(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156504
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 15/04 20060101AFI20241029BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B41J15/04
B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071019
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】野中 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】亀田 航
【テーマコード(参考)】
2C056
2C060
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056FA10
2C056HA29
2C060BC03
2C060BC12
2C060BC15
2C060BC34
2C060BC37
2C060BC38
2C060BC47
2C060BC55
2C060BC72
2C060BC93
(57)【要約】
【課題】メディアクランプと記録ヘッドとの干渉を防止したインクジェットプリンタを提供する。
【解決手段】本発明に係るインクジェットプリンタ10は、プラテン16と、本体フレーム19と、記録ヘッド22と、グリットローラ51と、ピンチローラ53と、メディアクランプ54と、昇降機構60と、を備えている。ピンチローラ53は、第2保持部材64に保持されている。第2保持部材64は、本体フレーム19に接触または離間可能な係止部材64abを備える。昇降機構60により、第2保持部材64が上方に回転されると、ピンチローラ53がグリットローラ51から離間し、メディアクランプ54がプラテン16から離間し、係止部材64abが本体フレーム19に接触する。係止部材64abにより第2保持部材64の昇降が抑制され、メディアクランプ54と記録ヘッド22との干渉が防止されている。
【選択図】
図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアが載置される載置面を有するプラテンと、
前記プラテンに載置された前記メディアを第1方向に搬送する搬送機構と、
前記プラテンの上方に配置され、前記第1方向と平面視にて直交する第2方向に延びる本体フレームと、
前記第2方向に移動可能に構成され、前記本体フレームに対し前記第1方向の一方に位置し、前記メディアにインクを吐出する記録ヘッドと、を備え、
前記搬送機構は、
前記プラテンに設けられ、前記メディアを前記第1方向に搬送するように駆動するグリットローラと、
前記グリットローラの上方に配置され、前記グリットローラとともに前記メディアを挟む挟持位置と前記グリットローラから離間した離間位置との間にて、前記グリットローラに接近または離間するピンチローラと、
前記プラテンの上方に配置され、前記載置面に向かって前記メディアを付勢するクランプ部を備え、少なくとも一部が前記記録ヘッドよりも下方に配置され、前記プラテンに接近および離間可能に構成されたメディアクランプと、
前記ピンチローラおよび前記メディアクランプを昇降させる昇降機構と、を備え、
前記昇降機構は、
前記第2方向に延び、前記本体フレームの下方に配置されたシャフトと、
前記シャフトを回転させる回転手段と、
前記シャフトに保持され、前記ピンチローラを保持する第1保持部材と、
前記シャフトに保持され、前記メディアクランプを保持する第2保持部材と、を備え、
前記第1保持部材は、前記シャフトの回転に伴い、前記本体フレームに対して接触および離間可能に構成された係止部材を備え、
前記回転手段によって前記シャフトを前記第2方向周りの一方に回転させたとき、前記ピンチローラを前記挟持位置に移動させるとともに前記メディアクランプが前記プラテンに接近し、かつ前記係止部材が前記本体フレームから離間し、前記回転手段によって前記シャフトを前記第2方向周りの他方に回転させたとき、前記ピンチローラを前記離間位置に移動させるとともに前記メディアクランプが前記プラテンから離間し、かつ前記係止部材が前記本体フレームに接触するように構成されているインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記第2保持部材は、前記シャフトが前記第2方向に挿通される挿通孔を備え、
前記挿通孔は、前記第2方向視にて、前記シャフトが第1の角度だけ回転したときの通過領域の形状を有し、
前記係止部材は、前記第2保持部材が上下方向に第2の角度だけ回転することにより、前記本体フレームに接触および離反可能に構成され、
前記第2の角度は、前記第1の角度よりも小さい、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記第2保持部材は、前記第1保持部材から独立して前記第2方向に移動可能に前記シャフトに保持されている、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記メディアクランプは、
前記第2保持部材に保持される保持部と、
前記第2方向において前記クランプ部に並んで配置され、前記プラテンを押圧する延出部と、
前記保持部と前記延出部とを接続する接続部と、を備え、
前記延出部と前記接続部とが板ばねとして形成されている、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記メディアクランプは、前記延出部と前記クランプ部と間に位置するスリットを備えている、請求項4に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記メディアクランプは、前記クランプ部の前記第1方向における前記メディアの搬送の上流側の端部に接続された挿入部を備え、
