(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156525
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】ワイヤレス給電システム及び方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20241029BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20241029BHJP
B60L 53/12 20190101ALI20241029BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20241029BHJP
H01F 38/14 20060101ALI20241029BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/80
B60L53/12
B60M7/00 X
H01F38/14
H01F27/28 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071064
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500267170
【氏名又は名称】ローレル機械株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】中西 秀行
(72)【発明者】
【氏名】大堀 隼輝
(72)【発明者】
【氏名】土方 亘
(72)【発明者】
【氏名】李 想
【テーマコード(参考)】
5E043
5H125
【Fターム(参考)】
5E043AA02
5E043BA01
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】負荷側回路のインピーダンスが変動した場合であってもインピーダンス整合を簡便に実行するワイヤレス給電システム及び方法を提供する。
【解決手段】磁界共鳴方式で電力を送受電するワイヤレス給電システム1Aは、給電対象物2の受電コイル41に設けられた複数の端子の接続位置に応じて異なるコイル巻数を有する複数のコイル領域を選択可能であり、送電装置3の送電コイル32と磁界結合可能に設けられて送電コイルに電力を送電する駆動コイル31を有する駆動部35と、電源装置5Aと駆動コイルとの間に位置し駆動コイルでの反射電力を検出する反射電力検出部37と、を備える。コントローラ92は、予め記憶された反射電力から算出される電力反射率又は電力反射係数と、受電コイルのインダクタンスとの対応関係に基づき、電力反射率又は電力反射係数に応じて、複数の端子の切替によりコイル領域を切り替えて受電コイルのインダクタンスを変更する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電コイルを含む送電側共振回路を備えている送電装置と、
受電コイルを含む受電側共振回路を有する受電部を備え、前記受電コイルが受電した電力が供給される負荷に接続可能な受電装置と、
前記受電部を制御する制御装置と、
を備え、電源装置から供給される電力を、磁界共鳴方式を利用して前記送電コイルと前記受電コイルとの間で電力を送受電するワイヤレス給電システムであって、
前記受電コイルは、前記受電コイルに設けられた複数の端子の接続位置に応じて異なるコイル巻数を有する複数のコイル領域を選択可能に構成され、
前記送電装置は、前記送電コイルと磁界結合可能に設けられて前記送電コイルに電力を送電する駆動コイルを有する駆動部と、前記電源装置と前記駆動コイルとの間に配置されて、前記駆動コイルでの反射電力を検出する反射電力検出部と、を備え、
前記制御装置は、予め記憶された、前記反射電力から算出される電力反射率又は電力反射係数と、前記受電コイルのインダクタンスとの対応関係に基づき、前記電力反射率又は電力反射係数に応じて、前記複数の端子の切替により複数の前記コイル領域を切り替えて前記受電コイルのインダクタンスを変更することを特徴とするワイヤレス給電システム。
【請求項2】
前記対応関係は、前記送電装置の入力端から負荷側の回路のインピーダンスである負荷側インピーダンスの実測値と前記電力反射率又は電力反射係数との関係式、及び前記負荷側インピーダンスの理論値と前記受電コイルのインダクタンスとの関係式に基づいており、
前記制御装置は、前記電力反射率又は電力反射係数から算出される前記負荷側インピーダンスの実測値に前記負荷側インピーダンスの理論値を近づけるように、前記受電コイルのインダクタンスを変更することを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記受電コイルのインダクタンスの変更後に前記反射電力検出部が再検出した反射電力から算出された前記電力反射率又は電力反射係数が所定値より大きい場合、前記負荷側インピーダンスの実測値に前記負荷側インピーダンスの理論値を近づけるように、前記受電コイルのインダクタンスを再び変更することを特徴とする請求項2に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記複数の端子の切替により、選択された前記コイル領域のインダクタンス及び選択された前記コイル領域と直列に配置されたコンデンサのキャパシタンスを前記送電コイルと前記受電コイルとの間での磁界共鳴を維持可能に調整することを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項5】
前記駆動コイルは、磁界共鳴方式を利用して前記送電コイルに電力を送電し、
前記制御装置は、前記送電コイルと前記駆動コイルとの磁界結合における結合強さを変更するように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項6】
送電コイルを含む送電側共振回路を備えている送電装置と、
受電コイルを含む受電側共振回路を有する受電部を備え、前記受電コイルが受電した電力が供給される負荷に接続可能な受電装置と、
前記受電部を制御する制御装置と、
を備え、電源装置から供給される電力を、磁界共鳴方式を利用して前記送電コイルと前記受電コイルとの間で電力を送受電するワイヤレス給電システムであって、
前記受電コイルは、前記受電コイルに設けられた複数の端子の接続位置に応じて異なるコイル巻数を有する複数のコイル領域を選択可能に構成され、
前記送電装置は、前記送電コイルと磁界結合可能に設けられて前記送電コイルに電力を送電する駆動コイルを有する駆動部と、前記電源装置と前記駆動コイルとの間に配置されて、前記駆動コイルでの反射電力を検出する反射電力検出部と、を備え、
前記制御装置は、予め記憶された、前記反射電力から算出される電力反射率又は電力反射係数と前記受電コイルのコイル領域との対応関係に基づき、算出された前記電力反射率又は電力反射係数に対応する前記受電コイルのコイル領域を、前記複数の端子を切り替えて選択することを特徴とするワイヤレス給電システム。
【請求項7】
前記駆動コイルは、磁界共鳴方式を利用して前記送電コイルに電力を送電し、
前記制御装置は、前記送電コイルと前記駆動コイルとの磁界結合における結合強さを変更するように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項6に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項8】
送電コイルを含む送電側共振回路を備えている送電装置と、
受電コイルを含む受電側共振回路を有する受電部を備え、前記受電コイルが受電した電力が供給される負荷に接続可能な受電装置と、
前記受電部を制御する制御装置と、
を備え、電源装置から供給される電力を、磁界共鳴方式を利用して前記送電コイルと前記受電コイルとの間で電力を送受電するワイヤレス給電システムであって、
前記受電コイルは、前記受電コイルに設けられた複数の端子の接続位置に応じて異なるコイル巻数を有する複数のコイル領域を選択可能に構成され、
前記送電装置は、前記送電コイルと磁界結合可能に設けられて前記送電コイルに電力を送電する駆動コイルを有する駆動部と、前記電源装置と前記駆動コイルとの間に配置されて、前記駆動コイルでの反射電力を検出する反射電力検出部と、を備え、
前記制御装置は、前記反射電力から算出される電力反射係数が所定値より大きい場合、前記受電コイルのインダクタンスが切替前から1段階大きくなるように、前記複数の端子の切替により複数の前記コイル領域を切り替え、前記反射電力から算出される電力反射係数が所定値より小さい場合、前記受電コイルのインダクタンスが切替前から1段階小さくなるように、前記複数の端子の切替により複数の前記コイル領域を切り替えることを特徴とするワイヤレス給電システム。
【請求項9】
前記駆動コイルは、磁界共鳴方式を利用して前記送電コイルに電力を送電し、
前記制御装置は、前記送電コイルと前記駆動コイルとの磁界結合における結合強さを変更するように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項8に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項10】
送電コイルを含む送電側共振回路と、前記送電コイルと磁界結合可能に設けられて前記送電コイルに電力を送電する駆動コイルを有する駆動部と、電源装置と前記駆動コイルとの間に配置されて、前記駆動コイルでの反射電力を検出する反射電力検出部と、を備えている送電装置と、
受電コイルを含む受電側共振回路を有する受電部を備え、前記受電コイルが受電した電力が供給される負荷に接続可能な受電装置と、
前記駆動部を制御する制御装置と、
を備え、前記電源装置から供給される電力を、磁界共鳴方式を利用して前記送電コイルと前記受電コイルとの間で電力を送受電するワイヤレス給電システムであって、
前記駆動コイルは、複数の駆動コイル部を選択可能に構成され、磁界共鳴方式を利用して前記送電コイルに電力を送電し、
前記制御装置は、予め記憶された、前記反射電力から算出される電力反射率又は電力反射係数と、前記送電コイル及び前記駆動コイルの磁界結合における結合強さとの対応関係に基づき、前記電力反射率又は電力反射係数に応じて、前記複数の駆動コイル部を切り替えて前記送電コイル及び前記駆動コイルの磁界結合における結合強さを変更することを特徴とするワイヤレス給電システム。
【請求項11】
送電コイルを含む送電側共振回路を備えている送電装置と、
受電コイルを含む受電側共振回路を有する受電部を備え、前記受電コイルが受電した電力が供給される負荷に接続可能な受電装置と、
前記受電部を制御する制御装置と、
を備え、電源装置から供給される電力を、磁界共鳴方式を利用して前記送電コイルと前記受電コイルとの間で電力を送受電するワイヤレス給電システムを用いたワイヤレス給電方法であって、
前記受電コイルは、前記受電コイルに設けられた複数の端子の接続位置に応じて異なるコイル巻数を有する複数のコイル領域を選択可能に構成され、
前記送電装置は、前記送電コイルと磁界結合可能に設けられて前記送電コイルに電力を送電する駆動コイルを有する駆動部と、前記電源装置と前記駆動コイルとの間に配置されて、前記駆動コイルでの反射電力を検出する反射電力検出部と、を備え、
前記制御装置は、予め記憶された、前記反射電力から算出される電力反射率又は電力反射係数と、前記受電コイルのインダクタンスとの対応関係に基づき、前記電力反射率又は電力反射係数に応じて、前記複数の端子の切替により複数の前記コイル領域を切り替えて前記受電コイルのインダクタンスを変更することを特徴とするワイヤレス給電方法。
【請求項12】
前記駆動コイルは、磁界共鳴方式を利用して前記送電コイルに電力を送電し、
前記制御装置は、前記送電コイルと前記駆動コイルとの磁界結合における結合強さを変更するように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項11に記載のワイヤレス給電方法。
【請求項13】
前記制御装置による負荷側インピーダンスの調整は、前記受電コイルの端子を切り替えて粗調整した後に、前記駆動部を制御して微調整を行うことを特徴とする請求項12に記載のワイヤレス給電方法。
【請求項14】
前記受電装置は、移動可能に構成され、
前記送電装置は、前記受電装置の移動中に、前記電源装置から供給される電力を前記受電コイルに送電することを特徴とする請求項11に記載のワイヤレス給電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス給電システム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、磁界を利用したワイヤレス給電システムの研究開発が進められている。このような磁気を利用した給電方式としては、電磁結合(電磁誘導)方式と磁界共鳴方式とが知られている。磁界共鳴方式は、送電装置の共振回路に交流電流が流れることにより発生した磁場の振動が、受電装置の共振回路に伝わって共振することで、各共振回路のコイルで生成された磁界が強固に結合した状態(磁界共振結合)を介して電力を送電することをいう。磁界共鳴方式を利用したワイヤレス給電は、電磁結合方式を利用したワイヤレス給電と比較して、給電可能距離が長くなるという利点がある(例えば、特許文献1参照)。なお、磁界共鳴方式も磁気結合を利用する方式であるものの、本発明では理解を容易にするために、共振を利用する方式を磁界共鳴方式としている。
【0003】
