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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156516
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】超高強度コンクリート
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20241029BHJP
   C04B 14/48 20060101ALI20241029BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20241029BHJP
   C04B 20/00 20060101ALI20241029BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B14/48 A
C04B18/14 Z
C04B20/00 B
C04B22/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071042
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 孝彦
(72)【発明者】
【氏名】武田 均
(72)【発明者】
【氏名】川口 哲生
(72)【発明者】
【氏名】臼井 達哉
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MA01
4G112PA02
4G112PA19
4G112PA28
4G112PB04
4G112PC03
4G112PC12
(57)【要約】
【課題】圧送性に優れた超高強度コンクリートを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る超高強度コンクリートは、圧縮強度が100N/mm以上の超高強度コンクリートであって、普通ポルトランドセメントとシリカフュームと水と減水剤と細骨材と粗骨材と鋼繊維とを含有し、前記粗骨材の最大寸法が20mm以下であり、前記鋼繊維の含有量が0.5~1.5%であり、JIS A1150のスランプフロー試験方法におけるスランプフロー値が550~750mm、且つ、500mmフロー到達時間が20.0秒以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮強度が100N/mm以上の超高強度コンクリートであって、
普通ポルトランドセメントとシリカフュームと水と減水剤と細骨材と粗骨材と鋼繊維とを含有し、
前記粗骨材の最大寸法が20mm以下であり、
前記鋼繊維の含有量が0.5~1.5%であり、
JIS A 1150のスランプフロー試験方法におけるスランプフロー値が550~750mm、且つ、500mmフロー到達時間が20.0秒以下であることを特徴とする超高強度コンクリート。
【請求項2】
水結合材比が18.0~20.0%であることを特徴とする請求項1に記載の超高強度コンクリート。
【請求項3】
前記粗骨材の絶対容積が0.245m/m以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超高強度コンクリート。
【請求項4】
結合材の質量を100%とした場合の前記減水剤の含有量は、0.50~2.00%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超高強度コンクリート。
【請求項5】
鋼繊維粗骨材容積比(=前記鋼繊維の絶対容積/前記粗骨材の絶対容積×100)が5~10%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超高強度コンクリート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高強度コンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮強度が100N/mm以上の超高強度コンクリートとして、鋼繊維を混入した超高強度繊維補強コンクリート(UFC:Ultra High Strength Fiber Reinforced Concrete)が挙げられる。
このUFCは、圧縮強度、引張強度、耐久性などの材料特性に優れるものの、粘性が非常に高いことから、ポンプでの圧送に適した材料であるとは言い難い。そのため、UFCなどの超高強度コンクリートの圧送性について、これまでにも様々な検討が行われている。
例えば、非特許文献1では、最大吐出圧が高いポンプと高圧配管を用いることによって、超高強度コンクリートでも圧送が可能である点を確認している。
