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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156498
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/02 20060101AFI20241029BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20241029BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20241029BHJP
   H01F 27/08 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H01F27/02 120
H05K7/20 B
H01F17/04 N
H01F27/08 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071010
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】ダイヤゼブラ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池辺 隆史
(72)【発明者】
【氏名】阿部 流成
【テーマコード(参考)】
5E070
5E322
【Fターム(参考)】
5E070BA14
5E070DA03
5E070DA18
5E322AA01
5E322AA03
5E322AA11
5E322AB06
5E322FA05
(57)【要約】
【課題】電子機器の小型化に寄与しつつ、良好な絶縁性と放熱性とが達成された電子部品の提供。
【解決手段】一実施形態に係る電子部品2は、発熱要素17と、前記発熱要素17を内部に格納し絶縁性の胴部20及び絶縁性かつ熱伝導性の底部22を有するケース6と、前記発熱要素17と前記胴部20との間に位置し前記発熱要素17との間に間隔を有する熱伝導性の放熱体8と、前記ケース6内の隙間に充填される充填体9とを備える。前記放熱体8は、前記充填体9よりも高い熱伝導率を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱要素と、
前記発熱要素を内部に格納し、絶縁性の胴部及び絶縁性かつ熱伝導性の底部を有するケースと、
前記発熱要素と前記胴部との間に位置し、前記発熱要素との間に間隔を有する熱伝導性の放熱体と、
前記ケース内の隙間に充填される充填体と、
を備え、
前記放熱体が前記充填体よりも高い熱伝導率を有する、電子部品。
【請求項2】
前記底部が放熱シートからなる、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記放熱体が前記発熱要素を囲う筒状を呈している、請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記放熱体が前記底部と接触している、請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項5】
前記胴部が、主部と、前記主部の前記底部側の端に位置し前記主部から内側に突出している鍔部とを備え、
前記放熱体が前記鍔部と接触している、請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項6】
前記放熱体が、主部と、前記主部の前記底部側の端に位置し前記主部から外側又は内側に突出する折り曲げ部とを備える、請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項7】
前記発熱要素と前記放熱体との間隔が0.1mm以上0.5mm以下である、請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項8】
前記放熱体の材質が金属である、請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項9】
前記発熱体がコイルを含む、請求項1又は2に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、電子部品を開示する。
【背景技術】
【0002】
