2チャネル領域を形成する、半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記コンタクト領域を形成することでは、前記ベース領域のアクセプタ濃度を前記コンタクト領域のアクセプタ濃度に合せることで前記ベース領域の表層部によって前記コンタクト領域を構成する、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記チャネル領域を形成することでは、前記第2チャネル領域が前記ソース領域に接し、前記第1チャネル領域が前記JFET領域に接するように、前記第1チャネル領域および前記第2チャネル領域を形成するためのBのイオン注入を行う、請求項7または8に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窒化ガリウム(以下、GaNという)で構成されるn型チャネルのプレーナ型の縦型半導体素子を有する半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GaNを用いたn型チャネルのプレーナ型の縦型MOSFETでは、チャネル領域を構成するp型領域の不純物濃度を高くすることでしきい値を高くできるが、不純物濃度が高くなるために移動度が低下してチャネル抵抗を増加させることになる。
【0003】
一方、特許文献1において、トレンチゲート構造の縦型MOSFETにおいて、高いしきい値を得つつ、チャネル抵抗を低減した構造が開示されている。この縦型MOSFETは、n型の基板の上に第1n層、第1p層、第2p層、第2n層を順にエピタキシャル成長させ、第2n層の表面から第1n層に至るトレンチを形成し、このトレンチ内にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成した構造とされている。下層側の第1p層を低アクセプタ濃度とし、上層側の第2p層を高アクセプタ濃度とすることで、高アクセプタ濃度の第2p層にて高いしきい値を得つつ、低アクセプタ濃度の第1p層でチャネル抵抗の低減が図れるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術をプレーナ型の縦型半導体MOSFETに適用しようとすると、以下の課題が発生する。
【0006】
まず、各層をエピタキシャル成長によって形成しているが、プレーナ型の縦型MOSFETに採用しようとすると、チャネル部分を高アクセプタ濃度の第2p層のエピタキシャル層で構成することになる。その場合、先にチャネル部分の両側に形成したn型のソース領域の間に凹部を形成し、その凹部内にエピタキシャル層を埋め込むことで第1p層を構成することになり、凹部形成時に意図しないn型不純物が導入される。したがって、所望のしきい値に設定することが難しく、また、低抵抗にできなくなる。
【0007】
また、スイッチング損失低減の観点からp型コンタクトの低抵抗化が必須である。特許文献1の縦型MOSFETの場合、第2p層がp型コンタクトとしても機能することになるが、アクセプタ濃度を高くするために不純物濃度を増やしすぎると、しきい値が必要以上に高くなり、移動度が低下して低抵抗にできなくなる。
【0008】
本開示は、所望のしきい値と低抵抗の両立を図ることが可能なn型チャネルのプレーナ型の縦型半導体素子を有する半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の観点は、GaNで構成されるn型チャネルのプレーナ型の縦型半導体素子を有する半導体装置であって、
表面(1a)および裏面(1b)を有するn型またはp型のGaN基板(1)と、
GaN基板の表面上に形成され、GaN基板よりも低ドナー濃度とされたn型のドリフト領域(2)と、
ドリフト領域の上に形成されたp型のベース領域(3)と、
ベース領域の上または該ベース領域の表層部に備えられたp型のコンタクト領域(4)と、
ベース領域の上に形成され、ドリフト領域よりも高いドナー濃度とされたn型のソース領域(5)と、
ベース領域の上に形成され、ソース領域を挟んでコンタクト領域と反対側に配置されたp型のチャネル領域(6)と、
ドリフト領域の上において、ベース領域およびチャネル領域に接して配置されたJFET領域(7)と、
チャネル領域の上に形成されたゲート絶縁膜(8)と、
チャネル領域の上におけるゲート絶縁膜の上に形成されたゲート電極(9)と、
