(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156519
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】電気機器の提案方法及び提案システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20241029BHJP
F24F 11/46 20180101ALI20241029BHJP
【FI】
G06Q10/20
F24F11/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071052
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004673
【氏名又は名称】パナソニックホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】梅本 大輔
【テーマコード(参考)】
3L260
5L049
【Fターム(参考)】
3L260AB02
3L260BA71
3L260CA32
3L260CB43
3L260DA15
3L260EA06
3L260FA20
5L049CC12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】建物のユーザーの生活パターン等を踏まえて、適切な容量の電気機器を提案することが可能な方法及び提案システムを提供する。
【解決手段】建物に設置されているヒートポンプ式の空調機器又は給湯器を含む電気機器の入れ替えを、建物のユーザーに提案するための方法であって、建物がある地域の予め定められた期間の外気の温度を含む外気条件と、期間内の予め定められた単位時間ごとの電気機器の消費電力量とを取得する工程と、取得した外気条件と消費電力量とに基づいて、単位時間毎の電気機器が処理した熱量である第1熱量を計算する計算工程と、第1熱量に基づいて、新たな電気機器を決定する決定工程と、新たな電気機器をユーザーに提案する提案工程と、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に設置されているヒートポンプ式の空調機器又は給湯器を含む電気機器の入れ替えを、前記建物のユーザーに提案するための方法であって、
前記建物がある地域の予め定められた期間の外気の温度を含む外気条件と、前記期間内の予め定められた単位時間ごとの前記電気機器の消費電力量とを取得する工程と、
取得された前記外気条件と前記消費電力量とに基づいて、前記単位時間ごとの前記電気機器が処理した熱量である第1熱量を計算する計算工程と、
前記第1熱量に基づいて、新たな電気機器を決定する決定工程と、
前記新たな電気機器を前記ユーザーに提案する提案工程とを含む、
電気機器の提案方法。
【請求項2】
前記決定工程は、前記新たな電気機器を、予め設定されている複数の候補電気機器の中から1又は2以上選定するものである、請求項1に記載の電気機器の提案方法。
【請求項3】
前記決定工程は、前記新たな電気機器として、前記第1熱量の最大値よりも処理能力が大きく、かつ、設置されている前記電気機器の処理能力よりも小さい処理能力を有する候補電気機器を選定する、請求項2に記載の電気機器の提案方法。
【請求項4】
前記決定工程は、前記新たな電気機器として、前記最大値との差が最も小さい処理能力を有する候補電気機器を選定する、請求項3に記載の電気機器の提案方法。
【請求項5】
前記計算工程は、設置されている前記電気機器の成績係数を取得する工程と、
前記外気条件に基づいて、前記成績係数を補正した補正成績係数を計算する工程と、
前記消費電力量に前記補正成績係数を乗じて、前記第1熱量を計算する工程とを含む、請求項1に記載の電気機器の提案方法。
【請求項6】
前記決定工程は、前記第1熱量と、前記新たな電気機器の成績係数とに基づいて、前記新たな電気機器の消費電力量を計算する工程を含む、請求項1に記載の電気機器の提案方法。
【請求項7】
設置されている前記電気機器の消費電力量、及び、前記新たな電気機器の消費電力量の少なくとも1つを、表示装置に出力する出力工程をさらに含む、請求項6に記載の電気機器の提案方法。
【請求項8】
前記期間は、前記地域の最寒日又は最暑日を含む、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の電気機器の提案方法。
【請求項9】
建物に設置されているヒートポンプ式の空調機器又は給湯器を含む電気機器の入れ替えを、前記建物のユーザーに提案するためのシステムであって、
前記建物がある地域の予め定められた期間の外気の温度を含む外気条件と、前記期間内の予め定められた単位時間ごとの前記電気機器の消費電力量とを取得する取得部と、
取得された前記外気条件と前記消費電力量とに基づいて、前記単位時間ごとの前記電気機器が処理した熱量である第1熱量を計算する計算部と、
前記第1熱量に基づいて、新たな電気機器を決定する決定部と、
前記新たな電気機器を前記ユーザーに提案する提案部とを含む、
電気機器の提案システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器の提案方法及び提案システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅やビル等の建物には、屋内の空調を行うためのヒートポンプ式の空気調和機が設置されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、空気調和機の容量については、対象となる室の畳数に応じて選定される。しかしながら、建物のユーザーの生活パターンや建物の断熱仕様等は様々であり、単に畳数のみを基準として空気調和機を選定することは適切でない。例えば、建物の外構計画等によって室に日射が入りづらい場合や、暑がり又は寒がり等によってユーザーの好みの設定温度が異なる場合には、空気調和機に求められる容量がそれぞれ異なる傾向がある。また、空調負荷が大きくなる時刻に帰宅することが多く、立ち上がり時の処理熱量が大きい場合や、連続的に空調することが多く、最大処理熱量が小さい場合にも、空気調和機に求められる容量がそれぞれ異なる傾向がある。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、建物のユーザーの生活パターン等を踏まえて、適切な容量の電気機器を提案することが可能な方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、建物に設置されているヒートポンプ式の空調機器又は給湯器を含む電気機器の入れ替えを、前記建物のユーザーに提案するための方法であって、前記建物がある地域の予め定められた期間の外気の温度を含む外気条件と、前記期間内の予め定められた単位時間ごとの前記電気機器の消費電力量とを取得する工程と、取得された前記外気条件と前記消費電力量とに基づいて、前記単位時間ごとの前記電気機器が処理した熱量である第1熱量を計算する計算工程と、前記第1熱量に基づいて、新たな電気機器を決定する決定工程と、前記新たな電気機器を前記ユーザーに提案する提案工程とを含む、電気機器の提案方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電気機器の提案方法は、上記の工程を採用することで、建物のユーザーの生活パターン等を踏まえて、適切な容量の電気機器を提案することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】電気機器が設置された建物の一例を概念的に示す断面図である。
