(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156554
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】超音波センサ
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20241029BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20241029BHJP
G01S 7/521 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
H04R17/00 330H
B81B3/00
G01S7/521 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071125
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉満 翔平
【テーマコード(参考)】
3C081
5D019
5J083
【Fターム(参考)】
3C081AA01
3C081BA22
3C081BA32
3C081BA33
3C081BA45
3C081BA48
3C081BA55
3C081DA03
3C081DA27
3C081DA30
3C081EA01
5D019AA21
5D019BB11
5D019BB25
5D019FF01
5J083AD04
5J083CB01
5J083CB07
(57)【要約】
【課題】受信感度を向上させることにより、より遠くの距離を検出することができる超音波センサを得る。
【解決手段】超音波センサ10は、基板12と、複数の圧電膜24と、基板12上に設けられ、かつ各々の圧電膜24の下方に設けられる下部電極22と、各々の圧電膜24上に設けられ、当該圧電膜24を介して下部電極22と対向する上部電極26と、を備えている。超音波センサ10は、圧電膜24上の上部電極26と、当該圧電膜24に隣接する圧電膜24の下方に設けられた下部電極22とが接続されることにより複数の圧電膜24が直列に接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
複数の圧電膜と、
前記基板上に設けられ、かつ各々の前記圧電膜の下方に設けられる下部電極と、
各々の前記圧電膜上に設けられ、当該圧電膜を介して前記下部電極と対向する上部電極と、を備え、
前記圧電膜上の前記上部電極と、当該圧電膜に隣接する前記圧電膜の下方に設けられた前記下部電極とが接続されることにより前記複数の圧電膜が直列に接続される超音波センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波センサを超音波受信用の受信センサとし、
該受信センサの前記複数の圧電膜とは別に1つの圧電膜を有する超音波発信用の発信センサを備える超音波センサ。
【請求項3】
前記受信センサの前記複数の圧電膜の周囲を囲むように前記発信センサの前記1つの圧電膜が配置される請求項2に記載の超音波センサ。
【請求項4】
前記発信センサの前記1つの圧電膜の周囲を囲むように前記受信センサの前記複数の圧電膜が配置される請求項2に記載の超音波センサ。
【請求項5】
絶縁膜が除去された領域が、前記複数の圧電膜の周囲にランドルト環形状に設けられている請求項1に記載の超音波センサ。
【請求項6】
前記複数の圧電膜は、各々面積が等しく形成されている請求項1に記載の超音波センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧電膜に交流電圧を印加することによりメンブレンを振動させて音波を発生させ、反射した音波を受信してメンブレンが振動することにより圧電膜によって電圧を発生させる超音波センサが開示されている。この超音波センサにおいては、複数設けられたリブのうちの1つのリブにおいて、上部電極、下部電極を介して1つの圧電膜で発生した電荷を取り出してパッドへ出力している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された超音波センサにおいては、圧電膜が1つなので電圧を増加させることは難しいため、受信感度を向上させることは難しいという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、受信感度を向上させることにより、より遠くの距離を検出することができる超音波センサを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の超音波センサは、基板と、複数の圧電膜と、前記基板上に設けられ、かつ各々の前記圧電膜の下方に設けられる下部電極と、各々の前記圧電膜上に設けられ、当該圧電膜を介して前記下部電極と対向する上部電極と、を備え、前記圧電膜上の前記上部電極と、当該圧電膜に隣接する前記圧電膜の下方に設けられた前記下部電極とが接続されることにより前記複数の圧電膜が直列に接続される。