このようなワイヤレス給電システムでは、効率良く送電を行うために、送電装置の入力端(IE)から視て受電装置及び負荷等を含む負荷側回路のインピーダンスと、送電装置の入力端(IE)から視て電源側のインピーダンスとが等価に設定する必要がある。
【0004】
通常、送電装置の送電コイルと受電装置の送電コイルとが所定の相対位置に位置するときにインピーダンスマッチング(インピーダンス整合)が成り立つように、送電装置の共振回路及び受電装置の共振回路の各種パラメータが予め設定されている。このようなインピーダンスが不整合となる要因は、例えば、送電コイルと受電コイルとの相対的な位置関係の変化や、給電対象であるバッテリやモータ等の負荷の充電状況の変化等が考えられる。
【0005】
特許文献1には、共鳴素子と励振素子とが電磁誘導により結合され、共鳴素子から励振素子、自動整合器を通じて交流電力が整流回路に供給される受け側(給電先)において、自動整合器と励振素子とが、インピーダンス変換器を構成しており、自動整合器が、伝送距離によって変動する結合係数に応じて、共鳴素子を有する共振回路のインピーダンスを調整し、励振素子が、共鳴素子と整流回路との間のインピーダンス整合を取る構成が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、磁界共鳴方式を利用したワイヤレス給電において、複数の給電コイル(駆動コイル)を切り替えることにより、給電コイルと送電コイルとの磁界結合の強さを変更することで、負荷側インピーダンスと入力側インピーダンスとの間のインピーダンスを整合させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-50140号公報
【特許文献2】国際公開第2022/244730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のような受電コイルとは別の共振回路を設けてインピーダンス整合を実現する場合、インピーダンスの変化に応じて、共振状態を維持しながら可変インダクタや可変キャパシタを動作させる必要がある。これらの応答性を考慮すると、共振状態を維持する条件とインピーダンスを整合させる条件とが両立できず、送電コイルと受電コイルとの位置関係の変化に応じてインピーダンスを整合することは困難であった。また、負荷の変動に応じたインピーダンス変化に対してインピーダンスを整合することも同様に困難であった。さらに、このようなインピーダンス整合機能を備えた受電装置は、高性能な素子等を要するためコストが高くなりがちであり、さらに受電装置が移動体や可搬機器である場合、受電装置に複雑な機構を搭載することは重量やサイズ、や発熱等を考慮すると現実的ではなかった。
【0009】
また、特許文献2記載のワイヤレス給電システムは、駆動コイルの切替中は、負荷側インピーダンスと入力側インピーダンスとの間のインピーダンスが不整合な状態となる。したがって、複数の駆動コイルの切替に時間を要すると、給電対象物が停止中のバッテリである場合には、給電速度が遅くなる虞がある。また、移動中の給電対象物に給電する場合には、給電対象物の移動に複数の駆動コイルの切替が追随できないため、インピーダンスが不整合の状態が長期化し、場合によっては早期に電源を喪失する虞もある。
【0010】
そこで、負荷側回路のインピーダンスが変動した場合であっても、インピーダンス整合を簡便に実行するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係るワイヤレス給電システムは、送電コイルを含む送電側共振回路を備えている送電装置と、受電コイルを含む受電側共振回路を有する受電部を備え、前記受電コイルが受電した電力が供給される負荷に接続可能な受電装置と、前記受電部を制御する制御装置と、を備え、電源装置から供給される電力を、磁界共鳴方式を利用して前記送電コイルと前記受電コイルとの間で電力を送受電するワイヤレス給電システムであって、前記受電コイルは、前記受電コイルに設けられた複数の端子の接続位置に応じて異なるコイル巻数を有する複数のコイル領域を選択可能に構成され、前記送電装置は、前記送電コイルと磁界結合可能に設けられて前記送電コイルに電力を送電する駆動コイルを有する駆動部と、前記電源装置と前記駆動コイルとの間に配置されて、前記駆動コイルでの反射電力を検出する反射電力検出部と、を備え、前記制御装置は、予め記憶された、前記反射電力から算出される電力反射率又は電力反射係数と、前記受電コイルのインダクタンスとの対応関係に基づき、前記電力反射率又は電力反射係数に応じて、前記複数の端子の切替により複数の前記コイル領域を切り替えて前記受電コイルのインダクタンスを変更する。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明に係るワイヤレス給電システムは、送電コイルを含む送電側共振回路を備えている送電装置と、受電コイルを含む受電側共振回路を有する受電部を備え、前記受電コイルが受電した電力が供給される負荷に接続可能な受電装置と、前記受電部を制御する制御装置と、を備え、電源装置から供給される電力を、磁界共鳴方式を利用して前記送電コイルと前記受電コイルとの間で電力を送受電するワイヤレス給電システムであって、前記受電コイルは、前記受電コイルに設けられた複数の端子の接続位置に応じて異なるコイル巻数を有する複数のコイル領域を選択可能に構成され、前記送電装置は、前記送電コイルと磁界結合可能に設けられて前記送電コイルに電力を送電する駆動コイルを有する駆動部と、前記電源装置と前記駆動コイルとの間に配置されて、前記駆動コイルでの反射電力を検出する反射電力検出部と、を備え、前記制御装置は、予め記憶された、前記反射電力から算出される電力反射率又は電力反射係数と前記受電コイルのコイル領域との対応関係に基づき、算出された前記電力反射率又は電力反射係数に対応する前記受電コイルのコイル領域を、前記複数の端子を切り替えて選択する。
【0013】
また、上記目的を達成するために、本発明に係るワイヤレス給電システムは、送電コイルを含む送電側共振回路を備えている送電装置と、受電コイルを含む受電側共振回路を有する受電部を備え、前記受電コイルが受電した電力が供給される負荷に接続可能な受電装置と、前記受電部を制御する制御装置と、を備え、電源装置から供給される電力を、磁界共鳴方式を利用して前記送電コイルと前記受電コイルとの間で電力を送受電するワイヤレス給電システムであって、前記受電コイルは、前記受電コイルに設けられた複数の端子の接続位置に応じて異なるコイル巻数を有する複数のコイル領域を選択可能に構成され、前記送電装置は、前記送電コイルと磁界結合可能に設けられて前記送電コイルに電力を送電する駆動コイルを有する駆動部と、前記電源装置と前記駆動コイルとの間に配置されて、前記駆動コイルでの反射電力を検出する反射電力検出部と、を備え、 前記制御装置は、前記反射電力から算出される電力反射係数が所定値より大きい場合、前記受電コイルのインダクタンスが切替前から1段階大きくなるように、前記複数の端子の切替により複数の前記コイル領域を切り替え、前記反射電力から算出される電力反射係数が所定値より小さい場合、前記受電コイルのインダクタンスが切替前から1段階小さくなるように、前記複数の端子の切替により複数の前記コイル領域を切り替える。
【0014】
また、上記目的を達成するために、本発明に係るワイヤレス給電システムは、送電コイルを含む送電側共振回路と、前記送電コイルと磁界結合可能に設けられて前記送電コイルに電力を送電する駆動コイルを有する駆動部と、前記電源装置と前記駆動コイルとの間に配置されて、前記駆動コイルでの反射電力を検出する反射電力検出部と、を備えている送電装置と、受電コイルを含む受電側共振回路を有する受電部を備え、前記受電コイルが受電した電力が供給される負荷に接続可能な受電装置と、前記駆動部を制御する制御装置と、を備え、電源装置から供給される電力を、磁界共鳴方式を利用して前記送電コイルと前記受電コイルとの間で電力を送受電するワイヤレス給電システムであって、前記駆動コイルは、複数の駆動コイル部を選択可能に構成され、磁界共鳴方式を利用して前記送電コイルに電力を送電し、前記制御装置は、予め記憶された、前記反射電力から算出される電力反射率又は電力反射係数と、前記送電コイル及び前記駆動コイルの磁界結合における結合強さとの対応関係に基づき、前記電力反射率又は電力反射係数に応じて、前記複数の駆動コイル部を切り替えて前記送電コイル及び前記駆動コイルの磁界結合における結合強さを変更する。
【0015】
さらに、上記目的を達成するために、本発明に係るワイヤレス給電方法は、送電コイルを含む送電側共振回路を備えている送電装置と、受電コイルを含む受電側共振回路を有する受電部を備え、前記受電コイルが受電した電力が供給される負荷に接続可能な受電装置と、前記受電部を制御する制御装置と、を備え、電源装置から供給される電力を、磁界共鳴方式を利用して前記送電コイルと前記受電コイルとの間で電力を送受電するワイヤレス給電システムを用いたワイヤレス給電方法であって、前記受電コイルは、前記受電コイルに設けられた複数の端子の接続位置に応じて異なるコイル巻数を有する複数のコイル領域を選択可能に構成され、前記送電装置は、前記送電コイルと磁界結合可能に設けられて前記送電コイルに電力を送電する駆動コイルを有する駆動部と、前記電源装置と前記駆動コイルとの間に配置されて、前記駆動コイルでの反射電力を検出する反射電力検出部と、を備え、前記制御装置は、予め記憶された、前記反射電力から算出される電力反射率又は電力反射係数と、前記受電コイルのインダクタンスとの対応関係に基づき、前記電力反射率又は電力反射係数に応じて、前記複数の端子の切替により複数の前記コイル領域を切り替えて前記受電コイルのインダクタンスを変更する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、負荷側の回路のインピーダンスが変動した場合であっても、最適な受電コイルのコイル領域を迅速に設定可能なことにより、入力側インピーダンスと負荷側インピーダンスとの差分が緩和されるため、入力端における反射波の発生が抑制され、送電効率の低下や、それに伴うシステム障害の虞を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るワイヤレス給電システムの構成を示す模式図である。
【
図3】送電コイルと、コイル軸の軸線方向にオフセットして配置された3つの駆動コイル部との位置関係を示す模式図である。
【
図5】送電コイルと、受電コイルの3つのコイル領域との位置関係を示す模式図である。
【
図7】ワイヤレス給電システムに対応する回路図である。
【
図8】
図7に示す回路図に対応する等価回路図である。
【
図11】送電コイルと、送電コイルに対して傾斜して略球状に配置された8つの給電コイル部との位置関係を示す模式図である。
【
図12】実施例1~7で用いた駆動コイル、送電コイル及び受電コイルの構成を示す模式図である。
【
図13】実施例1において、送電コイルと受電コイルとの距離の変化に応じた電力反射率の推移を示すグラフである。
【
図14】実施例1において、駆動コイルの駆動コイル部及び受電コイルのコイル領域の切替タイミングを示す図である。
【
図15】実施例2において、送電コイルと受電コイルとの距離の変化に応じた電力反射率の推移を示すグラフである。
【
図16】実施例2において、駆動コイルの駆動コイル部及び受電コイルのコイル領域の切替タイミングを示す図である。
【
図17】実施例3において、送電コイルと受電コイルとの距離の変化に応じた電力反射率の推移を示すグラフである。
【
図18】実施例3において、駆動コイルの駆動コイル部及び受電コイルのコイル領域の切替タイミングを示す図である。
【
図19】実施例4において、送電コイルと受電コイルとの距離の変化に応じた電力反射率の推移を示すグラフである。
【
図20】実施例4において、駆動コイルの駆動コイル部及び受電コイルのコイル領域の切替タイミングを示す図である。
【
図21】実施例5において、送電コイルと受電コイルとの距離の変化に応じた電力反射率の推移を示すグラフである。
【
図22】実施例5において、駆動コイルの駆動コイル部及び受電コイルのコイル領域の切替タイミングを示す図である。
【
図25】実施例7において、1回目の実験結果(停止時間43秒)を示す電力反射率の推移を示すグラフである。
【
図26】実施例7において、2回目の実験結果(停止時間46秒)を示す電力反射率の推移を示すグラフである。
【
図27】実施例7において、3回目の実験結果(停止時間48秒)を示す電力反射率の推移を示すグラフである。
【
図28】実施例7において、4回目の実験結果(停止時間43秒)を示す電力反射率の推移を示すグラフである。
【
図29】比較例2において、1回目の実験結果(停止時間36秒)を示す電力反射率の推移を示すグラフである。
【
図30】比較例2において、2回目の実験結果(停止時間41秒)を示す電力反射率の推移を示すグラフである。
【
図31】比較例2において、3回目の実験結果(停止時間33秒)を示す電力反射率の推移を示すグラフである。
【
図32】比較例2において、4回目の実験結果(停止時間33秒)を示す電力反射率の推移を示すグラフである。
【
図33】実施例8において、送電コイルと受電コイルとの距離の変化に応じた電力反射率の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係るワイヤレス給電システム1A及びワイヤレス給電システム1Aを用いたワイヤレス給電方法について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0019】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0020】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0021】
