(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156552
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】半導体装置、半導体モジュールおよび半導体モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20241029BHJP
H01L 23/28 20060101ALI20241029BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H01L23/30 B
H01L23/28 K
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071123
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(72)【発明者】
【氏名】南 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】井口 知洋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克哉
(72)【発明者】
【氏名】松尾 圭一郎
【テーマコード(参考)】
4M109
【Fターム(参考)】
4M109AA02
4M109BA03
4M109CA02
4M109DB09
4M109EA10
4M109EC04
(57)【要約】
【課題】半導体素子の耐湿性および、半導体素子に設けられたボンディングワイヤと、表面電極と、の接合部の信頼性が高い半導体モジュールを提供することである。
【解決手段】実施形態の半導体モジュールは半導体素子と前記半導体素子上に設けられた表面電極と前記表面電極上に接続されたボンディングワイヤとを含む半導体装置において、前記表面電極と前記ボンディングワイヤとの接合部を覆うように設けられた第1の封止部材と、前記表面電極のうち前記第1の封止部材が封止していない部分を覆うように設けられた第2の封止部材と、前記第1の封止部材および前記第2の封止部材を覆うように設けられた第3の封止部材と、を備えた半導体装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と前記半導体素子上に設けられた表面電極と前記表面電極上に接続されたボンディングワイヤとを含む半導体装置において、
前記表面電極と前記ボンディングワイヤとの接合部を覆うように設けられた第1の封止部材と、
前記表面電極の表面のうち前記第1の封止部材が封止していない部分を覆うように設けられた第2の封止部材と、
前記第1の封止部材および前記第2の封止部材を覆うように設けられた第3の封止部材と、
を備えた半導体装置。
【請求項2】
封止部材の弾性率は、前記第1の封止部材が最も高く、前記第2の封止部材、前記第3の封止部材の順に高い値を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2の封止部材は、前記第3の封止部材よりも耐湿性を有する請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の封止部材の鉛直方向の厚みが、前記ボンディングワイヤの直径よりも薄い請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2の封止部材は前記第1の封止部材全体を覆い、前記第3の封止部材は前記第1の封止部材とは接さず、前記第2の封止部材とのみ接する請求項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
筐体と、
前記筐体内に設けられた請求項3に記載の半導体装置と、
を有する半導体モジュール。
【請求項7】
半導体素子上に設けられた表面電極へ、ボンディングワイヤを接合する工程と、
第1の封止部材を、前記表面電極と前記ボンディングワイヤの接合部に供給する工程と、
第2の封止部材を、前記表面電極の表面および前記第1の封止部材の少なくとも一部と接するように供給する工程と、
第3の封止部材を前記第2の封止部材を覆うように供給する工程と、
