IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特開-表示装置 図1
  • 特開-表示装置 図2
  • 特開-表示装置 図3
  • 特開-表示装置 図4
  • 特開-表示装置 図5
  • 特開-表示装置 図6
  • 特開-表示装置 図7
  • 特開-表示装置 図8
  • 特開-表示装置 図9
  • 特開-表示装置 図10
  • 特開-表示装置 図11
  • 特開-表示装置 図12
  • 特開-表示装置 図13
  • 特開-表示装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156502
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 5/10 20060101AFI20241029BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20241029BHJP
   G09G 5/37 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
G09G5/10 B
G09G5/00 550C
G09G5/37 320
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071016
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 鳴暁
【テーマコード(参考)】
5C182
【Fターム(参考)】
5C182AA02
5C182AA03
5C182AB15
5C182AB25
5C182AC02
5C182AC03
5C182BA45
5C182BA56
5C182BC26
5C182CA01
5C182CA02
5C182CB44
5C182CC24
5C182CC25
(57)【要約】
【課題】消費電力の増大を抑制しつつ、複数のユーザに対してディスプレイの視野角特性および光の反射特性に起因した違和感を覚えさせない画像表示が可能な表示装置を提供する。
【解決手段】ディスプレイ20の表示面における日射領域および非日射領域を推定する日射推定部12cと、ディスプレイ20に対する少なくとも二人のユーザの位置情報を取得する位置情報取得部12eと、輝度制御部12fと、を備える。輝度制御部12fは、日射推定部12cでの推定結果に基づき、日射領域に位置する日射画素群の輝度を、非日射領域に位置する非日射画素群の輝度よりも高くする第1の輝度制御を実行する。また、輝度制御部12fは、少なくとも二人のユーザの位置情報、ディスプレイ20の視野角特性および反射特性に基づき、少なくとも非日射領域について二人から見たコントラスト比の差を所定以下とする第2の輝度制御を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有するディスプレイ(20)における画像表示を制御する表示装置であって、
太陽および前記ディスプレイの位置情報に基づいて、前記ディスプレイの表示面(20a)のうち日射されている領域である日射領域と、前記表示面の残部である非日射領域とを推定する日射推定部(12c)と、
前記ディスプレイが設置されている環境の照度情報を取得する照度取得部(12d)と、
前記ディスプレイのユーザを撮像する撮像装置(34)から、前記ディスプレイに対する前記ユーザの位置情報を取得する位置情報取得部(12e)と、
前記日射推定部の推定結果に基づいて、前記複数の画素のうち前記日射領域に位置する画素群である日射画素群の輝度を、前記非日射領域に位置する画素群である非日射画素群の輝度よりも高くする第1の輝度制御を実行する輝度制御部(12f)と、を備え、
前記位置情報取得部は、少なくとも二人の前記ユーザの位置情報を取得し、
前記輝度制御部は、前記ディスプレイに対する前記ユーザの位置情報、前記ディスプレイの視野角特性および前記表示面における光の反射特性に基づいて、前記表示面のうち二人の前記ユーザの間に位置する領域(R3、R4、R5)の少なくとも一部について二人の前記ユーザから見たコントラスト比の差を所定以下とする第2の輝度制御を実行し、
前記ディスプレイの表示画像のうち文字、図形および記号の少なくとも1つを含む部分を情報部分とし、残部を背景部分として、前記コントラスト比は、前記背景部分の輝度に対する前記情報部分の輝度の比率である、表示装置。
【請求項2】
前記輝度制御部は、前記第2の輝度制御において、前記表示面のうち二人の前記ユーザの間に位置する領域を調整領域(R3)として、前記調整領域について二人の前記ユーザそれぞれに対応する2つの輝度制御係数(αc1-1、αc1-2)を算出し、2つの前記輝度制御係数の平均値を前記調整領域における新たな輝度制御係数(αc2)として設定する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記輝度制御部は、
前記第2の輝度制御において、
前記表示面のうち二人の前記ユーザの間に位置し、複数の領域(Z2~Z4)により構成される領域を調整領域(R3)として、前記調整領域について二人の前記ユーザそれぞれに対応する2つの輝度制御係数(αc1-1、αc1-2)を算出し、前記調整領域における前記複数の領域について2つの前記輝度制御係数の大きい値を輝度制御係数として選択し、
輝度制御係数が選択された後の前記複数の領域のうち隣接する2つの領域間において、二人の前記ユーザそれぞれの前記コントラスト比の差が所定以上となる場合、前記2つの領域間に少なくとも1つの新たな領域(Z6、Z7)を追加し、前記新たな領域に前記2つの領域に選択された輝度制御係数の間の値を新たな輝度制御係数(αc2)として設定する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記輝度制御部は、
前記第2の輝度制御において、
前記表示面について二人の前記ユーザそれぞれに対応する2つの輝度制御係数(αc1-1、αc1-2)を算出し、
前記表示面のうち一方の前記ユーザの正面に位置する第1正面領域(R4)については当該一方の前記ユーザに対応する前記輝度制御係数を新たな輝度制御係数(αc2)として設定し、
前記表示面のうち他方の前記ユーザの正面に位置する第2正面領域(R5)については当該他方の前記ユーザに対応する前記輝度制御係数を新たな輝度制御係数(αc2)として設定する、請求項1に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイの輝度を画素単位あるいは所定以下の画素群単位で制御可能な表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスプレイの表示面に日射が当たる状況において、ディスプレイの輝度を制御することにより、画面の見易さを向上した表示装置が提案されている(例えば特許文献1)。特許文献1に記載の装置は、自動車等の移動体に搭載される車両用表示装置であって、使用時刻や車両の走行位置という条件に基づいて、ディスプレイ画面全体の輝度レベルを自動的に制御する構成となっている。これにより、明るさを検知するためのセンサを設けなくても、表示装置が搭載される周囲環境の明るさに対応した輝度となり、表示画面の見易さが向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-184446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この表示装置は、所定の条件に対応して自動的にディスプレイ画面全体の輝度レベルを制御するため、画面の一部領域のみの輝度レベルの調整を行うことができない。例えば、この表示装置は、ディスプレイ画面の一部領域だけに日射が当たっているような状況であっても、画面全体の輝度レベルを上げてしまい、消費電力が必要以上に増大してしまう。
【0005】
そこで、ディスプレイの周囲に照度センサを複数配置し、照度センサからの照度信号に応じてディスプレイのうち日射が当たる領域である日射領域を推定し、推定した日射領域を他の領域よりも相対的に輝度を大きくする輝度制御を実行することが考えられる。これにより、ディスプレイの構成画素のうち日射領域に位置する画素群、すなわち日射画素群について部分的な輝度制御が可能となり、消費電力の増大を抑えつつ、表示画像のうち日射領域における見易さを向上させることができる。
【0006】
しかしながら、上記の輝度制御は、ディスプレイ自体の視野角特性に基づく輝度の変化、およびディスプレイ画面における光の反射特性の影響が考慮されていない。具体的には、ディスプレイ自体の視野角特性により、ディスプレイ画面に対するユーザの位置によっては同じ設定輝度であっても当該ユーザが視認する輝度が変化してしまう。また、ディスプレイ画面における光の反射特性により、一定の光量の外光を反射している状態であっても、ディスプレイ画面に対するユーザの位置に応じて当該ユーザが知覚する反射光の明るさが変化してしまう。このため、複数の照度センサで得られた照度情報のみに基づく輝度制御後の表示画像は、ユーザに違和感を覚えさせるおそれがある。さらに、ユーザが複数存在する場合、ディスプレイの視野角特性および反射特性については、それぞれのユーザの位置に応じて変化するため、各ユーザにとって見易い画像とすることが難しい。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑み、消費電力の増大を抑制しつつも、ディスプレイの視野角特性および光の反射特性を考慮した輝度制御を実行し、複数のユーザに違和感を覚えさせない画像表示が可能な表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の表示装置は、複数の画素を有するディスプレイ(20)における画像表示を制御する表示装置であって、太陽およびディスプレイの位置情報に基づいて、ディスプレイの表示面(20a)のうち日射されている領域である日射領域と、表示面の残部である非日射領域とを推定する日射推定部(12c)と、ディスプレイが設置されている環境の照度情報を取得する照度取得部(12d)と、ディスプレイのユーザを撮像する撮像装置(34)から、ディスプレイに対するユーザの位置情報を取得する位置情報取得部(12e)と、日射推定部の推定結果に基づいて、複数の画素のうち日射領域に位置する画素群である日射画素群の輝度を、非日射領域に位置する画素群である非日射画素群の輝度よりも高くする第1の輝度制御を実行する輝度制御部(12f)と、を備え、位置情報取得部は、少なくとも二人のユーザの位置情報を取得し、輝度制御部は、ディスプレイに対するユーザの位置情報、ディスプレイの視野角特性および表示面における光の反射特性に基づいて、前記表示面のうち二人の前記ユーザの間に位置する領域(R3、R4、R5)の少なくとも一部について二人の前記ユーザから見たコントラスト比の差を所定以下とする第2の輝度制御を実行し、ディスプレイの表示画像のうち文字、図形および記号の少なくとも1つを含む部分を情報部分とし、残部を背景部分として、コントラスト比は、背景部分の輝度に対する情報部分の輝度の比率である。
