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特開2024-156522フラックス、ソルダペースト及び接合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156522
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】フラックス、ソルダペースト及び接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20241029BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20241029BHJP
   B23K 35/26 20060101ALN20241029BHJP
   C22C 13/02 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
B23K35/363 D
B23K35/363 E
H05K3/34 505B
H05K3/34 507C
B23K35/26 310A
C22C13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071059
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(72)【発明者】
【氏名】川又 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】藤野 由樹
(72)【発明者】
【氏名】北澤 和哉
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 敬佑
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319AC01
5E319BB05
5E319CC33
5E319CD26
5E319CD27
5E319CD29
5E319GG03
(57)【要約】
【課題】はんだ付けの際にボイドの発生がより抑制されたフラックス、ソルダペースト及び接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかるフラックスは、トリオール溶剤(S1)と、モノアミド系チキソ剤と、1価溶剤及び2価溶剤からなる群より選択される少なくとも一種の溶剤(S2)とを含有し;モノアミド系チキソ剤の含有量が、フラックスの総質量に対して0.5質量%以上15質量%未満であり、溶剤(S2)の含有量が、フラックスの総質量に対して50質量%以上であることを特徴とする。本発明にかかる接合体の製造方法は、部品と、基板とを、はんだ付けすることにより、接合体を得る工程を含み、はんだ付けの際、はんだ合金粉末と、本発明のフラックスとを含有するソルダペーストを用いて、還元性ガス雰囲気でリフローを行うことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリオール溶剤(S1)と、
モノアミド系チキソ剤と、
1価溶剤及び2価溶剤からなる群より選択される少なくとも一種の溶剤(S2)と
を含有するフラックスであって、
前記モノアミド系チキソ剤の含有量が、フラックスの総質量に対して0.5質量%以上15質量%未満であり、
前記溶剤(S2)の含有量が、フラックスの総質量に対して50質量%以上である、フラックス。
【請求項2】
前記トリオール溶剤(S1)の含有量が、フラックスの総質量に対して1質量%以上15質量%以下である、請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
前記トリオール溶剤(S1)が、炭素数3~6の鎖状炭化水素基にヒドロキシ基3つが結合したトリオール化合物である、請求項1に記載のフラックス。
【請求項4】
前記トリオール溶剤(S1)が、3-メチルブタン-1,2,3-トリオール、2-メチルブタン-1,2,4-トリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、グリセリン及び1,2,4-ブタントリオールからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項3に記載のフラックス。
【請求項5】
前記トリオール溶剤(S1)が、
3-メチルブタン-1,2,3-トリオール及び2-メチルブタン-1,2,4-トリオールからなる群より選択される第1のトリオール溶剤と、
1,2,6-ヘキサントリオール、グリセリン及び1,2,4-ブタントリオールからなる群より選択される第2のトリオール溶剤と
を併用したものである、請求項4に記載のフラックス。
【請求項6】
前記第1のトリオール溶剤と、前記第2のトリオール溶剤との混合比率が、
第1のトリオール溶剤/第2のトリオール溶剤、で表される質量比として1~10である、請求項5に記載のフラックス。
【請求項7】
前記溶剤(S2)が、前記1価溶剤を含む、請求項1に記載のフラックス。
【請求項8】
前記1価溶剤が、炭素数16~20の分岐型脂肪族一価アルコールである、請求項7に記載のフラックス。
【請求項9】
前記溶剤(S2)と前記トリオール溶剤(S1)との混合比率が、
溶剤(S2)/トリオール溶剤(S1)、で表される質量比として7~31である、請求項1に記載のフラックス。
【請求項10】
前記モノアミド系チキソ剤が、芳香族アミドと脂肪酸アミドとを併用したものである、請求項1に記載のフラックス。
【請求項11】
さらに、活性剤を含有し、
前記活性剤の含有量が、フラックスの総質量に対して0質量%超え5質量%以下である、請求項1に記載のフラックス。
【請求項12】
ロジン系樹脂を含有しない、請求項1に記載のフラックス。
【請求項13】
活性剤を含有しない、請求項1に記載のフラックス。
【請求項14】
はんだ合金粉末と、請求項1~13のいずれか一項に記載のフラックスと、を含有するソルダペースト。
【請求項15】
部品と、基板とを、はんだ付けすることにより、接合体を得る工程を含み、
