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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156510
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】プリンタ装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 17/30 20060101AFI20241029BHJP
   B41J 2/325 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B41J17/30 A
B41J2/325 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071032
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曽根 寿浩
【テーマコード(参考)】
2C065
2C068
【Fターム(参考)】
2C065AD02
2C065DA22
2C068AA06
2C068GN01
2C068HH04
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で、バックフィード時に発生するインクリボンの弛みに起因する印字品質の低下を防止することが可能なプリンタ装置を提供する。
【解決手段】プリンタ装置は、インクリボンを加熱して印字用紙に印字を行う、サーマルヘッド(印字ヘッド)を備えた熱転写式のプリンタ装置であって、印字用紙とインクリボンとを搬送する駆動力を発生する1つの駆動モータ(駆動源)と、サーマルヘッドを支持して、当該サーマルヘッドとプラテンローラとに挟持されたインクリボンと印字用紙とをガイドするとともに、印字後のインクリボンを巻き取りリールに向けてガイドするヘッドフレーム(ガイド部材)と、ヘッドフレームの、インクリボンと接する側の面のうち、印字後のインクリボンを巻き取りリールに向けてガイドする面に貼付されたシート状のEPDMラバーシート(弾性部材)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクリボンを加熱して印字用紙に印字を行う、印字ヘッドを備えた熱転写式のプリンタ装置であって、
前記印字用紙と前記インクリボンとを搬送する駆動力を発生する1つの駆動源と、
前記印字ヘッドを支持して、当該印字ヘッドとプラテンローラとに挟持された前記インクリボンと前記印字用紙とをガイドするとともに、印字後の前記インクリボンを巻き取りリールに向けてガイドするガイド部材と、
前記ガイド部材の、前記インクリボンと接する側の面のうち、印字後の前記インクリボンを前記巻き取りリールに向けてガイドする面に貼付されたシート状の弾性部材と、を備える、
プリンタ装置。
【請求項2】
前記弾性部材の、前記インクリボンの搬送方向に直交する方向の幅は、前記インクリボンの幅よりも大きい、
請求項1に記載のプリンタ装置。
【請求項3】
前記弾性部材のゴム硬度は、45°から60°の範囲であり、
前記弾性部材のゴム厚は、0.5mmから2.0mmの範囲である、
請求項1または請求項2に記載のプリンタ装置。
【請求項4】
前記弾性部材は、
EPDMラバーシートである、
請求項3に記載のプリンタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プリンタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクリボンを加熱して印字用紙に印字を行う熱転写式のプリンタ装置において、インクリボンと印字用紙の搬送速度の差を吸収して、インクリボンに所定の張力を与えながら巻き取りを行うトルクリミッタ備えたプリンタ装置が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1のプリンタ装置では、印字用紙の搬送とインクリボンの搬送とを別の駆動源の駆動力によって行っている。
【0003】