を含む半導体モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置、半導体モジュールおよび半導体モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体モジュールは、通常、導体パターンを有する基板と、基板上に実装され、一方の面(裏面)に導体パターンと接合される裏面電極を有し、他方の面(表面)に表面電極が設けられている半導体素子と、表面電極と導体パターンなどとを電気的に接合するボンディングワイヤを有している。半導体素子は、高温高湿の環境下において安定した性能を発揮するために、耐湿性を有する熱硬化性樹脂などの封止材料により封止されている。しかし、半導体素子へ通電を繰り返すと、半導体素子の発熱に伴い封止材料が熱膨張・収縮をくり返すことにより、封止材料が表面電極から剥離するという課題や、ボンディングワイヤと電極等の接合が破壊され接続不良を発生してしまうといった課題がある。
【0003】
そこで、半導体素子の耐湿性を十分に確保しつつ、半導体素子とボンディングワイヤ、あるいはボンディングワイヤと導体パターンとの接合部の信頼性が高い半導体モジュールの提供が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、半導体装置の耐湿性および、半導体素子に設けられたボンディングワイヤと、表面電極との接合部の信頼性が高い半導体モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
半導体素子と前記半導体素子上に設けられた表面電極と前記表面電極上に接続されたボンディングワイヤとを含む半導体装置において、前記表面電極と前記ボンディングワイヤとの接合部を覆うように設けられた第1の封止部材と、前記表面電極のうち前記第1の封止部材が封止していない部分を覆うように設けられた第2の封止部材と、前記第1の封止部材および前記第2の封止部材を覆うように設けられた第3の封止部材と、を備えた半導体装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る半導体モジュールの断面図。
【
図2】第1の実施形態に係る半導体モジュールの製造方法。
【
図3】第1の実施形態に係る半導体モジュール製造方法のステップS3における半導体モジュールの断面の概略図。
【
図4】第1の実施形態に係る半導体モジュール製造方法のステップS4における半導体モジュールの断面の概略図。
【
図5】第1の実施形態に係る一般的な半導体モジュールの断面図。
【
図6】第1の実施形態に係るボンディングワイヤ接合部にかかる累積非弾性ひずみと第2の封止部材5にかかる垂直応力の比較を示す図。
【
図7】第2の実施形態に係る半導体モジュールの断面図。
【
図8】第2の実施形態に係る半導体モジュールの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の半導体モジュールおよび半導体モジュール製造方法について図面を参照して説明する。本明細書においては各部分の配置および構成について表面、裏面を用いて説明する場合、表面の反対側の面が裏面とする。
【0009】
第1の実施形態の半導体モジュールおよび半導体モジュール製造方法を
図1から
図5を参照して説明する。まず、第1の実施形態に係る半導体モジュールの構造について説明する。
図1に、第1の実施形態に係る半導体モジュールの断面図を示す。
図1に示すように半導体装置100は、絶縁基板1と、絶縁基板1に設けられた、表面電極2a及び裏面電極(不図示)を有する半導体素子2と、半導体素子2に設けられた表面電極2aに接続されたボンディングワイヤ3と、表面電極2aとボンディングワイヤ3との接合部を覆うように設けられた第1の封止部材4と、第1の封止部材4の周囲に第1の封止部材4と接するように設けられた第2の封止部材5と、を備える。また、半導体モジュール101は、半導体モジュール101は、半導体装置100が載置され、半導体素子2の熱を放熱するためのベース板7と、ベース板7の外周に設けられ、ベース板7に載置された半導体装置100全体を第3の封止部材6により封止できるように周囲を囲うケース8を備える。
【0010】
絶縁基板1は、絶縁層11と、導体パターン12とを有し、これらが積層した構造をしている。絶縁層11には、複数の導体パターン12が設けられており、それぞれの導体パターン12どうしは、空間を介することや絶縁層11により電気的に絶縁されている。絶縁層11としては、例えば窒化ケイ素(SiN)、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウ ム(AlN)を用いることができる。絶縁層11は、表面11aと、裏面11bとを有している。導体パターン12は、絶縁層11の表面11aおよび裏面11bにそれぞれ設けられている。導体パターン12には、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)を用いることができる。