前記挿入部は、前記メディアの搬送の上流側の端部から上方に向かって延びている、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、印刷時に記録メディアがプラテンから浮き上がることを防ぐために、記録メディアを上方から押さえる規制部材(メディアクランプ)を備える印刷装置(インクジェットプリンタ)が知られている。例えば、特許文献1には、媒体支持部に支持された媒体に印刷をする印刷部と、媒体を印刷部に搬送する搬送部と、媒体が媒体支持部から浮き上がることを規制する規制部材と、を備えた印刷装置が開示されている。印刷部は、媒体の幅方向に移動可能なキャリッジと、キャリッジの下部に保持された記録ヘッドと、を備えている。搬送部は、媒体を搬送する駆動力を付与する駆動ローラと、駆動ローラに対向し、駆動ローラに離間または接近する従動ローラと、を備えている。係る印刷装置では、従動ローラが駆動ローラから離間する場合に規制部材が媒体支持部から離間し、従動ローラが駆動ローラに接近する場合に規制部材が媒体支持部に接近するように構成されている。これにより、作業者が媒体を媒体支持台にセットする際に、規制部材が邪魔にならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載された印刷装置では、規制部材が媒体支持部から離間したときの規制部材の上端の位置は、記録ヘッドの下端の位置よりも高い位置に配置される。したがって、記録ヘッドと規制部材とが干渉しないように、規制部材を媒体支持部から離間させる前に、キャリッジをホームポジションに移動させておく。ホームポジションとは、例えば、キャリッジが媒体の幅方向に移動するときの移動範囲の一端である。しかしながら、例えば、印刷装置のメンテンナンス等の際には、規制部材が媒体支持部から離間した状態において、キャリッジが媒体の幅方向に移動する場合がある。このとき、係る印刷装置では、規制部材と記録ヘッドとが干渉する虞がある。
【0005】
本発明は、係る点に鑑みてなされたものであり、その目的は、メディアクランプと記録ヘッドとの干渉を防止したインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインクジェットプリンタは、メディアが載置される載置面を有するプラテンと、前記プラテンに載置された前記メディアを第1方向に搬送する搬送機構と、前記プラテンの上方に配置され、前記第1方向と平面視にて直交する第2方向に延びる本体フレームと、前記第2方向に移動可能に構成され、前記本体フレームに対し前記第1方向の一方に位置し、前記メディアにインクを吐出する記録ヘッドと、を備えている。前記搬送機構は、前記プラテンに設けられ、前記メディアを前記第1方向に搬送するように駆動するグリットローラと、前記グリットローラの上方に配置され、前記グリットローラとともに前記メディアを挟む挟持位置と前記グリットローラから離間した離間位置との間にて、前記グリットローラに接近または離間するピンチローラと、前記プラテンの上方に配置され、前記載置面に向かって前記メディアを付勢するクランプ部を備え、少なくとも一部が前記記録ヘッドよりも下方に配置され、前記プラテンに接近および離間可能に構成されたメディアクランプと、前記ピンチローラおよび前記メディアクランプを昇降させる昇降機構と、を備えている。前記昇降機構は、前記第2方向に延び、前記本体フレームの下方に配置されたシャフトと、前記シャフトを回転させる回転手段と、前記シャフトに保持され、前記ピンチローラを保持する第1保持部材と、前記シャフトに保持され、前記メディアクランプを保持する第2保持部材と、を備えている。前記第1保持部材は、前記シャフトの回転に伴い、前記本体フレームに対して接触および離間可能に構成された係止部材を備えている。前記回転手段によって前記シャフトを前記第2方向周りの一方に回転させたとき、前記ピンチローラを前記挟持位置に移動させるとともに前記メディアクランプが前記プラテンに接近し、かつ前記係止部材が前記本体フレームから離間し、前記回転手段によって前記シャフトを前記第2方向周りの他方に回転させたとき、前記ピンチローラを前記離間位置に移動させるとともに前記メディアクランプが前記プラテンから離間し、かつ前記係止部材が前記本体フレームに接触するように構成されているインクジェットプリンタ。
【0007】
係るインクジェットプリンタによれば、前記昇降機構の備える前記シャフトにより前記第1保持部材および前記第2保持部材が保持されている。前記第1保持部材は、前記ピンチローラを保持し、前記第2保持部材は、前記メディアクランプを保持している。前記回転手段を前記第2方向周りに回転させることにより、前記シャフトが回転し、前記第1保持部材および前記第2保持部材が昇降する。前記第2保持部材は、前記本体フレームに接触または離間可能に構成された係止部材を備えている。前記シャフトを前記第2方向周りの一方に回転させると、前記ピンチローラは前記挟持位置に移動し、前記メディアクランプは、前記プラテンに接近し、前記係止部材は、前記本体フレームから離間する。前記シャフトを前記第2方向周りの他方に回転させると、前記ピンチローラは前記離間位置に移動し、前記メディアクランプは、前記プラテンから離間し、前記係止部材は、前記本体フレームに接触する。したがって、このとき、前記昇降機構による前記第1保持部材および前記第2保持部材の昇降が前記係止部材により、抑制されている。このことにより、前記メディアクランプが前記記録ヘッドに干渉することを防止することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、メディアクランプと記録ヘッドとの干渉を防止したインクジェットプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】インクジェットヘッドおよびカッティングヘッドの正面図である。
【
図4】一実施形態に係るプリンタの制御装置のブロック図である。
【
図5】一実施形態に係る第1保持部材およびピンチローラの斜視図である。
【