電子機器は、トロイダルコイル、トランス等の、高電圧回路で使用され大きな発熱を伴う電子部品を含むことがある。このような電子機器では、電子部品からの熱は、放熱性に優れた電子機器の筐体を介して排出される構成とされることが多い。例えば特許6651592号公報で開示された電子部品では、発熱性のリアクトルを樹脂ケースで覆い、さらにその周囲を放熱性に優れた筐体で覆っている。放熱性を上げるために、樹脂ケースは網目状を呈している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6651592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放熱性のために、樹脂ケースを設けないようにする又は樹脂ケースを網目状にすると、高電圧が付加される電子部品と筐体との間の絶縁不良が発生し易くなる。絶縁不良の防止のため電子部品と筐体との間の距離を大きくすると、電子機器が大きくなり、また放熱性能も低下する。電子機器の小型化に寄与しつつ、良好な絶縁性と放熱性とが達成された電子部品が望まれている。
【0005】
本発明者の意図するところは、電子機器の小型化に寄与しつつ、良好な絶縁性と放熱性とが達成された電子部品の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本電子部品は、発熱要素と、前記発熱要素を内部に格納し絶縁性の胴部及び絶縁性かつ熱伝導性の底部を有するケースと、前記発熱要素と前記胴部との間に位置し前記発熱要素との間に間隔を有する熱伝導性の放熱体と、前記ケース内の隙間に充填される充填体とを備える。前記放熱体は、前記充填体よりも高い熱伝導率を有する。
【発明の効果】
【0007】
本電子部品は、絶縁性の胴部と絶縁性かつ熱伝導性の底部を備え、この胴部と発熱要素との間に、充填体よりも高い熱伝導率を有する放熱体を備える。この放熱体及び底部により、良好な放熱性が実現されている。絶縁性の胴部及び底部により、良好な絶縁性能が実現されている。さらにこの電子部品では、胴部及び底部が絶縁性であるため、電子部品と筐体との間の距離を小さくできる。この電子部品は、電子機器の小型化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る電子部品が示された、斜視図である。
図2図2は、図1の電子部品の分解斜視図である。
図3図3は、図1の電子部品のIII-III線に沿った断面図である。
図4図4は、図1の電子部品のケースが示された断面図である。
図5図5は、図1の電子部品が電子機器に搭載された状態が示された断面図である。
図6図6は、他の実施形態に係る電子部品が示された、斜視図である。
図7図7は、図6の電子部品のVII-VII線に沿った断面図である。
図8図8(a)は図6の電子部品の放熱体が示された斜視図であり、図8(b)は他の実施形態に係る電子部品の放熱体が示された斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態が詳細に説明される。
【0010】
図1は、一実施形態に係る電子部品2が示された斜視図である。図1において、矢印Xはこの電子部品2の前方を表す。この逆方向が後方である。矢印Yはこの電子部品2の右方向を表す。この逆方向が左方向である。矢印Zはこの電子部品2の上方を表す。この逆方向が下方である。この電子部品2は、トロイダルコイル4及びケース6を備える。図2は、図1の電子部品2の分解斜視図である。図3は、図1のIII-III線に沿った断面図である。図2及び3に示されるように、この電子部品2は、放熱体8をさらに備える。図3に示されるように、この電子部品2は、ケース6内部の隙間に充填された、充填体9をさらに備える。
【0011】
図2に示されるように、トロイダルコイル4は、コア10とワイヤ12と天板14とを備える。図では全体は見えていないが、コア10は環状を呈する。コア10は、表面が樹脂組成物で覆われた磁性体よりなる。好ましい磁性体として、フェライト、ダスト及び珪素鋼が例示される。ワイヤ12は、コア10の外周に螺旋状に巻かれている。ワイヤ12は、典型的には銅からなる。なお図3では、コア10及びワイヤ12は、簡略化されて示されている。図3では、コア10及びワイヤ12は、全体が一つの断面として示されている。
【0012】