【0011】
半導体素子2は、絶縁基板1と反対の面に表面電極2aを有している。半導体素子2としては、例えばシリコン、炭化シリコン、窒化ガリウムを用いることができる。
【0012】
表面電極2aには、例えばSiを含有するアルミニウム(Al)、銅(Cu)の合金等を用いることができる。表面電極2aは、半導体素子2の活性領域に電気的に接続される。
表面電極2aには後述するようにボンディングワイヤ3を接続することができる。また、表面電極2aは、被覆層を有していてもよい。例えば、被覆層はめっきである。被覆層で表面電極2aを覆うことで表面電極2aを酸化から保護することができる。さらに、被覆層はボンディングワイヤ3の接合時に半導体素子2にかかる衝撃を和らげる。被覆層は、例えばニッケル(Ni)からなる層や金(Au)からなる層、或いは合金層、さらにはこれらを積層した層構造であってもよい。半導体素子2は、表面電極2aが設けられた面と反対側の面である裏面側が絶縁基板1の表面11a側の導体パターン12に、第1の接合部材9を介して接合される。第1の接合部材9として、例えば、はんだ、焼結性銀粒子を含むペーストなどを用いることができる。
【0013】
半導体素子2は、例えば、表面電極2a側から半導体素子2の裏面側に向かって電流が流れる縦型構造を有している。具体的に半導体素子2は、IGBT(InsulatedGate Bipolar Transistor)、縦型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)のようなスイッチング素子、又はショットキーバリアダイオードのような整流素子とすることできる。半導体素子2としては、例えば、シリコン(Si)、炭化シリコン(SiC)、窒化ガリウム(GaN)を用いることができる。
【0014】
ボンディングワイヤ3は、接合部31において、表面電極2aと接合している。接合部31は、ボンディングワイヤ3と表面電極2aが接する部分をさす。ボンディングワイヤ3を介して表面電極2aへ電流が流れる。ボンディングワイヤ3には、アルミニウムや銅を用いることができる。
【0015】
第1の封止部材4は、表面電極2a上に設けられた接合部31周辺を覆う。第1の封止部材4は、接合部31に接していればよく、覆い方は問わない。第1の封止部材4の鉛直方向の厚みは、ボンディングワイヤ3の直径の長さよりも厚くても、薄くてもどちらでも良い。第1の封止部材4の鉛直方向の厚みが厚くなるほど、ボンディングワイヤ3が第1の封止部材4に及ぼす熱応力の影響が大きくなり、第1の封止部材4にかかる力が大きくなる。ボンディングワイヤ3から第1の封止部材4へかかる熱応力が増大すると、第1の封止部材4は表面電極2aから剥離しやすくなる。そのため、例えば第1の封止部材4の鉛直方向の厚みは、ボンディングワイヤ3の直径の長さより薄い厚みとすることができる。
一般的に、半導体モジュールでは、半導体素子2と導体パターン12などとの不必要な部分が電気的に導通しないように絶縁性を有する部材で封止したりする。しかし、後述する第2の封止部材5が第1の封止部材4の外周部を覆うため、第1の封止部材4が導電性を有していても半導体素子2以外に電流が流れない。そのため、第1の封止部材4としては、絶縁性材料であることは必須ではなく、導電性材料を用いることもできる。第1の封止部材4としては、例えば絶縁性材料である、ポリイミド樹脂、ポリイミドおよびシリコーンゲルを含んだ樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などや、導電性材料であるフィラーを含有する樹脂を用いることができる。フィラーとしては、例えば、金属またはセラミックスを用いることができる。フィラーを入れることにより、熱伝導性や電気伝導性を向上させることができる。一方で、第1の封止部材4の硬さや線形膨張率といった物性値は、フィラーを含有しなかった場合に比べて容易に変更することが可能となる。第1の封止部材4としては、半導体モジュール101の最高使用温度よりも高いガラス転移温度を有していることが好ましい。半導体素子2として、例えば、炭化シリコン(SiC)や窒化ガリウム(GaN)などを用いた場合、シリコンなどを用いた場合に比べてより高温で動作することができるため、接合部31に加わる温度も高くなる。そこで、半導体素子2にSiCやGaNなどを用いた場合は、例えば、150度以上のガラス転移温度を有していることが好ましい。
【0016】
