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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156499
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 9/26 20060101AFI20241029BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H01Q9/26
H01Q1/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071011
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】関谷 洋平
(72)【発明者】
【氏名】角谷 祐次
【テーマコード(参考)】
5J047
【Fターム(参考)】
5J047AA04
5J047AB07
5J047EA06
(57)【要約】
【課題】高さを抑制可能であって、且つ、基板垂直方向に比べて基板水平方向の利得が大きいアンテナ装置を提供することにある。
【解決手段】アンテナ装置1は、基板表面にパターン形成された第1エレメント30と、立体形状を有する第2エレメント40とを含む。第1、第2エレメント30、40は、ダイポールアンテナとして動作するように、それぞれλ/4に相当する長さを備えている。第2エレメント40は、基板10から立ち上がった後に、所定の高さ位置で第1エレメント30が存在する方向に折れ曲がった、逆L型に形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の誘電体である基板(10)と、
前記基板の表面又は内部に設けられた、板状の導体である地板(20)と、
前記基板の表面に沿って設けられている線状導体素子である第1エレメント(30)と、
立体形状を有する線状導体素子である第2エレメント(40)と、を備え、
前記第2エレメントは、
前記基板に対して垂直な立設部(41)と、
前記立設部の上端から前記基板に対して平行となるように延設されている基板平行部(42)と、を含み、
前記基板平行部は、前記第1エレメントの一部と平行となる部分を有しており、
前記立設部の下端部及び前記第1エレメントの端部の何れか一方は、給電線路と接続されており、他方は前記地板と電気的に接続されているアンテナ装置。
【請求項2】
前記第1エレメント及び前記第2エレメントは、協働によりダイポールアンテナとして動作するように構成されている、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1エレメント及び前記第2エレメントのそれぞれの長さは、送信又は受信の対象とする電波の波長である対象波長の4分の1に設定されている、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記基板平行部は、前記立設部と接続している端部である第3端部(44)と、その反対側の端部である第4端部(45)と、を備え、
前記立設部は第1の立設部であり、
前記第2エレメントは、前記第4端部を前記基板に接続する第2の立設部(46)を備える、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1エレメントの長さは、送信又は受信の対象とする電波の波長である対象波長の4分の1に設定されており、
前記第2エレメントの全長は、前記第1エレメントよりも長く設定されている、請求項4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記基板を収容する筐体をさらに備え、
前記第2エレメントは、前記筐体の内面部に固定されている、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記基板は矩形状であって、4つの縁部を含み、
前記4つの縁部のうちの1つの縁部(14)は、ケーブルと接続するためのコネクタ(61)が設けられたコネクタ配置縁であり、
前記第1エレメント及び前記第2エレメントは、前記4つの縁部のうち、前記コネクタ配置縁とは反対側の縁部から、前記基板の中央までの間に配置されている、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記基板には、前記第1エレメントと前記第2エレメントのセットである立体アンテナが、複数設けられている請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記第1エレメントは、端部として第1端部(31)と第2端部(32)を備え、
前記第1端部が、前記給電線路又は前記地板と電気的に接続されており、
前記第1端部と前記下端部は所定の間隔をおいて隣接配置されており、
前記第1エレメントは、前記下端部から前記第1端部に向かう方向である隣接方向へ、前記第1端部から延設されており、
前記基板平行部は、前記立設部の上端から前記隣接方向に向かって延設されている、請求項1から8の何れか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記第1エレメントは、端部として第1端部(31)と第2端部(32)を備え、
前記第1端部が、前記給電線路又は前記地板と電気的に接続されており、
前記第1エレメントは、前記第1端部から所定方向へ延設されている直線部を有し、
前記第2エレメントの前記下端部は、前記第1端部の近傍に配置されており、
前記基板平行部は、前記立設部の上端から前記所定方向に向かって延設されている、請求項1から8の何れか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項11】
車両のコーナー部から、送信又は受信の対象とする電波の波長である対象波長の6分の1以上離れた車体金属部に取り付けられて使用される、請求項1に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の側面部(例えばサイドシル)に取り付けられたパッチアンテナを用いて、ユーザによって携帯される携帯デバイスと無線通信を実施するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7238377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車両外面部(サイドボディなど)に配置されている車載通信機と携帯デバイスとが近距離通信信号を用いた測距通信を実施することにより、車両から携帯デバイスまでの距離を判定する技術が研究されている。ここでの近距離通信信号とは、Bluetooth(登録商標) Low Energyなど、近距離通信規格に準拠した無線信号である。