また、非特許文献2では、UFCを使用した圧送試験を実施し、圧送時の不具合の有無や圧送前後のフレッシュ性状などの変化について検討している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】河野政典「150N/mm2級超高強度コンクリートのポンプ圧送」建設の施工企画‘10.5 橋梁架設工事の積算(平成22年度版)社団法人 日本建設機械化協会
【非特許文献2】石関嘉一ら「常温硬化型UFCのポンプ圧送試験および現場施工」土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)講演概要集
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1の図2は、超高強度コンクリートを圧送する際の管内圧力と圧送距離との関係を示しており、この図によると、超高強度コンクリートの圧送開始時において管内圧力が10MPa以上や8MPa以上となることが確認できる。また、非特許文献2の図1は、UFCを圧送する際の吐出量と管内圧力との関係を示しており、この図によると、吐出量を少なくすれば管内圧力は低くなるものの6MPa以上となることが確認できる。
ここで、一般的なコンクリートを圧送する際の管内圧力がおおよそ5MPa以下であることを考慮すると、超高強度コンクリートを使用する場合には、特殊なポンプ車や高圧配管を使用する、または、ポンプで圧送することなく使用する、といった対応が必要となってしまうことがわかる。
そこで、本発明者らは、超高強度コンクリートについて、圧送性を向上させることができれば、一般的なポンプ車や配管によって圧送が可能となり、極めて限定的な使用態様(特殊なポンプ車や高圧配管を使用する態様、小さな規模の施工で使用する態様)に縛られることなく、様々な用途に展開できると考えた。
【0005】
このような観点から、本発明は、圧送性に優れた超高強度コンクリートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明に係る超高強度コンクリートは、圧縮強度が100N/mm以上の超高強度コンクリートであって、普通ポルトランドセメントとシリカフュームと水と減水剤と細骨材と粗骨材と鋼繊維とを含有し、前記粗骨材の最大寸法が20mm以下であり、前記鋼繊維の含有量が0.5~1.5%であり、JIS A 1150のスランプフロー試験方法におけるスランプフロー値が550~750mm、且つ、500mmフロー到達時間が20.0秒以下である。
本発明によれば、超高強度コンクリートが所定の材料からなるとともに、スランプフロー値が所定範囲内、且つ、500mmフロー到達時間が所定値以下であることから、圧縮強度が100N/mm以上でありながらも圧送性に優れる。
また、本発明に係る超高強度コンクリートは、水結合材比が18.0~20.0%であるのが好ましい。また、本発明に係る超高強度コンクリートは、前記粗骨材の絶対容積が0.245m/m以下であるのが好ましい。また、本発明に係る超高強度コンクリートは、結合材の質量を100%とした場合の前記減水剤の含有量が、0.50~2.00%であるのが好ましい。また、本発明に係る超高強度コンクリートは、鋼繊維粗骨材容積比(=前記鋼繊維の絶対容積/前記粗骨材の絶対容積×100)が5~10%であるのが好ましい。
本発明によれば、超高強度コンクリートをより確実に圧送性に優れたものとすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る超高強度コンクリートによれば、優れた圧送性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例で使用した各サンプルのスランプフロー値と500mm通過時間との関係を示すグラフである。
図2】ポンプ圧送試験で使用した配管とポンプ車の全体模式図である。
図3】ポンプ圧送試験で得られた圧送距離と管内圧力との関係を示すグラフである。
図4】ポンプ圧送試験の試験結果から算出した管内圧力損失と吐出量との関係を示すグラフである。
図5】実施例で使用した所定サンプルのモルタルのせん断応力と塑性粘度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る超高強度コンクリートを実施するための形態(本実施形態に係る超高強度コンクリート)について説明する。
[超高強度コンクリート]
本実施形態に係る超高強度コンクリートは、圧縮強度が所定値以上であって、普通ポルトランドセメントとシリカフュームと水と減水剤と細骨材と粗骨材と鋼繊維とを含有する。また、本実施形態に係る超高強度コンクリートは、粗骨材の最大寸法が所定値以下であり、鋼繊維の含有量が所定範囲内であるとともに、スランプフロー値が所定範囲内となり、500mmフロー到達時間が所定値以下となる。
以下、各構成要件について詳細に説明する。
【0010】
(圧縮強度)