【
図2】電気機器の提案システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態の電気機器の仕様を示す図である。
【
図5】本実施形態の電気機器の提案方法の処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】建物のある地域の外気条件、及び、既設の電気機器の消費電力量の一部を示す図である。
【
図7】本実施形態の計算工程の処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】暖房時のエネルギー消費効率と負荷率との関係を示すグラフである。
【
図9】冷房時のエネルギー消費効率と負荷率との関係を示すグラフである。
【
図10】
図6に示した外気条件及び消費電力量と、暖房時の補正成績係数とを示す図である。
【
図11】
図10に示した外気条件、消費電力量、及び、暖房時の補正成績係数と、第1熱量とを示す図である。
【
図12】
図11に示した外気条件、消費電力量、暖房時の補正成績係数及び第1熱量と、新たな電気機器の消費電力量とを示す図である。
【
図13】表示装置に出力された新たな電気機器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態が図面に基づき説明される。図面は、発明の内容の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれることが理解されなければならない。また、各実施形態を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0010】
本実施形態の電気機器の提案方法(以下、「提案方法」ということがある。)では、建物に設置されている電気機器(以下、「既設の電気機器」ということがある。)の入れ替えが、建物のユーザーに提案される。電気機器には、ヒートポンプ式の空調機器又は給湯器が含まれる。本実施形態では、空調機器の入れ替えが提案される場合が例示される。また、ユーザーには、例えば、建物Hの所有者、大家、及び、管理会社等が含まれる。
【0011】
[建物]
図1は、電気機器1が設置された建物Hの一例を概念的に示す断面図である。建物Hは、例えば、住宅やビル等である場合が例示される。建物Hの内部には、複数の室2が設けられている。これらの室2には、例えば、居室(リビングルーム)2Aと寝室2Bとが含まれる。
【0012】
居室2A及び寝室2Bには、電気機器1として空調機器3が設置されている。また、居室2A及び寝室2Bは、例えば、建物Hの外構計画(エクステリア)や方角等によって、日射量に差が生じると、空調機器3が処理する熱量にも差が生じる場合がある。
【0013】
[空調機器(電気機器)]
空調機器3は、ヒートポンプ式のものであれば、特に限定されない。空調機器3の一例としては、空気調和機4や、床暖房装置(図示省略)が挙げられる。本実施形態では、これらの空調機器3のうち、空気調和機4の入れ替えが提案される。
【0014】
空気調和機4は、例えば、一般的な家庭用のセパレート型エアコンで構成されている。空気調和機4は、室内機4Aと、建物Hの外部に設置された室外機(図示省略)とをセットとして含んでいる。
【0015】
一般に、空気調和機4の容量(処理能力)は、空気調和機4が設置される室2の畳数に応じて選定されている。しかしながら、単に畳数のみを基準として、空気調和機4の容量を選定することは適切でない場合がある。すなわち、畳数を基準として選定された容量に比べて、大きな容量の空気調和機4が選定されるのが好ましい場合や、小さな容量の空気調和機4が選定されるのが好ましい場合もある。
【0016】
例えば、日射が入りづらい室2は、日射熱の影響が小さく、空気調和機4の暖房時に暖まり難いため、空気調和機4が処理する熱量が大きくなる傾向がある。このような室2に設置される空気調和機4は、畳数から選定される容量よりも大きい容量の空気調和機4が選定されるのが好ましい。
【0017】
暑がりのユーザーが主として使用する室2では、冷房時の設定温度が通常よりも低く設定される傾向ある。一方、寒がりのユーザーが主として使用する室2では、暖房時の設定温度が通常よりも高く設定される傾向ある。これらの室2に設置される空気調和機4は、処理する熱量が大きくなる傾向があるため、畳数から選定される容量よりも大きい容量の空気調和機4が選定されるのが好ましい。
【0018】
空調負荷が大きくなる時刻に帰宅して空調を開始することが多い室2は、空気調和機4の立ち上がり時に処理する熱量が大きくなる傾向がある。このような室2には、畳数から選定される容量よりも大きな容量の空気調和機4が選定されるのが好ましい。
【0019】
ユーザーの滞在時間が長く、連続的に空調することが多い室2は、空気調和機4が処理する熱量が小さくなる傾向がある。このような室2には、畳数から選定される容量よりも小さい容量の空気調和機4が選定されるのが好ましい。
【0020】
断熱性能が高い室2は、空気調和機4が処理する熱量が小さくなる傾向がある。このような室2には、畳数から選定される容量よりも小さい容量の空気調和機4が選定されるのが好ましい。
【0021】
このように、建物H(室2)のユーザーの生活パターンや、建物Hの日射条件及び断熱仕様等は様々であり、単に畳数のみを基準として、空気調和機4の容量を選定することは適切でない場合がある。
【0022】
[電気機器の提案方法]
本実施形態の提案方法では、既設の電気機器1(空気調和機4)が実際に処理した熱量(第1熱量)に基づいて、建物H(室2)のユーザーの生活パターン等を踏まえた適切な容量(処理能力)の電気機器1が提案される。
【0023】
本実施形態のように、複数の室2に空気調和機4がそれぞれ設置される場合には、これらの少なくとも1つの室2(例えば、居室2A)に設置された空気調和機4の入れ替えが提案されうる。また、1台の空気調和機(図示省略)で複数の室2を空調する全館空調システムが設けられた建物Hでは、その空気調和機の入れ替えが提案されうる。
【0024】
[電気機器の提案システム]
本実施形態の提案方法では、電気機器の提案システム(以下、「提案システム」ということがある。)11が用いられる。