【0005】
近距離通信には、例えば2.4GHzや920MHzなど、900MHz以上の電波(以降、高周波電波)が使用される。このような高周波電波が使用される近距離通信信号は、LF(Low Frequency)帯の電波に比べて直進性が強い。よってサイドボディに沿うように取り付けられたパッチアンテナは、バックドア付近に存在する携帯デバイスからの直接波(回折波)を受信しにくい。
【0006】
また、近距離通信信号は、高周波電波であるがゆえに、他車両のボディ及び壁などの反射物で反射されやすい性質を持つ。よって、車両周辺に反射物がある場合、反射波の受信強度が回折波の受信強度を上回ることが起こりうる。回折波の受信強度よりも反射波の受信強度が大きい場合には、反射波成分をもとに距離が演算されてしまい、測距精度が低下しうる。そのため、見通し外にある携帯デバイスからの直接波(回折波)を良好に受信可能なように、基板垂直方向に比べて基板水平方向の利得が大きいアンテナが求められている。ここでの基板垂直方向は、アンテナ等が形成される基板に垂直な方向であり、基板水平方向は基板に沿う(平行な)方向を意味する。また、車載用のアンテナは、高さを低減することが求めれられうる。
【0007】
本開示は、上記の検討又は着眼点に基づいて成されたものであり、その目的の1つは、高さを抑制可能であって、且つ、基板垂直方向に比べて基板水平方向の利得が大きいアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示されるアンテナ装置の1つは、板状の誘電体である基板(10)と、基板の表面又は内部に設けられた、板状の導体である地板(20)と、基板の表面に沿って設けられている線状導体素子である第1エレメント(30)と、立体形状を有する線状導体素子である第2エレメント(40)と、を備え、第2エレメントは、基板に対して垂直な立設部(41)と、立設部の上端から基板に対して平行となるように延設されている基板平行部(42)と、を含み、基板平行部は、第1エレメントの一部と平行となる部分を有しており、立設部の下端部及び第1エレメントの端部の何れか一方は、給電線路と接続されており、他方は地板と電気的に接続されている。
【0009】
上記構成によれば、基板平行部において第1エレメントと平行な部分に流れる電流は、第1エレメントに流れる電流の一部を打ち消すように作用する。そのため、基板に平行な方向に流れる電流に由来する電波は弱まり、立設部に流れる電流に由来する電波が相対的に強まる。そして、立設部由来の電波は、立設部に直交する方向、すなわち基板水平方向に伝搬していく。つまり、上記構成によれば、基板垂直方向に比べて基板水平方向の利得が大きくすることができる。また、上記の第2エレメントは、直線状の導体素子が途中で折り曲がった形状を有する。そのため、高さを抑制可能となる。
【0010】
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】アンテナ装置の斜視図である。
図2】アンテナ装置の上面図である。
図3】アンテナ装置の側面図である。
図4】第1モデルの電流分布を概念的に示す図である。
図5】第2モデルの電流分布を概念的に示す図である。
図6】第2モデルの指向性を示す図である。
図7】第3モデルの電流分布を概念的に示す図である。
図8】第3モデルの指向性を示す図である。
図9】第2エレメントを固定するための支持体を備えるアンテナ装置を示す図である。
図10】第2エレメントが筐体に固定されている場合を示す図である。
図11】第2エレメントが2つの立設部を備える場合を示す図である。
図12】第1エレメントがL字型に形成されている場合を示す図である。
図13】第1エレメントと第2エレメントの他の形成例を示す図である。
図14】ケーブル接続端と立体アンテナとの位置関係を示す図である。
図15】2つの立体アンテナを備えるアンテナ装置を示す図である。
図16】2つの立体アンテナと1つのパターンアンテナを備えるアンテナ装置を示す図である。
図17】車両におけるアンテナ装置の搭載位置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について図を用いて説明する。本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、以降で述べる種々の変形例も本開示の技術的範囲に含まれる。また、さらに、本開示の構成は、要旨を逸脱しない範囲内で変更されてよい。種々の補足や変形例などは、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施されてよい。同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略することがある。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については他の箇所に記載の説明が適用されてよい。
【0013】
本開示のアンテナ装置1は、例えば、車両などの移動体に取り付けられて用いられる。アンテナ装置1は、車両の側面部(いわゆるサイドボディ)、背面部、前面部、屋根部などに取り付けられてよい。アンテナ装置1は、車両に搭載されている通信用のECU(Electronic Control Unit)と、1つ又は複数のケーブルで接続されて使用される。当該ECUは、アンテナ装置1が受信した信号を利用するとともに、当該アンテナ装置1に対して送信信号を入力しうる。
【0014】
アンテナ装置1は、Bluetooth(登録商標)で使用される2.4GHz帯(2402MHz~2480MHz)で動作するように構成されている。アンテナ装置1は、送信と受信の何れか一方のみに利用されても良い。電波の送受信には可逆性があるため、或る周波数の電波を送信可能な構成は、当該周波数の電波を受信可能な構成でもある。以下における送受信との記載は、送信又は受信と解されて良い。
【0015】
本開示ではアンテナ装置1が動作する周波数帯を対象周波数帯と記載する。また、対象周波数帯に属する周波数のうち、アンテナ装置1を設計する上での基準とする周波数を対象周波数と称する。対象周波数は、対象周波数帯の中心周波数であってよい。以降では対象周波数が2440MHzに設定されている場合について説明する。対象周波数は、中心周波数よりも若干(例えば10MHz)高い値に設定されていても良い。また対象周波数は、対象周波数帯の最小/最大周波数に設定されていても良い。