前記はんだ付けの際、請求項14に記載のソルダペーストを用いて、還元性ガス雰囲気でリフローを行う、接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックス、ソルダペースト及び接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を製造する際、基板に対する部品の固定、及び基板に対する部品の電気的な接続が、はんだ付けにより行われている。はんだ付けにおいては、フラックス、はんだ粉末、並びに、フラックス及びはんだ粉末を混合したソルダペーストが用いられる。
フラックスは、はんだ付けの対象となる接合対象物の金属表面及びはんだに存在する金属酸化物を化学的に除去し、両者の境界で金属元素の移動を可能にする効能を持つ。このため、フラックスを使用してはんだ付けを行うことで、両者の間に、金属間化合物が形成されるようになり強固な接合が得られる。
【0003】
ソルダペーストを使用したはんだ付けでは、まず、基板にソルダペーストが印刷された後、部品が搭載され、リフロー炉と称される加熱炉で、部品が搭載された基板が加熱される。これにより、ソルダペーストに含まれるはんだ粉末は溶融し、部品が基板に対してはんだ付けされる。このリフローはんだ付けに用いられるフラックスには、一般に、樹脂成分、溶剤、活性剤、チキソ剤等が含まれる。
【0004】
ところで、大電流を制御するパワー半導体のパッケージングにおいては、ダイボンディング部や、ヒートシンク接合部にて、はんだ材料が使用されている。
このようなパッケージング用途では、ボイドの発生を抑制した接合が要求される。リフローはんだ付けの際に生じるボイドの原因として、ガス化したフラックス成分が、溶融はんだに取り込まれる現象が考えられている。
かかる要求を満たすための工法として、ギ酸等の還元性ガス雰囲気でリフローを行う方法がある。還元性ガス雰囲気で行うリフローによれば、還元性ガスそのものにフラックスの役割を持たせることで、フラックスレス工法が実現でき、ボイドの原因を除くことができる。また、還元性ガス雰囲気で行うリフローにおいては、還元性ガス自体が残渣として残らないことから、洗浄レスの接合工程が実現できる。
【0005】
前記フラックスレス工法では、はんだ材料として、はんだプリフォームを使用することが想定される。しかし、その一方で、ユーザーのハンドリングのしやすさや、オートメーション化の観点から、還元性ガス雰囲気で行うリフローにおいても、ソルダペーストを利用すること、に対する要求がある。
例えば特許文献1には、還元ガスを含む還元雰囲気下でリフローはんだ付けを行う、はんだ付け製品の製造方法、及びこれに使用するはんだペーストが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6706000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
パワー半導体のパッケージングにおいては、主に排熱の観点から、極めて高いレベルでボイドの発生を抑制した接合が要求される。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、はんだ付けの際にボイドの発生がより抑制されたフラックス、ソルダペースト及び接合体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
【0009】
[1] トリオール溶剤(S1)と、モノアミド系チキソ剤と、1価溶剤及び2価溶剤からなる群より選択される少なくとも一種の溶剤(S2)とを含有するフラックスであって、前記モノアミド系チキソ剤の含有量が、フラックスの総質量に対して0.5質量%以上15質量%未満であり、前記溶剤(S2)の含有量が、フラックスの総質量に対して50質量%以上である、フラックス。
【0010】
[2] 前記トリオール溶剤(S1)の含有量が、フラックスの総質量に対して1質量%以上15質量%以下である、[1]に記載のフラックス。
【0011】
[3] 前記トリオール溶剤(S1)が、炭素数3~6の鎖状炭化水素基にヒドロキシ基3つが結合したトリオール化合物である、[1]又は[2]に記載のフラックス。
[4] 前記トリオール溶剤(S1)が、3-メチルブタン-1,2,3-トリオール、2-メチルブタン-1,2,4-トリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、グリセリン及び1,2,4-ブタントリオールからなる群より選択される少なくとも一種である、[3]に記載のフラックス。
【0012】
[5] 前記トリオール溶剤(S1)が、3-メチルブタン-1,2,3-トリオール及び2-メチルブタン-1,2,4-トリオールからなる群より選択される第1のトリオール溶剤と、1,2,6-ヘキサントリオール、グリセリン及び1,2,4-ブタントリオールからなる群より選択される第2のトリオール溶剤とを併用したものである、[4]に記載のフラックス。
[6] 前記第1のトリオール溶剤と、前記第2のトリオール溶剤との混合比率が、第1のトリオール溶剤/第2のトリオール溶剤、で表される質量比として1~10である、[5]に記載のフラックス。
【0013】
[7] 前記溶剤(S2)が、前記1価溶剤を含む、[1]~[6]のいずれか一項に記載のフラックス。
[8] 前記1価溶剤が、炭素数16~20の分岐型脂肪族一価アルコールである、[7]に記載のフラックス。
【0014】
[9] 前記溶剤(S2)と前記トリオール溶剤(S1)との混合比率が、溶剤(S2)/トリオール溶剤(S1)、で表される質量比として7~31である、[1]~[8]のいずれか一項に記載のフラックス。
【0015】
[10] 前記モノアミド系チキソ剤が、芳香族アミドと脂肪酸アミドとを併用したものである、[1]~[9]のいずれか一項に記載のフラックス。
【0016】
[11] さらに、活性剤を含有し、前記活性剤の含有量が、フラックスの総質量に対して0質量%超え5質量%以下である、[1]~[10]のいずれか一項に記載のフラックス。
【0017】
[12] ロジン系樹脂を含有しない、[1]~[11]のいずれか一項に記載のフラックス。
[13] 活性剤を含有しない、[1]~[10]、[12]のいずれか一項に記載のフラックス。
【0018】