コンタクト領域およびソース領域に接続されたソース電極(10)と、
GaN基板の裏面に接続されたドレイン電極(11)と、を有し、
チャネル領域は、コンタクト領域よりもアクセプタ濃度が低くされていると共に、チャネル長方向において、異なるアクセプタ濃度で構成された第1チャネル領域(6a)と第2チャネル領域(6b)とを含んでいる。
【0010】
このように、第1チャネル領域および第2チャネル領域をそれぞれ異なるアクセプタ濃度に調整している。このため、第1チャネル領域については、しきい値の制御を第2チャネル領域から独立して行うことができ、縦型半導体素子として好適なしきい値に設定可能となる。また、第2チャネル領域については、第1チャネル領域よりも低アクセプタ濃度に設定できる。このため、第2チャネル領域については、縦型半導体素子をオンさせたときのチャネル抵抗を低減することができ、高い移動度を得ることが可能となる。よって、所望のしきい値と低抵抗の両立を図ることが可能な半導体装置にできる。
【0011】
本開示のもう1つの観点は、GaNで構成されるn型チャネルのプレーナ型の縦型半導体素子を有する半導体装置の製造方法であって、
表面(1a)および裏面(1b)を有するn型またはp型のGaN基板(1)を用意することと、
GaN基板の表面上に、GaN基板よりも低ドナー濃度となるn型のドリフト領域(2)を形成することと、
ドリフト領域の上にp型のベース領域(3)を形成することと、
ベース領域の上に、または該ベース領域の表層部にて、p型のコンタクト領域(4)を形成することと、
ドリフト領域の上において、コンタクト領域の表面からベース領域よりも深い位置までn型のJFET領域(7)を形成することと、
コンタクト領域に対してn型不純物をイオン注入し、ベース領域の上に、ドリフト領域よりも高いドナー濃度となるn型のソース領域(5)を形成することと、
コンタクト領域にBをイオン注入することでコンタクト領域のアクセプタ濃度を低くし、ベース領域の上におけるソース領域を挟んだコンタクト領域と反対側に、p型のチャネル領域(6)を形成することと、
チャネル領域の上にゲート絶縁膜(8)を形成することと、
チャネル領域の上におけるゲート絶縁膜の上にゲート電極(9)を形成することと、
コンタクト領域およびソース領域に接続されるソース電極(10)を形成することと、
GaN基板の裏面に接続されるドレイン電極(11)を形成することと、を含み、
チャネル領域を形成することは、
コンタクト領域よりもアクセプタ濃度が低くされ、チャネル長方向において、異なるアクセプタ濃度となるように第1チャネル領域(6a)と第2チャネル領域(6b)とを形成することであり、
コンタクト領域のうちのチャネル領域の形成予定領域にBのイオン注入を行うことで第1チャネル領域を形成し、さらに、第1チャネル領域のうちの第2チャネル領域の形成予定領域にさらにBのイオン注入を行って第2チャネル領域を形成する。
【0012】
このように、コンタクト領域に対してBのイオンを行うことで第1チャネル領域および第2チャネル領域を形成している。つまり、これらをソース領域の形成後にトレンチ内にGaN層を成長させる埋込成長によって形成していない。このため、第1チャネル領域および第2チャネル領域に意図しないn型不純物が導入されないようにできる。したがって、所望のしきい値に設定できると共に、低抵抗化を実現でき、所望のしきい値と低抵抗の両立を図ることが可能なn型チャネルのプレーナ型の縦型半導体素子を有する半導体装置を製造できる。
【0013】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態にかかるn型チャネルのプレーナ型の縦型MOSFETを有する半導体装置の断面図である。
【
図2A】
図1に示す半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【
図2B】
図2Aに続く半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【
図2C】
図2Bに続く半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【
図2D】
図2Cに続く半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【
図2E】