【0016】
以降における「λ」は、対象周波数の電波の波長である対象波長を表す。本開示における「λ/2」及び「0.5λ」といった表現は、対象波長の半分の長さを意味する。「λ/2」及び「λ/4」などの波長(λ)を用いた表現は、各種部材の寸法を説明するために使用される。アンテナ装置1を構成する部材の寸法の説明における波長(λ)は、電気的な長さと解されてよい。ここでの電気的な長さとは、フリンジング電界や、誘電体による波長短縮効果などを考慮した、実効的な長さである。電気的な長さは実効長と呼ばれることもある。なお、真空中及び空気中における2440MHzの電波の波長(つまりλ)は122.8mmである。よって、λ/4との表現は、約30.7mmを意味する。もちろん、誘電体に当接している部材は波長短縮効果を受けるため、λ/4に対応する長さは20mmや25mmなどになりうる。当業者であれば、λ/4に対応する寸法はシミュレータ等を用いて特定可能である。
【0017】
なお、他の実施形態においては、対象周波数帯はWi-Fi(登録商標)で使用される2.4GHz又は5GHz帯であってもよい。アンテナ装置1は、UWB通信で使用される周波数帯に対応していても良い。対象周波数帯は、その他の近距離無線通信規格に対応していてもよい。
【0018】
<アンテナ装置1の具体的な構成について>
アンテナ装置1は、図1図3に示すように、基板10、地板20、第1エレメント30、第2エレメント40、給電線路51、及び、短絡線路52を備える。第1エレメント30及び第2エレメント40は、後述の通り、ダイポールアンテナとして動作するように設計されている。以降では、第1エレメント30と第2エレメント40を含む構成をエレメントセット又は立体アンテナと称することがある。
【0019】
また、アンテナ装置1は、図1図3において図示が省略されている構成として、コネクタや、電源回路、通信IC、筐体などを備えていてよい。コネクタは、通信ケーブル及び電源ケーブルが接続されるための構成である。通信ケーブルは、ECUと通信するためのケーブルである。通信ケーブルは同軸ケーブル又はフィーダ線であってよい。電源ケーブルは、アンテナ装置1に電力を供給するためのケーブルである。ケーブルは電線と言い換えられてよい。通信ケーブルと電源ケーブルは1つのハーネスとして束ねられていて良い。通信ケーブルと電源ケーブルは統合されていてよい。電源回路は、電源ケーブルから入力される電圧(例えばバッテリ電圧)を、通信ICの動作に適した電圧に変換して出力する回路である。
【0020】
通信ICは、送信信号や受信信号に対する信号処理を施すための集積回路モジュールである。通信ICは、例えば、変調、復調、周波数変換、増幅等を行う。通信ICは、接地端子とアンテナ接続端子を備える。接地端子は地板20と電気的に接続される端子である。アンテナ接続端子は、給電線路51を介して第1エレメント30と電気的に接続される端子である。アンテナ接続端子は、高周波信号を送受信するための端子に相当する。アンテナ接続端子は信号端子又は給電端子などと言い換えられて良い。図1等に示すPxは、アンテナ接続端子の位置を表している。通信IC及びアンテナ接続端子の位置(Px)は、基板10の任意の箇所に設けられていてよい。図中のPxは、アンテナ接続端子と導通しているランド/箇所と解されてもよい。
【0021】
基板10は、上述した各種回路及び地板20等が配置される板状の基材である。基板10は、誘電体を用いて実現されていて良い。基板10は、ガラスやカーボンなどの繊維に樹脂を含浸させて硬化させたプリプレグやソルダーレジストなど、任意の絶縁材料を用いて実現されていてよい。基板10は、プリント配線板等の樹脂製の板であってよい。基板10の表面には、所定の配線パターンが形成されていて良い。基板10は、内部に1つ又は複数の導体層が形成された多層基板であってもよい。
【0022】
基板10は、地板20、地板20、第1エレメント30、第2エレメント40、給電線路51、短絡線路52、コネクタ、及び通信IC等が形成可能な面積を有する。地板20は、長方形状に形成されている。他の態様として、基板10は、正方形や、L字型、円形、六角形などに形成されていても良い。基板10にはスリットや、筐体に固定するためのネジ穴などが設けられていてよい。
【0023】
基板10は、第1面と第2面を備える。第1面は、第1エレメント30が形成されている面である。第1面は上面と言い換えられてよい。第2面は第1面とは反対側の面である。第2面は、裏面あるいは下面と言い換えられて良い。第2面から第1面に向かう方向がアンテナ装置1にとっての上方向に相当する。
【0024】
基板10は、第1縁部11、第2縁部12、第3縁部13、及び、第4縁部14を備える。第1縁部11及び第2縁部12は長方形の短辺に相当する縁部である。第1縁部11及び第2縁部12は互いに平行であって、同じ長さを有する。第3縁部13及び第4縁部は長方形の長辺に相当する縁部である。第3縁部13及び第4縁部14は互いに平行であって同じ長さを有している。
【0025】
以下ではアンテナ装置1の構成について、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸を有する右手系の三次元座標系の概念を導入して説明する。図1等の種々の図に示すX軸は基板10の長手方向に平行であり、Y軸は基板10の短手方向に平行である。Z軸は上下方向に平行である。他の態様として基板10が正方形状である場合には、任意の1辺に沿う方向がX軸方向に設定されてよい。
【0026】
第1縁部11から第2縁部12に向かう方向がX軸正方向に相当し、第3縁部13から第4縁部14に向かう方向がY軸正方向に相当する。基板10のX軸方向の長さ(Lx)は、第3縁部13及び第4縁部14の長さに相当する。基板10のY軸方向の長さ(Ly)は、第1縁部11及び第2縁部12の長さに相当する。例えばLxは55mm、Lyは40mmに設定されている。
【0027】
他の実施形態において、Lxは50mm、60mm、又は70mmといった値に設定されていて良い。Lyは、25mm、30mm、35mm、又は45mmといった値に設定されていてよい。Lxに対するLyの比率(Ly/Lx)は、0.4、0.5、0.6などに設定されていて良い。基板10の形状は、搭載場所に適合するように設計されて良い。
【0028】
地板20は、銅などの導体を素材とする板状の導体部材である。ここでの板状には金属箔のような薄膜状も含まれる。地板20は、基板10の表面に電気メッキ等によって蒸着された導体層でもよい。地板20は、例えば電源回路などを介して電源ケーブルの接地極と電気的に接続されることにより、アンテナ装置1におけるグランド電位(換言すれば接地電位)を提供する。