【0009】
これによれば、日射推定部がディスプレイの表示面における日射領域および非日射領域を推定し、位置情報取得部が当該表示面に対する複数のユーザの位置情報を取得し、輝度制御部が日射画素群の輝度を非日射画素群の輝度よりも高くする第1の輝度制御を行う。輝度制御部は、少なくとも二人のユーザの位置情報、ディスプレイの視野角特性および表示面における光の反射特性に基づいて、表示面のうち二人のユーザの間に位置する領域の少なくとも一部についてコントラスト比の差を所定以下とする第2の輝度制御を行う。これにより、必要以上に画素群全体の輝度を上げることなく、ディスプレイの視野角特性および光の反射特性を考慮した輝度制御を実行し、複数のユーザに違和感を覚えさせない画像表示が可能な表示装置となる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る表示システムを示すブロック図である。
図2】ディスプレイの表示面における視線角度およびその分布についての説明図である。
図3】日射領域データの一例を示す図である。
図4】表示システムにおける輝度制御を示すフローチャートである。
図5】日射領域の推定結果に基づく輝度制御係数の決定の一例を示す図である。
図6】ディスプレイの表示面に対するユーザの視線角度と表面輝度比との関係の一例を示す図である。
図7】ディスプレイの表示面に対するユーザの視線角度と表面反射比との関係の一例を示す図である。
図8】ユーザが一人の場合に実行される第2の輝度制御における輝度制御係数の補正についての説明図である。
図9】ユーザが二人の場合における視線角度の分布についての説明図である。
図10】ユーザが二人の場合に算出される第2の輝度制御における輝度制御係数の調整であって、比較例についての説明図である。
図11】ユーザが二人の場合に算出される第2の輝度制御における輝度制御係数の第1の調整例についての説明図である。
図12】ユーザが二人の場合に算出される第2の輝度制御における輝度制御係数の第2の調整例についての説明図である。
図13】ユーザが二人の場合に算出される第2の輝度制御における輝度制御係数の第3の調整例についての説明図である。
図14】ユーザが三人以上の場合における第2の輝度制御についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(実施形態)
実施形態に係る表示装置が適用されたOLED表示システムについて説明する。本実施形態では、OLED表示システムが自動車などの車両用とされた車載用表示システムである場合を代表例として説明するが、勿論、他の用途にも適用され得る。なお、OLED表示システムは、「有機EL表示システム」とも、「EL表示システム」とも称され得る。OLED、ELとは、それぞれOrganic Light Emitting Diode、Electro-Luminescenceの略称である。
【0014】
〔基本構成〕
本実施形態のOLED表示システムは、例えば図1に示すように、描画用コントローラ10と、ディスプレイ20、車載機器30を有した構成とされている。
【0015】
描画用コントローラ10は、ディスプレイ20による画像表示を制御する表示制御装置に相当するものであり、車載機器30から伝えられる各種信号に基づいてディスプレイ20での画像表示を制御する。例えば、描画用コントローラ10は、ディスプレイ20とは直接的に接続配線を介して接続され、車載機器30とは車載用通信バスである車内LAN40を通じて接続されている。LANとは、Local Area Networkの略称である。このため、描画用コントローラ10は、直接もしくは車内LAN40を通じて車載機器30からの各種信号が入力される。なお、この描画用コントローラ10の詳細構成については後述する。
【0016】
ディスプレイ20は、例えば、OLED等の自発光素子により構成された複数の画素を有する自発光型のディスプレイである。ディスプレイ20は、描画用コントローラ10からの映像出力信号に対応する画像表示を行う。ディスプレイ20は、画像表示を行う表示領域を構成している自発光素子ごと、すなわち画素ごとに、駆動電圧を可変して印加することで、輝度レベルの調整が可能な構成となっている。ディスプレイ20は、例えば図2に示すように、表示面20aを正面から見て横長の長方形状とされるが、これに限定されるものではなく、正方形、縦長の長方形、曲面形状などの他の形状であってもよい。
【0017】
なお、本明細書では、ディスプレイ20がOLEDディスプレイである場合を代表例として説明するが、OLEDディスプレイ等の自発光型ディスプレイについては公知であるため、ディスプレイ自体の詳細な説明については省略する。また、自発光素子としては、OLEDを代表例として説明するが、これに限定されるものではなく、無機ELやマイクロLEDなどの他の自発光素子であっても構わない。
【0018】
また、ディスプレイ20は、例えば、マイクロメートルサイズの複数のマイクロLEDなどをバックライトとして用い、ローカルディミング、すなわち部分駆動により微小なエリアごとに輝度を制御可能な液晶ディスプレイであってもよい。つまり、ディスプレイ20は、個々の画素単位、あるいは所定サイズ以下の領域を占める画素群単位で輝度制御が可能な表示体であればよい。所定サイズ以下の領域とは、例えば、限定するものではないが1mm角サイズなどが挙げられる。上記した液晶ディスプレイをディスプレイ20として用いる場合、複数のバックライトのうちの1つが割り当てられた画素群単位で後述する第1、第2の輝度制御が行われる。
【0019】
車載機器30は、例えば、映像信号や車両情報を描画用コントローラ10に入力するための各種機器、並びに照度や角速度などの物理量に応じた検出信号を描画用コントローラ10に出力する各種センサなどで構成されている。ここでは、車載機器30は、ナビゲーション装置31、ジャイロセンサ32、照度センサ33、乗員撮像装置34、通信機器35、および車両ECU36により構成されている。ただし、上記の車載機器30の構成は、あくまで一例に過ぎず、上記した機器やセンサなどのほか、マルチメディア、空調装置などの各種機器を有したものであっても良く、適宜変更されうる。
【0020】
ナビゲーション装置31は、地図データベースに記憶してある地図情報に基づいて、自車両の現在位置や地図の映像などを示す映像信号を描画用コントローラ10に入力する。また、ナビゲーション装置31は、ユーザの操作に基づいて、例えば目的地設定を行うための映像や、車両周辺もしくは目的地周辺の施設や店舗情報に関する映像などを示す映像信号を描画用コントローラ10に入力する。さらに、ナビゲーション装置31は、例えば、公知のGPSにより車両の緯度、経度、現在時刻、車両が向いている方位に関する情報を取得し、これらの情報を描画用コントローラ10に入力している。GPSとは、Global Positioning Systemの略称である。
【0021】
ジャイロセンサ32は、自車両の姿勢変化に応じた角速度を電圧値として検出するセンサである。ジャイロセンサ32は、自車両に固定されており、車両に対して予め規定された互いに直交する三軸について、各軸周りに生じる角速度を計測する。例えば、ジャイロセンサ32は、自車両のヨーイング、ピッチング、及びローリングに伴う角速度を計測し、計測データを描画用コントローラ10などへ逐次出力する。例えば、ジャイロセンサ32が出力する自車両のヨーイングに対応する角速度の計測データは、自車両が進行する方向、すなわち自車両を上方から見たときにおける自車両が向く方位の推定に用いられる。
【0022】
照度センサ33は、例えば、ディスプレイ20の近傍に配置され、ディスプレイ20への日射量、すなわち環境照度に応じた信号を出力する。照度センサ33は、例えば、ディスプレイ20の近傍に1つまたは複数配置され、ディスプレイ20の表示面全体あるいは表示面を複数に分割してなる分割領域ごとの環境照度を検出する。例えば、照度センサ33の数が3つである場合には、ディスプレイ20のうち映像を表示する領域を表示領域として、表示領域を3つの領域に分割し、3つの照度センサ33がそれぞれ第1領域~第3領域の1つに関連付けされる。照度センサ33が複数である場合、その配置や表示領域の対応領域については任意であり、前述した例に限定されず、適宜変更されうる。このように、照度センサ33は、関連付けられた領域の照度を検出し、その照度に応じた検出信号を描画用コントローラ10に向けて出力する。
【0023】
乗員撮像装置34は、例えば、自車両の乗員のうちディスプレイ20のユーザを撮像する任意の撮像装置である。撮像対象のユーザは、例えば、自車両の運転席に着座する運転者や助手席に着座する乗員である。乗員撮像装置34は、例えば、株式会社デンソー製のドライバーステータスモニター(登録商標)とされるが、これに限定されない。乗員撮像装置34は、例えば、公知の画像認証技術に基づいて、撮像したユーザの眼を含む画像データから、自車両内における当該ユーザの目の位置座標を推定する。乗員撮像装置34は、例えば、自車両の車室内に複数配置され、それぞれ異なるユーザの顔を撮像する。
【0024】
以下、説明の便宜上、乗員撮像装置34の撮像対象のユーザを「対象ユーザ」と称する。また、図2に示すように、ディスプレイ20の表示面のうち対象ユーザの視線の先に位置する点と対象ユーザの目の位置Pとを繋ぐ仮想直線VLに沿った方向であって、対象ユーザ側から表示面側に向かう方向を「視線方向」と称する。
【0025】
以下、一人の対象ユーザを撮像し、当該対象ユーザから見たときの後述する視線角度の分布を算出する例について説明する。なお、例えば複数のユーザが存在する場合においては、個々のユーザの撮像結果に基づいて、個々のユーザから見たときの視線角度の分布の算出処理が行われる。
【0026】