図2Dに続く半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【
図3A】第2実施形態にかかるn型チャネルのプレーナ型の縦型MOSFETを有する半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【
図3B】
図3Aに続く半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【
図3C】
図3Bに続く半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【
図4】第1、第2実施形態の変形例にかかるn型チャネルのプレーナ型の縦型MOSFETを有する半導体装置の断面図である。
【
図5】第1、第2実施形態の変形例にかかるn型チャネルのプレーナ型の縦型MOSFETを有する半導体装置の断面図である。
【
図6】第3実施形態にかかるn型チャネルのプレーナ型の縦型MOSFETを有する半導体装置の断面図である。
【
図7A】
図6に示す半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【
図7B】
図7Aに続く半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【
図7C】
図7Bに続く半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【
図7D】
図7Cに続く半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【
図7E】
図7Dに続く半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【
図8】第3実施形態の変形例にかかるn型チャネルのプレーナ型の縦型MOSFETを有する半導体装置の断面図である。
【
図9】第3実施形態の変形例にかかるn型チャネルのプレーナ型の縦型MOSFETを有する半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0016】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。まず、
図1を参照して、本実施形態にかかるGaNで構成されるn型チャネルのプレーナ型の縦型MOSFETを有する半導体装置について説明する。なお、
図1中、P1~P4は、p型GaNのアクセプタ濃度を示しており、本実施形態では、P1<P2、P4<P3<P2の関係となっている。
【0017】
縦型パワーMOSFETは、n+型のGaN基板1を用いて形成されている。GaN基板1は、上面を主表面1aとし、主表面1aの反対面である下面を裏面1bとした構成とされており、ドーパントとしてSi(シリコン)が高濃度にドープされている。
【0018】
GaN基板1の主表面1a上には、SiがGaN基板1よりも低いドナー濃度でドープされたGaNで構成されるn-型のドリフト領域2が積層されている。
【0019】
ドリフト領域2上の所定領域には、所定の厚みのp型GaNで構成されたベース領域3が形成されている。ベース領域3は、Mg(マグネシウム)が所望のドーパント濃度でドープされることで所定のアクセプタ濃度P1とされている。
【0020】
また、ベース領域3上には、高アクセプタ濃度のp型GaNで構成されたコンタクト領域4が形成されていると共に、高ドナー濃度のn型GaNで構成されたソース領域5が形成されている。コンタクト領域4は、Mgがベース領域3よりも高いドーパント濃度でドープされることで、ベース領域3よりも高いアクセプタ濃度P2とされている。ソース領域5は、Siがドリフト領域2よりも高いドーパント濃度でドープされて高ドナー濃度とされている。
【0021】
さらに、ベース領域3上には、ソース領域5を挟んでコンタクト領域4と反対側に、p型GaNで構成されたチャネル領域6が形成されている。チャネル領域6は、コンタクト領域4よりもアクセプタ濃度が低く設定されており、アクセプタ濃度が異なった第1チャネル領域6aおよび第2チャネル領域6bを有している。そして、チャネル領域6は、Mgが所定のドーパント濃度でドープされると共に、p型ドーパントを不活性化させるイオンがドープされることで、コンタクト領域4と異なるアクセプタ濃度に設定されている。
【0022】