[14] はんだ合金粉末と、[1]~[13]のいずれか一項に記載のフラックスと、を含有するソルダペースト。
【0019】
[15] 部品と、基板とを、はんだ付けすることにより、接合体を得る工程を含み、前記はんだ付けの際、[14]に記載のソルダペーストを用いて、還元性ガス雰囲気でリフローを行う、接合体の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、はんだ付けの際にボイドの発生がより抑制されたフラックス、これを用いたソルダペースト、及びこのソルダペーストを用いた接合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ボイド発生抑制能の評価における、リフローのプロファイルを示した図である。
図2】加熱だれ抑制能の評価における、Iのパターン孔を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(フラックス)
第1の態様にかかるフラックスの一実施形態は、トリオール溶剤(S1)と、モノアミド系チキソ剤と、1価溶剤及び2価溶剤からなる群より選択される少なくとも一種の溶剤(S2)とを含有する。本実施形態のフラックスにおいては、前記モノアミド系チキソ剤の含有量が、フラックスの総質量に対して0.5質量%以上15質量%未満であり、前記溶剤(S2)の含有量が、フラックスの総質量に対して50質量%以上である。
本実施形態のフラックスは、リフローはんだ付けに好適に用いられ、従来に比べてボイドの発生をより抑えられるものである。
【0023】
<トリオール溶剤(S1)>
本実施形態のフラックスにおいては、トリオール溶剤を含有することで、はんだ付けの際にボイドの発生がより抑制されるようになる。
「トリオール溶剤」とは、ヒドロキシ基を3つ有する溶剤をいう。
トリオール溶剤としては、例えば、ヒドロキシ基を3つ有し、沸点が170~330℃であるトリオール化合物が挙げられる。あるいは、トリオール溶剤としては、例えば、鎖状炭化水素基にヒドロキシ基3つが結合したトリオール化合物が挙げられ、炭素数3~6の鎖状炭化水素基にヒドロキシ基3つが結合したトリオール化合物が好適に挙げられる。
この鎖状炭化水素基は、直鎖状でもよいし分岐鎖状でもよく、分岐鎖状であることが好ましい。
【0024】
トリオール溶剤として、具体的には、3-メチルブタン-1,2,3-トリオール、2-メチルブタン-1,2,4-トリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、グリセリン、1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール等が挙げられる。
【0025】
トリオール溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記の中でも、トリオール溶剤は、ボイド発生抑制能を高められやすい点から、炭素数3~6の鎖状炭化水素基にヒドロキシ基3つが結合したトリオール化合物であることが好ましく、3-メチルブタン-1,2,3-トリオール、2-メチルブタン-1,2,4-トリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、グリセリン及び1,2,4-ブタントリオールからなる群より選択される少なくとも一種であることがより好ましく、3-メチルブタン-1,2,3-トリオール、及び2-メチルブタン-1,2,4-トリオールからなる群より選択される少なくとも一種を含むことがさらに好ましい。
あるいは、上記の中でも、トリオール溶剤は、ソルダペーストのチキソ性を高められやすく、ソルダペーストとした際の加熱だれ抑制能を向上しやすい点から、1,2,6-ヘキサントリオール、グリセリン及び1,2,4-ブタントリオールからなる群より選択される少なくとも一種がさらに好ましい。
【0026】
また、トリオール溶剤は、ボイド発生抑制に加え、ソルダペーストのチキソ性を高められやすく、ソルダペーストとした際の加熱だれ抑制能も向上しやすい点から、3-メチルブタン-1,2,3-トリオール及び2-メチルブタン-1,2,4-トリオールからなる群より選択される第1のトリオール溶剤と、1,2,6-ヘキサントリオール、グリセリン及び1,2,4-ブタントリオールからなる群より選択される第2のトリオール溶剤とを併用したものであることが好ましく、3-メチルブタン-1,2,3-トリオールと、1,2,6-ヘキサントリオール、グリセリン及び1,2,4-ブタントリオールからなる群より選択される第2のトリオール溶剤とを併用したものであることがより好ましく、3-メチルブタン-1,2,3-トリオールと、グリセリン及び1,2,4-ブタントリオールからなる群より選択される第2のトリオール溶剤とを併用したものであることがさらに好ましく、3-メチルブタン-1,2,3-トリオールとグリセリンとを併用したものであることが特に好ましい。
【0027】
本実施形態のフラックス中の、トリオール溶剤の含有量は、フラックスの総量(100質量%)に対して、1質量%以上15質量%以下が好ましく、1.5質量%以上12質量%以下がより好ましく、2質量%以上11質量%以下がさらに好ましい。
トリオール溶剤の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であれば、はんだ付けの際にボイドの発生が抑えられやすくなり、一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であれば、ソルダペーストのチキソ性が高められやすく、ソルダペーストとした際の加熱だれ抑制能も向上しやすくなる。
【0028】
トリオール溶剤について、第1のトリオール溶剤と第2のトリオール溶剤とを併用する場合、両者の混合比率は、第1のトリオール溶剤/第2のトリオール溶剤、で表される質量比として、1~10であることが好ましく、2~10であることがより好ましく、3~10であることがさらに好ましい。
両者の混合比率が、前記の好ましい範囲の下限値以上であれば、はんだ付けの際にボイドの発生が抑えられやすくなり、一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であれば、ボイド発生抑制能、ソルダペーストのチキソ性、ソルダペーストとした際の加熱だれ抑制能がいずれも向上しやすくなる。
