(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156500
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】冷却装置、冷却システム
(51)【国際特許分類】
B64D 27/24 20240101AFI20241029BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20241029BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20241029BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20241029BHJP
H01M 10/659 20140101ALI20241029BHJP
【FI】
B64D27/24
H01M10/613
H01M10/653
H01M10/625
H01M10/659
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071012
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅也
(72)【発明者】
【氏名】小原 公和
(72)【発明者】
【氏名】吉田 周平
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031KK06
(57)【要約】
【課題】電池寿命を延ばすことのできる冷却装置、冷却システムを提供すること。
【解決手段】冷却装置は、電動飛行体に搭載され、電動飛行体の電池を冷却する。冷却装置は、電池から吸熱する1種類以上の蓄熱材を備える。蓄熱材は、潜熱蓄熱材1711として、離陸にともなう電池の発熱と着陸にともなう電池の発熱のうち、離陸にともなう電池の発熱を吸収するように相転移温度が設定された潜熱蓄熱材1711A、および/または、着陸にともなう電池の発熱を吸収するように相転移温度が設定された潜熱蓄熱材1711Bを含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動飛行体(10)に搭載され、前記電動飛行体の電池(14)を冷却する冷却装置であって、
前記電池から吸熱する1種類以上の蓄熱材(171)を備え、
前記蓄熱材は、潜熱蓄熱材(1711)として、離陸にともなう前記電池の発熱と着陸にともなう前記電池の発熱のうち、前記離陸にともなう前記電池の発熱を吸収するように相転移温度が設定された第1潜熱蓄熱材(1711A)、および/または、前記着陸にともなう前記電池の発熱を吸収するように相転移温度が設定された第2潜熱蓄熱材(1711B)を含む、冷却装置。
【請求項2】
前記蓄熱材は、流動性を有し、前記潜熱蓄熱材と熱的に接続された流動性蓄熱材(1712)を含む、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記蓄熱材よりも熱伝導性に優れており、前記蓄熱材に接触配置された熱伝導補助部材(173)を備える、請求項1または請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記熱伝導補助部材は、熱伝導性フィラー(1731)であり、
前記蓄熱材と前記熱伝導性フィラーとが分散混合されている、請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記熱伝導補助部材は、カプセル(1733)であり、
前記潜熱蓄熱材は、前記カプセルに収容されている、請求項3に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記電池から吸熱するための前記蓄熱材の総蓄熱量は、飛行開始時点の蓄熱量、飛行時の出力負荷、および前記電池の放熱特性に基づいて、飛行時の電池温度が使用上限温度以下となるように設定される、請求項1または請求項2に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記潜熱蓄熱材の量は、飛行時の出力負荷にともなう前記電池の発熱の吸収によって、前記潜熱蓄熱材の相変化が完了するように設定される、請求項6に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記潜熱蓄熱材の量は、飛行時の出力負荷にともなう前記電池の発熱の吸収によって、前記潜熱蓄熱材に相変化の未完了部分が残存するように設定される、請求項6に記載の冷却装置。
【請求項9】
前記電池は、複数の電池セル(142)を備えて構成される電池組立体(141)を含んでおり、
前記潜熱蓄熱材は、前記電池組立体の内部に生じる温度差を解消するように、前記電池組立体に対して吸熱面積当たりの潜熱蓄熱量に差を設けて配置される、請求項1または請求項2に記載の冷却装置。
【請求項10】
前記潜熱蓄熱材は、前記電池セルの側面に配置され、
前記電池セルは、前記側面とは異なる面に電極端子(142P,142N)を有し、
前記側面の第1位置における前記潜熱蓄熱材の量が、前記第1位置よりも前記電極端子から離れた第2位置における前記潜熱蓄熱材の量よりも多い、請求項9に記載の冷却装置。
【請求項11】
前記電池組立体における複数の前記電池セルの配置領域において、第1位置に配置された前記潜熱蓄熱材の量が、前記第1位置よりも前記配置領域の中心から離れた第2位置に配置された前記潜熱蓄熱材の量よりも多い、請求項9に記載の冷却装置。
【請求項12】
前記電動飛行体の機内に、前記流動性蓄熱材、および/または、前記潜熱蓄熱材と前記流動性蓄熱材とを混合した混合蓄熱材である流動性媒体を流動させる機構(172)を備え、
前記機構は、前記流動性媒体が充填され、前記電池に熱的に接続された冷却器(1721)と、前記流動性媒体の流動を制御するポンプ(1722)と、前記冷却器と前記ポンプとをつなぐ配管(1723)と、を有する、請求項2に記載の冷却装置。
【請求項13】
前記流動性蓄熱材、および/または、前記潜熱蓄熱材と前記流動性蓄熱材とを混合した混合蓄熱材である流動性媒体を、地上において機外冷却装置に接続するための継手(18)を備える、請求項2または請求項12に記載の冷却装置。
【請求項14】
電動飛行体(10)に搭載され、1種類以上の蓄熱材(171)を用いて前記電動飛行体の電池(14)を冷却する機内冷却装置(17)と、
地上において、前記電池を冷却する機外冷却装置(40)と、
を備え、
前記蓄熱材は、潜熱蓄熱材(1711)として、離陸にともなう前記電池の発熱と着陸にともなう前記電池の発熱のうち、前記離陸にともなう前記電池の発熱を吸収するように相転移温度が設定された第1潜熱蓄熱材(1711A)、および/または、前記着陸にともなう前記電池の発熱を吸収するように相転移温度が設定された第2潜熱蓄熱材(1711B)を含み、
前記機外冷却装置は、流動性媒体を流動させて前記蓄熱材および前記電池を冷却する、冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、電動飛行体に搭載され、電池を冷却する冷却装置、冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電動航空機に搭載された電池パックを冷却する冷却システムを開示している。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、水などの作動流体の循環により、電池の発熱を吸収する。飛行中に機内ヒートシンクに作動流体を連続的に循環させることで、飛行中において電池パックの発熱を吸収する。また、地上において機外冷却装置に接続し、作動流体を循環させることにより電池パックの発熱を吸収する。しかしながら電動飛行体は、離陸、巡航、着陸の動作にともなった特有の電池負荷プロファイルを有するため、特許文献1に開示の冷却システムでは電池寿命が短くなる虞がある。上記した観点において、または言及されていない他の観点において、電池を冷却する冷却装置、冷却システムにはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示されるひとつの目的は、電池寿命を延ばすことのできる冷却装置、冷却システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示のひとつである冷却装置は、
電動飛行体(10)に搭載され、電動飛行体の電池(14)を冷却する冷却装置であって、
電池から吸熱する1種類以上の蓄熱材(171)を備え、
蓄熱材は、潜熱蓄熱材(1711)として、離陸にともなう電池の発熱と着陸にともなう電池の発熱のうち、離陸にともなう電池の発熱を吸収するように相転移温度が設定された第1潜熱蓄熱材(1711A)、および/または、着陸にともなう電池の発熱を吸収するように相転移温度が設定された第2潜熱蓄熱材(1711B)を含む。
【0007】
電動飛行体の離陸時と着陸時には、電池に高出力負荷が加わる。開示の冷却装置によれば、電池の発熱が急激に増加する離陸と着陸にフォーカスして、潜熱蓄熱材の相転移温度が設定されている。第1潜熱蓄熱材の相転移温度は、離陸にともなう電池の発熱を吸収するように設定されている。第2潜熱蓄熱材の相転移温度は、着陸にともなう電池の発熱を吸収するように設定されている。冷却装置は、潜熱を利用する潜熱蓄熱材として、第1潜熱蓄熱材および/または第2潜熱蓄熱材を含む。よって、電池の劣化を抑制し、ひいては電池寿命を延ばすことができる。
【0008】
開示の他のひとつである冷却システムは、
電動飛行体(10)に搭載され、1種類以上の蓄熱材(171)を用いて電動飛行体の電池(14)を冷却する機内冷却装置(17)と、
地上において、電池を冷却する機外冷却装置(40)と、
を備え、
蓄熱材は、潜熱蓄熱材(1711)として、離陸にともなう電池の発熱と着陸にともなう電池の発熱のうち、離陸にともなう電池の発熱を吸収するように相転移温度が設定された第1潜熱蓄熱材(1711A)、および/または、着陸にともなう電池の発熱を吸収するように相転移温度が設定された第2潜熱蓄熱材(1711B)を含み、
機外冷却装置は、流動性媒体を流動させて蓄熱材および電池を冷却する。
【0009】
電動飛行体の離陸時と着陸時には、電池に高出力負荷が加わる。開示の冷却システムによれば、電池の発熱が急激に増加する離陸と着陸にフォーカスし、潜熱蓄熱材の相転移温度が設定されている。第1潜熱蓄熱材の相転移温度は、離陸にともなう電池の発熱を吸収するように設定されている。第2潜熱蓄熱材の相転移温度は、着陸にともなう電池の発熱を吸収するように設定されている。機内冷却装置は、潜熱を利用する潜熱蓄熱材として、第1潜熱蓄熱材および/または第2潜熱蓄熱材を含む。よって、電池の劣化を抑制し、ひいては電池寿命を延ばすことができる。
【0010】
機外冷却装置は、地上において流動性媒体を流動させ、蓄熱材および電池を冷却する。よって、短時間で次の飛行が可能な状態に調整することができる。