図2は、電気機器の提案システム11の構成の一例を示すブロック図である。
【0025】
本実施形態の提案システム11は、入力装置12と、表示装置13と、演算処理装置14(コンピュータ15)とを有している。さらに、本実施形態の提案システム11には、電力取得装置16が接続されている。これらの装置の集合体により、
図1に示した既設の電気機器1の入れ替えを提案する機能を発揮可能な提案システム11が構成されうる。本実施形態の演算処理装置14(コンピュータ15)は、サーバ(クラウドサーバ)として構成されているが、特に限定されるわけではなく、例えば、パーソナルコンピュータや、携帯情報端末(タブレット型等)で構成されてもよい。
【0026】
[電力取得装置]
電力取得装置16は、
図1に示した既設の電気機器1(空気調和機4)の消費電力量を取得するためのものである。この消費電力量は、既設の電気機器1が処理した熱量の計算に用いられる。
【0027】
電力取得装置16は、消費電力量を取得できれば、特に限定されるわけでない。電力取得装置16には、例えば、HEMS(Home Energy Management Service)コントローラや、電力計などが採用される。HEMSでは、既設の電気機器1との通信によって、消費電力量が取得されうる。一方、電力計では、既設の電気機器1の電源プラグと、コンセントとの間に接続されることで、既設の電気機器1の消費電力量が測定されうる。これらのHEMSや電力計等に、演算処理装置14が接続されることで、既設の電気機器1の消費電力量が容易に取得されうる。本実施形態のように、演算処理装置14がクラウドサーバとして構成される場合には、WANなどの通信ネットワーク7を介して、電力取得装置16と演算処理装置14とが接続されうる。
【0028】
本実施形態の電力取得装置16では、予め定められた単位時間ごとに、既設の電気機器1の消費電力量が取得されうる。単位時間は、既設の電気機器1が処理した熱量の計算頻度に応じて設定され、例えば、10~60分(本例では、60分)に設定される。
【0029】
[入力装置・表示装置]
図2に示されるように、入力装置12は、例えば、キーボード、マウス、又は、タッチパネル等が用いられる。表示装置13は、例えば、ディスプレイ装置又はプリンタ等が用いられる。
【0030】
[演算処理装置]
演算処理装置14は、各種の演算を行う演算部(CPU)17、データやプログラム等が記憶される記憶部18、及び、作業用メモリ19が含まれている。
【0031】
[記憶部]
記憶部18は、例えば、磁気ディスク、光ディスク又はSSD等からなる不揮発性の情報記憶装置である。記憶部18は、データ部21及びプログラム部22を含んで構成されている。
【0032】
データ部21は、既設の電気機器1(空気調和機4)の入れ替えの提案に必要な情報を記憶するためのものである。本実施形態のデータ部21は、外気条件入力部21A、消費電力量入力部21B、既設電気機器入力部21C、補正成績係数入力部21D、第1熱量入力部21E、候補電気機器入力部21F及び選定電気機器入力部21Gが含まれる。なお、データ部21は、このような態様に限定されるわけではなく、例えば、これらの一部が省略されてもよいし、その他のデータを記憶するための入力部(図示省略)がさらに含まれてもよい。
【0033】
既設電気機器入力部21Cは、
図1に示した既設の電気機器1の仕様が、データベース(テーブル)として予め記憶されている。
図3は、本実施形態の電気機器1の仕様を示す図である。
【0034】
電気機器1の仕様には、定格暖房能力31、定格冷房能力32、最大暖房能力33、最大冷房能力34、暖房時の成績係数35、及び、冷房時の成績係数36が含まれる。
【0035】
成績係数(COP:Coefficient Of Performance)は、JIS C9612で定められた外気の温度条件(以下、「JIS測定条件」ということがある。)において、既設の電気機器1が定格能力で運転したときのエネルギー消費効率を示したものである。JIS測定条件は、暖房時が7℃であり、冷房時が35℃である。このような成績係数を含む仕様は、例えば、既設の電気機器1のメーカーによって予め定められている。
【0036】
図2に示した候補電気機器入力部21Fには、複数の候補電気機器の仕様が、データベース(テーブル)として予め記憶されている。
図4は、複数の候補電気機器5の仕様を示す図である。
図4では、複数の候補電気機器5のうち、第1候補電気機器5A~第3候補電気機器5Cが代表して示されている。
【0037】
複数の候補電気機器5は、
図1に示した既設の電気機器1から入れ替え可能な(入れ替え候補となる)新たな電気機器である。複数の候補電気機器5の合計数は、適宜設定されうる。適切な容量の電気機器1を提案する観点より、例えば、3~30台の候補電気機器5が含まれるのが好ましい。
【0038】
候補電気機器5の仕様には、候補電気機器5が空気調和機4である場合、定格暖房能力31、定格冷房能力32、最大暖房能力33、最大冷房能力34、暖房時の成績係数35、及び、冷房時の成績係数36が含まれる。これらの仕様は、例えば、複数の候補電気機器5の各メーカーによって予め定められている。また、複数の候補電気機器5は、これらの仕様のうち、少なくとも1つの仕様(本例では、全ての仕様)が互いに異なっている。
【0039】
図2に示した外気条件入力部21A、消費電力量入力部21B、補正成績係数入力部21D、第1熱量入力部21E及び選定電気機器入力部21Gは、本実施形態の提案方法の実行によって取得されたデータ(計算結果)等が記憶される。これらのデータの詳細は、後述される。
【0040】
[プログラム部]
プログラム部22は、提案方法の実行に必要なプログラム(コンピュータプログラム)である。このプログラム部(プログラム)22が、演算部17によって実行されることにより、コンピュータ15を、
図1に示した既設の電気機器1の入れ替えを提案するための特定の手段として機能させることができる。
【0041】
本実施形態のプログラム部22には、取得部22A、計算部22B、決定部22C及び提案部22Dが含まれる。なお、プログラム部22は、このような態様に限定されるわけではなく、例えば、これらの一部が省略されてもよいし、その他の機能を有するプログラム部(図示省略)がさらに含まれてもよい。これらのプログラム部22の機能の詳細は、後述される。
【0042】
[外気条件及び消費電力量を取得]
図5は、本実施形態の電気機器の提案方法の処理手順を示すフローチャートである。本実施形態の提案方法では、先ず、外気条件と、
図1に示した既設の電気機器1の消費電力量とが取得される(工程S1)。
【0043】
本実施形態の工程S1では、先ず、
図2に示したプログラム部22に含まれる取得部22Aが、作業用メモリ19に読み込まれる。取得部22Aは、外気条件と、既設の電気機器1の消費電力量とを取得するためのプログラムである。この取得部22Aが、演算部17によって実行されることにより、コンピュータ15を、外部条件及び消費電力量を取得するための手段として機能させることができる。