プリンタ装置の構造を簡素化して、低コスト化・低消費電力化を行うため、印字用紙の搬送とインクリボンの搬送とを1つの駆動源の駆動力によって行うようにした場合、印字後の印字用紙とインクリボンとを、次の印字開始位置までバックフィードした際に、インクリボンの巻き取りリールの慣性力によって、インクリボンに弛みが発生する場合がある。インクリボンに弛みが発生した状態で次の印字を開始すると、インクリボンが急激に引っ張られるため、印字用紙とプラテンローラとが当接したニップ領域に大きな衝撃が伝わるため、印字開始時の印字品質が低下するという課題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、簡単な構造で、バックフィード時に発生するインクリボンの弛みに起因する印字品質の低下を防止することが可能なプリンタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のプリンタ装置は、インクリボンを加熱して印字用紙に印字を行う、印字ヘッドを備えた熱転写式のプリンタ装置であって、1つの駆動源と、ガイド部材と、弾性部材とを備える。駆動源は、印字用紙とインクリボンとを搬送する駆動力を発生する。ガイド部材は、印字ヘッドを支持して、印字ヘッドとプラテンローラとの間に挟持されたインクリボンと印字用紙とをガイドするとともに、印字後のインクリボンを巻き取りリールに向けてガイドする。弾性部材は、シート状であって、ガイド部材の、インクリボンと接する側の面のうち、印字後のインクリボンを巻き取りリールに向けてガイドする面に貼付される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態のプリンタ装置の概略構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態のプリンタ装置の、ヘッドフレーム周辺の詳細構造の一例を示す第1の図である。
図3図3は、第1の実施形態のプリンタ装置のヘッドフレーム周辺の詳細構造の一例を示す第2の図である。
図4図4は、弾性部材の種類と印字品質との関係を評価した結果の一例を示す図である。
図5図5は、第2の実施形態のプリンタ装置の概略構成の一例を示す図である。
図6図6は、第2の実施形態のプリンタ装置のヘッドフレーム周辺の詳細構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0008】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態であるプリンタ装置10について説明する。
【0009】
(プリンタ装置の概略構成)
図1を用いて、第1の実施形態に係るプリンタ装置10の概略構成を説明する。図1は、第1の実施形態のプリンタ装置の概略構成の一例を示す図である。
【0010】
プリンタ装置10は、インクリボン22を加熱して印字用紙15に印字を行う、いわゆるサーマル熱転写式プリンタである。プリンタ装置10は、印字用紙15をロール状に巻回したロール紙14から印字用紙15を矢印Eの向きに引き出しながら印字を行う。なお、ロール紙14は、図1におけるY軸に沿う軸141の周りに回転可能に軸支されている。
【0011】
印字用紙15は、例えばラベル用紙やタグ用紙である。ラベル用紙は、台紙に、同じサイズの複数のラベルが所定の間隔で配置された構造を有する。ラベルは、裏面に粘着層が形成されて、剥離紙である台紙に剥離可能に貼付されたものであってもよい。タグ用紙は、例えば商品の値札や荷札として使用される厚紙である。
【0012】
ロール紙14から引き出された印字用紙15は、用紙ガイド29に巻き掛けられて向きを変え、リボンロール21から、矢印Cの向きに引き出されたインクリボン22と重なり合った状態で、矢印Bの向きに回転するプラテンローラ25とサーマルヘッド24とに挟持されて、サーマルヘッド24とインクリボン22と印字用紙15とが当接したニップ領域を形成する。なお、リボンロール21は、図1におけるY軸に沿う軸211の周りに回転可能に軸支されている。また、プラテンローラ25は、図1におけるY軸に沿う軸251の周りに回転可能に軸支されている。
【0013】
サーマルヘッド24は複数の発熱体を備えており、当該発熱体を選択的に加熱することによって、インクリボン22に塗布されたインクを溶融させる。そして、溶融したインクは、印字用紙15に転写される。これによって、所望の文字やバーコード等の印字が行われる。
【0014】
サーマルヘッド24は、ヘッドフレーム26に支持される。ヘッドフレーム26は、サーマルヘッド24とプラテンローラ25とに挟持されたインクリボン22と印字用紙15とをガイドする。ヘッドフレーム26は、本開示におけるガイド部材の一例である。
【0015】
印字が完了した印字用紙15は、ヘッドフレーム26を通過した後で、一対の搬送ローラ16にガイドされて、排紙口17から排紙される。排紙口17から排出された印字用紙15は、排紙口17の位置で手切りされてもよいし、排紙口17付近に設置された、不図示のカッターで切断されてもよい。
【0016】
一方、印字が完了したインクリボン22は、ヘッドフレーム26の、X軸正側の側面にガイドされて、巻き取りリール23に向かってガイドされる。ヘッドフレーム26の、X軸正側の側面は、Z軸方向に延びているため、インクリボン22の搬送方向は、当該側面において、約90°上方に変更される。図1におけるY軸に沿う軸231の周りに回転可能に軸支された巻き取りリール23は、矢印Dの向きに回転することによって、ヘッドフレーム26から離間したインクリボン22を巻き取る。なお、巻き取りリール23に巻き取られるインクリボン22は、巻き取りリール23が巻き取ったインクリボン22の量によらずに、インクリボン22がヘッドフレーム26の側面から離間する点に接触した状態になっている。詳しくは後述する(図2参照)。
