(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156518
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】膜の延伸装置用のリンク機構、膜の延伸装置、およびリンク機構のローラを保持するためのローラホルダ
(51)【国際特許分類】
B29C 55/20 20060101AFI20241029BHJP
B29C 55/16 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B29C55/20
B29C55/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071050
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 柾紀
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 一郎
【テーマコード(参考)】
4F210
【Fターム(参考)】
4F210AJ08
4F210QA02
4F210QC07
4F210QL02
4F210QL04
4F210QL05
4F210QL06
4F210QL16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】延伸装置の性能を向上させる。
【解決手段】一実施の形態に係るリンク機構のローラを保持するためのローラホルダ60は、リンク機構のローラ収容部に収容するための部分61、およびローラ収容部の外部に露出させるための部分62を有している。平面視において、ローラホルダ60の部分62は、部分61の外側に突出している突出部62P1と、突出部62P1の反対側の突出部62P2と、を有している。突出部62P1の側面60s1と、突出部62P2の側面60s2のそれぞれの硬さは、ローラホルダ60の部分61の硬さよりも硬い。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、膜の延伸装置用のリンク機構:
第1レール側面と、前記第1レール側面の反対側の第2レール側面と、前記第1レール側面および前記第2レール側面のそれぞれに連なる第1レール上面と、を有する第1レールを跨ぐように配置するための第1レールホルダ;
前記第1レールホルダに支持され、かつ、第1軸を回転軸として、前記第1レールの前記第1レール側面に接触しながら回転することが可能な第1側面ローラ;
前記第1レールホルダに支持され、かつ、前記第1レールを介して前記第1軸の反対側にある第2軸を回転軸として、前記第1レールの前記第2レール側面に接触しながら回転することが可能な第2側面ローラ;
前記第1レールホルダの第1ローラ収容部内に配置され、かつ、前記第1軸および前記第2軸のそれぞれに対して交差する第3軸を回転軸として、前記第1レールの前記第1レール上面に接触しながら回転することが可能な第1上面ローラ;および
前記第1レールホルダの第1ローラ収容部に固定され、かつ、前記第1上面ローラを回転自在な状態で保持する第1ローラホルダ;
ここで、
前記第1ローラホルダは、
前記第1ローラ収容部に収容されている第1部分、および
前記第1ローラ収容部の外部に露出する第1下面を含み、かつ、前記第1レールの前記第1レール上面と対向するように配置するための第2部分、
を備え、
前記第2部分は、
前記第1レールの前記第1レール上面と対向するように配置可能な前記第1下面、
前記第1下面に連なる第1側面、および
前記第1下面に連なり、かつ前記第1側面の反対側に位置する第2側面、
を備え、
平面視において、前記第1ローラホルダの前記第2部分のうち、前記第1側面を含む第1突出部と、前記第2側面を含む第2突出部のそれぞれは、前記第1レールホルダの外側に突出しており、
前記第1側面および前記第2側面のそれぞれの硬さは、前記第1ローラホルダの前記第1部分の硬さよりも硬い。
【請求項2】
請求項1に記載のリンク機構において、
前記第2部分は、第1方向に延びる板状部材であって、
前記第1レールホルダは、前記第1レールの延在方向と、前記第1方向とが一致するように前記第1レール上に配置することが可能であり、
前記第1側面は、前記第1方向において、前記第2部分の一方の端部にあり、
前記第2側面は、前記第1方向において、前記第2部分の他方の端部にあり、
平面視において、前記第1部分は、前記第1方向における前記第2部分の中心を含む位置に配置されている、リンク機構。
【請求項3】
請求項2に記載のリンク機構において、
平面視において、前記第1上面ローラは、前記第1部分の両隣に配置され、かつ、前記第1側面と前記第2側面との間に配置されている、リンク機構。
【請求項4】
請求項1に記載のリンク機構において、
平面視において、前記第1側面および前記第2側面のそれぞれは、円弧形状を成す、リンク機構。
【請求項5】
請求項1に記載のリンク機構において、
前記膜を保持可能なクリップを更に含み、
前記クリップは、前記第1レールホルダに固定されている、リンク機構。
【請求項6】
請求項5に記載のリンク機構において、以下を更に含む:
第3レール側面と、前記第3レール側面の反対側の第4レール側面と、前記第3レール側面および前記第4レール側面のそれぞれに連なる第2レール上面と、を有する第2レールを跨ぐように配置するための第2レールホルダ;
前記第2レールホルダに支持され、かつ、第4軸を回転軸として、前記第2レールの前記第3レール側面に接触しながら回転することが可能な第3側面ローラ;
前記第2レールホルダに支持され、かつ、前記第2レールを介して前記第4軸の反対にある第5軸を回転軸として、前記第2レールの前記第4レール側面に接触しながら回転することが可能な第4側面ローラ;
前記第2レールホルダの第2ローラ収容部内に配置され、かつ、前記第4軸および前記第5軸のそれぞれに交差する第6軸を回転軸として、前記第2レールの前記第2レール上面に接触しながら回転することが可能な第2上面ローラ;および
前記第2レールホルダの第2ローラ収容部に固定され、かつ、前記第2上面ローラを回転自在な状態で保持する第2ローラホルダ;
ここで、
前記第2ローラホルダは、
前記第2ローラ収容部に収容されている第3部分、および
前記第2ローラ収容部の外部に露出する第2下面を含み、かつ、前記第2レールの前記第2レール上面と対向するように配置するための第4部分、
を備え、
前記第4部分は、
前記第2レールの前記第2レール上面と対向するように配置可能な前記第2下面、
前記第2下面に連なる第3側面、および
前記第2下面に連なり、かつ前記第3側面の反対側に位置する第4側面、
を備え、
平面視において、前記第2ローラホルダの前記第4部分のうち、前記第3側面を含む第3突出部と、前記第4側面を含む第4突出部のそれぞれは、前記第2レールホルダの外側に突出しており、
前記第3側面および前記第4側面のそれぞれの硬さは、前記第2ローラホルダの前記第3部分の硬さよりも硬い。
【請求項7】
以下を含む、膜の延伸装置:
複数のリンク機構が無端チェーンを構成するように連結され、前記膜を搬送し、かつ、延伸させることが可能な一対のリンク装置;および
第1レール側面と、前記第1レール側面の反対側の第2レール側面と、前記第1レール側面および前記第2レール側面のそれぞれに連なる第1レール上面と、を有し、前記一対のリンク装置のうちの一方を支持する第1レール;
ここで、
前記複数のリンク機構のそれぞれは、以下を含む:
前記第1レール上を跨ぐように配置されている第1レールホルダ;
前記第1レールホルダに支持され、かつ、第1軸を回転軸として、前記第1レールの前記第1レール側面に接触しながら回転することが可能な第1側面ローラ;
前記第1レールホルダに支持され、かつ、前記第1レールを介して前記第1軸の反対側にある第2軸を回転軸として、前記第1レールの前記第2レール側面に接触しながら回転することが可能な第2側面ローラ;
前記第1レールホルダの第1ローラ収容部内に配置され、かつ、前記第1軸および前記第2軸のそれぞれに対して交差する第3軸を回転軸として、前記第1レールの前記第1レール上面に接触しながら回転することが可能な第1上面ローラ;および
前記第1レールホルダの第1ローラ収容部に固定され、かつ、前記第1上面ローラを回転自在な状態で保持する第1ローラホルダ;
ここで、
前記第1ローラホルダは、
前記第1ローラ収容部に収容されている第1部分、および
前記第1ローラ収容部の外部に露出する第1下面を含み、かつ、前記第1レールの前記第1レール上面と対向するように配置するための第2部分、
を備え、
前記第2部分は、
前記第1レールの前記第1レール上面と対向するように配置可能な前記第1下面、
前記第1下面に連なる第1側面、および
前記第1下面に連なり、かつ前記第1側面の反対側に位置する第2側面、
を備え、
平面視において、前記第1ローラホルダの前記第2部分のうち、前記第1側面を含む第1突出部と、前記第2側面を含む第2突出部のそれぞれは、前記第1レールホルダの外側に突出しており、
前記第1側面および前記第2側面のそれぞれの硬さは、前記第1ローラホルダの前記第1部分の硬さよりも硬い。
【請求項8】
請求項7に記載の延伸装置において、
前記第2部分は、第1方向に延びる板状部材であって、
前記第1レールホルダは、前記第1レールの延在方向と、前記第1方向とが一致するように前記第1レール上に配置することが可能であり、
前記第1側面は、前記第1方向において、前記第2部分の一方の端部にあり、
前記第2側面は、前記第1方向において、前記第2部分の他方の端部にあり、
平面視において、前記第1部分は、前記第1方向における前記第2部分の中心を含む位置に配置されている、延伸装置。