天板14は、コア10の上面(環状であるコア10の軸方向をコア10の上下方向としたときの上側の面)に載せられている。天板14の中央には、孔34が設けられている。天板14の上面には、複数の端子16が設けられている。図示されないが、端子16は、ワイヤ12と電気的に接続している。外部から、端子16を介してワイヤ12に通電される。ワイヤ12に通電されると、トロイダルコイル4は発熱する。トロイダルコイル4は、発熱体である。発熱体のうち、実際に発熱を引き起こす部分は発熱要素と称される。この実施形態では、コア10及びワイヤ12は発熱要素17である。
【0013】
ケース6は、内部に空間を有する。ケース6は、この空間に、発熱体の一部又は全部を格納する。この実施形態では、ケース6は、トロイダルコイル4の発熱要素17を格納している。ケース6は、上面に開口18を有する。図2及び3で示されるように、ケース6は胴部20と底部22とを備える。図4は、ケース6が示された断面図である。図2及び図4では、胴部20と底部22とが分解されて示されている。
【0014】
図4で示されるように、胴部20は、内部を上下に貫通する孔24を有する。胴部20は、絶縁性である。この実施形態では、胴部20は樹脂組成物よりなる。胴部20の好ましい材質として、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)及びPET(ポリエチレンテレフタレート)が例示される。なお、本明細書では、物質が「絶縁性」であるとは、当該物質の電気伝導率が10-6S/m以下であることを指す。ここで「S」は抵抗「Ω(オーム)」の逆数(ジーメンス)を表し、mは距離(メートル)を表す。
【0015】
この実施形態では、胴部20は、主部26と二つの鍔部28(外側鍔部28a及び内側鍔部28b)とを備える。主部26は、筒状を呈する。それぞれの鍔部28は、主部26の下側の端(底部22側の端)に位置する。それぞれの鍔部28は、主部26の下側の端に沿って周方向に延びる。鍔部28は、それぞれリング状を呈する。ケース6の半径方向において、外側鍔部28aは主部26から外側に突出しており、内側鍔部28bは主部26から内側に突出している。外側鍔部28aは、図2で示されるように、半径方向外側に突出する突起部30を備えている。この実施形態では、二つの突起部30が設けられている。それぞれの突起部30には、取付孔32が設けられている。この実施形態では、主部26とそれぞれの鍔部28とは、一体として形成されている。主部26とそれぞれの鍔部28とが別々に形成されていてもよい。胴部20が、鍔部28を備えていなくてもよい。胴部20が、外側鍔部28aのみを備えていてもよく、内側鍔部28bのみを備えていてもよい。
【0016】
底部22は、板状を呈する。図3で示されるように、底部22は、外側鍔部28a及び内側鍔部28bと接触している。この実施形態では、これらの鍔部28の下側の面全体が、底部22と接触している。底部22は、胴部20の孔24の開口全体を覆っている。底部22は、鍔部28に固定されている。この実施形態では、底部22は、鍔部28に接着剤で固定されている。底部22が粘着性を有する材質で形成され、これにより底部22と鍔部28とが固定されてもよい。この電子部品2を電子機器に取り付ける際に、胴部20と電子機器との間に底部22を挟み込み、鍔部28の取付穴32にネジ等を挿通して(後述する図5参照)胴部20を電子機器に固定することで、底部22が鍔部28に固定されてもよい。
【0017】
底部22は、絶縁性であり、かつ熱伝導性である。この実施形態では、底部22は、絶縁性の放熱シートよりなる。底部22が、他の絶縁性かつ熱伝導性の材質から形成されていてもよい。なお、本明細書では、物質が「熱伝導性」であるとは、当該物質の熱伝導率が0.5W/m・K以上であることを指す。ここで「W」は電力(ワット)を表し、mは距離(メートル)を表し、Kは温度(ケルビン)を表す。
【0018】
図2に示されるように、放熱体8は筒状を呈している。この実施形態では、放熱体8は円筒状である。図3で示されるように、放熱体8は、胴部20と発熱要素17との間に位置している。放熱体8は、発熱要素17の周囲を、発熱要素17の側面(環状であるコア10の外周面)の外側から囲っている。換言すれば、発熱要素17は筒状の放熱体8の内部に位置している。図3で示されるように、放熱体8と発熱要素17との間には、間隔が設けられている。放熱体8と発熱要素17とは、接触していない。図3で示されるようにこの実施形態では、放熱体8の下側の端(底部22側の端)は、内側鍔部28bと接触している。放熱体8は、底部22とは接触していない。この実施形態では、放熱体8と胴部20との間には、間隔が設けられている。放熱体8と胴部20とは、接触していない。放熱体8と胴部20とが、接触していてもよい。
