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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156536
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】工作機械記録システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/18 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
G05B19/18 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071082
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣田 重元
(72)【発明者】
【氏名】浅野 恵吾
(72)【発明者】
【氏名】藤野 公也
(72)【発明者】
【氏名】片岡 章人
【テーマコード(参考)】
3C269
【Fターム(参考)】
3C269BB12
3C269BB16
3C269EF02
3C269EF39
3C269KK08
3C269MN08
3C269MN46
3C269MN50
3C269QC01
3C269QC03
3C269QC06
3C269QD02
3C269QD05
3C269QD06
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、工作機械の状態をより適切に記録できる工作機械記録システムを提供する。
【解決手段】工作機械記録システム10は、撮像対象位置を変更可能な1以上のカメラCと、少なくとも第一対応情報46と第二対応情報48とを記憶する記憶装置40と、1以上のトリガを出力する数値制御装置20と、管理コントローラ30と、を備え、前記第一対応情報46は、前記トリガと、位置属性と、の対応関係を記録しており、前記第二対応情報48は、前記カメラCと、前記位置属性と、の対応関係を記録しており、前記管理コントローラ30は、対象トリガを受信した場合に、前記第一対応情報46および前記第二対応情報48を参照して、前記対象トリガに対応するカメラCを特定カメラC*として特定し、前記特定カメラC*で撮像された撮像データを、保存データとして前記記憶装置40に記憶させる、ように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の状態を記録する工作機械記録システムであって、
撮像対象位置を変更可能な1以上のカメラと、
少なくとも第一対応情報と第二対応情報とを記憶する記憶装置と、
1以上のトリガを出力する数値制御装置と、
管理コントローラと、
を備え、
前記第一対応情報は、前記トリガと、位置属性と、の対応関係を記録しており、
前記第二対応情報は、前記カメラと、前記位置属性と、の対応関係を記録しており、
前記管理コントローラは、
前記数値制御装置から前記1以上のトリガのうち任意の一つである対象トリガを受信した場合に、
前記第一対応情報を参照して、前記対象トリガに対応する前記位置属性を特定位置属性として特定し、
前記第二対応情報を参照して、前記特定位置属性に対応する前記カメラを特定カメラとして特定し、
前記特定カメラで撮像された撮像データを、保存データとして前記記憶装置に記憶させる、
ように構成されている、ことを特徴とする工作機械記録システム。
【請求項2】
請求項1に記載の工作機械記録システムであって、
前記トリガは、前記数値制御装置から前記工作機械の動作に関するアラームが出力されたことであり、
前記記憶装置は、リングバッファとして機能するリングバッファ領域と、一般保存領域と、を有し、
前記管理コントローラは、
前記1以上のカメラ全ての撮像データを前記リングバッファ領域に記憶させ、
前記対象トリガが発生した場合、前記アラームが発生から規定の遡及時間だけ遡った第一タイミングから、前記アラームが発生するまでの間に撮像された撮像データを、前記リングバッファ領域から読みだして、前記保存データの少なくとも一部として前記一般保存領域に記憶させる、
ように構成されている、
ことを特徴とする工作機械記録システム。
【請求項3】
請求項2に記載の工作機械記録システムであって、
前記管理コントローラは、前記対象トリガが発生した後、規定の基本時間が経過する第二タイミングまでの間に、前記カメラで撮像された撮像データを、前記保存データの少なくとも一部として前記一般保存領域に記憶させる、ように構成されている、
ことを特徴とする工作機械記録システム。
【請求項4】
請求項1に記載の工作機械記録システムであって、
前記トリガは、NCプログラムに記録された指令を前記数値制御装置が実行することであり、
前記管理コントローラは、前記対象トリガとして機能する前記指令が有効である有効期間、または、前記トリガが発生してから規定の基本時間が経過するまでの期間、前記カメラで撮像された撮像データを、前記保存データとして前記記憶装置に記憶させる、ように構成されている、
ことを特徴とする工作機械記録システム。
【請求項5】
請求項1に記載の工作機械記録システムであって、
前記トリガは、予め規定された工作機械の機械動作モードを選択することであり、
前記管理コントローラは、前記トリガとして機能する前記機械動作モードが選択されている期間、または、前記トリガが発生してから規定の基本時間が経過するまでの期間、前記カメラで撮像された撮像データを、前記保存データとして前記記憶装置に記憶させる、ように構成されている、
ことを特徴とする工作機械記録システム。
【請求項6】
請求項1に記載の工作機械記録システムであって、
前記トリガは、前記工作機械の周辺機器が、予め規定された状態に変化することであり、
前記管理コントローラは、前記周辺機器が、前記トリガとして機能する状態になっている期間、前記トリガが発生してから規定の基本時間が経過するまでの期間、前記カメラで撮像された撮像データを、前記保存データとして前記記憶装置に記憶させる、ように構成されている、
ことを特徴とする工作機械記録システム。
【請求項7】
請求項1、4から6のいずれか1項に記載の工作機械記録システムであって、
前記記憶装置は、さらに、前記トリガと前記カメラのフレームレートとの対応関係を記録した第三対応情報を記憶しており、
前記管理コントローラは、前記対象トリガが発生した場合、前記第三対応情報を参照して、前記特定カメラに対応する前記フレームレートを特定フレームレートとして特定し、前記特定カメラに対して前記特定フレームレートでの撮像を指示する、ように構成されている、
ことを特徴とする工作機械記録システム。
【請求項8】
請求項7に記載の工作機械記録システムであって、
前記記憶装置は、さらに、前記1以上のカメラそれぞれの標準フレームレートを記憶しており、
前記管理コントローラは、前記トリガが発生していない場合、前記カメラに対して、前記標準フレームレートでの撮像を指示する、ように構成されている、
ことを特徴とする工作機械記録システム。
【請求項9】
請求項1に記載の工作機械記録システムであって、
さらに、ユーザインタフェース装置を備え、
前記管理コントローラは、前記ユーザインタフェース装置を介してオペレータに、保存データリストを提供するように構成されており、
前記保存データリストは、1以上の前記対象トリガの識別情報と、前記対象トリガに対応する位置属性と、前記位置属性に対応する前記カメラの識別情報と、前記対象トリガにおいて取得された前記保存データへのアクセス情報と、の対応関係を示すリストである、
ことを特徴とする工作機械記録システム。
【請求項10】
請求項9に記載の工作機械記録システムであって、
前記保存データリストは、さらに、前記対象トリガに対応するトラブルシューティング情報およびFAQの少なくとも一方へのアクセス情報を含む、ことを特徴とする工作機械記録システム。
【請求項11】
請求項1に記載の工作機械記録システムであって、
前記管理コントローラは、前記保存データを、前記位置属性および前記対象トリガの識別情報と関連付けて前記記憶装置に記憶させる、ように構成されている、ことを特徴とする工作機械記録システム。
【請求項12】
請求項1に記載の工作機械記録システムであって、
前記1以上のカメラそれぞれは、カメラ本体と、通信インタフェースと、取付機構と、を有し、
前記取付機構は、マグネットおよびクリップの少なくとも一方を含む、
ことを特徴とする工作機械記録システム。
【請求項13】
請求項12に記載の工作機械記録システムであって、
前記カメラ本体は、バッテリを有しており、
前記通信インタフェースは、無線通信用の通信インタフェースであり、