本明細書において「超高強度コンクリート」とは、圧縮強度が100N/mm以上のコンクリートである。そして、本実施形態に係る超高強度コンクリートは、圧縮強度が100N/mm以上であればよいものの、高い圧縮強度を確保するという観点から、110N/mm以上が好ましい。
なお、圧縮強度は、材齢28日の圧縮強度の値であって、JISA1108:2018の「コンクリートの圧縮強度試験方法」に記載の方法で測定すればよい。
【0011】
(普通ポルトランドセメント)
普通ポルトランドセメントとは、一般的なセメントであって、JISR5210:2009に記載の規定に適合するセメントである。
超高強度コンクリートに使用するセメントとしては、通常、低熱ポルトランドセメントや中庸熱ポルトランドセメントが好ましいと考えられているが(非特許文献1、特開2019-214504号公報の段落0011など)、本実施形態に係る超高強度コンクリートは、普通ポルトランドセメントを使用する。普通ポルトランドセメントを使用するとともに、後記する他の構成要件を満たすことによって、高い圧縮強度と優れた圧送性との両立を実現することができる。
そして、超高強度コンクリートにおける普通ポルトランドセメントの含有量(配合量)は、例えば、600kg/m以上であり、900kg/m以下である。
【0012】
(シリカフューム)
シリカフュームとは、金属シリコン、フェロシリコンなどを製造するときに発生する排ガス中のダストを集じんして得られる超微粒子であって、JISA 6207:2016に定義されているものである。
そして、超高強度コンクリートにおけるシリカフュームの含有量(配合量)は、例えば、100kg/m以上であり、200kg/m以下である。
なお、シリカフュームの粒径や比表面積などの品質については特に限定されない。
【0013】
(スラグ石こう系混和材)
スラグ石こう系混和材とは、高炉スラグ微粉末と石こうとを混合した混和材である。なお、高炉スラグ微粉末は、JISA6206:2013、石こうは、JISR9151:2009にそれぞれ定義されている。
本実施形態に係る超高強度コンクリートは、スラグ石こう系混和材は必須ではないものの含有してもよい。また、スラグ石こう系混和材としては、例えば、セラパワーCPSI(株式会社デイ・シイ社製)を使用することができる。
【0014】
(減水剤)
減水剤とは、所要のスランプを得るのに必要な単位水量を減少させる化学混和剤であって、JISA6204:2011に定義されているものである。
なお、減水剤としては、高性能減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤などが挙げられるが、高性能減水剤が好ましい。
そして、超高強度コンクリートにおける結合材の質量を100%とした場合の減水剤の質量の割合(B×%)は、例えば、0.50%以上であり、2.00%以下である。
【0015】
(細骨材、粗骨材)
細骨材としては、山砂、川砂、海砂、砕砂、硅砂、石灰砂などが挙げられ、粗骨材としては、山砂利、川砂利、海砂利などが挙げられ、いずれも、JIS A 5005:2020に準拠する。
そして、超高強度コンクリートにおける細骨材の含有量(配合量)は、例えば、500kg/m以上であり、800kg/m以下である。また、超高強度コンクリートにおける粗骨材の含有量(配合量)は、例えば、400kg/m以上であり、700kg/m以下である。
粗骨材の最大寸法は、20mm以下であり、特に15mm以下であるのが好ましい。粗骨材の最大寸法を所定値以下に規制することによって、圧送性を確実に向上させることができる。
【0016】
粗骨材の絶対容積(Vg)は、例えば、0.140m/m以上であり、0.280m/m以下である。
細骨材率(s/a)は、例えば、40%以上であり、65%以下である。
細骨材粉体比(S/B)は、例えば、45%以上であり、65%以下である。
【0017】
(鋼繊維)
鋼繊維とは、コンクリートを補強するための鋼材からなる繊維である。
鋼繊維の形状は、フック型、ストレート型、ストレート型などが挙げられるが、コンクリートへの定着力の観点からフック型が好ましい。鋼繊維の長さは、例えば、10~40mm(好ましくは30~40mm)である。鋼繊維の直径は、例えば、0.1~0.8mm(好ましくは0.38~0.75mm)である。
超高強度コンクリートにおける鋼繊維の含有量(配合量)は、圧送性を優れたものとしつつ高い圧縮強度を確保する観点から、0.5vol.%以上であり、1.5vol.%以下である。
超高強度コンクリートにおける鋼繊維粗骨材容積比(=鋼繊維の絶対容積/粗骨材の絶対容積×100)は、圧送性を優れたものとしつつ高い圧縮強度をより確実なものとする観点から、5%以上であり、10%以下である。
なお、鋼繊維としては、鋼繊維補強コンクリート用の鋼繊維として市販されているものを使用すればよく、例えば、ベカルトジャパン株式会社製のDramix(登録商標)スチールファイバーが挙げられる。