【0019】
放熱体8は、高い熱伝導率を有する。放熱体8の熱伝導率は、充填体9の熱伝導率より高い。具体的には、放熱体8の熱伝導率は、10W/m・K以上である。この実施形態では、放熱体8は金属よりなる。放熱体8の好ましい材質として、アルミニウム合金が例示される。
【0020】
充填体9は、ケース6の内部の隙間を埋める。充填体9は、発熱要素17と放熱体8との間、及び放熱体8とケース6との間の隙間を埋める。充填体9は、絶縁性である。この実施形態では、充填体9は熱伝導性である。この実施形態では、充填体9は熱硬化性樹脂からなる。充填体9として、常温硬化樹脂又は熱可塑性樹脂が使用されてもよい。ケース6内の隙間の隅々まで樹脂で埋めるために、充填体9の材質として、粘度が低い樹脂が選択される。好ましい充填体9として、エポキシ樹脂が例示される。
【0021】
この電子部品2の製造では、ケース6の胴部20、底部22となる放熱シート、放熱体8及びトロイダルコイル4が準備される。胴部20の主部26と鍔部28とは、一体として形成されている。底部22が、鍔部28に接着剤で接着される。これにより、ケース6が形成される。このケース6に、放熱体8及び発熱要素17が入れられ、併せて、天板14がケース6の上面に載せられる。ケース6内に、放熱体8とトロイダルコイル4の発熱要素17とが格納される。この実施形態では、天板14の孔34から、液状の熱硬化性樹脂が充填され、ケース6内部の隙間を埋める。熱硬化性樹脂に代えて、常温硬化樹脂又は熱可塑性樹脂が充填されてもよい。なお、樹脂を効率的に充填するため、例えば天板14に複数の孔を設けて、これらの孔から樹脂が充填されてもよい。熱硬化性樹脂が使用されたときは、後の工程でこの熱硬化性樹脂は、加熱され硬化される。これにより、充填体9が形成される。これにて電子部品2が得られる。
【0022】
胴部20と底部22とが接着されなくてもよい。例えば、胴部20を底部22に押さえつけた状態で、熱硬化性樹脂をケース6に流し込んでもよい。この場合、熱硬化性樹脂が加熱され硬化することで、胴部20と底部22とが互いに固定される。
【0023】
得られた電子部品2は、電子機器に搭載される。図5は、電子部品2が電子機器に搭載された状態の一例が、示されている。図5の電子部品2は、図1のV-V線に沿った断面である。この断面図には、図3の断面図とは異なり、外側鍔部28aの突起部30が存在する位置における、断面が示されている。この実施形態では、電子部品2は、電子機器の筐体38に載せられている。電子部品2は、底部22が筐体38に接触するように配置される。底部22の取付孔32を通して筐体38にネジ40が挿入されることで、電子部品2が筐体38に固定される。電子部品2が、電子機器の放熱器に載せられていてもよい。電子部品2が、電子機器の他の放熱効果が高い部分に載せられてもよい。
【0024】
図5の実施形態では、電子部品2の上側に回路基板42が配置されている。天板14の端子16が、この回路基板42の所定の端子16と接続している。この実施形態では、回路基板42の端子16はスルーホールとして実現されており、トロイダルコイル4の端子16が、このスルーホールに挿入されている。これにより回路基板42からトロイダルコイル4に通電され、電子部品2が動作する。
【0025】
以下では、本実施形態の作用効果が説明される。
【0026】
本電子部品2は、絶縁性の胴部20と発熱要素17との間に、充填体9よりも高い熱伝導率を有する放熱体8を備える。さらに本電子部品2は、熱伝導性の底部22を備える。放熱体8及び底部22は、発熱要素17の熱の排出に効果的に寄与する。
【0027】
本電子部品2では、ケース6の胴部20及び底部22は、いずれも絶縁性である。このため電子部品2と筐体38との間の距離を小さくできる。例えば、電子部品2と筐体38との間に強化絶縁が必要となる場合であっても、これらの間に強化絶縁のための空間や沿面距離を設ける必要はない。この電子部品2は、電子機器の小型化に寄与しうる。
【0028】