乗員撮像装置34は、例えば、推定した対象ユーザの目の位置座標を目の位置情報として描画用コントローラ10に出力する。上記した目の位置情報は、例えば、予め設定されたディスプレイ20の自車両における位置情報と共に、ディスプレイ20のうち各種画像が表示される面である表示面における対象ユーザの視線方向の角度分布の算出に用いられる。「視線方向の角度」とは、例えば図2に示すように、対象ユーザの視線方向、すなわち仮想直線VLとディスプレイ20の表示面に対する法線方向D1とのなす角度θを意味し、表示面20aのうち対象ユーザの正面に位置する点P1では0°となる。以下、視線方向の角度θを「視線角度θ」と称する。視線角度θの分布は、例えば、ディスプレイ20の表示面20aを所定面積で分割して得られる複数の分割領域単位で算出されるが、これに限定されない。例えば図2に示すように、表示面20aの点P2、P3、P4といった順にユーザの目の位置Pから離れた位置になるほど、視線角度θが大きくなる。言い換えると、表示面20aは、視線角度θの分布を有する。この視線角度θの分布は、描画用コントローラ10で算出されてもよいし、乗員撮像装置34で算出されてもよい。なお、乗員撮像装置34は、ディスプレイ20を使用するユーザの目を撮像可能な位置に搭載されていればよく、自車両の車室内の任意の位置に配置される。
【0027】
なお、ユーザの目の位置Pは、右目および左目で別々の位置座標として推定されてもよいし、両目の中央位置に相当する位置座標として推定されてもよい。前者の場合、例えば、右目および左目のそれぞれについて位置Pを推定し、右目の位置に対応する視線角度と左目の位置に対応する視線角度とを算出し、両目のそれぞれについて後述する輝度制御係数を算出する。後者の場合、例えば、両目の中央位置を位置Pとして推定し、当該中央位置を代表値として視線角度および後述する輝度制御係数を算出する。
【0028】
通信機器35は、例えば、無線LANなどにより、インターネット経由で気象情報などの各種情報を取得し、車内LAN40を介して当該天候情報を描画用コントローラ10に出力する。通信機器35が取得する気象情報は、例えば、後述する照度取得部12dに入力され、ディスプレイ20の環境照度の推定に用いられうる。なお、通信機器35は、気象情報以外の各種情報の取得や外部とのデータのやり取りなどにも使用されてもよい。
【0029】
車両ECU36は、例えば、上記したナビゲーション装置31ないし通信機器35と車内LAN40を介して接続され、これらの各種機器等からの信号および情報を描画用コントローラ10に出力する。ECUとは、Electronic Control Unitの略称である。
【0030】
なお、例えば、ナビゲーション装置31は、図1に示すように、描画用コントローラ10に映像信号を直接入力する構成とされる。また、ジャイロセンサ32、照度センサ33、乗員撮像装置34、および通信機器35は、ナビゲーション装置31と同様に、車両ECU36を介さずに、車内LAN40を介して描画用コントローラ10に各種信号等を入力する構成であってもよい。
【0031】
以上が、OLED表示システムの基本的な構成である。
【0032】
〔描画用コントローラ〕
続いて、描画用コントローラ10の詳細構成について説明する。
【0033】
上記したように、描画用コントローラ10は、ディスプレイ20による画像表示を制御する電子制御ユニットであり、それを実現するための機能部として、例えば、通信部11、制御部12、外部記憶装置13を有した構成とされている。
【0034】
通信部11は、車内LAN40を通じて車載機器30からの情報を取得する部分である。車載機器30から車内LAN40に伝えられている信号や情報については、通信部11にて取得される。図1では、例えば、ナビゲーション装置31について、情報や映像信号を描画用コントローラ10に対して直接入力できる取得経路と、通信部11を通じて入力できる取得経路を示した。このように、車載機器30からの情報や映像信号の取得経路については任意であり、情報や映像信号が描画用コントローラ10に直接入力されても良いし、車内LAN40から通信部11を通じて入力されても良い。
【0035】
制御部12は、例えば、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えたマイクロコンピュータによって構成されている。なお、CPU、ROM、RAM、I/Oとは、それぞれ、Central Processing Unit、Read Only Memory、Random Access Memory、Input/Outputの略称である。制御部12は、外部記憶装置13に記憶されている各種プログラムを読み出して実行することで、車載機器30から伝えられる映像信号や情報に基づいてディスプレイ20での表示画像の映像出力を行う。また、ここでは制御部12は、例えば、照度センサ33の検出信号が入力され、その検出信号に基づいてディスプレイ20の輝度レベルの調整も行っている。具体的には、制御部12は、映像入力/結合部12a、描画部12b、日射推定部12c、照度取得部12d、位置情報取得部12e、輝度制御部12fおよび映像出力部12gを有した構成とされている。
【0036】
映像入力/結合部12aは、車載機器30から直接もしくは車内LAN40を通じて映像信号が入力され、その映像信号が示す画像データを輝度制御部12fに出力する。また、映像入力/結合部12aは、描画部12bで描画された画像データがある場合、それを入力して映像信号が示す画像データと結合し、結合後の画像データを輝度制御部12fに出力する。
【0037】
描画部12bは、通信部11が取得した、車載機器30から伝えられる車両に関する各種情報などが入力され、その情報をディスプレイ20に描画するための画像データを生成する。
【0038】
日射推定部12cは、太陽の位置情報、ディスプレイ20の設置状態および自車両の姿勢情報に基づいて、ディスプレイ20のうち日射されている領域となる日射領域を推定し、その推定結果を輝度制御部12fに出力する。具体的には、日射推定部12cは、例えば、ナビゲーション装置31から自車両に対する太陽の高度・方位の角度情報、すなわち太陽情報を取得する。また、例えば、外部記憶装置13には、自車両におけるディスプレイ20の表示面20aに対する法線方向が差す方向であって、太陽の高度・方位の角度に対応するパネル取付角の情報が記憶されている。日射推定部12cは、太陽情報と、パネル取付角と、ジャイロセンサ32から取得する自車両の進行方向とに基づいて、ディスプレイ20の表示面20aに対する太陽光の高度・方位の角度であるパネル入射角を推定する。また、例えば、外部記憶装置13には、自車両の三次元形状データ、および太陽光のパネル入射角に応じてディスプレイ20の表示面に生じる日射領域および非日射領域の分布データである複数の日射領域データが予め記憶されている。そして、日射推定部12cは、複数の日射領域データのうち推定したパネル入射角に対応する1つまたは複数の日射領域データに基づいて、ディスプレイ20の表示面20aにおける日射領域および非日射領域を推定する。
【0039】
なお、非日射領域とは、ディスプレイ20の表示面20aのうち日射領域とは異なる残部の領域、すなわち日射が直接入射していない領域を意味する。日射領域データは、例えば、図3に示すように、日射領域に対応する白、および非日射領域に対応する黒の二値化された画像形式のデータとされ、ディスプレイ20の表示面20aにおける座標と関連付けされている。日射領域データは、例えば、光学シミュレーションソフトを用い、自車両の三次元形状データおよびディスプレイ20の配置に基づき、パネル入射角を適宜設定することにより、異なるパネル入射角に対応して1つずつ予め作成されている。
【0040】
また、日射推定部12cは、例えば特開2022-187806号公報に記載のように、パネル入射角の変化量に対する日射領域の変化方向および変化量を示すベクトルであるオプティカルフロー(OF)を算出し、OFを用いて日射領域を推定する構成でもよい。日射推定部12cは、特開2021-92626号公報に記載のように、ディスプレイ20の表示面近傍に配置された複数の照度センサ33からの出力信号に基づいて、日射領域を推定する構成であってもよい。このように、日射推定部12cは、他の公知の方法により、日射領域および非日射領域を推定する構成であってもよい。
【0041】
照度取得部12dは、例えば、照度センサ33からの検出信号が入力され、ディスプレイ20が設置された環境照度を取得する。照度取得部12dは、例えば、環境照度に応じた電気信号を照度情報として輝度制御部12fに出力する。また、照度取得部12dは、例えば、通信機器35から入力される気象情報と、時刻情報と、外部記憶装置13等に格納された時刻に対応する基準照度のデータとに基づいて、環境照度を推定する構成であってもよい。例えば、気象情報が晴れの場合には100%、曇りの場合には70%、雨の場合には30%といった具合に、気象情報に対応した基準照度に対する割合を予め設定し、外部記憶装置13等に格納しておく。そして、例えば、照度取得部12dは、取得した気象情報に対応する割合を基準照度に乗じて得られる値を環境照度として推定する。このように、照度取得部12dは、例えば、照度センサ33から照度情報を取得するか、あるいは通信機器35からの時刻情報や気象情報に基づいて照度を推定する構成とされる。
【0042】
なお、本表示システムは、車載機器30が照度センサ33および気象情報を取得する通信機器35の少なくとも一方を有し、照度取得部12dがディスプレイ20の環境照度を取得または推定できる構成であればよい。
【0043】
位置情報取得部12eは、例えば、乗員撮像装置34からディスプレイ20のユーザの目の位置情報を取得する。ユーザの目の位置情報とは、例えば、自車両における対象ユーザの目の位置座標であり、乗員撮像装置34が当該ユーザを撮像した画像を用いた公知の画像認証技術により算出される。位置情報取得部12eは、例えば、ユーザが複数存在する場合には、当該複数のユーザについて目の位置情報を個別に取得または算出する。位置情報取得部12eは、例えば、ディスプレイ20の位置情報および対象ユーザの目の位置情報に基づいて、ディスプレイ20の表示面20aにおける視線角度θの分布を推定する。この詳細については後述する。
【0044】
以下、説明の便宜上、ディスプレイ20を構成する画素群のうち日射領域に位置する画素群を「日射画素群」と称し、日射が当たらない領域である非日射領域に位置する画素群を「非日射画素群」と称する。
【0045】
輝度制御部12fは、映像入力/結合部12aから入力される画像データに対して、ディスプレイ20の日射画素群および非日射画素群のそれぞれについて輝度調整を行い、そのデータを映像出力部12gに出力する。輝度制御部12fは、例えば、日射推定部12cにより推定された日射領域に基づいて、日射画素群および非日射画素群を決定する。輝度制御部12fは、例えば、照度取得部12dからの環境照度および日射推定部12cからの日射領域/非日射領域の推定結果に基づき、日射画素群および非日射画素群について輝度の設定を行う。輝度制御部12fは、例えば、位置情報取得部12eからのディスプレイ20の表示面20aにおける視線角度θの角度分布データを取得し、ディスプレイ20の視野角特性データおよび表示面20aにおける光の反射特性データを外部記憶装置13から読み込む。そして、輝度制御部12fは、例えば、上記した視線角度θの角度分布データ、視野角特性データおよび反射特性データに基づき、日射画素群および非日射画素群の設定輝度を補正する。輝度制御部12fは、日射画素群および非日射画素群のそれぞれについて補正後の設定輝度に対応する画像データを生成する。そして、輝度制御部12fは、例えば、設定輝度を調整した画像データを映像出力部12gに出力する。この輝度制御の詳細については後述する。