前記1以上のカメラそれぞれは、他の機器とケーブルで接続されていない、ケーブルレスカメラである、
ことを特徴とする工作機械記録システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、工作機械の状態を記録する工作機械記録システムを開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から工作機械の状態を記録して保存することが求められている。そこで、工作機械の内部および周辺をカメラで撮像し、得られた撮像データを記憶装置に保存する技術が一部で提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、1台のカメラで工具を撮像し、撮像された工具の画像と、当該工具の情報と、を対応付けて工具データベースに記録する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、物品搬送装置の状態を記録するシステムが開示されている。特許文献2のシステムは、物品搬送装置で異常が検出された場合、当該異常の原因となっている部品を予め記憶している部品特定テーブルに基づいて特定し、特定された部品をカメラで撮像し、得られた映像データを部品データ記憶手段に保存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7042938号明細書
【特許文献2】特許第5834569号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、1台のカメラしか有しておらず、撮像範囲が限られていた。また、特許文献2の技術は、カメラの位置を容易に変更できない。そのため、特許文献2の技術の場合、オペレータの希望や、搬送対象物の変更等に伴い、撮像すべき部品が変更された場合に、容易に対応できない。つまり、従来、工作機械の状態を、簡易な構成で適切に記録できるシステムがなかった。
【0007】
そこで、本明細書では、工作機械に取り付けられるカメラの構成変更に対し、柔軟に対応可能な、工作機械記録システムを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示する工作機械記録システムは、撮像対象位置を変更可能な1以上のカメラと、少なくとも第一対応情報と第二対応情報とを記憶する記憶装置と、1以上のトリガを出力する数値制御装置と、管理コントローラと、を備え、前記第一対応情報は、前記トリガと、位置属性と、の対応関係を記録しており、前記第二対応情報は、前記カメラと、前記位置属性と、の対応関係を記録しており、前記管理コントローラは、前記数値制御装置から前記1以上のトリガのうち任意の一つである対象トリガを受信した場合に、前記第一対応情報を参照して、前記対象トリガに対応する前記位置属性を特定位置属性として特定し、前記第二対応情報を参照して、前記特定位置属性に対応する前記カメラを特定カメラとして特定し、前記特定カメラで撮像された撮像データを、保存データとして前記記憶装置に記憶させる、ように構成されている、ことを特徴とする。
【0009】
この場合、前記トリガは、前記数値制御装置から前記工作機械の動作に関するアラームが出力されたことであり、前記記憶装置は、リングバッファとして機能するリングバッファ領域と、一般保存領域と、を有し、前記管理コントローラは、前記1以上のカメラ全ての撮像データを前記リングバッファ領域に記憶させ、前記対象トリガが発生した場合、前記アラームが発生から規定の遡及時間だけ遡った第一タイミングから、前記アラームが発生するまでの間に撮像された撮像データを、前記リングバッファ領域から読みだして、前記保存データの少なくとも一部として前記一般保存領域に記憶させる、ように構成されてもよい。
【0010】
この場合、前記管理コントローラは、前記対象トリガが発生した後、規定の基本時間が経過する第二タイミングまでの間に、前記カメラで撮像された撮像データを、前記保存データの少なくとも一部として前記一般保存領域に記憶させる、ように構成されてもよい。
【0011】
また、前記トリガは、NCプログラムに記録された指令を前記数値制御装置が実行することであり、前記管理コントローラは、前記対象トリガとして機能する前記指令が有効である有効期間、または、前記トリガが発生してから規定の基本時間が経過するまでの期間、前記カメラで撮像された撮像データを、前記保存データとして前記記憶装置に記憶させる、ように構成されてもよい。
【0012】
また、前記トリガは、予め規定された工作機械の機械動作モードを選択することであり、前記管理コントローラは、前記トリガとして機能する前記機械動作モードが選択されている期間、または、前記トリガが発生してから規定の基本時間が経過するまでの期間、前記カメラで撮像された撮像データを、前記保存データとして前記記憶装置に記憶させる、ように構成されてもよい。
【0013】
また、前記トリガは、前記工作機械の周辺機器が、予め規定された状態に変化することであり、前記管理コントローラは、前記周辺機器が、前記トリガとして機能する状態になっている期間、前記トリガが発生してから規定の基本時間が経過するまでの期間、前記カメラで撮像された撮像データを、前記保存データとして前記記憶装置に記憶させる、ように構成されてもよい。
【0014】
この場合、前記記憶装置は、さらに、前記トリガと前記カメラのフレームレートとの対応関係を記録した第三対応情報を記憶しており、前記管理コントローラは、前記対象トリガが発生した場合、前記第三対応情報を参照して、前記特定カメラに対応する前記フレームレートを特定フレームレートとして特定し、前記特定カメラに対して前記特定フレームレートでの撮像を指示する、ように構成されてもよい。
【0015】
この場合、前記記憶装置は、さらに、前記1以上のカメラそれぞれの標準フレームレートを記憶しており、前記管理コントローラは、前記トリガが発生していない場合、前記カメラに対して、前記標準フレームレートでの撮像を指示する、ように構成されてもよい。
【0016】
また、さらに、ユーザインタフェース装置を備え、前記管理コントローラは、前記ユーザインタフェース装置を介してオペレータに、保存データリストを提供するように構成されており、前記保存データリストは、1以上の前記対象トリガの識別情報と、前記対象トリガに対応する位置属性と、前記位置属性に対応する前記カメラの識別情報と、前記対象トリガにおいて取得された前記保存データへのアクセス情報と、の対応関係を示すリストでもよい。
【0017】
この場合、前記保存データリストは、さらに、前記対象トリガに対応するトラブルシューティング情報およびFAQの少なくとも一方へのアクセス情報を含んでもよい。
【0018】
また、前記管理コントローラは、前記保存データを、前記位置属性および前記対象トリガの識別情報と関連付けて前記記憶装置に記憶させる、ように構成されてもよい。
【0019】
また、前記1以上のカメラそれぞれは、カメラ本体と、通信インタフェースと、取付機構と、を有し、前記取付機構は、マグネットおよびクリップの少なくとも一方を含んでもよい。
【0020】
この場合、前記カメラ本体は、バッテリを有しており、前記通信インタフェースは、無線通信用の通信インタフェースであり、前記1以上のカメラそれぞれは、他の機器とケーブルで接続されていない、ケーブルレスカメラでもよい。
【発明の効果】
【0021】
本明細書で開示する技術によれば、簡易な構成で、工作機械の状態をより適切に記録できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】工作機械記録システムの構成を示す模式図である。
図2】工作機械記録システムのブロック図である。
図3】第一対応情報の一例を示す図である。
図4】第二対応情報の一例を示す図である。
図5】工作機械の状態記録処理の流れを示すフローチャートである。
図6】撮像処理の流れを示すフローチャートである。
図7A】保存データリスト画面の一例を示す図である。
図7B】保存データリスト画面の他の一例を示す図である。
図8】カメラ確認処理の流れを示すフローチャートである。
図9】第二の工作機械記録システムにおける第一対応情報の一例を示す図である。
図10】第二の工作機械記録システムにおける第二対応情報の一例を示す図である。
図11A】第三対応情報の一例を示す図である。
図11B】第三対応情報の他の一例を示す図である。
図11C】第三対応情報の他の一例を示す図である。