【0029】
<モノアミド系チキソ剤>
本実施形態のフラックスにおいては、モノアミド系チキソ剤を含有することで、ソルダペーストにチキソ性が付与され、ソルダペーストの印刷性が向上する。
モノアミド系チキソ剤としては、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド(これらをまとめて単に「脂肪酸アミド」という);芳香族アミドが挙げられ、例えば、アセトアミド、プロピオン酸アミド、ブタン酸アミド、イソブタン酸アミド、ヘキサン酸アミド、オクタン酸アミド、2-エチルヘキサン酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸アミド、エルカ酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールアミド、脂肪酸エステルアミド、ベンズアミド、2-フェニルアセトアミド、p-トルアミド等が挙げられる。
【0030】
モノアミド系チキソ剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記の中でも、モノアミド系チキソ剤は、脂肪酸アミド及び芳香族アミドからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、飽和脂肪酸アミド及び芳香族アミドからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましい。例えば、モノアミド系チキソ剤としては、脂肪酸アミドと芳香族アミドとを併用したものでもよく、飽和脂肪酸アミドと芳香族アミドとを併用したものでもよく、ステアリン酸アミドとp-トルアミドとを併用したものが好適に挙げられる。
【0031】
本実施形態のフラックス中の、モノアミド系チキソ剤の含有量は、フラックスの総量(100質量%)に対して、0.5質量%以上15質量%未満であり、1質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上8質量%以下がより好ましい。
モノアミド系チキソ剤の含有量が、前記範囲の上限値未満であれば、はんだ付けの際にボイドの発生が抑えられやすくなり、一方、前記範囲の下限値以上であれば、ソルダペーストのチキソ性が高められやすく、ソルダペーストとした際の加熱だれ抑制能も向上する。
【0032】
モノアミド系チキソ剤について、脂肪酸アミドと芳香族アミドとを併用する場合、両者の混合比率は、芳香族アミド/脂肪酸アミド、で表される質量比として、5/5以上9/1以下が好ましく、5/5超え8/2以下がより好ましく、5/5超え7/3以下がさらに好ましい。
【0033】
<溶剤(S2)>
本実施形態のフラックスにおいては、1価溶剤及び2価溶剤からなる群より選択される少なくとも一種の溶剤(S2)を、フラックスの総質量に対して50質量%以上含有する。これにより、はんだ付けの際にボイドの発生が抑えられやすくなり、また、低残渣のフラックスが容易に調製される。
本実施形態のフラックスは、1価溶剤を含む溶剤(S2)を含有するものが好ましく、フラックス全体のベース溶剤として1価溶剤を含有するものがより好ましい。
1価溶剤は、トリオール溶剤(S1)との相互作用が高く、1価溶剤を含有する場合には、第1のトリオール溶剤と第2のトリオール溶剤との併用効果が特に高められて、良好なボイド発生抑制能を示すとともに、ソルダペーストのチキソ性、及び加熱だれ抑制能が向上する。
「1価溶剤」とは、ヒドロキシ基を1つ有する溶剤をいう。「2価溶剤」とは、ヒドロキシ基を2つ有する溶剤をいう。
【0034】
≪1価溶剤≫
1価溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、テルピネオール類が挙げられる。
【0035】
アルコール系溶剤としては、分岐型脂肪族一価アルコールが好ましく、炭素数16~20の分岐型脂肪族一価アルコールが好適に挙げられ、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノールが挙げられる。
イソヘキサデカノールとしては、2-へキシル-1-デカノール、2-ペンチル-1-ウンデカノール等が例示される。
イソヘプタデカノールとしては、2-へキシル-1-ウンデカノール、2-ヘプチル-1-デカノール等が例示される。
イソオクタデカノールとしては、5,7,7-トリメチル-2-(1,3,3-トリメチルブチル)-1-オクタノール、2-ノニル-1-ノナール、8-メチル-2-(4-メチルヘキシル)-1-デカノール、2-オクチル-1-デカノール、2-ヘプチル-1-ウンデカノール、2-ヘキシル-1-ドデカノール等が例示される。
イソノナデカノールとしては、2-へキシル-1-トリデカノール等が例示される。
イソエイコサノールとしては、5,9-ジメチル-2-(1,5-ジメチルヘキシル)-1-デカノール等が例示される。
【0036】
グリコールエーテル系溶剤としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルジグリコール)、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリ(プロピレングリコール)n-ブチルエーテル等が挙げられる。
【0037】
上記の中でも、1価溶剤としては、アルコール系溶剤が好ましく、分岐型脂肪族一価アルコールがより好ましく、その中でも、ボイド発生抑制能及びソルダペーストのチキソ性の点から、炭素数16~20の分岐型脂肪族一価アルコールがさらに好ましい。
【0038】
≪2価溶剤≫
2価溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール;2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジオール等が挙げられる。
【0039】
溶剤(S2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