図6】一実施形態に係る第2保持部材およびメディアクランプの斜視図である。
【
図7A】ピンチローラが離間位置にあり、かつメディアクランプがメディア挿入位置にあるときの第2保持部材周辺の側面図である。
【
図7B】ピンチローラが挟持位置にあり、かつメディアクランプがクランプ位置にあるときの第2保持部材周辺の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係るインクジェットプリンタ10(以下、プリンタ10とする。)について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るプリンタ10は、メディア5に対して印刷および切断(カッティング)が可能なプリント&カット機である。
【0011】
以下の説明では、左、右、上、下とは、プリンタ10の正面にいる作業者から見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、プリンタ10から上記作業者に近づく方を前方、遠ざかる方を後方とする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。図面中の符号Yは主走査方向を表す。本実施形態では、主走査方向Yは、左右方向である。図面中の符号Xは副走査方向を表す。副走査方向Xは主走査方向Yと交差する方向(例えば、平面視で垂直に交差する方向)である。副走査方向Xは、第1方向の一例である。主走査方向Yは、第2方向の一例である。ただし、上記方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
【0012】
メディア5は、例えば、記録紙である。ただし、メディア5は、記録紙に限定されない。例えば、メディア5は、PVC、ポリエステルなどの樹脂材料から形成されたシートや台紙と台紙上に積層されかつ粘着剤が塗布された剥離紙とからなるシール材であってもよいし、樹脂製やガラス製などの透明なシートであってもよいし、金属製やゴム製等のシートであってもよい。本明細書において「切断」、「カッティング」には、メディア5の厚み方向の全体を切断する場合(例えば、シール材の台紙および剥離紙の両方を切断する場合)と、メディア5の厚み方向の一部を切断する場合(例えば、シール材の台紙は切断せず、剥離紙のみを切断する場合)とが含まれる。
【0013】
図1に示すように、プリンタ10は、箱状に形成されたプリンタ本体10aと、ロール支持部材18と、を備えている。プリンタ本体10aには、内部空間12Sが形成されている。プリンタ本体10aは、フロントカバー23を含む。ここでは、フロントカバー23は、上端を軸に回転可能なように、プリンタ本体10aに支持されている。フロントカバー23を上方に回転させることによって、プリンタ本体10aの内部空間12Sと外部空間とが連通される。内部空間12Sは、後述するインクジェットヘッド21によってメディア5に印刷が行われる空間である。このように、内部空間12Sがフロントカバー23により覆われていることによって、印刷中等において外部空間の塵および埃が内部空間12Sに入り込み難い。
【0014】
図1に示すように、フロントカバー23の下部には、窓23Aが設けられている。窓23Aは、例えば、透明のアクリル板によって形成されている。窓23Aには、外部空間の光(例えば紫外線)が内部空間12Sに到達しないように処理が施されている。ユーザは、窓23Aから本体12aの内部を視認することが可能である。
【0015】
ロール支持部材18は、プリンタ本体10aの下方に配置されている。ロール支持部材18は、主走査方向Yに延びる部材であり、ロール状に形成されたメディア5を支持する。ロール支持部材18に支持されたメディア5がプリンタ本体10aを通り、プリンタ10の後方から前方に向かって引き出される。引き出されたメディア5は、後述するプラテン16に載置される。
【0016】
次に、プリンタ10の内部の構成について説明する。
図2に示すように、プリンタ10は、メディア5が載置されるプラテン16と、本体フレーム19と、キャリッジ17(
図3参照)と、インクジェットヘッド21と、カッティングヘッド31と、ヘッド移動機構40と、搬送機構50と、制御装置90とを備えている。なお、
図1に示すように、プラテン16は、その前端付近が内部空間12Sから外部に突出している。プリンタ本体10aは、主走査方向Yに延びている。
【0017】
図2に示すように、プラテン16は、メディア5への印刷およびメディア5を切断する際、メディア5を支持するものである。プラテン16は、メディア5が載置される載置面16Aを有する。メディア5への印刷およびメディア5の切断は、プラテン16上で行われる。プラテン16は主走査方向Yに延びている。
【0018】
プラテン16の上方には、主走査方向Yに延びる本体フレーム19が配置されている。本体フレーム19の前面には、ガイドレール15が固定されている。
【0019】
図3に示すように、キャリッジ17は、その後面をガイドレール15に支持され、主走査方向Yに摺動可能に構成されている。
図3に示すように、キャリッジ17は、インクヘッドキャリッジ20と、カッティングキャリッジ30とを備えている。インクヘッドキャリッジ20には、インクジェットヘッド21が搭載されている。カッティングキャリッジ30には、カッティングヘッド31が搭載されている。本実施形態では、カッティングキャリッジ30は、インクヘッドキャリッジ20の左方に配置されている。
【0020】