第2の封止部材5は、表面電極2aの表面を封止する。第2の封止部材5の一部は、第1の封止部材4と接している。また、第2の封止部材5は、第1の封止部材4全体を被覆していなくても良い。ただし、第2の封止部材5とボンディングワイヤ3は接触しない。第2の封止部材としては、絶縁性および耐湿性を有した部材を用いることが好ましく、例えば、ポリイミドやシリコーンゲルを含んだ樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂を用いることができる。また、第2の封止部材5は、表面電極2aの耐湿性を確保するために十分な厚みが必要である。例えば、第2の封止部材5の厚みを50μm以上とすることができる。ここで、耐湿性とは高湿環境下において、外部からの水分の侵入に対する耐性を言い、耐湿性が高いほど高湿環境下においても外部から水分が侵入し難い。例えば、第2の封止部材5の耐湿性が低いと、高湿環境下で半導体モジュール101内部に水分が侵入し、第2の封止部材5の絶縁耐圧が低下する。第2の封止部材5の絶縁耐圧が低下すると、半導体素子2にリーク電流が発生し破壊にいたる。
【0017】
第3の封止部材6は、半導体モジュール101内部に充填され半導体素子2全体を封止する。第3の封止部材6は、具体的には、後述するベース板7とケース8により画される領域の内部に充填され、第3の封止部材6は、絶縁基板1と、半導体素子2と、ボンディングワイヤ3と、を封止する。第3の封止部材6は、少なくとも第2の封止部材5と第1の封止部材4を覆っていればよく、第3の封止部材6は、絶縁基板1、半導体素子2、ボンディングワイヤ3の全てを封止しなくても良い。第3の封止部材6としては、絶縁性を有した材料を用いることができ、例えばシリコーンゲルを用いることができる。
【0018】
続いて、第1の封止部材4、第2の封止部材5および第3の封止部材6の弾性率および絶縁性破壊強さの関係について説明する。一般的に、半導体素子は通電に伴い、加熱と冷却が繰り返される。ボンディングワイヤの熱膨張率と、ボンディングワイヤが接合する表面電極との熱膨張率が異なるため、加熱と冷却が繰り返されると熱膨張率の差による熱応力が発生し、表面電極からボンディングワイヤが剥離することがある。ボンディングワイヤの剥離に伴い、表面電極および表面電極とボンディングワイヤとの接合部を覆う耐湿性樹脂も剥離する。ボンディングワイヤが表面電極から剥離すると、半導体モジュールの信頼性が低下する。また、耐湿性樹脂が剥離すると、半導体素子全体を覆うSiゲルが吸湿した水分が表面電極に達し、表面電極にリーク電流が流れるおそれがあり、半導体モジュールの信頼性が低下する。ボンディングワイヤが表面電極から剥離しなくとも、耐湿性樹脂自体も、半導体素子の発熱に伴い熱収縮するため、表面電極から耐湿性樹脂が剥離することがある。
【0019】
そこで、本実施形態では、表面電極2aと、ボンディングワイヤ3の接合部31を補強するため、弾性率の異なる第1の封止部材4、第2の封止部材5および第3の封止部材6を用いる。第1の封止部材4は、第2の封止部材5および第3の封止部材6よりも弾性率が高い部材を用いる。第1の封止部材4の弾性率は、1000MPa以上であることが望ましい。第2の封止部材5の弾性率は、第1の封止部材4の弾性率より低く、第3の封止部材6の弾性率より高い。第3の封止部材6の弾性率は、第2の封止部材5の弾性率よりも低い。例えば、1MPa以下とすることができる。つまり、第1の封止部材4、第2の封止部材5、第3の封止部材6の順に弾性率の大きい部材を用いれば良く、言い換えると、ボンディングワイヤ3と、表面電極2aとの接合部31に最も近い封止部材の弾性率が最も大きく、接合部31から離れた位置を封止する封止部材の弾性率が最も小さければよいので、封止部材の種類は3つに限られない。
【0020】
第1の封止部材4が第2の封止部材5に比べて高い弾性率を有している場合、第1の封止部材4の方が第2の封止部材5に比べて、熱収縮に対する耐性が強い。そのため、接合部31を第1の封止部材4を用いずに封止した場合に比べて、接合部31を第1の封止部材4で封止した場合の方が第2の封止部材5にかかる応力が低減するため、表面電極2aにおいて、第2の封止部材5の剥離を防止することができる。また、同様に第2の封止部材5の弾性率が、第3の封止部材6の弾性率に比べて高い弾性率を有している場合、第2の封止部材5の方が第3の封止部材6に比べて、熱収縮に対する耐性が強い。そのため、第3の封止部材6が第2の封止部材5の表面において、熱膨張率の違いに起因する熱応力による剥離を防止することができる。つまり異なる弾性率を有する3種類の封止部材で半導体素子2を封止することで、半導体モジュール101の信頼性および耐湿性を保つことができる。