【0044】
外気条件には、
図1に示した建物Hがある地域(例えば、大阪府)の外気の温度が含まれる。この外気の温度は、予め定められた期間に取得されたものである。外気条件には、外気の温度に加えて、外気の湿度(相対湿度)がさらに含まれてもよい。
【0045】
気象条件は、建物Hがある地域の外気の温度や湿度が特定されれば、適宜取得されうる。本実施形態では、例えば、気象庁などで提供されている気象データから取得されてもよいし、建物Hがある地域において実測して取得されてもよい。本実施形態の気象条件は、気象データから取得される。
【0046】
外気条件が取得される期間は、例えば、既設の電気機器1の入れ替えが依頼された日から、新たな電気機器23の提案予定日までの期間に応じて適宜設定され、例えば、1~60日(本例では、30日)に設定される。また、期間は、既設の電気機器1(空気調和機4)の消費電力量を取得する観点より、既設の電気機器1が実際に運転(暖房運転及び冷房運転)している日が含まれるのが好ましい。
【0047】
本実施形態の外気条件は、既設の電気機器1の消費電力量と同様に、単位時間(例えば、60分)ごとに取得される。これにより、工程S1では、上記の期間内において、外気条件が単位時間ごとに取得されうる。
【0048】
図6は、建物Hのある地域の外気条件41、及び、既設の電気機器1の消費電力量42の一部を示す図である。
図6には、上記の期間(本例では、30日)のうち、1日分の外気条件41及び消費電力量42が代表して示されている。外気条件41には、温度41A及び相対湿度41Bが含まれている。外気条件41は、単位時間ごとに取得され、
図2に示した外気条件入力部21Aに記憶される。
【0049】
既設の電気機器1の消費電力量42は、外気条件41が取得される期間(本例では、30日)内に取得されたものである。上述したように、消費電力量42は、
図1及び
図2に示した電力取得装置16によって、単位時間(本例では、60分)ごとに予め取得されている。このため、本実施形態の工程S1では、これらの消費電力量42のうち、上記の期間内に取得された消費電力量42が、演算処理装置14に送信される。これにより、上記の期間内において単位時間ごとに、既設の電気機器1の消費電力量42が取得される。消費電力量は、
図2に示した消費電力量入力部21Bに記憶される。
【0050】
[第1熱量を計算(計算工程)]
次に、本実施形態の提案方法では、単位時間ごとに、既設の電気機器1が処理した熱量である第1熱量が計算される(計算工程S2)。本実施形態の計算工程S2では、
図6に示した外気条件41と、既設の電気機器1の消費電力量42とに基づいて、上記期間の単位時間ごとに、第1熱量が計算される。
【0051】
本実施形態の計算工程S2では、先ず、
図2に示した外気条件入力部21Aに記憶されている外気条件41(
図6に示す)、及び、消費電力量入力部21Bに記憶されている消費電力量42(
図6に示す)が、作業用メモリ19に読み込まれる。次に、プログラム部22に含まれる計算部22Bが、作業用メモリ19に読み込まれる。この計算部22Bは、外気条件41と消費電力量42とに基づいて、単位時間ごとに、既設の電気機器1が処理した第1熱量を計算するためのプログラムである。この計算部22Bが演算部17によって実行されることで、コンピュータ15を、第1熱量を計算するための手段として機能させることができる。
【0052】
図6に示されるように、外気条件41及び既設の電気機器1の消費電力量42は、上記の期間(本例では、30日)内において、単位時間(本例では、60分)ごとに取得されている。これらの外気条件41及び消費電力量42に基づいて計算される第1熱量も、上記の期間内において、単位時間ごとに計算されうる。
【0053】
第1熱量は、
図1に示した既設の電気機器1が実際に処理した熱量(以下、「処理熱量」ということがある。)であれば適宜計算されうる。一般に、処理熱量(処理能力)は、既設の電気機器1の消費電力量42(
図6に示す)と、既設の電気機器1の成績係数(
図3に示した暖房時の成績係数35又は冷房時の成績係数36)とを乗じることで計算されうる。
【0054】
上述したように、
図3に示した暖房時の成績係数35及び冷房時の成績係数36は、予め定められた外気条件(JIS測定条件)において、既設の電気機器1が定格能力で運転したときのエネルギー消費効率を示したものである。暖房時の成績係数35は、定格暖房能力31を、暖房時の定格消費電力(図示省略)で除することで求められる。一方、冷房時の成績係数36は、定格冷房能力32を、冷房時の定格消費電力(図示省略)で除することで求められる。
【0055】
既設の電気機器1の実際の暖房能力、冷房能力及び消費電力量は、時々刻々と変化する外気条件41(
図6に示す)に左右される傾向がある。このため、実際の成績係数(図示省略)は、JIS測定条件での成績係数(
図3に示した暖房時の成績係数35及び冷房時の成績係数36)と乖離する場合がある。
【0056】
また、
図6に示した外気条件41(外気の温度41Aが低く、かつ、外気の相対湿度41Bが高い条件)によっては、既設の電気機器1の室外機(図示省略)に霜が付く場合がある。このような霜を取り除くための除霜運転(デフロスト運転)が実施されると、暖房運転が一時的に停止され、実際の成績係数(図示省略)が低下し、JIS測定条件での暖房時の成績係数35(
図3に示す)と乖離する。
【0057】
このように、実際の成績係数(図示省略)は、JIS測定条件での成績係数(
図3に示した暖房時の成績係数35及び冷房時の成績係数36)と乖離する場合がある。したがって、これらの成績係数35、36に基づいて、既設の電気機器1が処理した熱量を計算するのは適切ではない場合がある。
【0058】
本実施形態の計算工程S2では、時々刻々と変化する外気条件41(
図6に示す)に基づいて、既設の電気機器1の成績係数(
図3に示した暖房時の成績係数35又は冷房時の成績係数36)を補正した補正成績係数(図示省略)が計算される。そして、補正成績係数と、既設の電気機器1の消費電力量42(
図6に示す)とに基づいて、第1熱量が計算される。
図7は、本実施形態の計算工程S2の処理手順を示すフローチャートである。
【0059】
[成績係数を取得]
本実施形態の計算工程S2では、先ず、既設の電気機器1の成績係数(
図3に示した暖房時の成績係数35及び冷房時の成績係数36)が取得される(工程S21)。本実施形態の工程S21では、
図2に示した既設電気機器入力部21Cに記憶されている既設の電気機器1の成績係数35、36が、作業用メモリ19に読み込まれることで、既設の電気機器1の成績係数35、36が取得される。なお、既設電気機器入力部21Cに、既設の電気機器1の成績係数35、36が予め記憶されていない場合には、例えば、成績係数35、36を入力させるための画面を表示装置13に表示させて、オペレーター等が成績係数35、36を直接入力してもよい。