【請求項9】
請求項8に記載の延伸装置において、
平面視において、前記第1上面ローラは、前記第1部分の両隣に配置され、かつ、前記第1側面と前記第2側面との間に配置されている、延伸装置。
【請求項10】
請求項7に記載の延伸装置において、
平面視において、前記第1側面および前記第2側面のそれぞれは、円弧形状を成す、延伸装置。
【請求項11】
請求項7に記載の延伸装置において、
前記膜を保持可能なクリップを更に含み、
前記クリップは、前記第1レールホルダに固定されている、延伸装置。
【請求項12】
請求項11に記載の延伸装置において、前記複数のリンク機構のそれぞれは、更に以下を含む:
第3レール側面と、前記第3レール側面の反対側の第4レール側面と、前記第3レール側面および前記第4レール側面のそれぞれに連なる第2レール上面と、を有する第2レールを跨ぐように配置するための第2レールホルダ;
前記第2レールホルダに支持され、かつ、第4軸を回転軸として、前記第2レールの前記第3レール側面に接触しながら回転することが可能な第3側面ローラ;
前記第2レールホルダに支持され、かつ、前記第2レールを介して前記第4軸の反対にある第5軸を回転軸として、前記第2レールの前記第4レール側面に接触しながら回転することが可能な第4側面ローラ;
前記第2レールホルダの第2ローラ収容部内に配置され、かつ、前記第4軸および前記第5軸のそれぞれに交差する第6軸を回転軸として、前記第2レールの前記第2レール上面に接触しながら回転することが可能な第2上面ローラ;および
前記第2レールホルダの第2ローラ収容部に固定され、かつ、前記第2上面ローラを回転自在な状態で保持する第2ローラホルダ;
ここで、
前記第2ローラホルダは、
前記第2ローラ収容部に収容されている第3部分、および
前記第2ローラ収容部の外部に露出する第2下面を含み、かつ、前記第2レールの前記第2レール上面と対向するように配置するための第4部分、
を備え、
前記第4部分は、
前記第2レールの前記第2レール上面と対向するように配置可能な前記第2下面、
前記第2下面に連なる第3側面、および
前記第2下面に連なり、かつ前記第3側面の反対側に位置する第4側面、
を備え、
平面視において、前記第2ローラホルダの前記第4部分のうち、前記第3側面を含む第3突出部と、前記第4側面を含む第4突出部のそれぞれは、前記第2レールホルダの外側に突出しており、
前記第3側面および前記第4側面のそれぞれの硬さは、前記第2ローラホルダの前記第3部分の硬さよりも硬い。
【請求項13】
延伸装置用のリンク機構のローラを保持するためのローラホルダであって、以下を含む、ローラホルダ:
前記リンク機構のローラ収容部に収容するための第1部分;および
前記ローラ収容部の外部に露出し、かつ、前記リンク機構を支持する第1レールの第1レール上面と対向するように配置するための第1下面を含む第2部分;
ここで、
前記第2部分は、
前記第1レールの前記第1レール上面と対向するように配置可能な前記第1下面、
前記第1下面に連なる第1側面、および
前記第1下面に連なり、かつ前記第1側面の反対側に位置する第2側面、
を備え、
平面視において、前記ローラホルダの前記第2部分のうち、前記第1側面を含む第1突出部と、前記第2側面を含む第2突出部のそれぞれは、前記第1部分の外側に突出しており、
前記第1側面および前記第2側面のそれぞれの硬さは、前記ローラホルダの前記第1部分の硬さよりも硬い。
【請求項14】
請求項13に記載のローラホルダにおいて、
前記第2部分は、第1方向に延びる板状部材であって、
前記第2部分は、前記第1レールの延在方向と、前記第1方向とが一致するように前記第1レール上に配置することが可能であり、
前記第1側面は、前記第1方向において、前記第2部分の一方の端部にあり、
前記第2側面は、前記第1方向において、前記第2部分の他方の端部にあり、
平面視において、前記第1部分は、前記第1方向における前記第2部分の中心を含む位置に配置されている、ローラホルダ。
【請求項15】
請求項13に記載のローラホルダにおいて、
平面視において、前記第1側面および前記第2側面のそれぞれは、円弧形状を成す、ローラホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延伸装置用のリンク機構、延伸装置、およびリンク機構のローラを保持するためのローラホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
シートやフィルムなどの膜を搬送しながら縦方向や横方向に引き延ばす延伸装置が知られている。例えば、特許文献1(特開2012-121259号公報)には、シート状物の縦延伸と横延伸とを一度に行う同時二軸延伸装置が開示されている。特許文献1に開示されている同時二軸延伸装置は、折尺状に連結された複数のリンク機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
延伸装置の性能を向上させる観点から、リンク機構の耐久性を向上させることが好ましい。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態に係るリンク機構のローラを保持するためのローラホルダは、前記リンク機構のローラ収容部に収容するための第1部分、および前記ローラ収容部の外部に露出させるための第2部分を有している。平面視において、前記ローラホルダの前記第2部分は、前記第1部分の外側に突出している第1突出部と、前記第1突出部の反対側の第2突出部と、を有している。前記第1突出部の側面と、前記第2突出部の側面のそれぞれの硬さは、前記ローラホルダの前記第1部分の硬さよりも硬い。
【発明の効果】
【0007】
一実施形態によれば、延伸装置の性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施の形態である薄膜の製造システムの構成を示す模式図である。
【
図2】
図1に示す延伸装置の構造例を示す平面図である。
【
図3】閉じられた複数のリンク機構を示す平面図である。
【
図4】開かれた複数のリンク機構を示す平面図である。
【
図5】複数のリンク機構の一部を示す上方斜視図である。
【
図6】複数のリンク機構の一部を示す下方斜視図である。
【
図8】
図7に示す2つのローラホルダの一方、およびローラホルダに保持される上面ローラの透過平面図である。
【
図11】
図7に示す2つのローラホルダの他方、およびローラホルダに保持される上面ローラの透過平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態を実施例や図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0010】
<全体構造>
図1は、本実施の形態の薄膜の製造システムの構成を示す模式図である。
図1に示す薄膜製造システム1は、押し出し装置(二軸混練押し出し装置)2、Tダイ3、原反冷却装置4、延伸装置(同時二軸延伸装置)5、引き取り装置6、および巻き取り装置7を有する。
【0011】
薄膜製造システム1では、次のようなプロセスによって薄膜が製造される。まず、混練押し出し装置2の原料供給部(原料投入口,ホッパ)2Aに樹脂材料(ペレット)および添加剤などが供給される。押し出し装置2に供給される原料は、樹脂材料(例えば、ペレット状の熱可塑性樹脂材料)や添加剤などからなる。
【0012】
押し出し装置2に供給された原料は、混練(混合)されながら搬送される。例えば、押し出し装置2に供給された原料は、押し出し装置2内で、スクリューの回転によって前方へ送られながら溶融され、かつ、混練される。
【0013】
押し出し装置2によって混練された原料(混練物)は、Tダイ3に供給される。Tダイ3に供給された混練物は、Tダイ3のスリットから原反冷却装置4に向けて押し出される。押し出し装置2からTダイ3に供給された混練物は、Tダイ3を通過することにより、所定の形状(ここでは、フィルム状)に成形される。
【0014】
Tダイ3から押し出された混練物は、原反冷却装置4において冷却されて膜8になる。膜8は、固化状態(固体状態)の樹脂膜である。より特定的には、膜8は、例えば熱可塑性樹脂膜である。Tダイ3からは、膜8が連続的に押し出される。Tダイ3から膜8が連続的に押し出されることにより、延伸装置5に膜8が連続的に供給される。
【0015】
延伸装置5による膜の延伸工程に着目すると、膜8は延伸に供される原料に相当する。本明細書では、延伸装置5を中心に説明するので、延伸装置5に供されるシート状の材料、および延伸処理が施されている前の膜8のことを原反と呼ぶ場合がある。一方、延伸処理が完了し、延伸装置5から排出された状態の膜8を薄膜と呼ぶ場合がある。
【0016】
延伸装置5に供給された膜8は、延伸装置5によってMD方向およびTD方向に延伸される。延伸装置5によって延伸処理(引き伸ばし処理)が施された膜8は、引き取り装置6を介して巻き取り装置7に搬送され、巻き取り装置7に巻き取られる。巻き取り装置7に巻き取られた膜8は、必要に応じて切断される。
【0017】
図1に示される薄膜製造システム1は、上記のようなプロセスによって薄膜を製造する。もっとも、薄膜製造システム1は、製造する薄膜の特性などに応じて種々の変更が可能である。例えば、
図1に示される引き取り装置6の近傍に抽出槽が設置され、膜8に含まれる可塑剤(例えば、パラフィン)が除去される場合もある。
【0018】
薄膜製造システム1を構成している延伸装置5は、膜8をMD方向に搬送しながら、その膜8をMD方向およびTD方向に引き延ばす。MD(Machine Direction)方向は、膜8の搬送方向である。また、TD(Transverse Direction)方向は、膜8の搬送方向と交差する方向である。