【0011】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】eVTOLおよび地上局の構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る冷却装置と電池を示す図である。
【
図14】飛行時における電池温度とPCM1との関係を示す図である。
【
図15】飛行時における電池温度とPCM2との関係を示す図である。
【
図16】飛行時における電池温度とPCM1およびPCM2との関係を示す図である。
【
図17】第2実施形態に係る冷却装置の一例を示す図である。
【
図23】電池温度と吸熱量との関係を示す図である。
【
図24】第3実施形態に係る冷却装置において、熱伝導補助部材の一例を示す図である。
【
図26】第4実施形態に係る冷却装置において、潜熱蓄熱材の配置の一例を示す図である。
【
図34】第5実施形態に係る冷却装置および冷却システムを示す図である。
【
図35】冷却システムを構成する装置とその他の装置との関係を示す図である。
【
図36】冷却装置および冷却システムの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて複数の実施形態を説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0014】
以下に示す冷却装置、冷却システムは、電動飛行体に適用される。なお、Aおよび/またはBとの記載は、AおよびBの少なくともひとつを意味する。つまり、Aのみ、Bのみ、AとBの両方、を含み得る。
【0015】
(第1実施形態)
電動飛行体は、移動するための駆動源としてモータ(回転電機)を備える。電動飛行体は、電動飛行機、電動航空機などと称されることがある。電動飛行体は、鉛直方向への移動、水平方向への移動が可能である。電動飛行体は、鉛直方向成分および水平方向成分を有する方向、つまり斜め方向への移動が可能である。電動飛行体は、たとえば電動垂直離着陸機(eVTOL)、電動短距離離着陸機(eSTOL)、ドローンなどである。eVTOLは、electronic Vertical Take-Off and Landing aircraftの略称である。eSTOLは、electronic Short distance Take-Off and Landing aircraftの略称である。
【0016】
電動飛行体は、有人機、無人機のいずれでもよい。有人機の場合、電動飛行体は、操縦者としてのパイロットにより操縦される。無人機の場合、電動飛行体は、操縦者による遠隔操作により操縦され、あるいは、コントロールシステムにより自動的に制御され得る。一例として本実施形態の電動飛行体は、eVTOLである。
【0017】
<eVTOL>
図1は、eVTOLおよび地上局を示している。
図1に示すように、eVTOL10は、機体本体11、固定翼12、回転翼13、電池14、EPU15、BMS16、および冷却装置17などを備えている。
【0018】
機体本体11は、機体の胴体部である。機体本体11は、前後に延びた形状をなしている。機体本体11は、乗員が乗るための乗員室、および/または、荷物を搭載するための荷室を有している。
【0019】
固定翼12は、機体の翼部であり、機体本体11に連なっている。固定翼12は、滑空揚力を提供する。滑空揚力は、固定翼12の生じる揚力である。固定翼12は、主翼121と、尾翼122を有してもよい。主翼121は、機体本体11の前後方向における中央付近から左右に延びている。尾翼122は、機体本体11の後部から左右に延びている。固定翼12の形状は特に限定されない。たとえば後退翼、三角翼、直線翼などを採用することができる。
【0020】
回転翼13は、機体に複数設けられている。複数の回転翼13の少なくとも一部は、固定翼12に設けられてもよい。複数の回転翼13の少なくとも一部は、機体本体11に設けられてもよい。eVTOL10が備える回転翼13の数は、特に限定されない。回転翼13は、機体本体11および主翼121のそれぞれに複数設けられてもよい。
【0021】
回転翼13は、ロータ、プロペラ、ファンなどと称されることがある。回転翼13は、ブレード131と、シャフト132を有してもよい。ブレード131は、シャフト132に取り付けられている。ブレード131は、シャフト132とともに回転する羽根である。複数のブレード131が、シャフト132の軸線周りに放射状に延びている。シャフト132は、回転翼13の回転軸であり、EPU15のモータによって回転駆動される。
【0022】
回転翼13は、回転により推進力を生じる。推進力は、eVTOL10の離着陸動作時に、主に回転揚力としてeVTOL10に作用する。回転翼13は、離着陸動作時に主として回転揚力を提供する。回転揚力は、回転翼13の回転により生じる揚力である。離着陸動作時において、回転翼13は回転揚力のみを提供してもよいし、回転揚力とともに、前方に進む推力を提供してもよい。回転翼13は、eVTOL10のホバリング時に、回転揚力を提供する。
【0023】
推進力は、eVTOL10の巡航動作時に、主に推力としてeVTOL10に作用する。回転翼13は、巡航動作時に主として推力を提供する。巡航動作時において、回転翼13は推力のみを提供してもよいし、推力とともに揚力を提供してもよい。
【0024】
電池(BAT)14は、回転翼13を回転駆動するための機器である。電池14は、電池パックと称されることがある。電池14は、直流電力を蓄えることが可能であり、充電可能な電池セルを有している。電池セルは、化学反応によって起電圧を生成する二次電池である。電池セルは、たとえばリチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池などである。電池セルは、電解質が液体の二次電池でもよいし、電解質が固体のいわゆる全固体電池でもよい。電池セルは、電池反応に寄与するイオン(電解質)が電解液および/または固体電解質を介して正負極間を移動することで、電池反応が生じる構成であればよい。eVTOL10は、機器に電力を供給する電源として、電池14に加えて、燃料電池や発電機などを備えてもよい。電池14は、EPU15に電力を供給する。
【0025】
eVTOL10の電池14には、高容量とともに高出力な性能が求められている。このため、高容量かつ高い出力が得られる電池セルが望ましい。出力観点では、幅広いSOC領域で抵抗が低い電池セルが望ましい。特に低SOCの領域においても抵抗が低く、高い出力が得られる電池セルが望ましい。SOCは、State Of Chargeの略称である。
【0026】
電池セルの正極材料としては、たとえばLCO、NMC、NCA、LFP、LMFPを採用することができる。LCOは、コバルト酸リチウム(LiCoO2)である。NMCは、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(Li(NiMnCo)O2)である。NCAは、リチウムニッケルコバルトアルミネート(Li(NiCoAl)O2)である。LFPは、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)である。LMFPは、リン酸マンガン鉄リチウム(LiFexMnyPO4)である。特に、低SOCの領域で抵抗が低い、LMFPの正極、あるいは、LMFPとNMCとをブレンドした正極が好ましい。
【0027】
電池セルの負極材料としては、たとえばハードカーボンやソフトカーボンなどのカーボン系、シリコン、リチウム系、LTOやNTOなどのチタン系を採用することができる。LTOは、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)である。NTOは、ニオブチタン酸化物(TiNb2O7)である。特に、低SOCの領域で抵抗の低い、カーボン系の負極やチタン系の負極が好ましい。
【0028】
EPU15は、eVTOL10に推進力を付与する回転翼13を回転駆動する。EPU15は、回転翼13を回転駆動するための機器である。EPUは、Electric Propulsion Unitの略称である。EPU15が、電動推進装置に相当する。EPU15は、モータを備える。EPU15は、モータに加えてインバータやESCを備える。ESCは、Electronic Speed Controllerの略称である。一例としてEPU15は、回転翼13と同数設けられる。つまりeVTOL10は、6つのEPU15を備えている。EPU15と回転翼13とは、一対一で接続されている。これに代えて、ひとつのEPU15に対して、ギヤボックスを介して2つ以上の回転翼13を接続する構成としてもよい。
【0029】
BMS16は、電池14を構成する単位電池の状態を監視する。BMSは、Battery Management Systemの略称である。BMS16は、電池14の電圧、電流、温度、内部抵抗、SOC、SOH、その他、内圧やガス漏れなど安全性に関わる状態などを監視し得る。SOHは、State Of Healthの略称である。BMS16は、電池14と一体的に設けられてもよい。BMS16の一部が電池14と一体的に設けられ、他の一部が電池14とは別に設けられてもよい。
【0030】
冷却装置(IC)17は、機内に設けられた冷却装置である。このため、冷却装置17は機内冷却装置と称されることがある。冷却装置17は、電池14を冷却する。冷却装置17は、蓄熱材を用いて電池14を冷却する。冷却装置17の詳細については後述する。
【0031】
eVTOL10は、さらにECU20や図示しない補機などを備えている。ECUは、Electronic Control Unitの略称である。eVTOL10は、図示しない揚力調整機構を備えてもよい。揚力調整機構は、固定翼12の滑空揚力を調整する。揚力調整機構は、固定翼12が生じる滑空揚力を増大させたり、減少させたりする。eVTOL10は、揚力調整機構として、たとえばチルト機構やフラップを備えてもよい。チルト機構は、回転翼13のチルト角を調整するために駆動する。フラップは、可動翼片であり、固定翼12に設けられる。
【0032】
<運航管理装置>
運航管理装置は、運航計画の立案、運航状況の監視、運航に関する情報の収集と管理、運航のサポートなどを行うための装置である。運航管理装置の機能の少なくとも一部は、eVTOL10の機内コンピュータに配置されてもよい。運航管理装置の機能の少なくとも一部は、eVTOL10と無線通信可能な外部のコンピュータに配置されてもよい。外部コンピュータの一例は、
図1に示す地上局30のサーバ31である。地上局30は、eVTOL10と無線通信が可能である。地上局30は、地上局同士で無線通信が可能である。
【0033】
一例として本実施形態では、運航管理装置の機能の一部がeVTOL10のECU20に配置され、運航管理装置の機能の一部が地上局30のサーバ31に配置されている。運航管理装置の機能は、ECU20とサーバ31との間で分担されている。
【0034】