図12】第二の工作機械記録システムにおける撮像処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して工作機械記録システム10について説明する。図1は、工作機械記録システム10の構成を示す模式図である。また、図2は、工作機械記録システム10のブロック図である。
【0024】
工作機械記録システム10は、工作機械11の状態をカメラで撮像し、得られた映像データを記憶装置40に保存するシステムである。工作機械記録システム10は、数値制御装置20と、複数のカメラCa~Cc(以下、カメラCa~Ccを区別しない場合は、「カメラC」と表記する)と、管理コントローラ30と、記憶装置40と、を有する。
【0025】
数値制御装置20は、NCプログラムを解析して、工作機械11を操作するために、工作物に対する工具経路、加工に必要な作業の工程などを、数値と符号とで構成した数値情報で指令する装置である。数値制御装置20は、工作機械11およびその周辺機器の状態を監視し、必要に応じて、後述するトリガを管理コントローラ30に出力する。かかる数値制御装置20は、物理的には、プロセッサ22とメモリ34とを有するコンピュータである。
【0026】
また、数値制御装置20は、さらに、通信I/F26とUI装置28とを有する。通信I/F26は、工作機械11や周辺機器、管理コントローラ30等と情報をやりとりするための装置である。かかる通信I/F26は、WiFiおよびブルートゥース(登録商標)等の無線通信のためのインタフェースでもよいし、通信ケーブルを介して信号を伝播させる有線通信のためのインタフェースでもよい。
【0027】
UI装置28は、オペレータの操作指示を受け付けるとともに、オペレータに情報を提示する装置である。かかるUI装置28は、入力装置と、出力装置と、を有する。入力装置は、キーボード、タッチパネル、スイッチ、マイク、マウスおよびトラックボールの少なくとも一つを含む。出力装置は、ディスプレイ、スピーカ、および、プリンタの少なくとも一つを含む。
【0028】
カメラCは、工作機械11に取り付けられ、工作機械11の内部または周辺を撮像する。本例では、複数のカメラCa~Ccが、互いに異なる位置に取り付けられている。なお、図1で例示したカメラCの個数および配置は、いずれも一例であり、適宜変更可能である。
【0029】
カメラCは、カメラ本体60と通信I/F62と取付機構64とを有する。カメラ本体60は、撮像素子(たとえばCCD素子やCMOS素子等)を有しており、対象範囲を撮像する。カメラ本体60で撮像された映像データは、管理コントローラ30に送信される。
【0030】
なお、カメラ本体60は、さらに、マイクを有し、動画データとともに音声データを取得してもよい。この場合、管理コントローラ30は、動画データと音声データとを組み合わせた映像データを記憶装置40に記憶させる。
【0031】
通信I/F62は、カメラ本体60で撮像された映像データを管理コントローラ30に送信する。通信I/F62は、WiFiおよびブルートゥース(登録商標)等の無線通信のためのインタフェースでもよいし、通信ケーブルを介して信号を伝播させる有線通信のためのインタフェースでもよい。
【0032】
取付機構64は、カメラCを工作機械11または工作機械11の周辺に取り付けるための機構である。かかる取付機構64は、工作機械11および周辺機器を破壊することなく、カメラCが撮像対象位置を変更できるのであれば、その構成は、特に限定されない。例えば、取付機構64は、工作機械11および周辺機器を破壊することなく、カメラCの取付位置を自由に変更できるものでもよい。この場合、取付機構64は、例えば、工作機械11の壁面に脱着可能なマグネット、または、工作機械11に存在する凸凹に係合可能なクリップを有してもよい。また、取付機構64は、カメラCを保持するホルダ部と、ホルダ部を移動させる移動機構(例えば、XYテーブルやガントリーロボット、シリアルマニピュレータ等)と、を有してもよい。この場合、移動機構は、工作機械11に固着されてもよい。そして、かかる取付機構64において、ホルダ部を移動させることで、カメラCの位置、ひいては、カメラCの撮像対象位置を変更できる。なお、ホルダ部の移動は、手動で行われてもよいし、電動で行われてもよい。
【0033】
さらに、取付機構64は、カメラCの姿勢を変更させるものでもよい。この場合、取付機構64は、ユニバーサルジョイント等を有してもよい。こうした取付機構64により、カメラCの取付位置および姿勢の少なくとも一方を変更することで、カメラCの撮像対象位置を容易に変更できる。そして、カメラCの撮像対象位置を変更できることで、記録として残したいエリアが変化した場合にも柔軟に対応できる。
【0034】
なお、カメラCは、通信ケーブルおよび電源ケーブルのいずれも有さないケーブルレス構成でもよい。かかる構成とすることで、ケーブルの取り回しを考慮することなく、カメラCの取り付け位置、ひいては、撮像対象位置を自由に変更できる。ケーブルレスとする場合、通信I/F62は、WiFiおよびブルートゥース等の無線通信用のインタフェースとなる。また、ケーブルレスとする場合、カメラCは、バッテリを有しており、当該バッテリから供給される電力で駆動する。この場合、カメラCは、バッテリの残容量を検査する検査機能を有しており、バッテリの残容量が規定以下になった場合、その旨を管理コントローラ30に通知する。この通知を受けた場合、管理コントローラ30は、UI装置38を介してオペレータにカメラCのバッテリの交換または充電を促す。
【0035】
管理コントローラ30は、数値制御装置20から送られる情報に基づいて、カメラCの動作を制御するとともに、映像データを記憶装置40に記憶させる。かかる管理コントローラ30は、物理的には、プロセッサ32とメモリ34とを有するコンピュータである。
【0036】
かかる管理コントローラ30は、さらに、通信I/F36とUI装置38とを有する。通信I/F36は、数値制御装置20およびカメラCと情報を通信するための装置である。かかる通信I/F36は、WiFiおよびブルートゥース等の無線通信のためのインタフェースでもよいし、通信ケーブルを介して信号を伝播させる有線通信のためのインタフェースでもよい。UI装置38は、オペレータの操作指示を受け付けるとともに、オペレータに情報を提示する装置である。かかるUI装置38は、入力装置と、出力装置と、を有する。入力装置は、キーボード、タッチパネル、スイッチ、マイク、マウスおよびトラックボールの少なくとも一つを含む。出力装置は、ディスプレイ、スピーカ、および、プリンタの少なくとも一つを含む。
【0037】
なお、図2では、管理コントローラ30を、数値制御装置20と独立した、単一のコンピュータとして図示している。しかし、管理コントローラ30は、互いに離れた複数のコンピュータを組み合わせて構成されてもよい。また、管理コントローラ30の一部または全部は、数値制御装置20に組み込まれてもよい。
【0038】
記憶装置40は、デジタルデータを保存する装置である。この記憶装置40は、例えば、磁気記憶装置(例えば、ハードディスクドライブ等)と、半導体ドライブ(例えば、メモリカードやUSBフラッシュドライブ、ソリッドステートドライブ)と、の少なくとも一つを含んでもよい。また、記憶装置40の一部または全ては、インターネットを介して接続可能なクラウドに設けられてもよい。また、図2では、記憶装置40を、管理コントローラ30から独立した別の装置として図示している。しかし、記憶装置40の一部または全部は、管理コントローラ30のメモリ34として機能してもよい。
【0039】
記憶装置40は、データを非循環的に記憶する一般保存領域44と、データを循環的に記憶するリングバッファ領域42と、を有する。一般保存領域44には、後述する保存データや、対応情報46,48(図3図4参照)が記憶される。これら対応情報46,48の詳細については、いずれも後述する。
【0040】
リングバッファ領域42は、リングバッファとして機能する記憶領域である。リングバッファ領域42には、カメラCで撮像された映像データが記憶される。複数のカメラCそれぞれについて、リングバッファ領域42で使用可能なデータ容量が予め決められている。一つのカメラCで取得された映像データの総量が、この規定のデータ容量を超えた場合、新たに取得された映像データは、過去の映像データを上書きして保存される。
【0041】
次に、こうした工作機械記録システム10の処理について説明する。管理コントローラ30は、数値制御装置20から所定のトリガを受け取った場合、当該トリガに関連する位置を特定し、特定された位置を撮像した映像データを、保存データとして一般保存領域44に記憶させる。ここで、トリガは、特に限定されない。以下では、トリガが、工作機械11のアラームである場合を例に挙げて説明する。
【0042】