【0046】
映像出力部12gは、輝度制御部12fから伝えられる輝度調整後の画像データをディスプレイ20で表示させるべく、映像出力信号を出力する。
【0047】
外部記憶装置13は、制御部12で実行する各種プログラムや制御部12から伝えられる各種データなどを記憶しており、制御部12によるプログラムの読み出しやデータの書き込みが可能となっている。なお、ここでは非遷移有形記録媒体として外部記憶装置13を挙げ、制御部12とは別の構成としたが、制御部12内のROMやRAMとしても良い。
【0048】
以上が、描画用コントローラ10の基本的な構成である。なお、描画用コントローラ10は、例えば、車載機器30とは独立した電子制御ユニットとされるが、これに限定されるものではなく、車両ECU36の一部として構成されてもよい。
【0049】
〔輝度制御の概要〕
次に、OLED表示システムにおける輝度制御について説明する。
【0050】
以下、説明の便宜上、ディスプレイ20の画素群の画像表示の通電による輝度を「設定輝度」と称し、太陽光あるいは他の光がディスプレイ20の表示面20aで反射した光を単に「反射光」と称し、反射光に起因する輝度を「反射輝度」と称する。反射輝度とは、太陽光あるいは他の光が黒表示あるいは非表示の状態の表示面20aで反射したと仮定して、その反射光のみに起因する輝度を意味する。また、所定の設定輝度で表示されたディスプレイ20の表示画像の光に、表示面20aにおける太陽光あるいは他の光の反射光が重畳したものを見たユーザが知覚する輝度を「視認輝度」と称する。
【0051】
また、図2に示すように、ディスプレイ20の表示面20aが正面視にて略長方形状であるとき、長手方向すなわち横幅の方向に沿った方向を「X方向」と称し、短手方向に沿った方向すなわちX方向に直交する方向を「Y方向」と称する。例えば、車載用途の場合、ディスプレイ20は、X方向が車幅方向に沿うように車両に搭載される。
【0052】
OLED表示システムは、例えば、ディスプレイ20がオン状態になるなどの所定の開始条件を満たした場合、図4に示す制御フローを実行する。
【0053】
ステップS100では、例えば、制御部12は、車載機器30から自車両の位置情報および日時情報を取得し、自車両の緯度を指定し、太陽の赤緯・時角を用いた球面三角法などの公知の方法により、自車両に対する太陽の高度角および方位角を算出する。
【0054】
ステップS110では、例えば、制御部12は、ジャイロセンサ32から自車両の進行方向を取得し、当該進行方向と、パネル取付角と、太陽の高度角および方位角とに基づいて、パネル入射角を算出する。これにより、ディスプレイ20の表示面20aに対する太陽光の入射方向、すなわち日射方向が推定される。
【0055】
ステップS120では、例えば、日射推定部12cは、上記した複数の日射領域データのうちステップS110で推定した日射方向に対応する1つまたは複数の日射領域データに基づいて、ディスプレイ20における日射領域および非日射領域を推定する。推定した日射領域および非日射領域の推定結果のデータは、例えば、輝度制御部12fに出力される。
【0056】
ステップS130では、例えば、位置情報取得部12eは、乗員撮像装置34から対象ユーザの目の位置座標を取得する。位置情報取得部12eは、例えば、乗員撮像装置34が一人のユーザを検出したときには当該一人のユーザの目の位置座標を取得し、二人のユーザを検出したときには二人のユーザの目の位置座標を取得する。
【0057】
続くステップS140では、例えば、位置情報取得部12eは、ユーザの目の位置Pの情報と、ディスプレイ20の表示面20aの位置座標とに基づいて、図2に示すような視線角度θの分布を幾何学計算により算出する。ここでは、表示面20aのX方向における視線角度θの分布のみを算出する場合を代表例として説明するが、Y方向における視線角度の分布を算出してもよい。算出した視線角度の分布のデータは、例えば、輝度制御部12fに出力される。
【0058】
ステップS150では、輝度制御部12fは、日射領域/非日射領域の推定結果、環境照度に基づいて、日射画素群の輝度を非日射画素群の輝度よりも高くする第1の輝度制御を実行する。これにより、日射画素群の輝度が非日射画素群の輝度よりも高く、かつ日射領域の照度値に応じた設定輝度となるため、ディスプレイ20は、日射領域および非日射領域それぞれ見易い設定輝度とされた画像を表示することとなる。また、非日射領域について必要以上に輝度を高くしなくてよいため、消費電力の増大を抑制できる。
【0059】
ここで、ディスプレイ20は、正面から見たとき、設定輝度が一定であっても、視線角度θが0°となる領域が最も視認輝度が高い一方で、視線角度θが大きい領域に向かうにつれて視認輝度が低下する視野角特性を有する。このため、ディスプレイ20に設定輝度が一律の画像を表示したとしても、視認輝度は、表示面20aにおける視線角度θに応じて領域ごとに変化してしまう。
【0060】
また、ディスプレイ20は、表示面20aにおいて太陽光や他の光などの外光の反射が生じているが、反射輝度が表示面20aにおける反射率に比例して大きくなる反射特性を有する。そして、表示面20aにおける反射率は、例えば、視線角度θが大きい領域ほど大きくなる。このため、反射輝度は、表示面20aにおいて、ユーザの目の位置に対して正面に位置する正面領域が最も小さく、正面領域から離れた領域に向かうにつれて大きくなる輝度分布が生じる。
【0061】
上記した第1の輝度制御は、上記の視野角特性に起因する視認輝度の変化、および反射特性に起因する反射輝度の変化が考慮されていない。このため、第1の輝度制御のみがなされた後の表示画像は、設定輝度と視認輝度との乖離が生じ、コントラスト比が意図しないものとなり、ユーザに違和感を覚えさせるおそれがある。ここでいう「コントラスト比」とは、画像のうち背景部分の輝度に対する同画像の情報部分の輝度の比を意味する。なお、例えば、情報部分とはユーザに向けた情報を表示する部分であって、画像のうち文字、図形および記号の少なくとも1つを含む部分であり、背景部分とは情報部分以外の残部である。
【0062】
そこで、ステップS150では、輝度制御部12fは、第1の輝度制御に合わせて、ディスプレイ20の視野角特性および反射特性、並びに表示面20aの視線角度θの分布に基づいて、後述の輝度制御係数を補正する第2の輝度制御を実行する。これにより、設定輝度が反射輝度の分布および視野角特性に基づく視認輝度の変化を考慮した輝度値となるように補正され、表示画像における領域ごとのコントラスト比の差が所定以下となることで、ユーザに違和感を覚えさせない画像表示が可能となる。最後に、映像出力部12gは、輝度制御部12fからの出力信号に基づいて、第2の輝度制御後の映像信号をディスプレイ20に出力する。その後、制御部12は、処理をステップS100に戻す。
【0063】
〔第2の輝度制御:ユーザが一人の場合〕
次に、ユーザが一人である場合における第2の輝度制御の詳細については説明する。
【0064】
図5図8では、断面を示すものではないが、ディスプレイ20の表示面20aにおける日射領域R1と非日射領域R2を分かり易くするため、非日射領域R2にハッチングを施している。
【0065】
まず、第1の輝度制御について説明する。
【0066】
輝度制御部12fは、例えば図5に示すように、日射推定部12cによる日射領域R1および非日射領域R2の推定結果と照度取得部12dからの環境照度の情報とに基づいて、表示面20aの所定の分割領域ごとに輝度制御係数αを決定する。
【0067】
なお、図5では、表示面20aを均等に分割して得られる分割領域ごとに1つの輝度制御係数αを設定する例を示しているが、これに限定されるものではない。例えば、輝度制御部12fは、日射領域R1および非日射領域R2の両方が存在する分割領域については、領域R1、R2で異なる輝度制御係数αを設定してもよい。
【0068】
輝度制御係数αは、例えば、以下の(1)式で決定される。
【0069】
α=(C×L)/Lmax・・・(1)
(1)式におけるCとは目標コントラスト値、Lとは反射輝度、Lmaxとは設定輝度の最大値である。目標コントラスト値とは、人間の視覚特性において画像が見易いと感じるコントラスト比の値であり、所定の範囲内で適宜設定される。また、反射輝度Lは、ディスプレイ20の表示面20aにおける光量に応じて変化し、例えば、以下の(2)式で算出される。
【0070】
=a×E・・・(2)
(2)式におけるaとは照度値を輝度に換算する換算係数、Eとは照度値である。換算係数aは、例えば、黒表示あるいは非発光の状態とされたディスプレイ20の表示面20aに任意の光源で照らして所定の照度値とし、表示面20aの輝度測定を行うことで予め算出される。なお、ディスプレイ20の表示面20aが他の透明なカバーガラス等で覆われて使用される場合には、カバーガラス等で覆われた状態のディスプレイ20で換算係数aを算出することが好ましい。照度値Eは、環境照度であり、例えば照度センサ33からの出力信号に基づいて決定される。
【0071】
設定輝度は、例えば、表示画像の映像信号における階調値と、ディスプレイ20のガンマ特性とに基づく関係式により一意に決まる輝度値である。設定輝度は、例えば、ガンマ特性の調整が可能なディスプレイ20を用いる場合には、照度値に応じてガンマ特性を補正することにより、環境照度に応じた値に調整される。例えば、OLEDなどの自発光型のディスプレイ20を用いる場合、設定輝度の最大値が決まっており、照度値に応じて設定輝度を下げる調整を行うことで、表示面における相対的な輝度調整を実行する。例えば、照度値の区分に対応するガンマ特性の補正値のデータテーブルを予め作成し、当該データテーブルを外部記憶装置13あるいは制御部12の図示しない記録媒体に格納しておく。そして、例えば、必要に応じて上記のデータテーブルを読み込み、ガンマ特性の調整を実行することで、環境照度に応じた見易い設定輝度を決定することができる。なお、表示画像は、例えば、人の視覚特性において見易いコントラスト比となるように、情報部分と背景部分とで異なる設定輝度となるように階調値が設定される。
【0072】
輝度制御部12fは、例えば、第1の輝度制御において、日射領域R1/非日射領域R2の推定結果、環境照度、設定輝度のデータテーブルおよび上記の(1)、(2)式に基づいて、例えば図5に示すように、分割領域ごとに輝度制御係数αを決定する。これにより、日射領域R1/非日射領域R2のそれぞれについて、見易い設定輝度とされ、ディスプレイ20は、環境照度に応じた画像を表示することとなる。