【0007】
本発明の第1の態様の超音波センサによれば、圧電膜上の上部電極と、当該圧電膜に隣接する圧電膜の下方に設けられた下部電極とが接続されることにより複数の圧電膜が直列に接続されている。そのため、各圧電膜において発生した電圧が、直列に接続された各々の圧電膜の上部電極及び下部電極を介して出力されるので、圧電膜が1つの場合よりも超音波の受信時に発生する電圧を増加させることができる。このように超音波の受信時に発生する電圧が増加することにより受信感度を向上させることができるので、より遠くの距離を検出することができる。
【0008】
本発明の第2の態様の超音波センサは、上記第1の態様の超音波センサを超音波受信用の受信センサとし、該受信センサの前記複数の圧電膜とは別に1つの圧電膜を有する超音波発信用の発信センサを備える。
【0009】
複数の圧電膜を備えている超音波センサにおいては、複数の圧電膜に電圧を印加する際に、各圧電膜に印加される電圧は圧電膜の数に応じて低下してしまう。本発明の第2の態様の超音波センサによれば、受信センサの複数の圧電膜と別に1つの圧電膜を有する発信センサを備えているので、複数の圧電膜に電圧を印加する場合と比較して圧電膜に印加される電圧の低下を抑制することができる。このように、超音波の発信時に印加する電圧の低下を抑制できることにより、より遠くまで超音波を発信することができる。
【0010】
本発明の第3の態様の超音波センサは、上記第2の態様の超音波センサにおいて、前記受信センサの前記複数の圧電膜の周囲を囲むように前記発信センサの前記1つの圧電膜が配置される。
【0011】
本発明の第3の態様の超音波センサによれば、受信センサの複数の圧電膜の周囲を囲むように発信センサの1つの圧電膜が配置されるので、受信センサと発信センサとを並べて配置する場合と比較して、超音波センサを全体的にコンパクトにすることができる。
【0012】
本発明の第4の態様の超音波センサは、上記第2の態様の超音波センサにおいて、前記発信センサの前記1つの圧電膜の周囲を囲むように前記受信センサの前記複数の圧電膜が配置される。
【0013】
本発明の第4の態様の超音波センサによれば、発信センサの1つの圧電膜の周囲を囲むように受信センサの複数の圧電膜が配置されるので、受信センサと発信センサとを並べて配置する場合と比較して、超音波センサを全体的にコンパクトにすることができる。
【0014】
本発明の第5の態様の超音波センサは、上記1~4の態様の超音波センサにおいて、絶縁膜が除去された領域が、前記複数の圧電膜の周囲にランドルト環形状に設けられている。
【0015】
本発明の第6の態様の超音波センサは、上記1~5の態様の超音波センサにおいて、前記複数の圧電膜は、各々面積が等しく形成されている。
【0016】
本発明の第6の態様の超音波センサは、複数の圧電膜が、各々面積が等しく形成されているので、各圧電膜で均等に超音波を受信することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の超音波センサによれば、受信感度を向上させることにより、より遠くの距離を検出することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る超音波センサの平面図である。
【
図2】
図1のA-A線断面を模式的に示した断面模式図である。
【
図3】
図1のB1-B2線断面を模式的に示した断面模式図である。
【
図4】
図1のC-C線断面を模式的に示した断面模式図である。
【
図7】圧電膜の分割数と読み取り電圧との関係を表すグラフある。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る超音波センサを模式的に示す平面図である。
【
図9】ダイアフラムの変形を説明するための説明図である。
【
図10】本発明の第3実施形態に係る超音波センサを模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1~
図7を用いて本発明の第1実施形態に係る超音波センサ10について説明する。本実施形態の超音波センサ10は、超音波からなる送信波と、送信波が対象物に反射して返ってくる反射波との時間間隔に基づいて音速から距離を測距するToF(Time of Flight)の技術を利用したセンサである。本実施形態の超音波センサ10は、一例として、シリコン等を加工して微細な素子を形成する微細加工技術(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems)を使用して形成される。なお、以下の図面においては、視認容易のため、各構成部品の層の層厚及びそれらの比率は、適宜変更して描いており、必ずしも実際の層厚及び比率を反映したものではない。