【0060】
[補正成績係数を計算]
次に、本実施形態の計算工程S2では、外気条件41(
図6に示す)に基づいて、既設の電気機器1の成績係数(
図3に示した暖房時の成績係数35又は冷房時の成績係数36)を補正した補正成績係数が計算される(工程S22)。本実施形態の工程S22では、暖房時及び冷房時ごとに、補正成績係数が計算される。
【0061】
図8は、暖房時のエネルギー消費効率と負荷率との関係を示すグラフである。実線の曲線51では、JIS測定条件(7℃)でのエネルギー消費効率と負荷率との関係が示されている。このような実線の曲線51は、例えば、
図3に示した既設の電気機器1の仕様(定格暖房能力31、最大暖房能力33、暖房時の成績係数35及び定格暖房消費電力(図示省略)等)に基づいて適宜特定されうる。本実施形態では、例えば、文献(「第四章 暖冷房設備 第三節 ルームエアコンディショナ」、「平成28年省エネルギー基準に準拠したエネルギー消費性能の評価に関する技術情報(住宅)」、[online]、令和3年4月1日、国立研究開発法人建築研究所、[令和5年4月18日検索]、インターネット<URL:https://www.kenken.go.jp/becc/documents/house/4-3_210401_v07.pdf>)に記載の式(5)に、既設の電気機器1の仕様と、JIS測定温度(7℃)と、変化させた補正処理暖房負荷Q’
T,H,d,tとが代入されることで、補正処理暖房負荷Q’
T,H,d,t及び消費電力量E
E,H,d,tから実線の曲線51が求められる。なお、JIS測定温度(7℃)は、式(5)の基準入出力関数f
H,θを特定する式(6)及び(7)において、外気温度θ
exに代入される。そして、実線の曲線51で定格能力となるときのエネルギー消費効率C1が、JIS測定条件での暖房時の成績係数(すなわち、
図3に示した既設の電気機器1の暖房時の成績係数)35として特定される。
【0062】
図8において、一点鎖線の曲線52では、JIS測定条件(7℃)よりも低い外気の温度41A(例えば、2℃)において、エネルギー消費効率と負荷率との関係が示されている。この一点鎖線の曲線52は、適宜特定されうる。本実施形態では、例えば、実線の曲線51を求めるのに用いられた上記文献の式(5)のうち、基準入出力関数f
H,θを特定する式(6)及び(7)において、外気温度θ
exに外気の温度(本例では「2℃」)が代入されることで、一点鎖線の曲線52が取得されうる。
【0063】
そして、一点鎖線の曲線52において、定格能力となるときのエネルギー消費効率C2が、JIS測定条件での暖房時の成績係数35(C1)を、外気条件41(外気の温度41A:2℃)で補正した暖房時の補正成績係数37として特定される。このように、JIS測定条件(7℃)よりも外気の温度41Aが低くなる条件下では、JIS測定条件での暖房時の成績係数35(C1)よりも、暖房時の補正成績係数37(C2)が小さくなり、エネルギー消費効率が悪化する。
【0064】
図8において、破線の曲線53では、JIS測定条件(7℃)よりも高い外気の温度41A(例えば、12℃)において、エネルギー消費効率と負荷率との関係が示されている。この破線の曲線53は、適宜特定されうる。本実施形態では、例えば、実線の曲線51を求めるのに用いられた上記文献の式(5)のうち、基準入出力関数f
H,θを特定する式(6)及び(7)において、外気温度θ
exに外気の温度41A(本例では「12℃」)が代入されることで、破線の曲線53が取得されうる。
【0065】
そして、破線の曲線53において、定格能力となるときのエネルギー消費効率C3が、JIS測定条件での暖房時の成績係数35(C1)を、外気条件41(外気の温度41A:12℃)で補正した暖房時の補正成績係数37として特定される。このように、JIS測定条件(7℃)よりも外気の温度41Aが高くなる条件下では、JIS測定条件での暖房時の成績係数35(C1)よりも暖房時の補正成績係数37(C3)が大きくなり、エネルギー消費効率が良好となる。
【0066】
図9は、冷房時のエネルギー消費効率と負荷率との関係を示すグラフである。実線の曲線54では、JIS測定条件(35℃)でのエネルギー消費効率と負荷率との関係が示されている。このような実線の曲線54は、例えば、
図3に示した既設の電気機器1の仕様(定格冷房能力32、最大冷房能力34、冷房時の成績係数36及び定格冷房消費電力(図示省略)等)に基づいて特定されうる。本実施形態では、例えば、上記文献の式(20)に、既設の電気機器1の仕様と、JIS測定温度(35℃)と、変化させた補正処理暖房負荷Q’
T,C,d,tとが代入されることで、補正処理暖房負荷Q’
T,C,d,t及び消費電力量E
E,C,d,tから実線の曲線54が求められる。なお、JIS測定温度(35℃)は、式(20)の基準入出力関数f
C,θを特定する式(21)及び(22)において、外気温度θ
exに代入される。そして、実線の曲線54で定格能力となるときのエネルギー消費効率C4が、JIS測定条件での冷房時の成績係数(すなわち、
図3に示した既設の電気機器1の冷房時の成績係数)36として特定される。
【0067】
図9に示した冷房時の一点鎖線の曲線55及び破線の曲線56は、
図8に示した暖房時の一点鎖線の曲線52及び破線の曲線53に対して、外気条件41とエネルギー消費効率との関係が逆転する。
【0068】
図8に示した暖房時の一点鎖線の曲線52では、JIS測定条件(7℃)よりも低い外気の温度41A(2℃)において、エネルギー消費効率と負荷率との関係が示される。一方、
図9に示した冷房時の一点鎖線の曲線55では、JIS測定条件(35℃)よりも高い外気の温度41A(例えば、40℃)において、エネルギー消費効率と負荷率との関係が示される。これらの一点鎖線の曲線52、55は、JIS測定条件に対する外気条件41の高低の関係が互いに異なるものの、暖房時及び冷房時の双方において、エネルギー消費効率が悪化していることを示している。
【0069】
冷房時の一点鎖線の曲線55は、適宜取得されうる。本実施形態では、例えば、冷房時の実線の曲線54を求めるのに用いられた上記文献の式(20)のうち、基準入出力関数fC,θを特定する式(21)及び(22)において、外気温度θexに外気の温度(本例では「40℃」)が代入されることで、冷房時の一点鎖線の曲線55が取得されうる。このような一点鎖線の曲線55において、定格能力となるときのエネルギー消費効率C5が、JIS測定条件での冷房時の成績係数36(C4)を、外気条件41(外気の温度41A:40℃)で補正した冷房時の補正成績係数38として特定される。
【0070】
また、
図8に示した暖房時の破線の曲線53では、JIS測定条件(7℃)よりも高い外気の温度(12℃)において、エネルギー消費効率と負荷率との関係が示される。一方、