<ワイヤレス給電システムの構成>
図1は、ワイヤレス給電システム1Aの構成を示す模式図である。ワイヤレス給電システム1Aは、磁界共鳴を利用して非接触で給電対象物2に電力を給電する。給電対象物2は、例えば、車両、ロボット飛翔体、水中ロボット、カプセル内視鏡、心臓ペースメーカー等であり、移動可能な機器又は移動不能な機器の何れであっても構わない。また、給電時に、給電対象物2は移動中又は停止の何れであっても構わない。ワイヤレス給電システム1Aは、送電装置3と、受電装置4と、を備えている。また、ワイヤレス給電システム1Aは、交流電源5を備えた電源装置5Aを備えていても良い。
【0022】
<送電装置の構成>
送電装置3は、駆動コイル31と、送電コイル32と、コンデンサ33、34と、を備えている。
【0023】
駆動コイル31及び送電コイル32は、電気伝導率の高い銅線等を円形に巻回して形成されている。なお、銅線内を流れる電流は、内部抵抗の影響によって銅線の中心部よりも表面付近を多く流れる。したがって、駆動コイル31及び送電コイル32の線材に複数の銅線を撚り合わせたリッツ線を用いた場合には、同一径の1本の銅線と比べて、リッツ線の表面積が大きくなり、より多くの電流を流すことができ、電流損失を抑制できる。
【0024】
駆動コイル31には、電源装置5Aの交流電源5から交流電力が供給される。交流電力は、例えば、周波数150kHz、電圧10Vに設定されるが、交流電源5の周波数及び電圧は任意に変更可能である。以下、駆動コイル31の交流電源5側の接点を「入力端IE」という。なお、本実施形態では、駆動コイル31と交流電源5とは、入力端IEを介して直接的に接続されている場合を例に説明するが、駆動コイル31と交流電源5とは、入力端IEを介して直接的に接続されても、交流電源5と入力端IEとの間に設けられた同軸ケーブル等を介して間接的に接続されても構わない。この場合、もし電源のインピーダンスが同軸ケーブル等のインピーダンスと整合している場合は、同軸ケーブル等の電源側端は電力の反射等が生じないため問題にはならず、入力端IEは同軸ケーブル等の負荷側端を意味する。
【0025】
駆動部35は、駆動コイル31及びコンデンサ33を直列に接続して構成された給電側共振回路を備えている。駆動コイル31のインダクタンス及びコンデンサ33のキャパシタンスによって設定される共振周波数に応じた周波数の交流電圧が駆動コイル31に流れると、駆動コイル31を貫くように振動磁場が生じる。駆動コイル31の詳しい構成については、後述する。
【0026】
駆動コイル31と送電コイル32とは磁界結合しており、駆動コイル31は、磁界共鳴方式により電力を送電コイル32に供給する。すなわち、駆動コイル31のインダクタンス及びコンデンサ33のキャパシタンスに応じて設定される共振周波数と、送電コイル32のインダクタンス及びコンデンサ34のキャパシタンスに応じて設定される共振周波数とがほぼ等しく、駆動コイル31と送電コイル32とが共振するように設計されている。これにより、駆動コイル31に交流電流が流れることにより発生した特定周波数(共振周波数)の磁場の振動が、送電コイル32に伝わり同じ特定周波数で共振することで、送電コイル32に起電力が生じる。なお、駆動コイル31から送電コイル32への電力の供給は、各コイルの位置関係による影響が低減される磁界共鳴方式が好適であるが、駆動コイル31に交流電流が流れると、駆動コイル31をコイル軸方向に貫くように生じる磁束を媒介にして、送電コイル32にも起電力が生じる電磁結合方式であっても構わない。また、磁界共鳴方式と電磁結合方式とを併用しても構わない。
【0027】
送電部36は、送電コイル32及びコンデンサ34を直列に接続して構成された送電側共振回路を備えている。送電コイル32のインダクタンス及びコンデンサ33のキャパシタンスによって設定される共振周波数に応じた周波数の交流電圧が送電コイル32に流れると、後述する受電コイル41が共振して起電力が生じる。
【0028】
交流電源5と駆動コイル31との間には、方向性結合器から成る反射電力検出部37が設けられている。反射電力検出部37は、駆動コイル31側からの反射電力を検出する。
【0029】
<受電装置の構成>
受電装置4は、給電対象物2内に設けられている。受電装置4は、受電コイル41と、コンデンサ42と、備えている。
【0030】
受電コイル41は、送電コイル32とコイル軸方向に間隔を空けて設けられている。受電コイル41は、電気伝導率の高い銅線等を円形に巻回して形成されている。なお、受電コイル41も駆動コイル31及び送電コイル32と同様に、線材にリッツ線を用いるのが好ましい。
【0031】
受電部43は、受電コイル41及びコンデンサ42を直列に接続して構成された受電側共振回路を備えている。受電コイル41のインダクタンス及びコンデンサ42のキャパシタンスによって設定される共振周波数は、送電コイル32及びコンデンサ33の共振周波数と略一致するように設定されている。これにより、送電コイル32をコイル軸方向に貫くように生じた磁場の振動によって、受電コイル41に誘導電流が流れ、受電コイル41をコイル軸方向に貫くように振動磁場が生じる。このとき、送電コイル32及び受電コイル41の磁場が共鳴して強固に結合する。受電コイル41の詳しい構成については、後述する。
【0032】
受電コイル41が共振受電した交流電力は、整流回路(AC-DCコンバータ)6及びDC-DCコンバータ7を介して負荷8に供給される。負荷8は、給電対象物2を構成するモータやバッテリ等である。
【0033】
整流回路6は、4つのダイオード61がブリッジ上に配置され、受電コイル41が受電した交流電力に対して全波整流を行い、直流電圧を出力する。なお、符号62は、整流回路6が出力した直流電圧を平滑化させるコンデンサである。
【0034】
DC-DCコンバータ7は、整流された直流電圧を予め設定された定電圧(例えば、12V)に変換する。DC-DCコンバータ7から出力された電圧は、負荷8に印加される。なお、DC-DCコンバータ7は、必要な電圧に応じて配置されればよく、適宜省略しても構わない。
【0035】
<インピーダンスマッチング機構の構成>
次に、入力端IEから受電装置4側、即ち送電装置3、受電装置4、整流回路6、DC-DCコンバータ7及び負荷8を含む回路(負荷側回路)のインピーダンス(以下、「負荷側インピーダンス」という。)と入力端IEから交流電源5側の回路のインピーダンス(以下、「入力側インピーダンス」という。)との差分を緩和させるインピーダンスマッチング処理を行うインピーダンスマッチング機構9について、図面に基づいて説明する。なお、受電装置4及びインピーダンスマッチング機構9は、ワイヤレス受電システム11を構成している。
【0036】
図2に示すように、インピーダンスマッチング機構9は、スイッチ91a~91dの切替制御により、駆動コイル31を構成する3つの駆動コイル部31A、31B、31Cの少なくとも1つ以上に電力を供給する。なお、駆動コイル部31A、31B、31Cの何れかに電力を選択的に供給可能であれば、スイッチ91a~91dの代わりに他の構成を用いても構わない。
【0037】
駆動コイル31は、3つの駆動コイル部31A、31B、31Cに分割されている。3つの駆動コイル部31A、31B、31Cは、駆動コイル31を3つに分割するものであって実質的に直列に接続されており、駆動コイル部31A、31Bは配線31ABを介して接続され、駆動コイル部31B、31Cは配線31BCを介して接続されている。なお、配線31AB、31BCを省略して、駆動コイル部31A、31B、31Cをそれぞれが異なる駆動コイルで構成しても構わない。駆動コイル部31A、31B、31Cの各コイル軸31a、31b、31cと送電コイル32のコイル軸32aとは、通常状態において、略同軸上に位置する。なお、以下では、駆動コイル31を駆動コイル部31A、31B、31Cに3分割した場合を例に説明するが、駆動コイル部の数は2つであっても、4つ以上であっても構わない。
【0038】
駆動コイル部31A、31B、31Cは、駆動コイル部31Aが送電コイル32に最も近く、この順で送電コイル32から離間するように配置されている。したがって、送電コイル32との磁界結合の結合強さは、駆動コイル部31Aが最も強く、駆動コイル部31Cが最も小さく設定される。駆動コイル31と送電コイル32とを磁界共鳴方式で送電する場合、駆動コイル部31A、31B、31Cのインダクタンスをそれぞれ等しく設定することにより、効率的に送電を行うことができる。
【0039】
スイッチ91a~91dは、駆動コイル部31A、31B、31Cに電流を供給するためのMOSFET等から成るスイッチである。スイッチ91a、91bは、交流電源5に接続されている。スイッチ91aは、駆動コイル部31Cの一方端側とスイッチ91c側とを切替可能に構成されている。スイッチ91cは、駆動コイル部31Aの一方端側と駆動コイル部31Bの一方端側とを切替可能に構成されている。また、スイッチ91bは、駆動コイル部31Cの他方端側とスイッチ91d側とを切替可能に構成されている。スイッチ91dは、駆動コイル部31Aの他方端側と駆動コイル部31Bの他方端側とを切替可能に構成されている。
【0040】
駆動コイル部31Aに電力を供給する場合には、スイッチ91aをスイッチ91c側に切り替え、スイッチ91cを駆動コイル部31Aの一方端側に切り替え、スイッチ91bをスイッチ91d側に切り替え、スイッチ91dを駆動コイル部31Aの他方端側に切り替える。また、駆動コイル部31Bに電力を供給する場合には、スイッチ91aをスイッチ91c側に切り替え、スイッチ91cを駆動コイル部31Bの一方端側に切り替え、スイッチ91bをスイッチ91d側に切り替え、スイッチ91dを駆動コイル部31Bの他方端側に切り替える。さらに、駆動コイル部31Cに電力を供給する場合には、スイッチ91aを駆動コイル部31C側に切り替え、スイッチ91bを駆動コイル部31C側に切り替える。
【0041】
また、駆動コイル部31A、31Bに電力を供給する場合には、スイッチ91aをスイッチ91c側に切り替え、スイッチ91cを駆動コイル部31Aの一方端側に切り替え、スイッチ91bをスイッチ91d側に切り替え、スイッチ91dを駆動コイル部31Bの他方端側に切り替える。また、駆動コイル部31B、31Cに電力を供給する場合には、スイッチ91aをスイッチ91c側に切り替え、スイッチ91cを駆動コイル部31Bの一方端側に切り替え、スイッチ91bを駆動コイル部31C側に切り替える。
【0042】
さらに、駆動コイル部31A、31B、31Cに電力を供給する場合には、スイッチ91aをスイッチ91c側に切り替え、スイッチ91cを駆動コイル部31Aの一方端側に切り替え、スイッチ91bを駆動コイル部31B側に切り替える。
【0043】
コントローラ92は、反射電力検出部37により検出した反射電力の大きさに応じて、スイッチ91a~91dの切替制御を行う。コントローラ92は、例えば、CPU、メモリ等により構成される。なお、コントローラ92の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作することにより実現されても良い。コントローラ92は、記憶部93と、制御部94と、に機能分割される(
図1参照)。
【0044】
そして、駆動コイル部31A、31B、31Cと送電コイル32との磁界結合の結合強さが、駆動コイル部31A、31B、31Cの送電コイル32からの距離に反比例して弱くなるため、
図3に示すように、送電コイル32との磁界結合の結合強さが異なる駆動コイル部31A、31B、31Cの何れかに電力を供給することにより、送電装置3内の回路のインピーダンスを増減することができる。
【0045】
また、
図4に示すように、インピーダンスマッチング機構9は、受電コイル41の一方端側の端子及び受電コイル41を略同じコイル巻数に分割して且つ実質的に直列に接続された3つの受電コイル部41a間にそれぞれ設けられた2つの端子に接続されたスイッチ91e~91fの切替制御により、受電コイル41の3つのコイル領域41A、41B、41Cの何れに通電するかを選択する。なお、受電コイル41の他方端の端子及びスイッチ91eは、整流回路6に接続されている。スイッチ91e~91fの切替制御は、反射電力検出部37により検出した反射電力の大きさに応じて、コントローラ92が行う。なお、コンデンサ42のキャパシタンスC1、C2、C3は、後述する
図6のキャパシタンスC1、C2、C3に対応している。なお、コイル領域41A、41B、41Cの何れかを選択可能であれば、スイッチ91e~91fの代わりに他の構成を用いても構わない。また、以下では、受電コイル41をコイル領域41A、41B、41Cに3分割した場合を例に説明するが、受電コイル領域の数は2つであっても、4つ以上であっても構わない。
【0046】
図5は、受電コイル41のうち一部又は全部を選択的に使用する様子を示す模式図である。
図5(a)は、受電コイル41の全コイル巻数に相当するコイル領域41Aを使用する場合を例示しており、
図5(b)は、受電コイル41のうち送電コイル32に近く且つ全コイル巻数の2/3に相当するコイル領域41Bを使用する場合を例示しており、
図5(c)は、受電コイル41のうち送電コイル32に近く且つ全コイル巻数の1/3に相当するコイル領域41Cを使用する場合を例示している。受電コイル41のインダクタンスは、コイル領域41A、41B、41Cのコイル巻数に比例して増加するため、コイル領域41Aのインダクタンスが最も大きくなり、コイル領域41Bのインダクタンスは、コイル領域41Aの2/3であり、コイル領域41Cのインダクタンスは、コイル領域41Aの1/3となる。