【0020】
図1は本発明の第1実施形態に係る超音波センサの平面図、
図2は
図1のA-A線断面を模式的に示した断面模式図である。
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の超音波センサ10は、基板12と、基板12上に配設された複数の圧電膜部20とを備えている。なお、本実施形態において、一例として超音波センサ10は、4つの圧電膜部20を備えており、
図1の図中右上側の圧電膜部20から順に時計回りに第1圧電膜部20A、第2圧電膜部20B、第3圧電膜部20C、第4圧電膜部20Dとする。なお、以下、特に特定の圧電膜部を意図しない場合には、第1~第4圧電膜部20A~20Dをまとめて圧電膜部20と称することがある。
【0021】
図2に示されるように、基板12は、ダイアフラム14と枠部16とを備えている。ダイアフラム14は、一例としてシリコン(Si)基板を加工して薄膜の略円形状に形成されており、中央部にダイアフラム孔部14Aを有している。枠部16は、中央に枠孔部16Aを有する略矩形状のシリコン基板で形成され、ダイアフラム14の周囲を囲み、かつダイアフラム14を支持している。ダイアフラム14と枠部16との間には、一例として二酸化ケイ素(SiO2)膜等の層で形成された酸化膜18が配設されている。
【0022】
圧電膜部20は、ダイアフラム14上に、ダイアフラム14の表面と密着して設けられた薄膜層状の下部電極22と、下部電極22上に、下部電極22の表面と密着して設けられた薄膜層状の圧電膜24と、圧電膜24上に、圧電膜24の表面と密着して設けられた薄膜層状の上部電極26とを備えている。ここで、「下部」及び「上部」は鉛直方向における上下を意味するものではなく、圧電膜24を挟んでダイアフラム14側に配置される電極を下部電極22、圧電膜24に関してダイアフラム14と反対の側に配置される電極を上部電極26と称している。
【0023】
また、
図2に示されるように、上部電極26は、圧電膜24を介して下部電極22と対向している。本実施形態においては、
図1及び
図2に示されるように、一例として、下部電極22、圧電膜24、及び上部電極26は、ドーナツ形状を等分に4分割にした略扇状に形成されている。また、下部電極22、圧電膜24、上部電極26の順に、半径方向の寸法が大きく形成されている。なお、本実施形態においては、第1~第4圧電膜部20A~20Dの各々の圧電膜24は、1つの圧電膜を等分に4分割して形成されている。
【0024】
図3は
図1のB1-B2線断面を模式的に示した断面模式図、
図4は
図1のC1-C2線断面を模式的に示した断面模式図である。
図1及び
図3に示されるように、下部電極22は、略扇状に形成されており、第1圧電膜部20A、第2圧電膜部20B、及び第4圧電膜部20Dの下部電極22の円弧の一端には、外周に向かって矩形状に延在される第1第1延在部22Aが形成されている。また、第3圧電膜部20Cの下部電極22の円弧の第2圧電膜部20B側の一端には、半径方向に円弧の縁を越えて延在する第2延在部22Bが形成されている。
【0025】
図2~
図4に示されるように、下部電極22、圧電膜24、及び上部電極26は、積層された状態において、表面、すなわちダイアフラム14と反対側の面を覆うようにして絶縁膜30が成膜されている。
図4に示されるように、隣接する圧電膜部20の表面には、連続して絶縁膜30が成膜されている。絶縁膜30は、
図2に示されるようにダイアフラム14の中央部に設けられたダイアフラム孔部14Aを含む周囲を除いて成膜される。また、
図1及び
図3に示されるように、下部電極22の第1延在部22Aの表面には、矩形状に絶縁膜30が除去されて、下部電極22が露出された露出部22Cが形成されている。同様に、上部電極26の外周部の一端側にも、矩形状に絶縁膜30が除去されて、上部電極26が露出された露出部26Aが形成されている。
【0026】
本実施形態においては、隣接する圧電膜部20の上部電極26と下部電極22とが接続されることにより、第1~第4圧電膜部20A~20Dの圧電膜24が直列に接続される。具体的には、
図3に示されるように、第1圧電膜部20Aの露出部26Aから露出された上部電極26と、第2圧電膜部20Bの露出部22Cから露出された下部電極22とが配線40により接続される。
【0027】
同様にして、第3圧電膜部20Cの露出部26Aから露出された上部電極26と、第4圧電膜部20Dの露出部22Cから露出された下部電極22とが金属製の配線40により接続される。また、第4圧電膜部20Dの露出部26Aから露出された上部電極26と、第1圧電膜部20Aの露出部22Cから露出された下部電極22とが配線40により接続される。
