(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015654
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】軸流ファン
(51)【国際特許分類】
F04D 29/38 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
F04D29/38 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117872
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000180025
【氏名又は名称】山洋電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 嘉久
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB52
3H130AC01
3H130AC11
3H130AC18
3H130AC25
3H130BA14C
3H130CB03
3H130EB04C
3H130EB05C
(57)【要約】
【課題】騒音の発生を抑制することが可能な軸流ファンを提供する。
【解決手段】複数の前進翼5を備えた軸流ファンは、前進翼5において、後縁54の前進角θ2は前縁53の前進角θ1よりも大きく、後縁54の中間部54bの位置よりも外周側は、径方向の外側に進むにつれて前進するような形状となっている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の前進翼を備えた軸流ファンであって、
前記前進翼において、
後縁の前進角は前縁の前進角よりも大きく、
前記後縁の中間部の位置よりも外周側は、径方向の外側に進むにつれて前進するような形状となっている、軸流ファン。
【請求項2】
前記後縁の中間部の位置は、前記前進翼の径方向長さの40%~60%に位置している、請求項1に記載の軸流ファン。
【請求項3】
前記後縁は、前記前進翼の径方向長さの60%~90%の位置に、変曲点を有する、請求項1に記載の軸流ファン。
【請求項4】
前記前進翼の回転方向断面視において、前記後縁から前記前縁までの長さを翼弦長とすると、最大キャンバーの位置は、前記後縁から前記翼弦長の40%~60%に位置している、請求項1に記載の軸流ファン。
【請求項5】
前記前進翼において、外周縁における前記軸流ファンの送風方向の長さは翼付根における前記送風方向の長さよりも短い、請求項1に記載の軸流ファン。
【請求項6】
前記後縁の後縁外側端部は、翼付根の中間部よりも送風方向の上流側に位置する、請求項1に記載の軸流ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸流ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、業務用空調機器や医療機器などに使用されているファンがある。これらの機器は人が近くにいる環境下に設置されることがあるため、それに使用されるファンは低騒音であることが望まれる。特許文献1には、静圧を保ちつつ回転軸を含む面において回転軸と平行な流れを形成することによって低騒音化を実現する軸流ファンが開示されている。特許文献2には、風量-静圧特性に表れる変曲点における落ち込み量を小さくできるとともに、騒音を低減することができる軸流送風機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4943817号公報
【特許文献2】特許第5210852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の軸流ファンによれば、ハブと、ハブの周囲に設けられた複数の羽根とで構成される羽根車を有し、羽根の後縁と羽根の翼端の交点と、羽根車の回転中心と、を結ぶ直線を、羽根の前縁とハブと羽根との境界の交点と、羽根車の回転中心と、を結ぶ直線よりも回転方向側に位置させ、空気吸込み側方向に突出する羽根の反りを、羽根の遠心方向に向かって次第に大きくし、ハブの半径と翼端の半径の間における羽根の出口角が極小値となる位置の半径から、翼端の半径の間において、羽根の出口角を次第に大きくすることにより回転軸と平行な流れを形成して低騒音化を図る。