【0021】
第2の封止部材5および、第3の封止部材6は、第1の封止部材4に比べて絶縁性破壊強さが強いことが望ましい。絶縁性破壊強さとは、絶縁体にどの程度の電圧がかかったら、絶縁体が破壊されて絶縁性を失い、電流が流れるようになるかを表す指標である。電流が半導体素子2およびボンディングワイヤ3外に流れにくくするため、第2の封止部材5および、第3の封止部材6は、第1の封止部材4に比べて絶縁性破壊強さが強いことが望ましい。例えば、第2の封止部材5と第3の封止部材6は、10kV(1mm)の絶縁性破壊強さを有していることが好ましい。
【0022】
ベース板7は、半導体素子2から発生した熱をヒートシンク(図示しない)へ運び放熱する役割を有する。ヒートシンクに運ばれた熱は、ヒートシンクの裏面を介して、第1の実施形態に係る半導体モジュール101の外部に放熱される。ベース板7は、表面7aと裏面7bとを有している。ベース板7には、熱伝導性の高い材料を用いることができる。
例えば、ベース板7として、アルミニウムや銅を用いることができる。ベース板7の表面7aは、絶縁基板1の裏面11b側に設けられた導体パターン12に接合している。ベース板7は、第2の接合部材10を介して導体パターン12に接合される。第2の接合部材10としては、例えば、はんだ、焼結性銀粒子などが用いられる。
【0023】
ケース8は、側壁81と、内壁82とを有している。ケース8は、内壁82において、ベース板7の側面71に接合されている。ケース8には、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などを用いることができる。また、ベース板7と、ケース8は、半導体モジュール101の筐体を構成する。
【0024】
つづいて、半導体モジュール101の製造方法について説明する。
図2に、第1の実施形態に係る半導体モジュール101の製造方法を示すフローチャートを示す。
【0025】
ステップS1として、絶縁基板1に半導体素子2を接合する。具体的には、半導体素子2の裏面を第1の接合部材9を介して、絶縁基板1の表面11a側の導体パターン12に接合する。次にステップS2に進む。
【0026】
ステップS2として、ボンディングワイヤ3を半導体素子2の表面電極2aに超音波接合などにより接合する。ボンディングワイヤ3を表面電極2aに接合後、ステップS3に進む。
【0027】
ステップS3として、第1の封止部材4を接合部31を覆うように供給し、第1の封止部材4で接合部31を封止する。
図3に第1の実施形態に係る半導体モジュール101の製造方法のステップS3における半導体モジュール101の一部拡大断面の概略図を示す。
図3aに示すように、例えば、液状の第1の封止部材4を、ボンディングワイヤ3と半導体素子2の表面電極2aの接合部31近傍に供給する。ここで、接合部31近傍とは、ワイヤの高さ(直径)と表面電極2aの平面方向のどちらの方向も含む。第1の封止部材4は、滴下した勢いや、表面張力などで接合部31に到達し、接合部31を覆うことができれば任意の位置から滴下することができる。第1の封止部材4が、樹脂である場合は、主剤と硬化剤の混合物や主剤と溶剤の混合物を、エアーディスペンスやジェットディスペンスを用いて滴下することで、接合部31に第1の封止部材4を供給することができる。第1の封止部材4が、はんだ合金を含んでいる場合は、溶融したはんだをはんだごてなどを用いて、接合部31に供給することができる。
【0028】
接合部31に第1の封止部材4を供給した後、供給した第1の封止部材4を硬化する。第1の封止部材4が、樹脂である場合は、例えば供給された液状の第1の封止部材4を常温下で保持することや、第1の接合部材9の融点以下の温度で加熱することで、第1の封止部材4を硬化することができる。第1の封止部材4が、はんだ合金を含んでいる場合は、供給された液状の第1の封止部材4を冷却することで、第1の封止部材4を硬化することができる。
図3bに示すように、供給された第1の封止部材4を硬化することで、接合部31が、第1の封止部材4により封止される。第1の封止部材4で、接合部31を封止した後、ステップS4に進む。
【0029】
ステップS4として、第2の封止部材5を第1の封止部材4と接するように表面電極2a上に供給し、表面電極2aの表面および側面を封止する。
【0030】
図4に第1の実施形態に係る半導体モジュール101の製造方法のステップS3における半導体モジュールの一部拡大断面の概略図を示す。