【0047】
受電コイル41と送電コイル32との共振状態を維持するために、選択されたコイル領域41A、41B、41Cに応じてコンデンサ42のキャパシタンスは適宜調整される。
図6は、受電コイル41の電気配線を示す模式図である。
図6では、理解を容易にするために、3つの受電コイル部を互いに離間して図示しているが、3つの受電コイル部は必ずしも離間させる必要はない。
【0048】
2つのMOSFET95a、95bがスイッチ91eを構成し、2つのMOSFET95c、95dが、スイッチ91fを構成する。インダクタンス(L1+L2+L3)のコイル領域41Aを使用する場合には、MOSFET95aをオフ、MOSFET95bをオン、MOSFET95cをオフ、MOSFET95dをオンにすることにより、コイル領域41Aを選択できる。このとき、コンデンサ42のキャパシタンスC3が機能する。キャパシタンスC3の値は、インダクタンス(L1+L2+L3)と共振回路を形成するものに予め設定されている。
【0049】
また、インダクタンス(L1+L2)のコイル領域41Bを使用する場合には、MOSFET95aをオフ、MOSFET95bをオン、MOSFET95cをオン、MOSFET95dをオフにすることにより、コイル領域41Bを選択できる。このとき、コンデンサ42のキャパシタンスC2が機能する。キャパシタンスC2の値は、インダクタンス(L1+L2)と共振回路を形成するものに予め設定されている。
【0050】
また、インダクタンス(L1)のコイル領域41Cを使用する場合には、MOSFET95aをオン、MOSFET95bをオフにすることにより(MOSFET95c、95dは、オンオフ何れでも構わない)、コイル領域41Cを選択できる。このとき、コンデンサ42のキャパシタンスC1が機能する。キャパシタンスC1の値は、インダクタンスL1と共振回路を形成するものに予め設定されている。
【0051】
コントローラ92は、反射電力検出部37により検出した反射電力の大きさに応じて、スイッチ91a~91dの切替制御を行う。これにより、コイル領域41A、41B、41Cの何れが選択されても、受電コイル41と送電コイル32との共振状態が維持される。なお、本実施形態では、MOSFET95a、95bから成るスイッチ91e及びMOSFET95c、95dから成るスイッチ91fを用いたが、スイッチ91e、91fの構成はこれらに限定されるものではない。
【0052】
次に、入力側インピーダンスと負荷側インピーダンスとが一致しないインピーダンス不整合が生じる要因について説明する。入力側インピーダンスと負荷側インピーダンスとの差分が大きければ大きいほど、電力の反射が大きくなり送電効率が低下する。インピーダンス不整合は、例えば、送電コイル32と受電コイル41との相対位置が変化したり送電コイル32と受電コイル41との間に異物が介在する等して送電コイル32と受電コイル41との結合係数が変化したり、バッテリの充電状況等によって負荷8の状態が変化して負荷側インピーダンスが変動することにより生じる。
【0053】
インピーダンス不整合について、
図7、
図8に基づいて具体的に説明する。
図7は、ワイヤレス給電システム1Aに対応する回路図である。
図7中の「V」は電源5の電圧、「Z
s」は電源5のインピーダンス(入力側インピーダンス)、「R
0」は駆動コイル31の寄生抵抗、「L
0」は駆動コイル31のインダクタンス、「C
0」はコンデンサ33のキャパシタンス、「I
0」は駆動コイル31を流れる電流、「R
1」は送電コイル32の寄生抵抗、「L
1」は送電コイル32のインダクタンス、「C
1」はコンデンサ34のキャパシタンス、「I
1」は送電コイル32を流れる電流、「k
01」は駆動コイル31及び送電コイル32の結合係数、「R
2」は受電コイル41の寄生抵抗、「R
L」は負荷8の負荷抵抗、「L
2」は受電コイル41のインダクタンス、「C
2」はコンデンサ42のキャパシタンス、「I
2」は受電コイル41を流れる電流、「k
12」は送電コイル32及び受電コイル41の結合係数である。
【0054】
図8は、
図7に示す回路図に基づく等価回路図である。
図8に示す等価回路図は、駆動コイル31と送電コイル32とが共振するとともに送電コイル32と受電コイル41とが共振している状態を示している。駆動コイル31と送電コイル32との間の相互インダクタンスM
01は、k
01√(L
0L
1)、送電コイル32と受電コイル41との間の相互インダクタンスM
12は、k
12√(L
1L
2)である。
図8中の「Z
0」は、電源5と駆動コイル31の間、すなわち、送電装置3の入力端IEから負荷8側の回路のインピーダンス(負荷側インピーダンス)である。「Z
1」は、駆動コイル31と送電コイル32の間から負荷8側の回路のインピーダンスである。「Z
2」は、受電コイル41から負荷8側の回路のインピーダンスである。
図8に示す等価回路により、以下の数式1~数式3が得られる。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
そして、例えば、送電コイル32と受電コイル41とが接近するにつれて、送電コイル32と受電コイル41との間の結合係数「k12」は大きくなるところ、数式2に基づけば、インピーダンス「Z1」が大きくなり、数式3に基づけば、インピーダンス「Z0」が小さくなることが分かる。
【0059】
そこで、インピーダンスマッチング機構9は、結合係数「k12」が大きくなるにつれて受電コイル41のインダクタンス「L2」を小さくする。これにより、インピーダンス「Z1」の増加とインピーダンス「Z0」の減少とがそれぞれ抑制されて、インピーダンス整合を維持することができる。
【0060】
具体的には、反射電力検出部37が駆動コイル31側からの反射電力を検出し、コントローラ92は、インピーダンス「Z0」が所定の閾値を下回った否かをモニタリングする。すなわち、送電コイル32と受電コイル41とが所定の距離より接近したか否かを、反射電力の大きさによりモニタリングする。
【0061】
インピーダンス「Z
0」が所定の閾値を下回ったときには、コントローラ92が、
図4に示したスイッチ91e~91fの切替により、コイル領域41A、41B、41Cの何れかを選択し、受電コイル41のインダクタンス「L
2」を変更する。
【0062】
また、受電コイル41のインダクタンス「L2」の変更に加えて、駆動コイル31と送電コイル32の結合係数「k01」も変更しても構わない。換言すれば、インピーダンス「Z0」が所定の閾値を下回ったときには、制御部94が、受電部43及び駆動部35を制御しても構わない。具体的には、受電コイル41のインダクタンス「L2」を小さくするとともに、駆動コイル31と送電コイル32の結合係数「k01」を大きくすることにより、インピーダンス「Z0」の減少をさらに抑制することができる。これにより、送電コイル32と受電コイル41とがさらに長い距離を変化した場合にも対応できる。
【0063】
次に、反射電力検出部37により検出された反射電力の変化に応じて、コントローラ92が、スイッチ91e~91fの切替により、コイル領域41A、41B、41Cの何れかを選択する手順を説明する。
【0064】
まず、反射電力検出部37が、進行波電圧VF及び反射波電圧VRを検出することで、以下の数式4、数式5に基づいて、電圧反射係数(Γ)および電力反射率「S」が算出可能である。
【0065】
【0066】
【0067】
また、電圧反射係数(Γ)の理論値(Γref)は、以下の数式6で表すことができる。
【0068】
【0069】
数式4、6によれば、負荷側インピーダンス「Z0」は、以下の数式7で表すことができる。なお、数式7中の「Zs」は、電源側インピーダンスであり、予め設定された固定値である。数式7により、反射電力検出部37により検出された進行波電圧VF及び反射波電圧VRに基づいて、負荷側インピーダンス「Z0」の実測値が算出される。
【0070】
【0071】
次に、コントローラ92による受電コイル41の第1の切替方法を説明する。第1の切替方法は、進行波電圧VFと反射波電圧VRを再び計測し、例えば、電圧反射係数(Γ)又は反射率「S」が所定値以上(例えば、反射率「S」が5%以上)の場合に、数式7で求めた負荷側インピーダンス「Z0」の実測値と、数式2、3から導かれる数式8に示す負荷側インピーダンス「Z0」の理論値とを比較し、負荷側インピーダンス「Z0」の実測値に負荷側インピーダンス「Z0」の理論値を近づけるように、受電コイル41の最適なインダクタンス「L2」を算出し、コントローラ92が、スイッチ91e~91fの切替により、算出された受電コイル41のインダクタンス「L2」に対応するコイル領域41A、41B、41Cの何れかを選択する。
【0072】
【0073】
なお、数式8において、受電コイル41の切替に伴う、駆動コイル31及び送電コイル32の結合係数「k01」および送電コイル32及び受電コイル41の結合係数「k12」の変化は微小であり、受電コイル41のインダクタンス「L2」の算出に際しては無視できる。また、数式8中のα、βは定数である。
【0074】
すなわち、受電コイル41の第1の切替方法では、進行波電圧VFと反射波電圧VRを計測し、数式7から負荷側インピーダンス「Z0」の実測値を求め、負荷側インピーダンス「Z0」の理論値が負荷側インピーダンス「Z0」の実測値との差が最も小さくなるように、受電コイル41のインダクタンス「L2」を算出して、受電コイル41のコイル領域41A、41B、41Cを切り替える。
【0075】
また、受電コイル41を切り替えた後に、進行波電圧VFと反射波電圧VRを再び計測し、例えば、電圧反射係数(Γ)又は反射率「S」が所定値以上(例えば、反射率「S」が5%以上)の場合は、電圧反射係数(Γ)又は反射率「S」が所定値以下になるまで、負荷側インピーダンス「Z0」の理論値が負荷側インピーダンス「Z0」の実測値との差が最も小さくなるように、受電コイル41を再度切り替えて、受電コイル41のインダクタンス「L2」の再調整を行っても構わない。
【0076】
次に、コントローラ92による受電コイル41の第2の切替方法を説明する。第2の切替方法は、コントローラ92が、数式4、5に基づいて、実測した進行波電圧VF及び反射波電圧VRから電圧反射係数(Γ)又は電力反射率「S」を算出する。そして、コントローラ92は、予め記憶された、電圧反射係数(Γ)又は電力反射率「S」と、そのときに受電コイル41のインダクタンス「L2」が最適になるコイル領域41A、41B、41Cとの対応関係に基づき、算出された電圧反射係数(Γ)又は電力反射率「S」に対応する受電コイル41のコイル領域41A、41B、41Cを実現するように、スイッチ91e~91fを切り替える。
【0077】
次に、コントローラ92による受電コイル41の第3の切替方法を説明する。第3の切替方法は、実測した電圧反射係数(Γ)の変化状況をモニタリングし、電圧反射係数(Γ)が所定値(例えば、+0.22)以上で電力反射率「S」が所定値以上(例えば、反射率「S」が5%以上)になった場合に、受電コイル41のインダクタンス「L2」が1段階大きくなるように、受電コイル41のコイル領域41A、41B、41Cを1段階だけ切り替える。すなわち、受電コイル41のコイル領域41A、41B、41Cの切替は、コイル領域41Cをコイル領域41Bへ、コイル領域41Bをコイル領域41Aへ1段切り替える。また、コイル領域41A、41B、41Cを切り替えた後に、進行波電圧VFと反射波電圧VRから電力反射率「S」を再び算出し、電力反射率「S」が所定値以上になるまで繰り返す。
【0078】
一方、電圧反射係数(Γ)が所定値(例えば、-0.22)以上で電力反射率「S」が所定値以上(例えば、反射率「S」が5%以上)になった場合に、受電コイル41のインダクタンス「L2」が1段階小さくなるように、受電コイル41のコイル領域41A、41B、41Cを1段階切り替える。すなわち、受電コイル41のコイル領域41A、41B、41Cの切替は、コイル領域41Aをコイル領域41Bへ、コイル領域41Bをコイル領域41Cへ1段切り替える。また、コイル領域41A、41B、41Cを切り替えた後に、進行波電圧VFと反射波電圧VRから電力反射率「S」を再び算出し、電力反射率「S」が所定値以上になるまで繰り返す。
【0079】
さらに、制御部94による負荷側インピーダンス「Z
0」の調整は、上述したコイル領域41A、41B、41Cの選択による受電コイル41のインダクタンス「L
2」の調整(粗調整)を行った後に、
図2に示したスイッチ91a~91dの切替により、駆動コイル部31A、31B、31Cを選択し、駆動コイル31と送電コイル32の結合係数「k
01」の調整(微調整)を行う手順で行われても構わない。この場合、受電コイル41のインダクタンス「L
2」と駆動コイル31と送電コイル32の結合係数「k
01」を変更できるため、より高精度で広範囲なインピーダンス整合が可能となる。
【0080】
すなわち、上述した第1の切替方法の場合、実測した進行波電圧VFと反射波電圧VRから、進行波電圧VFと反射波電圧VRを計測し、例えば、反射率「S」が所定値以上(例えば、反射率「S」が5%以上)のとき、数式7に基づいて負荷側インピーダンス「Z0」の実測値を求め、数式8に基づいて算出される負荷側インピーダンス「Z0」の理論値が、負荷側インピーダンス「Z0」の実測値との差が最も小さくなるように、受電コイル41のインダクタンス「L2」及び駆動コイル31と送電コイル32の結合係数「k01」を算出する。そして、算出されたインダクタンス「L2」及び結合係数「k01」に最も近い駆動コイル部31A、31B、31C及びコイル領域41A、41B、41Cを選択し、駆動コイル31の切替及び受電コイル41の切替を行う。