インクジェットヘッド21は、プラテン16に載置されたメディア5に印刷を行う。インクジェットヘッド21は、主走査方向Yに移動可能に構成されている。インクジェットヘッド21は、インクを吐出する複数のノズル(図示せず)を有する記録ヘッド22を備えている。ここでは、5つの記録ヘッド22がインクヘッドキャリッジ20に支持されている。本実施形態では、記録ヘッド22は、本体フレーム19の前方に位置している。5つの記録ヘッド22は、互いに異なる5つの色、例えば、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインク、ホワイトインクを吐出する。ただし、記録ヘッド22の個数は5個に限定されない。また、記録ヘッド22が吐出するインクの色も何ら限定されない。連結部材80は、インクジェットヘッド21と、カッティングヘッド31と連結している。したがって、インクジェットヘッド21とカッティングヘッド31とは、同時に主走査方向Yに移動する。即ち、キャリッジ17が主走査方向Yに移動すると、インクジェットヘッド21およびカッティングヘッド31が主走査方向Yに移動する。
【0021】
カッティングヘッド31は、プラテン16に載置されたメディア5を切断する。カッティングヘッド31は、主走査方向Yに移動可能に構成されている。
図3に示すように、カッティングヘッド31は、カッターホルダ32と、カッター33と、ソレノイド34(
図4参照)を備えている。カッター33は、カッターホルダ32に保持されており、カッターホルダ32がカッティングキャリッジ30に取り付けられている。カッターホルダ32はソレノイド34に接続され、ソレノイド34と共に上下方向に移動可能な部材である。ソレノイド34は制御装置90(
図4参照)によって制御される。ソレノイド34がON/OFFされると、カッターホルダ32に保持されたカッター33は、上下方向に移動してメディア5に接触し、あるいはメディア5から離反する。
【0022】
ヘッド移動機構40は、プラテン16に載置されたメディア5に対してキャリッジ17を相対的に主走査方向Yに移動させる機構である。ヘッド移動機構40は、キャリッジ17を主走査方向Yに移動させる。なお、ヘッド移動機構40の構成は特に限定されない。
図2に示すように、ヘッド移動機構40は、プーリ41と、プーリ42と、ベルト43と、キャリッジモータ44とを備えている。プーリ41は、ガイドレール15の左端側に設けられている。プーリ42は、ガイドレール15の右端側に設けられている。ベルト43は、プーリ41とプーリ42とに巻き掛けられている。ベルト43は、カッティングキャリッジ30の背面上部に固定されている。左側のプーリ41には、キャリッジモータ44が接続されている。ただし、キャリッジモータ44は、右側のプーリ42に接続されていてもよい。ここでは、キャリッジモータ44が駆動して、プーリ42が回転することにより、プーリ41とプーリ42との間においてベルト43が走行する。これにより、カッティングキャリッジ30が主走査方向Yに移動する。すなわち、キャリッジモータ44は、カッティングキャリッジ30を主走査方向Yに移動させる。インクヘッドキャリッジ20は、カッティングキャリッジ30の移動に伴って主走査方向Yに移動する。キャリッジモータ44は、カッティングキャリッジ30を介してインクヘッドキャリッジ20を間接的に主走査方向Yに移動させる。キャリッジモータ44は、制御装置90に制御される。
【0023】
図2に示すように、搬送機構50は、プラテン16に載置されたメディア5をインクジェットヘッド21およびカッティングヘッド31に対して副走査方向Xに移動させるものである。ここでは、搬送機構50は、プラテン16に載置されたメディア5を副走査方向Xに移動させる。搬送機構50は、グリットローラ51と、フィードモータ52と、ピンチローラ53と、メディアクランプ54と、昇降機構60(
図8参照)と、を備えている。
【0024】
グリットローラ51は、プラテン16に設けられている。グリットローラ51は、グリットローラ51の上部が外部に露出するようにプラテン16に埋設されている。グリットローラ51は、主走査方向Yに並列している。グリットローラ51の数は、特に限定されない。グリットローラ51は、ピンチローラ53の下方に配置されている。グリットローラ51は、ピンチローラ53との間にメディア5を挟み込む。グリットローラ51は、フィードモータ52に接続されている。フィードモータ52は、制御装置90により制御される。グリットローラ51とピンチローラ53との間にメディア5が挟まれた状態で、フィードモータ52が駆動してグリットローラ51が回転すると、メディア5は副走査方向Xに搬送される。本実施形態では、グリットローラ51とピンチローラ53との間にメディア5が挟まれた状態にて、メディア5は、前方から後方または後方から前方に向かって搬送される。
【0025】
ピンチローラ53は、グリットローラ51と上下方向で対向するように、グリットローラ51の上方に配置されている。ピンチローラ53は、例えば、ゴムにより形成されている。ただし、ピンチローラ53の材料は、特に限定されない。ピンチローラ53の個数は、グリットローラ51の数と同じである。ただし、ピンチローラ53の数は、特に限定されない。
図5に示すように、ピンチローラ53は、後述する第1保持部材63により保持されている。ピンチローラ53は、昇降機構60(
図8参照)により、離間位置と挟持位置との間にて昇降する。ここで、離間位置とは、
図7Aに示すように、ピンチローラ53がグリットローラ51から上方に離間した位置である。挟持位置とは、
図7Bに示すように、ピンチローラ53がグリットローラ51に接近し、ピンチローラ53がグリットローラ51とともにメディア5(
図2参照)を挟む位置である。
【0026】
メディアクランプ54は、プラテン16の上方に配置されている。メディアクランプ54は、ピンチローラ53と主走査方向Yに並んで配置されている。
図6に示すように、メディアクランプ54は、後述する第2保持部材64により保持されている。本実施形態では、
図8に示すように、メディアクランプ54が主走査方向Yに並んで2つ設けられている。ここでは、主走査方向Yに並んだ2つのメディアクランプ54のうち、左方に配置されているメディアクランプ54について説明する。主走査方向Yに並んだ2つのメディアクランプ54のうち、右方に配置されているメディアクランプ54は、以下の説明に対して左右方向が逆である。
図6および