【0028】
第2圧電膜部20Bの露出部26Aから露出された上部電極26には、配線40の一端が接続されている。本実施形態においては、この配線40の他端と、上述した第3圧電膜部20Cの下部電極22の第2延在部22Bに接続された配線40とから、ダイアフラム14の変形(伸縮)に伴って圧電膜24に発生する電圧(電荷)が外部に取り出されるようになっている。本実施形態においては、上記配線40の他端は枠部16に設けられたリブ16Bを通ってパッド19に接続される。また、第2延在部22Bはリブ16Bに沿って延在され、リブ16Bを通ってパッド19に接続される。パッド19内に示される矩形領域Qは絶縁膜30が除去された領域を示している。
【0029】
なお、本実施形態においては、圧電膜部20の周囲にはランドルト環状に絶縁膜30が除去された領域Rが設けられている。この領域Rの上記ランドルト環状の切れ目はリブ16Bの位置に対応しており、第2圧電膜部20Bの露出部26Aから露出された上部電極26に接続される配線40と、第3圧電膜部20Cの下部電極22の第2延在部22Bとが配置されている。
【0030】
圧電膜24は、圧電効果及び逆圧電効果を生じる材料により形成されている。すなわち、圧電膜24は、電圧が印加された場合又は応力が加わった場合に変形(伸縮)可能にされている。圧電膜24は、薄膜層状の下部電極22を介してダイアフラム14上に配置されることにより、ダイアフラム14を振動させることが可能となっている。また、逆に圧電膜24は、ダイアフラム14が振動することにより応力が生じて電圧を発生可能にされている。本実施形態において、超音波センサ10は、超音波を発信する際に、圧電膜24に電圧を印加することにより圧電膜24を変形させてダイアフラム14を振動させる。また、超音波センサ10は、超音波を受信する際に、音波によってダイアフラム14が振動し、この振動によって圧電膜24が変形して電圧が発生される。
【0031】
図5は圧電膜が1つの場合の回路図、
図6は圧電膜が4つの場合の回路図である。
図5に示されるように、1つの圧電膜を備える超音波センサの場合の圧電膜の静電容量をC、圧電膜から発生される電圧をVとする。この場合、圧電膜で発生した電荷は寄生容量にチャージされてしまうため、電圧の読み取り値はVよりも低下する。
【0032】
一方、本実施形態においては、
図1に示されるように、第1~第4圧電膜部20A~20Dの4つの圧電膜部20が上述したように直列に接続されている。本実施形態の第1~第4圧電膜部20A~20Dの各々の圧電膜24は、1つの圧電膜を等分に4分割して形成されている。そのため、
図6に示されるように、各々の圧電膜24の静電容量は1/4Cとなり、圧電膜24から発生される電圧はVとなるので、本実施形態の超音波センサ10においては4つの圧電膜24から各々発生されるVの電圧が加算されて4Vの電圧が発生される。ただし、この場合も上記
図5の1つの圧電膜を有する場合と同様に、4つの圧電膜で発生した電荷は寄生容量にチャージされてしまうため、電圧の読み取り値は4Vよりも低下する。なお、電圧の読み取り値は、4Vよりも低下するがVよりも大きい値となる。
【0033】
図7は圧電膜の分割数と読み取り電圧との関係を表すグラフある。
図7の点線で示されるように、寄生容量が0の場合には、圧電膜の分割数が増えるほど、電圧の読み取り値は大きくなる。しかしながら、寄生容量が存在する場合には、
図7の実線で示されるように、圧電膜のある一定の分割数までは、圧電膜の分割数が増えるほど電圧の読み取り値は大きくなるが、電圧の読み取り値は上記ある一定の分割数をピークとしてその後は圧電膜の分割数が増えるほど低下する。そのため、圧電膜の分割数、すなわち圧電膜部20の数については、電圧の読み取り値がより大きくなる数とする。
【0034】
次に、第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0035】
本実施形態の超音波センサ10によれば、圧電膜24(例えば、第1圧電膜部20Aの圧電膜24)上の上部電極26と、当該圧電膜24に隣接する圧電膜24(第2圧電膜部20Bの圧電膜24)の下方に設けられた下部電極22とが接続されることにより複数の圧電膜24が直列に接続されている。そのため、各圧電膜24において発生した電圧が、直列に接続された各々の圧電膜24の上部電極26及び下部電極22を介して出力されるので、圧電膜24が1つの場合よりも超音波の受信時に発生する電圧を増加させることができる。このように本実施形態の超音波センサ100では、超音波の受信時に発生する電圧が増加することにより受信感度を向上させることができるので、より遠くの距離を検出することができる。
【0036】