上述した処理を行うために、管理コントローラ30は、トリガ、すなわち、アラームに関連する位置を特定する必要がある。この特定を行うために、記憶装置40に、第一対応情報46が記憶されている。第一対応情報46は、トリガと、位置属性と、の対応関係を記録した情報である。
【0043】
図3は、第一対応情報46の一例を示す図である。図3の例において、第一対応情報46は、アラーム番号と、位置属性と、を対応付けて記録したテーブルである。アラーム番号は、工作機械11で発生したアラームの種類を示している。アラームが発生した場合、数値制御装置20は、このアラーム番号を管理コントローラ30に送信する。
【0044】
位置属性は、工作機械11の内部または周辺の位置を表す情報である。位置属性は、例えば、工作機械11を構成するコンポーネントパーツ(例えば「主軸」や「制御盤」等)として指定されてもよいし、所定の広さを持つエリア名(例えば「加工室内」や「機外」等)として指定されてもよい。図3の例において、位置属性は、コンポーネントパーツ(例えば、「主軸」や「制御盤」等)およびエリア名(例えば、「加工室内」等)で表現されている。
【0045】
第一対応情報46において、アラームの番号ごとに、当該アラームが発生した際に撮像したい位置を示す位置属性が、対応付けて記録されている。例えば、アラーム番号「KKKK」が、「主軸」に関連するアラームであり、アラーム番号「KKKK」が発生した際に、「主軸」周辺の撮像が求められる場合を考える。この場合、第一対応情報46において、アラーム番号「KKKK」に対応する位置属性として「主軸」が記録される。
【0046】
こうした第一対応情報46は、工作機械11の製造メーカが提供してもよいし、オペレータが作成してもよい。また、第一対応情報46の管理コントローラ30への登録は、第一対応情報46の内容を記録した定義ファイルを管理コントローラ30が読み込むことで行われてもよい。また、別の形態として、第一対応情報46の管理コントローラ30への登録は、UI装置38またはUI装置28を介した、オペレータによるインタラクティブな操作指示により行われてもよい。いずれにしても、カメラCによる撮像の開始前に、第一対応情報46が用意され、記憶装置40に記憶される。
【0047】
第二対応情報48は、カメラCと、位置属性と、の対応関係を記録した情報である。図4は、第二対応情報48の一例を示す図である。図4の例において、第二対応情報48は、位置属性と、カメラCの識別情報と、を対応付けて記録したテーブルである。位置属性は、第一対応情報46で用いられる位置属性と同じである。カメラCの識別情報は、工作機械11に取り付けられた複数のカメラCの識別情報である。
【0048】
第二対応情報48において、位置属性ごとに、当該位置属性が示す位置を撮像可能なカメラCの識別情報が、対応付けて記録されている。例えば、第一カメラCaが加工室内全体を撮像可能な場合、位置属性「加工室内」に、第一カメラCaの識別情報「Ca」が、対応付けて記録される。
【0049】
こうした第二対応情報48は、オペレータが作成および更新してもよい。例えば、オペレータが、複数のカメラCの撮像位置を目視で確認し、その確認結果に応じたテーブルを作成および更新してもよい。
【0050】
また、別の形態として、管理コントローラ30が、第二対応情報48を半自動的または自動的に作成および更新してもよい。例えば、管理コントローラ30は、グラフィカルユーザインターフェース(以下「GUI」という)を用いて、カメラCと位置属性との対応関係をオペレータから受け取り、受け取った対応関係に基づいて、第二対応情報48を作成および更新してもよい。すなわち、管理コントローラ30は、UI装置28またはUI装置38のディスプレイに、複数のカメラCに対応するアイコンと、位置属性を示すGUIと、を表示させてもよい。オペレータは、各カメラCのアイコンを、対応する位置属性を示すGUI上の領域に移動させることで、カメラCと位置属性との対応関係を指定する。また、別の形態として、管理コントローラ30は、カメラC毎に選択可能な位置属性の候補を、ドロップダウンリスト等の形態で、オペレータに提示してもよい。オペレータは、提示された候補の中から一つの位置属性を選択することで、カメラCと位置属性との対応関係を指定する。
【0051】
さらに、別の形態として、各カメラCが、位置属性を示す信号を出力してもよい。この場合、カメラCには、専用の入力装置が設けられており、オペレータは、この入力装置を操作することで、当該カメラCが出力する信号種類を変更する。例えば、カメラCは、複数のスイッチ(例えばディップスイッチ等)を有しており、ONされるスイッチの組み合わせに応じてユニークな位置信号を出力する。管理コントローラ30は、カメラCから出力される位置信号と、位置属性と、の対応関係を予め記憶している。オペレータは、カメラCを新設した場合またはカメラCの撮像対象位置を変更した場合、そのカメラCの撮像対象位置に応じた位置信号を出力するように、カメラCのスイッチを切り替える。そして、管理コントローラ30は、カメラCから出力される位置信号に基づいて、第二対応情報48を作成および更新する。
【0052】
さらに、別の形態として、管理コントローラ30が、各カメラCで撮像された画像に基づいて、各カメラCの位置属性を自動判定し、その判定結果に基づいて第二対応情報48を自動生成してもよい。こうした自動判定を可能にするために、実際の工作機械11の各部に、その位置を示す識別画像を予め付与してもよい。例えば、主軸に、当該主軸を示す識別画像(例えば記号や数字、2次元コード等)のシールを、予め、貼付しておく。管理コントローラ30は、カメラCで撮像された画像から、識別画像を探索する。そして、管理コントローラ30は、撮像画像に識別画像が含まれているカメラCを、当該識別画像に対応する位置属性に割り当てる。例えば、第一カメラCaの撮像画像に、主軸を示す識別画像が含まれている場合、管理コントローラ30は、第一カメラCaを、位置属性「主軸」に割り当てる。なお、このとき、管理コントローラ30は、撮像画像内における識別画像の位置、傾き、歪み、および、サイズから、カメラCの詳細な位置を推定してもよい。さらに別の形態として、管理コントローラ30が、AIを利用して、各カメラCの撮像画像にAIを適用することで、各カメラCの位置属性を自動判定してもよい。例えば、カメラCの撮像画像に深層学習(ディープラーニング)技術、特に、物体検出に秀でたR-CNN(Region Convolutional Neural Networks)やYOLO(You Only Look Once)等のニューラルネットワーク技術を適用して、カメラCの位置属性を自動判定してもよい。
【0053】
いずれにしても、第二対応情報48を作成または変更する場合、オペレータまたは管理コントローラ30は、カメラCと、カメラCの撮像対象位置と、の関係だけを考慮すればよく、カメラCとアラームとの関係性は、考慮する必要がない。その結果、オペレータまたは管理コントローラ30は、第二対応情報48を容易に作成および変更できる。
【0054】
次に、工作機械11の状態記録処理の流れについて説明する。図5は、管理コントローラ30による工作機械11の状態記録処理の流れを示すフローチャートである。なお、通常、図5のフローチャートの開始前に、所定の前準備が完了されている。前準備では、カメラCの取り付けや、第一対応情報46および第二対応情報48の生成等が行われる。
【0055】
管理コントローラ30は、工作機械11の電源がONされた場合、初期化処理を開始する(S10)。初期化処理では、第一対応情報46および第二対応情報48の読み込み処理等が行われる。続いて、管理コントローラ30は、カメラCの取付状況の変更の有無を確認するカメラ確認処理を実行する(S12)。このカメラ確認処理の具体的内容については後述する。
【0056】
初期化処理およびカメラ確認処理が終了すれば、管理コントローラ30は、撮像開始の指示があるまで待機する。撮像開始の指示は、オペレータによるUI装置28またはUI装置38の操作指示でもよい。また、撮像開始の指示は数値制御装置20から入力されてもよい。例えば、オペレータは、NCプログラムに、撮像開始を指令するNCコード(以下「撮像用コード」と呼ぶ)を記入しておく。数値制御装置20が、NCプログラムの実行過程で、当該撮像用コードを読み込んだ場合、撮像開始の指示を管理コントローラ30に出力する。さらに、NCプログラムは、カメラCの動作条件(例えば、ゲインやシャッタースピード等)の変更を指令するコードや、保存する映像データの条件(例えば、ファイルフォーマットやピクセルサイズ、ファイル圧縮形式等)を指令するコードを含んでもよい。数値制御装置20は、こうしたコードを読み込んだ場合、当該コードが示す指令を、管理コントローラ30に出力する。