【0005】
特許文献2の軸流送風機によれば、ハブの周壁部に固定された基部と径方向に対向するブレードの先端部近傍の領域に、回転方向に向かって凸となり、回転方向とは逆の方向に向かって凹となり、且つブレードの先端部に沿って延びる逆湾曲部を設け、この逆湾曲部をブレードの基部の一端が位置する側にあり径方向に延びるブレードの後端縁から、ブレードの基部の他端が位置する側にあり径方向に延びるブレードの前端縁の近傍まで先端部に沿って延ばし、逆湾曲部の径方向における幅及び逆湾曲部内に形成される凹部の深さをブレードの後端縁から前端縁に向かうに従って徐々に小さくすることにより騒音の低減を図る。
【0006】
このように、羽根(ブレード)の形状を改良することにより騒音を改善する技術は複数提案されている。しかしながら、特許文献1の軸流ファン及び特許文献2の軸流送風機においても、必ずしも十分な騒音抑制であるとはいえず、さらなる改善の余地がある。
【0007】
そこで、本発明は、騒音の発生を抑制することが可能な軸流ファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る軸流ファンは、
複数の前進翼を備えた軸流ファンであって、
前記前進翼において、
後縁の前進角は前縁の前進角よりも大きく、
前記後縁の中間部の位置よりも外周側は、径方向の外側に進むにつれて前進するような形状となっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、騒音の発生を抑制することが可能な軸流ファンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る軸流ファンの正面図である。
【
図2】
図1に示す軸流ファンのA-A線における半部断面図である。
【
図3】
図1に示す軸流ファンのインペラを示す正面側斜視図である。
【
図4】インペラカップに取り付けられている一枚の翼を示す正面図である。
【
図5】翼の後縁および外周縁を説明するための半部断面図である。
【
図6】後縁の後縁外側端部を説明するための半部断面図である。
【
図7】翼のキャンバーを説明するための断面図である。
【
図8】前進翼を備える従来の軸流ファンの空気の流れを説明する図である。
【
図9】前進翼を備える従来の軸流ファンの空気の流れを説明する図である。
【
図10】本発明の軸流ファンの空気の流れを説明する図である。
【
図11】比較例1の軸流ファンで用いたインペラを示す斜視図である。
【
図12】比較例1の軸流ファンで用いたインペラを示す上面図である。
【
図13】比較例2の軸流ファンで用いたインペラを示す斜視図である。
【
図14】比較例2の軸流ファンで用いたインペラを示す上面図である。
【
図15】本発明、比較例1、及び比較例2の軸流ファンにおける風量-静圧特性を示すグラフである。
【
図16】本発明、比較例1、及び比較例2の軸流ファンにおける回転速度-騒音レベルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る軸流ファンの一例を示す正面図である。
図1に示すように、軸流ファン1は、ケーシング2と、ケーシング2内に配置されるインペラ3と、インペラ3を回転駆動するモータ7と、を備える。インペラ3は、インペラカップ(ハブ部)4と、インペラカップ4に取り付けられている複数(本例では、7枚)の翼5と、を有する。モータ7は、インペラカップ4内に納められている。
【0013】
ケーシング2は、全体の形状が概略矩形状に形成されている。ケーシング2は、翼5の外周を囲む円筒状の枠部21を有する。枠部21は、空気を吸い込む吸込口21a(図表側の枠部開口)と、吸い込んだ空気を吐き出す吐出口21b(図裏側の枠部開口)とを有する。枠部21は、吸込口21aと吐出口21bとに連通する通風路22を形成する。翼5の回転に伴って吸込口21aから吸い込まれた空気は、通風路22に沿う方向(以下、送風方向Wという)に送られ、吐出口21bから外部に吐出される。図中に示す矢印Vの方向は、翼5の回転方向を示す。