【0029】
本実施形態では地板20は、基板10の第1面に形成されている。他の実施形態においては、地板20は、基板10の第2面又は内部に形成されていてよい。また、地板20は、複数の導体層及び絶縁層を含む多層基板の内部に配置された導体層を用いて実現されていても良い。
【0030】
地板20は、長方形状に形成されている。地板20の短辺の長さは、20mm又は25mmといった、Lyよりも小さい値に設定されている。また、地板20の長辺の長さは、50mm又は55mmといった、Lxよりも小さい値に設定されている。地板20の短辺及び長辺の長さは、λを基準に設計されて良い。動作周波数/利得を安定させるために、地板20の長辺の長さは0.5λ以上に設定されていてよい。
【0031】
地板20は、長手方向が基板10の長手方向と平行となる姿勢で基板10に付加されている。地板20は、第1グランドエッジ21、第2グランドエッジ22、第3グランドエッジ23、及び第4グランドエッジ24を備える。第1グランドエッジ21及び第2グランドエッジ22は、第1縁部11及び第2縁部12と平行である。第3グランドエッジ23及び第4グランドエッジ24は、第3縁部13及び第4縁部14と平行である。第1縁部11、第1グランドエッジ21、第2グランドエッジ22、及び第2縁部12は、X軸正方向においてこの記載順に並んでいる。第3縁部13、第3グランドエッジ23、第4グランドエッジ24、及び第4縁部14はY軸正方向においてこの記載順に並んでいる。
【0032】
地板20は、第3グランドエッジ23が第3縁部13から所定距離(D1)離れるように、基板10の中央よりも第4縁部14寄りに配置されている。D1は、例えば20mmであってよい。D1は、12mm、14mm、16mm、18mm、22mm、24mmなどであっても良い。D1は、立体アンテナと地板20との電磁的な結合を抑制可能な値に設定されていてよい。D1は、0.1λ以上に設定されていてよい。
【0033】
地板20の寸法は、基板10の形状及び大きさに合わせて適宜変更されてよい。また、地板20の形状は、円形、正方形状、六角形、八角形、L字型など、多様な形状であってよい。矩形状との表現には、長方形と正方形とが含まれる。円形には、真円だけでなく楕円形も含まれてよい。
【0034】
第1エレメント30及び第2エレメント40は対象周波数帯の電波を送信又は受信するための導体部材である。第1エレメント30は、第1エレメント30及び第2エレメント40は、協働によりダイポールアンテナとして動作するように設計されている。すなわち、第1エレメント30は、λ/4の長さを有する線状導体である。第2エレメント40も、λ/4の長さを有する線状導体である。第1エレメント30と第2エレメント40の協働は、1つの局面において電磁的な結合と解されても良い。第1エレメント30及び第2エレメント40は組み合わさることによって、λ/2の電流経路を形成するように構成されている。
【0035】
本開示における「線状」との表現には、長さに比べて幅が十分に小さい形と解されて良い。線状には、帯状及び棒状も含まれて良い。線状導体は、1mmから数ミリの幅を有する導体素子であってよい。線状は、直線状に限定されない。線状導体は、L字型や、ミアンダ状、渦巻状などに形成されていても良い。また、線状には、一定の厚みを有する形状も含まれる。
【0036】
本実施形態の第1エレメント30は、直線状に形成されている。また第1エレメント30は、第3グランドエッジ23と第3縁部13との間に、第3縁部13と平行となる姿勢で配置されている。第1エレメント30と第3縁部13との離隔は、数ミリなどであって良い。第1エレメント30は、第3縁部13から1cm以内となる範囲において、第3縁部13(つまりX軸)と平行となる姿勢で配置されている。
【0037】
第1エレメント30は、基板10の第1面に印刷又はエッチングによって形成された導体パターンであってよい。第1エレメント30の全長は、前述の通り、λ/4に相当する長さである。基板10による波長短縮効果を考慮し、第1エレメント30の外観上の(実際の)長さは25mmなどに設定されていてよい。
【0038】
第1エレメント30は、端部として第1端部31と第2端部32を備える。第1端部31は、第1エレメント30のX軸負方向側の端部である。第2端部32は、第1エレメント30のX軸正方向側の端部である。第1端部31は、給電線路51を介して通信ICと接続されている。第1端部31が、立体アンテナにとっての実質的な給電点と解されて良い。給電点は、通信IC又は給電線路51との接続箇所と解されて良い。本実施形態では、給電点(つまり第1端部31)から第1エレメント30が伸びる方向を、給電方向あるいは第1延設方向とも称する。本実施形態においては、X軸正方向が、給電方向あるいは第1延設方向に相当する。第2端部32は、開放端となっている。第1延設方向が所定方向に相当する。
【0039】
第2エレメント40は、基板10に立設されている線状導体部材である。第2エレメント40は、立体エレメントと言い換えられてよい。第2エレメント40は、第1端部31の近傍において立設したバー状の金属パーツを、所定の高さ位置において第1エレメント30が存在する方向に折り曲げられた外観形状を有する。第2エレメント40は、例えば幅が数ミリ、厚さが0.5~1.0ミリ、長さがλ/4の、バー状の金属パーツを、プレス加工等によって、直角に折り曲げることによって実現されていてよい。
【0040】
第2エレメント40は、基板10と当接している部分が少ないため、波長短縮効果を受けにくい。第2エレメント40の全長は、30mmなど、λ/4に略一致する値に設定されていてよい。また、他の実施形態においては、第2エレメント40の全長は、λ/4よりも長く設定されていてもよい。
【0041】
第2エレメント40は、立設部41と、基板平行部42とを含む。立設部41は、第2エレメント40において基板10から立設している。基板平行部42は、基板10に平行である。立設部41の上端部は、基板平行部42の一端と接続されている。立設部41の上端部は、第2エレメント40の折り曲げ部と解されて良い。立設部41の上端部を、本開示では第3端部44とも称する。第3端部44は、基板平行部42の端部でもある。
【0042】
立設部41の下端部43は、基板10に固定されている。下端部43は、例えばはんだやコネクタなどを用いて基板10に固定されていてよい。その他、第2エレメント40は、下端部43に設けられたピン状の差込部が、基板10に形成されたスルーホールに差し込まれることによって、基板10に対する姿勢が保持されるように構成されていても良い。立設部41の下端部43は、基板接合部あるいは根部と言い換えられて良い。