【0073】
しかしながら、第1の輝度制御では、ディスプレイ20の表示面20aの全域を正面から見る前提での設定輝度が決定される。また、ある照度の表示面20aに所定の設定輝度の画像が表示されているとき、視認輝度は、設定輝度に反射輝度を足した輝度となる。このため、ユーザが表示面20aを斜めから見る場合には、ディスプレイ20の視野角特性に起因する視認輝度の変化および反射特性に起因する反射輝度の変化により、設定輝度において想定される輝度と視認輝度との乖離が生じうる。この場合、画像内におけるコントラスト比が意図しない値となり、ユーザが知覚する画像のコントラスト比が人の視覚特性にて見易い範囲外となるため、ユーザが違和感を覚えるおそれがある。このような事態を防ぐため、本実施形態の表示システムは、第2の輝度制御を実行する。
【0074】
続いて、第2の輝度制御について説明する。
【0075】
輝度制御部12fは、第2の輝度制御において、表示面20aにおける視線角度θの角度分布、ディスプレイ20の視野角特性データおよび反射特性データに基づいて、輝度制御係数αの補正を行う。
【0076】
視野角特性データは、例えば、視線角度θを変えて所定の輝度値の画像を見たときの輝度の維持率で定義されており、図6に示すように、視線角度θとこれに対応する表面輝度比とによりなるデータテーブルとして予め作成されている。表面輝度比とは、例えば、上記した輝度の維持率であり、視線角度θ=0°すなわち正面視における輝度を基準値(=1)として、視線角度θを変えたときの輝度を基準値で割って得られる値である。例えば、表面輝度比は、図6に示すように、視線角度θ=0°、15°、30°、45°、60°の部位でそれぞれ1.00、0.95、0.85、0.70、0.50となっているが、これに限定されるものではなく、ディスプレイ20の構成等に応じて変わる。
【0077】
反射特性データは、例えば、所定の照度値の表示面20aを見た場合において、視線角度θを変える前後の反射輝度比で定義されており、図7に示すように、視線角度θとこれに対応する表面反射比とによりなるデータテーブルとして予め作成されている。表面反射比とは、例えば、視線角度θ=0°すなわち正面視における反射輝度を基準値(=1)として、視線角度θを変えたときの反射輝度を基準値で割って得られる値である。例えば、表面反射比は、図7に示すように、視線角度θ=0°、15°、30°、45°、60°の部位でそれぞれ1.00、1.00、1.00、1.20、2.50であるが、これに限定されず、表示面20aやこれを覆う透明カバーの構成等に応じて変わる。
【0078】
視野角特性データおよび反射特性データは、例えば、外部記憶装置13あるいは制御部12の図示しない記録媒体に格納されており、第2の輝度制御において読み込まれる。視野角特性データおよび反射特性データは、例えば、ディスプレイ20および任意の光源を用い、視線角度θを変えた輝度測定を行うことで作成されうる。
【0079】
ここで、ディスプレイ20を正面視した場合において、画像の情報部分の最大輝度が500cd/m、背景部分の最大輝度が0cd/m(=黒表示)、反射輝度が6cd/m、コントラスト目標値C=3であるときのコントラスト比について検討する。
【0080】
この場合、輝度制御係数αは、(1)式により、3×6/500=0.036となる。また、情報部分の視認輝度を背景部分の視認輝度で割って得られた値がコントラスト比である。情報部分の視認輝度を「情報輝度L1」とし、背景部分の視認輝度を「背景輝度L2」とし、コントラスト比をC1として、情報輝度L1、背景輝度L2、コントラスト比C1は、以下の(3)式、(4)式、(5)式で表される。
【0081】
L1=L01×α×β+LR1×γ・・・(3)
L2=L02×α×β+LR2×γ・・・(4)
C1=L1/L2・・・(5)
(3)式におけるL01とは情報部分の設定輝度、LR1とは情報部分の反射輝度である。(4)式におけるL02とは背景部分の設定輝度、LR2とは背景部分の反射輝度である。(3)式、(4)式におけるβとは表面輝度比、γとは表面反射比である。
【0082】
そして、視線角度θ=0°の部分では、例えば図6、7に示すように、表面輝度比が1かつ表面反射比が1であるため、そのコントラスト比C1は、(500×0.036×1+6×1)/(0×0.036×1+6×1)=4となる。視線角度θ=0°の部分は、コントラスト比C1がコントラスト目標値C=3を超えており、見易い状態である。
【0083】
一方、視線角度θ=60°の部分では、例えば、表面輝度比が0.5かつ表面反射比が2.5であり、情報部分の輝度が0.5倍、かつ反射輝度が2.5倍となる。このため、視線角度θ=60°の部分のコントラスト比C1は、(500×0.5×0.036+6×2.5)/(0×0.5×0.036+6×2.5)=1.6となる。視線角度θ=60°の部分は、コントラスト比C1がコントラスト目標値C=3を満たしておらず、見易い状態とはならない。
【0084】
なお、上記の例では、視線角度θ=15°の部分のコントラスト比C1は、(500×0.95×0.036+6×1)/(0×0.95×0.036+6×1)=3.85となる。視線角度θ=30°の部分のコントラスト比C1は、(500×0.85×0.036+6×1)/(0×0.85×0.036+6×1)=3.55となる。視線角度θ=45°の部分のコントラスト比C1は、(500×0.7×0.036+6×1.2)/(0×0.7×0.036+6×1.2)=2.75となる。この場合、視線角度θ=15°、30°の部分は、コントラスト比C1が目標値の3を超えており、見易い状態である。これに対し、視線角度θ=45°の部分は、コントラスト比C1が目標値の3を満たしておらず、見易い状態とはならない。
【0085】
上記したように、第1の輝度制御のみでは、画像内において見易いコントラスト比C1の部分とそうでないコントラスト比C1の部分とが混在した状態となり、ユーザが違和感を覚える画像となりうる。特に、非日射領域R2については、非日射画素群の設定輝度が日射画素群よりも低いため、視線角度θによってはユーザが非常に暗く感じる領域が発生してしまう。
【0086】
そこで、輝度制御部12fは、第2の輝度制御により、視野角特性データおよび反射特性データに基づいて、輝度制御係数αの補正を実行する。
【0087】
例えば、上記の例では、視線角度θ=60°の部分については、(1)式における反射輝度Lを反射特性データに基づいて補正したものを用い、設定輝度の最大値Lmaxを視野角特性データに基づいて補正したものを用いて、輝度制御係数を算出される。つまり、第2の輝度制御における補正後の輝度制御係数をαC1として、αC1は、以下の(6)式で算出される。
【0088】
αC1=(C×LR_C)/Lmax_C・・・(6)
(6)式におけるLR_Cとは反射特性データに基づく補正後の反射輝度であり、Lmax_Cとは視野角特性データに基づく補正後の設定輝度の最大値である。具体的には、補正後の反射輝度LR_Cは、環境照度により換算した輝度に表面反射比を乗じて得られる値、すなわち6×2.5=15cd/mとなる。また、設定輝度の最大値Lmaxは、設定輝度に表面輝度比を乗じて得られる値、すなわち500×0.5=250cd/mとなる。また、視線角度θ=60°の部分における補正後の輝度制御係数αは、(3)式により、(3×15)/250=0.18となる。そして、第2の輝度制御により、視線角度θ=60°の部分のコントラスト比C1は、(500×0.5×0.18+6×2.5)/(0×0.5×0.18+6×2.5)=4となり、コントラスト目標値C=3を超える結果、見易い状態となる。
【0089】
なお、視線角度θ=0°の部分は、表面輝度比が1かつ表面反射比が1であり、反射輝度および設定輝度の最大値に変化がないため、輝度制御係数αC1=αとなり、コントラスト比C1については上記と同様に4のままである。また、例えば、視線角度θ=15°、30°、45°の部分は、補正後の輝度制御係数αが約0.038、約0.042、約0.062となり、コントラスト比C1がいずれも4となる。
【0090】
上記したように、輝度制御部12fは、第2の輝度制御において、視線角度θの角度分布、視野角特性データおよび反射特性データに基づいて、分割領域ごとに算出された輝度制御係数αのそれぞれについて補正を行い、補正後の輝度制御係数αC1を算出する。例えば図8に示すように、日射領域の推定結果に基づいて、第1の輝度制御により、日射領域R1に相当する分割領域の輝度制御係数αが1、非日射領域R2に相当する分割領域の輝度制御係数αが0.4と設定されたとする。この場合、例えば、輝度制御部12fは、視線角度θの角度分布と、視線角度θに対応する表面輝度比(すなわち視野角特性)および表面反射比(すなわち反射特性)とに基づいて、各分割領域の補正後の輝度制御係数αC1を算出し、αをαC1に置き換える。これにより、ディスプレイ20の視野角特性および反射特性を考慮した輝度制御がなされ、ユーザが知覚するコントラスト比C1が見易い値、かつコントラスト比C1の差が画像内において所定以下となるため、ユーザが違和感を覚えない画像が表示される。
【0091】
なお、図5図8では、視線角度θが15°刻みで各種の値が設定された例について示しているが、これに限定されるものではなく、例えば5°刻み、10°刻みといった具合に表面輝度比や表面反射比の変動等に応じて適宜変更されてもよい。また、図5図8に示す輝度制御係数、表面輝度比や表面反射比の数値については、一例であり、ディスプレイ20の構成や表示面20aあるいはこれを覆う透明部材の表面処理などにより、適宜変更されうる。
【0092】
また、上記では、第2の輝度制御にて、画面内におけるコントラスト比の差が0となるように、輝度制御係数αを補正する例について説明したが、これに限定されず、人の目で違和感を覚えない程度のコントラスト比の差が生じても構わない。さらに、上記では、非日射画素群について第2の輝度制御を実行する例について説明したが、勿論、日射画素群について第2の輝度制御を実行してもよい。
【0093】
また、上記では、コントラスト目標値Cが定数である場合を代表例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ある反射輝度に対して見易い表示とするために必要な設定輝度が以下の(7)式のような所定の関係式で表せる場合、コントラスト目標値Cは、(8)式のように反射輝度に応じた値として算出され、随時設定されてもよい。なお、(7)式におけるx、yは、設定輝度と反射輝度との関係で定まる任意の定数である。
【0094】
設定輝度=x×反射輝度+y・・・(7)