図9に示した冷房時の破線の曲線56では、JIS測定条件(35℃)よりも低い外気の温度(例えば、30℃)において、エネルギー消費効率と負荷率との関係が示される。これらの破線の曲線53、56は、JIS測定条件に対する外気条件41の高低の関係が互いに異なるものの、暖房時及び冷房時の双方において、エネルギー消費効率が良好であることを示している。
【0071】
冷房時の破線の曲線56は、適宜取得されうる。本実施形態では、例えば、冷房時の実線の曲線54を求めるのに用いられた上記文献の式(20)のうち、基準入出力関数fC,θを特定する式(21)及び(22)において、外気温度θexに外気の温度(本例では「30℃」)が代入されることで、冷房時の破線の曲線56が取得されうる。このような破線の曲線56において、定格能力となるときのエネルギー消費効率C6が、JIS測定条件での冷房時の成績係数36(C4)を、外気条件41(外気の温度41A:30℃)で補正した冷房時の補正成績係数38として特定される。
【0072】
このように、本実施形態の工程S22では、JIS測定条件(暖房時:7℃、冷房時35℃)とは異なる外気の温度41A(
図6に示す)に基づいて、
図3に示した成績係数(暖房時の成績係数35又は冷房時の成績係数36)を補正した補正成績係数(
図8に示した暖房時の補正成績係数37又は
図9に示した冷房時の補正成績係数38)が容易に取得されうる。これにより、実際の外気条件下における既設の電気機器1の成績係数(すなわち、補正成績係数37、38)が取得されうる。
【0073】
本実施形態の工程S22では、上述の手順に従い、
図6に示した単位時間(時刻)ごとに、外気条件41(外気の温度41A)に基づいて、暖房時の成績係数35(
図3に示す)を補正した暖房時の補正成績係数37がそれぞれ取得される。
図10は、
図6に示した外気条件41及び消費電力量42と、暖房時の補正成績係数37とを示す図である。
【0074】
なお、上述したように、除霜運転(デフロスト運転)が実施されると、暖房運転が一時的に停止され、エネルギー消費効率が低下する。このため、除霜運転が実施された単位時間(時刻)では、除霜運転したときの暖房時の補正成績係数37が求められるのが好ましい。本実施形態では、例えば、実線の曲線51を求めるのに用いられた上記文献の式(5)のうち、補正処理暖房負荷Q’
T,H,d,tを特定するための式(10)において、暖房出力補正係数C
af,Hに「0.77」が代入されることで、除霜運転時の曲線が取得される。そして、除霜運転時の曲線において、定格能力となるときのエネルギー消費効率が、除霜運転したときの暖房時の補正成績係数37として特定される。なお、暖房出力補正係数C
af,Hに代入された「0.77」は、例えば、外気温度が5℃未満かつ相対湿度が80%以上の場合の定数である。したがって、暖房出力補正係数C
af,Hに代入される定数は、外気温度や相対湿度に応じて、適宜設定されうる。暖房時の補正成績係数37及び冷房時の補正成績係数38は、
図2に示した補正成績係数入力部21Dに記憶される。
【0075】
[第1熱量を計算]
次に、本実施形態の計算工程S2では、
図10に示した既設の電気機器1の消費電力量42に、補正成績係数(暖房時の補正成績係数37又は冷房時の補正成績係数38)を乗じて、第1熱量が計算される(工程S23)。本実施形態の工程S23では、上記の期間(本例では、30日)内の単位時間(60分)ごとに、消費電力量42に、補正成績係数(暖房時の補正成績係数37)が乗じられる。これにより、単位時間ごとに電気機器1が処理した熱量である第1熱量43が計算される。
図11は、
図10に示した外気条件41、消費電力量42、及び、暖房時の補正成績係数37と、第1熱量43とを示す図である。単位時間ごとの第1熱量43は、
図2に示した第1熱量入力部21Eに記憶される。
【0076】
本実施形態の計算工程S2では、外気条件41に応じて時々刻々と変化する既設の電気機器1の成績係数(暖房時の補正成績係数37)に基づいて、既設の電気機器1の消費電力量42から、既設の電気機器1が処理した第1熱量43が、単位時間ごとに取得される。このような第1熱量43は、
図1に示した建物Hのユーザーの実際の生活パターンや、建物Hの日射条件及び断熱仕様等に応じて、既設の電気機器1が実際に処理した熱量として取得されうる。
【0077】
[新たな電気機器を決定(決定工程)]
次に、本実施形態の提案方法では、第1熱量43に基づいて、新たな電気機器が決定される(決定工程S3)。本実施形態の決定工程S3では、予め設定されている複数の候補電気機器5(
図4に示す)の中から、1又は2以上の新たな電気機器(候補電気機器5)が選定される。
【0078】
本実施形態の決定工程S3では、先ず、
図2に示した第1熱量入力部21Eに記憶されている第1熱量43(
図11に示す)、及び、候補電気機器入力部21Fに記憶されている複数の候補電気機器5(
図4に示す)が、作業用メモリ19に読み込まれる。次に、プログラム部22に含まれる決定部22Cが、作業用メモリ19に読み込まれる。この決定部22Cは、第1熱量43に基づいて、新たな電気機器を決定するためのプログラムである。この決定部22Cが演算部17によって実行されることで、コンピュータ15を、新たな電気機器を決定するための手段として機能させることができる。
【0079】
決定工程S3では、既設の電気機器1の第1熱量43(
図11に示す)に基づいて、新たな電気機器が適宜決定されうる。上述したように、第1熱量43は、
図1に示した建物Hのユーザーの実際の生活パターンや、建物Hの日射条件及び断熱仕様等に応じて、上記の期間の単位時間ごとに、既設の電気機器1が実際に処理した熱量である。そして、上記の期間において、第1熱量43が最大値となる時刻(単位時間)において、既設の電気機器1の負荷が最も大きくなっている。このような負荷(第1熱量43)が最も大きくなる時刻においても、新たな電気機器に安定して処理させるために、決定工程S3では、
図4に示した複数の候補電気機器5のうち、第1熱量43の最大値よりも処理能力が大きい候補電気機器5が選定されるのが好ましい。
【0080】
図11において、第1熱量43の最大値は、時刻が「2:00」のときの第1熱量43(すなわち、1455W)である。このため、
図4に示した複数の候補電気機器5のうち、1455W以上の定格暖房能力31を有する候補電気機器5(例えば、第2候補電気機器5B及び第3候補電気機器5C)が選定されうる。
【0081】
既設の電気機器1の暖房時の処理負荷(第1熱量43)は、1年のうち、
図1に示した建物Hがある地域の最寒日において、最も大きくなる傾向がある。このような最寒日において、安定した処理(暖房)を行うことが可能な候補電気機器5を選定するためには、外気条件41、消費電力量44及び第1熱量43が取得される上記の期間に、最寒日が含まれるのが好ましい。これにより、最寒日の第1熱量43を含めて、第1熱量43の最大値が特定され、この最大値よりも処理能力が大きい候補電気機器5が選定されうる。これにより、最寒日に安定して処理(暖房)することが可能な新たな電気機器(候補電気機器5)の選定が可能となる。