【0043】
立設部41の下端部43(つまり基板接合部)は、第1端部31の近傍に配置されている。第1端部31の近傍は、第1端部31から5mm又は10mm以内となる範囲と解されて良い。第1端部31の近傍は、第1端部31からλ/12以内となる範囲と解されても良い。概念的には第1エレメント30と第2エレメント40がダイポールアンテナとして作動する距離範囲が、第1端部31の近傍に相当する。近傍とみなす事ができる範囲は、アンテナとして要求される性能に応じて異なりうる。
【0044】
下端部43は、第1端部31のX軸負方向側に第1端部31と所定の間隔をおいて隣接するように配置されている。下端部43は、第1端部31から第1延設方向とは逆方向に所定距離(D2)ずれたポジションに設けられていてよい。D2が小さいほど、ダイポールアンテナとしての利得は向上しうる。D2は、前述の通り、数ミリ~10mmに設定されていてよい。D2は、λ/12以下に設定されていてよい。下端部43は、短絡線路52を介して地板20と電気的に接続されている。
【0045】
上記構成は、別の観点によれば、下端部43と第1端部31とがこの順で所定の隣接方向に並んで配置されており、且つ、第1エレメント30が第1端部31から隣接方向に向かって延設された構成に相当する。本実施形態では、第1延設方向は隣接方向と一致する。他の態様においては隣接方向と第1延設方向は直交していても良い。
【0046】
基板平行部42は、立設部41の上端部(つまり第3端部44)から第1エレメント30が存在する方向に向かって伸びている。このような基板平行部42は、第3端部44から第1延設方向に延設された線状導体と解されて良い。基板平行部42が伸びる方向は、基板10から垂直に立ち上がる金属パーツが折り曲げられた方向と解されて良い。立設部41の上端部から基板平行部42が伸びる方向は、屈曲方向と言い換えられて良い。本開示では基板平行部42において、立設部41とは反対側に位置する端部を第4端部45と称する。
【0047】
上面視において基板平行部42は、図2に示すように第1エレメント30の一部と重なっている。換言すれば、基板平行部42は、第1エレメント30の一部と平行となるように形成されている。基板平行部42は、第1エレメント30の電流ベクトルとは逆向きの電流ベクトルを形成する部分を有していればよい。
【0048】
立設部41は、立設部41に直交する全方位に向けて、等方的に基板垂直偏波を放射するように作用する。基板垂直偏波は、電界の振動方向が基板10に垂直な直線偏波である。基板平行部42は、基板平行部42に直交する全方位に向けて、等方的に基板平行偏波を放射するように作用する。基板平行偏波は、電界の振動方向が基板10に平行な直線偏波である。
【0049】
図3中のD3は立設部41の長さを表しており、D4は基板平行部42の長さを表している。D3は、第2エレメント40の高さに対応する。第2エレメント40の縦横比、つまり立設部41と基板平行部42の長さの比率(D3:D4)は、1:3や、1:2、2:3、3:4、1:1などに設定されていてよい。
【0050】
D3が大きいほど基板水平方向における利得が高まりうる。基板水平方向における利得は、立体アンテナにとっての水平方向における利得、換言すれば受信感度/放射強度を意味する。立体アンテナにとっての水平方向とは、基板10に平行な方向である。基板水平方向における利得は、概略的には立設部41に垂直となる方向に対する利得を表す。
【0051】
一方、D3が大きいほど、アンテナ装置1の高さが増大する。車両においてアンテナ装置1を搭載するスペースは有限であるため、アンテナ装置1の高さには制限が設けられることがある。D3は当該高さ制限を充足するように設計されてよい。また、D3が大きいほど、D4が小さくなり、結果として後述する基板平行部42による打ち消し効果が弱まる。
【0052】
上記事情を勘案し、第2エレメント40の全長が30mmである場合、D3は4mmから20mmまでの値に設定されていてよい。例えばD3は、6mm、8mm、10mm、12mm、14mmなどに設定されていて良い。なお、D3=10mmである場合、D4は約20mmとなる。
【0053】
給電線路51は、通信ICと第1エレメント30とを電気的に接続するマイクロストリップ線路又は配線パターンである。給電線路51は線状導体と解されて良い。給電線路51の一端は第1エレメント30の端部と接続されており、他端は通信ICのアンテナ接続端子と接続されている。本実施形態では給電線路51は、基板10の表面に形成されている。他の実施形態においては、給電線路51は、基板10の内部にストリップラインとして形成されていても良い。
【0054】
短絡線路52は、地板20と第2エレメント40とを電気的に接続するマイクロストリップ線路又は配線パターンである。短絡線路52の一端は第2エレメント40の下端部43と接続されており、他端は地板20と接続されている。短絡線路52は、基板10の表面に形成されている。他の実施形態においては、短絡線路52は、基板10の内部にストリップラインとして形成されていても良い。
【0055】
<第1エレメントと第2エレメントの相互作用>
ここでは第1、第2、第3モデルを用いて上記アンテナ装置1の作動及び効果について説明する。各モデルは、ダイポールアンテナとして振る舞うように構成されている。各モデルは、給電エレメントE1とグランドエレメントE2とを有する。給電エレメントE1は、通信ICのアンテナ接続端子と電気的に接続されている線状導体である。グランドエレメントE2は、グランド電位を提供する部材と電気的に接続されている線状導体である。グランドエレメントE2と給電エレメントE1の長さは両方ともλ/4に設定されている。各モデルは、λ/2の電流経路を有している。
【0056】
第1モデルは、図4に示すように、ダイポールアンテナの基本的な構成を有する。すなわち、第1モデルは、λ/4の長さを有する2つの直線状エレメントを線対称に配置した構成である。基本的なダイポールアンテナにおける電流分布は、給電点において最大となり、両端において最小となる。図4に示す矢印は、電流の方向と大きさを概念的に示している。第1モデルでは、エレメントに対して回転対称なドーナツ状の放射指向性、別の観点によれば8の字特性を有する。そのため、第1モデルがX軸と平行となるように基板10上に形成されている場合、X軸に直交する方向において等方的な指向性(換言すれば無指向性)を有する。第1モデルでは、X軸方向に向けて電波を放射できない。また、第1モデルでは、基板垂直偏波を放射できない。
【0057】