【0057】
管理コントローラ30は、撮像開始の指示がない場合(S22でNo)、撮像を開始することなく、待機する。この待機期間中であれば、第一対応情報46の変更、および、カメラCの撮像対象位置の変更が可能である。そのため、管理コントローラ30は、待機期間中は、第一対応情報46の変更の有無、および、カメラCの撮像対象位置の変更の有無を監視する(S14,S18)。監視の結果、第一対応情報46が変更された場合(S14でYes)、管理コントローラ30は、変更後の第一対応情報46を読み込む(S16)。また、カメラCの撮像対象位置が変更された場合(S18でYes)、管理コントローラ30は、当該変更を反映した第二対応情報48読み込む(S20)。
【0058】
一方、撮像開始の指示があった場合(S22)、管理コントローラ30は、カメラCによる撮像処理(S24)を開始する。図6は、撮像処理の詳細な流れを示すフローチャートである。図6に示す通り、管理コントローラ30は、撮像開始の指示があった場合、全てのカメラCに対して撮像開始を指示する(S30)。また、管理コントローラ30は、この撮像により得られた映像データを、リングバッファ領域42に保存させる。
【0059】
管理コントローラ30は、トリガ、すなわち、アラームが発生するまで、リングバッファ領域42への画像保存を継続する。一方、アラームが発生した場合(S32でYes)を考える。ここで発生したアラームを「対象アラーム」とした場合、管理コントローラ30は、当該対象アラームに対応する位置属性を特定位置属性として特定する(S34)。具体的には、数値制御装置20は、対象アラームに応じたアラーム番号を管理コントローラ30に送信する。管理コントローラ30は、受信したアラーム番号を、第一対応情報46に照らし合わせて、当該アラーム番号に対応する位置属性を、特定位置属性として特定する。
【0060】
続いて、管理コントローラ30は、特定位置属性を、第二対応情報48に照らし合わせて、特定位置属性に対応するカメラCを、特定カメラC*として特定する(S36)。その後、管理コントローラ30は、特定カメラC*で撮像された映像データを、保存データとして、一般保存領域44に保存する(S38~S42)。このとき、保存データは、アラームが発生から遡及時間Tbだけ遡った第一タイミングから、アラーム発生から基本時間Taだけ経過した第二タイミングまでの間に、特定カメラC*が撮像した映像データである。
【0061】
こうした保存データを取得するために、管理コントローラ30は、第一タイミングからアラーム発生までの間に、特定カメラC*が撮像した映像データを、リングバッファ領域42から読み込み、第一仮データとして一時記憶する(S38)。また、管理コントローラ30は、アラーム発生から第二タイミングまでの間に特定カメラC*が撮像した映像データを、第二仮データとして一時記憶する(S40)。そして、管理コントローラ30は、この第一仮データと、第二仮データと、を合成したデータを、保存データとして一般保存領域44に保存する(S42)。
【0062】
ここで、遡及時間Tbは、予め規定される時間である。この遡及時間Tbは、アラームが示す異常の原因となる事象の発生タイミングを含むように設定される。遡及時間Tbは、全てのアラーム番号で同じであってもよいし、アラーム番号によって異なる値が設定されてもよい。遡及時間Tbは、所定のフォーマットの定義ファイルで規定してもよいし、オペレータがUI装置28またはUI装置38を操作して規定してもよい。さらに、NCプログラムが、遡及時間Tbの設定値を含んでもよい。
【0063】
また、基本時間Taも、予め規定される時間である。この基本時間Taは、遡及時間Tbと同様に、全てのアラーム番号で同じであってもよいし、アラーム番号によって異なる値が設定されてもよい。また、基本時間Taは、遡及時間Tbと同様に、定義ファイル、UI装置28,38、および、NCプログラム等を用いて規定されてもよい。また、図6の例では、基本時間Taを0より大きい値としているが、基本時間Taは、0でもよい。
【0064】
すなわち、アラームが発生した場合、その直前の映像データは、異常の原因を探索するために重要であるが、アラームが発生した後の映像データの重要度は低い。そこで、Ta=0として、アラームが発生した後の映像データを保存しないようにしてもよい。Ta=0の場合、当然ながら、ステップS40は、省略され、リングバッファ領域42から読み出された第一仮データが、そのまま、保存データとして一般保存領域44に保存される。
【0065】
保存データは、発生したアラームの識別情報と関連付けられて、一般保存領域44に保存される。アラームの識別情報は、例えば、アラームが発生した日付および時刻を表すタイムスタンプ、および、アラームの発生順序を示す通し番号の少なくとも一つを含む。例えば、保存データは、アラームの発生時刻を表すフォルダ内に、そのアラームに関する参照情報とともに、保存されてもよい。参照情報は、例えば、そのアラームの発生時に生成されたログデータや、そのアラームに関するFAQまたはトラブルシューティングへのアクセス情報等を含む。こうして、一般保存領域44に保存された保存データや参照情報は、UI装置28またはUI装置38を介して、オペレータに提示される。この提示の形態については、後述する。
【0066】
図5を参照すると、撮像処理(S24)の後、管理コントローラ30は、撮像の終了指示の有無を確認する(S26)。撮像の終了指示は、開始指示と同様に、UI装置28,38を介してオペレータから入力されてもよいし、NCプログラムに撮像終了を指令するコードが記入されてもよい。確認の結果、撮像の終了指示がない場合(S26でNo)、管理コントローラ30は、撮像処理(S24)を継続する。また、撮像の終了指示がある場合(S26でYes)、管理コントローラ30は、工作機械記録システム10がoffされるまで、ステップS14~S28を繰り返す。
【0067】
次に、保存データのオペレータへの提示の形態について説明する。図7Aは、UI装置38のディスプレイに表示される保存データリスト画面70の一例を示す図である。保存データリスト画面70は、一般保存領域44に保存された保存データの一覧を示す画面である。図7Aの例の場合、保存データリスト画面70は、アラーム一つにつき、一つの行が割り当てられたテーブル形式となっている。このテーブルは、「日付」と、「時刻」と、「アラーム番号」と、「メッセージ」と、複数のカメラCそれぞれと、「T/S」と、「FAQ」と、の列を有する。「日付」および「時刻」の列には、アラームの発生した日付および時刻が表示される。「アラーム番号」の列には、発生したアラームのアラーム番号が表示される。「メッセージ」の列には、発生したアラームの簡単な説明文が表示される。カメラCの列は、カメラCの個数分だけ用意される。各カメラCの列には、そのカメラCが撮像した保存データの有無が表示される。そのカメラCが撮像した保存データがない場合、そのカメラCの列は空欄となる。一方、そのカメラCが撮像した保存データが、存在する場合、対応する位置属性が表示される。例えば、図7Aの1列目を見ると、時刻10:33:47に、アラーム番号「KKKK」のアラームが発生し、このアラームに関連して、第二カメラCbによって「主軸」の画像が撮像され、保存されていることが分かる。
【0068】
カメラCの列に表示されている位置属性には、保存データにアクセスするためのリンクが貼られている。そのため、オペレータが、この保存データリスト内の位置属性の文字列を選択すると、対応する保存データが再生される。
【0069】
「T/S」の列には、そのアラームに関連するトラブルシューティングが記録されたファイルへのアクセス情報が表示されている。同様に、「FAQ」の列には、そのアラームに関するFAQ(Frequently Asked Questions)が記録されたファイルへのアクセス情報が表示されている。オペレータが、この「T/S」または「FAQ」のセルを選択すると、対応するトラブルシューティング情報またはFAQ情報が表示される。
【0070】
図7Bは、保存データリスト画面70の他の例を示す図である。図7Bの場合、複数のカメラCそれぞれの列に替わって、複数の位置属性それぞれの列が設けられている。そして、位置属性の列に、対応するカメラCが、表示されている。その他の構成は、図7Aと同様であるため、説明を省略する。
【0071】
いずれにしても、こうした保存データリスト画面70をオペレータに提示することで、オペレータは、希望する保存データに容易にアクセスできる。そして、保存データを再生することで、オペレータは、アラーム発生の原因を効率的に探索できる。また、保存データに対応するトラブルシューティングまたはFAQを提示することで、オペレータはアラームに対して、容易に適切な対応をとることができる。