また、本実施形態の超音波センサ10によれば、複数の圧電膜24は1つの圧電膜を等分に分割して形成されているため、複数の圧電膜24は各々面積が等しく形成されるので、各圧電膜24で均等に超音波を受信することができる。
【0037】
次に本発明の第2実施形態に係る超音波センサ100について説明する。
図8は本実施形態に係る超音波センサ100を模式的に示す平面図である。なお、
図8は、
図1に示される上記実施形態の超音波センサ10を示す平面図よりも簡易化した模式図である。
図8に示されるように、第2実施形態に係る超音波センサ100は、上述した第1実施形態の超音波センサ10を超音波受信用の受信センサ10Aとし、受信センサ10Aの第1~第4圧電膜部20A~20Dとは別に1つの圧電膜50を有する超音波発信用の発信センサ10Bを備える。すなわち、本実施形態の超音波センサ100は、超音波を受信する際に使用する複数の圧電膜24と、超音波を送信する際に使用する圧電膜50とを別体としている。
【0038】
図8に示されるように、本実施形態の超音波センサ100は、受信センサ10A(上記実施形態の超音波センサ10)の4つの圧電膜24の周囲を囲むように発信センサ10Bの圧電膜50が配置されている。なお、
図8において符号E1は、下部電極22に接続された配線を、符号E2は上部電極26に接続された配線をそれぞれ簡易的に示している。
【0039】
発信センサ10Bは、ダイアフラム14を変形(伸縮)させるためのアクチュエータとして機能するセンサであり、1つの圧電膜部20Eを備えている。圧電膜部20Eは、
図8に点線の円形で示されるダイアフラム14の変曲点よりも外側において、受信センサ10A(上記実施形態の超音波センサ10)の4つの圧電膜24の周囲を囲むように圧電膜50が配置されている。本実施形態においては、一例として、圧電膜50は、絶縁膜30が除去された領域R(
図1参照)に配置されている。
【0040】
発信センサ10Bの圧電膜部20Eは、受信センサ10Aと同様に、圧電膜50と、下部電極(図示省略)と、上部電極(図示省略)とを備えている。下部電極は、ダイアフラム14上に、ダイアフラム14の表面と密着して設けられている。圧電膜50は、下部電極上に、下部電極の表面と密着して設けられている。上部電極は、圧電膜50上に、圧電膜50の表面と密着して設けられている。また、上部電極は、圧電膜50を介して下部電極と対向している。
【0041】
本実施形態においては、一例として、下部電極、圧電膜50、及び上部電極は、絶縁膜30が除去された領域Rと略同径上の略ランドルト環形状に形成されており、ランドルト環状の切れ目よりも第2圧電膜部20B側には、切れ目と略同方向すなわち
図8の紙面上下方向に延在された延在部52を有している。なお、本実施形態においては、一例として、延在部52は、上部電極、圧電膜50、下部電極の順に外方側に長く形成されている。
【0042】
下部電極、圧電膜50、及び上部電極は、積層された状態において、表面、すなわちダイアフラム14と反対側の面を覆うようにして絶縁膜30が成膜されている。なお、
図8において絶縁膜30は図示が省略されている。下部電極及び上部電極の延在部52の表面には、矩形状に絶縁膜30が除去されることにより、各々下部電極及び上部電極を露出させる露出部(図示省略)が形成されている。
【0043】
発信センサ10Bは、この露出部から露出された上部電極と下部電極とに配線(図示省略)を介して電圧を印加することにより、ダイアフラム14を変形(伸縮)させて音波を発生させる。
【0044】
次に、第2実施形態の作用及び効果について説明する。
【0045】
上記第1実施形態の超音波センサ10では、4つの圧電膜24に電圧を印加する際に、各圧電膜24に印加される電圧は圧電膜24の数に応じて低下してしまう。本実施形態の超音波センサ100によれば、受信センサ10Aの4つの圧電膜24と別に1つの圧電膜50を有する発信センサ10Bを備えているので、4つの圧電膜24に電圧を印加する場合と比較して圧電膜50に印加される電圧の低下を抑制することができる。このように、超音波の発信時に印加する電圧の低下を抑制できることにより、より遠くまで超音波を発信することができる。
【0046】
また、本実施形態においては、圧電膜部20Eの圧電膜50は、
図8に点線の円形で示されるダイアフラム14の変曲点よりも外側に配置されている。
図9はダイアフラム14の変形を説明するための説明図である。
図9に示されるように、変曲点Kよりも内側に位置する受信センサ10Aの4つの圧電膜24に対して一例としてマイナスの電圧を印加すると、各圧電膜24は縮む方向に変形する。この4つの圧電膜24の変形により、ダイアフラム14は、変曲点Kよりも内側において下方向(圧電膜24が配置される側とは反対側)に凸形状となるように変形される。
【0047】