第2モデルは、図5に示すように、グランドエレメントE2を基板10に対して立設し、且つ、給電エレメントE1が存在する方向とは逆方向に折り曲げた構成である。第2モデルは、基板10に対して垂直な部分(つまり立設部)を有する。当該立設部は基板水平方向への放射に寄与する。その結果、第2モデルでは第1モデルに比べ、図6に示すようにX軸方向の利得が向上しうる。ただし、第2モデルでは、基板垂直方向における利得が、基板水平方向における利得に比べて大きいといった特性を有する。基板垂直方向は、基板10に垂直な方向である。また、第2モデルでは、基板水平偏波が主として送受信される。第2モデルでは基板垂直偏波の利得は相対的に小さい。
【0058】
第3モデルは、図7に示すように、グランドエレメントE2を基板10に対して立設しており、且つ、グランドエレメントE2が給電エレメントE1が存在する方向に折り曲げられた構成を有する。第3モデルは、本実施形態のアンテナ装置1に対応するモデルである。第3モデルも、第2モデルと同様に基板10に対して垂直な部分(つまり立設部)を有する。そのため、第3モデルもまた基板水平方向へ電波を放射可能となる。さらに、グランドエレメントE2において基板10と平行な部分(換言すれば基板平行部)に流れる電流の方向は、給電エレメントE1に流れる電流とは逆向きである。
【0059】
このように第3モデルでは、給電エレメントE1に形成される電流ベクトルとは逆向きの電流ベクトルが基板平行部に形成される。基板平行部に流れる電流と給電エレメントE1に流れる電流は互いに打ち消すように作用する。つまり、基板平行部に流れる電流が形成する電界と、給電エレメントE1に流れる電流が形成する電界は、互いに打ち消し合う。
【0060】
その結果、図8に示すように第3モデルでは、第2モデルに比べて基板水平方向における利得が低下し、基板垂直方向における利得が向上する。また、第3モデルにおいては、立設部及び基板平行部の寸法比率を調整することにより、基板水平方向における利得を基板垂直方向における利得よりも大きくできる。さらに第3モデルによれば、基板垂直偏波を主に送受信可能となる。
【0061】
第3モデルは本実施形態のアンテナ装置1に対応する構成である。そのため、アンテナ装置1も、第3モデルと同様に、基板水平方向へ基板垂直偏波の放射に好適である。また、送受の可逆性から、アンテナ装置1は、基板水平方向からの基板垂直偏波を良好に受信可能である。
【0062】
また、電界振動方向が金属板に対して垂直な電波は、当該金属板に沿って伝搬する性質がある。そのため、上記アンテナ装置1が、基板10がサイドボディに対向する姿勢で取り付けられている場合、アンテナ装置1が送信した基板垂直偏波は、サイドボディを伝ってリアエリアやフロントエリアなど、アンテナ装置1にとっての見通し外にも伝搬しやすい。アンテナ装置1によれば、車両周辺に形成される不感地帯を抑制できる。ここでの不感地帯とは、電波が完全に届かないスポットだけでなく、電波が届きにくい場所であってよい。不感地帯は、電波強度が所定値未満となる領域、又は、通信の失敗率(パケットロス率)が所定の閾値以上となる領域と解されて良い。
【0063】
<変形例>
立体形状を有する第2エレメント40は、図9に示すように支持体53によって支持されていてよい。支持体53は基板10に対する基板平行部42の姿勢を固定する役割を担う構成である。支持体53は、地板20の上面に付与された、樹脂製のブロックであってよい。支持体53は、1つ又は複数の柱であってもよい。支持体53は、絶縁性を有する接着剤で基板10に固定されていてよい。支持体53は、アンテナ装置1の筐体と一体化されていてもよい。
【0064】
また、第2エレメント40は支持体53の表面にパターン形成されていても良い。第2エレメント40は、電気メッキ、金属蒸着、又は導電塗料の塗布などの方法により、支持体53の表面にパターン形成されていてよい。その場合、支持体53に設けられた第2エレメント40は、下端部43が短絡線路52と当接するように設けられていてよい。支持体53を用いて第2エレメント40を固定することにより、第2エレメント40が基板10から外れたり、第1エレメント30に対する相対位置が変化したりする恐れを低減できる。
【0065】
アンテナ装置1は、図10に示すように筐体70を備えていてよい。筐体70の材料は、ポリカーボネート(PC:polycarbonate)樹脂、又はポリプロピレン(PP:polypropylene)など、多様な樹脂であってよい。筐体70は、実体的又は仮想的に、底部71、側壁部72、及び天板部73に分けて取り扱われてよい。底部71は、筐体70の下側面を形成する構成である。底部71は略平坦に形成されている。側壁部72は、筐体70の側面を提供する構成であって、底部71の縁部から上方に向かって立設されている。天板部73は、筐体70の上面部を提供する構成である。天板部73は例えば平板状に形成されていてよい。なお、天板部73の外側表面はドーム型など任意の形状を有していてよい。天板部73の内側面(裏面)である内部天井面73aは、基板10の第1面と対向するように平坦に形成されていてよい。
【0066】
筐体70は、内部天井面73aが基板平行部42と当接するように構成されていてよい。内部天井面73aと基板平行部42との接触は、側壁部72の高さの調整により実現可能である。内部天井面73aが基板平行部42と当接することにより、筐体70の波長短縮効果により、第2エレメント40をより一層小型化できる。
【0067】
また、第2エレメント40は筐体70の内面部に固定されていても良い。例えば基板平行部42は接着剤54にて内部天井面73aに固定されてよい。当該構成によっても、振動等によって第1エレメント30に対する第2エレメント40の位置が変化する恐れを低減できる。さらに、基板平行部42は、内部天井面73aに電気メッキ等にパターン形成されていても良い。立設部41と基板平行部42は、必ずしも一体的に形成されている必要はない。立設部41の上端部が内部天井面73aに蒸着/接着されている基板平行部42と当接することにより、第2エレメント40が実現されていて良い。
【0068】
基板平行部42の第4端部45は、図11に示すように第2の立設部46によって基板10と接続されていても良い。立設部41が第1の立設部に相当する。基板平行部42は、2つの立設部41、46によって支持されていてよい。第2エレメント40は、コーナーが略直角に形成された逆向きのU字型に形成されていてよい。U字型の第2エレメント40は、バー状/棒状の金属パーツを2回折り返すことで実現されていて良い。上記構成によれば第2エレメント40と基板10との接続箇所が2つとなるため、構造の強度が向上する。
【0069】