【0019】
以下の説明では、MD方向を“搬送方向”または“縦方向”と呼び、TD方向を“横方向”と呼ぶ場合がある。MD方向(搬送方向,縦方向)とTD方向(横方向)とは、互いに交差する方向であり、より特定的には、互いに直交する方向である。つまり、
図1に示される延伸装置5は、膜8を搬送しながら、その膜8を互いに交差する二方向に同時に延伸させることが可能な延伸装置であり、一般的に“同時二軸延伸装置”と呼ばれる。
【0020】
<延伸装置>
図2は、
図1に示す延伸装置の構造例を模式的に示す平面図である。
図2において、複数のレール14およびリンク装置10のそれぞれは、熱処理部12でオーブンに覆われた部分を点線で示し、熱処理部12の外部にある部分を実線で示している。延伸装置5は、一対のリンク装置10と、入口部11と、熱処理部12と、出口部13と、を有している。また、延伸装置5は、支持台(ベッド)の上に配置された複数のレール14を有している。また、延伸装置5は、レール14の内側に配置された3つのスプロケット15,16,17を有している。
【0021】
一対のリンク装置10は、平面視において互いに離間している。以下の説明では、一対のリンク装置10の一方を“リンク装置10R”と呼び、一対のリンク装置10の他方を“リンク装置10L”と呼ぶ場合がある。
【0022】
リンク装置10Rとリンク装置10Lとは、TD方向に離間しており、膜8を挟んでTD方向に対向している。膜8は、リンク装置10Rとリンク装置10Lとの間のスペースをMD方向に搬送される。言い換えれば、対向するリンク装置10Rとリンク装置10Lとの間のスペースは、膜8を搬送するための搬送路として機能する。
【0023】
入口部11および出口部13のそれぞれは、熱処理部12としてのオーブンの外部に配置された部分である。本明細書では、熱処理部12の外部領域のうち、膜8の入口側の部分を入口部11と呼び、膜8の出口部分を出口部13と呼ぶ。
【0024】
熱処理部12は、搬送方向(MD方向)に沿って3つの領域12A,12B,12Cに分けられる。領域12Aは、予熱領域(プレヒート領域)であり、領域12Bは、延伸領域であり、領域12Cは、熱固定領域である。領域12A,12B,12Cは、この順で搬送方向(MD方向)に配列されている。
【0025】
熱処理部12は、リンク装置10R,10Lの中央部を覆っており、リンク装置10R,10Lによって搬送される膜8を加熱する。本実施形態の熱処理部12は、膜8を所望の温度に加熱可能なオーブンによって形成されている。膜8は、リンク装置10R,10Lに把持された状態で、熱処理部12としてのオーブンの庫内を通過する。熱処理部12としてのオーブンは、領域12A、領域12B、および領域12Cを覆っている。
【0026】
複数のレール14は、一対のリンク装置10のうち、一方のリンク装置10Rを支持する一対のレール14RA,14RBと、他方のリンク装置10Lを支持する一対のレール14LA,14LBと、を有している。
【0027】
レール14LBは、レール14LAの外側に配置され、レール14LAを囲んでいる。別の見方をすると、レール14LAは、レール14LBの内側に配置され、レール14LBに囲まれている。同様に、レール14RBは、レール14RAの外側に配置され、レール14RAを囲んでいる。別の見方をすると、レール14RAは、レール14RBの内側に配置され、レール14RBに囲まれている。
【0028】
レール14LA,14RAは“内側レール”と呼ばれ、レール14LB,14RBは“外側レール”と呼ばれることがある。また、レール14LA,14RAは“基準レール”や“SPレール”と呼ばれ、レール14LB,14RBは“MDレール”と呼ばれることがある。
【0029】
複数のレール14のそれぞれは、領域12A,12B,12Cに亘って環状に配置されている。より特定的には、複数のレール14のそれぞれ(言い換えれば、レール14LA,14RA,14LB,14RB)は、入口部11で折り返されるとともに、出口部13で折り返されて、入口部11、熱処理部12、および出口部13に亘って環状に配置されている。
【0030】
3つのスプロケット15,16,17のそれぞれは、一対のリンク装置10のうちのいずれか一方を駆動するギアである。3つのスプロケット15,16,17のそれぞれは、図示しないモータに接続されている。3つのスプロケット15,16,17のうち、スプロケット15およびスプロケット17は、入口部11に配置され、スプロケット16は出口部13に配置されている。
【0031】
3つのスプロケット15L,16L,17Lのそれぞれは、レール14LAの内側に配置されている。3つのスプロケット15R,16R,17Rのそれぞれは、レール14RAの内側に配置されている。
【0032】
リンク装置10Lが備える複数のリンク機構20は、一対のレール14LA,14LBに沿って移動可能な状態で、レール14LA,14LB上に配置されている。リンク装置10Lのスプロケット15L,16L,17Lは、リンク装置10Lの複数のリンク機構20と係合する。よって、スプロケット15L,16L,17Lが回転すると、リンク装置10Lの複数のリンク機構20に駆動力が働き、互いに連結された複数のリンク機構20がレール14LA,14LBの延在方向に沿って移動(走行)する。
【0033】
同様に、リンク装置10Rが備える複数のリンク機構20は、一対のレール14RA,14RBに沿って移動可能な状態で、レール14RA,14RB上に配置されている。リンク装置10Rのスプロケット15R,16R,17Rは、リンク装置10Rの複数のリンク機構20と係合する。よって、スプロケット15R,16R,17Rが回転すると、リンク装置10Rの複数のリンク機構20に駆動力が働き、互いに連結された複数のリンク機構20がレール14RA,14RBの延在方向に沿って移動(走行)する。
【0034】
つまり、複数のレール14は、複数のリンク機構20を予め設定された方向に移動(走行)させるためのガイド部材である。
【0035】
隣り合うリンク機構20間の間隔(ピッチ)は、レール14LA,14RAとレール14LB,14RBとの間の間隔(離間距離)に応じて変化する。言い換えれば、レール14LAとレール14LBとの離間距離、またはレール14RAとレール14RBとの離間距離を調節することにより、隣り合うリンク機構20間の間隔を調節することができる。隣り合うリンク機構20間の間隔(ピッチ)は、“リンクピッチ”と呼ばれることもある。
【0036】
以下の説明では、リンク装置10R,10Lのそれぞれについて、膜8と対向する側を“膜側”と呼び、膜側と反対側を“リターン側”と呼ぶ場合がある。つまり、クリップ21(後述する
図3参照)が膜8を把持した状態で、複数のリンク機構20が入口部11から出口部13に向かって移動する側(サイド)が膜側である。また、膜側の反対に位置し、クリップ21が膜8を把持しない状態で、複数のリンク機構20が出口部13から入口部11に向かって移動する側(サイド)がリターン側である。
【0037】
<リンク装置>
図3は、閉じられた複数のリンク機構を示す平面図である。
図4は、開かれた複数のリンク機構を示す平面図である。
【0038】
図2に示すリンク装置10Lとリンク装置10Rとは膜8の中心線を軸として線対称な構造になっている。同様に、一対のレール14LA,14LBと、レール14RA,14RBとは、膜8の中心線を軸として線対称な構造になっている。以下では、リンク装置10Lまたはリンク装置10Rと記載する代わりに、リンク装置10と記載して説明する。同様に、一対のレール14LA,14LBまたはレール14RA,14RBと記載する代わりに、一対のレール14A,14Bとして説明する。
【0039】
図3および
図4に示すように、リンク装置10は、互いに連結された複数のリンク機構20から成る。複数のリンク機構20のそれぞれは、レール14Aおよびレール14Bにより支持されている。
【0040】
図3および
図4に示されるように、レール14A,14Bの離間距離L1が小さくなるほど、隣り合うリンク機構20が成す角度が大きくなり、隣り合うリンク機構20間のピッチPが大きくなる。一方、レール14A,14Bの離間距離L1が大きくなるほど、隣り合うリンク機構20が成す角度が小さくなり、隣り合うリンク機構20間のピッチPが小さくなる。なお、ピッチPは、隣り合うリンク機構20の中心間距離と読み替えることができる。
【0041】
なお、
図3に示されているピッチPは40mmであり、
図4に示されているピッチPは120mmである。つまり、
図4には、
図3に示されているリンク機構20を縦方向の倍率が5倍になるまで開いた状態が示されている。また、
図3に示されている複数のリンク機構20は、隣り合うリンク機構20同士が最も接近するまで閉じられている。つまり、隣り合うリンク機構20間の最小ピッチは40mmである。
【0042】
以下の説明において、「リンク機構20が閉じられた状態」と記載した場合、
図3に示すように、隣り合うリンク機構20のピッチPが最小の値になった状態の事を意味する。一方、「リンク機構20が開いた状態」と記載した場合、例えば
図4に示す例のように、隣り合うリンク機構20のピッチPが最小の値よりも大きい値になった状態の事を意味する。
【0043】
複数のリンク機構20のそれぞれは、膜8を把持するクリップ21を有している。隣り合うリンク機構20間のピッチPの増減に応じて、隣り合うクリップ21間のピッチも増減する。例えば、レール14A,14Bの離間距離L1が減少すると、リンク機構20のピッチPが増大する。リンク機構20のピッチPが増大すると、クリップ21のピッチも増大する(