【0014】
図2は、
図1に示す軸流ファン1のA-A線における半部断面図である。
図2に示すように、インペラカップ4は、モータ7の回転軸70に固定されている。回転軸70は、通風路22の中央部に通風路22に沿うように設けられている。回転軸70は、その軸線Yの方向が送風方向Wに沿うように設けられている。インペラカップ4は、カップの開口側を通風路22の吐出口21bの方向に向けて通風路22に沿うように回転軸70に固定されている。インペラカップ4の径方向における外側の外周側面40は、通風路22の吸入口21a側における内周面を形成する。インペラカップ4の外周側面40は、送風方向Wと平行に延びるように形成されている。翼5が取り付けられたインペラカップ4は、通風路22内において、回転軸70と共に回転することにより、風を送風方向Wへと送る。
【0015】
複数の翼5は、インペラカップ4と一体的にインペラカップ4の周囲に放射状に取り付けられている。複数の翼5は、それぞれが回転軸70の方向に対して傾斜して設けられている。
【0016】
モータ7は、翼5を回転駆動させる装置としてインペラカップ4の内部に収容されている。モータ7は、略カップ状のロータヨーク71と、ロータヨーク71の中心部に圧入された回転軸70と、コイル82が巻回されたステータコア81と、を有する。
【0017】
ロータヨーク71は、インペラカップ4内に嵌入されている。ロータヨーク71は、回転軸70と共に回転する。ロータヨーク71の内面には、マグネット72が取り付けられている。回転軸70は、軸受73に回転可能に支持されている。軸受73は、筒状の支持部74の内面に固定されている。支持部74の外面にはステータコア81が固定されている。ステータコア81の外面は、ロータヨーク71のマグネット72の内面と隙間を隔てて対向している。
【0018】
また、ステータコア81は、ベース部9に取り付けられている。ベース部9は、略カップ状に形成されている。ベース部9は、通風路22の吐出口21b側において、ベース部9の開口側をインペラカップ4の開口側と対向させるように設けられている。ベース部9は、通風路22の中央部において通風路22と同軸に設けられている。ベース部9の中心部は、支持部74の外面に固定されている。ベース部9の径方向における外側の外周側面90は、通風路22の吐出口21b側における内周面を形成する。
【0019】
ケーシング2の枠部21における吸込口21a及び吐出口21bの周縁には、電子機器などにケーシング2を固定するためのフランジ部23,24が設けられている。フランジ部23,24は、それぞれ吸込口21a及び吐出口21bからケーシング2の径方向における外方へ向けて延設されている。フランジ部23,24には、ケーシング2を貫通するように固定孔25が形成されている。この固定孔25に例えばネジを挿入することより、軸流ファン1を電子機器などに取り付けることができる。
【0020】
ケーシング2の吐出口21b側には、ベース部9と枠部21とを連結するスポーク10が設けられている。スポーク10は、ベース部9の周方向に略等間隔に複数本設けられており、モータ7が取り付けられているベース部9を支持する。
【0021】
図3は、インペラ3を示す正面側斜視図である。
図3に示すように、インペラ3における翼5は、径方向における内側の翼付根51がインペラカップ4の周壁部41と連結している。翼5の翼付根51は、回転軸70の方向に対して傾斜した状態で周壁部41と連結している。翼5は、翼付根51の一方の端部B1がインペラカップ4の周壁部41の開口側に取り付けられ、一方の端部B1とは反対側の他方の端部A1が一方の端部B1よりも回転方向V側であって、かつインペラカップ4の開口側とは反対側の底部側に位置するように取り付けられている。また、翼5は、翼付根51とは反対側であって、翼5の径方向における外側の外周縁52が、翼付根51と同様に、回転軸70の方向に対して傾斜して取り付けられている。翼5は、外周縁52の一方の端部B2がインペラカップ4の開口側に位置し、一方の端部B2とは反対側の他方の端部A2が一方の端部B2よりも回転方向V側であって、かつインペラカップ4の開口側とは反対側の底部側に位置するように傾斜して取り付けられている。