【0082】
一方、既設の電気機器1の冷房時の処理負荷(第1熱量43)は、1年のうち、
図1に示した建物Hがある地域の最暑日において、最も大きくなる傾向がある。このような最暑日において、安定した処理(冷房)を行うことが可能な候補電気機器5を選定するためには、上記の期間に、最暑日が含まれるのが好ましい。これにより、最暑日の第1熱量43を含めて、第1熱量43の最大値が特定され、この最大値よりも処理能力が大きい候補電気機器5が選定されうる。これにより、最暑日に安定して処理(冷房)することが可能な新たな電気機器(候補電気機器5)の選定が可能となる。
【0083】
また、処理能力(本例では、定格暖房能力31)が必要以上に大きい候補電気機器5が選定されると、エネルギー消費効率が低下する場合がある。とりわけ、
図3に示した既設の電気機器1よりも処理能力(定格暖房能力31:6700W)が大きい候補電気機器5(図示省略)が選定されると、既設の電気機器1よりもエネルギー消費効率が低下し、省エネルギー性が悪化する。このような観点より、決定工程S3では、第1熱量43の最大値よりも処理能力が大きい複数の候補電気機器5(
図4において、第2候補電気機器5B及び第3候補電気機器5C)のうち、既設の電気機器1の処理能力よりも小さい処理能力を有する候補電気機器5(第2候補電気機器5B又は第3候補電気機器5C)が選定されるのが好ましい。これにより、
図1及び
図3に示した既設の電気機器1よりもエネルギー消費効率を向上させることができ、省エネルギー性を図ることが可能な新たな電気機器が決定されうる。
【0084】
さらに、決定工程S3では、第1熱量43の最大値よりも処理能力が大きい複数の候補電気機器5(
図4において、第2候補電気機器5B及び第3候補電気機器5C)のうち、第1熱量43の最大値との差が最も小さい処理能力を有する候補電気機器5(第2候補電気機器5B)が選定されるのが好ましい。このような候補電気機器5は、処理負荷(第1熱量)が最も大きくなる時刻においても安定した処理を行いつつ、エネルギー消費効率を最大限に向上させることができる。したがって、建物Hのユーザーの生活パターン等を踏まえて、より適切な容量(処理能力)を有する新たな電気機器23を選定することが可能となる。
【0085】
本実施形態の決定工程S3では、
図4に示した複数の候補電気機器5の中から、1つの候補電気機器5が選定されるが、2つ以上の候補電気機器5が選定されてもよい。この場合、新たな電気機器23として、例えば、第1熱量43の最大値との差が最も小さい処理能力を有する第2候補電気機器5Bと、第1熱量43の最大値との差が2番目に小さい処理能力を有する第3候補電気機器5Cとが選択されてもよい。このように、2つ以上の候補電気機器5が選定されることで、
図1に示した建物Hのユーザーは、単に候補電気機器5の処理能力だけに着目して新たな電気機器23を選定するのではなく、例えば、導入コスト及びデザイン等を含めて、新たな電気機器23を選定することが可能となる。選定された新たな電気機器23(本例では、第2候補電気機器5B)は、
図2に示した選定電気機器入力部21Gに記憶される。
【0086】
決定工程S3には、既設の電気機器1の第1熱量43と、
図4に示した新たな電気機器23(本例では、第2候補電気機器5B)の成績係数(暖房時の成績係数35又は冷房時の成績係数36)とに基づいて、新たな電気機器23の消費電力量を計算する工程が含まれてもよい。本実施形態では、既設の電気機器1の第1熱量43と、新たな電気機器23の第1熱量とが同一となると仮定して、既設の電気機器1の第1熱量43が、
図4に示した新たな電気機器23の暖房時の成績係数35で除されることで、新たな電気機器23の消費電力量が計算されうる。なお、新たな電気機器23の消費電力量をより正確に計算するために、電気機器23の暖房時の成績係数35を外気条件41に基づいて補正した暖房時の補正成績係数(図示省略)が用いられるのが好ましい。
【0087】
図12は、
図11に示した外気条件41、消費電力量42、暖房時の補正成績係数37及び第1熱量43と、新たな電気機器の消費電力量44とを示す図である。このように、新たな電気機器の消費電力量44が計算されることで、既存の電気機器1の消費電力量42との比較が可能となる。新たな電気機器の消費電力量44は、
図2に示した消費電力量入力部21Bに記憶される。
【0088】
[新たな電気機器を提案(提案工程)]
次に、本実施形態の提案方法では、新たな電気機器23(
図4に示す)が、建物Hのユーザーに提案される(提案工程S4)。
【0089】
本実施形態の提案工程S4では、先ず、
図2に示した選定電気機器入力部21Gに記憶されている新たな電気機器23(
図4に示す)が、作業用メモリ19に読み込まれる。次に、プログラム部22に含まれる提案部22Dが作業用メモリ19に読み込まれる。この提案部22Dは、新たな電気機器23を建物Hのユーザーに提案するためのプログラムである。この提案部22Dが演算部17によって実行されることで、コンピュータ15を、新たな電気機器23を提案するための手段として機能させることができる。
【0090】
提案工程S4は、新たな電気機器23(
図4に示す)を、建物Hのユーザーに提案できれば、適宜実施される。本実施形態では、新たな電気機器23が表示装置13(
図2に示した)に出力される。新たな電気機器23は、提案方法を実施した演算処理装置14(コンピュータ15)に接続されている表示装置13に表示されてもよいし、
図1に示した通信ネットワーク7を介して、ユーザーが所有する携帯端末の表示装置(図示省略)に表示されてもよい。
図13は、表示装置13に出力された新たな電気機器23を示す図である。
【0091】
表示装置13には、新たな電気機器23の仕様が出力されている。これにより、新たな電気機器23の定格暖房能力31等の具体的な仕様に基づいて、新たな電気機器23をユーザーに提案することが可能となる。
【0092】
上述したように、新たな電気機器23は、
図12に示した第1熱量43に基づいて決定されている。この第1熱量43は、
図1に示した建物Hのユーザーの実際の生活パターン等に応じて計算されている。したがって、本実施形態の提案方法では、建物Hのユーザーの生活パターン等を踏まえて、適切な容量の新たな電気機器23を提案することが可能となる。
【0093】
本実施形態では、新たな電気機器23の仕様として、定格暖房能力31、定格冷房能力32、最大暖房能力33、最大冷房能力34、暖房時の成績係数35、及び、冷房時の成績係数36が出力されているが、このような態様に限定されるわけではなく、これらの一部が省略されてもよい。
【0094】
提案工程S4は、新たな電気機器23の型番61、室内機の画像62、価格63、及び、省エネ基準達成率64等を、表示装置13に出力する工程が含まれてもよい。これらの情報(データ)により、新たな電気機器23の導入コストやデザイン等を含めて、新たな電気機器23をユーザーに提案することが可能となる。