図3→
図4)。一方、レール14A,14Bの離間距離L1が増大すると、リンク機構20のピッチPが減少する。リンク機構20のピッチPが減少すると、クリップ21のピッチも減少する(
図4→
図3)。
【0044】
なお、複数のリンク機構20のそれぞれがクリップ21を備えているので、隣り合う2つのリンク機構20間のピッチと、それらリンク機構20が備える2つのクリップ21間のピッチとは、同一である。すなわち、
図3よび
図4に示されているピッチPは、隣り合うリンク機構20間のピッチであると同時に、隣り合うクリップ21間のピッチ(中心間距離)でもある。
【0045】
<延伸装置の動作>
図1に示される原反冷却装置4から延伸装置5に供給された膜8は、延伸装置5の入口でリンク装置10R,10Lにより把持される。詳しくは、膜8は、
図2,
図3に示されるリンク装置10の複数のリンク機構20のそれぞれが備えるクリップ21によって把持される。膜8の幅方向における一方側の端部がリンク装置10Rのリンク機構20が備えるクリップ21によって把持され、膜8の幅方向における他方側の端部がリンク装置10Lのリンク機構20が備えるクリップ21によって把持される。
【0046】
幅方向の両側がクリップ21によって把持された膜8は、クリップ21を含むリンク機構20の移動に伴って、延伸装置5の入口から出口に向かって搬送され、領域12A(予熱領域),領域12B(延伸領域),領域12C(熱固定領域)をこの順で通過する。膜8は、領域12B(延伸領域)を通過する過程でMD方向およびTD方向に引き伸ばされる。その後、膜8は、領域12C(熱固定領域)を経て出口に到達し、クリップ21から外される。クリップ21から外された膜8は、引き取り装置6に搬送され、引き取り装置6から巻き取り装置7に搬送される。
【0047】
図2に示されるように、領域12A(予熱領域)では、リンク装置10Rのリンク機構20が走行するレール14RBと、リンク装置10Lのリンク機構20が走行するレール14LBとの間の間隔(離間距離)L2は、ほぼ一定である。このため、領域12Aでは、膜8に対するTD方向の延伸処理は行われない。従って、領域12Aでは、搬送される膜8の幅(TD方向の寸法)は変化せず、一定のままである。
図2に示すTD方向の延伸処理は、
図2に示す間隔L2が徐々に大きくなることにより行われる。このため、領域12Aでは、膜8に対するTD方向の延伸処理は行われない。従って、領域12Aでは、搬送される膜8の幅(TD方向の寸法)は変化せず、一定のままである。
【0048】
また、領域12A(予熱領域)の膜側では、リンク装置10Rのリンク機構20が走行するレール14RAとレール14RBとの間隔(離間距離)、およびリンク装置10Lのリンク機構20が走行するレール14LAとレール14LBとの間隔(離間距離)のそれぞれは、ほぼ一定である。例えば、領域12Aの膜側では、リンク装置10Rのリンク機構20が走行するレール14RAと14RBとの間の間隔、およびリンク装置10Lのリンク機構20が走行するレール14LAとレール14LBとの間隔は、それぞれ
図3に示された離間距離L1と同程度である。
【0049】
また、
図3よび
図4に示されているピッチPは、レール14Aと14Bとの離間距離L1に応じて変化する。このため、
図2に示される領域12A(予熱領域)の膜側では、リンク装置10Rおよびリンク装置10LのピッチP(
図3参照)は、ほぼ一定である。このため、複数のリンク機構20が有するクリップ21のピッチPもほぼ一定である。例えば、クリップ21のピッチPは、
図3に示されたピッチPと同程度である。
【0050】
図2に示すMD方向の延伸処理は、
図3に示すクリップ21間のピッチPが徐々に大きくなることにより行われる。このため、領域12Aでは、膜8に対するMD方向の延伸処理は行われない。従って、領域12Aでは、搬送される膜8の長さ(MD方向の寸法)は変化せず、一定のままである。つまり、領域12Aでは、TD方向にもMD方向にも、膜8に対する延伸処理は行われない。
【0051】
また、ピッチPの変動範囲を大きくする観点からは、MD方向の延伸処理の開始前である領域12A(
図2参照)では、ピッチPは小さいことが好ましい。例えば、
図3に示す例では、隣り合うリンク機構20の一部分が接触している。詳しくは、リンク機構20が備えているローラホルダ60の一部が接触している。ローラホルダ60の詳細な構造については後述する。
【0052】
次に、領域12Bにおける延伸装置5の動作について説明する。
図2に示すように、領域12Bでは、リンク機構20が搬送方向(MD方向)に進むに従って、リンク装置10Rのリンク機構20が走行するレール14RBと、リンク装置10Lのリンク機構20が走行するレール14LBとの間の間隔(離間距離)L2が徐々に大きくなっている。このため、領域12Bの膜側では、膜8は、搬送方向(MD方向)に進むに従ってTD方向に引っ張られて引き伸ばされる。言い換えれば、領域12Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、膜8の幅(TD方向の寸法)が徐々に大きくなる。
【0053】
また、領域12Bの膜側では、搬送方向(MD方向)に進むに従って、リンク装置10Rのリンク機構20が走行するレール14RAとレール14RBとの間の離間距離(間隔)(
図3および
図4参照)が徐々に小さくなっている。また、領域12Bの膜側では、リンク装置10Lのリンク機構20が走行するレール14LAとレール14LBとの間の離間距離(間隔)も徐々に小さくなっている。
【0054】
このため、領域12Bの膜側では、搬送方向(MD方向)に進むに従って、リンク装置10Rのリンク機構20のピッチP(
図3および
図4参照)が徐々に大きくなり、それに従ってリンク装置10Rのクリップ21のピッチも徐々に大きくなる。また、領域12Bの膜側では、搬送方向(MD方向)に進むに従って、リンク装置10Lのリンク機構20のピッチPが徐々に大きくなり、それに従ってリンク装置10Rのクリップ21のピッチも徐々に大きくなる。
【0055】
この結果、領域12Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、膜8は、MD方向に引っ張られて引き伸ばされる。従って、領域12Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、膜8は、TD方向およびMD方向に引き伸ばされる(延伸される。)。すなわち、領域12Bでは、TD方向およびMD方向の延伸処理が、膜8に対して施される。
【0056】
次に、領域12Cにおける延伸装置5の動作について説明する。領域12Cでは、リンク装置10Rのリンク機構20が走行するレール14RBと、リンク装置10Lのリンク機構20が走行するレール14LBとの間の間隔(離間距離)L2は、ほぼ一定である。このため、領域12Cでは、膜8に対するTD方向の延伸処理は行われない。従って、領域12Cでは、搬送される膜8の幅(TD方向の寸法)は変化せず、一定のままである。
【0057】
また、領域12Cの膜側では、リンク装置10Rのリンク機構20が走行するレール14Aとレール14Bとの間の離間距離(間隔)(
図4参照)は、ほぼ一定である。このため、領域12Cの膜側では、リンク装置10Rのリンク機構20のピッチPはほぼ一定であり、従って、リンク装置10Rのクリップ21のピッチもほぼ一定である。
【0058】
同様に、領域12Cの膜側では、リンク装置10Lのリンク機構20が走行するレール14Aとレール14Bとの間の離間距離(間隔)は、ほぼ一定である。このため、領域12Cの膜側では、リンク装置10Lのリンク機構20のピッチPはほぼ一定であり、従って、リンク装置10Lのクリップ21のピッチもほぼ一定である。
【0059】
この結果、領域12Cでは、膜8に対するMD方向の延伸処理は行われない。つまり、領域12Cでは、TD方向にもMD方向にも、膜8に対する延伸処理は行われない。
【0060】
次に、リターン側における延伸装置5の動作について説明する。リンク装置10Rおよびリンク装置10Lのそれぞれのリターン側では、クリップ21(
図3参照)は膜8を保持していない。このため、
図3および
図4に示されたリンク装置10レール14Aとレール14Bとの離間距離L1は、膜8の品質に直接的な影響を与えない。したがって、離間距離L1は任意に設定可能である。
【0061】
ただし、リンク装置10が備えるリンク機構20の数を低減させる観点からは以下の態様が好ましい。すなわち、リターン側における離間距離L1(
図4参照)は、膜側の領域12Aにおける離間距離L1(
図3参照)よりも小さいことが好ましい。例えば
図4に示すように、離間距離L1が小さい場合、隣り合うリンク機構20のピッチPが大きくなる。この場合、
図2に示す出口部13から入口部11に向かうリターン側の経路に配置されているリンク機構20の数を低減させることができる。
【0062】
リンク機構20の数を低減できれば、リンク装置10の部品数を低減させることになるので、故障発生のリスクを小さくすることができる。リンク装置10の故障発生頻度が低減することは、延伸処理の効率を向上させることになるので、延伸装置5の性能向上という観点から好ましい。
【0063】
以上の観点から、本実施の形態の場合、リターン側における離間距離L1(
図4参照)は、膜側の領域12Aにおける離間距離L1(
図3参照)よりも小さい。また、リターン側における離間距離L1は、膜側の領域12Cにおける離間距離L1よりも小さい場合もある。リターン側における離間距離L1は、膜側の領域12Cにおける離間距離L1以下であることが特に好ましい。
【0064】