本電子部品2では、ケース6の胴部20及び底部22は、いずれも絶縁性である。発熱要素17とケース6の外部の電子部品との強化絶縁が確保されている。この電子部品2では、ケース6と発熱要素17との距離を小さくできる。底部22と発熱要素17とを接触させることができるので、この電子部品2では、小型化が実現されている。
【0029】
電子部品2の良好な放熱性を実現するとの観点から、放熱体8の熱伝導率は、30W/m・K以上がより好ましく、50W/m・K以上がさらに好ましく、300W/m・K以上がさらに好ましい。
【0030】
電子部品2の良好な放熱性を実現するとの観点から、底部22の熱伝導率は、1.0W/m・K以上がより好ましく、3.0W/m・K以上がさらに好ましく、10W/m・K以上がさらに好ましい。
【0031】
良好な絶縁性を実現するとの観点から、ケース6の電気伝導率は、10-8S/m以下がより好ましく、10-10S/m以下がさらに好ましく、10-12S/m以下がさらに好ましい。
【0032】
この実施形態では、ケース6の底部22は放熱シートで形成されている。発熱要素17からの熱は、底部22を介して効果的に外部に排出できる。例えば、底部22と、筐体38又は放熱器等の放熱効果が高い部分とが接触するように電子部品2を電子機器に搭載することで、発熱要素17からの熱をより効果的に排出することができる。
【0033】
図3において、両矢印Dは、発熱要素17と放熱体8との間隔を表す。間隔Dは、0.5mm以下が好ましい。間隔Dを0.5mm以下とすることで、放熱体8は発熱要素17からの熱の排出により効果的に寄与する。この観点から、間隔Dは0.4mm以下がより好ましい。間隔Dは、0.1mm以上が好ましい。間隔Dを0.1mm以上とすることで、製造時の寸法公差によらず、放熱体8と発熱要素17との接触が防止されている。この観点から、間隔Dは0.2mm以上がより好ましい。
【0034】
図3において、両矢印Eは、放熱体8とケース6との間隔を表す。間隔Eは、0.5mm以下が好ましい。間隔Eを0.5mm以下とすることで、電子部品2を小さくできる。この観点から間隔Eは0.4mm以下がより好ましい。この観点から間隔Eは0mmでもよい。組み立ての容易性の観点から、間隔Eは0.1mm以上が好ましい。
【0035】
この実施形態では、放熱体8は発熱要素17を囲う筒状を呈している。放熱体8を発熱要素17を囲う筒状とすることで、この放熱体8は、発熱要素17からの熱を効果的に排出することができる。放熱体8は、発熱要素17を囲う筒状でなくてもよい。放熱体8は、例えば発熱要素17の半周部分を囲う形状であってもよい。放熱体8は、発熱要素17の一部を覆う形状であってもよい。
【0036】
この実施形態では、放熱体8の底部22側の端は、内側鍔部28bと接触している。放熱体8は、底部22と直接接触していない。このようにすることで、放熱体8が底部22に損傷を与えることが防止されている。
【0037】
ケース6が金属等の導電性の材質からなる場合、電子部品2と電子機器の他の部品との絶縁性を確保するため、ケース6と他の部品との間に、絶縁材が必要となる。例えば、ケース6と筐体38又は放熱器との間に、放熱シートを配置する必要がある。本電子部品2では、ケース6が絶縁性のため、電子部品2と他の部品とを絶縁するための絶縁材を設ける必要はない。本電子部品2では、電子機器の部品数の増加が抑えられている。
【0038】
この実施形態では、ケース6の胴部20は、胴部20から半径方向に突出した外側鍔部28a及び内側鍔部28bを備えている。底部22は、これらの鍔部28と接触している。この鍔部28により、鍔部28を有しない場合と比べて、胴部20と底部22との接触面積を大きくできる。これにより、製造時に熱硬化性樹脂をケース6に流し込んだ際に、熱硬化性樹脂がケース6から洩れることが効果的に防止できる。
【0039】
図4において、符号Wは、外側鍔部28aの幅を表す。幅Wは、半径方向に計測される。この実施形態では、外側鍔部28aの幅Wは、この電子部品2の胴部20からの沿面距離以上となっている。このようにすることで、この電子部品2と他の部品との確実な絶縁が実現できる。
【0040】
図示されないが、他の実施形態に係る電子部品は、図1-4で示された電子部品2の構造と、同じ構造を有する。この実施形態の電子部品では、底部の材質が、図1の電子部品とは異なる。この電子部品では、底部はセラミックで形成されている。この底部は、絶縁性であり、かつ熱伝導性である。好ましいセラミックとして、アルミナ、ジルコニア及び窒化珪素が例示される。この電子部品は、底部の材質がセラミックで形成されていることの他は、図1の電子部品と同じである。