図1に示すようにECU20は、プロセッサ(PC)201、メモリ(MM)202、ストレージ(ST)203、および無線通信のための通信回路(CC)204などを備えて構成されている。プロセッサ201は、メモリ202へのアクセスにより、種々の処理を実行する。メモリ202は、書き換え可能な揮発性の記憶媒体である。メモリ202は、たとえばRAMである。RAMは、Random Access Memoryの略称である。ストレージ203は、書き換え可能な不揮発性の記憶媒体である。ストレージ203には、プロセッサ201によって実行されるプログラム(PG)203Pが格納されている。プログラム203Pは、複数の命令をプロセッサ201に実行させることで、複数の機能部を構築する。ECU20は、複数のプロセッサ201を備えてもよい。
【0035】
サーバ31は、ECU20と同様に、プロセッサ(PC)311、メモリ(MM)312、ストレージ(ST)313、通信回路(CC)314などを備えて構成されている。プロセッサ311は、メモリ312へのアクセスにより、種々の処理を実行する。メモリ312は、書き換え可能な揮発性の記憶媒体であり、たとえばRAMである。ストレージ313は、書き換え可能な不揮発性の記憶媒体である。ストレージ313には、プロセッサ311によって実行されるプログラム(PG)313Pが格納されている。プログラム313Pは、複数の命令をプロセッサ311に実行させることで、複数の機能部を構築する。サーバ31は、複数のプロセッサ311を備えてもよい。
【0036】
<電池>
図2は、第1実施形態に係る冷却装置を示している。
図2では、冷却装置と電池との関係を示している。
図3は、電池セルの配置の一例を示している。
図4は、
図3のIV-IV線に沿う断面図である。以下において、各電池セルの高さ方向をZ方向、各電池セルの長手方向をY方向、各電池セルの短手方向をX方向と示す。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに直交する関係にある。
図4においては、便宜上、電池セルの全体に金属ハッチングを施している。
【0037】
図2に示すように、電池14は、電池モジュール(MOD)141を備えている。
図3に示すように、電池モジュール141は、複数の電池セル(CELL)142をモジュール化したものである。電池モジュール141は、複数の電池セル142を有する電池組立体である。
【0038】
複数の電池セル142は、互いに共通の構造を有している。複数の電池セル142の個数や配置は特に限定されない。複数の電池セル142は、直列接続されてもよいし、並列接続かつ直列接続されてもよい。
【0039】
電池セル142は、発電要素と、この発電要素を収容する電池ケースを有している。電池ケースは、電池セル142の外郭を提供する。電池ケースは、たとえば金属材料を用いて形成されてもよいし、ラミネートフィルムを用いて形成されてもよい。電池セル142、つまり電池ケースの形状は、特に限定されない。たとえば円筒形状でもよいし、角型形状でもよい。ラミネート型でもよい。
図4に示すように、電池セル142は、端面1421,1422と、側面1423を有している。端面1421は、Z方向において端面1422とは反対の面である。側面1423は、端面1421と端面1422とをつなぐ面である。端面1421,1422は、表面のうち、側面1423を除く面である。
【0040】
各電池セル142は、電極端子142P,142Nを有している。電極端子142P,142Nは、端面1421のみに設けられてもよい。電極端子142P、142Nは、端面1421,1422のそれぞれに設けられもよい。たとえば、端面1421に電極端子142P,142Nが設けられ、端面1322に電極端子142P,142Nが設けられてもよい。電極端子142P,142Nのひとつが端面1421,1422のひとつに設けられ、電極端子142P,142Nの他のひとつが端面1421,1422の他のひとつに設けられてもよい。電極端子142P,142Nは、対応する端面から突出している。電極端子142Pは、電池セル142の正極に電気的に接続されている。電極端子142Pは、正極端子、P端子などと称されることがある。電極端子142Nは、電池セル142の負極に電気的に接続されている。電極端子142Nは、負極端子、N端子などと称されることがある。電極端子は、電池セル端子、集電タブなどと称されることがある。
【0041】
一例として本実施形態の電池セル142は、角型形状、具体的にはX方向に薄い扁平形状をなしている。複数の電池セル142は、X方向に並んで配置されている。電極端子142P,142Nは、端面1421に設けられている。複数の電池セル142は、X方向において、電極端子142Pと電極端子142Nとが交互に位置するように配置されている。また、端面1421のZ方向位置が互いにほぼ等しくなるように配置されている。隣り合う電池セル142において、電極端子142Pと電極端子142Nとが、図示しないバスバーにより電気的に接続されている。
【0042】
電池モジュール141は、X方向に並ぶ電池セル142を複数備えてもよい。電池セル142の配置は、上記した配置に限定されない。たとえば円筒形の電池セル142の場合、Z方向からの平面視において千鳥状に配置されてもよい。電極端子142P,142Nは、端面1421および端面1422のそれぞれに設けられてもよい。
【0043】
<冷却装置>
冷却装置17は、電池14を冷却する。冷却装置17は、その全体が電池14と一体的に設けられてもよいし、一部が電池14と一体的に設けられてもよい。冷却装置17は、電池14の内部に配置されてもよい。冷却装置17は、電池14とは別に設けられ、電池14に熱的に接続されてもよい。冷却装置17は、BMS16と一体的に設けられてもよいし、BMS16とは別に設けられ、BMS16と通信可能に接続されてもよい。
【0044】
図2に示すように、冷却装置17は、少なくとも1種類の蓄熱材171を有している。蓄熱材171は、熱を蓄えることのできる部材、つまり蓄熱効果を奏する部材である。蓄熱材171は、対象部材から熱を吸収することで対象部材を冷却する。蓄熱材171は、充放電時に電池セル142が生じる熱を吸収することで、電池セル142を冷却する。蓄熱材171は、蓄冷材と称されることがある。
【0045】
蓄熱材171は、少なくとも潜熱蓄熱材(PCM)1711を含んでいる。PCMは、Phase change materialの略称である。潜熱蓄熱材1711は、固相と液相との間や、固相間で相変化する。潜熱蓄熱材1711は、相変化の際に、水などの顕熱と較べて非常に大きなエネルギー(潜熱)の出入りがある。このエネルギーの出入りを利用して、電池14の温度上昇を抑制し、電池温度を相転移温度近傍の特定の温度域に保持することが可能である。潜熱蓄熱材1711を用いることで、冷却装置17の体格、つまり冷却体積を低減することができる。また、冷却のための電力やメンテナンスが不要となる。
【0046】
固相から液相に相変化する潜熱蓄熱材の材料としては、パラフィン、脂肪酸、脂肪酸エステル、糖アルコールなどの有機物系材料、酢酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウムなどの無機水和物系材料などがある。たとえばパラフィンは、比較的大きい潜熱を有し、安価であり、分子量に応じて相転移温度を容易に調節することができる。パラフィンは、過冷却現象や相分離などの問題が少ないなどの特徴を有する。固相と液相との間の相変化の際の潜熱を利用する潜熱蓄熱材としては、上記した例に限定されない。
【0047】
潜熱蓄熱材の材料としては、固相の状態で結晶構造が変化する材料を用いることができる。固相のまま相変化する材料としては、VO2や、VO2に多元素ドープしたバナジウム酸化物などの金属絶縁体転移を生じる電子相転移蓄熱材料、マルテンサイト変態を生じる材料などがある。それ以外にも、サーモクロミック材料、柔粘性結晶、磁気相転移物質、常誘電体-強誘電体転移物質などがある。固相のまま相転移を行うため、液化することなく、体積の変化も小さいことから、容器等の制限が不要で取り扱いが容易となる。固相間の相変化の際の潜熱を利用する潜熱蓄熱材としては、上記した例に限定されない。
【0048】
潜熱蓄熱材1711の使用形態は特に限定されない。潜熱蓄熱材1711は、金属ケースや金属パックなどの熱伝導性容器内に充填された状態で用いてもよい。潜熱蓄熱材1711は、カプセルに充填された状態で用いてもよい。カプセルのサイズは、数mm以下であればよい。たとえば数μmから数千μmオーダのカプセルでもよいし、数nmから数百nmオーダのナノカプセルでもよい。潜熱蓄熱材1711は、電池セル142の一部またはすべてと熱的に接続されるように電池14の図示しない筐体に充填された状態で用いてもよい。潜熱蓄熱材1711は、マトリックスと複合化された状態で用いてもよい。マトリックスは、支持体、保持体、母体などと称される。たとえば金属の発泡体、金属の多孔質体、多孔質カーボンなどの空隙に潜熱蓄熱材1711が保持されてもよい。樹脂、ゴム、ゲルなどと潜熱蓄熱材1711が複合化されてもよい。潜熱蓄熱材1711は、結着材(バインダ)などとともに所定形状に成形された状態で用いてもよい。所定形状として、たとえばシート状、フィルム状、板状、筒状としてもよい。潜熱蓄熱材1711は、流動性蓄熱材中に分散された状態で用いてもよい。
【0049】
潜熱蓄熱材1711が、固相から液相への相変化によって構造を保持する必要がある場合、上記した使用形態のうち、容器内に充填、カプセルに充填、マトリックスとの複合化、のいずれかを用いるとよい。これにより、固体のように取り扱うことができる。潜熱蓄熱材1711が固体から液体に相変化しても、所定位置に保持することができる。潜熱蓄熱材1711は、カプセルに充填された状態で、所定形状に成形されてもよいし、樹脂、ゴム、ゲルなどと複合化されてもよい。流動性蓄熱材中に分散混合されてもよい。
【0050】
蓄熱材171は、潜熱蓄熱材1711に加えて、他の蓄熱材を含んでもよい。たとえば、後述する流動性蓄熱材を含んでもよい。アルミニウムや銅などの金属材を含んでもよい。
【0051】
電池14から吸熱するための蓄熱材171の総蓄熱量は、飛行開始時点の蓄熱量、飛行時の出力負荷、および蓄熱材171の効果を除いた電池14の放熱特性に基づいて、飛行時の電池温度が使用上限温度以下となるように設定するとよい。潜熱蓄熱材1711の量は、飛行時の出力負荷にともなう電池14の発熱の吸収によって、潜熱蓄熱材1711の相変化が完了するように設定してもよい。潜熱蓄熱材1711の量は、飛行時の出力負荷にともなう電池14の発熱の吸収によって、潜熱蓄熱材1711に相変化の未完了部分が残存するように設定してもよい。上記設定は、フライトごとに行ってもよいし、航路ごとに行ってもよい。季節ごとに行ってもよい。機体ごとに行ってもよいし、機種ごとに行ってもよい。
【0052】
蓄熱材171の総蓄熱量、たとえば蓄熱材171の搭載量は、熱解析シミュレーションモデルなど用いて設定してもよい。熱解析シミュレーションに必要な各種パラメータは、事前の実験や飛行履歴等から抽出するとよい。たとえば飛行開始時点の蓄熱量は、飛行開始時点の電池温度および/または蓄熱材171の温度から推定してもよい。飛行時の出力負荷は、飛行経路や過去の飛行履歴から推定してもよい。電池14の放熱特性は、事前の実験等で取得してもよい。