溶剤(S2)は、1価溶剤及び2価溶剤からなる群より選択される少なくとも一種であり、上記の中でも、1価溶剤を含むものが好ましい。
ここでの1価溶剤には、アルコール系溶剤を用いることがより好ましく、炭素数16~20の分岐型脂肪族一価アルコールを用いることがさらに好ましい。
【0040】
本実施形態のフラックス中の、溶剤(2)の含有量は、フラックスの総量(100質量%)に対して、50質量%以上であり、70質量%以上でもよいし、80質量%以上でもよいし、98.5質量%以下でもよいし、95質量%以下でもよい。
本実施形態のフラックスにおいて、溶剤(2)の含有量は、フラックスに配合される全成分(溶剤(2)を含む)の合計を100質量%に調整する残部であってよい。
【0041】
本実施形態のフラックスにおいて、前記溶剤(S2)と前記トリオール溶剤(S1)との混合比率は、溶剤(S2)/トリオール溶剤(S1)、で表される質量比として、7~31であることが好ましく、7~25であることがより好ましく、7.5~20であることがさらに好ましい。
溶剤(S2)/トリオール溶剤(S1)が、前記の好ましい範囲内であれば、ボイド発生抑制能、ソルダペーストのチキソ性、ソルダペーストとした際の加熱だれ抑制能がいずれも向上しやすくなる。特に、前記の好ましい範囲の上限値以下であれば、はんだ付けの際にボイドの発生が抑えられやすくなる。
【0042】
<その他成分>
本実施形態のフラックスは、トリオール溶剤、モノアミド系チキソ剤、1価溶剤及び2価溶剤以外に、必要に応じてその他成分を含んでもよい。
その他成分としては、有機酸、アミン、ハロゲン化合物等の活性剤;ロジン等の樹脂成分;モノアミド系チキソ剤以外のチキソ剤;トリオール溶剤、1価溶剤及び2価溶剤以外の溶剤;界面活性剤、金属不活性化剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、着色剤等が挙げられる。
【0043】
≪活性剤≫
本実施形態のフラックスは、有機酸、アミン、ハロゲン化合物等の活性剤を含有してもよい。
【0044】
有機酸としては、カルボン酸、有機スルホン酸等が挙げられる。
カルボン酸としては、例えば、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸が挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、イソペラルゴン酸、カプリン酸、カプロレイン酸、ラウリン酸(ドデカン酸)、ウンデカン酸、リンデル酸、トリデカン酸、ミリストレイン酸、ペンタデカン酸、イソパルミチン酸、パルミトレイン酸、ヒラゴン酸、ヒドノカーピン酸、マーガリン酸、イソステアリン酸、エライジン酸、ペトロセリン酸、モロクチン酸、エレオステアリン酸、タリリン酸、バクセン酸、リミノレイン酸、ベルノリン酸、ステルクリン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸等が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコサン二酸、酒石酸、2,4-ジエチルグルタル酸、ジグリコール酸、2-メチルノナン二酸、4-(メトキシカルボニル)-2,4-ジメチルウンデカン二酸、4,6-ビス(メトキシカルボニル)-2,4,6-トリメチルトリデカン二酸、8,9-ビス(メトキシカルボニル)-8,9-ジメチルヘキサデカン二酸等が挙げられる。
芳香族カルボン酸としては、例えば、サリチル酸、ジブチルアニリンジグリコール酸、テレフタル酸、パラヒドロキシフェニル酢酸、フェニルコハク酸、フタル酸、安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2-キノリンカルボン酸、3-ヒドロキシ安息香酸、p-アニス酸等が挙げられる。
【0045】
また、カルボン酸としては、イソシアヌル酸トリス(2-カルボキシエチル)、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸;2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、クエン酸、イソクエン酸、リンゴ酸、酒石酸等のヒドロキシカルボン酸;ダイマー酸、トリマー酸、ダイマー酸に水素を添加した水添物である水添ダイマー酸、トリマー酸に水素を添加した水添物である水添トリマー酸;ピコリン酸、ジピコリン酸、3-ヒドロキシピコリン酸等も挙げられる。
【0046】
有機スルホン酸としては、脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸等が挙げられる。
脂肪族スルホン酸としては、例えば、アルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸等が挙げられる。アルカンスルホン酸としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1-プロパンスルホン酸、2-プロパンスルホン酸、1-ブタンスルホン酸、2-ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等が挙げられる。アルカノールスルホン酸としては、例えば、2-ヒドロキシエタン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシペンタン-1-スルホン酸、1-ヒドロキシプロパン-2-スルホン酸、3-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸、4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシヘキサン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシデカン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシドデカン-1-スルホン酸等が挙げられる。