C=(x+1)+y/反射輝度・・・(8)
〔第2の輝度制御:ユーザが二人である場合の課題〕
次に、ユーザが二人である場合において第2の輝度制御の課題について説明する。
【0095】
例えば、2つの乗員撮像装置34がそれぞれ異なるユーザの顔を検出した場合には、位置情報取得部12eは、各ユーザの目の位置情報に基づいて、2つの視線角度θの分布を算出する。なお、複数のユーザの検出については、乗員撮像装置34以外の車載機器30、例えば、各座席あるいはシートベルトなどに搭載された図示しない乗員センサに基づいて行われてもよいし、他の公知の方法により行われてもよく、その方法については任意である。
【0096】
以下、説明の便宜上、図9に示すように、第1のユーザの視点に基づく視線角度θを「視線角度θ1」と称し、第2のユーザの視点に基づく視線角度θを「視線角度θ2」と称する。視線角度θ1は、第1のユーザの目の位置PE1と第1のユーザの視線方向の先にある表示面20aにおける1点とを繋ぐ仮想直線VL1と、表示面20aの法線方向D1とのなす角度である。視線角度θ2は、第2のユーザの目の位置PE2と第2のユーザの視線方向の先にある表示面20aにおける1点とを繋ぐ仮想直線VL2と、表示面20aの法線方向D1とのなす角度である。
【0097】
位置情報取得部12eは、例えば、上記と同様に視線角度θ1、θ2の分布をそれぞれ算出し、視線角度θ1、θ2の角度分布データを輝度制御部12fに出力する。そして、輝度制御部12fは、上記と同様に、視線角度θ1、θ2の角度分布データ、視野角特性データおよび反射特性データに基づいて、例えば図10に示すように、ディスプレイ20の分割領域ごとに各ユーザに対応する輝度制御係数αC1を算出する。
【0098】
以下、図10に示すように、複数の分割領域のうち一部の連続する領域については、区別のため、X方向における左から順に「第1領域Z1」、「第2領域Z2」、「第3領域Z3」、「第4領域Z4」、「第5領域Z5」とそれぞれ称する。また、図10では、見易くするため、複数の分割領域の一部にのみ輝度制御係数αC1を示すと共に、断面を示すものではないが、コントラスト比が大きい領域ほど白いハッチング、小さい領域ほど黒いハッチングを施している。
【0099】
ここでは、図10に示すように、ディスプレイ20の分割領域のうちY方向における1つの位置であって、X方向に沿った一列を代表例として説明するが、他の列についても後述と同様の処理が実行される。以下、便宜上、第1のユーザの視線角度θ1の分布、視野角特性データおよび反射特性データに基づいて算出される輝度制御係数αC1を「輝度制御係数αC1-1」と称する。また、第2のユーザの視線角度θ2の分布、視野角特性データおよび反射特性データに基づいて算出される輝度制御係数αC1を「輝度制御係数αC1-2」と称する。
【0100】
輝度制御係数αC1-1、αC1-2のいずれか一方のみを反映すると、表示画像は、二人のユーザの一方にとっては見易いものの、他方にとっては見易いとはいえなくなる。そこで、輝度制御部12fは、第1のユーザに対応する輝度制御係数αC1-1と第2のユーザに対応する輝度制御係数αC1-2とに基づいて、複数の分割領域の一部についてユーザの双方に対応する新たな輝度制御係数αC2を算出する。
【0101】
以下、新たな輝度制御係数αC2が算出される領域を「調整領域R3」と称する。調整領域R3は、ディスプレイ20のうち少なくとも二人のユーザの間に位置する領域の一部または全部、あるいは二人のユーザ双方が注視する領域とされる。調整領域R3は、例えば、車載用途のように二人のユーザの位置とディスプレイ20との配置が予め決められる場合には、ディスプレイ20のうち運転席の正面に位置する領域から助手席の正面に位置する領域との間に位置する領域が設定されうる。調整領域R3は、ディスプレイ20の位置情報と乗員撮像装置34からの二人のユーザの目または頭部の位置情報とに基づき、ディスプレイ20のうち第1のユーザの前方領域と第2のユーザの前方領域との間に位置する領域として算出されてもよい。また、例えば、乗員撮像装置34からの二人のユーザの視線方向に基づいて、ディスプレイ20における二人のユーザそれぞれの中心視野および有効視野に位置する注視領域を算出し、これらの注視視野のうち重複する領域を調整領域R3として設定してもよい。注視領域については、例えば、二人のユーザの視線方向のなす仮想直線とディスプレイ20の表示面20aとの交点の座標を算出し、当該交点を中心とした所定の範囲内の視野角(例えば10度以内)に位置する領域として算出される。このように、調整領域R3については、任意の方法で決定される。
【0102】
輝度制御係数αC2を算出する方法としては、例えば図10に示す比較例のように、調整領域R3のうち同じ分割領域における輝度制御係数αC1-1、αC1-2を比較し、安全性の観点から大きな数値を選択することが考えられる。しかしながら、このような単純な組み合わせにより輝度制御係数を決定した場合、第1ないし第5領域Z1~Z5におけるコントラスト比C1の一部が二人のユーザのいずれから見ても急激に変化する領域が生じてしまい、違和感を覚える表示となってしまう。
【0103】
具体的には、例えば、視線角度θ1は、第2領域Z2が60°、第3領域Z3が45°、第4領域Z4が30°、第5領域Z5が15°であるとする。視線角度θ2は、第1領域が15°、第2領域Z2が30°、第3領域Z3が45°、第4領域Z4が60°であるとする。また、ディスプレイ20を正面視した場合において、画像の情報部分の最大輝度が500cd/m、背景部分の最大輝度が0cd/m(=黒表示)、反射輝度が6cd/m、コントラスト目標値C=3であるとする。この場合、第2ないし第5領域Z2~Z5の輝度制御係数αC1-1は、(6)式により、順に、0.18、約0.062、約0.042、約0.037となる。また、第1ないし第4領域Z1~Z4の輝度制御係数αC1-2は、(6)式により、順に、約0.037、約0.042、約0.062、0.18となる。そして、第2領域Z2、第3領域Z3、第4領域Z4が調整領域R3であるとし、単純な組み合わせにより大きな値の輝度制御係数を選択すると、第2ないし第4領域Z2~Z4の輝度制御係数は、順に0.18、0.062、0.18となる。
【0104】
なお、図10では、スペースの都合上、輝度制御係数αC1-1、αC1-2のうち小数点第4位以下が存在するものについては、小数点第4位を四捨五入した数値を表記している。具体的には、図10においては、0.037とは0.037895・・・、0.042とは0.042353・・・、0.062とは0.061714・・・、のそれぞれ小数点第4位を四捨五入して得られる数値である。これらは、図11図13に示す小数点第3位まで記載の輝度制御係数についても同様である。
【0105】
ここで、第1のユーザから見たときの第2ないし第4領域Z2~Z4のコントラスト比を算出する。第2領域Z2は、表面輝度比が0.5、表面反射比が2.5、補正後の反射輝度LR-Cが6×2.5=15cd/mであり、コントラスト比C1が(500×0.5×0.18+6×2.5)/(0×0.5×0.18+6×2.5)=4となる。第3領域Z3は、表面輝度比が0.7、表面反射比が1.2、補正後の反射輝度LR-Cが6×1.2=7.2cd/mであり、コントラスト比C1が(500×0.7×約0.062+6×1.2)/(0×0.7×約0.062+6×1.2)≒4となる。第4領域Z4は、表面輝度比が0.85、表面反射比が1、補正後の反射輝度LR-Cが6×1=6cd/mであり、コントラスト比C1が(500×0.85×0.18+6×1)/(0×0.85×0.18+6×1)=13.75となる。つまり、第1のユーザから見た表示画像は、第3領域Z3および第4領域Z4のコントラスト比が3以上、かつこれらの差が3倍以上となっており、急激なコントラスト比の変化が生じた状態となる。
【0106】
また、第2のユーザから見たときの第2ないし第4領域Z2~Z4のコントラスト比を算出する。第2領域Z2は、表面輝度比が0.85、表面反射比が1、補正後の反射輝度LR-Cが6×1=6cd/mであり、コントラスト比C1が(500×0.85×0.18+6×1)/(0×0.85×0.18+6×1)=13.75となる。第3領域Z3は、表面輝度比が0.7、表面反射比が1.2、補正後の反射輝度LR-Cが6×1.2=7.2cd/mであり、コントラスト比C1が(500×0.7×約0.062+6×1.2)/(0×0.7×約0.062+6×1.2)≒4となる。第4領域Z4は、表面輝度比が0.5、表面反射比が2.5、補正後の反射輝度LR-Cが6×2.5=15cd/mであり、コントラスト比C1が(500×0.5×0.18+6×2.5)/(0×0.5×0.18+6×2.5)=4となる。つまり、第2のユーザから見た表示画像は、第2領域Z2および第3領域Z3のコントラスト比が3以上、かつこれらの差が3倍以上となっており、急激なコントラスト比の変化が生じた状態となる。
【0107】
上記したように、調整領域R3について輝度制御係数αC1-1、αC1-2のうち大きい値を輝度制御係数として設定すると、二人のユーザのいずれから見ても調整領域R3においてコントラスト比が急激に変化し、違和感を覚えさせる画像となってしまう。このようなコントラスト比の急激な変化を生じさせないため、輝度制御部12fは、次に説明する輝度制御係数の調整を実行する。
【0108】
〔第2の輝度制御:ユーザが二人である場合における第1の調整〕
輝度制御部12fは、例えば図11に示すように、調整領域R3について輝度制御係数αC1-1、αC1-2の平均値を新たな輝度制御係数αC2として設定する調整を実行しうる。なお、図11に示す輝度制御係数αC1-1、αC1-2は、図10において説明した視線角度θ1、θ2の分布、情報部分および背景部分の最大輝度、反射輝度、表面輝度比、表面反射比およびコントラスト目標値が同一の条件で算出されたものである。
【0109】
輝度制御部12fは、例えば、第2領域Z2、第3領域Z3および第4領域Z4のそれぞれについては、αC1-1、αC1-2の平均値である約0.111、約0.062、約0.111に調整し、これらの値を新たな輝度制御係数αC2として設定する。なお、図11における輝度制御係数の0.111とは、0.11117・・・の小数点第4位を四捨五入して得られる数値である。
【0110】