【0072】
なお、当然ながら、こうした保存データの提示形態は、一例であり、適宜、変更されてもよい。例えば、保存データのリストは、一つの保存データに、一つの行を割り当てたテーブル形式で提示されてもよい。また、こうした保存データのリストをオペレータに提示しなくてもよい。この場合、オペレータは、エクスプローラ等のファイル管理ソフトを利用して、保存データに直接アクセスすればよい。このとき、オペレータによる保存データの探索を容易にするために、保存データのファイル名またはフォルダ名に、アラーム番号、アラーム識別情報(例えば、タイムスタンプまたは通し番号等)、位置属性の識別情報、および、カメラCの識別情報の少なくとも一つを組み込んでもよい。
【0073】
次に、図5におけるカメラ確認処理の詳細な流れについて図8を参照して説明する。通常、オペレータは、カメラCの撮像対象位置を変更した場合、この変更を管理コントローラ30に通知する必要がある。しかしながら、人為的なミスにより、カメラCの撮像対象位置の変更が管理コントローラ30に通知されない場合もある。そして、カメラCの撮像対象位置の変更が管理コントローラ30に通知されないまま、撮像処理を実行すると、適切な映像データを保存できない。
【0074】
そこで、管理コントローラ30は、システム初期化の後、カメラCの撮像対象位置の変更の有無を確認するカメラ確認処理を実行する(図5のS12)。
【0075】
この場合、図8に示すように、管理コントローラ30は、最初に、全てのカメラCに対してテスト撮像を指示する(S50)。テスト撮像は、静止画撮像、または、短時間(例えば1秒等)の動画撮像である。管理コントローラ30は、テスト撮像で得られた画像を、テストデータとして、カメラCと対応付けて一時記憶する。
【0076】
次に、管理コントローラ30は、パラメータiを初期化し、i=1とする(S52)。次に、管理コントローラ30は、i番目のカメラCが過去に撮像した映像データ(以下「過去データ」と呼ぶ)の有無を確認する(S54)。こうした過去データは、通常、リングバッファ領域42に保存されている。確認の結果、過去データがない場合(S54でNo)、管理コントローラ30は、i番目のカメラCは、新たに取り付けられたカメラCであると判断する。この場合、第二対応情報48におけるi番目のカメラCに関する情報が更新される(S60)。この更新は、管理コントローラ30が自動的に行ってもよいし、管理コントローラ30がオペレータに対して更新作業の実行を求めてもよい。
【0077】
一方、i番目のカメラCの過去データが存在する場合(S54でYes)、管理コントローラ30は、i番目のカメラCのテストデータと、過去データと、を比較する(S56)。この比較において、管理コントローラ30は、両データの相違量を求める。相違量は、例えば、次の手順で求める。管理コントローラ30は、まず、Harrisコーナー検出やFASTアルゴリズムを用いて、過去データの最後のフレーム画像から複数の特徴点を抽出した過去特徴点画像を生成する。同様に、管理コントローラ30は、テストデータのフレーム画像からも、複数の特徴点を抽出したテスト特徴点画像を抽出する。さらに、管理コントローラ30は、過去特徴点画像の複数の特徴点と、テスト特徴点画像の複数の特徴点と、を対応付ける。例えば、管理コントローラ30は、過去特徴点画像とテスト特徴点画像との間で、画像内での位置が最も近い特徴点同士を対応付ける。次に、管理コントローラ30は、互いに対応する特徴点同士の画像内での距離を算出し、この距離の統計値を、過去データとテストデータの相違量として算出する。統計値としては、例えば、複数の特徴点それぞれについて算出された距離の相違度合いを示す値であれば特に限定されず、例えば、平均値や、中間値、最大値、二乗平均値等を用いることができる。
【0078】
管理コントローラ30は、算出された相違量が、予め規定された許容値よりも大きい場合(S58でNo)、i番目のカメラCの撮像対象位置が変更されたと判断する。この場合、第二対応情報48における、i番目のカメラCに対応する情報が更新される(S60)。一方、相違量が、許容値以下の場合(S58でYes)、管理コントローラ30は、i番目のカメラCの撮像対象位置が変更されていないと判断する。この場合、管理コントローラ30は、パラメータiを、カメラ個数Imaxと比較する(S62)。比較の結果、i≦Imaxの場合(S62でNo)、管理コントローラ30は、パラメータiをインクリメントしたうえで(S64)、ステップS54~S62を、繰り返す。i>Imaxの場合(S62でYes)、管理コントローラ30は、カメラ確認処理を終了する。
【0079】
このように、撮像処理(S24)の開始に先立って、カメラCの撮像対象位置の変更の有無を確認することで、カメラCと位置属性との対応付けの不整合を、効果的に防止できる。結果として、アラームの種類に応じて適切な位置の映像データを保存できる。
【0080】
また、これまでの説明で明らかな通り、図1図2に示す工作機械記録システム10によれば、第一対応情報46および第二対応情報48に基づいて、映像データを保存するタイミングおよびカメラCが特定されている。そして、これにより、簡易な構成で、適切に、工作機械11の状態を記録できる。
【0081】
ここで、映像として残したい撮像対象は、オペレータの好みや、加工種類等によって異なる。本例では、上述した通り、カメラCは、取付機構64を有しており、カメラCの撮像対象位置を、工作機械11および周辺機器を破壊することなく、容易に変更できる。そのため、本例によれば、状況に応じて、撮像対象が容易に変更できる。
【0082】
また、本例では、トリガと位置属性との対応関係は、第一対応情報46に記録され、位置属性とカメラCとの対応関係は、第二対応情報48に記録されている。換言すれば、本例では、トリガとカメラCとの対応関係が、二段階に分けて管理されている。かかる構成とすることで、オペレータは、トリガとカメラCとの対応関係を直接把握する必要がなく、二つの対応情報46,48を容易に管理できる。これについて、詳説する。
【0083】
例えば、トリガとカメラCとの対応関係を直接記録した対応情報(以下「直接対応情報」と呼ぶ)を参照して、映像データを保存するタイミングおよびカメラCが特定される場合を考える。この場合、例えば、主軸を撮像可能なカメラCを新設した場合、オペレータは、主軸に関連するトリガを特定し、その後、特定された全てのトリガにカメラCを対応付けるように、直接対応情報を更新する必要がある。例えば、主軸に関連するトリガが10種類ある場合、オペレータは、この10種類のトリガを特定し、直接対応情報に、この10種類のトリガとカメラCとの対応関係を改め記入する必要がある。しかし、こうした作業は、オペレータにとって、非常に手間であった。
【0084】
一方、本例のように、トリガとカメラCとの対応関係を二段階に分けて管理する場合、オペレータは、対応情報46,48を容易に管理できる。例えば、主軸を撮像可能なカメラCを新設した場合、オペレータは、位置属性「主軸」と新設されたカメラCとを対応付けるように、第二対応情報48を更新するだけでよい。また、この場合において、オペレータは、主軸と関連するトリガが何であるかを考慮する必要がない。結果として、オペレータは、容易な手順で、トリガとカメラCとの対応関係を適切に管理できる。
【0085】
次に、第二の工作機械記録システム10について説明する。第二の工作機械記録システム10の基本的な構成は、図1および図2に示す工作機械記録システム10とほぼ同様である。ただし、第二の工作機械記録システム10の場合、リングバッファ領域42を使用しない。カメラCによって撮像された映像データは、原則として、一般保存領域44に保存される。また、第二の工作機械記録システム10の場合、図1および図2に示す工作機械記録システム10と比べて、第一対応情報46および第二対応情報48の内容が異なっており、また、記憶装置40に、さらに、第三対応情報50が記憶されている。以下、これについて説明していく。
【0086】