【0041】
この電子部品は、電子機器に搭載される。このとき電子部品は、例えば底部が、筐体又は放熱器に接触するように配置される。底部の取付孔を通して筐体又は放熱器にネジが挿入されることで、電子部品が固定される。この実施形態の電子部品では、底部と筐体又は放熱器との間に、放熱シートが配置されてもよい。底部と筐体又は放熱器との間に、放熱グリスを介在させてもよい。
【0042】
図6は、さらに他の実施形態に係る電子部品50が示された斜視図である。図6において、矢印Xはこの電子部品50の前方を表す。この逆方向が後方である。矢印Yはこの電子部品50の右方向を表す。この逆方向が左方向である。矢印Zはこの電子部品50の上方を表す。この逆方向が下方である。この電子部品50は、トランス52、ケース54及び放熱体56を備える。図7は、図6のVII-VII線に沿った断面図である。図7に示されるように、この電子部品50は、ケース54内部の隙間に充填された、充填体58をさらに備える。なお、図6では充填体58は省略されている。
【0043】
トランス52は、コア59とコイル部60とを備える。コア59は、磁性体よりなる。好ましい磁性体として、フェライト、ダスト及び珪素鋼が例示される。コア59は箱型である。コア59は、内部に、ボビンの外周にワイヤが巻かれた構造のコイル部60を格納している。ワイヤは、典型的には銅からなる。なお図7では、コア59及びコイル部60は、簡略化されて示されている。図7では、コア59及びコイル部60は、全体が一つの断面として示されている。トランス52は、ワイヤと電気的に接続している端子62を備える。外部から端子62を介してワイヤに通電される。ワイヤに通電されると、トランス52は発熱する。トランス52は、発熱体である。コア59及びコイル部60は、発熱要素64である。
【0044】
ケース54は、内部に空間を有する。ケース54は、この空間に、トランス52の発熱要素64を格納している。ケース54は、上面に開口を有する。ケース54は胴部66と底部68とを備える。
【0045】
胴部66は、内部を上下に貫通する孔を有する。胴部66は、絶縁性である。この実施形態では、胴部66は樹脂組成物よりなる。胴部66の好ましい材質として、PBT、PPS及びPETが例示される。
【0046】
胴部66は、主部70と鍔部72とを備える。主部70は、開口面が四角の角筒状を呈する。鍔部72は、主部70の底部68側の端に位置する。鍔部72は、主部70の下側の端に沿って周方向に延びる。鍔部72は、リング状を呈する。この実施形態では、ケース54の半径方向において、鍔部72は、主部70から外側に突出している。鍔部72には、取付孔74が設けられている。この実施形態では、主部70と鍔部72とは、一体として形成されている。主部70と鍔部72とが別々に形成されていてもよい。胴部66が、鍔部72を備えていなくてもよい。
【0047】
底部68は、板状を呈する。底部68は、鍔部72と接触している。この実施形態では、鍔部72の下側の面全体が、底部68と接触している。底部68は、胴部66の孔の開口全体を覆っている。底部68は、鍔部72に固定されている。この実施形態では、底部68は、鍔部72に接着剤で固定されている。底部68が粘着性を有する材質で形成され、これにより底部68と鍔部72とが固定されてもよい。
【0048】
底部68は、絶縁性であり、かつ熱伝導性である。この実施形態では、底部68は、絶縁性の放熱シートよりなる。底部68が、他の絶縁性かつ熱伝導性の材質から形成されていてもよい。
【0049】
図8(a)は、放熱体56が示された斜視図である。放熱体56は全体として筒状を呈する。この実施形態では、放熱体56は開口面が四角の角筒状である。図7で示されるように、放熱体56は、胴部66と発熱要素64との間に位置している。放熱体56は、発熱要素64の周囲を、発熱要素64の側面の外側から囲っている。換言すれば、発熱要素64は角筒状の放熱体56の内部に位置している。放熱体56は、発熱要素64よりも上方まで延びている。放熱体56と発熱要素64との間には、間隔が設けられている。放熱体56と発熱要素64とは、接触していない。この実施形態では、放熱体56と胴部66との間には、間隔が設けられている。放熱体56と胴部66とは、接触していない。放熱体56と胴部66とが、接触していてもよい。