図4aに示すように、例えば、液状の第2の封止部材5を、ステップS3で封止した第1の封止部材4に接するように、半導体素子2の表面電極2aに供給する。このとき、第2の封止部材5の塗布開始位置は、ボンディングワイヤ3の端部付近に限らず、表面電極2aのうち接合部31を除いた鉛直方向上方から塗布することができる。接合部31の鉛直方向上方から、第2の樹脂を塗布した場合、第2の封止部材5とボンディングワイヤ3と、が接する部分が生じ、ボンディングワイヤ3に第2の封止部材5の熱収縮による熱応力がかかってしまう。これを防ぐために、第2の封止部材5は、表面電極2aのうち接合部31を除いた鉛直方向上方から塗布することが好ましい。第2の封止部材5が、樹脂である場合は、第1の封止部材4を供給する場合と同様に主剤と硬化剤の混合物や主剤と溶剤の混合物を、エアーディスペンスやジェットディスペンスを用いて滴下することで、表面電極2a上に供給することができる。
表面電極2aに第2の封止部材5を供給した後、供給した第2の封止部材5を硬化する。
第2の封止部材5が樹脂である場合は、例えば供給された液状の第2の封止部材5を常温下で保持することや、第1の接合部材9の融点以下の温度で加熱することで、第2の封止部材5を硬化することができる。
図4bに示すように、第2の封止部材5で、表面電極2aを封止した後、ステップS5に進む。
【0031】
ステップS5として、ベース板7に絶縁基板1およびケース8を接合する。ベース板7を、絶縁基板1の導体パターン12に第2の接合部材10を介して接合する。ケース8は、ケース8の内壁82と、ベース板7の側面71と、が接するように接合する。ベース板7およびケース8により、半導体モジュール101の筐体が形成される。ベース板7に、絶縁基板1およびケース8を接合した後、ステップS6に進む。
【0032】
ステップS6として、第3の封止部材6をベース板7およびケース8を含む半導体モジュール101の筐体内に供給する。第2の封止部材5と同様に、液状の第3の封止部材6を半導体モジュール101の筐体内に供給し、この供給した第3の封止部材6を硬化する。
【0033】
つづいて、第1の実施形態に係る半導体モジュールの効果を説明する。前述したように、表面電極2aと、ボンディングワイヤ3と、の接合部31には、表面電極2aが設けられた半導体素子2とボンディングワイヤ3との熱膨張係数の差により、通電に伴い、繰り返し熱応力が発生する。
図5に第1の実施形態に係る一般的な半導体モジュールの断面図を示す。
図5に示した半導体モジュール201の接合部31は、第2の封止部材5で封止されている。一方、
図1に示した半導体モジュール101の接合部31は、第1の封止部材4により封止されている。この、第1の封止部材4は第2の封止部材5に比べて高い弾性率を有する。そのため、第2の封止部材5で接合部31を封止した場合に比べて、第1の封止部材4を用いて接合部31を封止した場合の方が、接合部31にかかるボンディングワイヤ3からの応力を低減することができる。接合部31にかかる応力が低減することで、表面電極2aに接合されたボンディングワイヤ3の表面電極2aからの剥離を抑制することができる。つまり、本実施形態に係る半導体モジュール101によれば、ボンディングワイヤ3が表面電極2aから剥離することを抑制でき、より信頼性が高い半導体モジュールを提供することができる。
【0034】
また、第1の封止部材4、第2の封止部材5および第3の封止部材6も、半導体素子2の発熱と放熱に伴い熱膨張・熱収縮をくり返し、熱応力が発生する。耐湿性を有する、第2の封止部材5は、鉛直方向の厚みが大きいほど第3の封止部材6から侵入する水分が内部を拡散し難く、接合部31まで水分が到達し難い。しかし、第2の封止部材5の鉛直方向の厚みが厚くなるほど、第2の封止部材5がボンディングワイヤ3に及ぼす熱応力の影響が大きくなり、ボンディングワイヤ3の接合部31にかかる力が大きくなる。本実施形態に係る半導体モジュールにおいては、第1の封止部材4が接合部31を覆っているため、第2の封止部材5にかかる熱応力を緩和することができる。
図6に第1の実施形態に係るボンディングワイヤ接合部にかかる累積非弾性ひずみの比較を示す図を示す。有限要素法を用いて、
図1に示した半導体モジュール101の接合部31付近にかかる累積非弾性ひずみと、