図7Aに示すように、メディアクランプ54は、保持部54aと、立ち下げ部54bと、延出部54cと、スペーサ54dと、クランプ部54eと、挿入部54fと、を備えている。なお、メディアクランプ54の各部54a~54fは、単一の部材により形成されていてもよく、別体であってもよい。また、各部54a~54fのうち、2つ以上が一体化されていてもよい。本実施形態では、各部54a~54fのうち、スペーサ54dのみ別体である。メディアクランプ54は、昇降機構60(
図8参照)により、クランプ位置とメディア挿入位置との間にて昇降する。ここで、クランプ位置とは、
図7Bに示すように、クランプ部54eがプラテン16の上方にてメディア5(
図2参照)を付勢する位置である。メディア挿入位置とは、
図7Aに示すように、クランプ部54eがクランプ位置にあるときよりも上方に配置されるときの位置である。作業者は、メディアクランプ54がメディア挿入位置にあるときに、クランプ部54eの下方にメディア5の一部が載置されるようにして、プラテン16にメディア5を載置する。
【0027】
図6および
図7Aに示すように、保持部54aは、第2保持部材64により保持される部分であって、メディアクランプ54のうち後方に位置する部分である、本実施形態では、
図7Bに示すように、メディアクランプ54がクランプ位置にあるとき、保持部54aは、プラテン16に対して略水平となる。本実施形態では、保持部54aはネジ54aaにより、第2保持部材64に保持されている。ただし、保持部54aの保持は、ネジ54aaに限定されない。
【0028】
立ち下げ部54bは、保持部54aの前端から下向きに屈曲し、下方に延びる部分である。立ち下げ部54bは、後述する延出部54cと共に板ばねとして機能する部分である。後述する回転手段62(
図8参照)の操作によってメディアクランプ54がクランプ位置からメディア挿入位置に移動したとき、立ち下げ部54bと延出部54cとにより生じる反力によってメディアクランプ54、特に保持部54aが浮き上がり、メディアクランプ54とプラテン16との間の隙間を拡大させる。メディアクランプ54がクランプ位置にあるとき、立ち下げ部54bは略鉛直方向に延びている。立ち下げ部54bは、本発明における接続部の一例である。立ち下げ部54bは、保持部54aの前端および後述する延出部54cの後端に接続されている。
【0029】
延出部54cは、プラテン16を下方に押圧する部分であって、立ち下げ部54bの下端から前方に延びている。延出部54cは、副走査方向Xの一方側(前方側)がクランプ部54eと一体形成されている。延出部54cは、副走査方向Xの他方側(後方側)、すなわち、クランプ部54eと一体形成されていない部分が板ばねとして機能しており、この部分が変形することで、副走査方向Xの一方側がプラテン16に押圧される。本実施形態では、
図7Aに示すように延出部54cは、メディアクランプ54がメディア挿入位置にあるとき、立ち下げ部54bの下端からプラテン16側に下降傾斜している。すなわち、立ち下げ部54bの下端から前方および下方に延びている。このとき、延出部54cの前部は記録ヘッド22よりも下方に配置されている。本実施形態では、延出部54cの下面にスペーサ54dが配置されており、延出部54cは、スペーサ54dを介して、プラテン16を押圧する。したがって、延出部54cの下方には、メディア5は載置されない。スペーサ54dは、延出部54c(上述した副走査方向Xの他方側の部分)の下面に配置されている。スペーサ54dは、矩形状の樹脂製の板である。
図7Bに示すように、メディアクランプ54がクランプ位置にあるとき、スペーサ54dの全体がプラテン16に接触する。このとき、延出部54cは、スペーサ54dを介してプラテン16から垂直抗力を受け、プラテン16に対して略水平となる。このとき、プラテン16は、延出部54cから受ける反力により押圧されている。延出部54cは、前方および下方に延びる板形状であるため、メディアクランプ54がクランプ位置にあるとき、延出部54cは、上下方向にかかる力のつり合いにより略水平な状態を維持する。スペーサ54dの上下方向の長さは、メディア5の上下方向の長さよりも長く形成されている。スペーサ54dは、例えば、延出部54cの下面に接着剤により接着される。
【0030】
図6に示すように、クランプ部54eは、メディア5を付勢する部分であって、後述するスリット54kを介して延出部54cの右方に隣接する部分と、延出部54cの副走査方向Xの一方側の部分と一体形成されて前方に延びる部分と、により形成されている。したがって、
図7Aに示すように、メディアクランプ54がクランプ位置にあるとき、クランプ部54eの前部は、記録ヘッド22よりも下方に配置されている。延出部54cがプラテン16を押圧することにより延出部54cと一体形成されるクランプ部54eがメディア5を付勢する。延出部54cとクランプ部54eとは、それぞれの下面が面一に形成されている。したがって、
図7Bに示すように、メディアクランプ54がクランプ位置にあるとき、クランプ部54eは、延出部54cと共に、プラテン16に対して略水平となる。クランプ部54eとプラテン16との上下方向の間隔は、スペーサ54dの上下方向の長さと等しい。すなわち、クランプ部54eとプラテン16との上下方向の間隔は、メディア5の上下方向の長さよりも長い。メディア5のうち、クランプ部54eの下方に配置されている部分がメディアクランプ54により付勢される。
図6に示すように、クランプ部54eには、前後方向に並んで配置された2つの確認孔54eaが形成されている。確認孔54eaは、メディア5の載置の確認のために使用される孔である。確認孔54eaは、クランプ部54eを上下方向に貫通する孔である。メディア5がクランプ部54eの下方に配置されたとき、作業者は、メディアクランプ54の上方から確認孔54eaを通してメディア5を視認することができる。したがって、確認孔54eaによりクランプ部54eの下方にメディア5が載置されたか否かを把握することができる。なお、確認孔54eaの数は、2つに限定されない。
【0031】