【0018】
(水)
本実施形態に係る超高強度コンクリートは、水を含有する。水の含有量(配合量)は特に限定されないものの、例えば、160kg/m以上であり、220kg/m以下である。
また、水結合材比(W/B)は、例えば、優れた圧送性を確保する観点から、17.0%以上であり、また、強い圧縮強度を確保する観点から、20.0%以下である。
なお、水としては、特に限定されず、水道水、スラッジ水などを用いることができる。
【0019】
(スランプフロー試験:スランプフロー値、500mmフロー到達時間)
本実施形態に係る超高強度コンクリートは、JIS A 1150:2020のスランプフロー試験方法におけるスランプフロー値が550~750mmであるとともに、500mmフロー到達時間が20.0秒以下である。スランプフロー値が所定範囲になるとともに500mmフロー到達時間が所定値以下となることによって、高い圧縮強度と優れた圧送性との両立が可能となる。
なお、スランプフロー値は、600mm以上がより好ましく、また、750mm以下がより好ましい。そして、500mmフロー到達時間の下限は特に限定されないものの、例えば、4.5秒以上である。
【0020】
(その他)
本実施形態に係る超高強度コンクリートは、本発明の所望の効果が阻害されない範囲において、コンクリートに使用されている従来公知の材料(化学混和剤、繊維など)を適宜含有してもよい。
化学混和剤としては、前記した減水剤のほかに、分離低減剤、空気量調整剤、消泡剤、収縮低減剤、凝結遅延剤、凝結促進剤、AE剤、AE減水剤、高性能AE減水剤などが挙げられる。化学混和剤はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
繊維としては、金属繊維、有機繊維、または、有機繊維と金属繊維を混ぜ合わせた複合繊維などが挙げられる。金属繊維としては、前記した鋼繊維のほかに、ステンレス繊維、チタン繊維、アルミニューム繊維などが挙げられる。また、有機繊維としては、ポリプロピレン繊維、ポリビニールアルコール繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、超高強力ポリエチレン繊維、ポリエチレンテレフタラート繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、ポリ塩化ビニール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、耐アルカリガラス繊維などが挙げられる。
【実施例0021】
[サンプルの準備]
表1に示す材料を使用し、表2に示す配合で各材料を練り混ぜ、各サンプル(コンクリート試料)を準備した。
なお、表2中の各記号は以下のとおりである。
Gmax :粗骨材の最大寸法(mm)
W/B :水結合材比(%)
s/a :細骨材率(%)
S/B :細骨材粉体比(%)
Vg :単位粗骨材絶対容積(m/m
Vf :単位鋼繊維絶対容積(m/m
Vf/Fg:鋼繊維粗骨材容積比
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
[測定方法]
(スランプフロー値と500mm通過時間)
各サンプルについて、JIS A 1150:2020の「コンクリートのスランプフロー試験方法」に従って、スランプフロー値と500mm通過時間を測定した。
なお、スランプフロー値が500mm以上となったサンプルのみ、500mm通過時間を測定した。
(空気量)
各サンプルについて、JIS A 1128:2019の「フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法-空気室圧力方法」に従って、空気量を測定した。
(温度)
各サンプルについて、JISA1156:2014の「フレッシュコンクリートの温度測定方法」に従って、温度を測定した。
(圧縮強度)
各サンプルから供試体(直径10cm×高さ20cmの円柱)を採取した。採取した供試体は20℃の恒温恒湿室に封かん状態で静置し、1日経過後に脱型後、標準養生(20℃水中養生)を開始した。そして、供試体について、材齢28日で圧縮強度試験を実施し、圧縮強度を求めた。
そして、圧縮強度試験は、JISA1108:2018の「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して行った。
なお、スランプフロー値が500mm以上、かつ、500mm通過時間が20.0秒以下となったサンプルのみ、圧縮強度を測定した。
【0025】
【表3】
【0026】
[ポンプ圧送試験の内容]
図2は、ポンプ圧送試験で使用した配管とポンプ車の全体模式図である。
ポンプ圧送試験は、ポンプ車Cから各サンプルを圧送し、配管の所定箇所に設けた圧力測定管P1~P8によって、各サンプルが配管を流れる際の管内圧力を測定した。