本実施形態では、第1チャネル領域6aは後述するJFET領域7に接して形成されており、第2チャネル領域6bは第1チャネル領域6aとソース領域5との間においてソース領域5に接して配置されている。つまり、第1チャネル領域6aは、ソース領域5から離れて形成されている。
【0023】
第1チャネル領域6aは、コンタクト領域4よりも低く、かつ、第2チャネル領域6bよりも高いアクセプタ濃度P3とされており、縦型MOSFETのしきい値を設定する部分として機能する。また、第1チャネル領域6aのアクセプタ濃度P3は、コンタクト領域4のアクセプタ濃度P2とは異なる濃度に設定されている。このため、コンタクト領域4については低コンタクト抵抗としつつ、第1チャネル領域6aのアクセプタ濃度P3についてはしきい値の設定に適した濃度に設定されている。
【0024】
一方、第2チャネル領域6bは、第1チャネル領域6aよりも低いアクセプタ濃度P4とされており、この第2チャネル領域6bにより、後述するように低抵抗化を可能としている。
【0025】
さらに、ベース領域3やチャネル領域6に隣接してJFET領域7が形成されている。JFET領域7は、ドリフト領域2の上に形成されていてドリフト領域2とは別に形成されたものであっても良いし、ドリフト領域2のうちの上方に位置する部分により構成されたものであっても良い。本実施形態の場合、JFET領域7は、ドリフト領域2の上に成長させたエピタキシャル成長層もしくはドリフト領域2の上に形成されたGaNにn型不純物をイオン注入して形成したイオン注入層によって構成している。
【0026】
チャネル領域6およびJFET領域7の上にはシリコン酸化膜などで構成されるゲート絶縁膜8が形成されている。さらに、ゲート絶縁膜8の上にはゲート電極9が形成されており、ゲート電極9は図示しないがシリコン酸化膜などで構成される絶縁膜で覆われている。
【0027】
そして、GaN基板1の主表面1a側において、ソース領域5およびコンタクト領域4に接続されるようにソース電極10が形成されている。また、GaN基板1の裏面1b側において、ドレイン電極11が形成されている。このような構造により、GaNで構成されるプレーナ型の縦型MOSFETが形成されている。そして、この縦型MOSFETが形成された領域をセル領域として、セル領域を囲む外周領域に耐圧構造が構成されることで半導体装置が構成されている。
【0028】
次に、
図1に示す縦型パワーMOSFETを有する半導体装置の製造方法について
図2A~
図2Eを参照して説明する。なお、
図2B~
図2Eでは、GaN基板1やドリフト領域2の下方部分については図を省略してある。
【0029】
〔
図2Aに示す工程〕
まず、GaN基板1を用意する。そして、GaN基板1の主表面1aに、ドリフト領域2を結晶成長させ、さらにその上にp型のベース領域3およびコンタクト領域4を順に結晶成長させる。この段階では、ベース領域3およびコンタクト領域4がGaN基板1の全面に形成されることになり、これらがJFET領域7となる部分にも形成され、コンタクト領域4がソース領域5やチャネル領域6となる部分にも形成されることになる。ドリフト領域2についてはn型GaNとするSiがドープされるように、また、ベース領域3およびコンタクト領域4についてはp型GaNとするMgがドープされるように、導入するドープ原料を異ならせて結晶成長を行っている。ベース領域3とコンタクト領域4については、アクセプタ濃度を変えるために、ドープ原料の導入量などの結晶成長条件を調整している。
【0030】
〔
図2Bに示す工程〕
コンタクト領域4の表面からベース領域3よりも深い位置に至り、ドリフト領域2に達するようにJFET領域7を形成する。JFET領域7については、コンタクト領域4の表面にJFET領域7の形成予定領域が開口するマスクを配置し、そのマスクを用いてコンタクト領域4およびベース領域3を貫通するトレンチを形成し、このトレンチ内をn型GaNで埋め込む埋込成長で形成される。または、JFET領域7については、コンタクト領域4の表面にJFET領域7の形成予定領域が開口するマスクを配置し、そのマスクを用いてコンタクト領域4の表面からベース領域3より深い位置までSiをイオン注入することでも形成可能である。
【0031】
〔
図2Cに示す工程〕