芳香族スルホン酸としては、例えば、1-ナフタレンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p-フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、スルホサリチル酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、ジフェニルアミン-4-スルホン酸等が挙げられる。
【0047】
アミンとしては、例えば、アゾール類、グアニジン類、アミノアルコール、アルキルアミン化合物、アミンポリオキシアルキレン付加体等が挙げられる。
ハロゲン化合物としては、例えば、アミンハロゲン化水素酸塩、ハロゲン化脂肪族アルコール、ハロゲン化複素環式化合物等が挙げられる。アミンハロゲン化水素酸塩は、アミンとハロゲン化水素とを反応させた化合物である。
【0048】
活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本実施形態のフラックスにおいては、さらに、活性剤を含有する場合、フラックス中の活性剤の含有量は、はんだ付けの際にボイドの発生を抑制する観点から、フラックスの総量(100質量%)に対して、0質量%超え5質量%以下であることが好ましい。
【0049】
あるいは、還元性ガス雰囲気でリフローを行うはんだ付けの際、本実施形態のフラックスを含有するソルダペーストを用いる場合、かかるフラックスは、活性剤を含有しないものでもよい。特に、ギ酸の還元性ガス雰囲気で行うリフロー方式と、ソルダペーストとを組み合わせたはんだ付け用途に対して、活性剤を含有しないものとした本実施形態のフラックスは好適なものである。
【0050】
≪樹脂成分≫
本実施形態のフラックスは、ロジン系樹脂等の樹脂成分を含有してもよい。しかし、本実施形態のフラックスにおいては、トリオール溶剤とモノアミド系チキソ剤とを含有することから、ロジン等の樹脂成分は任意で用いればよく、はんだ付けの際にフラックス残渣の量を低減する観点から、ロジン系樹脂を含有しないことが好ましい。
【0051】
ここでいうロジン系樹脂とは、アビエチン酸を主成分とする、アビエチン酸とこの異性体との混合物を含む天然樹脂、及びその天然樹脂を化学修飾したもの(以下「ロジン誘導体」と呼ぶ)を包含する。
ロジン誘導体としては、例えば、精製ロジン、変性ロジン等が挙げられる。
変性ロジンとしては、水添ロジン、重合ロジン、重合水添ロジン、不均化ロジン、酸変性ロジン、ロジンエステル、酸変性水添ロジン、無水酸変性水添ロジン、酸変性不均化ロジン、無水酸変性不均化ロジン、フェノール変性ロジン及びα,β不飽和カルボン酸変性物(アクリル化ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン等)、並びに該重合ロジンの精製物、水素化物及び不均化物、並びに該α,β不飽和カルボン酸変性物の精製物、水素化物及び不均化物、ロジンアルコール、ロジンアミン、水添ロジンアルコール、ロジンエステル、水添ロジンエステル、ロジン石鹸、水添ロジン石鹸、酸変性ロジン石鹸等が挙げられる。
【0052】
≪モノアミド系チキソ剤以外のチキソ剤≫
本実施形態のフラックスは、モノアミド系チキソ剤以外のチキソ剤を含有してもよい。モノアミド系チキソ剤以外のチキソ剤としては、ビスアミド、その他のポリアミド、ワックス系チキソ剤、ソルビトール系チキソ剤等が挙げられる。
ビスアミドとしては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシ脂肪酸(脂肪酸の炭素数C6~24)アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、飽和脂肪酸ビスアミド、メチレンビスオレイン酸アミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、芳香族ビスアミド等が挙げられる。
その他のポリアミドとしては、飽和脂肪酸ポリアミド、不飽和脂肪酸ポリアミド、芳香族ポリアミド、1,2,3-プロパントリカルボン酸トリス(2-メチルシクロヘキシルアミド)、環状アミドオリゴマー、非環状アミドオリゴマー等が挙げられる。
ワックス系チキソ剤としては、例えばエステル化合物が挙げられ、具体的には、硬化ひまし油等が挙げられる。
ソルビトール系チキソ剤としては、例えば、ジベンジリデン-D-ソルビトール、ビス(4-メチルベンジリデン)-D-ソルビトール、(D-)ソルビトール、モノベンジリデン(-D-)ソルビトール、モノ(4-メチルベンジリデン)-(D-)ソルビトール等が挙げられる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態のフラックスは、トリオール溶剤(S1)と、モノアミド系チキソ剤を0.5質量%以上15質量%未満と、1価溶剤及び2価溶剤からなる群より選択される少なくとも一種の溶剤(S2)を50質量%以上とを含有する。それぞれ所定量のモノアミド系チキソ剤及び溶剤(S2)を含有することで、ソルダペーストの低残渣化が図られる。加えて、トリオール溶剤(S1)をさらに含有することで、はんだ付けの際にボイドの発生がより抑制される。特に、還元性ガス雰囲気でリフローを行う場合、後述の[実施例]にて測定されるボイド面積率を低減することができる。通常のリフロー方式では、このボイド面積率が5%前後でも高水準であるが、本実施形態のフラックスを採用することで、更なる低ボイド化が図られて、ゼロボイドへと近づけることが可能となる。
【0054】
また、本実施形態のフラックスにおいては、トリオール溶剤(S1)として、3-メチルブタン-1,2,3-トリオール及び2-メチルブタン-1,2,4-トリオールからなる群より選択される第1のトリオール溶剤と、1,2,6-ヘキサントリオール、グリセリン及び1,2,4-ブタントリオールからなる群より選択される第2のトリオール溶剤とを併用したものを採用することで、ソルダペーストのチキソ性を高められ、ソルダペーストとした際の加熱だれ抑制能も向上する。これによって、チキソ剤の量を低減することができ、ソルダペーストの低ボイド化及び低残渣化が更に図られる。
上述した本実施形態のフラックスは、還元性ガス雰囲気で行うリフロー方式と、ソルダペーストとを組み合わせたはんだ付け用途に特に好適なものである。
【0055】
(ソルダペースト)