【0022】
以下の説明において、翼付根51の一方の端部B1のことを翼5の「後縁内側端部B1」といい、翼付根51の他方の端部A1ことを翼5の「前縁内側端部A1」という。また、外周縁52の一方の端部B2のことを翼5の「後縁外側端部B2」といい、外周縁52の他方の端部A2ことを翼5の「前縁外側端部A2」という。また、翼5の回転方向V側の縁部であって、翼5の前縁内側端部A1から前縁外側端部A2までの間を構成する縁部を翼5の「前縁53」という。翼5の回転方向Vと反対側の縁部であって、前縁53と対向し、翼5の後縁内側端部B1から後縁外側端部B2までの間を構成する縁部を翼5の「後縁54」という。なお、上述した外周縁52は、前縁外側端部A2から後縁外側端部B2までの間を構成する縁部のことである。
【0023】
図4は、インペラカップ4に取り付けられている一枚の翼5を示す正面図である。
図4に示すように、回転軸70の軸線Yと翼5の前縁内側端部A1とを通る直線を前縁中心線LAとしたとき、翼5の前縁外側端部A2は、前縁中心線LAよりも回転方向V側に位置する。また、回転軸70の軸線Yと翼5の後縁内側端部B1とを通る直線を後縁中心線LBとしたとき、翼5の後縁外側端部B2は、後縁中心線LBよりも回転方向V側に位置する。このように、軸流ファン1の翼5は、前縁外側端部A2と後縁外側端部B2の両方の端部が翼5の内側端部の縁を通る縁中心線(LAとLB)よりも回転方向V側に位置する構造の「前進翼」である。
【0024】
また、翼5の前縁内側端部A1と前縁外側端部A2とを通る直線を前縁仮想線ILAとしたとき、前縁中心線LAと前縁仮想線ILAとで形成される角を前縁の前進角θ1とする。翼5の後縁内側端部B1と後縁外側端部B2とを通る直線を後縁仮想線ILBとしたとき、後縁中心線LBと後縁仮想線ILBとで形成される角を後縁の前進角θ2とする。このとき、軸流ファン1の翼5は、後縁の前進角θ2が前縁の前進角θ1よりも大きくなるように構成されている。また、翼5は、後縁54の後縁外側端部B2の位置が前縁中心線LAに対して回転方向Vとは反対方向側に位置するように構成されている。
【0025】
また、翼5の後縁54は、後縁54における中間部54bの位置よりも外周側の後縁外側部分54cが、径方向の外側に進むにつれて、翼5の回転方向Vへ前進するような形状に形成されている。すなわち、後縁54は、中間部54bの位置から後縁外側端部B2までの後縁外側部分54cが、後縁外側端部B2に近づくにつれて、翼5の回転方向Vへ前進するような形状に形成されている。後縁54の中間部54bよりも外周側は、径方向の外側に進むにつれて翼5の回転方向Vへ前進する前進率が大きくなっていく傾斜部となっている。後縁54における中間部54bの位置とは、翼5の径方向における50%の位置、すなわち後縁内側端部B1から後縁外側端部B2までの後縁54における50%の位置を中点54aとした場合、翼5の径方向における40%~60%の位置のことである。なお、他の6枚の翼5も上述した翼5と同様の構成であるため、その説明は省略する。
【0026】
図5は、翼5の後縁54及び外周縁52の特徴を示す半部断面図である。
図5に示すように、翼5の後縁54は、翼5の径方向における長さの60%~90%の位置に変曲点55を有する。すなわち、翼5は、後縁54の後縁内側端部B1から後縁外側端部B2の間における、後縁内側端部B1から60%~90%の位置に、後縁54の延びる方向が翼5の径方向から送風方向Wへと向きを変える変曲点55を有する。また、翼5は、外周縁52の送風方向Wにおける周縁長さL2が、翼付根51の送風方向Wにおける付根長さL1よりも短くなるように構成されている。
【0027】
図6は、翼5の後縁54における後縁外側端部B2の特徴を示す半部断面図である。