コンタクト領域4およびJFET領域7の表面上にマスク20を配置したのち、マスク20をパターニングしてソース領域5の形成予定領域を開口させる。そして、マスク20の上からSiをイオン注入する。これにより、ソース領域5が形成される。
【0032】
〔
図2Dに示す工程〕
マスク20を除去したのち、コンタクト領域4やソース領域5およびJFET領域7の表面上にマスク21を配置し、マスク21をパターニングしてチャネル領域6の形成予定領域を開口させる。そして、マスク21の上からB(ボロン)をイオン注入する。これにより、チャネル領域6となる部分、つまり第1チャネル領域6aおよび第2チャネル領域6bの両方にボロンが導入される。
【0033】
〔
図2Eに示す工程〕
マスク21を除去したのち、コンタクト領域4、ソース領域5、チャネル領域6およびJFET領域7の表面上にマスク22を配置し、マスク22をパターニングして第2チャネル領域6bの形成予定領域を開口させる。そして、マスク22の上からB(ボロン)を追加でイオン注入する。これにより、第2チャネル領域6bとなる部分に、第1チャネル領域6aとなる部分よりも多くボロンが導入される。
【0034】
この後、高温での熱処理による活性化アニール処理を行って、チャネル領域6に注入されたBイオンを活性化させる。これにより、Bイオンの導入量に応じてチャネル領域6内のMgイオンが不活性化される。具体的には、第1チャネル領域6aの方が第2チャネル領域6bよりもMgイオンの不活性化される量が少ないため、第1チャネル領域6aの方が第2チャネル領域6bよりもアクセプタ濃度が高くなる。また、第1チャネル領域6aと第2チャネル領域6bは、共に、Bイオンが注入された状態になっているため、コンタクト領域4よりもアクセプタ濃度が低くなる。
【0035】
なお、ここではBイオンの活性化アニール処理について説明したが、ソース領域5に注入したSiイオンの活性化アニール処理も行われる。ソース領域5に注入したSiイオンの活性化アニール処理については、Bイオンの活性化アニール処理と兼ねても良いし、Siイオンを注入した後、チャネル領域6となる部分へのBイオンの注入前に行っても良い。
【0036】
この後の工程については図示しないが、ゲート絶縁膜8の形成工程、ゲート電極9の形成工程、ゲート電極9を覆う絶縁膜の形成工程、ソース電極10の形成工程、GaN基板1の裏面へのドレイン電極11の形成工程などを行う。これにより、
図1に示したGaNで構成されるプレーナ型の縦型MOSFETを有する半導体装置が完成する。
【0037】
続いて、本実施形態にかかる半導体装置に備えられたn型チャネルのプレーナ型の縦型MOSFETの作動について説明する。
【0038】
まず、縦型MOSFETは、ゲート電極9にゲート電圧が印加される前のオフ状態では、チャネル領域6に反転層が形成されない。このため、ドレイン電極11に正の電圧が印加されたとしても、ソース領域5からチャネル領域6内に電子が流れず、ソース電極10とドレイン電極11との間には電流が流れない。
【0039】
そして、ゲート電極9に所定のゲート電圧が印加されると、チャネル領域6のうちのゲート絶縁膜8に接している表面にチャネルが形成される。このため、ソース電極10から注入された電子は、ソース領域5からチャネル領域6に形成されたチャネルを通った後、JFET領域7およびドリフト領域2を通過してドレイン電極11へ流れる。これにより、ソース電極10とドレイン電極11との間に電流が流れ、半導体装置がオン状態となる。
【0040】
このとき、縦型MOSFETのしきい値は、チャネル領域6の中でもアクセプタ濃度が高く設定された第1チャネル領域6aのアクセプタ濃度P3によって決まる。そして、第1チャネル領域6aのアクセプタ濃度P3がコンタクト領域4のアクセプタ濃度P2とは異なっているため、しきい値を所望の値に設定することが可能となる。また、アクセプタ濃度が低く設定された第2チャネル領域6bについては、よりn型に反転し易く、電子を流れやすくすることで低抵抗化に寄与する。このため、ソース領域5からJFET領域7までの第1チャネル領域6aと第2チャネル領域6bとを含めたチャネル領域6全体の長さをチャネル長として、チャネル長のうちの第2チャネル領域6bの部分の寸法を長くするほど低抵抗化を実現できる。したがって、第1チャネル領域6aについてはしきい値を的確に設定できる寸法に設定しつつ、できるだけ第2チャネル領域6bの部分の寸法を長くするのが好ましい。例えば、第2チャネル領域6bの部分の寸法をチャネル長の1/2より大きくし、第1チャネル領域6aの部分の寸法よりも大きくなるようにすると良い。