第2の態様にかかるソルダペーストは、はんだ合金粉末と、上述した第1の態様にかかるフラックスと、を含有する。
【0056】
はんだ合金粉末は、Sn単体のはんだの粉体、または、Sn-Ag系、Sn-Cu系、Sn-Ag-Cu系、Sn-Bi系、Sn-In系等、あるいは、これらの合金にSb、Bi、In、Cu、Zn、As、Ag、Cd、Fe、Ni、Co、Au、Ge、P等を添加したはんだ合金の粉体で構成されてもよい。
はんだ合金粉末は、Sn-Pb系、あるいは、Sn-Pb系にSb、Bi、In、Cu、Zn、As、Ag、Cd、Fe、Ni、Co、Au、Ge、P等を添加したはんだ合金の粉体で構成されてもよい。
はんだ合金粉末は、Pbを含まないはんだであることが好ましい。
はんだ合金粉末としては、例えば、その溶融温度が150~250℃のものを用いることができる。
【0057】
フラックスの含有量:
ソルダペースト中、フラックスの含有量は、ソルダペーストの全質量に対して5~30質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。
【0058】
以上説明した本実施形態にかかるソルダペーストによれば、第1の態様にかかるフラックスが用いられているため、はんだ付けの際にボイドの発生がより抑制される。
あるいは、かかるソルダペーストによれば、更なる低ボイド化が図られて、ゼロボイドへと近づけることが可能であるとともに、ソルダペーストとした際のチキソ性を高められ、加熱だれも抑制される。
【0059】
(接合体の製造方法)
第3の態様にかかる接合体の製造方法は、部品と、基板とを、はんだ付けすることにより、接合体を得る工程を含む。かかる接合体の製造方法においては、前記はんだ付けの際、上述した第2の態様にかかるソルダペーストを用いて、還元性ガス雰囲気でリフローを行う。
以下、第3の態様にかかる接合体の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態にかかる接合体の製造方法は、ソルダペースト塗布工程、部品取付け工程、リフロー工程をこの順に含む方法である。
【0060】
[ソルダペースト塗布工程]
ソルダペースト塗布工程においては、第2の態様にかかるソルダペーストを、基板の表面に塗布する。
基板としては、例えば、プリント配線基板、ウエハ等が挙げられる。
ソルダペーストを塗布する方法としては、例えば、開口部を有するマスクを用いてソルダペーストを印刷塗布する方法、ディスペンサ等を用いてソルダペーストを吐出する方法、プローブピン等を用いてソルダペーストを転写する方法等が挙げられる。
【0061】
[部品取付け工程]
部品取付け工程においては、ソルダペーストが塗布された基板に、部品を取り付ける。
部品としては、例えば、チップ、集積回路、トランジスタ、ダイオード、抵抗器及びコンデンサ等が挙げられる。
【0062】
[リフロー工程]
リフロー工程は、還元性ガス雰囲気でリフローを行う操作を少なくとも含み、本発明の効果が奏される限り、窒素ガス雰囲気での操作を含んでいてもよい。
還元性ガス雰囲気は、例えば、リフロー炉において還元性化合物を揮発させて形成されるものであってもよいし、液体の還元性化合物に対して窒素を通気させることにより得られる還元性ガスを、リフロー炉へ供給して形成されるものであってもよい。還元性化合物としては、ギ酸が好ましい。
リフロー工程の雰囲気が還元性ガス雰囲気である場合、用いるソルダペーストは、活性剤の量を低減させてもよく、活性剤を含有しないものでもよい。これにより、フラックス残渣をより低減することが可能である。
【0063】
リフロー工程においては、リフロー炉において、ソルダペーストに含まれるはんだ粉末の融点よりも高い温度(すなわち、ピーク温度)で、部品取り付け後の基板を加熱する(これを本加熱工程という)。加熱温度としては、例えば、はんだ粉末の融点よりも5~30℃高い温度であってもよい。加熱時間としては、例えば、1分~4分であってもよい。
【0064】
リフロー工程は、本加熱工程の前に、プレヒート工程を有するものであってもよい。
プレヒート工程は、リフロー炉において、ソルダペーストに含まれるはんだ粉末の融点よりも低い温度で、部品取り付け後の基板を加熱する。加熱温度としては、例えば、190~220℃であってもよい。加熱時間としては、例えば、1分~5分であってもよい。
プレヒート工程において、リフロー炉の炉内は、上述した窒素ガス雰囲気であってもよいし、還元性ガス雰囲気であってもよい。
【0065】
以上説明した本実施形態にかかる接合体の製造方法によれば、上述した本実施形態のフラックスを含有するソルダペーストと、還元性ガス雰囲気で行うリフロー方式と、を組み合わせたはんだ付けが採用されていることで、フラックス残渣が低減されるとともに、ボイドの発生がより抑えられるため、得られる接合体の疲労寿命延長や、熱伝導性低下の抑制が図られる。加えて、加熱だれも抑制されるため、基板において短絡が生じるおそれを低減することが可能となる。
【実施例0066】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
<フラックスの調製>
(実施例1~21、比較例1~2)
表1~4に示す組成の、実施例及び比較例の各フラックスを調合した。
表中、各原料の含有量は、フラックスの総質量(100質量%)に対する割合(質量%)を示している。
使用した原料を以下に示した。
【0068】
・トリオール溶剤(S1)
第1のトリオール溶剤として、3-メチルブタン-1,2,3-トリオール、2-メチルブタン-1,2,4-トリオールを用いた。
第2のトリオール溶剤として、1,2,6-ヘキサントリオール、グリセリン、1,2,4-ブタントリオールを用いた。
【0069】
・モノアミド系チキソ剤
p-トルアミド、ステアリン酸アミドを用いた。
【0070】
・溶剤(S2)
1価溶剤として、イソオクタデカノール(5,7,7-トリメチル-2-(1,3,3-トリメチルブチル)-1-オクタノール)、2-へキシルデカノール、ヘキシルジグリコール(ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル)を用いた。
2価溶剤として、1,4-ブタンジオールを用いた。
【0071】
・活性剤
カプリン酸を用いた。