図6に示すように、翼5の後縁54は、後縁外側端部B2の位置が、翼5の送風方向Wにおける翼付根51の中間部56の位置よりも上流側に位置するように構成されている。
【0028】
図7は、翼5のキャンバーの特徴を説明する図である。具体的には、翼5の翼付根51における回転方向Vに沿ったB-B断面図、翼5の径方向における中央部57の回転方向Vに沿ったC-C断面図、及び翼5の外周縁52における回転方向Vに沿ったD-D断面図である。
図7に示すように、B-B断面図、C-C断面図、及びD-D断面図において、翼5の後縁54と前縁53を結んだ翼弦線58の長さを翼弦長とすると、各断面図における最大キャンバーの位置は、後縁54から翼弦長の40%~60%の範囲59に位置する。また、最大キャンバー量は、翼5の翼付根51、翼5の径方向における中央部57、翼5の外周縁52と、径方向における内側から外側へと向かうにしたがって小さくなるように形成されている。このように翼5の外周側におけるキャンバー量を小さくして外周側の風圧を抑制することにより、翼全体の風圧差を低減させ圧力変動を抑えられる。
【0029】
ところで、軸流ファンは翼を前進翼にすることで静音効果を得ることが可能である。しかしながら、前進翼の形状によっては騒音を発生させる要因にもなる。
図8は、前進翼を備える従来の軸流ファンの空気の流れを説明するためのインペラの一例を示す側面図である。
図9は、前進翼を備える従来の軸流ファンの空気の流れを説明するためのインペラの一例を示す上面図である。前進翼は翼を流れる空気の流れが翼の回転による遠心力の影響を受けやすい。このため、例えば、
図8、9に示すインペラ103のように、翼105を流れる空気は、矢印101a,101b,101cに示すように翼105の外周部へ流れる。外周部へ流れた空気は、翼105の後縁154における例えば外側の端部110に集中し、圧力が上昇することで流れに乱れが発生し騒音増加の要因となる。
【0030】
これに対して、本発明の軸流ファン1は、後縁54の前進角θ2が前縁53の前進角θ1よりも大きく、後縁54の中間部54bの位置よりも外周側の後縁外側部54cが、翼5の径方向における外側に進むにつれて翼5の回転方向Vへ前進するような形状となっている。このため、例えば、
図10の軸流ファン1に示すように、翼5の負圧面を流れる空気61a,61bを、後縁外側部54cの大きな傾斜によって徐々に剥離させることにより、空気61a,61bが後縁外側端部B2に集中するのを抑制することができる。これにより、翼5を流れる空気61a,61bを、通風路22に沿って、例えば、空気61c,61d,61eで示すように吐出口21bの方向へスムーズに送り出すことができる。よって、翼5の負圧面に沿って流れる空気が後縁外側端部B2近辺に集中することによる圧力上昇を抑止し、騒音の発生を抑止することができる。
【0031】
また、軸流ファン1によれば、後縁54の中間部54bの位置が、翼5の径方向長さの40%~60%に位置している。中間部54bの位置をこの範囲にすることにより、翼5の後縁外側端部B2近辺における空気の集中をさらに抑えることができ、騒音の発生を抑止できる。
【0032】
また、軸流ファン1によれば、後縁54は、翼5の径方向長さの60%~90%の位置に、変曲点55を有する。変曲点55の位置をこの範囲にすることにより、翼5の後縁外側端部B2近辺における空気の集中をさらに抑えることができ、騒音の発生を抑止できる。
【0033】
また、軸流ファン1によれば、翼5の外周縁52の送風方向Wにおける周縁長さL2が翼付根51の送風方向Wにおける付根長さL1よりも短い。これにより、翼5の負圧面を周方向に流れる空気が翼5の後縁54よりも周方向の手前側で風下に逃げやすく、翼5の後縁54での圧力上昇を抑えることができ、騒音の発生を抑止できる。
【0034】
また、軸流ファン1によれば、翼5の後縁54と前縁53を結んだ翼弦線58の長さを翼弦長とすると、最大キャンバーの位置が後縁54から翼弦長の40%~60%の範囲59に位置する。最大キャンバーの位置をこの範囲にすることにより、翼5の後縁外側端部B2近辺における空気の集中をさらに抑えることができ、騒音の発生を抑止できる。