【0053】
飛行開始時点の蓄熱量と、飛行時の出力負荷と、電池の放熱特性については、想定される最悪の条件として計算することで、飛行時における電池14の過昇温のリスクを低減することができる。たとえば、計画していた着陸地点での着陸が困難となった場合に、代替着陸地点までの飛行に必要となる出力負荷、および/または、着陸のリトライのために必要となる出力負荷を考慮して、総蓄熱量を設定してもよい。これにより、飛行中にトラブルが生じても、電池14の過昇温異常を抑制し、電池14の安全性を高めることが可能となる。また、飛行時の出力負荷は、運航計画に合わせて複数の飛行を想定してもよい。
【0054】
冷却装置17は、蓄熱材171に加えて、蓄熱材171とは別の冷却機構を有してもよい。冷却装置17は、電池14が生じた熱を機体の金属フレームと熱交換するための機構を有してもよい。たとえば外部から導入した冷空気が当たって熱交換するヒートシンクを有してもよい。冷空気は、機外から導入した冷空気でもよいし、機内空調装置からの冷空気でもよい。
【0055】
冷却装置17は、冷却機能に加えて、監視機能や制御機能を備えてもよい。冷却装置17は、蓄熱材171の温度を監視してもよい。冷却装置17は、電池14の温度を監視してもよい。後述の流動性蓄熱材を含む場合に、流動性蓄熱材を流動させるポンプの作動を制御してもよい。冷却装置17は、電池温度および/または蓄熱材171の蓄熱情報に基づいて、運航管理装置に対して電池14の出力制限要求を通知してもよい。冷却装置17の監視機能や制御機能は、ECU20に配置されてもよい。BMS16および/または運航管理装置が、上記した監視機能や制御機能を有してもよい。
【0056】
<電力プロファイル>
図5は、eVTOL10の離陸から着陸までの電力プロファイルを示している。なお、eVTOL以外の電動飛行体の電力プロファイルも、eVTOL10と同様である。期間P1は、離陸動作時、離陸時、離陸期間などと称される。期間P2は、巡航動作時、巡航時、巡航期間などと称される。期間P3は、着陸動作時、着陸時、着陸期間などと称される。期間P1,P3は、離着陸動作時、離着陸時、離着陸期間などと称される。便宜上、
図1では期間P1,P3それぞれのほぼ全域において、必要電力、つまり出力を一定としている。
【0057】
eVTOL10は、期間P1において離陸地点から巡航開始地点まで上昇する。eVTOL10は、期間P2において所定高度で巡航する。eVTOL10は、期間P3において期間P2の終点から着陸地点まで降下する。eVTOL10の移動は、期間P2において主として水平方向成分を含み、期間P1,P3において主として鉛直方向成分を含む。鉛直方向に移動する期間P1,P3において、回転翼13の駆動には、所定時間連続で高出力が要求される。
【0058】
このように、離陸時と着陸時において、電池14には高出力負荷が加わる。電池14の発熱は、離着陸にともなって急激に増加する。このため、水や空気などの作動流体の顕熱を利用して電池14を冷却する構成では、熱吸収が間に合わず、電池14の過昇温異常が生じて電池出力停止となる虞がある。また、発熱の急激な増加は電池14の劣化を加速するため、電池寿命が極端に短くなる虞がある。
【0059】
<潜熱蓄熱材の配置>
潜熱蓄熱材1711は、電池セル142に熱的に接続されている。潜熱蓄熱材1711は、電池セル142の外郭をなす表面に対して、直接的に接触してもよいし、間接的に接触してもよい。たとえば、TIMなどの熱伝導部材を介して電池セル142に接触してもよい。TIMは、Thermal Interface Materialの略称である。潜熱蓄熱材1711は、端面1421に接触してもよいし、端面1422に接触してもよい。側面1423に接触してもよい。潜熱蓄熱材1711は、互いに異なる電池セル142の側面1423、つまり複数の側面1423に接触してもよい。潜熱蓄熱材1711は、ひとつの側面1423のみに接触してもよい。
【0060】
一例として本実施形態の潜熱蓄熱材1711は、電池セル142の側面1423に接触している。潜熱蓄熱材1711は、側面1423のうち、長手方向の側面1423に接触している。潜熱蓄熱材1711は、
図3に示すようにX方向において電池セル142と交互に配置されている。潜熱蓄熱材1711は、
図4に示すように隣り合う電池セル142の間に配置され、互いに対向する側面1423のそれぞれに接触している。潜熱蓄熱材1711は、電池セル142の側面1423に配置されている。潜熱蓄熱材1711の厚みは、面内で略均一である。
【0061】
図6~
図13のそれぞれは、潜熱蓄熱材の配置の一例を示す図である。
図6~
図13は、
図4に対応している。蓄熱材171は、潜熱蓄熱材1711として、潜熱蓄熱材(PCM1)1711A、および/または、潜熱蓄熱材(PCM2)1711Bを含んでいる。潜熱蓄熱材1711Aは、離陸にともなう電池14の発熱と着陸にともなう電池14の発熱のうち、離陸にともなう電池14の発熱を吸収するように相転移温度が設定されている。潜熱蓄熱材1711Bは、離陸にともなう電池14の発熱と着陸にともなう電池14の発熱のうち、着陸にともなう電池14の発熱を吸収するように相転移温度が設定されている。潜熱蓄熱材1711Aが第1潜熱蓄熱材に相当し、潜熱蓄熱材1711Bが第2潜熱蓄熱材に相当する。以下では、潜熱蓄熱材1711AをPCM1、潜熱蓄熱材1711BをPCM2と示すことがある。
【0062】
冷却装置17は、潜熱蓄熱材1711として、潜熱蓄熱材1711Aのみを有してもよいし、潜熱蓄熱材1711Bのみを有してもよい。冷却装置17は、蓄熱材171として、潜熱蓄熱材1711Aと潜熱蓄熱材1711Bの両方を有してもよい。
【0063】
潜熱蓄熱材1711を側面1423に配置する構成において、たとえば
図6に示すように、隣り合う電池セル142の側面1423の間で、潜熱蓄熱材1711を二層構造としてもよい。互いに対向する側面1423の間で2種類の潜熱蓄熱材1711A,1711Bを、X方向に積層配置している。潜熱蓄熱材1711Aは電池セル142のひとつの側面1423に接触し、潜熱蓄熱材1711Bは電池セル142の他のひとつの側面1423に接触している。潜熱蓄熱材1711A,1711Bのそれぞれは、対応する側面1423のほぼ全域に接触している。
【0064】
図7に示すように、潜熱蓄熱材1711を、側面1423の間で三層構造としてもよい。
図7では、X方向において、潜熱蓄熱材1711A、潜熱蓄熱材1711B、潜熱蓄熱材1711Aの順に積層されている。潜熱蓄熱材1711Aのひとつが電池セル142のひとつの側面1423に接触し、潜熱蓄熱材1711Aの他のひとつが電池セル142の他のひとつの側面1423に接触している。潜熱蓄熱材1711Bは、潜熱蓄熱材1711Aを介して電池セル142に熱的に接続されている。
【0065】
図8に示すように、潜熱蓄熱材1711を、側面1423の間で三層構造としてもよい。
図8では、X方向において、潜熱蓄熱材1711B、潜熱蓄熱材1711A、潜熱蓄熱材1711Bの順に積層されている。潜熱蓄熱材1711Bのひとつが電池セル142のひとつの側面1423に接触し、潜熱蓄熱材1711Bの他のひとつが電池セル142の他のひとつの側面1423に接触している。潜熱蓄熱材1711Aは、潜熱蓄熱材1711Bを介して電池セル142に熱的に接続されている。
【0066】
図9に示すように、側面1423の間で、潜熱蓄熱材1711A,1711BをZ方向に交互に配置してもよい。潜熱蓄熱材1711A,1711Bのそれぞれは、両側面1423に接触している。
【0067】
図10に示すように、カプセルに収容された状態で、側面1423の間に配置してもよい。潜熱蓄熱材1711Aと、潜熱蓄熱材1711Bとは、互いに異なるカプセルに収容されている。2種類のカプセルは、共通の容器内に収容されてもよいし、共通のマトリックスに保持されてもよい。結着材などによって一体的に成形されてもよい。2種類のカプセルの配置は、
図10に示すように層状の配置にしてもよいし、分散混合してもよい。
【0068】
図6~
図10では、側面1423の間に、2種類の潜熱蓄熱材1711A,1711Bを配置する例を示した。これに代えて、
図11に示すように、共通の電池セル142が備える側面1423のひとつに潜熱蓄熱材1711Aを配置し、側面1423の他のひとつに潜熱蓄熱材1711Bを配置してもよい。潜熱蓄熱材1711AはX方向において側面1423のひとつに接触し、潜熱蓄熱材1711Bは潜熱蓄熱材1711Aとは反対の側面1423に接触している。この場合、潜熱蓄熱材1711A,1711Bのそれぞれは、片面から吸熱する。
【0069】
図6~
図11では、2種類の潜熱蓄熱材1711A,1711Bを配置する例を示した。これに代えて、
図12に示すように、隣り合う電池セル142の側面1423の間に、潜熱蓄熱材1711Aのみを配置してもよい。
図13に示すように、側面1423の間に、潜熱蓄熱材1711Bのみを配置してもよい。
【0070】
<電池温度と潜熱蓄熱材>
図14は、飛行時における電池温度とPCM1との関係を示す図である。
図15は、飛行時における電池温度とPCM2との関係を示す図である。
図16は、飛行時における電池温度とPCM1およびPCM2との関係を示す図である。
図14~
図16では、潜熱蓄熱材1711の総量を一定としている。
図14は、PCM1の効果を示している。
図15は、PCM2の効果を示している。
図16は、PCM1とPCM2とを組み合わせた効果を示している。
図16では、PCM1,PCM2それぞれの量を総量の1/2としている。
【0071】
図14~
図16では、比較例としてPCM(潜熱蓄熱材1711)なしの場合の電池温度の変化を破線で示している。時刻tm1は離陸開始タイミングを示し、時刻tm2は離陸動作から巡航動作への切り替えにともなう温度変化のタイミングを示している。時刻tm3は巡航動作から着陸動作への切り替えにともなう温度変化のタイミングを示し、時刻tm4は着陸完了タイミングを示している。温度Taは環境温度、温度Tmaxは許容上限温度を示している。温度Tc1はPCM1の相転移温度を示し、温度Tc2はPCM2の相転移温度を示している。温度は、Ta<Tc1<Tc2<Tmaxの関係にある。
【0072】
上記したように、離陸時と着陸時において、電池14には高出力負荷が加わる。よって、PCM(潜熱蓄熱材1711)を用いない場合には、
図14に破線で示すように、電池温度が時刻tm1から時刻tm2までの間と、時刻tm3から時刻tm4までの間において急激に上昇する。時刻tm2から時刻tm3の間は、巡航動作にともなう電池14の発熱と、環境温度Taとの差などによる放熱とのバランスにより、電池温度が変化する。一例として
図14では、離陸時や着陸時に較べて緩やかな傾きで上昇する。電池温度は、着陸時において離陸時よりも高い。
【0073】
PCM1は、離陸にともなう電池14の発熱を吸収する。PCM1(潜熱蓄熱材1711A)を用いる場合、
図14に実線で示すように、電池温度が相転移温度Tc1まで上昇すると、相転移温度Tc1の近傍で保持される。