この場合、第1のユーザから見た場合の第2ないし第4領域Z2~Z4は、隣接する領域間のコントラスト比の変化が抑制される。具体的には、第2領域Z2は、表面輝度比が0.5、表面反射比が2.5、補正後の反射輝度LR-Cが6×2.5=15cd/mである。このため、第1のユーザから見た第2領域Z2のコントラスト比C1は、(500×0.5×約0.111+6×2.5)/(0×0.5×約0.111+6×2.5)≒2.85となる。第3領域Z3は、新たな輝度制御係数αC2が上記と同じであるため、約4となる。第4領域Z4は、表面輝度比が0.85、表面反射比が1、補正後の反射輝度LR-Cが6×1=6cd/mであり、コントラスト比C1が(500×0.85×約0.111+6×1)/(0×0.85×約0.111+6×1)≒8.88となる。第1のユーザから見た表示画像は、第2ないし第4領域Z2~Z4のコントラスト比が約2.85、約4、約8.88となり、調整領域R3におけるコントラスト比の変化が抑制され、単に組み合わせた場合に比べて違和感が低減される。
【0111】
また、第2のユーザから見た場合の第2ないし第4領域Z2~Z4におけるコントラスト比は、次のようになる。第2領域Z2は、表面輝度比が0.85、表面反射比が1、補正後の反射輝度LR-Cが6×1=6cd/mであり、コントラスト比C1が(500×0.85×約0.111+6×1)/(0×0.85×約0.111+6×1)≒8.88となる。第3領域Z3は、新たな輝度制御係数αC2が上記と同じであるため、約4となる。第4領域Z4は、表面輝度比が0.5、表面反射比が2.5、補正後の反射輝度LR-Cが6×2.5=15cd/mであり、コントラスト比C1が(500×0.5×約0.111+6×2.5)/(0×0.5×約0.111+6×2.5)≒2.85となる。つまり、第2のユーザから見た表示画像は、第2ないし第4領域Z2~Z4のコントラスト比が約8.88、約4、約2.85となり、第1のユーザから見た場合と同様に、調整前に比べて、コントラスト比の変化が低減される。
【0112】
これにより、ユーザが二人存在する場合においても、表示画像は、各ユーザから見た時の視野角特性および反射特性を反映しつつも、各ユーザのいずれにとってもコントラスト比の変化が低減され、違和感が低減されたものとなる。
【0113】
なお、分割領域のうち調整領域R3以外の領域については、第1のユーザ側の領域では輝度制御係数αC1-1を選択し、第2のユーザ側の領域では輝度制御係数αC1-2を選択する調整が実行される。例えば、第1のユーザ側の領域とは、調整領域R3よりも第1のユーザの目の位置PE1に近い領域であり、第2のユーザ側の領域とは、調整領域R3よりも第2のユーザの目の位置PE2に近い領域である。これは、第1のユーザ側の領域を主に見るのは第1のユーザ、第2のユーザ側の領域を主に見るのは第2のユーザ、と想定されるためである。これにより、ディスプレイ20に表示される表示画像は、調整領域R3以外の部分についても各ユーザが主に見る部分のコントラスト比の差が低減されることとなる。
【0114】
〔第2の輝度制御:ユーザが二人である場合における第2の調整〕
輝度制御部12fは、例えば図12に示すように、調整領域R3についてコントラスト比の変化が大きい領域が存在する場合に領域数を増加させ、増加させた領域に新たな輝度制御係数αC2を設定する調整を実行してもよい。
【0115】
具体的には、輝度制御部12fは、まず調整領域R3について比較例と同様に、輝度制御係数αC1-1、αC1-2のうち大きい数値を選択する。そして、例えば、輝度制御部12fは、調整領域R3である領域Z2~Z4について、第1のユーザから見たコントラスト比、および第2のユーザから見たコントラスト比をそれぞれ算出し、2つの隣接領域についてコントラスト比を比較する。このとき、輝度制御部12fは、例えば、「隣接領域の少なくとも1つのコントラスト比が3以上、かつ一方の領域のコントラスト比が他方の領域のコントラスト比の2倍以上」といった所定の条件を満たす場合、当該隣接領域に新たな領域を設定する。
【0116】
なお、領域を追加するか否かを判定するための上記の所定の条件は、ユーザから見てコントラスト比が領域間で急激に変化すると認識する条件であり、例えば、ユーザの年齢や視力などの属性などに応じて適宜変更されてもよい。また、上記の所定の条件については、コントラスト比の差についての認識がユーザによって異なるため、ユーザ自身が設定可能であってもよい。
【0117】
例えば、輝度制御部12fは、第2領域Z2および第3領域Z3のそれぞれの一部を第6領域Z6とし、第3領域Z3および第4領域Z4のそれぞれの一部を第7領域Z7として、新たな領域を設定する。例えば、輝度制御部12fは、新たに設定した領域については元の隣接領域における2つの輝度制御係数の平均値を新たな輝度制御係数αC2として設定する。具体的には、第6領域Z6は、輝度制御係数0.18の第2領域Z2と、輝度制御係数が約0.062の第3領域Z3との間に位置するため、輝度制御係数αC2についてはこれらの平均値である約0.12に設定される。第7領域Z7は、輝度制御係数0.062の第3領域Z3と、輝度制御係数0.18の第4領域Z4との間に位置するため、輝度制御係数αC2についてはこれらの平均値である約0.12に設定される。なお、ここでいう輝度制御係数の約0.12とは、0.120857・・・の小数点第3位を四捨五入して得られる数値である。
【0118】
また、第6領域Z6および第7領域Z7における表面輝度比および表面反射比は、二人のユーザに対する位置に応じて決まるが、ここでは、便宜上、両隣に位置する領域の表面反射比の中間値であるとする。例えば、第6領域Z6は、第1のユーザ視点では、表面輝度比0.5、表面反射比2.5の第2領域Z2と、表面輝度比0.7、表面反射比1.2の第3領域Z3との間であるため、表面輝度比が0.6、表面反射比が約1.8である。また、第6領域Z6は、第2のユーザ視点では、表面輝度比0.85、表面反射比1の第2領域Z2と、表面輝度比0.7、表面反射比1.2の第3領域Z3との間であるため、表面輝度比が約0.8、表面反射比が1.1である。同様に、第7領域Z7は、第1のユーザ視点での表面輝度比が約0.8、表面反射比が1.1であり、第2のユーザ視点での表面輝度比が0.6、表面反射比が約1.8である。
【0119】
つまり、輝度制御部12fは、例えば、コントラスト比の差が所定の条件を満たす隣接領域のそれぞれの一部を合わせて得られる領域を、少なくとも1つの新たな領域として再設定する。そして、輝度制御部12fは、再設定された新たな領域、すなわち追加された領域について、追加された領域を挟んで両側の2つの領域に設定されている輝度制御係数の間の値、例えば平均値などを新たな輝度制御係数αC2として設定する。これにより、二人のユーザのいずれから見ても、コントラスト比の差が調整前に比べて低減され、違和感を覚えにくい表示画像とすることができる。
【0120】
第1のユーザから見た場合の第2ないし第4領域Z2~Z4は、輝度制御係数が調整の前後で変化しないため、コントラスト比がそれぞれ4、4、13.75である。第6領域Z6は、表面輝度比が0.6、表面反射比が約1.8、補正後の反射輝度LR-Cが6×1.8≒10.8cd/mである。このため、第6領域Z6は、コントラスト比C1が(500×0.6×約0.12+6×1.8)/(0×0.6×約0.12+6×1.8)≒4.3となる。第7領域Z7は、表面輝度比が約0.8、表面反射比が1.1、補正後の反射輝度LR-Cが6×1.1=6.6cd/mである。このため、第7領域Z7は、コントラスト比C1が(500×約0.8×約0.12+6×1.1)/(0×約0.8×約0.12+6×1.1)≒8.27となる。よって、調整領域R3は、第1のユーザから見たときのコントラスト比が第2領域Z2側からX方向右に向かって、順に、4、約4.3、4、約8.27、13.75となり、コントラスト比の変化が抑制され、違和感が低減される。
【0121】
第2のユーザから見た場合の第2ないし第4領域Z2~Z4は、輝度制御係数が調整の前後で変化しないため、コントラスト比がそれぞれ13.75、4、4である。第6領域Z6は、表面輝度比が約0.8、表面反射比が1.1、補正後の反射輝度LR-Cが6×1.1=6.6cd/mである。このため、第6領域Z6は、第2のユーザから見たコントラスト比C1が(500×約0.8×約0.12+6×1.1)/(0×約0.8×約0.12+6×1.1)≒8.27となる。第7領域Z7は、表面輝度比が0.6、表面反射比が約1.8、補正後の反射輝度LR-Cが6×約1.8≒10.8cd/mであるため、コントラスト比C1が第1のユーザから見たときと同様に約8.27となる。よって、調整領域R3は、第2のユーザから見たときのコントラスト比が第2領域Z2側からX方向右に向かって、順に、13.75、約8.27、4、約4.3、4となり、コントラスト比の変化が抑制され、違和感が低減される。
【0122】
上記した第2の調整によっても、第1の調整と同様の効果が得られる。
【0123】
なお、上記では、第2領域Z2と第3領域Z3との間、および第3領域Z3と第4領域Z4との間にそれぞれ1つの新たな領域を追加した例について説明したが、追加する領域の数については2以上でもよく、コントラスト比の差に応じて適宜変更されてもよい。例えば、2以上の領域を追加する場合、元の隣接する2つの分割領域の一方から他方に向かうにつれて、調整後の輝度制御係数が段階的に近づくように、すなわちグラデーションをなすように新たな輝度制御係数を設定すればよい。
【0124】
〔第2の輝度制御:ユーザが二人である場合における第3の調整〕
輝度制御部12fは、例えば図13に示すように、第1のユーザの正面領域には輝度制御係数αC1-1を選択し、第2のユーザの正面領域には輝度制御係数αC1-2を選択し、新たな輝度制御係数αC2を設定する調整を実行してもよい。
【0125】
以下、説明の便宜上、ディスプレイ20の表示面20aのうち第1のユーザの正面に位置する領域を「第1正面領域R4」と称し、第2のユーザの正面に位置する領域を「第2正面領域R5」と称する。図13では、第1正面領域R4が第4領域Z4からX方向右側の領域であり、第2領域Z2からX方向左側の領域である場合を代表例として説明するが、これに限定されず、第1、第2のユーザの位置に応じて領域R4、R5については適宜変更されうる。
【0126】
第3の調整では、輝度制御部12fは、例えば、第1正面領域R4には輝度制御係数αC1-1を新たな輝度制御係数αC2として設定する。これは、例えば、車載用途の場合には第1正面領域R4がメータやナビゲーション画面等のドライバー向けの映像が主に表示される領域であって、第1のユーザにとっての見易さを優先することが好ましいためである。
【0127】
また、輝度制御部12fは、例えば、第2正面領域R5には輝度制御係数αC1-1を新たな輝度制御係数αC2として設定する。これは、例えば、車載用途の場合には第2正面領域R5がオーディオやマルチメディアの対応画面等のパッセンジャー向けの映像が主に表示される領域であって、第2のユーザにとっての見易さを優先することが好ましいためである。
【0128】