【0081】
また、受電コイル41を一旦切り替えた後に、進行波電圧VFと反射波電圧VRを再度計測することで、数式5から実際の電力反射率「S」を求め、電力反射率「S」が所定値以上(例えば5%以上)の場合は、所定値以下になるまで、受電コイル41又は駆動コイル31を切り替えて、電力反射率「S」を微調整しても構わない。なお、電力反射率「S」の代わりに電力反射係数(Γ)を用いて、受電コイル41又は駆動コイル31の切替の要否を判定しても構わない。また、受電コイル41の切替又は駆動コイル31の切替の先後は、任意に変更することもできる。
【0082】
また、上述した第2の切替方法の場合、電力反射率「S」又は電力反射係数(Γ)と、最適な受電コイル41のインダクタンス「L2」及び駆動コイル31と送電コイル32の結合係数「k01」の対応関係を定めたテーブル等を予め記憶しておけば良い。
【0083】
また、上述した第3の切替方法の場合、受電コイル41のコイル領域41A、41B、41Cを順に切り替えてインダクタンス「L2」を徐々に変化させ、駆動コイル31の駆動コイル部31A、31B、31Cを順に切り替えて結合係数「k01」を変化させることにより、電力反射率「S」が所定値以下になるように調整する。駆動コイル31の駆動コイル部31A、31B、31Cの切替は、駆動コイル部31A、31B、31Cを1段ずつ、すなわち駆動コイル部31Aから駆動コイル部31Bへ、駆動コイル部31Bから駆動コイル部31A、31Cへ、駆動コイル部31Cから駆動コイル部31Bに切り替える。
【0084】
さらに、駆動コイル31の駆動コイル部31A、31B、31C及び受電コイル41のコイル領域41A、41B、41Cを切り替えた後に、進行波電圧VFと反射波電圧VRの値から電力反射率「S」を再び求め、電力反射率「S」が所定値以上になるまで繰り返す。このようにしてインピーダンス整合を行うものである。なお、電力反射率「S」の代わりに電力反射係数(Γ)を用いても、受電コイル41又は駆動コイル31の切替の要否を判定しても構わない。
【0085】
また、受電コイル41の切替又は駆動コイル31の切替の先後は、任意に変更することもできる。例えば、駆動コイル31の切替を先行させる場合、先ず、駆動コイル31の駆動コイル部31A、31B、31Cを切り替え、切替の限界(例えば、駆動コイル部31A又は31C)に達しても所定範囲の電力反射率「S」が実現できていないとき、受電コイル41を1段切り替えた後に、再び駆動コイル31の駆動コイル部31A~31Cを順に切り替える。以下同様に、電力反射率「S」が所定値以下になるまで、駆動コイル31の切替及び受電コイル41の切替を繰り返す。なお、受電コイル41と駆動コイル31の優先順は、受電コイル41を優先にしても構わない。また、駆動コイル31の切替を行わずに、受電コイル41の切替のみを行っても構わないし、受電コイル41の切替を行わずに、駆動コイル31の切替のみを行っても構わない。
【0086】
このようにして、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1Aは、送電コイル32を含む送電側共振回路を備えている送電装置3と、受電コイル41を含む受電側共振回路を有する受電部43を備え、受電コイル41が受電した電力が供給される負荷8に接続可能な受電装置4と、受電部43を制御するコントローラ92と、を備え、電源装置5Aから供給される電力を、磁界共鳴方式を利用して送電コイル32と受電コイル41との間で電力を送受電するワイヤレス給電システム1Aであって、受電コイル41は、受電コイル41に設けられた複数の端子の接続位置に応じて異なるコイル巻数を有する複数のコイル領域41A、41B、41Cを選択可能に構成され、送電装置3は、送電コイル32と磁界結合可能に設けられて送電コイル32に電力を送電する駆動コイル31を有する駆動部35と、電源装置5Aと駆動コイル31との間に配置されて駆動コイル31での反射電力を検出する反射電力検出部37と、を備え、コントローラ92は、予め記憶された、反射電力から算出される電力反射率又は電力反射係数と、受電コイル41のインダクタンスとの対応関係に基づき、電力反射率又は電力反射係数に応じて、複数の端子の切替により複数のコイル領域41A、41B、41Cを切り替えて受電コイル41のインダクタンスを変更する構成とした。
【0087】
この構成により、反射電力検出部37が検出した反射電力から算出される電力反射率又は電力反射係数に応じて、最適なコイル領域41A、41B、41Cを設定可能なことにより、負荷側インピーダンスと送電装置3の入力端IEから電源装置5A側の回路のインピーダンスである入力側インピーダンスとの差分が緩和されるため、入力端IEにおける反射波の発生が抑制され、送電効率の低下や、それに伴うシステム障害の虞を回避することができる。
【0088】
また、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1Aは、コントローラ92が、負荷側インピーダンスの実測値と電力反射率又は電力反射係数との関係式、及び負荷側インピーダンスの理論値と受電コイル41のインダクタンスとの関係式に基づいて、電力反射率又は電力反射係数から算出される負荷側インピーダンスの実測値に負荷側インピーダンスの理論値を近づけるように、受電コイル41のインダクタンスを変更する構成とした。
【0089】
この構成により、電力反射率又は電力反射係数から算出される負荷側インピーダンスの実測値に負荷側インピーダンスの理論値が近づくように、最適なコイル領域41A、41B、41Cが設定されることにより、入力端IEにおける反射波の発生を抑制することができる。
【0090】
また、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1Aは、コントローラ92が、受電コイル41のインダクタンスの変更後に反射電力検出部37が再検出した反射電力から算出された電力反射率又は電力反射係数が所定値より大きい場合、負荷側インピーダンスの実測値に負荷側インピーダンスの理論値を近づけるように、受電コイル41のインダクタンスを再び変更する構成とした。
【0091】
この構成により、ワイヤレス給電システム1周囲の環境や外乱に起因して負荷側インピーダンスの理論値が必ずしも実測値と一致しない場合であっても、電力反射率又は電力反射係数が所定値以下になるように、コイル領域41A、41B、41Cの切替を繰り返し行うことで、入力端IEにおける反射波の発生をさらに抑制することができる。
【0092】
また、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1Aは、コントローラ92が、複数の端子の切替により、選択されたコイル領域41A、41B、41Cのインダクタンス及び選択されたコイル領域41A、41B、41Cと直列に配置されたコンデンサ42のキャパシタンスを送電コイル32と受電コイル41との間での磁界共鳴を維持可能に調整する構成とした。
【0093】
この構成により、コイル領域41A、41B、41Cの何れが選択された場合であっても、送電コイル32と受電コイル41との磁界共鳴を維持できるように、選択されたコイル領域41A、41B、41Cのインダクタンスに応じたコンデンサ42のキャパシタンスが予め設定されているため、磁界共鳴を簡便に維持することができる。
【0094】
また、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1Aは、駆動コイル31は、磁界共鳴方式を利用して送電コイル32に電力を送電しており、コントローラ92が、送電コイル32と駆動コイル31との磁界結合における結合強さを変更するように駆動部35を制御する構成とした。
【0095】
この構成により、駆動コイル31及び送電コイル32の磁界結合の結合強さの強弱を変更することにより、駆動部35内の回路のインピーダンスが増減して、入力側インピーダンスと負荷側インピーダンスとの差分が緩和されるため、入力端IEにおける反射波の発生が抑制され、送電効率の低下や、送電電力の減少に起因するシステム障害を回避することができる。
【0096】
また、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1Aは、送電コイル32を含む送電側共振回路を備えている送電装置3と、受電コイル41を含む受電側共振回路を有する受電部43を備え、受電コイル41が受電した電力が供給される負荷8に接続可能な受電装置4と、受電部43を制御するコントローラ92と、を備え、電源装置5Aから供給される電力を、磁界共鳴方式を利用して送電コイル32と受電コイル41との間で電力を送受電するワイヤレス給電システム1Aであって、受電コイル41は、受電コイル41に設けられた複数の端子の接続位置に応じて異なるコイル巻数を有する複数のコイル領域41A、41B、41Cを選択可能に構成され、送電装置3は、送電コイル32と磁界結合可能に設けられて送電コイル32に電力を送電する駆動コイル31を有する駆動部35と、電源装置5Aと駆動コイル31との間に配置されて駆動コイル31での反射電力を検出する反射電力検出部37と、を備え、コントローラ92は、予め記憶された、反射電力から算出される電力反射率又は電力反射係数と受電コイル41のコイル領域41A、41B、41Cとの対応関係に基づき、算出された電力反射率又は電力反射係数に対応する受電コイル41のコイル領域41A、41B、41Cを、複数の端子を切り替えて選択する構成とした。
【0097】
この構成により、予め設定された対応関係に基づいて、反射電力検出部37が検出した反射電力から算出される電力反射率又は電力反射係数に応じたコイル領域41A、41B、41Cが設定されることにより、負荷側インピーダンスと送電装置3の入力端IEから電源装置5A側の回路のインピーダンスである入力側インピーダンスとの差分が緩和されるため、入力端IEにおける反射波の発生が抑制され、送電効率の低下や、それに伴うシステム障害の虞を回避することができる。
【0098】
また、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1Aは、送電コイル32を含む送電側共振回路を備えている送電装置3と、受電コイル41を含む受電側共振回路を有する受電部43を備え、受電コイル41が受電した電力が供給される負荷8に接続可能な受電装置4と、受電部43を制御するコントローラ92と、を備え、電源装置5Aから供給される電力を、磁界共鳴方式を利用して送電コイル32と受電コイル41との間で電力を送受電するワイヤレス給電システム1Aであって、受電コイル41は、受電コイル41に設けられた複数の端子の接続位置に応じて異なるコイル巻数を有する複数のコイル領域41A、41B、41Cを選択可能に構成され、送電装置3は、送電コイル32と磁界結合可能に設けられて送電コイル32に電力を送電する駆動コイル31を有する駆動部35と、電源装置5Aと駆動コイル31との間に配置されて駆動コイル31での反射電力を検出する反射電力検出部37と、を備え、コントローラ92は、反射電力から算出される電力反射係数が所定値より大きい場合、受電コイル41のインダクタンスが切替前から1段階大きくなるように、複数の端子の切替によりコイル領域41A、41B、41Cを切り替え、反射電力から算出される電力反射係数が所定値より小さい場合、受電コイル41のインダクタンスが切替前から1段階小さくなるように、複数の端子の切替によりコイル領域41A、41B、41Cを切り替える構成とした。
【0099】
この構成により、反射電力検出部37が検出した反射電力から算出される電力反射係数に応じて、電力反射率が小さくなるように、コイル領域41A、41B、41Cを1段階切り替えることにより、負荷側インピーダンスと送電装置3の入力端IEから電源装置5A側の回路のインピーダンスである入力側インピーダンスとの差分が緩和されるため、入力端IEにおける反射波の発生が抑制され、送電効率の低下や、それに伴うシステム障害の虞を回避することができる。
【0100】
また、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1Aは、送電コイル32を含む送電側共振回路と、送電コイル32と磁界結合可能に設けられて送電コイル32に電力を送電する駆動コイル31を有する駆動部35と、電源装置5Aと駆動コイル31との間に配置されて、駆動コイル31での反射電力を検出する反射電力検出部37と、を備えている送電装置3と、受電コイル41を含む受電側共振回路を有する受電部43を備え、受電コイル41が受電した電力が供給される負荷8に接続可能な受電装置4と、駆動部35を制御するコントローラ92と、を備え、電源装置5Aから供給される電力を、磁界共鳴方式を利用して送電コイル32と受電コイル41との間で電力を送受電するワイヤレス給電システム1Aであって、駆動コイル31は、複数の駆動コイル部31A、31B、31Cを選択可能に構成され、磁界共鳴方式を利用して送電コイル32に電力を送電し、コントローラ92は、予め記憶された、反射電力から算出される電力反射率又は電力反射係数と、送電コイル32及び駆動コイル31の磁界結合における結合強さとの対応関係に基づき、電力反射率又は電力反射係数に応じて、複数の駆動コイル部31A、31B、31Cを切り替えて送電コイル32及び駆動コイル31の磁界結合における結合強さを変更する構成とした。
【0101】