【0050】
図7で示されるように、この実施形態では、放熱体56は、主部76と折り曲げ部78とを備える。折り曲げ部78は、主部76の底部68側の端に位置し、主部76から内側に突出している。折り曲げ部78は、リング状を呈する。折り曲げ部78は、底部68と接触している。この実施形態では、折り曲げ部78の下側の面全体が、底部68と接触している。この実施形態では、主部76と折り曲げ部78とは、一体として形成されている。主部76と折り曲げ部78とが別々に形成されていてもよい。放熱体56が、折り曲げ部78を備えていなくてもよい。
【0051】
放熱体56は、高い熱伝導率を有する。放熱体56の熱伝導率は、充填体58の熱伝導率より高い。具体的には、放熱体56の熱伝導率は、10W/m・K以上である。この実施形態では、放熱体56は金属よりなる。放熱体56の好ましい材質として、アルミニウム合金が例示される。
【0052】
充填体58は、ケース54の内部の隙間を埋める。充填体58は、発熱要素64と放熱体56との間、及び放熱体56とケース54との間の隙間を埋める。充填体58は、絶縁性である。この実施形態では、充填体58は熱伝導性である。この実施形態では、充填体58は熱硬化性樹脂からなる。充填体58として、常温で硬化する樹脂が使用されてもよい。ケース54内の隙間の隅々まで樹脂で埋めるために、充填体58の材質として、粘度が低い樹脂が選択される。好ましい充填体58として、エポキシ樹脂が例示される。
【0053】
本電子部品50は、絶縁性の胴部66と発熱要素64との間に、充填体58よりも高い熱伝導率を有する放熱体56を備える。さらに本電子部品50は、熱伝導性の底部68を備える。放熱体56及び底部68は、発熱要素64の熱の排出に効果的に寄与する。
【0054】
本電子部品50では、ケース54の胴部66及び底部68は、いずれも絶縁性である。このため電子部品50と筐体との間の距離を小さくできる。例えば、電子部品50と筐体との間に強化絶縁が必要となる場合であっても、これらの間に強化絶縁のための空間や沿面距離を設ける必要はない。この電子部品50は、電子機器の小型化に寄与しうる。
【0055】
本電子部品50では、ケース54の胴部66及び底部68は、いずれも絶縁性である。このため、発熱要素64とケース54の外部の電子部品との強化絶縁が確保されている。この電子部品50では、ケース54と発熱要素64との距離を小さくできる。底部68と発熱要素64とを接触させることができるので、この電子部品50では、小型化が実現されている。
【0056】
この実施形態では、放熱体56は底部68と接触している。発熱要素64からの熱は、放熱体56及び底部68を介して、効果的に外部に排出できる。放熱体56及び底部68は、発熱要素64の熱の排出に効果的に寄与する。
【0057】
この実施形態では、放熱体56は折り曲げ部78を有する。折り曲げ部78により、放熱体56と底部68との接触面積が大きくできる。折り曲げ部78は、放熱体56から底部68への効果的な熱伝導に寄与する。この電子部品50では、発熱要素64からの熱をより効果的に排出することができる。
【0058】
この実施形態では、折り曲げ部78は主部76から内側に突出していた。折り曲げ部78は、主部76から外側に突出していてもよい。放熱体56が、主部76から内側に突出する折り曲げ部78と、主部76から外側に突出する折り曲げ部78とを両方備えていてもよい。
【0059】
この実施形態では、放熱体56の上端は、発熱要素64の上端よりも上側に位置している。放熱体56は、発熱要素64よりも上方まで延びている。このようにすることで、放熱体56は、発熱要素64からの熱を効果的に排出することができる。放熱体56が、発熱要素64よりも上方に延びていなくてもよい。
【0060】
図7において、両矢印Dは、発熱要素64と放熱体56との間隔を表す。間隔Dは、発熱要素64と放熱体56の主部76との距離として、計測される。間隔Dは、0.5mm以下が好ましい。間隔Dを0.5mm以下とすることで、放熱体56は発熱要素64からの熱の排出により効果的に寄与する。この観点から間隔Dは0.4mm以下がより好ましい。間隔Dは、0.1mm以上が好ましい。間隔Dを0.1mm以上とすることで、放熱体56と発熱要素64との接触が防止されている。この観点から間隔Dは0.2mm以上がより好ましい。図示されないが、放熱体56と発熱要素64との接触が防止できるとの観点から、発熱要素64と折り曲げ部78との距離は、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましい。