【0041】
以上説明した本実施形態にかかるGaNで構成されるn型チャネルのプレーナ型の縦型MOSFETを有する半導体装置によれば、以下の効果を奏することができる。
【0042】
(1)第1チャネル領域6aおよび第2チャネル領域6bをそれぞれ異なるアクセプタ濃度に調整している。このため、第1チャネル領域6aについては、しきい値の制御を第2チャネル領域6bから独立して行うことができ、縦型MOSFETとして好適なしきい値に設定できる。また、第2チャネル領域6bについては、第1チャネル領域6aよりも低アクセプタ濃度に設定できる。このため、第2チャネル領域6bについては、縦型MOSFETをオンさせたときのチャネル抵抗を低減することができ、高い移動度を得ることが可能となる。よって、所望のしきい値と低抵抗の両立を図ることが可能な半導体装置にできる。
【0043】
(2)コンタクト領域4と第1チャネル領域6aおよび第2チャネル領域6bをそれぞれ異なるアクセプタ濃度に調整している。このため、コンタクト領域4については、ソース電極10との間のコンタクト抵抗を低くするアクセプタ濃度に設定しつつ、第1チャネル領域6aをしきい値に適したアクセプタ濃度、第2チャネル領域6bを低抵抗にできるアクセプタ濃度に設定できる。このため、コンタクト領域4のアクセプタ濃度を高くすることによってしきい値が必要以上に高くなることを抑制でき、移動度の低下を抑制できる。
【0044】
(3)本実施形態では、ソース領域5から第1チャネル領域6aを離している。このため、よりしきい値を的確に設定できると共に、ノーマリオン化を抑制でき、さらに低抵抗化が可能になる。
【0045】
第1チャネル領域6aは、しきい値を設定するためアクセプタ濃度が精度良く設定されていることが好ましいが、ソース領域5に隣接していると、横方向拡散によってn型不純物が導入され得る。この場合、しきい値が変動してノーマリオン化する可能性があるため、チャネル長の長さ方向、つまり
図1の紙面左右方向おいて、第1チャネル領域6aの寸法をある程度確保してノーマリオン化を抑制する必要がある。一方、チャネル長の長さ方向において第1チャネル領域6aの寸法が大きくなると低抵抗化の妨げになる。このため、しきい値を的確に設定されるようにしつつも、当該方向での寸法をできるだけ小さくすることが好ましい。
【0046】
したがって、第1チャネル領域6aがソース領域5に接した構造にする場合、n型不純物の横方向拡散を加味して、第1チャネル領域6aの寸法を大きめに設定する必要があり、低抵抗化の妨げになり得る。このため、本実施形態では、ソース領域5から第1チャネル領域6aを離している。これにより、第1チャネル領域6aへのn型不純物の横方向拡散を抑制でき、よりしきい値を的確に設定できると共に、低抵抗化が可能になる。
【0047】
なお、第2チャネル領域6bについてはソース領域5に隣接することになるが、第2チャネル領域6bは低抵抗化のためにアクセプタ濃度を低く設定しているため、n型不純物が横方向拡散してきても高抵抗化することはない。
【0048】
(4)また、本実施形態の製造方法によれば、コンタクト領域4をドリフト領域2上の全面に形成しつつ、第1チャネル領域6aおよび第2チャネル領域6bをBのイオン注入によって形成している。つまり、ソース領域5の形成後に凹部を形成し、その凹部内にGaN層を成長させる埋込成長によってチャネル領域6を形成していない。このため、第1チャネル領域6aおよび第2チャネル領域6bに意図しないn型不純物が導入されないようにできる。したがって、より的確に所望のしきい値に設定できると共に、低抵抗化を実現することが可能となる。
【0049】
(5)第1チャネル領域6aに重ねてBをイオン注入することで第2チャネル領域6bを形成している。このため、チャネル長、つまりソース領域5からJFET領域7までの第1チャネル領域6aと第2チャネル領域6bとを含めたチャネル領域6全体の長さを精度良く設定でき、チャネル長を不必要に長くしなくても済む。勿論、マスクずれに起因してチャネル領域6全体の長さが変動し得るが、マスクずれ程度の変動であるため、十分にチャネル領域6全体の長さを精度良く設定できる。
【0050】