立設部41、46の長さは同じであってよい。立設部41、46は、基板平行部42と同じ長さであってもよい。もちろん、基板平行部42は、立設部41、46よりも短くともよい。立設部41、46の長さは、第1エレメント30と同じ長さであってもよい。第2エレメント40の全長は、λ/2に設定されていて良い。第2エレメント40は、立設部41、46に流れる電流が同位相になるように設計されていてよい。立設部41、46に流れる電流が同相である場合、立設部41、46に流れる電流が形成する電界は互いに強め合うように作用するため、利得が高まりうる。
【0070】
第1エレメント30は、図12に示すようにL字型に形成されていても良い。第1エレメント30は、給電点付近において基板平行部42と平行な区間を有することが好ましい。第1エレメント30は、ミアンダ状、渦巻状などであってもよい。第1エレメント30を屈曲形状とすることにより、立体アンテナを小型化できる。
【0071】
また、図13に示すように第1延設方向と屈曲方向は直交していても良い。図13における第1延設方向はY軸負方向であり、屈曲方向はX軸正方向である。図13に示す構成においても、基板平行部42に形成される電流ベクトルは、第1エレメント30の第1折り返し部33に形成される電流ベクトルとは逆向きとなる。そのため、打ち消し効果が得られ、基板垂直方向の利得は抑制される。また、相対的に基板水平方向の利得が高まりうる。
【0072】
立体アンテナが形成されている縁部とは反対側の縁部には、ケーブル69が接続されるためのコネクタ61が設けられていてよい。換言すれば、コネクタ61が配置されている縁部と反対側の縁部付近に、立体アンテナが形成されていて良い。図14に示すように、第4縁部14にコネクタ61が設けられている場合、第3縁部13付近に立体アンテナが形成されていてよい。第3縁部13付近は、基板10の中央から第3縁部13までの範囲と解されて良い。第3縁部13付近は、狭義的には、第3縁部13から15mm以内となる範囲と解されても良い。なお図14では基板10の第2面の第4縁部14付近にコネクタ61が配置されている構成を示している。コネクタ61が配置されている縁部はコネクタ配置縁と言い換えられて良い。図14に示す例では第4縁部14がコネクタ配置縁に相当する。
【0073】
立体アンテナとコネクタ61が近いと、ケーブル69への漏洩電流によって立体アンテナの利得が低下しうる。特に地板20のサイズが0.5λよりも小さい場合にはケーブル69への漏洩電流による性能劣化が起こりやすい。コネクタ配置縁と反対側の縁部付近に、立体アンテナが形成することにより、アンテナ性能(利得など)が高まりうる。
【0074】
なお、第2モデルや第3モデルにおいて、第1エレメント30と第2エレメント40の役割(接続先)は入れ替えられても、同様の特性が得られる。つまり、アンテナ装置1において第2エレメント40が通信ICのアンテナ接続端子と接続され、第1エレメント30が地板20と電気的に接続されていてもよい。
【0075】
基板10上における各部材の位置関係、換言すればレイアウトは変更されてよい。第1エレメント30及び第2エレメント40は、第1縁部11、第2縁部12、又は第4縁部14付近に配置されていても良い。地板20は、基板10の第2面に配置され、第1面にはコネクタ61や通信ICなどが配置されていてもよい。また、基板10の第1面には、ダイバーシティのために複数の立体アンテナが搭載されていても良い。
【0076】
例えばアンテナ装置1は、図15に示すように、コネクタ61等が第1面に搭載され、且つ、第2面に地板20が形成された構成を有していても良い。図15に示すアンテナ装置1では、コネクタ61、電源回路62、通信IC63、RAM(Random Access Memory)64、ROM(Read Only Memory)65、スイッチ66、第1アンテナA1、及び第2アンテナA2が第1面に設けられている。
【0077】
図15に示すアンテナ装置1では、コネクタ61は第1縁部11に設けられている。よって、図15に示す構成においては、第1縁部11がコネクタ配置縁に相当する。第1縁部11がコネクタ配置縁である場合、第2縁部12付近がアンテナ搭載スペースとして活用されてよい。電源回路62、通信IC63、RAM64、及びROM65は、コネクタ配置縁である第1縁部11から基板10の中央までの間に配置されていてよい。
【0078】
第1アンテナA1及び第2アンテナA2はそれぞれ、第1エレメント30と第2エレメント40を含む立体アンテナである。図15に示す例では、第1アンテナA1、及び第2アンテナA2は第2縁部12から基板10の中央までの間に、並列配置されている。
【0079】
ダイバーシティの観点から、第1アンテナA1が備える第1エレメント30は、第2アンテナA2が備える第1エレメント30と、給電方向が互いに直交していてよい。例えば第1アンテナA1が備える第1エレメント30の給電方向がX軸に平行である場合、第2アンテナA2が備える第1エレメント30の給電方向はY軸に平行であってよい。給電方向は、給電点から素子が伸びる方向、換言すれば、給電点での接線方向である。
【0080】
スイッチ66は、通信IC63のアンテナ接続端子につながるアンテナを切り替えるためのスイッチ回路である。スイッチ66は、接続状態として、第1アンテナA1が通信IC63と接続している第1接続状態と、第2アンテナA2が通信IC63と接続している第2接続状態とを取りうる。スイッチ66の接続状態は通信IC63によって切り替えられる。なお、スイッチ66は通信IC63に内蔵されていて良い。その場合、通信IC63は、アンテナ毎のアンテナ接続端子を備えていて良い。
【0081】
アンテナ装置1は、図16に示すように立体構造を有する第1アンテナA1及び第2アンテナA2に加えて、パターンアンテナである第3アンテナB1を備えていて良い。第3アンテナB1は、第1面に沿うように形成されたモノポールアンテナ又はダイポールアンテナであってよい。第1アンテナA1及び第2アンテナA2が主として基板垂直偏波をサポートする垂直偏波アンテナである一方、第3アンテナB1は主として基板平行偏波をサポートする水平偏波アンテナとして機能しうる。
【0082】
上記のアンテナ装置1は、図17に示すように車両のコーナー部からλ/6(約20mm)以上離れた金属板に取り付けられていてよい。コーナー部からλ/6以上から離れた場所においては、基板表面にパターン形成されたダイポールアンテナよりも、立体アンテナのほうが見通し外への電波の回り込み量が多くなる。アンテナ装置1は、リアフェンダー、フロントフェンダー、又はドアパネルなどに取り付けられてよい。アンテナ装置1は、側面部に限らず、背面部及び前面部に配置されていても良い。背面部には、バックドア又はリアバンパの内部が含まれてよい。前面部には、フロントバンパの内部、又はフロントグリルの内側、エンブレムの裏側などが含まれて良い。