【0035】
また、軸流ファン1によれば、後縁54の後縁外側端部B2が翼付根51の中間部56よりも送風方向Wにおける上流側に位置する。これにより、翼5の負圧面を周方向に流れる空気が翼5の後縁54よりも周方向の手前側で風下に逃げやすくなり、翼5の後縁54での圧力上昇を抑えることができ、騒音の発生を抑止できる。
【0036】
次に、本発明の軸流ファン1の騒音抑制効果を確認するために行った試験の結果について説明する。
図11は、比較例1の軸流ファンで用いたインペラ203を示す斜視図である。
図12は、比較例1の軸流ファンで用いたインペラ203を示す上面図である。インペラ203は、先行文献1に開示されている軸流ファンの羽根が有する特徴を備えたものである。例えば、
図12に示すように、羽根205の後縁54の後縁外側端部B2の位置が前縁中心線LAよりも回転方向V側に位置するように構成されている。この点は、翼5の後縁54の後縁外側端部B2の位置が前縁中心線LAよりも回転方向Vとは反対方向側に位置するように構成されている本発明の軸流ファン1と異なる。なお、本発明の軸流ファン1との騒音の比較であるため、比較例1の軸流ファンとしての性能(風量-静圧特性)は本発明の軸流ファン1と同等の性能になるように羽根の面積、羽根の取付角度等を調節して試験を行った。
【0037】
図13は、比較例2の軸流ファンで用いたインペラ303を示す斜視図である。
図14は、比較例2の軸流ファンで用いたインペラ303を示す上面図である。インペラ303は、先行文献2に開示されている軸流送風機のブレードが有する特徴を備えたものである。例えば、
図14に示すように、ブレード305の外周縁52近傍の領域に、後縁54から回転方向Vに向かって凸となり、回転方向Vとは逆の方向に向かって凹となり、且つブレード305の外周縁52に沿って前縁53へ延びる逆湾曲部310が設けられている。この点は、逆湾曲部310が設けられていない本発明の軸流ファン1と異なる。なお、比較例2の場合も、本発明の軸流ファン1との騒音の比較であるため、比較例2の軸流ファンとしての性能(風量-静圧特性)は本発明の軸流ファン1と同等の性能になるように羽根の面積、羽根の取付角度等を調節して試験を行った。
【0038】
図15は、本発明、比較例1、及び比較例2の軸流ファンにおける風量-静圧特性を示すグラフである。本発明の軸流ファン1は、後縁54の中間部54bの位置を翼5の径方向長さの50%の位置とし、変曲点55の位置を翼5の径方向長さの75%の位置とし、翼5の回転方向Vにおける最大キャンバーの位置を翼弦長の50%の位置に設定した。なお、各軸流ファンの回転速度は3100rpmとした。
図15に示すように、本発明、比較例1、及び比較例2の軸流ファンにおける風量-静圧特性は同等の性能になっている。
【0039】
図16は、本発明、比較例1、及び比較例2の軸流ファンにおける回転速度-騒音レベルを示すグラフである。
図16に示すように、インペラ3を用いた本発明の軸流ファン1は、インペラ203を用いた比較例1の軸流ファン及びインペラ303を用いた比較例2の軸流ファンよりも、騒音レベルを抑制することができる。例えば、軸流ファンの回転速度が3100rpmのとき、比較例1の軸流ファンの騒音レベルが46dB(A)、比較例2の軸流ファンの騒音レベルが45dB(A)であるのに対して、本発明の軸流ファン1の騒音レベルは43dB(A)であった。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0041】
1 軸流ファン
2 ケーシング
3 インペラ
4 インペラカップ
5 翼
21 枠部
21a 吸込口
21b 吐出口
22 通風路
41 周壁部
51 翼付根
52 外周縁
53 前縁
54 後縁
54b 中間部
54c 後縁外側部分
55 変曲点
56 中間部
58 翼弦線
A1 前縁内側端部
A2 前縁外側端部
B1 後縁内側端部
B2 後縁外側端部
ILA 前縁仮想線
ILB 後縁仮想線
LA 前縁中心線
LB 後縁中心線
W 送風方向
Y 軸線
θ1 前縁の前進角
θ2 後縁の前進角