図14では、離陸時の出力負荷にともなう電池の発熱の吸収によってPCM1の相変化が完了するように、PCM1の量が設定されている。このため、時刻tm2以降において、電池温度が上昇する。電池温度が低く、環境温度Taとの差が比較例よりも小さいため、時刻tm2から時刻tm3の間は、PCMなしの場合よりも大きい傾きで電池温度が上昇する。ただし、巡航時であるため、離陸時や着陸時の傾きよりも小さい。時刻tm3から時刻tm4までの間において、電池温度は比較例と同様に変化(上昇)する。
【0074】
ΔT1は、比較例に対する着陸完了時点での電池温度の差、つまり潜熱蓄熱材1711A(潜熱蓄熱材1711)による温度低下の効果を示している。PCM1(潜熱蓄熱材1711A)を用いた場合、航行中における低温頻度を高めることができる。
【0075】
図15では、比較例としてPCM1(潜熱蓄熱材1711A)のみを用いる場合の電池温度の変化を一点鎖線で示している。PCM2は、着陸にともなう電池14の発熱を吸収する。PCM2(潜熱蓄熱材1711B)を用いる場合、
図15に実線で示すように、電池温度は、相転移温度Tc2に到達するまで破線で示すPCMなしの比較例と同様に変化する。相転移温度Tc2に到達してから時刻tm4、つまり着陸が完了するまでの間において、電池温度は、相転移温度Tc2の近傍で保持される。
【0076】
ΔT2は、環境温度Taとの温度差、つまり放熱による温度低下の効果を示している。PCM2(潜熱蓄熱材1711B)を用いる場合、時刻tm2から時刻tm3の間における環境温度Taとの温度差がPCM1を用いる場合よりも大きい。このため、放熱が進む。上記したΔT1に加えてΔT2の効果を奏するため、着陸完了時点における到達温度をさらに下げることができる。
【0077】
また、航行中の高温頻度が上がるため、以下の効果を奏することができる。寒冷巡航時の保温効果により、電池性能を維持することができる。電解液中のイオン流動性が高まり、イオンの濃度分布の一時的な偏りによる電池14の一時的な劣化を軽減することができる。また、低SOC状態での抵抗増加を軽減することができる。
【0078】
図16では、比較例としてPCM1(潜熱蓄熱材1711A)のみを用いる場合の電池温度の変化を一点鎖線で示し、PCM2(潜熱蓄熱材1711B)のみを用いる場合の電池温度の変化を二点鎖線で示している。PCM1とPCM2を用いる場合、電池温度の変化に両方の特徴が表れる。
図16に実線で示すように、電池温度は、相転移温度Tc1まで上昇すると、相転移温度Tc1の近傍で保持される。ただし、PCM1の量が少ないため、時刻tm2の前にPCM1の相変化が完了し、電池温度が上昇する。つまり、PCM1は、離陸にともなう電池14の発熱の一部を吸収する。
【0079】
これにより、時刻tm2での電池温度はPCM1のみの場合とPCM2のみの場合の中間となる。放熱の効果も中間となり、時刻tm2から時刻tm3までの電池温度の傾きも、PCM1のみの場合とPCM2のみの場合の中間となる。時刻tm3での電池温度は、PCM1のみの場合とPCM2のみの場合の中間となる。PCM2のみの場合よりも遅れて相転移温度Tc2に到達する。ただし、PCM2の量が少ないため、時刻tm4の前にPCM2の相変化が完了し、電池温度が上昇する。PCM2は、着陸にともなう電池14の発熱の一部を吸収する。ΔT2は、PCM2を用いる場合に較べて小さくなる。なお、PCM1,PCM2の比率は1:1に限定されない。PCM1を多くしてもよいし、PCM2を多くしてもよい。
【0080】
<第1実施形態のまとめ>
上記したように、eVTOL10の離陸時と着陸時には電池14に高出力負荷が加わる。本実施形態の冷却装置17では、電池14の発熱が急激に増加する離陸と着陸にフォーカスし、潜熱蓄熱材1711の相転移温度が設定されている。潜熱蓄熱材1711A(PCM1、第1潜熱蓄熱材)の相転移温度は、離陸にともなう電池14の発熱を吸収するように設定されている。潜熱蓄熱材1711B(PCM2、第2潜熱蓄熱材)の相転移温度は、着陸にともなう電池14の発熱を吸収するように設定されている。冷却装置17は、潜熱を利用する潜熱蓄熱材1711として、潜熱蓄熱材1711Aおよび/または潜熱蓄熱材1711Bを含んでいる。
【0081】
高出力負荷時に潜熱利用で効果的に電池14の熱を吸収するため、熱吸収が間に合わずに電池寿命が劣化するのを抑制することができる。つまり、電池14の寿命を延ばすことができる。過昇温異常によって電池14の出力停止となるのを抑制することができる。また、顕熱のみを利用して冷却する構成に較べて軽量化が可能である。
【0082】
特に潜熱蓄熱材1711Aを用いると、
図14に示したように、航行中における低温頻度を高めることができる。よって、電池14の寿命を延ばす効果を高めることができる。潜熱蓄熱材1711Bを用いると、
図15に示したように、高温頻度が上がるため、環境温度Taとの差により放熱が進み、到達温度を下げることができる。よって、所定の到達温度に対して、潜熱蓄熱材1711Bの量を低減し、さらに軽量化を図ることができる。潜熱蓄熱材1711Aおよび潜熱蓄熱材1711Bを用いる場合、
図16に示したように、潜熱蓄熱材1711Aと潜熱蓄熱材1711Bの量(比率)に応じた効果を奏する。つまり、離着陸の負荷(機体種)、巡航負荷(飛行距離)、環境条件(地域、季節)などに応じて、電池寿命や軽量化、さらには安全性等の多面的な観点でも種々のニーズに対する調整が可能である。以上より、潜熱蓄熱材1711A(PCM1)と潜熱蓄熱材1711B(PCM2)の選択によって、eVTOL10の種々のニーズに対応することができる。
【0083】
電池14から吸熱するための蓄熱材171の総蓄熱量は、飛行開始時点の蓄熱量、飛行時の出力負荷、および電池14の放熱特性に基づいて、飛行時の電池温度が使用上限温度以下となるように設定するとよい。これにより、飛行中の電池冷却を、蓄熱材171のみで完遂することができる。よって、軽量化を図ることができる。
【0084】
潜熱蓄熱材1711の量は、飛行時の出力負荷にともなう電池14の発熱の吸収によって、潜熱蓄熱材1711の相変化が完了するように設定してもよい。潜熱蓄熱材1711の余剰分をなくすことで、軽量化を図ることができる。また、潜熱蓄熱材1711がすべて相変化すると、電池の温度勾配(傾き)が急になる。温度変化によって、潜熱蓄熱材1711の残蓄熱量がゼロとなったことを把握することができる。これにより、たとえば出力制限をかけるなどの処置が可能となる。
【0085】
潜熱蓄熱材1711の量は、飛行時の出力負荷にともなう電池14の発熱の吸収によって、潜熱蓄熱材1711に相変化の未完了部分が残存するように設定してもよい。離陸時の高出力負荷による電池14の急な発熱に対して吸収が追い付かず、電池14において温度ムラ(温度ばらつき)が生じる、もしくは温度ムラが拡大するのを抑制することができる。その結果、地上での充電開始を早めることが可能となる。また、潜熱蓄熱材1711の一部を固体のままで残存させることで、過冷却の抑制効果を高めることができる。
【0086】
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、蓄熱材として潜熱蓄熱材を備えた。これに代えて、蓄熱材として潜熱蓄熱材とともに流動性蓄熱材を備えてもよい。
【0087】
図17は、本実施形態に係る冷却装置17を示している。
図17は、
図2に対応している。
図17は、冷却装置17と電池14との関係を示している。
図17に示すように、冷却装置17は、蓄熱材171として、潜熱蓄熱材(PCM)1711と流動性蓄熱材(FHS)1712を含んでいる。流動性蓄熱材1712は、流動性を有する蓄熱材であり、潜熱蓄熱材1711と熱的に接続されている。
【0088】
流動性蓄熱材1712は、顕熱を利用して、潜熱蓄熱材1711から熱を吸収する。流動性蓄熱材1712は、電池14から熱を吸収してもよい。流動性蓄熱材1712としては、気体、液体など、任意の適切な流体を用いることができる。たとえば、水、LLCが添加された冷却水、冷媒、油、空気などを用いてもよい。LLCは、Long Life Coolantの略称である。
【0089】
潜熱蓄熱材1711を備えた冷却装置17を高稼働で繰り返し利用するためには、電池セル142から吸熱した潜熱蓄熱材1711の再生の効率化が不可欠となる。再生とは、吸熱により相転移した潜熱蓄熱材1711を相転移前の状態に戻す、たとえば液体から固体に戻すことである。そのため、潜熱蓄熱材1711と熱接続して潜熱蓄熱材1711から積極的に吸熱する再生機能の組み込みが必要となる。
【0090】
潜熱蓄熱材1711の再生のために、
図17に示すように、潜熱蓄熱材1711と流動性蓄熱材1712とを個別に設けてもよい。流動性蓄熱材1712の顕熱を利用して潜熱蓄熱材1711から吸熱し、潜熱蓄熱材1711を再生することができる。流動性蓄熱材1712は、潜熱蓄熱材1711の再生により、潜熱蓄熱材1711による電池セル142からの吸熱を補助する。流動性蓄熱材1712は、直接的に、または、潜熱蓄熱材1711を介して間接的に電池セル142の熱を吸収する。冷却装置17は、潜熱蓄熱材1711と流動性蓄熱材1712とによるハイブリッド冷却を行う。
【0091】
潜熱蓄熱材1711と流動性蓄熱材1712とを個別に設ける構成として、先行実施形態に示した構成(
図6~
図9参照)と同様の構成を採用してもよい。たとえば隣り合う電池セル142の側面1423の間に、潜熱蓄熱材1711と流動性蓄熱材1712を配置してもよい。潜熱蓄熱材1711と流動性蓄熱材1712とを共通の側面1423に対して配置してもよいし、互いに異なる側面1423に対して配置してもよい。
【0092】
たとえば
図18に示すように、側面1423の間に、潜熱蓄熱材1711および流動性蓄熱材1712を配置してもよい。互いに対向する側面1423のそれぞれに潜熱蓄熱材1711が配置され、潜熱蓄熱材1711の間に流動性蓄熱材1712が配置されている。潜熱蓄熱材1711の各層は、潜熱蓄熱材(PCM1)1711Aのみで構成されてもよいし、潜熱蓄熱材(PCM2)1711Bのみで構成されてもよい。潜熱蓄熱材1711A,1711Bの両方を備えて構成されてもよい。
【0093】
図19に示すように、側面1423の間で、潜熱蓄熱材1711と流動性蓄熱材1712とをZ方向に交互に配置してもよい。潜熱蓄熱材1711は、潜熱蓄熱材(PCM1)1711Aのみで構成されてもよいし、潜熱蓄熱材(PCM2)1711Bのみで構成されてもよい。潜熱蓄熱材1711A,1711Bの両方を備えて構成されてもよい。
【0094】
図20は、冷却装置17の別例を示している。
図20は、
図17に対応している。潜熱蓄熱材1711の再生のために、
図20に示すように、潜熱蓄熱材1711と流動性蓄熱材1712とを混合した混合蓄熱材(MHS)1713を用いてもよい。混合蓄熱材1713は、流動性蓄熱材1712に対して潜熱蓄熱材1711を分散させることで、流動性を有する混合の蓄熱材である。固体から液体に相転移する潜熱蓄熱材1711の場合、