言い換えれば、本実施の形態の場合、リターン側におけるリンク機構20のピッチP(
図4参照)は、膜側の領域12AにおけるピッチP(
図3参照)よりも小さい。また、リターン側におけるピッチPは、膜側の領域12CにおけるピッチPよりも小さい場合もある。リターン側におけるピッチPは、膜側の領域12CにおけるピッチP以下であることが特に好ましい。
【0065】
<リンク機構>
図5は、複数のリンク機構の一部を示す上方斜視図である。
図6は、複数のリンク機構の一部を示す下方斜視図である。
図7は、リンク機構の側面図である。
図7では、レール14Aおよびレール14Bを断面図として示している。リンク装置10R,10Lが備える複数のリンク機構20のそれぞれは、クリップ21に加えて、上段リンクプレート22と、下段リンクプレート23と、一対のレールホルダ24,25と、一対のレールホルダ24,25に跨るベース部材26と、を有している。一方のレールホルダ24は、レール14B(
図7参照)上に配置され、他方のレールホルダ25は、レール14A(
図7参照)上に配置されている。
【0066】
上段リンクプレート22および下段リンクプレート23は、平面視において直線的に延びる板状の部材である。ベース部材26は、平面視において直線的に延びている点で上段リンクプレート22および下段リンクプレート23と共通している。ベース部材26の厚さは、上段リンクプレート22および下段リンクプレート23のそれぞれの厚さより厚い。
【0067】
リンク機構20の上段リンクプレート22および下段リンクプレート23の一端は、リンク機構20のレールホルダ25に回転可能に連結されている。一方、それぞれのリンク機構20の上段リンクプレート22および下段リンクプレート23の他端は、隣りのリンク機構20のレールホルダ24に回転可能に連結されている。
【0068】
リンク機構20のベース部材26の一端は、リンク機構20のレールホルダ24に回転可能に連結され、それぞれのリンク機構20のベース部材26の他端は、当該リンク機構20のレールホルダ25に回転可能に連結されている。
【0069】
リンク機構20のレールホルダ24,25には、回転しながらレール14A,14Bに沿って移動する複数の側面ローラ30が設けられている。
【0070】
図5から
図7に示す例では、レールホルダ24には3個の側面ローラ30が設けられている。一方、レールホルダ25には、2個の側面ローラ30が設けられている。つまり、リンク装置10R,10Lでは、合計5個の側面ローラ30を備えている。
【0071】
<レールホルダ>
図7に示すように、レール14Aおよびレール14Bのそれぞれは、側面14s1と、側面14s1の反対側の側面14s2と、側面14s1および側面14s2のそれぞれに連なる上面14tと、を有している。一対のレール14は、一対のリンク装置10のうちの一方を支持するレール14Aと、一対のリンク装置10のうちの他方を支持するレール14Bと、を有している。
【0072】
レールホルダ24は、レール14Bの上面14tの上に、レール14Bを横断するように配置される。このとき、レールホルダ24の長手方向の中央部分は、レール14Bの上面14tの直上または略直上に配置されている。レールホルダ24の長手方向の一端側は、レール14Bの内側(レール14Aと対向する側)に突出し、レールホルダ24の長手方向他端側は、レール14Bの外側(レール14Aと対向する側と反対側)に突出する。
【0073】
レールホルダ25は、レール14Aの上面14tの上に、レール14Aを横断するように配置されている。このとき、レールホルダ25の長手方向の中央部分は、レール14Aの上面14tの直上または略直上に配置される。レールホルダ25の長手方向の一端側は、レール14Aの内側(レール14Bと対向する側)に突出し、レールホルダ25の長手方向の他端側は、レール14Aの外側(レール14Bと対向する側と反対側)に突出する。
【0074】
レールホルダ24には、ベース部材26の一端が回転可能に連結されるリンクシャフト40が設けられている。レールホルダ25には、ベース部材26の他端が回転可能に連結されるリンクシャフト41が設けられている。リンクシャフト40は、レール14Bの内側に突出しているレールホルダ24の一端側に設けられている。一方、リンクシャフト41は、レール14Aの直上または略直上に位置しているレールホルダ25の長手方向の中央に設けられている。
【0075】
レールホルダ25に設けられているリンクシャフト41には、ベース部材26の一端に加えて、上段リンクプレート22および下段リンクプレート23の一端も回転可能に連結されている。なお、上段リンクプレート22および下段リンクプレート23の他端は、隣り合う他のリンク機構20のレールホルダ24に設けられているリンクシャフト40に回転可能に連結されている。
【0076】
リンクシャフト40は、レール14B側のリンク軸である。また、リンクシャフト41は、レール14A側のリンク軸である。リンクシャフト40は、レール14Bの内側に突出しているレールホルダ24の一端側に設けられている。一方、リンクシャフト41は、レール14Aの直上または略直上に位置しているレールホルダ25の長手方向中央に設けられている。なお、クリップ21は、レール14Bの外側に突出しているレールホルダ24の端部に設けられている。
【0077】
<側面ローラ>
図7に示すように、レールホルダ24には、互いに平行な3本のローラシャフト42,43,44が設けられている。レールホルダ24がレール14B上に配置されると、ローラシャフト42,43は、レール14Bの一側(内側)に配置され、ローラシャフト44は、レール14Bの他側(外側)に配置される。
【0078】
ローラシャフト42,43,44の一部はレールホルダ24に圧入されており、ローラシャフト42,43,44の他の一部はレールホルダ24の下方に突出している。レールホルダ24の下方に突出しているローラシャフト42,43,44の突出部に、側面ローラ30が回転自在に装着されている。
【0079】
平面視において、複数の側面ローラ30の外径は、それぞれ同一である。ただし、変形例として異なる外径の側面ローラを適用する場合がある。例えば、ローラシャフト44には、ローラシャフト42,43に装着されている側面ローラ31a,31bよりも外径が大きな側面ローラ32が回転自在に装着されている場合がある。
【0080】
レールホルダ24がレール14B上を移動する際、側面ローラ31a,31bは、回転しながらレール14Bの内側面に沿って移動する。レールホルダ24がレール14B上を移動する際、側面ローラ32は、回転しながらレール14Bの外側面に沿って移動する。
【0081】
レールホルダ24に支持される複数の側面ローラ30のそれぞれは、以下のように表現できる。すなわち、側面ローラ32は、レールホルダ24に支持され、かつ、軸RA1を回転軸として、レール14Bの側面14s1に接触しながら回転することが可能な側面ローラである。
図7に示す例では、軸RA1は、上面14tの法線方向に対して平行である。
【0082】
側面ローラ31aは、レールホルダ24に支持され、かつ、レール14Bを介して軸RA1の反対側にある軸RA2を回転軸として、レール14Bの側面14s2に接触しながら回転することが可能な側面ローラである。
図7に示す例では、軸RA2は、上面14tの法線方向に対して平行である。
【0083】
側面ローラ31bは、レールホルダ24に支持され、かつ、レール14Bを介して軸RA1の反対側にある軸RA3を回転軸として、レール14Bの側面14s2に接触しながら回転することが可能な側面ローラである。
図7に示す例では、軸RA3は、上面14tの法線方向に対して平行である。
【0084】
ただし、レールホルダ24のより円滑な移動を実現すべく、側面ローラ31a,31bとレール14Bの内側面との間には僅かな隙間(クリアランス)が設けられる。同様の理由により、側面ローラ32とレール14Bの外側面との間にも僅かな隙間(クリアランス)が設けられている。したがって、上記した、「接触しながら回転することが可能」とは、連続的に接触しながら回転可能な態様の他、断続的に接触しながら回転可能な態様を含む。
【0085】
なお、
図7に示された側面視において、軸RA2と軸RA3とは重なっている。ただし、
図6に示すように、軸RA2と軸RA3とは互いに離間している。
【0086】
もっとも、レールホルダ24に設けられている3つの側面ローラ30は、シャフトに装着された転がり軸受の外輪である点で共通している。よって、側面ローラ31aは、ローラシャフト42を回転軸として回転し、側面ローラ31bは、ローラシャフト43を回転軸として回転する。また、側面ローラ32は、ローラシャフト44を回転軸として回転する。
【0087】
図6に示すように、側面ローラ31aと側面ローラ31bとは、回転軸の方向で異なる高さに配置されている。さらに、側面ローラ31aと側面ローラ31bとは、径方向の一部が互いに重なり合っている。
【0088】
図7に示されるように、側面ローラ31aは、回転軸の方向で側面ローラ31bよりも高い位置に配置されている。言い換えれば、側面ローラ31bは、回転軸の方向で側面ローラ31aよりも低い位置に配置されている。別の見方をすると、側面ローラ31aと側面ローラ31bとが段違いで配置されている。
【0089】
側面ローラ31aが高位置に配置され、側面ローラ31bが低位置に配置されているリンク機構20では、レールホルダ24と側面ローラ31bとの間に、側面ローラ31aの厚み以上の隙間が存在している。一方、側面ローラ31aが低位置に配置され、側面ローラ31bが高位置に配置されているリンク機構20では、レールホルダ24と側面ローラ31aとの間に、側面ローラ31bの厚み以上の隙間が存在している。