【0017】
ヘッドフレーム26の、X軸正側の側面には、EPDM(エチレンプロピレンゴム)ラバーシート40が貼付されている。EPDMラバーシート40は、エチレンとプロピレンを共重合させることで得られる合成ゴムであり、シート状(平面状)に成形されている。EPDMラバーシート40は、ヘッドフレーム26の側面に接着剤、両面テープ等で貼付される。したがって、インクリボン22の裏面側(印字用紙15と当接しない側)は、EPDMラバーシート40と摺動しながら、図1に示す巻き取り区間Rを経て、巻き取りリール23に向けて移動する。EPDMラバーシート40は、本開示における弾性部材の一例である。なお、EPDMラバーシート40の代わりに、EPDMラバーシート40と同等の硬度と厚さを有する別の弾性部材が用いられてもよい。
【0018】
なお、印字用紙15の搬送とインクリボン22の搬送とは、1つの駆動モータ31によって行われる。なお、駆動モータ31は、本開示における駆動源の一例である。
【0019】
具体的には、駆動モータ31が正転することによって、駆動モータ31の出力軸311に直結する駆動ギア32が矢印Aの向きに回転する。駆動ギア32の回転は、駆動ギア32と噛み合う連結ギア33を介して、プラテンローラ25の軸251に直結するプラテンローラ駆動ギア34に伝達される。
【0020】
プラテンローラ駆動ギア34の回転は、プラテンローラ駆動ギア34と噛み合う連結ギア35を介して、連結ギア35と噛み合う連結ギア36に伝達される。
【0021】
連結ギア36には、リボンロール駆動ギア37と巻き取りリール駆動ギア38とがかみ合っている。そのため、プラテンローラ25が矢印Bの方向に回転するのに伴って、リボンロール21は矢印Cの方向に回転して、巻き取りリール23は矢印Dの方向に回転する。
【0022】
これによって、プラテンローラ25は、矢印Bの方向に回転する。そして、プラテンローラ25の回転によって、プラテンローラ25とサーマルヘッド24とに挟持された印字用紙15とインクリボン22は、X軸正方向に搬送されながら印字が行われる。なお、印字を行う際には、インクリボン22に弛みを出さないために、インクリボン22の搬送速度は、プラテンローラ25と等速、もしくはプラテンローラ25よりも高速になるように、各歯車の径や歯数が設定される。
【0023】
印字用紙15への印字が完了すると、印字用紙15は更にX軸正方向に搬送(フィード)されて、排紙口17から排紙される。また、インクリボン22は、巻き取りリール23に巻き取られる。
【0024】
排紙口17から排紙された印字後の印字用紙15が切断された後で、プリンタ装置10は、印字用紙15を、次の印字の開始位置まで戻すバックフィードを行う。このとき、駆動モータ31は、印字を行った場合とは逆向きに回転する。即ち、駆動ギア32は、矢印Aとは逆向きに回転する。
【0025】
この駆動ギア32の回転が、前述した各ギアに伝達されることによって、プラテンローラ25とリボンロール21と巻き取りリール23とは、いずれも、印字を行う場合とは逆向きに回転する。これによって、印字用紙15とインクリボン22とは、X軸負方向に搬送される。
【0026】
プリンタ装置10は、適切な印字タイミングを決定するために、印字用紙15の位置を検出するラベルギャップ検出センサ28とタグ紙用紙検出センサ30とを備えている。
【0027】
ラベルギャップ検出センサ28は、透過型の光センサであり、印字用紙15にラベル用紙が用いられた場合に、ラベル用紙の印字面の裏面側のラベルギャップの位置に記されたアイマークを検出する。
【0028】
タグ紙用紙検出センサ30は、反射型の光センサであり、印字用紙15にタグ用紙が用いられた場合に、タグ用紙の印字面の裏面側に記されたアイマークを検出する。
【0029】
これらのセンサは、印字開始前に設定された、印字用紙15の種類に応じて動作する。
【0030】
(バックフィード時のインクリボンの挙動)
次に、プリンタ装置10がバックフィードを行う場合のインクリボン22の挙動について、図2図3を用いて説明する。図2は、第1の実施形態のプリンタ装置の、ヘッドフレーム周辺の詳細構造の一例を示す第1の図である。図3は、第1の実施形態のプリンタ装置のヘッドフレーム周辺の詳細構造の一例を示す第2の図である。
【0031】