この構成により、予め設定された対応関係に基づいて、反射電力検出部37が検出した反射電力から算出される電力反射率又は電力反射係数に応じた駆動コイル部31A、31B、31Cが設定されることにより、負荷側インピーダンスと送電装置3の入力端IEから電源装置5A側の回路のインピーダンスである入力側インピーダンスとの差分が緩和されるため、入力端IEにおける反射波の発生が抑制され、送電効率の低下や、それに伴うシステム障害の虞を回避することができる。
【0102】
また、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1Aを用いたワイヤレス給電方法は、送電コイル32を含む送電側共振回路を備えている送電装置3と、受電コイル41を含む受電側共振回路を有する受電部43を備え、受電コイル41が受電した電力が供給される負荷8に接続可能な受電装置4と、受電部43を制御するコントローラ92と、を備え、電源装置5Aから供給される電力を、磁界共鳴方式を利用して送電コイル32と受電コイル41との間で電力を送受電するワイヤレス給電システム1Aを用いたワイヤレス給電方法であって、受電コイル41は、受電コイル41に設けられた複数の端子の接続位置に応じて異なるコイル巻数を有する複数のコイル領域41A、41B、41Cを選択可能に構成され、送電装置3は、送電コイル32と磁界結合可能に設けられて送電コイル32に電力を送電する駆動コイル31を有する駆動部35と、電源装置5Aと駆動コイル31との間に配置されて、駆動コイル31での反射電力を検出する反射電力検出部37と、を備え、コントローラ92は、予め記憶された、反射電力から算出される電力反射率又は電力反射係数、送電装置3の入力端IEから負荷8側の回路のインピーダンスである負荷側インピーダンス、及び受電コイル41のインダクタンスの対応関係に基づき、電力反射率又は電力反射係数に応じて、複数の端子の切替によりコイル領域41A、41B、41Cを切り替えて受電コイル41のインダクタンスを変更する構成とした。
【0103】
この構成により、反射電力検出部37が検出した反射電力から算出される電力反射率又は電力反射係数に応じて、最適なコイル領域41A、41B、41Cを設定可能なことにより、負荷側インピーダンスと送電装置3の入力端IEから電源装置5A側の回路のインピーダンスである入力側インピーダンスとの差分が緩和されるため、入力端IEにおける反射波の発生が抑制され、送電効率の低下や、それに伴うシステム障害の虞を回避することができる。
【0104】
また、本実施形態に係るワイヤレス給電方法は、駆動コイル31は、磁界共鳴方式を利用して送電コイル32に電力を送電し、コントローラ92が、送電コイル32と駆動コイル31との磁界結合における結合強さを変更するように駆動部35を制御する構成とした。
【0105】
この構成により、駆動コイル31及び送電コイル32の磁界結合の結合強さの強弱を変更することにより、駆動部35内の回路のインピーダンスが増減して、入力側インピーダンスと負荷側インピーダンスとの差分が緩和されるため、入力端IEにおける反射波の発生が抑制され、送電効率の低下や、送電電力の減少に起因するシステム障害を回避することができる。
【0106】
また、本実施形態に係るワイヤレス給電方法は、コントローラ92による負荷側インピーダンスの調整は、受電コイル41の端子を切り替えて粗調整した後に、駆動部35を制御して微調整を行う構成とした。
【0107】
この構成により、受電コイル41のコイル領域41A、41B、41Cを切り替えて負荷側インピーダンスを粗調整した後に、駆動部35を制御して負荷側インピーダンスの微調整を行うことにより、負荷側インピーダンスを精度良く制御することができる。
【0108】
また、
図1に図示したワイヤレス給電システム1Aでは、反射電力検出部37が、送電装置3内に配置されるとともに、送電装置3の入力端IEと駆動コイル31との間に設けられているが、反射電力検出部37を配置する位置はこれに限られない。
【0109】
例えば、
図9に図示したワイヤレス給電システム1Bのように、反射電力検出部37を電源装置5A内に配置するとともに、交流電源5と送電装置3の入力端IEの間に反射電力検出部37を配置しても構わない。また、
図10に図示したワイヤレス給電システム1Cのように、反射電力検出部37内に送電装置3の入力端IEを設けるとともに、反射電力検出部37を電源装置5Aと送電装置3との間に配置しても構わない。このようなワイヤレス給電システム1B、1Cであっても、ワイヤレス給電システム1Aと同様に、負荷側インピーダンスと入力側インピーダンスとの差分を緩和し、入力端IEにおける反射波の発生が抑制され、送電効率の低下や、送電電力の減少に起因するシステム障害を回避することができる。ワイヤレス給電システム1A、1B、1Cの何れの構成を採用するかは、ワイヤレス給電システムを設置する場所や環境、及び給電対象物2や送電装置3の構成に応じて適宜選択すれば良い。
【0110】
また、反射電力検出部37は、寄生抵抗又は寄生インダクタ等によるインピーダンスを有しているため、反射電力検出部37による検出値には誤差が生ずる。このような検出値の誤差の大きさは、給電対象物2の構成(例えば、インピーダンス変動が相対的に大きいモータ駆動やバッテリ充電、又はインピーダンス変動が相対的に小さい家電製品等の稼働)により異なることが想定される。そこで、ワイヤレス給電システム1A、1B、1Cを構築し、外部テスターで入力端IEにおける電力測定や電源側/負荷側の各インピーダンス測定を各システムに対して行い、例えば反射電力検出部37による誤差が最小もしくは誤差変動が最小の形態を、給電対象物2の構成に応じて適宜選択しても構わない。なお、反射電力検出部37による検出値の誤差自体は設計段階でオフセット設計をしたり、個々の製品の出荷検査においてオフセット調整する等して最適調整を行っても構わない。
【0111】
次に、本実施形態の変形例について説明する。なお、各種変形例は、以下に説明する構成を除いた他の構成は上述した実施形態の構成と同様である。
【0112】
<変形例1>
本変形例に係る駆動コイル31は、例えば、
図11(a)~(c)に示すように、球状に配置された8つの駆動コイル部31A~31Hを備えたものであっても構わない。
【0113】
駆動コイル31は、中心が一致した状態で互いに傾斜する駆動コイル部31A~31Hから成る。駆動コイル部31A~31Hは、1つのコイルを8つに分割したものであり、実質的に直列に接続されている。駆動コイル部31A~31H間の接続関係の詳細は省略するが、
図2と同様に図示しないスイッチ等によって、交流電源5からの電力を駆動コイル部31A~31Hの少なくとも何れか1つに供給可能に接続されている。
【0114】
図11(a)に示すように、駆動コイル部31Aは、コイル軸31aと送電コイル32のコイル軸32aとが略一致した状態で、すなわち送電コイル32に対して傾斜することなく送電コイル32内に収容されている。また、
図11(b)に示すように、駆動コイル部31Cは、送電コイル32に対して約45度傾いた状態で、その一部が送電コイル32内に収容されている。そして、
図11(c)に示すように、駆動コイル部31Eは、送電コイル32に対して約90度傾いた状態で、その一部が送電コイル32内に収容されている。さらに、駆動コイル部31B、31D、31F~31Hは、送電コイル32に対して約22.5度、約67.5度、約112.5度、約135度、約157.5度だけそれぞれ傾いた状態で、その一部が送電コイル32内に収容されている。
【0115】
このとき、駆動コイル31と送電コイル32との磁界結合は、対向する面積が大きいほど密となる。すなわち、駆動コイル部31Aのコイル軸31aと送電コイル32のコイル軸32aとが同軸上に位置するため、駆動コイル部31Aと送電コイル32との磁界結合が最も密になる。駆動コイル部31Eは、送電コイル32との磁界結合が最も疎になる。
【0116】
このような構成により、例えば、駆動コイル部31A、31C、31Eの3つを適宜切り替えて、インピーダンスマッチング処理を実行することができる。すなわち、負荷側インピーダンスが入力側インピーダンスに対して大きい状態では、
図11(a)に示すように駆動コイル部31Aに電力を供給することにより、駆動コイル31と送電コイル32との磁界結合が密になり、送電装置3内の回路のインピーダンスが減少する。その結果、入力端IEにおける負荷側インピーダンスが小さくなり、入力側インピーダンスとの差分が緩和される。
【0117】
一方、負荷側インピーダンスが入力側インピーダンスに対して小さい状態では、
図11(b)に示すように、駆動コイル部31Aと比べて、送電コイル32に対して傾斜する駆動コイル部31Cに電力を供給することにより、駆動コイル31と送電コイル32との磁界結合が疎になり、送電装置3内の回路のインピーダンスが増大する。その結果、入力端IEにおける負荷側インピーダンスが大きくなり、入力側インピーダンスとの差分が緩和される。
【0118】
また、負荷側インピーダンスがさらに低下すると、
図11(c)に示すように、送電コイル32に対して直交する駆動コイル部31Eに電力を供給することにより、駆動コイル31と送電コイル32との磁界結合がさらに疎になり、送電装置3内の回路のインピーダンスがさらに増大し、その結果、入力端IEにおける負荷側インピーダンスが大きくなり、入力側インピーダンスとの差分が緩和される。
【0119】
このような構成により、駆動コイル部31A~31Hの少なくとも何れか1つに選択的に電力が供給されるため、駆動コイル31と送電コイル32との結合強さを調整することができる。
【0120】
また、本変形例に係る球状の駆動コイル31を構成する駆動コイル部の個数は、8つに限定されず、2つ以上であればいくつであっても構わない。また、本変形例に係る駆動コイル部31A~31Hの送電コイル32に対する傾きは、0度~180度の範囲で設定しているが、コイルの位相を考慮して、-90度~+90度の範囲で設定しても構わない。
【0121】
また、駆動コイル31は、送電コイル32内に収容されたものに限定されず、送電コイル32外に配置されても構わない。また、駆動コイル部31A~31Hの一部が送電コイル32内に配置され、その他の駆動コイル部31A~31Hが送電コイル32外に配置されても構わない。なお、駆動コイル31の送電コイル32に対する傾きが、結合係数k01が等比級数になるように切り替え可能に構成されることにより、各駆動コイル31の角度でのインピーダンス調整範囲が略一定になり、インピーダンス整合をさらに安定して行うことができる。
【0122】
<変形例2>
インピーダンスマッチング機構9は、駆動コイル31を送電コイル32に対して相対的に移動させるコイル移動機構であっても構わない。
【0123】
このようなコイル移動機構として、例えば、コイル軸31a、31b、31cとコイル軸32aとの略平行状態を維持したまま、各コイル軸31a、31b、31cがコイル軸32aに対して相対的に離間又は近接(一致)するように駆動コイル部31A、31B、31Cをコイル軸32aと垂直な方向にスライドさせるものが考えられる。
【0124】
ここで、コイル軸31a、31b、31cと送電コイル32のコイル軸32aとが同軸上に位置する場合には、送電コイル32との磁界結合が密になる(結合強さ(結合係数)が大きくなる)。一方、コイル軸31a、31b、31cが、送電コイル32のコイル軸32aに対してコイル軸31aに直行する方向にオフセットしている場合には、送電コイル32との磁界結合が疎となる(結合強さ(結合係数)が小さくなる)。
【0125】
そして、コイル移動機構によって駆動コイル31を送電コイル32に対して相対的移動させてインピーダンスを大まかに調整した上で、スイッチ91a~91dの切替制御によってインピーダンスを微調整することにより、インピーダンスを最適化しても構わない。この場合、インピーダンスの微調整を高速に行うことができるため、インピーダンスの急激な変化した場合でもスムーズに最適化することができる。
【0126】
<変形例3>
上述した変形例2では、コイル軸31a、31b、31cとコイル軸32aとの略平行状態を維持したまま駆動コイル部31A、31B、31Cをコイル軸32aと垂直な方向にスライドさせるコイル移動機構を例示したが、コイル移動機構は、駆動コイル部31A、31B、31Cをコイル軸31a、32a、33a及びコイル軸32aの軸方向と平行に移動させる構成であっても構わない。
【0127】
ここで、駆動コイル部31A、31B、31Cは、送電コイル32に接近するほど送電コイル32との磁界結合が密になり(結合係数が大きくなり)、駆動コイル部31A、31B、31Cは、送電コイル32から離れるほど送電コイル32との磁界結合が疎になる(結合係数が小さくなる)。
【0128】
そして、コイル移動機構によって駆動コイル31を送電コイル32に対して相対的移動させてインピーダンスを大まかに調整した上で、スイッチ91a~91dの切替制御によってインピーダンスを微調整することにより、インピーダンスを最適化しても構わない。この場合、インピーダンスの微調整を高速に行うことができるため、インピーダンスの急激な変化した場合でもスムーズに最適化することができる。
【0129】
<変形例4>
上述した実施形態では、コイル軸31a、31b、31cが略同軸上に配置された駆動コイル部31A、31B、31Cから成る駆動コイル31を例示したが、駆動コイル31の構成はこれに限定されるものではない。
【0130】
例えば、駆動コイル31は、コイル軸31a、31b、31cが略平行で互いに離間するようにオフセットして配置された駆動コイル部31A、31B、31Cを備えたものであっても構わない。
【0131】