なお、第3領域Z3のように正面領域R4、R5以外の他の領域については、表示する画像のコンテンツに応じて、新たな輝度制御係数αC2は、輝度制御係数αC1-1、αC1-2の一方あるいは第1の調整と同様にこれらの平均値とされうる。例えば、当該他の領域は、主に第1のユーザ向けのコンテンツを表示する場合には輝度制御係数αC1-1が、主に第2のユーザ向けのコンテンツを表示する場合には輝度制御係数αC1-2が、新たな輝度制御係数αC2として設定される。当該他の領域は、第1、第2のユーザ向けのコンテンツを表示する場合には、第1の調整または第2の調整と同様の方法で、新たな輝度制御係数αC2が設定されうる。このように、当該他の領域については、新たな輝度制御係数αC2が適宜設定されうる。
【0129】
第3の調整によれば、ディスプレイ20のうち第1のユーザ向けのコンテンツを表示する領域については第1のユーザが見易く、第2のユーザ向けのコンテンツを表示する領域については第2のユーザが見易い状態とされた画像を表示することができる。つまり、第3の調整によれば、画像のうち一方のユーザが視認する領域に表示される部分、および他方のユーザが視認する領域に表示される部分は、それぞれのユーザから見たコントラスト比の変化が低減され、双方のユーザに違和感を覚えさせないものとなる。
【0130】
〔第2の輝度制御:ユーザが三人以上である場合〕
輝度制御部12fは、例えば図14(a)に示すように、ディスプレイ20のX方向における左側から順に第1のユーザU1、第2のユーザU2、および第3のユーザU3の三人が検出された場合には、次のような輝度制御係数の調整を行う。
【0131】
輝度制御部12fは、例えば、第1のユーザU1と第2のユーザU2とを第1グループG1とし、第2のユーザU2と第3のユーザU3とを第2グループG2として、2つのグループG1、G2ごとに上記した第1ないし第3の調整のいずれか1つを実行する。
【0132】
例えば、輝度制御部12fは、ディスプレイ20の表示面20aのうち第1のユーザU1と第2のユーザU2との間に位置する調整領域R3、すなわち第1グループG1の調整領域R3を決定する。また、例えば、輝度制御部12fは、第1のユーザU1に対応する輝度制御係数αc1-1、第2のユーザU2に対応する輝度制御係数αc1-2を算出する。そして、輝度制御部12fは、第1グループG1の調整領域R3について、輝度制御係数αc1-1、αc1-2に基づいて、上記した第1または第2の調整により第1グループG1の輝度制御係数αc2-1を算出する。あるいは、例えば、輝度制御部12fは、第3の調整により、表示面20aのうち第1のユーザU1の正面に位置する領域については輝度制御係数αc1-1、第2のユーザU2の正面に位置する領域については輝度制御係数αc1-2、にそれぞれ決定してもよい。
【0133】
また、例えば、輝度制御部12fは、ディスプレイ20の表示面20aのうち第2のユーザU2と第3のユーザU3との間に位置する調整領域R3、すなわち第2グループG2の調整領域R3を決定する。例えば、輝度制御部12fは、第2のユーザU2に対応する輝度制御係数αc1-2、第3のユーザU3に対応する輝度制御係数αc1-3を算出する。そして、輝度制御部12fは、第2グループG2の調整領域R3について、輝度制御係数αc1-2、αc1-3に基づいて、上記した第1または第2の調整により第2グループG2の輝度制御係数αc2-2を算出する。あるいは、例えば、輝度制御部12fは、第3の調整により、表示面20aのうち第2のユーザU2の正面に位置する領域については輝度制御係数αc1-2、第3のユーザU3の正面に位置する領域については輝度制御係数αc1-3、にそれぞれ決定してもよい。
【0134】
これにより、隣接するユーザの間に位置するはざまの領域が適切な輝度制御係数に決定されるか、各ユーザの正面領域が対応するユーザの輝度制御係数に決定されるため、ユーザが三人の場合においても、各ユーザへの違和感が低減された画像表示が可能となる。
【0135】
また、輝度制御部12fは、例えば図14(b)に示すように、ディスプレイ20のX方向における左側から順に、第1のユーザU1、第2のユーザU2、第3のユーザU3および第4のユーザU4の四人が検出された場合も、基本的に上記と同様の調整を行う。
【0136】
例えば、輝度制御部12fは、第1のユーザU1と第2のユーザU2とを第1グループG1とし、第2のユーザU2と第3のユーザU3とを第2グループG2とし、第3のユーザU3と第4のユーザU4とを第3グループG3とする。そして、輝度制御部12fは、例えば、各グループG1、G2、G3について、それぞれ上記と同様に、第1ないし第3の調整のいずれか1つにより輝度制御係数を決定すればよい。
【0137】
これにより、ユーザが四人である場合においても、隣接するユーザの間に位置するはざまの領域が適切な輝度制御係数に決定されるか、各ユーザの正面領域が対応するユーザの輝度制御係数に決定されるため、各ユーザへの違和感が低減された画像となる。図示しないが、ユーザが五人以上の場合についても、隣接する二人のユーザを1つのグループとした4つのグループについて、隣接するユーザの間の領域について第1ないし第3の調整を実行すればよい。つまり、ユーザの数がn(n:3以上の整数)の場合、隣接する二人のユーザを1つのグループとして、(n-1)個のグループについてそれぞれ第1ないし第3の調整を実行すればよい。
【0138】
また、輝度制御部12fは、例えば図14(c)に示すように、ユーザが三人検出され、かつ一部の隣接ユーザ間の距離が所定以下の場合には、距離が所定以下の隣接ユーザらを一人のユーザとみなして、輝度制御係数の調整を実行する。ここでいう「所定以下」とは、例えば、限定するものではないが、検出された二人のユーザの目の距離が50cm以下である場合などをいう。例えば、ディスプレイ20のX方向における左側から順に、第1のユーザU1、第2のユーザU2、第3のユーザU3が存在し、ユーザU1、U2の距離が所定以下であり、第2のユーザU2と第3のユーザU3との距離が離れているとする。この場合、例えば、輝度制御部12fは、距離が近いユーザU1、U2によりなる第1グループG1を一人のユーザとみなし、第1グループG1に対応する輝度制御係数と第3のユーザU3に対応する輝度制御係数とに基づき、上記第1ないし第3の調整を実行する。
【0139】
これにより、第1グループG1と第3のユーザU3との間に位置するはざまの領域が適切な輝度制御係数に決定されるか、各ユーザの正面領域が対応するユーザの輝度制御係数に決定されるため、各ユーザへの違和感が低減された画像となる。なお、第1グループG1に対応する輝度制御係数については、例えば、第1のユーザU1または第2のユーザU2の一方に対応する輝度制御係数が採用される。上記では、ユーザが三人である場合について説明したが、ユーザが四人以上であって、その一部のユーザ同士の距離が所定以下の場合についても同様の方法で、輝度制御係数を調整すればよい。
【0140】
本実施形態によれば、日射推定部12cによる表示面20aでの日射領域R1/非日射領域R2の推定結果と、照度取得部12dが取得した環境照度とに基づいて、輝度制御部12fが日射画素群の輝度を非日射画素群の輝度よりも高くする第1の輝度制御を行う。また、輝度制御部12fは、ユーザの位置情報に基づく表示面20aの視線角度θの分布、ディスプレイ20の視野角特性データおよび反射特性データに基づいて、少なくとも非日射領域R2についてコントラスト比の差を所定以下とする第2の輝度制御を行う。これにより、必要以上に画素群全体の輝度を上げることなく、ディスプレイ20の視野角特性および光の反射特性を考慮した輝度制御を実行することで、一人のユーザに違和感を覚えさせない画像表示が可能な表示システムとなる。
【0141】
また、ユーザが二人である場合、各ユーザの視線角度θ1、θ2および輝度制御係数αc1-1、αc1-2を算出し、ディスプレイ20のうちユーザ間の領域、すなわちはざまの領域に位置する調整領域R3について新たな輝度制御係数αc2を設定する。輝度制御係数αc2は、例えば、輝度制御係数αc1-1、αc1-2の平均値とされるか、あるいはコントラスト比の差が所定条件を満たす隣接領域に新たな領域を追加し、新たな領域に輝度制御係数αc1-1、αc1-2の間の値とされる。これにより、調整前に比べて、はざまの領域におけるコントラスト比の差が低減され、各ユーザのいずれから見てもコントラスト比の差に起因する違和感が低減された画像を表示することが可能な表示システムとなる。
【0142】
さらに、ユーザが二人である場合、ディスプレイ20のうち第1のユーザの正面領域については輝度制御係数αc1-1、第2のユーザの正面領域については輝度制御係数αc1-2、を新たな輝度制御係数αc2として設定してもよい。これにより、第1のユーザが主に注視する領域については第1のユーザから見たコントラスト比の差が低減され、第2のユーザが主に注視する領域については第2のユーザから見たコントラスト比の差が低減された、両ユーザともに違和感が低減された表示となる。
【0143】
また、ユーザが三人以上である場合、隣接する二人のユーザを1つのグループとみなし、各グループについて上記した第1ないし第3の調整のいずれか1つにより、新たな輝度制御係数を決定すればよい。これにより、隣接するユーザの間に位置するはざまの領域が適切な輝度制御係数に決定されるか、各ユーザの正面領域が対応するユーザの輝度制御係数に決定され、各ユーザにとってコントラスト比の差が低減された表示となる。また、ユーザが三人以上の場合において、一部の隣接するユーザ間の距離が所定以下のときには、当該隣接するユーザを一人のユーザとみなし、距離が離れた隣接ユーザ間について上記した第1ないし第3の調整のいずれか1つを実行すればよい。これによっても、各ユーザにとってコントラスト比の差が低減された表示とすることができる。
【0144】
(他の実施形態)
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0145】
本開示に記載の制御部12及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部12及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部12及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0146】
なお、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0147】
12c 日射推定部
12d 照度取得部
12e 位置情報取得部
12f 輝度制御部
20 ディスプレイ
20a 表示面
34 撮像装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14