なお、p型半導体を不活性化する方法としては、Bイオンを用いる他に、水素やフッ素などをイオン注入して行う方法もある。ただし、水素やフッ素などをイオン注入する方法は熱的に不安定で、半導体装置の製造プロセス中の熱履歴によって注入した水素イオンやフッ素イオンなどが離脱する可能性があるため、より好ましい方法としてここではBイオンを用いている。また、Bイオンを活性化させるための活性化アニール処理の温度は、800~1000℃とMgイオンを活性化させる際の温度の1300~1400℃よりも低く、GaNが分解するほどの高温でなくても済む。このため、活性化アニール処理によってGaN表面が荒れるなど、GaN表面にダメージを与えることを抑制できる。
【0051】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して半導体装置の製造方法を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0052】
本実施形態では、コンタクト領域4をイオン注入によって形成する点が、第1実施形態と異なる。
図3A~
図3Cを参照して、本実施形態の製造方法について説明する。なお、
図3B~
図3Cでは、GaN基板1やドリフト領域2の下方部分については図を省略してある。
【0053】
まず、
図3Aに示す工程として、GaN基板1を用意したのち、GaN基板1の主表面1aに、ドリフト領域2とベース領域3を順に結晶成長させる。このとき、ベース領域3の厚みについて、最終的にベース領域3として残す部分の厚みに加えてコンタクト領域4の厚み分加えた厚みとする。
【0054】
続いて、
図3Bに示す工程として、
図2Bに示す工程と同様の手法で、ベース領域3の表面からベース領域3よりも深い位置に至り、ドリフト領域2に達するようにn型のJFET領域7を形成する。
【0055】
そして、
図3Cに示す工程として、コンタクト領域4やチャネル領域6の形成予定領域が開口する図示しないマスクを配置し、このマスクを用いてMgをイオン注入することで、コンタクト領域4を形成する。
【0056】
また、この段階ではまだn型不純物が高濃度にドープされたソース領域5が形成されていない。このため、n型不純物の横方向拡散を考慮しなくてもよい。したがって、コンタクト領域4やチャネル領域6の形成予定領域が開口する図示しないマスクを配置したのち、マスクを用いてベース領域3を部分的にエッチングしてトレンチを形成し、埋込成長にてコンタクト領域4を形成しても良い。
【0057】
これにより、
図2Bと同様のプロセスまで進むため、この後は
図2C以降と同様の工程を行うことで、縦型パワーMOSFETを有する半導体装置を製造できる。このように、JFET領域7の形成後にコンタクト領域4を形成するようにしても良く、この場合にも第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
(第1、第2実施形態の変形例)
上記第1、第2実施形態では、チャネル領域6について、第1チャネル領域6aがソース領域5から離れ、第2チャネル領域6bがソース領域5に接する構造としていた。これに対して、
図4に示すように、第1実施形態に対してチャネル領域6の構成を変更し、第1チャネル領域6aがソース領域5に接した構造としても良い。
【0059】
このような構造の場合でも、ソース領域5からのn型不純物の横方向拡散によって第1チャネル領域6aにn型不純物が入り込んだとしても、残りの部分によってしきい値設定が行え、縦型MOSFETがノーマリオン化してしまわなければ良い。
【0060】
また、
図5に示すように、第2チャネル領域6bがチャネル領域6のうちの中央位置に配置され、第2チャネル領域6bの両側、つまり第2チャネル領域6bよりもソース領域5側やJFET領域7側に第1チャネル領域6aが分かれて形成されていても良い。この場合でも、JFET領域7側に位置する第1チャネル領域6aの方でしきい値設定できれば、ソース領域5側の第1チャネル領域6a側にn型不純物が横方向拡散していても構わない。
【0061】
マスクずれを考慮すると、第2チャネル領域6bをソース領域5との境界位置に的確に形成できない場合もあり得るが、JFET領域7側にある第1チャネル領域6aによってしきい値を的確に設定できれば良い。
【0062】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してベース領域3をコンタクト領域4にできるアクセプタ濃度P2とするものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0063】