延出部54cとクランプ部54eとの間には、スリット54kが形成されている。本実施形態では、スリット54kは、クランプ部54eの後端から副走査方向Xの一方(後方)に延びている。スリット54kは、主走査方向Yにおいて延出部54cとクランプ部54eとの略中間の位置に形成されている。
【0032】
挿入部54fは、クランプ部54eの後端部に設けられる部分である。挿入部54fは、クランプ部54eの後端部から後方および上方に向かって延びている。したがって、挿入部54fは、クランプ部54eに対して上方に傾斜している。
図7Bに示すように、プラテン16と挿入部54fにおける上端との上下方向の間隔H2は、プラテン16とクランプ部54eとの上下方向の間隔H3よりも長い。
【0033】
図8に示すように、昇降機構60は、ピンチローラ53およびメディアクランプ54を昇降させる機構である。昇降機構60は、シャフト61と、回転手段62と、第1保持部材63と第2保持部材64とを備えている。
【0034】
シャフト61は、主走査方向Yに延びる。
図7Aに示すように、シャフト61は、本体フレーム19より下方に配置されている。シャフト61は、プラテン16より上方に配置されている。本実施形態では、シャフト61は、断面形状が六角形である。
図8に示すように、シャフト61は、第1保持部材63および第2保持部材64を保持する。第1保持部材63および第2保持部材64は、シャフト61に対して主走査方向Yに摺動可能に設けられている。第1保持部材63および第2保持部材64は、互いに独立してシャフト61に摺動可能である。
【0035】
回転手段62は、プラテン16の右方に配置されている。回転手段62は、シャフト61を
図8の矢印R1方向および矢印R2方向に回転させる。回転手段62は、ローディングレバー62aとリンク機構62bとを備えている。ローディングレバー62aは、リンク機構62bの前端に設けられている。リンク機構62bの後端は、シャフト61と接続している。
図2に示すように、ローディングレバー62aは、プリンタ本体10aの前方に延びている。作業者は、プリンタ本体10aの前方からローディングレバー62aを操作することができる。ローディングレバー62aを
図8の矢印U1の方向に押し上げると、シャフト61が矢印R1の方向に回転する。このとき、シャフト61の回転に伴い、第1保持部材63および第2保持部材64が上方に回転する。一方、ローディングレバー62aを
図8の矢印D1の方向に押し下げると、シャフト61が矢印R2の方向に回転する。このとき、シャフト61の回転に伴い、第1保持部材63および第2保持部材64が下方に回転する。
【0036】
第1保持部材63は、プラテン16(
図2参照)よりも上方に配置されており、ピンチローラ53を保持する。
図5に示すように、第1保持部材63は、シャフト61(
図8参照)に支持される本体部63aと、本体部63aに支持される腕部63bと、腕部63bを本体部63aに回動可能に支持する軸63dと、腕部63bに左右方向に挿通された、左右方向に延びる軸63eと、軸63dに巻きかけられたねじりコイルばね63fと、を備えている。軸63eには、ピンチローラ53が支持されている。本体部63aは、側面視にて六角形に形成された第1挿通孔63aaが貫通形成されている。第1挿通孔63aaには、主走査方向Yに延びるシャフト61(
図8参照)が挿通される。腕部63bは、軸63dを中心に回転する。腕部63bは、左右方向に突設された突出部63baを備えている。本体部63aには開口63bbが形成されており、突出部63baは開口63bbに挿入される。開口63bbは、上下方向に延びる長穴である。突出部63baは、開口63bb内を上下に移動する。したがって、腕部63bが上下方向に移動する範囲内で、ピンチローラ53を上下方向に移動させることができる。腕部63bに設けられた軸63eによりピンチローラ53が回転可能に支持される。ねじりコイルばね63fは、軸63dに巻きかけられているので、ねじりコイルばね63fにより、腕部63bは、下方へ向かって荷重がかけられている。本実施形態では、2つのねじりコイルばね63fが設けられているが、ねじりコイルばね63fの個数は、特に限定されない。
【0037】
図6に示すように、第2保持部材64は、シャフト61(
図8参照)に支持される本体部64aと、本体部64aの前方に接続され、メディアクランプ54を保持する腕部64bと、を備えている。本体部64aと腕部64bとは、着脱可能に構成されている。したがって、腕部64bを本体部64aから取り外すことにより、シャフト61からメディアクランプ54を取り外すことが可能である。本体部64aの前端上部には、第2保持部材64の上下方向の回転量を決める係止部材64abを備えている。
図7Aに示すように、係止部材64abは、本体部64aから上方かつ前方に延びている。係止部材64abは、前後方向の略中間の位置で下方に折れ曲がる形状を有している。係止部材64abの前端の部分である先端部64acは、
図7Aに示すように、メディアクランプ54がメディア挿入位置にあるとき、本体フレーム19に接する部分である。腕部64bは、メディアクランプ54を取り付ける取付部64baと、取手部64bbと、を備えている。本体部64aには、第2挿通孔64aaが貫通形成されている。第2挿通孔64aaは、主走査方向Yに延びるシャフト61が挿通される。第2挿通孔64aaは、本発明における挿通孔の一例である。
図7Bに示すように、第2挿通孔64aaの側面視の形状は、シャフト61の断面の形状である六角形状が第1の角度α1だけ回転するときに必要な通過領域が肉抜きされた形状となっている。したがって、シャフト61が挿通されるとき、シャフト61と第2挿通孔64aaとの間には、隙間64adが生じている。取付部64baの下面には、メディアクランプ54の保持部54aが取り付けられる。取手部64bbは、取付部64baの上方に配置されている。取手部64bbは、前方に延びている。取手部64bbは、作業者がメディアクランプ54を本体部64aから取り外すときに掴む部分である。