図5に示した半導体モジュール201の接合部31付近にかかる累積非弾性ひずみと、の比較を行った。具体的には、電流を2秒オンして8秒オフした場合のパワーサイクル試験を模擬した際の接合部31にかかる1サイクル分の累積非弾性ひずみ(mm/mm)の比較を行った。このとき、半導体モジュール101、半導体モジュール201の第2の封止部材5の厚みはともに100μmとした。また、半導体モジュール101、半導体モジュール201のどちらの場合もボンディングワイヤ3の径はΦ400μmとした。
図5に示したように、接合部31を第1の封止部材4で封止した半導体モジュール101の方が、接合部31を第2の封止部材5で封止した半導体モジュール201に比べて接合部31にかかる累積非弾性ひずみが小さく、約35%低減したことが分かる。すなわち、第1の実施形態に係る半導体モジュールによれば、第2の封止部材5を厚くしても、非弾性ひずみに起因する、ボンディングワイヤ3の接合部31の表面電極2aからの剥離や第2の封止部材5の表面電極2aからの剥離を抑制することができる。つまり、半導体素子2の耐湿信頼性を確保しつつ、接合部31が補強された半導体モジュールを提供することができる。
【0035】
また、第1の封止部材4の鉛直方向の厚みが薄いほど、ボンディングワイヤ3において、第1の封止部材4の熱収縮による応力がかかる部分が小さくなるため、一層、ボンディングワイヤ3が表面電極2aから剥離し難い半導体モジュールを提供することができる。
【0036】
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態にかかる、半導体モジュールおよび半導体モジュールの製造方法を
図7から
図8を用いて説明する。本実施形態では、第1の実施形態に対して第2の封止部材5の構造が異なる。上記の異なる点について、具体的に説明する。
【0037】
第1の実施形態における半導体モジュールでは、第2の封止部材5は、表面電極2aおよび第1の封止部材4と接している。しかし、本実施形態にかかる半導体モジュールでは、第2の封止部材5は、表面電極2aおよび第1の封止部材4以外とも接する。
図7に第2の実施形態に係る半導体モジュールの断面図を示す。
図7に示すように、第2の実施形態に係る第2の封止部材5は、半導体素子2の表面電極2a以外にも例えば絶縁基板1やベース板7などと接する。第2の封止部材5は、表面電極2a外に濡れ広がることができるため、表面電極2a上のみに塗布する場合に比べて、鉛直方向上方の厚みが大きい。
【0038】
図8に第2の実施形態に係る半導体モジュールの製造方法のフローチャートを示す。ステップS7からステップS9は、
図2に示したステップS1からステップS3と同様の工程で行うことがでる。ステップS9として、第1の封止部材4で接合部31を封止した後、ステップS10に進む。
【0039】
ステップS10として、第2の封止部材5を表面電極2aを覆うように、例えば表面電極2a上に供給し、封止する。このとき、第2の封止部材5は、表面電極2a外にも供給するため第2の封止部材5の塗布開始位置は、表面電極2aのうちの接合部31を除いた鉛直方向上方に限らず、表面電極2a外の鉛直方向上方から塗布することができる。第2の封止部材5で、表面電極2aを封止した後、ステップS11に進む。
【0040】
ステップS11からステップS12は、
図2に示したステップS5からステップS6と同様の工程で行うことができる。
【0041】
第2の封止部材5の厚みが厚いほど、接合部31および接合部31付近の第2の封止部材にかかる熱応力が大きくなる。しかし、接合部31を第1の封止部材4が封止しているため、接合部31および接合部31付近の第2の封止部材にかかる熱応力を低減することができる。そのため、本実施形態の半導体モジュールによれば、半導体モジュール内に供給する第2の封止部材の量を増やすことができ、耐湿性樹脂である第2の封止部材の厚みを厚くすることができる。つまり、本実施形態の半導体モジュールによれば接合部の信頼性を確保しつつ半導体素子への水分の侵入を防ぎ、半導体素子の耐湿信頼性が高い半導体モジュールを提供することができる。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら新規な実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1…絶縁基板
11…絶縁層
11a…表面
11b…裏面
12…導体パターン
2…半導体素子
2a…表面電極
3…ボンディングワイヤ
31…接合部
4…第1の封止部材
5…第2の封止部材
6…第3の封止部材
7…ベース板
71…側面
7a…表面
7b…裏面
8…ケース
81…側壁
82…内壁
9…第1の接合部材
10…第2の接合部材
100…半導体装置
101…半導体モジュール