【0090】
また、
図3に示すように、リンク機構20が閉じられた状態において、側面ローラ31aと側面ローラ31bとは、以下のような位置関係になっている。すなわち、平面視において、あるリンク機構20の側面ローラ31aは、隣に配置されているリンク機構20の側面ローラ31bと重なっている。
【0091】
本実施の形態の場合、リンク機構20が閉じられた状態において側面ローラ31aと側面ローラ31bとが重ねるように配置可能な構造となっている。これにより、側面ローラ31aと側面ローラ31bとの接触を回避し、かつ、
図3に示すピッチPを小さくすることができる。
【0092】
再び
図7を参照すると、レールホルダ25には、互いに平行な2本のローラシャフト45,46が設けられている。レールホルダ25がレール14A上に配置されると、ローラシャフト45は、レール14Aの一側(内側)に配置され、ローラシャフト46は、レール14Aの他側(外側)に配置される。
【0093】
ローラシャフト45,46の一部はレールホルダ25に圧入されており、ローラシャフト45,46の他の一部はレールホルダ25の下方に突出している。レールホルダ25の下方に突出しているローラシャフト45,46の突出部に、側面ローラ30が回転自在に装着されている。
【0094】
ローラシャフト45,46には、側面ローラ32と同一の外径を有する側面ローラ30がそれぞれ回転自在に装着されている。側面ローラ33,34のそれぞれは、以下のように表現できる。すなわち、側面ローラ33は、レールホルダ25に支持され、かつ、軸RA4を回転軸として、レール14Aの側面14s1に接触しながら回転することが可能な側面ローラである。
図7に示す例では、軸RA4は、上面14tの法線方向に対して平行である。
【0095】
レールホルダ25がレール14A上を移動する際、側面ローラ33は、回転しながらレール14Aの内側面に沿って移動する。レールホルダ25がレール14A上を移動する際、側面ローラ34は、回転しながらレール14Aの外側面に沿って移動する。
【0096】
図7に示すように、側面ローラ33は、レールホルダ25に支持され、かつ、レール14Aの上面14tの法線方向に対して平行である軸RA4を回転軸として、レール14Bの側面14s2に接触しながら回転することが可能な側面ローラである。
【0097】
側面ローラ34は、レールホルダ25に支持され、かつ、レール14Aを介して軸RA4の反対側にある軸RA5を回転軸として、レール14Aの側面14s2に接触しながら回転することが可能な側面ローラである。
図7に示す例では、軸RA5は、レール14Aの上面14tの法線方向に対して平行である。
【0098】
ただし、レールホルダ25のより円滑な移動を実現すべく、側面ローラ33とレール14Aの内側面との間には僅かな隙間(クリアランス)が設けられる。同様の理由により、側面ローラ34とレール14Aの外側面との間にも僅かな隙間(クリアランス)が設けられている。したがって、上記した「接触しながら回転することが可能」とは、連続的に接触しながら回転可能な態様の他、断続的に接触しながら回転可能な態様を含む。
【0099】
側面ローラ34は、レールホルダ25に支持され、かつ、上面14tの法線方向に対して平行である軸RA5を回転軸として、レール14Aの側面14s2に接触しながら回転することが可能な側面ローラである。
【0100】
もっとも、レールホルダ25に設けられている2つの側面ローラ30は、シャフトに装着された転がり軸受の外輪である点で共通している。よって、側面ローラ33は、ローラシャフト45を回転軸として回転する。また、側面ローラ34は、ローラシャフト46を回転軸として回転する。
【0101】
<上面ローラおよびローラホルダ>
図6に示すように、複数のリンク機構20のそれぞれは、上面ローラ50、ローラホルダ60、上面ローラ70、およびローラホルダ80を有している。
【0102】
図7に示すように、レールホルダ24には、上面ローラ50が回転自在に設けられている。上面ローラ50は、レールホルダ24に固定されたローラホルダ60に支持されている。上面ローラ50は、レールホルダ24の長手方向で側面ローラ31a,31bと側面ローラ32との間に配置されている。詳細は後述するが、上面ローラ50の回転軸は、側面ローラ31a,31bや側面ローラ32の回転軸(軸RA1,RA2,RA3)と直交している。レールホルダ24がレール14B上を移動する際、上面ローラ50は、回転しながらレール14Bの上面を移動する。上面ローラ50は、レール14Bの上面14tと常に接し、レールホルダ24を支持する。すなわち、上面ローラ50は、レールホルダ24を支持する支持ローラである。
【0103】
レールホルダ25には、上面ローラ70が回転自在に設けられている。上面ローラ70は、レールホルダ25に固定されたローラホルダ80に支持されている。上面ローラ70は、レールホルダ25の長手方向で側面ローラ33と側面ローラ34との間に配置されている。詳細は後述するが、上面ローラ70の回転軸は、側面ローラ33,34の回転軸(軸RA4,RA5)と直交している。レールホルダ25がレール14A上を移動する際、上面ローラ70は、回転しながらレール14Aの上面14tを移動する。上面ローラ70は、レール14Aの上面14tと常に接し、レールホルダ25を支持する。すなわち、上面ローラ70は、レールホルダ25を支持する支持ローラである。
【0104】
以下、
図5に示す上面ローラ50およびローラホルダ60の詳細について説明する。
図8は、
図7に示す2つのローラホルダの一方、およびローラホルダに保持される上面ローラの透過平面図である。
図9は、
図8のA-A線に沿った断面図、
図10は、
図8のB-B線に沿った断面図である。
図8から
図10に示すローラホルダ60は、
図7に示すレールホルダ24に固定されている。
図10は、
図7に示す2つのローラホルダの他方、およびローラホルダに保持される上面ローラの透過平面図である。
【0105】
図8には、X方向およびY方向が示されている。X方向およびY方向は、互いに交差している。以下で説明する例においては、X方向はY方向に直交する。以下では、X方向およびY方向を含むX-Y平面を平面として説明する。以下の説明において、特に異なる意味で解釈すべきことを明示した場合を除き、「平面視」とは、X-Y平面に対して平行な面を視た場合を意味する。また、
図9および
図10に示すように、X-Y平面に対する法線方向のことを「Z方向」または厚さ方向として説明する。X方向、Y方向およびZ方向は、互いに交差する方向であり、より特定的には互いに直交する方向である。
【0106】
図9および
図10に示すように、レールホルダ24は、上面ローラ50を収容するための開口部であるローラ収容部51を有している。ローラ収容部51は、レールホルダ24の下面の一部分に形成された開口部である。
【0107】
上面ローラ50は、ローラ収容部51内に配置されている。また、上面ローラ50は、軸RA6を回転軸として、レール14Bの上面14tに接触しながら回転することが可能な状態でローラホルダ60に保持されている。軸RA6は、
図7に示すRA1および軸RA2のそれぞれと交差する。
図9に示す例の場合、軸RA6は、
図7に示すRA1および軸RA2のそれぞれと直交する。また、
図9に示す例の場合、軸RA6は、レール14Bの上面14tに対して平行である。
【0108】
図9に示す例では、上面ローラ50は、レール14Bの上面14tに接触する円環上の部材である。軸RA6に沿って配置された軸部材52と上面ローラ50との間には、複数のボールベアリング53が配置されている。本実施の形態の場合、複数のボールベアリング53が回転することにより、上面ローラ50が円滑に回転するように構成されている。
【0109】
ローラホルダ60は、レールホルダ24のローラ収容部51に固定されている。
図8および
図9に示す例では、ローラホルダ60は、軸部材52(および後述する
図10に示すボルト63)を介してローラ収容部51に固定されている。また、ローラホルダ60は、上面ローラ50を回転自在な状態で保持している。
【0110】
ローラホルダ60は、軸RA6に平行なX方向に延びる貫通孔を有している。
図9に示す例では、部分61は、貫通孔に沿って部分61の側面から突出する筒状の部分を有している。部分61の筒状の部分には、軸部材52の一部分が挿入されている。
【0111】
図8に示す例の場合、上面ローラ50は、ローラホルダ60の部分61の一方の隣に配置されている上面ローラ50aと、他方の隣に配置されている上面ローラ50bと、を有している。平面視において、上面ローラ50a,50bのそれぞれは、部分62の側面60s1と側面60s2との間に配置されている。言い換えれば、平面視において、上面ローラ50は、部分61の両隣に配置され、かつ、側面60s1と側面60s2との間に配置されている。
【0112】
なお、図示は省略するが、変形例として、上面ローラ50が1個である場合もある。ただし、レール14B上での安定性を考慮すると、
図8および
図9に示すように、X方向に沿って複数の上面ローラ50が配列され、複数の上面ローラ50のそれぞれが、常時、レール14Bと接触していることが好ましい。
【0113】
図8から
図10に示すように、ローラホルダ60は、ローラ収容部51(
図9、
図10参照)に収容されている部分61を備えている。また、ローラホルダ60は、ローラ収容部51の外部に露出する下面60b(
図9、
図10参照)と、を含み、かつ、レール14Bの上面14t(
図9、
図10参照)と対向するように配置するための部分62と、を備えている。
【0114】
部分62は、レール14Bの上面14t(