図6に示すように、本実施形態では、ベース領域3を第1実施形態で説明したコンタクト領域4としても機能できるアクセプタ濃度P2まで高くしている。このように、ベース領域3をコンタクト領域4のアクセプタ濃度P2に合せて高くすれば、ベース領域3の表層部をコンタクト領域4として機能させられ、これらを1度に形成することができる。
【0064】
具体的には、
図7Aに示す工程として、GaN基板1を用意したのち、GaN基板1の主表面1aに、ドリフト領域2とコンタクト領域4としても機能するp型のベース領域3を順に結晶成長させる。
【0065】
続いて、
図7Bに示す工程として、
図2Bに示す工程と同様の手法で、ベース領域3の表面からベース領域3よりも深い位置に至り、ドリフト領域2に達するようにn型のJFET領域7を形成する。なお、
図7B~
図7Eでは、GaN基板1やドリフト領域2の下方部分については図を省略してある。
【0066】
この後は、
図7C~
図7Eに示す工程として、
図2C以降と同様の工程を行うことで、縦型パワーMOSFETを有する半導体装置を製造できる。このように、ベース領域3をコンタクト領域4としても機能させられるアクセプタ濃度P2とすることで、より半導体装置の製造工程を簡略化できる。勿論、ベース領域3を高いアクセプタ濃度P2で厚く形成することになるため、ベース領域3の形成工程が難化するが、結晶成長時間を長くするなどで対応すれば良い。
【0067】
(第3実施形態の変形例)
上記第3実施形態でも、第1、第2実施形態と同様、チャネル領域6について、第1チャネル領域6aがソース領域5から離れ、第2チャネル領域6bがソース領域5に接する構造としていた。これに対して、
図8に示すように、第3実施形態についても、チャネル領域6の構成を変更し、第1チャネル領域6aがソース領域5に接した構造としても良い。
【0068】
このような構造の場合でも、ソース領域5からのn型不純物の横方向拡散によって第1チャネル領域6aでのしきい値設定が行え、縦型MOSFETがノーマリオン化してしまわなければ良い。
【0069】
また、
図9に示すように、第2チャネル領域6bがチャネル領域6のうちの中央位置に配置され、第2チャネル領域6bの両側、つまり第2チャネル領域6bよりもソース領域5側やJFET領域7側に第1チャネル領域6aが分かれて形成されていても良い。この場合でも、JFET領域7側に位置する第1チャネル領域6aの方でしきい値設定できれば、ソース領域5側の第1チャネル領域6a側にn型不純物が横方向拡散していても構わない。
【0070】
(他の実施形態)
本開示は、上記した実施形態に準拠して記述されたが、当該実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0071】
例えば、実施形態では、アクセプタ濃度について、P1<P2、P4<P3<P2の関係となるようにしているが必ずしもこの通りの関係出なくても良く、例えばP1<P3となっていても良い。つまり、P3については、設定したいしきい値に応じて決まれば良く、P1とP3との大小関係については要求される仕様に応じて決めれば良い。また、P1とP4については、同じであっても良いし、いずれか一方が他方に対して高くなっていても良い。
【0072】
また、上記各実施形態では、チャネル長の方向において、第1チャネル領域6aの寸法よりも第2チャネル領域6bの寸法の方が長くなるようにしているが、第2チャネル領域6bの寸法よりも第1チャネル領域6aの寸法の方が長くなっていても良い。
【0073】
また、上記各実施形態では、半導体素子としてnチャネルのプレーナ型の縦型MOSFETを例に挙げたが、nチャネルのプレーナ型のIGBTであっても良い。IGBTは、上記各実施形態に対してGaN基板1の導電型をn型からp型に変更するだけであり、その他の構造や製造方法に関しては上記各実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0074】
1…GaN基板、2…ドリフト領域、3…ベース領域、4…コンタクト領域
5…ソース領域、6…チャネル領域、6a、6b…第1、第2チャネル領域
7…JFET領域、8…ゲート絶縁膜、9…ゲート電極、10…ソース電極
11…ドレイン電極