このとき、駆動コイル31と送電コイル32との磁界結合は、対向する面積が大きいほど密となる。そして、スイッチ91a~91dの切替制御により、駆動コイル部31A、31B、31Cの少なくとも何れか1つに選択的に電力が供給されるため、駆動コイル31と送電コイル32との磁界結合の結合強さの強弱(磁界結合の疎密)を調整することができる。
【0132】
<変形例5>
上述した実施形態では、略同形に形成された駆動コイル部31A、31B、31Cから成る駆動コイル31を例示したが、駆動コイル部31A、31B、31Cは、互いに異なる形状であっても構わない。
【0133】
例えば、駆動コイル31は、コイル軸31a、31b、31cが略同軸上に配置されるとともに、駆動コイル部31A、31B、31Cがこの順でコイル径が徐々に小径に設定され、且つコイル高さが高くなるように形成され、略同一平面上でコイル径が拡縮する螺旋状に構成されても構わない。
【0134】
このとき、駆動コイル31と送電コイル32との磁界結合は、コイル径の差が少ないほど密となる。そして、スイッチ91a~91dの切替制御により、駆動コイル部31A、31B、31Cの少なくとも何れか1つに選択的に電力が供給されるため、駆動コイル31と送電コイル32との結合強さを調整することができる。
【0135】
<変形例6>
また、駆動コイル31は、コイル軸31a、31b、31cが略同軸上に配置されるとともに、駆動コイル部31A、31B、31Cが略同一平面上に配置され、さらに、駆動コイル部31A、31B、31Cがこの順でコイル径が徐々に小径に設定されて、同一平面上で外周から中心に向かって徐々にコイル径が小さくなるように構成されても構わない。
【0136】
このとき、駆動コイル31と送電コイル32との磁界結合は、コイル径の差が少ないほど密となる。そして、スイッチ91a~91dの切替制御により、駆動コイル部31A、31B、31Cの少なくとも何れか1つに選択的に電力が供給されるため、駆動コイル31と送電コイル32との磁界結合の結合強さの強弱(磁界結合の疎密)を調整することができる。
【実施例0137】
<実施例1>
上述したワイヤレス給電システム1Aを用いて、送電コイル32及び受電コイル41の距離を変化させた場合に、駆動コイル31のコイル部及び受電コイル41のコイル領域を自動で切り替え、インピーダンス整合をとった実験(実施例1)について説明する。なお、本実施例1では、負荷抵抗を50Ωで一定とした。また、電源周波数を150kHzに設定した。また、本実験で用いた駆動コイル31、送電コイル32及び受電コイル41の構造を
図12に示す。
【0138】
・駆動コイル
駆動コイル31は、直径300mmに形成されており、直径350mmの送電コイル32内に収容されている。駆動コイル31は、球状に配置された異なる傾きの6つの駆動コイル部31A~31Fから成る。駆動コイル部31A~31Fは、結合係数「k01」が、√(78/32)すなわち1.56倍の間隔になるように以下のように配置されている。
・駆動コイル部31A
結合係数「k01」:約0.45、傾斜角度:0°
・駆動コイル部31B
結合係数「k01」:約0.41、傾斜角度:22°
・駆動コイル部31C
結合係数「k01」:約0.26、傾斜角度:49°
・駆動コイル部31D
結合係数「k01」:約0.17、傾斜角度:64°
・駆動コイル部31E
結合係数「k01」:約0.11、傾斜角度:73°
・駆動コイル部31F
結合係数「k01」:約0.07、傾斜角度:79°
【0139】
駆動コイル部31A~31Fは、素線径0.04mm、直径0.9mmのリッツ線を用いており、インダクタンスを278μH、コンデンサを4.05nFに設定した。
【0140】
・受動コイル
受電コイル41は、4つのコイル領域41A、41B、41C、41Dを選択可能に構成されている。受電コイル41は、直径350mmに設定され、素線径0.04mm、直径0.9mmのリッツ線から成る。各コイル領域41A、41B、41C、41Dのコイル巻数、インダクタンス、コンデンサの抵抗値は、以下の通りに設定した。
・コイル領域41A
コイル巻数:56、インダクタンス:1488μH、コンデンサ:0.756nF
・コイル領域41B
コイル巻数:28、インダクタンス:744μH、コンデンサ:1.512nF
・コイル領域41C
コイル巻数:10、インダクタンス:266μH、コンデンサ:4.234nF
・コイル領域41D
コイル巻数:5、インダクタンス:133μH、コンデンサ:8.367nF
【0141】
また、駆動コイル31を含む共振回路、送電コイル32を含む共振回路及び受電コイル41を含む共振回路の各共振周波数は、それぞれ150kHzに設定されている。
【0142】
・コイル切替方式
駆動コイル31及び受電コイル41の切替は、上述した第1の切替方法により行った。すなわち、まず、コントローラ92は、反射電力検出部37が検出した進行波電圧VF及び反射波電圧VR並びに数式4、5に基づいて、反射率「S」を算出する。
【0143】
反射率「S」が所定値(例えば、5%)以上の場合は、コントローラ92は、進行波電圧VF及び反射波電圧VR並びに数式6に基づいて、負荷側インピーダンス「Z0」の実測値を算出する。
【0144】
次に、コントローラ92は、負荷側インピーダンス「Z0」の実測値に対して数式8から算出される負荷側インピーダンス「Z0」の理論値の差が所定範囲内に収まるように、駆動コイル31の駆動コイル部31A~31Fを切り替えることにより、駆動コイル31と送電コイル32の結合係数「k01」を変更し、受電コイル41のコイル領域41A~41Dを切り替えることにより、受電コイル41のインダクタンス「L2」を変更する。
【0145】
さらに、受電コイル41のコイル領域41A~41Dを切り替えた後に、反射電力検出部37が、進行波電圧VFと反射波電圧VRを再び検出し、コントローラ92が、反射電力検出部37が検出した進行波電圧VF及び反射波電圧VR並びに数式4、5に基づいて、反射率「S」を再び算出する。
【0146】
電力反射率「S」が所定値(例えば、5%)以上を維持している場合は、上述した1回目の駆動コイル31及び受電コイル41の切替と同様に、電力反射率「S」が所定値以下に至るまで、駆動コイル31及び受電コイル41の切替を繰り返して微調整を行った。
【0147】
・実験手順
まず、駆動コイル31を駆動コイル部31Bに設定し、受電コイル41をコイル領域41Cに設定した状態で、送電コイル32と受電コイル41との距離を0mmで約12秒維持した後に、約1秒かけて送電コイル32と受電コイル41との距離を350mmまで離間させた。続いて、送電コイル32と受電コイル41との距離を350mmで約15秒維持した後に、約1秒かけて送電コイル32と受電コイル41との距離を0mmまで接近させた。本実験における電力反射率の推移を
図13に示す。また、本実験において、駆動コイル31の駆動コイル部31A~31F及び受電コイル41のコイル領域41A~41Dの切替の履歴を
図14に示す。
【0148】
図14において、左側縦軸の「1」~「6」は、駆動コイル31の駆動コイル部31A~31Fに対応しており、駆動コイル部31Aが「1」、駆動コイル部31Bが「2」、駆動コイル部31Cが「3」、駆動コイル部31Dが「4」、駆動コイル部31Eが「5」、駆動コイル部31Fが「6」にそれぞれ対応している。また、
図14において、右側縦軸の「1」~「4」は、受電コイル41のコイル領域41A~41Dを対応しており、コイル領域41Aが「4」、コイル領域41Bが「3」、コイル領域41Cが「2」、コイル領域41Dが「1」にそれぞれ対応している。
【0149】
・実験結果
図13によれば、送電コイル32と受電コイル41との距離を0mmから350に離間した際に、電力反射率が約0.55(55%)まで上昇したが、約1秒程度で0,05以下(5%以下)まで低下し、以降はその状態を維持していることが分かる。また、送電コイル32と受電コイル41との距離を350mmから0mmに接近した際に、電力反射率が約0.52(52%)まで上昇したが、約1秒程度で0,05以下(5%以下)まで低下し、以降はその状態を維持していることが分かる。
【0150】
また、
図14によれば、送電コイル32と受電コイル41との距離を0mmから350に離間した際に、上述した微調整も含めて、駆動コイル31が3回、受電コイル41が2回それぞれ切り替わったことが分かる。また、送電コイル32と受電コイル41との距離を350mmから0mmに接近した際に、駆動コイル31が3回、受電コイル41が2回それぞれ切り替わったことが分かる。
【0151】
このようにして、本実験結果によれば、送電コイル32と受電コイル41との距離を離間させた場合又は接近させた場合の何れであっても、1秒以内に電力反射率が5%以下まで低下しており、送電コイル32と受電コイル41との距離の変化に対して、非常にスムーズにインピーダンス整合が行われたことが分かる。
【0152】
<実施例2>
実施例1と同様に、ワイヤレス給電システム1Aを用いて、送電コイル32と受電コイル41の距離を変化させた場合に、自動で駆動コイル31の駆動コイル部31A~31F及び受電コイル41のコイル領域41A~41Dを切り替え、インピーダンス整合をとる実験(実施例2)を行った。
【0153】
本実験における駆動コイル31及び受電コイル41の切替は、上述した第3の切替方法により行った。すなわち、まず、コントローラ92は、反射電力検出部37が検出した進行波電圧VFと反射波電圧VRの値から数式4、5に基づいて、電力反射係数(Γ)及び反射率「S」を算出する。
【0154】
電力反射係数(Γ)が所定値(例えば、+0.22)以上で電力反射率「S」が所定値(例えば、5%)以上の場合に、駆動コイル31の駆動コイル部31A~31Fおよび受電コイル41のコイル領域41A~41Dを順に一段階ずつ切り替える。なお、本実験では、駆動コイル31の切替を受電コイル41の切替に優先して行った。
【0155】
コントローラ92は、反射電力検出部37が検出した進行波電圧VFと反射波電圧VRの値から数式4、5に基づいて、電力反射係数(Γ)及び反射率「S」を再び算出する。
【0156】
電力反射率「S」が所定値(例えば、5%)以上を維持している場合は、上述した1回目の駆動コイル31及び受電コイル41の切替と同様に、電力反射率「S」が所定値以下に至るまで、駆動コイル31及び受電コイル41の切替を繰り返して微調整を行った。
【0157】
・実験手順
まず、駆動コイル31を駆動コイル部31Bに設定し、受電コイル41をコイル領域41Cに設定した状態で、送電コイル32と受電コイル41との距離を0mmで約11秒維持した後に、約1秒かけて送電コイル32と受電コイル41との距離を350mmまで離間させた。続いて、送電コイル32と受電コイル41との距離を350mmで約15秒維持した後に、約1秒かけて送電コイル32と受電コイル41との距離を0mmまで接近させた。本実験における電力反射率の推移を
図15に示す。また、本実験において、駆動コイル31の駆動コイル部31A~31F及び受電コイル41のコイル領域41A~41Dの切替の履歴を
図16に示す。
【0158】
・実験結果
図13によれば、送電コイル32と受電コイル41との距離を0mmから350に離間した際に、電力反射率が約0.20(20%)まで上昇したが、約2秒程度で0,05以下(5%以下)まで低下し、以降はその状態を維持していることが分かる。また、送電コイル32と受電コイル41との距離を350mmから0mmに接近した際に、電力反射率は約0.90(90%)まで上昇したが、約5秒程度で0,05以下(5%以下)まで低下し、以降はその状態を維持していることが分かる。
【0159】
また、
図16によれば、送電コイル32と受電コイル41との距離を0mmから350に離間した際に、上述した微調整も含めて、駆動コイル31が2回、受電コイルが2回それぞれ切り替わったことが分かる。また、送電コイル32と受電コイル41との距離を350mmから0mmに接近した際に、駆動コイル31が13回、受電コイルが2回それぞれ切り替わったことが分かる。
【0160】
このようにして、本実験結果によれば、送電コイル32と受電コイル41との距離を離間させた場合又は接近させた場合の何れであっても、5秒以内に電力反射率が5%以下まで低下しており、送電コイル32と受電コイル41との距離の変化に対して、概ねスムーズにインピーダンス整合が行われていると言える。ただし、実施例1の実験結果と比較すると、本実験では、電力反射率が5%以下で安定するまでの時間が長くなっており、実施例1の方が応答性が良いことが分かる。
【0161】
<実施例3>
実施例1と同様に、ワイヤレス給電システム1Aを用いて、システム立ち上げ時におけるインピーダンスが整合するまでの状態を確認する実験(実施例3)を行った。本実験における駆動コイル31及び受電コイル41の切替は、実施例1と同様に第1の切替方法で行った。
【0162】
・実験手順
まず、駆動コイル31を駆動コイル部31Aに設定し、受電コイル41をコイル領域41Aに設定し、この初期状態から、送電コイル32と受電コイル41との距離を50mm、負荷抵抗値50Ωで電源をONにした。本実験における電力反射率の推移を
図17に示す。また、本実験において、駆動コイル31の駆動コイル部31A~31F及び受電コイル41のコイル領域41A~41Dの切替の履歴を
図18に示す。
【0163】
・実験結果
図17によれば、電力反射率は、初期状態では約0.70(70%)であったが、約0.8秒程度で0,05以下(5%以下)まで低下し、以降はその状態を維持していることが分かる。また、
図18によれば、駆動コイル31が2回、受電コイル41が1回それぞれ切り替わったことが分かる。