図9、
図10参照)と対向するように配置可能な下面60b(
図9、
図10参照)と、下面60bに連なる側面60s1(
図8、
図10参照)と、下面60bに連なり、かつ側面60s1の反対側に位置する側面60s2(
図8、
図10参照)と、を備えている。
【0115】
図10に示すように下面60bは、レール14Bの上面14tと対向しているが、接触してはいない。言い換えれば、下面60bとレール14Bの上面14tとの間には隙間がある。
【0116】
図3に示すように、リンク機構20が閉じられた状態、言い換えれば、
図3に示すピッチPが最小の状態では、隣り合うリンク機構20のうちの一部分が接触する場合がある。
【0117】
ここで、リンク機構20の任意の部分が接触する場合、接触する際のリンク機構20の移動速度によっては、接触箇所が損傷する場合がある。特に、
図2に示す入口部11など、隣り合うリンク機構20のピッチが急激に狭くなる場所では、隣り合うリンク機構20同士の衝突により、リンク機構20を構成する部品が損傷または劣化する場合がある。
【0118】
そこで、本実施の形態の場合、リンク機構20のうち、特定の部分が接触するような構造とし、かつ、衝突するように設計された部分の硬さを硬くすることにより、衝突の外力に対する耐久性を向上させている。
【0119】
すなわち、
図8に示すように、平面視において、ローラホルダ60の部分62のうち、側面60s1を含む突出部62P1と、側面60s2を含む突出部62P2のそれぞれは、レールホルダ24の外側に突出している。側面60s1および側面60s2のそれぞれの硬さは、ローラホルダ60の部分61の硬さよりも硬い。
【0120】
図8に示すように、ローラホルダ60は、突出部62P1および突出部62P2を有しているので、
図3に示すように、リンク機構20のピッチPを最小化した場合、隣り合うリンク機構20のローラホルダ60が接触する。この場合、レールホルダ24は接触しないので、レールホルダ24が衝突により変形することを防止できる。
【0121】
また、ローラホルダ60のうち、隣のローラホルダ60と接触するのは、
図8に示す側面60s1および側面60s2である。したがって、ローラホルダ60の全体の硬さを硬くする必要はなく、少なくとも側面60s1および側面60s2が硬くなっていればよい。
【0122】
ローラホルダ60の全体を硬い金属で形成する場合、加工性が低下するので、ローラホルダ60の製造効率が低下する。
【0123】
一方、本実施の形態の場合、側面60s1および側面60s2のそれぞれの硬さが、ローラホルダ60の部分61の硬さよりも硬くなっていればよいので、ローラホルダ60全体を硬い金属で形成する必要はない。
【0124】
本実施の形態のように、側面60s1および側面60s2のそれぞれの硬さを選択的に硬くする方法として、高周波焼き入れとよばれる熱処理方法を利用できる。高周波焼入れは、金属部品の全体ではなく、特定部分の耐久性を向上させる目的で、特定部分を選択的に加熱する熱処理方法の一つである。
【0125】
高周波焼き入れを行う場合、加熱対象である特定部分(本実施の形態の場合、側面60s1および側面60s2)の近傍に配置したコイルに高周波誘導電流を流す。コイルで発生する磁力の影響により、上記特定部分には誘導電流が発生する。この誘導電流は、特定部分の表面に近い程、電流密度が高いので、非加熱部材の表面付近を選択的に加熱することができる。その後、急激に冷却することにより、表面を選択的に硬化させることができる。また、靭性を向上させるため、冷却後に150度から200度程度の低温で焼き戻しを行う場合もある。
【0126】
例示した高周波焼き入れには限定されないが、上記のように特定部分のみを選択的に加熱する熱処理を施すことにより、本実施の形態のように、側面60s1および側面60s2のそれぞれの硬さが、ローラホルダ60の部分61の硬さよりも硬いローラホルダ60が得られる。
【0127】
なお、ローラホルダ60の耐久性を向上させる観点からは、少なくとも側面60s1および側面60s2のそれぞれが硬くなっていればよいが、側面60s1および側面60s2の周辺が硬くなることを排除するものではない。例えば
図8に示す突出部62P1,62P2、あるいは、部分62の表面全体が部分61よりも硬くなっている場合でも、ローラホルダ60の耐久性を向上させることができる。
【0128】
ただし、硬化させる範囲が大きくなる程、熱処理に要する時間が長くなる。したがって、熱処理工程の効率化を図る観点からは、熱処理を施す範囲が小さいことが好ましい。例えば、側面60s1および側面60s2のそれぞれの硬さは、下面60b(
図10参照)のうち、側面60s1と側面60s2の中間の場所(言い換えれば、側面60s1からの最短距離と側面60s2の最短距離とが等しい場所)の硬さよりも硬いことが好ましい。
【0129】
また、
図8に示すように、部分62は、Y方向に延びる板状部材である。レールホルダ24は、レール14Bの延在方向と、Y方向とが一致するようにレール14B上に配置することが可能である。部分62は、レール14Bの延在方向と、Y方向とが一致するようにレール14B上に配置することが可能である。側面60s1は、Y方向において、部分62の一方の端部にある。側面60s2は、Y方向において、部分62の他方の端部にある。平面視において、部分61は、Y方向における部分62の中心C62を含む位置に配置されている。
【0130】
側面60s1または側面60s2に印加された外力に起因する応力が、部分61を介してレールホルダ24に伝搬することを回避する観点からは、側面60s1および側面60s2から部分61までの距離を遠くすることが好ましい。このため、平面視において、部分61は、Y方向における部分62の中心C62を含む位置に配置されていることが好ましい。
【0131】
また、
図8に示す例では、平面視において、側面60s1および側面60s2のそれぞれは、円弧形状を成す。図示は省略するが、
図8に示す態様に対する変形例として、
図8に示す突出部62P1および突出部62P2の平面形状が例えば長方形である場合について検討する。
【0132】
図3や
図4に示すように、レール14Bが直線的に延びている領域では、突出部62P1および突出部62P2の平面形状が長方形であっても、ピッチPは一定である。一方、
図2に示す入口部11のスプロケット17の近傍領域のように、レール14が曲がっている領域では、突出部62P1および突出部62P2が互いに接触する位置に応じてピッチPが一定とはならない場合がある。
【0133】
例えば、四角形の突出部62P1,62P2のうち、クリップ21(
図3参照)に近い位置で接触した場合と、突出部62P1,62P2のうち、クリップ21から遠い位置で接触した場合と、を比較して検討する。
【0134】
四角形の突出部62P1,62P2のうち、クリップ21(
図3参照)に近い位置で接触した場合、レール14Bが直線的に延びている場合と比較して、ピッチP(
図3参照)は小さくなる。
【0135】
一方、四角形の突出部62P1,62P2のうち、クリップ21(
図3参照)から遠い位置で接触した場合、レール14Bが直線的に延びている場合と比較して、ピッチP(
図3参照)は大きくなる。
【0136】
図8に示す例のように、側面60s1および側面60s2のそれぞれが、円弧形状を成す場合、円弧形状の頂点(レールホルダ24からの距離が最も遠い点)の近傍で突出部62P1および突出部62P2が互いに接触する。
【0137】
このため、レール14Bが曲がっている領域においても、ピッチP(
図3参照)を略一定に保つことができる点で、側面60s1および側面60s2のそれぞれが、円弧形状を成す方が好ましい。
【0138】
なお、本実施の形態の場合、
図3に示すように、クリップ21は、レールホルダ24に固定されている。クリップ21が固定されているレールホルダ24の幅W24は、クリップ21が固定されていないレールホルダ25の幅W25よりも広い。幅W24は、レール14Bの延在方向(言い換えれば長手方向)に沿った方向におけるレールホルダ24の長さの最大値として定義される。幅W25は、レール14Aの延在方向(言い換えれば長手方向)に沿った方向におけるレールホルダ25の長さの最大値として定義される。
【0139】
レールホルダ24の幅W24は、レールホルダ25の幅W25よりも広いので、レール14Bに沿って側面ローラ31aおよび側面ローラ31bを配列することができる。また、これにより、レール14Bとクリップ21とが成す角度を安定させることができる。
【0140】
ただし、レールホルダ24の幅W24が広いので、ローラホルダ60は、ローラホルダ80よりも接触する可能性が高い。したがって、レールホルダ24およびレールホルダ25のうちいずれか一方にローラホルダを設ける変形例の実施態様においては、
図8から
図10に示すレールホルダ24にローラホルダ60を設ける構造を優先させることが好ましい。
【0141】
なお、本実施の形態に対する変形例として、幅W25の方が幅W24よりも広い変形例の場合、
図11から
図13に示すレールホルダ25にローラホルダ80を設ける構造を優先させることが好ましい。
【0142】
また、
図3に示す例では、隣り合うリンク機構20のピッチPが最小になった時に、ローラホルダ80は隣のローラホルダ80と接触していない。このため、本実施の形態に対する変形例として、ローラホルダ80は、ローラホルダ80とは異なる構造(例えば、後述する
図11に示す突出部82P1および突出部82P2が設けられていない構造)を適用する場合がある。
【0143】
ただし、レールホルダ25の損傷を確実に防ぐ観点からは、以下で説明するように、ローラホルダ80も、
図8から