図7Bに示すように、メディアクランプ54がメディア挿入位置にあるときの先端部64acと、メディアクランプ54がクランプ位置にあるときの先端部64acと、は、シャフト61を中心として、第2の角度α2だけ位置がずれている。なお、
図7Bにおいて、メディアクランプ54がメディア挿入位置にあるときの係止部材64abは、2点鎖線にて図示されている。第2の角度α2は、第1の角度α1よりも小さい。
【0038】
図4に示すように、制御装置90は、メディア5への印刷およびメディア5の切断を制御する装置である。制御装置90の構成は特に限定されない。制御装置90は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えば、I/Fと、CPUと、ROMと、RAMと、記憶装置と、を備えている。
図1に示すように、制御装置90は、プリンタ本体10aの内部に設けられている。ただし、制御装置90はプリンタ本体10aの内部に設けられていなくてもよい。例えば、制御装置90は、プリンタ本体10aの外部に設置されたコンピュータなどであってもよい。この場合、制御装置90は、有線または無線を介してプリンタ本体10aと通信可能に接続されている。
【0039】
図4に示すように、制御装置90は、キャリッジモータ44の駆動を制御する。このことにより、プーリ42の回転、およびベルト43(
図2参照)の走行を制御する。これにより、制御装置90は、インクジェットヘッド21およびカッティングヘッド31の主走査方向Yへの移動を制御する。制御装置90は、インクジェットヘッド21がインクを吐出するタイミングやインクの吐出量等を制御する。制御装置90は、ソレノイド34を制御することにより、カッター33の上下方向の移動を制御する。制御装置90がフィードモータ52の駆動を制御してグリットローラ51の回転を制御することにより、メディア5が副走査方向Xに搬送される。
【0040】
以上、プリンタ10の構成について説明した。次に、昇降機構60の動作の一例として、プラテン16にメディア5を載置するときのプリンタ10の動作について説明する。
【0041】
プラテン16にメディア5を載置するとき、作業者は、ピンチローラ53を離間位置に配置し、かつメディアクランプ54をメディア挿入位置に配置する。このとき、作業者は、
図8に示すローディングレバー62aをU1の方向に押し上げる。これにより、シャフト61がR1の方向に回転する。シャフト61には、第1保持部材63および第2保持部材64が保持されているため、第1保持部材63および第2保持部材64がR1の方向に回転する。第1保持部材63がR1の方向に回転することにより、
図7Aに示すように、ピンチローラ53がグリットローラ51から離間し、ピンチローラ53が離間位置に配置される。第2保持部材64がR1の方向に回転することにより、メディアクランプ54は、プラテン16から離間し、メディアクランプ54がメディア挿入位置に配置される。第2保持部材64の係止部材64abにおける先端部64acが本体フレーム19の下端部19aに接触し、第2保持部材64の回動が規制されて止まる。延出部54cおよびクランプ部54eの前端は、プラテン16に接触していてもよい。このとき、メディアクランプ54の立ち下げ部54bと延出部54cとにより生じる反力により、保持部54aと立ち下げ部54bと、延出部54cのうちの後方部と、が浮き上がる。したがって、延出部54cと部分的に一体形成されているクランプ部54eも同様に浮き上がる。この状態において、作業者は、プラテン16の後方から前方に向かってメディア5を挿入する。メディア5は、ピンチローラ53とグリットローラ51との間を通り、かつ挿入部54fおよびクランプ部54eとプラテン16との間を通る。作業者は、確認孔54ea(
図6参照)を上方から確認し、メディア5が確認孔54eaの下方に配置されているか否かを確認する。確認孔54eaの下方にメディア5が配置されていれば、クランプ部54eの下方にメディア5が配置されている。
【0042】
プラテン16上にてメディア5の載置が完了すると、作業者は、
図8に示すローディングレバー62aをD1の方向に押し下げる。これにより、シャフト61がR2の方向に回転する。シャフト61には、第1保持部材63および第2保持部材64が保持されているため、第1保持部材63および第2保持部材64がR2の方向に回転する。第1保持部材63がR2の方向に回転すると、ピンチローラ53は、グリットローラ51に接近し、挟持位置に配置される。したがって、
図7Bに示すように、メディア5がピンチローラ53とグリットローラ51とに挟持される。第2保持部材64がR2の方向に回転すると、係止部材64abにおける先端部64acが本体フレーム19の下端部19aから離間し、メディアクランプ54は、プラテン16に接近し、クランプ位置に配置される。このとき、スペーサ54dがプラテン16に接触し、延出部54cのうちクランプ部54eと一体形成されていない部分が弾性変形する。このことにより、延出部54cがスペーサ54dを介してプラテン16を押圧する。延出部54cとクランプ部54eとは、スリット54kの前方にて一体に形成されているため、延出部54cおよびクランプ部54eがプラテン16に対して略水平となる。クランプ部54eは、スペーサ54dの上下方向の長さの分だけプラテン16の上方に配置され、メディア5に付勢する。したがって、メディア5は、プラテン16から浮き上がることが防止されている。
【0043】
以上のように、本実施形態のプリンタ10によると、昇降機構60の備えるシャフト61により第1保持部材63および第2保持部材64が保持されている。第1保持部材63は、ピンチローラ53を保持し、第2保持部材64は、メディアクランプ54を保持している。
図8に示すローディングレバー62aを矢印U1の方向に押し上げ、または、矢印D1の方向に押し下げることにより、シャフト61が回転する。シャフト61が回転すると、第1保持部材63および第2保持部材64が昇降する。ここで、第2保持部材64は、本体フレーム19に接触または離間可能に構成された係止部材64abを備えている。ローディングレバー62aを矢印D1の方向に押し下げ、シャフト61を