図21に示すように、カプセルに充填された潜熱蓄熱材1711を流動性蓄熱材1712に対して分散混合してもよい。
図21では、側面1423の間に、混合蓄熱材1713を配置している。固体から固体に相転移する潜熱蓄熱材1711の場合、粉体状の潜熱蓄熱材1711を流動性蓄熱材1712に対して分散混合してもよい。
【0095】
流動性蓄熱材1712や混合蓄熱材1713は、所定の容器内に封入されてもよい。
図22に示すように、冷却装置17が流動機構172を備え、流動機構172によって流動性蓄熱材1712および/または混合蓄熱材1713を流動させてもよい。流動性蓄熱材1712および/または混合蓄熱材1713を、流動性媒体と称することがある。流動機構172は、冷却器1721、ポンプ(P)1722、および配管1723を有している。冷却器1721は、流動性媒体が充填され、電池14に熱的に接続されている。冷却器1721として、たとえば流路を有する金属製の容器を用いてもよいし、流路を有する金属製の冷却板を用いてもよい。ポンプ1722は、流動性媒体の流動を制御する。ポンプ1722として、たとえば流動性媒体を循環させる循環ポンプを用いてもよいし、流動性媒体を往復運動させる往復ポンプを用いてもよい。配管1723は、冷却器1721とポンプ1722とをつないでいる。流動性媒体は、配管1723内も流動する。一例として
図21では、流動性媒体を循環させる構成を示している。
【0096】
ポンプ1722の配置は、特に限定されない。冷却装置17の内部でもよいし、冷却装置17の外部でもよい。冷却装置17とは別の装置のポンプを兼用してもよい。
図22では、流動性媒体として流動性蓄熱材1712の例を示したが、これに限定されない。流動機構172を
図20に示す構成に適用してもよい。つまり、流動機構172により混合蓄熱材1713を流動させてもよい。その他の構成については、先行実施形態に記載の構成と同様である。
【0097】
<第2実施形態のまとめ>
本実施形態によれば、先行実施実施形態に記載の効果に加えて、以下の効果を奏する。本実施形態の蓄熱材171は、潜熱蓄熱材1711に加えて、流動性蓄熱材1712を含んでいる。流動性蓄熱材1712は、潜熱蓄熱材1711に熱的に接続されている。このため、流動性蓄熱材1712の顕熱を利用して、潜熱蓄熱材1711から吸熱し、潜熱蓄熱材1711を再生することができる。よって、潜熱による吸熱の効果を高めることができる。たとえば、相転移温度近傍に保持する期間を長くすることができる。たとえば、相転移温度近傍に保持するために必要な潜熱蓄熱材1711の量を減らすことができる。また、流動性蓄熱材1712の顕熱を利用して、潜熱では吸収できない巡航にともなう電池14の発熱を吸収することができる。つまり、巡航時における吸熱を強化することができる。
【0098】
混合蓄熱材1713を用いる場合、流動性蓄熱材1712とともに潜熱蓄熱材1711が流動する。よって、自然対流や強制流動により、潜熱蓄熱材1711を含む複数種類の蓄熱材171の蓄熱状態を均質化することができる。
【0099】
冷却装置17は、上記したように流動機構172を備えてもよい。流動機構172を備えることで、飛行中に流動性媒体を流動させることができる。よって、流動性媒体が流動性蓄熱材1712の場合、流動性蓄熱材1712の蓄熱状態の偏りを解消し、潜熱蓄熱材1711や電池14からの吸熱能力を損なうことなく使い切ることができる。流動性媒体が混合蓄熱材1713の場合、潜熱蓄熱材1711の偏析などによる蓄熱量の偏りを抑制し、蓄熱量を均質化することができる。よって、電池14からの吸熱能力を損なうことなく使い切ることができる。
【0100】
また、配管1723内の流動性媒体が蓄熱リザーブとして機能するため、電池14の最高到達温度を下げることができる。電池内部に較べて放熱性の良好な配管1723内において、流動性媒体の放熱を促進させることができるため、最高到達温度を下げることができる。なお、流動機構172は、配管1723とは別に、流動性媒体のリザーバを有してもよい。
【0101】
本実施形態に記載の構成は、先行実施形態に示した構成のいずれとも組み合わせが可能である。
【0102】
(第3実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、冷却装置が蓄熱材を備えた。これに代えて、冷却装置が、蓄熱材とともに熱伝導補助部材を備えてもよい。
【0103】
潜熱蓄熱材1711は、熱容量増加に非常に有効である。しかしながら、熱伝導率が低いため、電池14の急な発熱に対する吸収が追い付かず、温度ムラを生じる虞がある。特に固体と液体との間で相変化する潜熱蓄熱材1711において、温度ムラが生じる虞がある。そこで、離着陸時のように所定温度域で熱を急速に吸収したい用途において、潜熱蓄熱材1711に対する熱伝導性補助機能を付与するとよい。これにより、潜熱蓄熱材1711の吸熱応答性を向上し、大きな潜熱を有効に生かすことができる。潜熱蓄熱材1711の吸熱応答性が高まるため、離着陸時の熱を急速に吸収することができる。
図23は、電池温度と吸熱量との関係を示す図である。破線は熱伝導性補助機能がない場合を示し、実線は熱伝導性補助機能がある場合を示している。白抜き矢印で示すように、熱伝導性補助機能を付与することで、潜熱蓄熱材1711の吸熱応答性が高まる。
【0104】
本実施形態の冷却装置17は、潜熱蓄熱材1711を含む蓄熱材171に加えて、熱伝導補助部材を備えている。熱伝導補助部材は、蓄熱材171よりも熱伝導性に優れる。熱伝導補助部材の熱伝導率は、蓄熱材171の熱伝導率よりも高い。熱伝導補助部材は、蓄熱材171に接触配置されている。熱伝導性に優れる材料として、たとえばアルミニウムなどの金属系材料を用いてもよいし、炭素系材料を用いてもよい。アルミナなどのセラミックス系材料を用いてもよい。熱伝導補助部材と蓄熱材171との接触面積が大きいほど、蓄熱材171の吸熱応答性、特に潜熱蓄熱材1711の吸熱応答性を高めることができる。熱伝導補助部材により、潜熱蓄熱材1711を含む混合蓄熱材1713の吸熱応答性を高めることができる。熱伝導補助部材により、流動性蓄熱材1712のうち、水などの熱伝導性の低い流動性蓄熱材の吸熱応答性を高めることができる。
【0105】
熱伝導補助部材としては種々の態様が可能である。たとえば
図24に示すように、熱伝導補助部材173として熱伝導性フィラー1731を用い、熱伝導性フィラー1731を潜熱蓄熱材1711に対して混合分散してもよい。熱伝導性フィラー1731は、たとえば金属系フィラーや炭素系フィラーである。
図25に示すように、熱伝導補助部材173として、熱伝導性に優れる粒子1732を含むカプセル1733を用いてもよい。カプセル1733の樹脂壁が粒子1732を含んでいる。
図24および
図25は、熱伝導補助部材の一例を示す図である。
【0106】
図示を省略するが、蓄熱材171を収容する容器(冷却部材)の内部にフィン、リブ、梁などを設けて熱伝導性を高め、熱伝導補助部材としてもよい。熱伝導補助部材として、熱伝導性に優れる材料を用いて形成されたマトリックスを用い、マトリックス内に潜熱蓄熱材を保持してもよい。熱伝導補助部材は、上記した例の組み合わせでもよい。その他の構成は、先行実施形態に示した構成と同様である。
【0107】
<第3実施形態のまとめ>
本実施形態によれば、冷却装置17が、蓄熱材171よりも熱伝導性に優れており、蓄熱材171に接触配置された熱伝導補助部材173を備えている。これにより、蓄熱材171の熱伝導率が低くても、吸熱応答性を高めることができる。よって、離陸時や着陸時の大きな発熱を、急速かつ温度ばらつきを抑えて吸収することができる。つまり、離陸や着陸にともなう電池14の発熱を吸収し、電池寿命を延ばす効果を高めることができる。熱伝導補助部材173を備えることで、複数種類の蓄熱材171を層状化、混合しても、熱応答性を損なうことなく吸熱性能を発揮することができる。
【0108】
熱伝導補助部材173として熱伝導性フィラー1731を用い、熱伝導性フィラー1731が蓄熱材171に分散混合される構成としてもよい。材料レベルでの分散混合によって、蓄熱材171と熱伝導性フィラー1731(熱伝導補助部材173)の接触面積をさらに増やすことができる。よって、熱応答性をさらに高めることができる。たとえば固相間で相変化する潜熱蓄熱材1711の粒子に対して熱伝導性フィラー1731を分散混合し、成形してもよい。固相と液相との間で相変化する潜熱蓄熱材1711に対して熱伝導性フィラー1731を分散混合し、カプセルに収容してもよい。
【0109】
熱伝導補助部材173としてカプセル1733を用い、潜熱蓄熱材1711がカプセル1733に収容される構成としてもよい。カプセル1733と機能統合することにより、必要体積の増加を抑制しつつ、熱応答性を高めることができる。
【0110】
本実施形態に記載の構成は、先行実施形態に示した構成のいずれとも組み合わせが可能である。
【0111】
(第4実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、電池セルに対して潜熱蓄熱材を配置した。これに付加して、吸熱面積当たりの潜熱蓄熱量に差を設けて配置してもよい。
【0112】
上記したように、離陸や着陸にともなって電池14の温度は急激に上昇する。電池14の温度は、任意のひとつの電池セル142において差が生じる。電池組立体である電池モジュール141において差が生じる。このように高出力負荷によって、電池14には温度分布が生じる。本実施形態では、離着陸にともなって電池モジュール141の内部に生じる温度差を解消するように、電池モジュール141に対して吸熱面積当たりの潜熱蓄熱量に差を設けて配置する。吸熱面積当たりの潜熱蓄熱量は、潜熱蓄熱材1711の量によって調整してもよいし、潜熱蓄熱材1711の種類によって調整してもよい。潜熱蓄熱材1711の量と種類の両方によって調整してもよい。
【0113】
上記したように、離陸飛行時や着陸飛行時の高出力負荷により、電池セル142の電極端子142P,142N付近において電流が集中する。つまり、電極端子142P,142N付近が高温になりやすい。そこで、電池セル142の側面1423の第1位置における潜熱蓄熱材1711の量が、第1位置よりも電極端子142P,142Nから離れた第2位置における潜熱蓄熱材1711の量よりも多くなるよう、潜熱蓄熱材1711を配置してもよい。
【0114】
たとえば
図26に示すように、隣り合う電池セル142の側面1423の間に配置される潜熱蓄熱材1711の体積を、Z方向における電極端子142P,142Nとの距離に応じて異ならせてもよい。
図26では、充填率を一定として潜熱蓄熱材1711の体積を4段階(4レベル)で設定しており、電極端子142P,142Nに近いほど潜熱蓄熱材1711の体積が大きい。端面1421に近いほど潜熱蓄熱材1711の体積が大きく、端面1422に近いほど潜熱蓄熱材1711の体積が小さい。
【0115】
図27に示すように、側面1423の間に配置される潜熱蓄熱材1711の充填率を、Z方向における電極端子142P,142Nとの距離に応じて異ならせてもよい。