【0061】
図8(b)は、さらに他の実施形態に係る電子部品の放熱体80が示された、斜視図である。この電子部品は、放熱体80を除き、図6の電子部品50と同じである。図8(b)に示されるように、この放熱体80は、四つの板部を備えている。第一板部80aと第三板部80cとが発熱要素を介して対向して配置されており、第二板部80bと第四板部80dとが発熱要素を介して対向して配置されている。それぞれの板部が、発熱要素の側面を、異なる方向から覆っている。板部の数は四つでなくてもよい。例えば電子部品が二つの板部を備え、発熱要素を介してこれらが対向するように配置されていてもよい。板部の数は一つであっても三つであってもよい。
【0062】
上述の実施形態では、放熱体は、円筒状、角筒状又は板状であった。放熱体の形状はこれらに限られない。放熱体は、発熱要素と間隔を開けつつ発熱要素の少なくとも一部を覆う形状であればよい。
【0063】
上述の実施形では、ケースには、発熱体としてトロイダルコイル又はトランスが格納されていた。発熱体は、トロイダルコイル又はトランスに限られない。発熱体が、リアクトルであってもよく、抵抗器であってもよい。発熱体が、その他の素子であってもよい。
【0064】
以上説明されたとおり、この電子部品では、電子機器の小型化に寄与しつつ、良好な絶縁性と放熱性とが達成されている。このことから、本実施形態の優位性は明らかである。
【0065】
[開示項目]
以下の項目は、好ましい実施形態の開示である。
【0066】
[項目1]
発熱要素と、
前記発熱要素を内部に格納し、絶縁性の胴部及び絶縁性かつ熱伝導性の底部を有するケースと、
前記発熱要素と前記胴部との間に位置し、前記発熱要素との間に間隔を有する熱伝導性の放熱体と、
前記ケース内の隙間に充填される充填体と、
を備え、
前記放熱体が前記充填体よりも高い熱伝導率を有する、電子部品。
【0067】
[項目2]
前記底部が放熱シートからなる、項目1に記載の電子部品。
【0068】
[項目3]
前記放熱体が前記発熱要素を囲う筒状を呈している、項目1又は2に記載の電子部品。
【0069】
[項目4]
前記放熱体が前記底部と接触している、項目1から3のいずれかに記載の電子部品。
【0070】
[項目5]
前記胴部が、主部と、前記主部の前記底部側の端に位置し前記主部から内側に突出している鍔部とを備え、
前記放熱体が前記鍔部と接触している、項目1から3のいずれかに記載の電子部品。
【0071】
[項目6]
前記放熱体が、主部と、前記主部の前記底部側の端に位置し前記主部から外側又は内側に突出する折り曲げ部とを備える、項目1から5のいずれかに記載の電子部品。
【0072】
[項目7]
前記発熱要素と前記放熱体との間隔が0.1mm以上0.5mm以下である、項目1から6のいずれかに記載の電子部品。
【0073】
[項目8]
前記放熱体の材質が金属である、項目1から7のいずれかに記載の電子部品。
【0074】
[項目9]
前記発熱体がコイルを含む、項目1から8のいずれかに記載の電子部品。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上説明された電子部品は、種々の電子機器に適用されうる。
【符号の説明】
【0076】
2、50・・・電子部品
4・・・トロイダルコイル(発熱体)
6、54・・・ケース
8、56、80・・・放熱体
9、58・・・充填体
10・・・コア
12・・・ワイヤ
14・・・天板
16、62・・・端子
17、64・・・発熱要素
18・・・ケースの開口
20、66・・・胴部
22、68・・・底部
24・・・胴部の孔
26、70・・・胴部の主部
28、72・・・鍔部
28a・・・外側鍔部
28b・・・内側鍔部
30・・・突起部
32、74・・・取付孔
34・・・孔
38・・・筐体
40・・・ネジ
42・・・回路基板
52・・・トランス(発熱体)
59・・・コア
60・・・コイル部
76・・・放熱体の主部
78・・・折り曲げ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8