図10を用いて説明した構造と同様の構造であることが好ましい。なお、以下では、上面ローラ70およびローラホルダ80の詳細について説明するが、
図8に示すローラホルダ60と同様の効果や、熱処理方法の例については、重複する説明を省略する。
【0144】
以下、
図7に示す上面ローラ70およびローラホルダ80の詳細について説明する。
図11は、
図7に示す2つのローラホルダの一方、およびローラホルダに保持される上面ローラの透過平面図である。
図12は、
図11のA-A線に沿った断面図、
図13は、
図11のB-B線に沿った断面図である。
図11から
図13に示すローラホルダ80は、
図7に示すレールホルダ25に固定されている。
図13は、
図7に示す2つのローラホルダの他方、およびローラホルダに保持される上面ローラの透過平面図である。
図11から
図13に示すX方向、Y方向、およびZ方向の定義は、
図8から
図10を用いて説明した定義と同様である。
【0145】
図12および
図13に示すように、レールホルダ25は、上面ローラ70を収容するための開口部であるローラ収容部71を有している。ローラ収容部71は、レールホルダ25の下面の一部分に形成された開口部である。
【0146】
上面ローラ70は、ローラ収容部71内に配置されている。また、上面ローラ70は、軸RA7を回転軸として、レール14Aの上面14tに接触しながら回転することが可能な状態でローラホルダ80に保持されている。軸RA7は、
図7に示すRA1および軸RA2のそれぞれと交差する。
図12に示す例の場合、軸RA7は、
図7に示すRA4および軸RA5のそれぞれと直交する。また、
図12に示す例の場合、軸RA7は、レール14Aの上面14tに対して平行である。
【0147】
図12に示す例では、上面ローラ70は、レール14Aの上面14tに接触する円環上の部材である。軸RA7に沿って配置された軸部材72と上面ローラ70との間には、複数のボールベアリング73が配置されている。本実施の形態の場合、複数のボールベアリング73が回転することにより、上面ローラ70が円滑に回転するように構成されている。
【0148】
ローラホルダ80は、レールホルダ25のローラ収容部71に固定されている。
図11および
図12に示す例では、ローラホルダ80は、軸部材72(および
図13に示すボルト83)を介してローラ収容部71に固定されている。また、ローラホルダ80は、上面ローラ70を回転自在な状態で保持している。
【0149】
ローラホルダ80は、軸RA7に平行なX方向に延びる貫通孔を有している。
図12に示す例では、部分81は、貫通孔に沿って部分81の側面から突出する筒状の部分を有している。部分81の筒状の部分には、軸部材72の一部分が挿入されている。
【0150】
図11に示す例の場合、上面ローラ70は、ローラホルダ80の部分81の一方の隣に配置されている上面ローラ70aと、他方の隣に配置されている上面ローラ70bと、を有している。平面視において、上面ローラ70a,70bのそれぞれは、部分82の側面80s1と側面80s2との間に配置されている。言い換えれば、平面視において、上面ローラ70は、部分81の両隣に配置され、かつ、側面80s1と側面80s2との間に配置されている。
【0151】
なお、図示は省略するが、変形例として、上面ローラ70が1個である場合がある。
【0152】
図11から
図13に示すように、ローラホルダ80は、ローラ収容部71(
図12、
図13参照)に収容されている部分81を備えている。また、ローラホルダ80は、ローラ収容部71の外部に露出する下面80b(
図12、
図13参照)と、を含み、かつ、レール14Aの上面14t(
図12、
図13参照)と対向するように配置するための部分82と、を備えている。
【0153】
部分82は、レール14Aの上面14t(
図12、
図13参照)と対向するように配置可能な下面80b(
図12、
図13参照)と、下面80bに連なる側面80s1(
図11、
図13参照)と、下面80bに連なり、かつ側面80s1の反対側に位置する側面80s2(
図11、
図13参照)と、を備えている。
【0154】
図11に示すように、平面視において、ローラホルダ80の部分82のうち、側面80s1を含む突出部82P1と、側面80s2を含む突出部82P2のそれぞれは、レールホルダ25の外側に突出している。側面80s1および側面80s2のそれぞれの硬さは、ローラホルダ80の部分81の硬さよりも硬い。
【0155】
図11に示すように、ローラホルダ80は、突出部82P1および突出部82P2を有している。このため、仮に、
図3に示すリンク機構20のピッチPを最小化した場合に、隣り合うリンク機構20のローラホルダ80が接触する場合、
図8に示す突出部82P1と突出部82P2とが優先的に接触する。
【0156】
なお、ローラホルダ80の耐久性を向上させる観点からは、少なくとも側面80s1および側面80s2のそれぞれが硬くなっていればよいが、側面80s1および側面80s2の周辺が硬くなることを排除するものではない。例えば
図11に示す突出部82P1,82P2、あるいは、部分82の表面全体が部分81よりも硬くなっている場合でも、ローラホルダ80の耐久性を向上させることができる。
【0157】
ただし、例えば、側面80s1および側面80s2のそれぞれの硬さは、下面80b(
図13参照)のうち、側面80s1と側面80s2の中間の場所(言い換えれば、側面80s1からの最短距離と側面80s2の最短距離とが等しい場所)の硬さよりも硬いことが好ましい。
【0158】
また、
図11に示すように、部分82は、Y方向に延びる板状部材である。レールホルダ25は、レール14Aの延在方向と、Y方向とが一致するようにレール14A上に配置することが可能である。部分82は、レール14Aの延在方向と、Y方向とが一致するようにレール14A上に配置することが可能である。側面80s1は、Y方向において、部分82の一方の端部にある。側面80s2は、Y方向において、部分82の他方の端部にある。平面視において、部分81は、Y方向における部分82の中心C82を含む位置に配置されている。
【0159】
図12および
図13に示すように、部分81は全体がローラ収容部71内に収容されている。
図13に示す例では、部分81は、貫通孔を有し、貫通孔に挿入されたボルトにより、ローラ収容部71内に固定されている。
【0160】
側面80s1または側面80s2に印加された外力に起因する応力が、部分81を介してレールホルダ25に伝搬することを回避する観点からは、側面80s1および側面80s2から部分81までの距離を遠くすることが好ましい。このため、平面視において、部分81は、Y方向における部分82の中心C82を含む位置に配置されていることが好ましい。
【0161】
上記した態様の他、種々の変形例が適用可能である。例えば、
図3から
図7を用いて説明したリンク機構20の場合、レールホルダ24に3個の側面ローラ30が支持され、レールホルダ25に2個の側面ローラが支持されている。
【0162】
ただし、側面ローラ30の数は、上記には限定されず、種々の変形例がある。例えばレールホルダ24に
図6に示すレールホルダ25と同様に2個の側面ローラ30が支持されている場合がある。あるいは、レールホルダ25に、
図6に示すレールホルダ24と同様に3個の側面ローラが支持されている場合がある。
【0163】
また、
図8や
図10では、部分62のうち、平面視においてレールホルダ24の外部に突出する部分を突出部62P1および突出部62P1として定義した。変形例として、部分62のうち、平面視において部分61に覆われていない部分を突出部62P1および突出部62P2として定義することもできる。同様に、
図11において、部分82のうち、平面視において部分81に覆われていない部分を突出部82P1および突出部82P2として定義することもできる。
【0164】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態および実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態または実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0165】
1 薄膜製造システム
2 押し出し装置(二軸混練押し出し装置)
2A 原料供給部(原料投入口,ホッパ)
3 Tダイ
4 原反冷却装置
5 延伸装置(同時二軸延伸装置)
6 引き取り装置
7 巻き取り装置
8 膜
10,10L,10R リンク装置
11 入口部
12 熱処理部
12A,12B,12C 領域
13 出口部
14,14A,14B,14LA,14LB,14RA,14RB レール
14s1,14s2 側面
14t 上面
15,15L,15R,16,16L,16R,17,17L,17R スプロケット
20 リンク機構
21 クリップ
22 上段リンクプレート
23 下段リンクプレート
24,25 レールホルダ
26 ベース部材
30,31a,31b,32,33,34 側面ローラ
40,41 リンクシャフト
42,43,44,45,46 ローラシャフト
50,50a,50b,70,70a,70b, 上面ローラ
51,71 ローラ収容部
52,72 軸部材
53,73 ボールベアリング
60,80 ローラホルダ
60b,80b 下面
60s1,60s2,80s1,80s2 側面
61,62,81,82 部分
62P1,62P2,82P1,82P2 突出部
63,83 ボルト
C62,C82 中心
L1 離間距離
L2 間隔(離間距離)
P ピッチ
RA1,RA2,RA3,RA4,RA5,RA6,RA7 軸
W24,W25 幅