図8に示すR2の方向に回転させると、ピンチローラ53は、挟持位置に移動し、メディアクランプ54は、プラテン16に接近する。このとき、
図7Bに示すように、係止部材64abは、本体フレーム19から離間する。ローディングレバー62aを矢印U1の方向に押し上げ、シャフト61を
図8に示すR1の方向に回転させると、ピンチローラ53は、メディア挿入位置に移動し、メディアクランプ54は、プラテン16から離間する。このとき、
図7Aに示すように、係止部材64abは、本体フレーム19に接触する。したがって、このとき、昇降機構60(
図8参照)による第1保持部材63および第2保持部材64の昇降が係止部材64abにより、抑制されている。このことにより、メディアクランプ54が記録ヘッド22に干渉することを防止することができる。
【0044】
本実施形態のプリンタ10によると、係止部材64abは、
図7Bに示すように、第2保持部材64が上下方向の第2の角度α2だけ回転したときに、本体フレーム19の下端部19aに接触する。ここで、シャフト61が挿通された第2挿通孔64aaは、側面視にてシャフト61が第1の角度α1だけ回転するときに必要な通過領域が肉抜きされた形状を有している。シャフト61と第2挿通孔64aaとの間には、隙間64adが形成されている。第1の角度α1は、第2の角度α2よりも大きい。したがって、シャフト61が第2の角度α2だけ回転され、係止部材64abが本体フレーム19の下端部19aに接触しても、シャフト61は、第1の角度α1と第2の角度α2との差分だけ、まだ回転することができる状態となっている。このとき、隙間64adが位置していた場所の一部にシャフト61の一部が配置される。したがって、シャフト61が第1の角度α1だけ回転する前に、確実に係止部材64abが本体フレーム19の下端部19aに接触する。すなわち、シャフト61が回転可能な量と、第2保持部材64が回転可能な量と、を一致させない構造とすることができる。このことにより、回転手段62によるシャフト61の回転量が変化しても、α1>α2が成り立つ限りにおいて第2保持部材64の回転量を一定とすることができる。したがって、メディア挿入位置におけるメディアクランプ54とプラテン16との間隔を一定とすることができる。
【0045】
本実施形態のプリンタ10によると、第2保持部材64は、第1保持部材63と別体に形成され、第1保持部材63から離間可能である。第2保持部材64は、第1保持部材63から独立してシャフト61に保持されている。したがって、第2保持部材64は、第1保持部材63から独立してシャフト61上を摺動し、主走査方向Yに移動する。したがって、ピンチローラ53の主走査方向Yの位置に関係なく、メディアクランプ54の主走査方向Yの位置を決めることができる。例えば、使用するメディア5の主走査方向Yの長さが変わり、メディアクランプ54の主走査方向Yの位置を変更する場合、ピンチローラ53の主走査方向Yの位置に関係なく、メディアクランプ54をメディア5の長さに応じた位置に配置することができる。
【0046】
本実施形態のプリンタ10によると、メディアクランプ54は、保持部54aと、立ち下げ部54bと、延出部54cとを備えている。立ち下げ部54bと延出部54cとは、板ばねとして形成されている。メディアクランプ54がクランプ位置に配置されているとき、延出部54cが弾性変形する。このとき生じるばね力により、延出部54cは、スペーサ54dを介してプラテン16を押圧する。このことにより、メディアクランプ54がプラテン16から浮き上がることが防止されている。したがって、メディア5をプラテン16に対してより確実に付勢することができる。また、メディアクランプ54がクランプ位置からメディア挿入位置に移動したとき、ばね力により、保持部54aと立ち下げ部54bと延出部54cの一部とがプラテン16から浮き上がる方向に移動する。なお、延出部54cは、その後端部にて立ち下げ部54bと接続されているため、延出部54cのうち後方に向かうほど上方への移動量が大きくなる。
【0047】
本実施形態のプリンタ10によると、延出部54cとクランプ部54eとの間には、スリット54kが形成されている。延出部54cと立ち下げ部54bとは、板ばねとして形成されている。仮に、スリット54kが形成されておらず、延出部54cとクランプ部54eとが一体に形成されている場合、板ばねの付勢力によりクランプ部54eには、上方へ向かって力が加わる。したがって、クランプ部54eがプラテン16の載置面16Aを付勢する力が弱まる方へ付勢力が加わる。しかしながら、本実施形態のように、スリット54kが形成されていることにより、クランプ部54eがプラテン16の載置面16Aを付勢する力が弱まるのを抑制ことができる。
【0048】
本実施形態のプリンタ10によると、メディアクランプ54は、挿入部54fを備えている。挿入部54fは、クランプ部54eの後端に接続されている。挿入部54fは、後方かつ上方に延びている。したがって、プラテン16と挿入部54fとの上下方向の間隔H2は、プラテン16とクランプ部54eとの上下方向の間隔H3よりも広い。したがって、作業者がメディア5をクランプ部54eの下方を通るように載置するとき、挿入部54fが設けられていると、よりメディア5を通しやすい。
【0049】
ここで開示される技術は、様々なタイプのプリンタに適用することができる。上述した実施形態で示したRoll-to-Rollタイプのプリンタの他、例えば、メディアを台の上に固定し、台を副走査方向Xに搬送する、所謂、フラットベッドタイプのプリンタにも同様に適用することができる。また、メディアを台の上に載置し、台に対してキャリッジを主走査方向Yおよび副走査方向Xに移動させる、所謂、ガントリータイプのプリンタにも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
5 メディア
10 プリンタ
16 プラテン
50 搬送機構
51 グリットローラ
53 ピンチローラ
54 メディアクランプ
54e クランプ部
60 昇降機構