ポンプ圧送試験は、実施例であるサンプル1、2、7、8を使用し、サンプル2、7はポンプの吐出量を15m/hで実施し、サンプル1、8はポンプの吐出量を30m/hで実施した。
なお、配管の詳細な構成を表4に示す。また、各圧力測定管における測定結果を表5に示す。
【0027】
【表4】
【0028】
【表5】
【0029】
[圧力損失の算出]
表5に示した各サンプルの測定結果から、4B管(P7とP8の間の水平管)における単位距離あたりの管内圧力損失を算出し、「4B管圧力損失」とした。詳細には、「(P8の管内圧力-P7の管内圧力)/P8とP7の距離」の算出式を用いた。
また、表5に示した各サンプルの測定結果から、5B管(P3とP4の間の水平管、P5とP6の間の水平管)における管内圧力損失を其々算出(上記と同様の算出式で其々算出)し、平均値を「5B管圧力損失」とした。
【0030】
【表6】
【0031】
[モルタルの塑性粘度とせん断応力の測定]
サンプル2、8のベースとなるモルタルについて、レオメーター(NETZSCH Japan社製回転型レオメーター)を用いて、塑性粘度とせん断応力の測定を実施した。
また、比較対象として、以下に示す配合の一般的なUFCのモルタルについても同様の測定を実施した。
水:216kg/m
セメント:852kg/m
混和材:568kg/m
珪砂:650kg/m
高性能減水剤:20kg/m
水粉体比(W/P):15.2%
【0032】
[結果の検討]
図1は、各サンプルのスランプフロー値と500mm通過時間との関係を示すグラフである。なお、図1の○は実施例のサンプルの結果であり、×は比較例のサンプルの結果である。
図1と表3によると、実施例であるサンプル1~8は、本発明で特定するスランプフロー値の規定(550~750mm)と500mmフロー到達時間の規定(20.0秒以下)のいずれも満たすことが確認できた。また、表3によると、サンプル1~8は、圧縮強度が100N/m以上となり超高強度コンクリートに該当することも確認できた。
一方、比較例であるサンプル9~35は、本発明で特定するスランプフロー値の規定と500mmフロー到達時間の規定のうち、少なくとも一方を満たさないことが確認できた。
【0033】
図3は、ポンプ圧送試験で得られた圧送距離と管内圧力との関係を示すグラフである。
図3と表5によると、実施例であるサンプル1、2、7、8は、80mの圧送距離であれば管内圧力が最大でも3N/mmを超えないことが確認できた。よって、実施例であるサンプル1、2、7、8は、特殊なポンプ車や高圧配管などを使用することなく一般的なポンプ(ポンプ車)で圧送できるため、圧送性に優れることがわかった。
図4は、ポンプ圧送試験の試験結果から算出した管内圧力損失と吐出量との関係を示すグラフである。なお、図4には、コンクリート標準示方書[標準編]に記載されているスランプ8cm(SL8)の普通コンクリート(普通コン)に関する4B管と5B管での管圧力損失のデータも示している。
図4と表6によると、5B管においては、吐出量が15m/hの管内圧力損失は、いずれの実施例も普通コンクリートと同程度であった。一方、吐出量30m/hの管内圧力損失は、W/B18%の実施例が普通コンクリートの1.6倍程度であったが、W/B19%の実施例は普通コンクリートと同程度であった。
また、4B管においては、吐出量が15m/hの管内圧力損失は、W/B18%の実施例が普通コンクリートの1.6倍程度であり、W/B20%の実施例は普通コンクリートと同程度であった。一方、吐出量30m/hの管圧力損失はW/B18%およびW/B19%のいずれの実施例も普通コンクリートよりも大きく、W/B18%の実施例が普通コンクリートの1.9倍程度であった。
これらの結果から、実施例の超高強度コンクリートの管内圧力損失は、普通コンクリートの管内圧力損失と比較して、5B管で約1.0~1.6倍、4B管で約1.0~1.9倍であって、圧送時における管内圧力損失としては許容できる範囲内であることが確認できた。
【0034】
図5は、実施例で使用したサンプル2、8のモルタルのせん断応力と塑性粘度との関係を示すグラフである。なお、図5の○はサンプル2、8のモルタルの結果であり、×はUFCのモルタルの結果である。
図5によると、一般的なUFCのモルタルは、せん断応力が大きくなると塑性粘度も比例して大きくなる(図5の太い矢印)ことが確認できた。一方、実施例であるサンプル2、8のモルタルは、せん断応力が大きくなると、逆に塑性粘度が小さくなる(図5の細い矢印)ことが確認できた。
この結果から、本発明に係る超高強度コンクリートは、モルタルの状態において上記のような特殊な性質(せん断応力が大きくなると、逆に塑性粘度が小さくなる)を備えることが、高い圧縮強度を確保しながらも圧送性に優れるという効果の一つの要因となっているのではないかと推察する。
図1
図2
図3
図4
図5