【0072】
<ソルダペーストの調製>
各フラックスと、下記のはんだ合金粉末と、をそれぞれ混合してソルダペーストを調合した。調合したソルダペーストは、いずれも、フラックスを9質量%、はんだ合金粉末を91質量%とした。
はんだ合金粉末:Sbが7.0質量%、Cuが0.6質量%、残部がSnのはんだ合金からなる粉末。このはんだ合金の固相線温度は235℃であり、液相線温度は242℃である。前記はんだ合金粉末のサイズは、JIS Z 3284-1:2014における粉末サイズの分類(表2)において、記号4を満たすサイズ(粒度分布)である。
【0073】
<評価>
以下に示すようにして、ボイド発生抑制能の評価、ソルダペーストのチキソ性の評価、加熱だれ抑制能の評価を行った。これらの評価結果を表1~4に示した。
【0074】
[ボイド発生抑制能の評価]
メタルマスク(厚さ0.15mm、開口部10mm×10mm)を用い、Cu板(サイズ50mm×50mm)上に、上記で調合したソルダペーストを印刷した。
次いで、ソルダペーストを印刷したCu板に対し、Cuチップ(サイズ10mm×10mm)を搭載した。
次いで、下記条件でリフローを行い、はんだ付けした。
【0075】
リフローの条件:
ここでの評価で行ったリフローのプロファイルを図1に示した。
図1中、それぞれの経過時間(a)、(b)、(c)、(d)、(e)における操作条件を以下に示した。
(a)加熱前に、炉内を真空にし、その後、窒素置換を行う。
(b)第一昇温(30℃から210℃まで、昇温速度1.5℃/sec)
(c)プレヒート(210℃、4min)、プレヒート中にギ酸を投入する。
(d)第二昇温(210℃から280℃まで、昇温速度0.7℃/sec)、真空を引きながら加熱する。
(e)280℃を3min保持。2min経過時点で大気圧に戻し、大気圧下で1min保持する。
【0076】
ボイド評価方法:
Cu板とCuチップとの接合体に対し、Cu板の鉛直方向からX線を照射して、透過X線を解析することにより、ボイド面積を測定した。
ボイド面積の測定には、XD7600NT Diamond X線検査システム(Nordson DAGE社製)を用いた。
ボイド面積は、X線が少なくとも1個のボイドを通過した場合に、ボイドが存在したものとして測定した。ボイドは、直径0.1μm以上のものを検出対象とした。
次いで、Cuチップ下面の総面積(これを面積率100%とする)に対する、ボイドの総面積の割合を算出し、ボイド面積率(%)とした。接合体5個における、ボイド面積率の平均値を求めた。
ボイド面積率の値が小さいほど、ボイド発生抑制能が高いことを意味する。
【0077】
[ソルダペーストのチキソ性の評価]
上記で調合したソルダペーストのチキソ性についての評価は、JIS Z3284-3:2014 4.2「粘度特性試験」1)スパイラル方式に準拠し、スパイラル方式粘度計を用いて行った。粘度計の回転速度を3rpmと30rpmとに設定し、ソルダペーストにおける所定時間回転後の粘度を読み取ってチキソ比を算出した。
下式より、チキソ比TIを算出(logは常用対数)した。
チキソ比TI=log(η1/η2)/log(D2/D1)
η1:ずり速度D1の時の粘度
η2:ずり速度D2の時の粘度
D1:ずり速度1、D1=1.8s-1(3r/min)
D2:ずり速度2、D2=18s-1(30r/min)
チキソ比TIの値が大きいほど、ソルダペーストのチキソ性が高いことを意味する。
【0078】
[加熱だれ抑制能の評価]
上記で調合したソルダペーストについて、JIS Z 3284-3:2014 4.4「加熱時のだれ試験」に記載された方法に準拠して、加熱だれを評価した。
まず、JIS Z 3284-3:2014 4.3「印刷時のだれ試験」の図6中のI(孔のサイズ 3.0×0.7)に示すパターン孔を配したメタルマスクを用いて、ソルダペーストを印刷して試験板を得た。得られた試験板を、150℃で3分間、恒温槽中で静置した。
上記のIのパターンの模式図を図2に示す。図2において、0.2~1.2の数値は、パターン孔とパターン孔との間の距離を表している。
加熱後の試験板について、印刷されたソルダペースト全てが一体にならない最小間隔を目視によって確認し、評価した。
この最小間隔の値が小さいほど、加熱だれ抑制能が高いことを意味する。
【0079】
【表1】
【0080】
表1に示す結果から、トリオール溶剤を含有する実施例1~5のフラックスを含有するソルダペーストは、トリオール溶剤を含有しない比較例1~2のフラックスを含有するソルダペーストに比べて、ボイド面積率の値が低く、はんだ付けの際にボイドの発生がより抑制されていることが確認された。
比較例1と比較例2との対比から、単に、モノアミドチキソ剤の含有量を減らしても、ボイドの発生を抑える効果は低いこと;ソルダペーストのチキソ性が下がること、加熱だれ抑制能は低いままであることが確認できる。
【0081】
【表2】
【0082】
表2に示す結果から、第1のトリオールと第2のトリオールとを併用する実施例8~11のフラックスを用いた場合においては、良好なボイド発生抑制能を示すとともに、ソルダペーストのチキソ性、及び加熱だれ抑制能も向上していることが確認された。
【0083】
【表3】
【0084】
トリオール溶剤(S1)の選択について:
表3に示す結果から、実施例10及び13のフラックスを含有するソルダペーストは、実施例12、14及び15のフラックスを含有するソルダペーストに比べて、ボイド面積率が、より低い値を示しており、はんだ付けの際にボイドの発生がさらに抑制されていることが確認できる。
【0085】
【表4】
【0086】
トリオール溶剤(S1)と溶剤(S2)との組合せについて:
表4に示す結果から、1価溶剤を含有する実施例18~21の場合、第1のトリオールと第2のトリオールとを併用する実施例19、実施例21のフラックスを用いた場合においては、良好なボイド発生抑制能を示すとともに、ソルダペーストのチキソ性、及び加熱だれ抑制能について向上していることが確認できる。
これに対して、2価溶剤を含有する実施例16と実施例17との対比から、第1のトリオールと第2のトリオールとが併用されていても、ソルダペーストのチキソ性、及び加熱だれ抑制能についての向上は認められなかった。
図1
図2