図26では、体積を一定として潜熱蓄熱材1711の充填率を4段階で設定しており、電極端子142P,142Nに近いほど潜熱蓄熱材1711の充填率が高い。充填率は、潜熱蓄熱材1711Hがもっとも高く、潜熱蓄熱材1711H>潜熱蓄熱材1711M2>潜熱蓄熱材1711M1>潜熱蓄熱材1711Lの関係を満たしている。端面1421に近いほど潜熱蓄熱材1711の充填率が高く、端面1422に近いほど潜熱蓄熱材1711の充填率が低い。
【0116】
図28に示すように、カプセルに充填された潜熱蓄熱材1711を含む混合蓄熱材1713において、潜熱蓄熱材1711の充填率を、Z方向における電極端子142P,142Nとの距離に応じて異ならせてもよい。
図28では、流動性蓄熱材1712中における潜熱蓄熱材1711の充填率を4段階で設定しており、電極端子142P,142Nに近いほど潜熱蓄熱材1711の充填率が高い。電極端子142P,142Nに近いほど単位体積当たりのカプセルの数が多い。端面1421に近いほど潜熱蓄熱材1711の充填率が高く、端面1422に近いほど潜熱蓄熱材1711の充填率が低い。
図28に示すように、流動性蓄熱材1712を保持する容器において、流動性蓄熱材1712の収容空間を4つに区画してもよい。
【0117】
図26~
図28では、端面1421側に電極端子142P,142Nを有する例を示した。端面1421,1422それぞれに電極端子142P,142Nを有する構成においても、同様の構成を採用することができる。たとえば
図29に示すように、潜熱蓄熱材1711の体積を、Z方向における電極端子142P,142Nとの距離に応じて異ならせてもよい。
図29では、潜熱蓄熱材1711を一定として潜熱蓄熱材1711の体積を
図26同様に4段階で設定している。電極端子142P,142Nに近いほど潜熱蓄熱材1711の体積が大きい。端面1421,1422に近いほど潜熱蓄熱材1711の体積が大きく、Z方向における潜熱蓄熱材1711の中心位置に近いほど潜熱蓄熱材1711の体積が小さい。
【0118】
図30に示すように、潜熱蓄熱材1711の充填率を、Z方向における電極端子142P,142Nとの距離に応じて異ならせてもよい。
図30では、体積を一定として潜熱蓄熱材1711の充填率を
図27同様に4段階で設定している。電極端子142P,142Nに近いほど潜熱蓄熱材1711の充填率が高い。端面1421,1422に近いほど潜熱蓄熱材1711の充填率が高く、Z方向における潜熱蓄熱材1711の中心位置に近いほど潜熱蓄熱材1711の充填率が低い。
【0119】
図31に示すように、カプセルに充填された潜熱蓄熱材1711を含む混合蓄熱材1713において、潜熱蓄熱材1711の充填率を、Z方向における電極端子142P,142Nとの距離に応じて異ならせてもよい。
図31では、流動性蓄熱材1712中における潜熱蓄熱材1711の充填率を
図28同様に4段階で設定している。電極端子142P,142Nに近いほど潜熱蓄熱材1711の充填率が高い。端面1421,1422に近いほど潜熱蓄熱材1711の充填率が高く、Z方向における潜熱蓄熱材1711の中心位置に近いほど潜熱蓄熱材1711の充填率が低い。
【0120】
図26~
図31は、
図4に対応する図である。潜熱蓄熱材1711の体積や充填率を4段階で異ならせる例を示したが、これに限定されない。多段階であればよく、2段階や3段階としてもよいし、5段階以上としてもよい。体積や充填率は、電極端子142P,142Nとの距離に応じて連続的に変化してもよい。
図26、
図27、
図30、および
図31に示す例において、先行実施形態に示したように流動性蓄熱材1712を配置してもよい。流動性蓄熱材1712は、側面1423の間の空き空間に配置してもよいし、他の側面1423に配置してもよい。潜熱蓄熱材1711を2層に分割し、その間に流動性蓄熱材1712を配置してもよい。
図26~
図31では、隣り合う電池セル142の側面1423の間に配置される潜熱蓄熱材1711の例を示したが、他の側面1423と対向しない位置の側面1423において、同様に体積や充填率を調整してもよい。
【0121】
複数の電池セル142を備えて構成される電池モジュール141においては、複数の電池セル142の配置領域の外周側から放熱が進む。よって、離陸飛行時や着陸飛行時の高出力負荷により、複数の電池セル142の配置領域の中心付近において高温になりやすい。そこで、電池モジュール141における複数の電池セル142の配置領域において、第1位置に配置された潜熱蓄熱材1711の量が、第1位置よりも配置領域の中心から離れた第2位置に配置された潜熱蓄熱材1711の量よりも多くなるよう、潜熱蓄熱材1711を配置してもよい。配置領域の中心とは、たとえば複数の電池セル142の積層配置において積層方向の中心であり、たとえば複数の電池セル142の千鳥配置において平面視における複数の電池セル142の中心位置である。
【0122】
たとえば
図32に示すように、潜熱蓄熱材1711と電池セル142とが交互に配置された積層体を備える電池モジュール141において、潜熱蓄熱材1711の体積を、積層方向の中心からの距離に応じて異ならせてもよい。
図32では、充填率を一定として潜熱蓄熱材1711の体積を4段階(4レベル)で設定しており、積層方向における複数の電池セル142の中心に近いほど潜熱蓄熱材1711の体積が大きい。
【0123】
図33に示すように、潜熱蓄熱材1711と電池セル142とが交互に配置された積層体を備える電池モジュール141において、潜熱蓄熱材1711の充填率を、積層方向の中心からの距離に応じて異ならせてもよい。
図33では、体積を一定として潜熱蓄熱材1711の充填率を5段階(5レベル)で設定しており、積層方向における複数の電池セル142の中心に近いほど潜熱蓄熱材1711の充填率が高い。充填率は、潜熱蓄熱材1711Hがもっとも高く、潜熱蓄熱材1711H>潜熱蓄熱材1711M3>潜熱蓄熱材1711M2>潜熱蓄熱材1711M1>潜熱蓄熱材1711Lの関係を満たしている。
【0124】
潜熱蓄熱材1711の体積や充填率の段数は、
図32および
図33に示した例に限定されない。体積や充填率は、中心からの距離に応じて連続的に変化してもよい。
図32および
図33に示す例において、先行実施形態に示したように流動性蓄熱材1712を配置してもよい。
【0125】
<第4実施形態のまとめ>
本実施形態によれば、電池モジュール141(電池組立体)の内部に生じる温度差を解消するように、潜熱蓄熱材1711を、電池モジュール141に対して吸熱面積当たりの潜熱蓄熱量に差を設けて電池モジュール141に配置する。これにより、離陸飛行時と着陸飛行時の高出力負荷によって顕在化する電池セル142内や電池モジュール141内の温度分布を均一化することができる。よって、局所的な過昇温を防ぎ、電池劣化の加速を抑制することができる。
【0126】
潜熱蓄熱材の量、たとえば体積や充填率に差を設けることで、吸熱面積当たりの潜熱蓄熱量に差を設けてもよい。潜熱蓄熱材1711の種類を変えることで、吸熱面積当たりの潜熱蓄熱量に差を設けてもよい。
【0127】
電池セル142の側面1423に配置される潜熱蓄熱材1711の量を、側面1423の第1位置において、第1位置よりも電極端子142P,142Nから離れた第2位置より多くしてもよい。離陸飛行時と着陸飛行時の高出力負荷によって局部的に温度上昇しやすい電池セル142の電極端子142P,142Nに近い側面部の潜熱蓄熱量を増やすことで、温度分布を均一化しやすくできる。
【0128】
電池モジュール141における複数の電池セル142の配置領域において、第1位置に配置される潜熱蓄熱材1711の量を、第1位置よりも配置領域の中心から離れた第2位置に配置される潜熱蓄熱材1711の量より多くしてもよい。離陸飛行時と着陸飛行時の高出力負荷によって局部的に温度上昇しやすい、電池セル142の配置領域の中心に近い潜熱蓄熱量を増やすことで、温度分布を均一化しやすくできる。
【0129】
本実施形態に記載の構成は、先行実施形態に示した構成のいずれとも組み合わせが可能である。
【0130】
(第5実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、機内冷却装置により電池を冷却する構成を示した。これに付加して、機外冷却装置による冷却が可能な構成としてもよい。
【0131】
図34は、本実施形態に係る冷却装置17および冷却システム50を示している。
図34は、
図22に対応している。
図34に示すように、冷却装置17は、流動性媒体である流動性蓄熱材1712、地上において機外冷却装置(EC)40に接続するための継手18を備えている。以下では、冷却装置17を機内冷却装置と示すことがある。継手18は、機内冷却装置17の流動機構172と機外冷却装置40とを接続する。継手18を介して冷却装置17と機外冷却装置40の配管同士がつながる。継手18は、冷却装置17と別体でもよい。継手18は、機体と一体化されてもよい。
【0132】
機外冷却装置40は、図示しない熱交換部、ポンプ、配管などを備えている。機外冷却装置40は、地上において継手18に接続される。機外冷却装置40は、継手18を介して流動性蓄熱材1712を流動させる。機外冷却装置40は、たとえば流動性蓄熱材1712を循環させてもよい。機外冷却装置40における熱交換により、冷却された流動性蓄熱材1712が機内に戻され、潜熱蓄熱材1711および電池14も冷却される。冷却システム50は、eVTOL10の機内に配置された機内冷却装置17と、機外冷却装置40を備えている。電池14を冷却する冷却システム50は、機能の一部を機内に配置し、機能の他の一部を機外に配置している。
【0133】
図35は、冷却システムと、その他の装置との関係を示している。BMS16は、電池モジュール141から、電池セル142の情報を取得する。
図35に示すように、BMS16が、冷却装置17を監視する機能、冷却装置17(流動機構172)を制御する機能を有してもよい。冷却装置17を監視する機能、冷却装置17(流動機構172)を制御する機能を、BMS16とは別に設けてもよい。
【0134】
運航管理装置(OCD)60は、BMS16、機外冷却装置40、充電装置(CD)70と通信可能に接続されている。運航管理装置60の機能の一部を機内に配置し、機能の他の一部を機外に配置してもよい。上記したように、運航管理装置60の機能を機内のみに配置してもよいし、機能を機外のみに配置してもよい。BMS16、運航管理装置60、および冷却装置17の監視、制御については、適宜機能を分担してもよい。機外冷却装置40と充電装置70は
図35に示すように個別に設けてもよいし、一体化してもよい。機外冷却装置40は、充電装置70による電池14の充電タイミングにおいて流動性蓄熱材1712,潜熱蓄熱材1711、および電池14を冷却してもよい。
図35に示す破線は、電力ラインを示している。
【0135】
図34および
図35では、流動性媒体として流動性蓄熱材1712の例を示したが、これに限定されない。混合蓄熱材1713を、継手18を備える冷却装置17および冷却システム50に適用してもよい。