【0095】
提案工程S4は、
図12に示した既設の電気機器1の消費電力量42、及び、新たな電気機器23の消費電力量44の少なくとも1つが、表示装置13に出力する工程が含まれてもよい。これらの消費電力量42、44は、それらの電気機器のメーカーが公表している値とは異なり、
図1に示した建物Hのユーザーの実際の生活パターンや、建物Hの日射条件及び断熱仕様等に応じて計算された値である。したがって、これらの消費電力量42、44が出力されることで、選定された新たな電気機器23について、ユーザーの納得性を高めることが可能となる。
【0096】
本実施形態では、既設の電気機器1の消費電力量42、及び、新たな電気機器23の消費電力量の双方が出力されている。これにより、これらの消費電力量の比較や、既存の電気機器1からの消費電力量の低減率等に基づいて、新たな電気機器23をユーザーに提案することが可能となる。
【0097】
本実施形態では、既設の電気機器1の消費電力量42の合計値と、新たな電気機器23の消費電力量44の合計値とが表示されているが、このような態様に限定されない。例えば、
図12に示した単位時間(時刻)ごとに、既設の電気機器1の消費電力量42、及び、新たな電気機器23の消費電力量44が出力されてもよい。これにより、これらの消費電力量42、44の詳細な比較等が可能となる。
【0098】
本実施形態の提案方法では、提案工程S4において、
図1に示した建物Hのユーザーが、既設の電気機器1から新たな電気機器23への入れ替えを希望した場合、
図1に示した既設の電気機器1から新たな電気機器23の入れ替える工程が実施される。これにより、建物Hのユーザーの生活パターン等を踏まえて選定された新たな電気機器23に入れ替えられるため、空気調和機4が設置されている室2の快適性、及び、省エネルギー性を向上させることが可能となる。
【0099】
[床暖房装置]
これまでの実施形態では、
図1に示した電気機器1(空調機器3)として、空気調和機4が例示されたが、このような態様に限定されるわけではなく、上述の床暖房装置(図示省略)であってもよい。床暖房装置は、例えば、従来と同様に、床暖房ユニット(図示省略)と、室外機(図示省略)とを含んで構成されている。
【0100】
この実施形態において、床暖房装置(図示省略)の入れ替えが提案される場合には、
図5及び
図7に示した処理手順と同様に、工程S1~提案工程S4が実施される。なお、計算工程S2では、上述の空気調和機4の暖房時と同様の処理手順に基づいて、床暖房装置の成績係数を補正した補正成績係数が計算され、この補正成績係数が消費電力量で乗じられることで第1熱量が計算されうる。これにより、建物Hのユーザーの生活パターン等を踏まえて、適切な容量の新たな床暖房装置の提案が可能となる。
【0101】
[給湯器]
これまでの実施形態では、電気機器1として、空調機器3が例示されたが、このような態様に限定されるわけではなく、例えば、上述の給湯器6であってもよい。給湯器6は、例えば、従来と同様に、貯湯ユニット6Aと、ヒートポンプユニット(図示省略)とをセットとして含んでいる。
【0102】
この実施形態において、給湯器6の入れ替えが提案される場合には、
図5及び
図7に示した処理手順と同様に、工程S1~提案工程S4が実施される。なお、計算工程S2では、上述の空気調和機4の暖房時と同様の処理手順に基づいて、給湯器6の成績係数を補正した補正成績係数が計算され、この補正成績係数が消費電力量で乗じられることで第1熱量が計算されうる。これにより、建物Hのユーザーの生活パターン等を踏まえて、適切な容量の新たな給湯器6の提案が可能となる。
【0103】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【0104】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0105】
[本発明1]
建物に設置されているヒートポンプ式の空調機器又は給湯器を含む電気機器の入れ替えを、前記建物のユーザーに提案するための方法であって、
前記建物がある地域の予め定められた期間の外気の温度を含む外気条件と、前記期間内の予め定められた単位時間ごとの前記電気機器の消費電力量とを取得する工程と、
取得された前記外気条件と前記消費電力量とに基づいて、前記単位時間ごとの前記電気機器が処理した熱量である第1熱量を計算する計算工程と、
前記第1熱量に基づいて、新たな電気機器を決定する決定工程と、
前記新たな電気機器を前記ユーザーに提案する提案工程とを含む、
電気機器の提案方法。
[本発明2]
前記決定工程は、前記新たな電気機器を、予め設定されている複数の候補電気機器の中から1又は2以上選定するものである、本発明1に記載の電気機器の提案方法。
[本発明3]
前記決定工程は、前記新たな電気機器として、前記第1熱量の最大値よりも処理能力が大きく、かつ、設置されている前記電気機器の処理能力よりも小さい処理能力を有する候補電気機器を選定する、本発明2に記載の電気機器の提案方法。
[本発明4]
前記決定工程は、前記新たな電気機器として、前記最大値との差が最も小さい処理能力を有する候補電気機器を選定する、本発明3に記載の電気機器の提案方法。
[本発明5]
前記計算工程は、設置されている前記電気機器の成績係数を取得する工程と、
前記外気条件に基づいて、前記成績係数を補正した補正成績係数を計算する工程と、
前記消費電力量に前記補正成績係数を乗じて、前記第1熱量を計算する工程とを含む、本発明1ないし4のいずれかに記載の電気機器の提案方法。
[本発明6]
前記決定工程は、前記第1熱量と、前記新たな電気機器の成績係数とに基づいて、前記新たな電気機器の消費電力量を計算する工程を含む、本発明1ないし5のいずれかに記載の電気機器の提案方法。
[本発明7]
設置されている前記電気機器の消費電力量、及び、前記新たな電気機器の消費電力量の少なくとも1つを、表示装置に出力する出力工程をさらに含む、本発明6に記載の電気機器の提案方法。
[本発明8]
前記期間は、前記地域の最寒日又は最暑日を含む、本発明1ないし7のいずれかに記載の電気機器の提案方法。
[本発明9]
建物に設置されているヒートポンプ式の空調機器又は給湯器を含む電気機器の入れ替えを、前記建物のユーザーに提案するためのシステムであって、
前記建物がある地域の予め定められた期間の外気の温度を含む外気条件と、前記期間内の予め定められた単位時間ごとの前記電気機器の消費電力量とを取得する取得部と、
取得された前記外気条件と前記消費電力量とに基づいて、前記単位時間ごとの前記電気機器が処理した熱量である第1熱量を計算する計算部と、
前記第1熱量に基づいて、新たな電気機器を決定する決定部と、
前記新たな電気機器を前記ユーザーに提案する提案部とを含む、
電気機器の提案システム。
【符号の説明】
【0106】
1 電気機器
3 空調機器
6 給湯器
H 建物