まず、図2を用いて、インクリボン22の巻き取り経路をより詳細に説明する。印字後のインクリボン22は、ヘッドフレーム26に沿ってX軸正方向に搬送された後、略90°上方に向きを変えて、EPDMラバーシート40に沿って、Z軸正方向に搬送される。その際、インクリボン22はEPDMラバーシート40の表面を摺動しながら搬送される。その後、インクリボン22は、点Pにおいて屈折角θだけ向きを変えて、巻き取りリール23(図1参照)に向かう。点Pは、ヘッドフレーム26の側面から、EPDMラバーシート40のゴム厚tだけ離れた位置である。屈折角θの大きさは、巻き取りリール23に巻き取られたインクリボン22の量に応じて変化するが、巻き取りリール23の軸231とヘッドフレーム26との位置関係は、巻き取りリール23に巻き取られたインクリボン22の量によらずに、常にθ>0になるように設定される。したがって、インクリボン22は、常に点Pに押し付けられた状態になっている。
【0032】
インクリボン22がバックフィードした際には、前述した各種ギアの噛み合わせの部分に設けられた隙間(バックラッシュ)によって、図1に示す巻き取り区間Rの領域において、インクリボン22が一様に巻き戻されない場合がある。このような場合、巻き取り区間Rにおいて、インクリボン22に弛みが発生する。特に、巻き取りリール23に多くのインクリボン22が巻き取られている場合にバックフィードを行うと、巻き取りリール23の慣性力が大きくなるため、インクリボン22の巻き取り量が少ない場合と比べて、弛みが発生しやすい。
【0033】
このように、巻き取り区間Rにおいて、インクリボン22に弛みが発生した状態で次の印字を開始すると、弛みのあるインクリボン22が急激に引っ張られるため、サーマルヘッド24とインクリボン22と印字用紙15とプラテンローラ25とが当接したニップ領域に、大きな衝撃が伝わる。そのため、印字開始時に、印字のブレや印字のかすれ等が発生して印字品質が低下する場合がある。
【0034】
本実施形態のプリンタ装置10は、ヘッドフレーム26にEPDMラバーシート40を貼付することによって、印字開始時に、弛みが生じたインクリボン22が急激に引っ張られた際の衝撃を、EPDMラバーシート40が有する弾性力で吸収する。これによって、ニップ領域に伝わる衝撃を緩和することができるため、印字品質の低下を防止することができる。
【0035】
図3に示すように、EPDMラバーシート40の、インクリボン22の搬送方向に直交する方向の幅Waは、インクリボン22の幅Wbよりも大きく設定されている。また、EPDMラバーシート40は、インクリボン22の幅方向の両端において、いずれもインクリボン22の端部より飛び出した状態になっている。これにより、ヘッドフレーム26の側面において、インクリボン22の全面がEPDMラバーシート40に当接した状態になっている。
【0036】
このような構成により、インクリボン22が蛇行した場合であっても、インクリボン22の裏面とEPDMラバーシート40とを確実に当接させて摺動させることができる。
【0037】
(EPDMラバーシートの設計条件)
図4を用いて、EPDMラバーシート40の適切な設計条件について説明する。図4は、弾性部材の種類と印字品質との関係を評価した結果の一例を示す図である。
【0038】
本実施形態のプリンタ装置10に用いられるEPDMラバーシート40の主要な設計パラメータは、ゴム硬度Hとゴム厚tである。
【0039】
ゴム硬度Hは、デュロメータと呼ばれる測定器を試験片に押し当てて、一定の力がかかった針が、試験片にどの程度沈み込むかによって測定される。測定結果は度数で表されて、度数が小さいほど柔らかいことを示す。例えば、硬度100°はガラスにように硬い状態を表し、一般的なゴムの硬度は、40°から70°付近になる。
【0040】
ゴム厚tは、EPDMラバーシート40の厚さである。
【0041】
本発明の発明者は、ゴム硬度Hとゴム厚tとが異なる複数のEPDMラバーシート40を用いて、プリンタ装置10による印字品質の評価を行った。また、EPDMラバーシート40を設置しない場合との印字品質の比較を行った。図4は、評価結果の一例を示すものである。
【0042】
評価の結果、EPDMラバーシート40のゴム硬度Hは、45°から65°が望ましいことがわかった。
【0043】
ゴム硬度Hが45°よりも低い(柔らかい)場合、インクリボン22の裏面側に摺動性を向上させるために塗布されたシリコンが、EPDMラバーシート40の表面に付着してしまうことがわかった。そして、EPDMラバーシート40の表面にシリコンが付着することによって、EPDMラバーシート40の滑りがよくなるため、インクリボン22が急激に引っ張られて高い張力がかかった際の衝撃吸収効果が低減して、印字品質の低下を招くことがわかった。
【0044】
一方、ゴム硬度Hが65°よりも高い(硬い)場合、インクリボン22が急激に引っ張られて高い張力がかかった際の衝撃吸収効果が低減するため、印字品質の低下を招くことがわかった。
【0045】