【0136】
<第5実施形態のまとめ>
本実施形態によれば、冷却装置17が、流動性媒体を地上において機外冷却装置40に接続するための継手18を備えている。また冷却装置17は、機外冷却装置40とともに冷却システム50を構築する。機外冷却装置40は、流動性媒体を流動させて蓄熱材171および電池14を冷却する。これにより、電池温度と潜熱蓄熱材1711の蓄熱状態を、次のフライトが可能な状態に調整することができる。機外冷却装置40による強制冷却によって、電池セル142と蓄熱された潜熱蓄熱材1711から、短時間で吸熱することができる。
【0137】
<変形例>
機外冷却装置40を、蓄熱材171として流動性蓄熱材1712を含む冷却装置17に接続する例を示したが、これに限定されない。たとえば
図36に示すように、蓄熱材171として潜熱蓄熱材1711のみを含む冷却装置17に接続してもよい。冷却装置17は、たとえば冷却器1721と、冷却器1721と継手18とをつなぐ配管1723を有している。機外冷却装置40は、継手18、機内の配管1723、および冷却器1721を介して流動性蓄熱材1712を流動させ、潜熱蓄熱材1711および電池14を冷却する。
【0138】
図示を省略するが、流動性蓄熱材1712を含み、流動性蓄熱材1712を流動させるポンプ1722を備えない構成の冷却装置17に機外冷却装置40を接続してもよい。
【0139】
本実施形態に記載の構成は、先行実施形態に示した構成のいずれとも組み合わせが可能である。
【0140】
(他の実施形態)
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
【0141】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0142】
ある要素または層が「上にある」、「連結されている」、「接続されている」または「結合されている」と言及されている場合、それは、他の要素、または他の層に対して、直接的に上に、連結され、接続され、または結合されていることがあり、さらに、介在要素または介在層が存在していることがある。対照的に、ある要素が別の要素または層に「直接的に上に」、「直接的に連結されている」、「直接的に接続されている」または「直接的に結合されている」と言及されている場合、介在要素または介在層は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の言葉は、同様のやり方で(例えば、「間に」対「直接的に間に」、「隣接する」対「直接的に隣接する」など)解釈されるべきである。この明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙されたひとつまたは複数の項目に関する任意の組み合わせ、およびすべての組み合わせを含む。
【0143】
本開示に示す種々のフローチャートは何れも一例であって、フローチャートを構成するステップの数や、処理の実行順は適宜変更可能である。また、本開示に記載の装置、システム、並びにそれらの手法は、コンピュータプログラムにより具体化されたひとつ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路を用いて実現されてもよい。さらに、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサとひとつ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成されたひとつ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。
【0144】
たとえばプロセッサ201が備える機能の一部または全部はハードウェアとして実現されても良い。或る機能をハードウェアとして実現する態様には、ひとつまたは複数のICなどを用いて実現する態様が含まれる。プロセッサ(演算コア)としては、CPUや、MPU、GPU、DFPなどを採用可能である。CPUは、Central Processing Unitの略称である。MPUは、Micro-Processing Unitの略称である。GPUは、Graphics Processing Unitの略称である。DFPは、Data Flow Processorの略称である。
【0145】
プロセッサ201が備える機能の一部または全部は、複数種類の演算処理装置を組み合わせて実現されていてもよい。プロセッサ201が備える機能の一部または全部は、SoC、ASIC、FPGAなどを用いて実現されていても良い。SoCは、System on Chipの略称である。ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略称である。FPGAは、Field-Programmable Gate Arrayの略称である。プロセッサ311についても同様である。
【0146】
また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に記憶されていてもよい。プログラムの保存媒体としては、HDD、SSD、フラッシュメモリ等を採用可能である。HDDは、Hard-disk Driveの略称である。SSDは、Solid State Driveの略称である。コンピュータを制御装置、制御システムとして機能させるためのプログラム、当該プログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体等の形態も、本開示の範囲に含まれる。
【0147】
(技術的思想の開示)
この明細書は、以下に列挙する複数の項に記載された複数の技術的思想を開示している。いくつかの項は、後続の項において先行する項を択一的に引用する多項従属形式(a multiple dependent form)により記載されている場合がある。さらに、いくつかの項は、他の多項従属形式の項を引用する多項従属形式(a multiple dependent form referring to another multiple dependent form)により記載されている場合がある。これらの多項従属形式で記載された項は、複数の技術的思想を定義している。
【0148】
<技術的思想1>
電動飛行体(10)に搭載され、前記電動飛行体の電池(14)を冷却する冷却装置であって、
前記電池から吸熱する1種類以上の蓄熱材(171)を備え、
前記蓄熱材は、潜熱蓄熱材(1711)として、離陸にともなう前記電池の発熱と着陸にともなう前記電池の発熱のうち、前記離陸にともなう前記電池の発熱を吸収するように相転移温度が設定された第1潜熱蓄熱材(1711A)、および/または、前記着陸にともなう前記電池の発熱を吸収するように相転移温度が設定された第2潜熱蓄熱材(1711B)を含む、冷却装置。
【0149】
<技術的思想2>
前記蓄熱材は、前記潜熱蓄熱材と熱的に接続された流動性蓄熱材(1712)を含む、技術的思想1に記載の冷却装置。
【0150】
<技術的思想3>
前記電動飛行体の機内に、前記流動性蓄熱材、および/または、前記潜熱蓄熱材と前記流動性蓄熱材とを混合した混合蓄熱材である流動性媒体を流動させる機構(172)を備え、
前記機構は、前記流動性媒体が充填され、前記電池に熱的に接続された冷却器(1721)と、前記流動性媒体の流動を制御するポンプ(1722)と、前記冷却器と前記ポンプとをつなぐ配管(1723)と、を有する、技術的思想2に記載の冷却装置。
【0151】
<技術的思想4>
前記流動性蓄熱材、および/または、前記潜熱蓄熱材と前記流動性蓄熱材とを混合した混合蓄熱材である流動性媒体を、地上において機外冷却装置に接続するための継手(18)を備える、技術的思想2または技術的思想3に記載の冷却装置。
【0152】
<技術的思想5>
前記蓄熱材よりも熱伝導性に優れており、前記蓄熱材に接触配置された熱伝導補助部材(173)を備える、技術的思想1~4いずれかひとつに記載の冷却装置。
【0153】
<技術的思想6>
前記蓄熱材と前記熱伝導補助部材とが分散混合されている、技術的思想5に記載の冷却装置。
【0154】
<技術的思想7>
前記熱伝導補助部材は、カプセルであり、
前記潜熱蓄熱材は、前記カプセルに収容されている、技術的思想5に記載の冷却装置。
【0155】
<技術的思想8>
前記電池から吸熱するための前記蓄熱材の総蓄熱量は、飛行開始時点の蓄熱量、飛行時の出力負荷、および前記電池の放熱特性に基づいて、飛行時の電池温度が使用上限温度以下となるように設定される、技術的思想1~7いずれかひとつに記載の冷却装置。
【0156】
<技術的思想9>
前記潜熱蓄熱材の量は、飛行時の出力負荷にともなう前記電池の発熱の吸収によって、前記潜熱蓄熱材の相変化が完了するように設定される、技術的思想8に記載の冷却装置。
【0157】
<技術的思想10>
前記潜熱蓄熱材の量は、飛行時の出力負荷にともなう前記電池の発熱の吸収によって、前記潜熱蓄熱材に相変化の未完了部分が残存するように設定される、技術的思想8に記載の冷却装置。
【0158】
<技術的思想11>
前記電池は、複数の電池セル(142)を備えて構成される電池組立体(141)を含んでおり、
前記潜熱蓄熱材は、前記電池組立体の内部に生じる温度差を解消するように、前記電池組立体に対して吸熱面積当たりの潜熱蓄熱量に差を設けて配置される、技術的思想1~10いずれかひとつに記載の冷却装置。
【0159】
<技術的思想12>
前記潜熱蓄熱材は、前記電池セルの側面に配置され、
前記電池セルは、前記側面とは異なる面に電極端子(142P,142N)を有し、
前記側面の第1位置における前記潜熱蓄熱材の量が、前記第1位置よりも前記電極端子から離れた第2位置における前記潜熱蓄熱材の量よりも多い、技術的思想11に記載の冷却装置。
【0160】
<技術的思想13>
前記電池組立体における複数の前記電池セルの配置領域において、第1位置に配置された前記潜熱蓄熱材の量が、前記第1位置よりも前記配置領域の中心から離れた第2位置に配置された前記潜熱蓄熱材の量よりも多い、技術的思想11に記載の冷却装置。
【符号の説明】
【0161】
10…eVTOL、11…機体本体、12…固定翼、121…主翼、122…尾翼、13…回転翼、131…ブレード、132…シャフト、14…電池、141…電池モジュール、142…電池セル、142N,142P…電極端子、1421,1422…端面、1423…側面、15…EPU、16…BMS、17…冷却装置(機内冷却装置)、171…蓄熱材、1711,1711A,1711B…潜熱蓄熱材、1712…流動性蓄熱材、1713…混合蓄熱材、172…流動機構、1721…冷却器、1722…ポンプ、1723…配管、173…熱伝導補助部材、1731…熱伝導フィラー、1732…粒子、1733…カプセル、18…継手、20…ECU、201…プロセッサ、202…メモリ、203…ストレージ、203P…プログラム、204…通信回路、30…地上局、31…サーバ、311…プロセッサ、312…メモリ、313…ストレージ、313P…プログラム、314…通信回路、40…機外冷却装置、50…冷却システム、60…運航管理装置、70…充電装置