図9は、第二の工作機械記録システム10における第一対応情報46の一例を示す図である。第一対応情報46は、繰り返し説明している通り、位置属性とトリガとの対応関係を示す情報である。第二の工作機械記録システム10の場合、NC指令、機械動作モード、および、周辺機器の状態が、トリガとして機能する。NC指令は、NCプログラムを介して数値制御装置20に通知される指令である。数値制御装置20は、実行するNC指令を順次、管理コントローラ30に出力する。管理コントローラ30は、NCプログラムから、図9の「NC指令」欄に記載されたNC指令を受信した場合、トリガが発生したと判断する。ここで発生したトリガが「対象トリガ」となる。管理コントローラ30は、当該対象トリガに関連する位置属性を特定位置属性として特定する。例えば、管理コントローラ30は、「G00」というGコード指令を受信した場合、位置属性「主軸」、「テーブル」、「チップバケット」、「チップコンベア」を特定位置属性として特定する。
【0087】
機械動作モードは、工作機械11の動作モードである。こうした機械動作モードは、UI装置28を介してオペレータが選択する。数値制御装置20は、オペレータによって所定の機械動作モードが選択された場合、その旨を管理コントローラ30に通知する。管理コントローラ30は、「機械動作モード」欄に記載された機械動作モードを受信した場合、トリガが、発生したと判断する。例えば、管理コントローラ30は、「工具手動交換モード」という機械動作モードの選択を受信した場合、位置属性「主軸」、「テーブル」、「ATCマガジン」を特定位置属性として判断する。
【0088】
周辺機器は、工作機械11や数値制御装置20に組み込まれる、または、関連付けられた機器である。周辺機器は、例えば、加工室内を照らす照明灯12や、切粉をチップバケットに搬送するチップコンベア13を含む。数値制御装置20は、予め規定された周辺機器の状態(例えば、ON/OFF状態等)を判断し、管理コントローラ30に送信する。管理コントローラ30は、「周辺機器の状態」欄に記載された状態を受信した場合、トリガが発生したと判断する。例えば、管理コントローラ30は、照明灯12がONという状態を受信した場合、位置属性「主軸」、「テーブル」、「クーラントホース」を特定位置属性として特定する。
【0089】
なお、図9に示す第一対応情報46は、一例であり、適宜変更されてもよい。例えば、トリガとして、さらに、「アラーム」を含んでもよい。また、トリガとして「NC指令」、「機械動作モード」、「周辺機器の状態」の少なくとも一つを省略してもよい。さらに、これまで説明した事象以外の事象を、トリガとして採用してもよい。また、各トリガの内容と位置属性との対応関係も適宜変更されてもよい。
【0090】
図10は、第二の工作機械記録システム10における第二対応情報48の一例を示す図である。図10に示す通り、この第二対応情報48では、複数の位置属性(すなわち、主軸、テーブル、クーラントホース、ATCマガジン等)と、複数のカメラCとの対応関係が記録されている。管理コントローラ30は、ある位置属性に関係するトリガが発生した場合、当該位置属性に対応するカメラCを特定カメラC*として特定する。
【0091】
さらに、上述した通り、第二の工作機械記録システム10は、第三対応情報50を有する。図11A図11Cは、第三対応情報50a,50b,50cの一例を示す図である。第三対応情報50は、トリガと、カメラCのフレームレートとの対応関係を記録した情報である。上述した通り、第二の工作機械記録システム10では、トリガとして、NC指令と、機械動作モードと、周辺機器の状態と、の3種類を採用している。そのため、第三対応情報50a,50b,50cも、3種類用意される。図11Aに示す第三対応情報50aは、NC指令と、カメラCのフレームレートとの対応関係を記録している。管理コントローラ30は、あるNC指令が実行された場合、当該NC指令に対応するフレームレートでの撮像を特定カメラC*に指示する。例えば、管理コントローラ30は、「G01」が実行された場合、60FPSのフレームレートでの撮像を特定カメラC*に指示し、「G89」が実行された場合、30FPSのフレームレートでの撮像を特定カメラC*に指示する。
【0092】
同様に、管理コントローラ30は、ある機械動作モードが選択された場合、当該機械動作モードに対応するフレームレートでの撮像を特定カメラC*に指示する。例えば、管理コントローラ30は、「工具手動交換モード」が選択された場合、50FPSのフレームレートでの撮像を特定カメラC*に指示する。また、管理コントローラ30は、ある周辺機器の状態を受信した場合、当該周辺機器の状態に対応するフレームレートでの撮像を特定カメラC*に指示する。例えば、管理コントローラ30は「照明灯ON」を受信した場合、10FPSのフレームレートでの撮像を特定カメラC*に指示する。
【0093】
なお、管理コントローラ30は、トリガが発生していない場合には、カメラCに対して、予め規定された標準フレームレートでの撮像を指示する。標準フレームレートは、特に限定されないが、通常、第三対応情報50に規定されたフレームレートよりも低い値が設定される。例えば、標準フレームレートは、カメラCの性能上、選択可能なフレームレートのうち、最も低いフレームレートである。
【0094】
すなわち、第二の工作機械記録システム10の場合、トリガが発生していない場合は、低レートである標準フレームレートで撮像し、トリガが発生した場合は、当該トリガに対応する特定カメラC*のフレームレートを、高レートである特定フレームレートに変更する。かかる構成とすることで、工作機械11の状態を適切に記録しつつ、カメラCの消費電力および映像データの保存容量を小さく抑えることができる。
【0095】
すなわち、フレームレートが高い場合、カメラCの消費電力、および、映像データのデータサイズが増加する。特に、カメラCがバッテリ駆動の場合、カメラCの消費電力が高いことは、大きな問題となる。一方で、実際に工作機械11を適切に管理するために必要なフレームレートは、撮像位置や状況によって大きく異なる。
【0096】
例えば、オートツールチェンジャマガジン(以下「ATCマガジン」と呼ぶ)の1回の稼働時間は、1秒程度であるため、カメラCのフレームレートが低いと、ATCマガジンの動作内容を適切に記録できない。そのため、ATCマガジンが稼働する場合は、高いフレームレートでの撮像が求められる。一方、ATCマガジンは、工具交換を行う場合にのみ稼働しており、それ以外の期間中、ATCマガジンは、ほぼ静止している。かかる静止したATCマガジンを、稼働中のATCマガジンと同様に、高フレームレートで撮像した場合、消費電力やデータサイズの増加を招く。そのため、ATCマガジンが稼働していない場合、ATCマガジンは、撮像しない、あるいは、撮像するとしても、低フレームレートで撮像することが求められる。
【0097】
また、NC指令「G00」は、早送り速度で工具を移動させるための指令である。かかるNC指令が有効な場合、工作機械11の工具等は高速で移動することが予想されるため、60FPSという高いフレームレートでの撮像が必要となる。一方、「G89」は、ボーリング加工を実行させるための指令である。この場合、工具の動きは、「G00」が指令された場合に比べ、小さいことが予想される。そのため、「G89」が有効な場、30FPSという低めのフレームレートでの撮像でも問題が無い。
【0098】
ただし、こうしたフレームレートの切り替えを、オペレータが、トリガが発生する度に指定することは、手間であるばかりでなく、切替指示が時間的に間に合わない可能性が高い。そこで、第二の工作機械記録システム10では、第三対応情報50において、トリガとフレームレートとの対応関係を予め記録している。これにより、オペレータがフレームレートをトリガの発生の度に指定しなくても、自動的に適したフレームレートに変更される。結果として、第二の工作機械記録システム10によれば、データ容量を抑えつつ適した映像データを保存できる。
【0099】
次に、第二の工作機械記録システム10による処理の流れについて説明する。第二の工作機械記録システム10の記録処理の流れは、図5に示す処理とほぼ同じである。ただし、第二の工作機械記録システム10の場合、撮像処理(S26)として、図6の処理ではなく、図12の処理を実行する。
【0100】
図12に示すように、撮像開始の指示があれば、管理コントローラ30は、全てのカメラCのフレームレートを、標準フレームレートに設定したうえで、全てのカメラCに対して撮像を指示する(S70,S72)。撮像され映像データは、一般保存領域44に保存される。このとき、映像データは、撮像を行ったカメラCの識別情報および撮像を行った時間情報を関連付けた状態で保存される。
【0101】
その後、トリガが発生した場合(S74でYes)、管理コントローラ30は、当該トリガ(すなわち対象トリガ)を第一対応情報46に照らし合わせて、対応する位置属性を、特定位置属性として特定する(S76)。なお、特定位置属性は一つに限らず複数特定される場合がある。さらに、管理コントローラ30は、特定された特定位置属性を、第二対応情報48に照らし合わせて、特定位置属性に対応するカメラCを、特定カメラC*として特定する(S78)。特定カメラC*も一つに限らず複数特定される場合がある。