また、評価の結果、EPDMラバーシート40のゴム厚tは、0.5mmから2.0mmが望ましいことがわかった。
【0046】
ゴム厚tが薄すぎると耐久性が低下するため、最低でも0.5mm以上の厚さがあるのが望ましい。一方、EPDMラバーシート40のゴム厚tが2.0mmを超えると、EPDMラバーシート40のゴム硬度Hが低い(柔らかい)領域においては、インクリボン22に張力が掛かった際に、インクリボン22がEPDMラバーシート40を大きく撓ませてしまい、サーマルヘッド24に当接したインクリボン22を引っ張ってしまうことになり、印字品質の低下を招く結果となる。また、ゴム厚tが2.0mm以上の領域は、ゴム厚tとEPDMラバーシート40の硬度との関係が不安定な組み合わせ領域であるため、ゴム厚tは2.0mm以内であるのが望ましいことがわかった。
【0047】
(第1の実施形態の作用効果)
以上説明したように、実施形態のプリンタ装置10は、インクリボン22を加熱して印字用紙15に印字を行う、サーマルヘッド24(印字ヘッド)を備えた熱転写式のプリンタ装置であって、印字用紙15とインクリボン22とを搬送する駆動力を発生する1つの駆動モータ31(駆動源)と、サーマルヘッド24を支持して、当該サーマルヘッド24とプラテンローラ25とに挟持されたインクリボン22と印字用紙15とをガイドするとともに、印字後のインクリボン22を巻き取りリール23に向けてガイドするヘッドフレーム26(ガイド部材)と、ヘッドフレーム26の、インクリボン22と接する側の面のうち、印字後のインクリボン22を巻き取りリール23に向けてガイドする面に貼付されたシート状のEPDMラバーシート40(弾性部材)と、を備える。したがって、印字開始時に、インクリボン22が急激に引っ張られることによる衝撃をEPDMラバーシート40が吸収するため、簡単な構造で、バックフィード時に発生するインクリボン22の弛みに起因する印字品質の低下を防止することができる。
【0048】
また、実施形態のプリンタ装置10において、EPDMラバーシート40(弾性部材)の、インクリボン22の搬送方向に直交する方向の幅Waは、インクリボン22の幅Wbよりも大きい。したがって、インクリボン22が蛇行した場合であっても、インクリボン22の裏面とEPDMラバーシート40とを確実に当接させて摺動させることができる。
【0049】
また、実施形態のプリンタ装置10において、EPDMラバーシート40(弾性部材)のゴム硬度Hは、45°から60°の範囲であり、EPDMラバーシート40(弾性部材)のゴム厚tは、0.5mmから2.0mmの範囲である。したがって、バックフィード時に発生するインクリボン22の弛みに起因する印字品質の低下を防止することができる。
【0050】
また、実施形態のプリンタ装置10において、弾性部材は、EPDMラバーシート40である。したがって、印字開始時に、インクリボン22が急激に引っ張られることによる衝撃をEPDMラバーシート40が吸収するため、簡単な構造で、バックフィード時に発生するインクリボン22の弛みに起因する印字品質の低下を防止することができる。
【0051】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態であるプリンタ装置11について説明する。
【0052】
(プリンタ装置の概略構成)
図5は、第2の実施形態のプリンタ装置の概略構成の一例を示す図である。図5に示すプリンタ装置11は、第1の実施形態で説明したプリンタ装置10が備えるヘッドフレーム26の代わりに、ヘッドフレーム27を備える。なお、プリンタ装置11の各部の動作は、前述したプリンタ装置10と同様であるため、再度の説明を省略して、プリンタ装置10との相違点のみを説明する。
【0053】
ヘッドフレーム27は、サーマルヘッド24を、プラテンローラ25と接触した状態に維持する。ヘッドフレーム27は、本開示におけるガイド部材の一例である。
【0054】
印字が完了したインクリボン22は、ヘッドフレーム27の、X軸正側の側面にガイドされて、巻き取りリール23に向かう。この側面において、インクリボン22の搬送方向は、図5における右斜め上に変更される。図5におけるY軸に沿う軸231の周りに回転可能に軸支された巻き取りリール23は、矢印Dの向きに回転することによって、ヘッドフレーム27から離間したインクリボン22を巻き取る。なお、巻き取りリール23に巻き取られるインクリボン22は、巻き取りリール23が巻き取ったインクリボン22の量によらずに、インクリボン22がヘッドフレーム27の側面から離間する点に接触した状態になっている。詳しくは後述する(図6参照)。
【0055】