【0083】
その他、アンテナ装置1は、垂直偏波アンテナを3つ以上備えていても良い。3つの垂直偏波アンテナは、何れも第1エレメント30と第2エレメント40を含む上記立体アンテナであってよい。また、3つ以上の垂直偏波アンテナの1つは、0次共振アンテナであってもよい。0次共振アンテナは、メタマテリアルの基本構造を有するアンテナである。0次共振アンテナは、地板20に対向するように配置される平板状の金属導体である対向導体板と、対向導体板の中央と地板とを電気的に接続する短絡部と、を備える。0次共振アンテナは、地板とパッチ部との間に形成される静電容量と、短絡部が備えるインダクタンスとによって、その静電容量とインダクタンスに応じた周波数において並列共振を生じさせるアンテナである。0次共振アンテナは、マッシュルーム構造を有する。0次共振アンテナは、メタマテリアル技術を応用したアンテナと解されてよい。0次共振アンテナはメタマテリアルアンテナと称されることがある。
【0084】
<付言(1)>
本開示での「平行」とは完全な平行状態に限定されない。「平行」な状態には、数度から15度程度傾いている状態も含まれる。つまり「平行」との表現には、概ね平行である状態(いわゆる略平行な状態)を含みうる。本開示における「垂直」という表現についても、完全に垂直な状態に限らず、数度~15度程度傾いている態様も含まれる。本開示における対向とは、所定の間隔を有して向き合っている状態を示す。対向状態には、部材同士が15°程度傾いて向き合っている態様など、部材同士が概ね向き合っている状態も含まれる。
【0085】
<付言(2)>
本開示には以下の技術的思想も含まれる。また、以下のアンテナ装置を用いた無線通信装置及び無線通信システムもまた、本開示に含まれる。
【0086】
[技術的思想1]
板状の誘電体である基板(10)と、
前記基板の表面又は内部に設けられた、板状の導体である地板(20)と
前記基板の表面に沿って設けられている線状導体素子である第1エレメント(30)と、
立体形状を有する線状導体素子である第2エレメント(40)と、を備え、
前記第2エレメントは、
前記基板に対して垂直な立設部(41)と、
前記立設部の上端から前記基板に対して平行となるように延設されている基板平行部(42)と、を含み、
前記基板平行部は、前記第1エレメントの少なくとも一部と平行となる部分を有しており、
前記立設部の下端部及び前記第1エレメントの端部の何れか一方は、給電線路と接続されており、他方は、前記地板と電気的に接続されている、アンテナ装置。
なお、ここでの他方とは、立設部の下端部及び第1エレメントの端部のうち、給電線路と接続されていない方の端部と解されてよい。
【0087】
[技術的思想2]
前記第1エレメント及び前記第2エレメントの組み合わせは、ダイポールアンテナとして動作するように構成されている、技術的思想1に記載のアンテナ装置。
【0088】
[技術的思想3]
前記第1エレメント及び前記第2エレメントの長さは、送信又は受信の対象とする電波の波長である対象波長の4分の1に設定されている、技術的思想1又は2に記載のアンテナ装置。
【0089】
[技術的思想4]
前記基板平行部は、前記立設部と接続している端部である第3端部と、その反対側の端部である第4端部(45)を備え、
前記立設部は第1の立設部であり、
前記第2エレメントは、前記基板平行部の前記第4端部を前記基板に接続する第2の立設部(46)を備える、技術的思想1又は2に記載のアンテナ装置。
【0090】
[技術的思想5]
前記第1エレメントの長さは、送信又は受信の対象とする電波の波長である対象波長の4分の1に設定されており、
前記第2エレメントの長さは、前記第1エレメントよりも長く設定されている、技術的思想4に記載のアンテナ装置。
【0091】
[技術的思想6]
前記基板を収容する筐体をさらに備え、
前記基板平行部は、前記筐体の内面部に固定されている、技術的思想1から5の何れか1つに記載のアンテナ装置。
【0092】
[技術的思想7]
前記基板は矩形状であって、4つの縁部を含み、
前記4つの縁部のうちの1つの縁部(14)は、ケーブルと接続するためのコネクタ(61)が設けられたコネクタ配置縁であり、
前記第1エレメント及び前記第2エレメントは、前記4つの縁部のうち、前記コネクタ配置縁とは反対側の縁部から、前記基板の中央までの間に配置されている、技術的思想1から6の何れか1項に記載のアンテナ装置。
【0093】
[技術的思想8]
前記基板には、それぞれ前記第1エレメント及び前記第2エレメントを有するアンテナセットが複数設けられている技術的思想1から7の何れか1つに記載のアンテナ装置。
【0094】
[技術的思想9]
前記第1エレメントは、端部として第1端部(31)と第2端部(32)を備え、
前記第1端部が、前記給電線路又は前記地板と電気的に接続されており、
前記第1端部と前記下端部は所定の間隔をおいて隣接配置されており、
前記第1エレメントは、前記下端部から前記第1端部に向かう方向である隣接方向へ、前記第1端部から延設されており、
前記基板平行部は、前記立設部の上端から前記隣接方向に向かって延設されている、技術的思想1から8の何れか1つに記載のアンテナ装置。
[技術的思想10]
前記第1エレメントは、端部として第1端部(31)と第2端部(32)を備え、
前記第1端部が、前記給電線路又は前記地板と電気的に接続されており、
前記第1エレメントは、前記第1端部から所定方向へ延設されている直線部を有し、
前記第2エレメントの前記下端部は、前記第1端部の近傍に配置されており、
前記基板平行部は、前記立設部の上端から前記所定方向に向かって延設されている、技術的思想1から8の何れか1つに記載のアンテナ装置。
[技術的思想11]
車両のコーナー部から、送信又は受信の対象とする電波の波長である対象波長の6分の1以上離れた車体金属部に取り付けられて使用される、技術的思想1から10の何れか1つに記載のアンテナ装置。
【符号の説明】
【0095】
1 アンテナ装置、10 基板、20 地板、30 第1エレメント、31 第1端部、32 第2端部、33 第1折り返し部、40 第2エレメント、41 立設部、42 基板平行部、43 下端部、44 第3端部、45 第4端部、46 立設部、51 給電線路、52 短絡線路、61 コネクタ、14 縁部(コネクタ配置縁)
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