【0102】
さらに、管理コントローラ30は、トリガを、第三対応情報50に照らし合わせて、トリガに対応するフレームレートを、特定フレームレートとして特定する(S80)。そして、管理コントローラ30は、ステップS78で特定された特定カメラC*のフレームレートを、特定フレームレートに変更する(S82)。そして、これにより、特定カメラC*は、特定フレームレートでの撮像を開始する。
【0103】
なお、ここで特定された特定フレームレートが、特定カメラC*の性能上可能な最高フレームレートより高い場合、管理コントローラ30は、特定カメラC*に対して最高フレームレートでの撮像を指示する。性能上可能な最高フレームレートは、例えば、設定されているカメラの露光時間により決まる。また、工作機械11の動作状況によっては、一つの位置属性に対応するトリガが複数並列で発生する場合がある。例えば、位置属性「主軸」に関連するトリガ「照明灯ON」の有効期間中に、位置属性「主軸」に対応するトリガであるNC指令「G00」が発生する場合がある。この場合、管理コントローラ30は、並列で発生する複数のトリガそれぞれに対応するフレームレートのうち、最も高いフレームレートを、特定フレームレートとして決定する。例えば、上述の例の場合、NC指令「G00」に対応するフレームレート「60」は、「照明灯ON」に対応するフレームレート「10」よりも高いため、管理コントローラ30は、60FPSを特定フレームレートとして特定する。
【0104】
フレームレートを変更した後、管理コントローラ30は、フレームレートの変更のきっかけになったトリガの有効状態を確認する(S84)。例えば、トリガが、NC指令の場合、管理コントローラ30は、当該NC指令が有効状態であるかを確認する。また、トリガが、機械動作モードの場合、管理コントローラ30は、当該機械動作モードが現在も継続しているか否かを確認する。さらに、トリガが、周辺機器の状態の場合、管理コントローラ30は、当該周辺機器の状態が維持されているか否か(例えば、照明灯12がONのままであるか否か)を確認する。
【0105】
確認の結果、トリガが有効状態の場合(S84でYes)、管理コントローラ30は、特定カメラC*のフレームレートを、特定フレームレートのまま維持する。一方、トリガが、有効状態でなくなった場合(S84でNo)、管理コントローラ30は、特定カメラC*のフレームレートを、標準フレームレートに変更する(S86)。これにより、特定カメラC*は、標準フレームレートでの撮像に切り替わる。
【0106】
なお、ここでは、トリガの有効状態の有無に基づいて、特定フレームレートから標準フレームレートへの切り替えを行っている。しかし、こうした切り替えは、トリガ発生からの経過時間Twに基づいて行ってもよい。すなわち、ステップS84において、管理コントローラ30は、トリガの有効状態を確認せずに、トリガ発生からの経過時間Twと基本時間Taとを比較してもよい。そして、比較の結果、Tw≧Taになれば、管理コントローラ30は、特定カメラC*のフレームレートを、特定フレームレートから標準フレームレートに変更してもよい。この場合、基本時間Taは、全てのトリガで共通の単一の値でもよいし、トリガの内容ごとに設定されてもよい。さらに、別の形態として、管理コントローラ30は、トリガの状態および経過時間Twの双方を考慮して、フレームレートの切り替えの要否を判断してもよい。すなわち、管理コントローラ30は、トリガが有効状態、および、Tw≧Taの少なくとも一方の条件が満たされる場合、特定カメラC*のフレームレートを、特定フレームレートのまま維持してもよい。
【0107】
フレームレートが、特定フレームレートから標準フレームレートに変更されれば、その後、撮像の終了が指示されるまで、管理コントローラ30は、ステップS74~S88を繰り返す。
【0108】
なお、映像データは、フレームレートの変更のタイミングで、別ファイルとして分割されてもよい。すなわち、トリガが発生する前の映像データと、トリガが発生した後かつトリガが無効になるまでの間の映像データと、トリガが無効になった後の映像データと、をそれぞれ異なるファイルとして一般保存領域44に保存してもよい。このとき、各ファイルは、撮像に関与したカメラCの識別情報、および、撮像の時間情報の少なくとも一つと関連づけられて保存されてもよい。例えば、各ファイルは、撮像の開始時刻と、カメラCの識別情報と、を組み合わせたファイル名で保存されてもよい。トリガの有効期間中の映像データは、さらに、トリガの種類および採用された特定フレームレートの少なくとも一つと関連づけられて保存されてもよい。
【0109】
また、別の形態として、一つのカメラCで撮像された映像データのファイルは、フレームレートの変更で分割されなくてもよい。この場合、映像データは、フレームレートの切り替えタイミングでチャプター分割されてもよい。
【0110】
以上の説明で明らかな通り、第二の工作機械記録システム10によれば、状況に応じてカメラCのフレームレートが自動的に変更される。これにより、工作機械11の状態を適切なフレームレートで記録できる。
【0111】
なお、これまでの構成は、一例であり、適宜、変更されもよい。例えば、図12の例では、トリガ発生前において、標準フレームレートでの撮像を指示している。しかし、トリガ発生前においては、いずれのカメラCも撮像を実行せず、トリガが発生した場合に、当該トリガに対応する特定カメラC*のみが、特定フレームレートで撮像を実行するようにしてもよい。かかる構成とすることで、カメラCの消費電力および映像データのデータサイズをより効果的に低減できる。
【0112】
また、第二の工作機械記録システム10では、トリガの種類に応じて、カメラCのフレームレートを変更している。しかし、カメラCの種類に応じてフレームレートを変更してもよい。例えば、複数のカメラCそれぞれについて、標準フレームレートと、特定フレームレートと、を予め設定しておく。そして、カメラCに対応するトリガが発生していない場合、標準フレームレートで撮像し、カメラCに対応するトリガが発生した場合は、特定フレームレートで撮像してもよい。例えば、第一カメラCaの標準フレームレートを1FPSとし、第一カメラCaの特定フレームレートを60FPSとして予め設定した場合を考える。この場合、第一カメラCaに対応するトリガが発生していない場合、第一カメラCaは、1FPSで撮像する。そして、第一カメラCaに対応するトリガが発生した場合、第一カメラCaは、60FPSで撮像する。
【0113】
また、第一対応情報46に規定されたトリガに限らず、他の条件で、画像の保存やフレームレートの切り替えを行ってもよい。例えば、管理コントローラ30は、カメラCから送られる映像に基づいて、動体検知をおこなってもよい。そして、管理コントローラ30は、映像に動きが生じた場合に、当該動きの発生前後における映像データを保存データとして保存したり、フレームレートを切り替えたりしてもよい。このように動体検知結果に応じて、画像の保存や、フレームレートの切り替えを行うことにより、工作機械11の挙動をより適切に保存できる。
【0114】
また、これまでの説明では、カメラCで撮影された映像データのみを対象としているが、本明細書で開示する技術は、さらに、何らかのセンサで検出された検出値を対象としてもよい。すなわち、工作機械11に、カメラCに加えて、特定の物理量(例えば、振動量や温度等)を検知するセンサを設けておく。また、第二対応情報48に、カメラCと位置属性との対応関係に加え、センサと位置属性との対応関係を記録しておく。そして、管理コントローラ30は、トリガの発生状況に応じて、当該トリガに対応するセンサを特定センサとして特定し、特定センサでの検出データを記憶装置40に保存してもよい。さらに、この場合、トリガとセンサのサンプリングレートとの対応関係を、予め設定しておき、トリガの発生状況に応じて、センサのサンプリングレートを変更してもよい。
【符号の説明】
【0115】
10 工作機械記録システム、11 工作機械、12 照明灯、13 チップコンベア、20 数値制御装置、22 プロセッサ、26,36,62 通信I/F、28,38 UI装置、30 管理コントローラ、32 プロセッサ、34 メモリ、40 記憶装置、42 リングバッファ領域、44 一般保存領域、46 第一対応情報、48 第二対応情報、50 第三対応情報、60 カメラ本体、64 取付機構、70 保存データリスト画面、C カメラ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12