ヘッドフレーム27の、X軸正側の側面には、EPDMラバーシート41が貼付されている。EPDMラバーシート41は、シート状(平面状)に成形されている。EPDMラバーシート41は、ヘッドフレーム27の側面に接着剤等で貼付される。したがって、インクリボン22の裏面側(印字用紙15と当接しない側)は、EPDMラバーシート41と摺動しながら、図5に示す巻き取り区間Rを経て、巻き取りリール23に向けて移動する。EPDMラバーシート41は、本開示における弾性部材の一例である。
【0056】
第1の実施形態におけるヘッドフレーム26の側面、または第2の実施形態におけるヘッドフレーム27の側面を、どのような方向を向いた平面にするかは、プリンタ装置におけるヘッドフレームと巻き取りリール23との位置関係に応じて決めればよい。即ち、ヘッドフレームの側面の方向は、巻き取りリール23に巻き取られるインクリボン22が、巻き取りリール23に巻き取られたインクリボン22の量によらずに、ヘッドフレームの側面から離間する点に常に接触した状態となるような方向に形成すればよい。
【0057】
(バックフィード時のインクリボンの挙動)
次に、プリンタ装置11がバックフィードを行う場合のインクリボン22の挙動について、図6を用いて説明する。図6は、第2の実施形態のプリンタ装置のヘッドフレーム周辺の詳細構造の一例を示す図である。
【0058】
図6を用いて、インクリボン22の巻き取り経路をより詳細に説明する。印字後のインクリボン22は、ヘッドフレーム26に沿ってX軸正方向に搬送された後、図6における右斜め上方に向きを変えて、EPDMラバーシート41に沿って、Z軸正方向に搬送される。その際、インクリボン22はEPDMラバーシート41の表面を摺動しながら搬送される。その後、インクリボン22は、点Qにおいて屈折角θだけ向きを変えて、巻き取りリール23(図5参照)に向かう。点Qは、ヘッドフレーム27の側面から、EPDMラバーシート41のゴム厚tだけ離れた位置である。屈折角θの大きさは、巻き取りリール23に巻き取られたインクリボン22の量に応じて変化するが、巻き取りリール23の軸231とヘッドフレーム27との位置関係は、巻き取りリール23に巻き取られたインクリボン22の量によらずに、常にθ>0になるように設定される。したがって、インクリボン22は、常に点Qに押し付けられた状態になっている。
【0059】
インクリボン22がバックフィードした際には、前述した各種ギアの噛み合わせの部分に設けられた隙間(バックラッシュ)によって、図5に示す巻き取り区間Rの領域において、インクリボン22が一様に巻き戻されない場合がある。このような場合、巻き取り区間Rにおいて、インクリボン22に弛みが発生する。また、巻き取りリール23に多くのインクリボン22が巻き取られている場合にバックフィードを行うと、巻き取りリール23の慣性力が大きくなるため、インクリボン22の巻き取り量が少ない場合と比べて、弛みが発生しやすい。
【0060】
このように、巻き取り区間Rにおいて、インクリボン22に弛みが発生した状態で次の印字を開始すると、弛みのあるインクリボン22が急激に引っ張られるため、サーマルヘッド24とインクリボン22と印字用紙15とプラテンローラ25とが当接したニップ領域に、大きな衝撃が伝わる。そのため、印字のブレ、印字のかすれ等が発生して印字品質が低下する場合がある。
【0061】
(第2の実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態のプリンタ装置11は、ヘッドフレーム27にEPDMラバーシート41を貼付することによって、印字開始時に、弛みが生じたインクリボン22が急激に引っ張られた際の衝撃を、EPDMラバーシート41が有する弾性力で吸収する。これによって、ニップ領域に伝わる衝撃を緩和することができるため、印字品質の低下を防止することができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例示であり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
10,11 プリンタ装置
14 ロール紙
15 印字用紙
16 搬送ローラ
17 排紙口
21 リボンロール
22 インクリボン
23 巻き取りリール
24 サーマルヘッド(印字ヘッド)
25 プラテンローラ
26,27 ヘッドフレーム(ガイド部材)
28 ラベルギャップ検出センサ
29 用紙ガイド
30 タグ紙用紙検出センサ
31 駆動モータ(駆動源)
32 駆動ギア
33,35,36 連結ギア
34 プラテンローラ駆動ギア
37 リボンロール駆動ギア
38 巻き取りリール駆動ギア
40,41 EPDMラバーシート(弾性部材)
H ゴム硬度
P,Q 点
R 巻き取り区間
t ゴム厚
Wa,Wb 幅
θ 屈折角
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【特許文献1】特開平7-89171号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6