【0164】
このようにして、本実験結果によれば、1秒以内に電力反射率が5%以下のインピーダンスが整合した状態に至っており、非常にスムーズにシステム立ち上げが行われたことが分かる。
【0165】
<実施例4>
実施例1と同様に、ワイヤレス給電システム1Aを用いて、システム立ち上げ時におけるインピーダンスが整合するまでの状態を確認する実験(実施例4)を行った。本実験における駆動コイル31及び受電コイル41の切替は、実施例2と同様に第3の切替方法で行った。
【0166】
・実験手順
まず、駆動コイル31を駆動コイル部31Aに設定し、受電コイル41をコイル領域41Aに設定し、この初期状態から、送電コイル32と受電コイル41との距離を50mm、負荷抵抗値50Ωで電源をONにした。本実験における電力反射率の推移を
図19に示す。また、本実験において、駆動コイル31の駆動コイル部31A~31F及び受電コイル41のコイル領域41A~41Dの切替の履歴を
図20に示す。
【0167】
・実験結果
図19によれば、電力反射率は、初期状態では約0.62(62%)であり、一旦0.90(90%)まで上昇した後に、約2.8秒程度で0,05以下(5%以下)まで低下し、以降はその状態を維持していることが分かる。また、
図20によれば、駆動コイル31が10回、受電コイル41が2回それぞれ切り替わったことが分かる。
【0168】
このようにして、本実験結果によれば、3秒以内に電力反射率が5%以下のインピーダンスが整合した状態に至っており、概ねにスムーズにシステム立ち上げが行われたことが分かる。ただし、実施例3の実験結果と比較すると、本実験では、電力反射率が5%以下で安定するまでの時間が長くなっており、実施例3の方が良好な応答性を示すことが分かる。
【0169】
<実施例5>
実施例1と同様に、ワイヤレス給電システム1Aを用いて、送電コイル32と受電コイル41とのコイル間距離を50mmに固定した状態で、負荷8における負荷抵抗の値を変更させた場合に、自動で駆動コイル31の駆動コイル部31A~31F及び受電コイル41のコイル領域41A~41Dを切り替え、インピーダンス整合をとる実験(実施例5)を行った。本実験における駆動コイル31及び受電コイル41の切替は、実施例2と同様に第3の切替方法で行った。また、電源周波数は150kHzとした。
【0170】
・実験手順
まず、駆動コイル31を駆動コイル部31Cに設定し、受電コイル41をコイル領域42Cに設定し、この初期状態から、負荷抵抗を50Ωで約5秒維持した後に、負荷抵抗を500Ωまで上昇させる。続いて、負荷抵抗を500Ωで約6秒維持した後に、再び負荷抵抗を50Ωに下降させた。本実験における電力反射率の推移を
図21に示す。また、本実験において、駆動コイル31の駆動コイル部31A~31F及び受電コイル41のコイル領域41A~41Dの切替の履歴を
図22に示す。
【0171】
・実験結果
図21によれば、電力反射率は、負荷抵抗が50Ωから500Ωに上昇した際に、約0.41(41%)まで上昇しているが、約2秒程度で0,05以下(5%以下)まで低下し、以降はその状態を維持していることが分かる。また、電力反射率は、負荷抵抗が500Ωから50Ωに下降した際に、約0.91(91%)まで上昇しているが、約4秒程度で0,05以下(5%以下)まで低下し、以降はその状態を維持していることが分かる。
【0172】
また、
図22によれば、負荷抵抗が50Ωから500Ωに上昇した際に、駆動コイル31が2回、受電コイルが2回それぞれ切り替わったことが分かる。また、負荷抵抗が500Ωから50Ωに下降した際に、駆動コイル31が10回、受電コイルが2回それぞれ切り替わったことが分かる。
【0173】
このようにして、本実験結果によれば、負荷抵抗を上昇させた場合又は下降させた場合の何れであっても、5秒以内に電力反射率が5%以下まで低下したインピーダンスが整合した状態に至っており、例えば、負荷8のバッテリの充電が進むにつれて負荷側インピーダンス「Z0」が変動するときであっても、スムーズにインピーダンス整合が行うことができることが分かる。
【0174】
<実施例6>
実施例1と同様に、ワイヤレス給電システム1Aを用いて、送電コイル32と受電コイル41の距離を連続的に変化させた場合に、自動で駆動コイル31の駆動コイル部31A~31F及び受電コイル41のコイル領域41A~41Dを切り替え、インピーダンス整合をとる実験(実施例6)を行った。本実験における駆動コイル31及び受電コイル41の切替は、実施例1と同様に第1の切替方法で行った。
【0175】
・実験手順
給電対象物2を自走可能な無人搬送車(AGV)とし、給電対象物2は、所望の電力が充電されたバッテリを負荷8として搭載している。給電対象物2に搭載された受電コイル41をコイル領域42Cに設定し、送電装置3に搭載された駆動コイル31を駆動コイル部31Bに設定し、この初期状態から、送電コイル32と受電コイル41との距離を150mmで約2秒維持した後に約1秒かけて200mmまで離間させる。その後、送電コイル32と受電コイル41との距離を200mmで約2秒維持した後に約1秒かけて300mmまで離間させる。続けて、送電コイル32と受電コイル41との距離を300mmで約2秒維持した後に約1秒かけて150mmまで接近させた。この一連の手順をバッテリ(負荷8)の電力が所定値を下回り、無人搬送車(給電対象物2)が停止するまで繰り返した。本実験における電力反射率の推移を
図23に示す。
【0176】
・実験結果
本実験では、給電対象物2は、16分10秒(970秒)で停止した。また、
図23によれば、電力反射率は、給電対象物2の移動に伴って約0.07(7%)~0.40(40%)の間で周期的に変化していることが分かる。また、給電対象物2が停止するまでの電力反射率の平均値は、0.132(13.2%)であった。
【0177】
<比較例1>
実験例6と同様の構成において、送電コイル32と受電コイル41の距離を連続的に変化させる際に、駆動コイル31及び受電コイル41を切り替えず固定して、無人搬送車(給電対象物2)が停止するまでの電力反射率及び給電対象物2が停止するまでの時間を計測する実験(比較例1)を行った。本実験における電力反射率の推移を
図24に示す。
【0178】
・実験結果
本実験では、給電対象物2は、14分07秒(847秒)で停止した。また、
図24によれば、電力反射率は、給電対象物2の移動に伴って約0.05(5%)~0.80(80%)の間で周期的に変化していることが分かる。また、給電対象物2が停止するまでの電力反射率の平均値は、0.444(44.4%)であった。
【0179】
<比較例2>
実験例6と同様の構成において、受電コイル41及びバッテリ(負荷8)を搭載した無人搬送車(給電対象物2)に対して、ワイヤレス給電を行わず、無人搬送車がバッテリに充電された電力のみで走行して、無人搬送車が停止するまでの時間を計測する実験(比較例2)を行った。
【0180】
・実験結果
本実験では、給電対象物2は、8分58秒(538秒)で停止した。
【0181】
実施例6、比較例1、2の実験結果を比較すると、実施例6は、比較例1に対して123秒長く無人搬送車が走行可能であり、稼働時間が約15%長くなっている。また、実施例6は、比較例2に対して432秒長く無人搬送車が走行可能であり、稼働時間が約80%長くなっている。すなわち、実施例6は、給電対象物2が連続的に移動した場合でも、速やかにインピーダンス整合を行い、電力を供給し続けることができる。
【0182】
<実施例7>
実施例1と同様に、ワイヤレス給電システム1Aを用いて、送電コイル32と受電コイル41の距離を連続的にランダムに変化させた場合に、自動で駆動コイル31の駆動コイル部31A~31F及び受電コイル41のコイル領域41A~41Dを切り替え、インピーダンス整合をとる実験(実施例7)を行った。本実験における駆動コイル31及び受電コイル41の切替は、実施例1と同様に第1の切替方法で行った。
【0183】
・実験手順
給電対象物2を自走可能な無人搬送車(AGV)とし、給電対象物2は、所望の電力が充電されたバッテリを負荷8として搭載している。送電装置3から200mm離れた位置に900mm×900mmのステージを配置し、給電対象物2が、このステージ上をランダムに移動する。給電対象物2は、ステージ上を平行移動可能であり、且つステージに対して垂直な回転軸回りに回転して向きを変更可能である。給電対象物2に搭載された受電コイル41をコイル領域42Cに設定し、送電装置3に搭載された駆動コイル31を駆動コイル部31Bに設定し、この初期状態から、給電対象物2が移動を開始して、バッテリ(負荷8)の電力が所定値を下回り、無人搬送車(給電対象物2)が停止するまで繰り返した。この一連の実験を4回行った。4回の実験における電力反射率の推移を
図25~
図28に示す。
【0184】
・実験結果
4回の実験で計測した、給電対象物2が停止するまでの各時間は、43秒、46秒、48秒、43秒であり、平均は45秒であった。また、
図25~28によれば、実施例7の電力反射率は、常にピークとバレーを繰り返しており、給電対象物2の動作に追随して、インピーダンス整合と不整合を繰り返していることが分かる。
【0185】
<比較例3>
実験例7と同様の構成において、送電コイル32と受電コイル41の距離を連続的にランダムに変化させる際に、駆動コイル31及び受電コイル41を切り替えず固定して、無人搬送車(給電対象物2)が停止するまでの電力反射率を計測する実験(比較例3)を4回行った。4回の実験における電力反射率の推移を
図29~
図32に示す。
【0186】
・実験結果
4回の実験で計測した、給電対象物2が停止するまでの各時間は、36秒、41秒、33秒、33秒であり、平均は35.75秒であった。また、
図29~32によれば、比較例3の電力反射率は、ほとんどの時間で0.8(80%)以上になっており、無人搬送車の動作に対してインピーダンス整合が追いついていないことが分かる。
【0187】
<比較例4>
実験例7と同様の構成において、受電コイル41及びバッテリ(負荷8)を搭載した無人搬送車(給電対象物2)に対して、ワイヤレス給電を行わず、無人搬送車がバッテリに充電された電力のみで走行して、無人搬送車が停止するまでの時間を計測する実験(比較例4)を4回行った。
【0188】
・実験結果
4回の実験で計測した、給電対象物2が停止するまでの各時間は、33秒、36秒、34秒、28秒であり、平均は32.75秒であった。
【0189】
実施例7、比較例3、4の実験結果を比較すると、実施例7は、比較例3に対して平均で9.25秒長く走行可能であり、稼働時間が約12.6%長くなっている。また、実施例7は、比較例3と比較してインピーダンス整合している時間が長く、それにより無人搬送車の稼働時間を長くすることができている。また、実施例7は、比較例4に対して12.75秒長く走行可能であり、稼働時間が約13.7%長くなっている。
【0190】
また、比較例3、4の結果には大きな差がなかった。これは、常に移動する給電対象物2に対して、比較例3のように駆動コイル31の駆動コイル部31A~31F及び受電コイル41のコイル領域41A~41Dの切替を行わないワイヤレス給電システムの場合、ほとんどの時間でインピーダンス整合が追い付かないため、給電対象物2に対してほとんど給電ができてないためである。一方、実施例7は、常に移動する給電対象物2に対しても、インピーダンス整合を実現するため、電力を供給し続けることができる。
【0191】
<実施例8>
実施例1と同様に、ワイヤレス給電システム1Aを用いて、送電コイル32と受電コイル41の距離を連続的にランダムに変化させた場合に、自動で駆動コイル31の駆動コイル部31A~31Fのみを切り替え、インピーダンス整合をとる実験(実施例8)を行った。本実験における駆動コイル31の切替は、実施例1と同様に第1の切替方法で行った。
【0192】
・実験手順
まず、駆動コイル31を駆動コイル部31Cに設定し、受電コイル41をコイル領域41Cに設定した状態で、送電コイル32と受電コイル41との距離を350mmで約6秒維持した後に、約1秒かけて送電コイル32と受電コイル41との距離を250mmまで接近させた。続いて、送電コイル32と受電コイル41との距離を250mmで約7秒維持した後に、約1秒かけて送電コイル32と受電コイル41との距離を350mmまで離間させた。本実験における電力反射率の推移及び駆動コイル31の駆動コイル部31A~31Fの切替の履歴を
図33に示す。
【0193】
・実験結果
図33によれば、送電コイル32と受電コイル41との距離を350mmから250mmに接近した際に、電力反射率が約0.20(20%)まで上昇したが、駆動コイル部31C(
図33のSerial number3)が、駆動コイル部31B(
図33のSerial number2)に切り替わることで、約2秒程度で0,05以下(5%以下)まで低下し、以降はその状態を維持していることが分かる。また、送電コイル32と受電コイル41との距離を250mmから350mmに離間した際に、電力反射率は約0.10(10%)まで上昇したが、駆動コイル部31Bが駆動コイル部31Cに切り替わることで、約2秒程度で0,05以下(5%以下)まで低下し、以降はその状態を維持していることが分かる。
【0194】
本実験結果によれば、駆動コイル部31B、31Cのみの切替であっても、送電コイル32と受電コイル41との距離変動が100mm程度であれば、2秒以内に電力反射率が5%以下まで低下しており、概ねスムーズにインピーダンス整合が行われていると言える。
【0195】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。