また、変曲点Kよりも外側に位置する発信センサ10Bの圧電膜50に対して、一例としてプラスの電圧を印加すると、圧電膜50は伸びる方向に変形する。この圧電膜50の変形により、ダイアフラム14は、変曲点Kよりも外側において上方向(圧電膜50が配置される側)に凸形状となるように変形される。
【0048】
本実施形態においては、受信センサ10Aの4つの圧電膜24と、発信センサ10Bの圧電膜50とが、変曲点Kを挟んで対向して配置されている。言い換えれば、受信センサ10Aの4つの圧電膜24と、発信センサ10Bの圧電膜50とが、変曲点Kを跨いで配置されていない。受信センサ10Aの4つの圧電膜24と、発信センサ10Bの圧電膜50とが、変曲点Kを跨いで配置される場合には、発生した電荷が打ち消し合ってしまい、ダイアフラム14の変形量が低下してしまう。本実施形態においては、受信センサ10Aの4つの圧電膜24と、発信センサ10Bの圧電膜50とが、変曲点Kを跨いで配置されていないので、発生した電荷が打ち消し合ってしまうのを防止することができ、ダイアフラム14の変形量が低下を抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態の超音波センサ100によれば、受信センサ10Aの4つの圧電膜24の周囲を囲むように発信センサ10Bの1つの圧電膜50が配置されるので、受信センサ10Aと発信センサ10Bとを並べて配置する場合と比較して、超音波センサ100を全体的にコンパクトにすることができる。
【0050】
次に本発明の第3実施形態に係る超音波センサ200について説明する。
図10は本実施形態に係る超音波センサ200を模式的に示す平面図である。なお、
図10は、
図1に示される上記実施形態の超音波センサ10を示す平面図よりも簡易化した模式図である。第3実施形態に係る超音波センサ200は、上記第1実施形態の超音波センサ10を変形させて超音波受信用の受信センサ10Cとし、受信センサ10Cの第1~第4圧電膜部20A~20Dとは別に1つの圧電膜60を有する超音波発信用の発信センサ10Dを備える。すなわち、本実施形態の超音波センサ200は、超音波を受信する際に使用する圧電膜24と、超音波を送信する際に使用する圧電膜60とを別体としている。
【0051】
上述した第2実施形態の超音波センサ100が受信センサ10Aの4つの圧電膜24の周囲を囲むように発信センサ10Bの圧電膜50が配置されているのに対して、
図10に示されるように、第3実施形態に係る超音波センサ200は、発信センサ10Dの圧電膜60の周囲を囲むように受信センサ10Cの4つの圧電膜24が配置されている。
【0052】
ここで受信センサ10Cについて説明する。受信センサ10Cは、上記第1実施形態の超音波センサ10とは、圧電膜部20の形状が異なっている。
図10に示されるように、受信センサ10Cの圧電膜部20すなわち第1~第4圧電膜部20A~20Dは、上記第1実施形態よりも絶縁膜30が除去された領域R(
図1参照)の半径方向の外側に位置されている。また、
図10中、符号CTで示す箇所は簡易的に図示してあるが、このCTで示す箇所において隣接する圧電膜24が接続されている。
【0053】
また、受信センサ10Cは、圧電膜部20は上記半径方向の中央部に円形状の間隙Hを有する形状にされている。本実施形態においてはこの円形状の間隙Hに圧電膜60を有する発信センサ10Dの圧電膜部20Fが配置される。
【0054】
発信センサ10Dは、ダイアフラム14を変形(伸縮)させるためのアクチュエータとして機能するセンサであり、1つの圧電膜部20Fを備えている。圧電膜部20Fは、
図10に点線の円形で示されるダイアフラム14の変曲点よりも内側において、受信センサ10A(上記第1実施形態の超音波センサ10)の4つの圧電膜24に周囲を囲まれるように圧電膜60が配置されている。本実施形態においては、一例として、4つの圧電膜24は、絶縁膜30が除去された領域Rに配置されている。
【0055】
圧電膜部20Fは、第2実施形態の発信センサ10Bと同様に、圧電膜60と、下部電極(図示省略)と、上部電極(図示省略)とを備えている。下部電極は、ダイアフラム14上に、ダイアフラム14の表面と密着して設けられている。圧電膜60は、下部電極上に、下部電極の表面と密着して設けられている。上部電極は、圧電膜60上に、圧電膜60の表面と密着して設けられている。また、上部電極は、圧電膜60を介して下部電極と対向している。
【0056】
本実施形態においては、一例として、下部電極、圧電膜60、及び上部電極は、円形状に形成されており、絶縁膜30が除去された領域Rのランドルト環状の切れ目に沿って延在された延在部62を有している。なお、本実施形態において、延在部62は、一例として、上部電極、圧電膜60、下部電極の順に外方側が長く形成されている。
【0057】
上部電極、圧電膜60、及び上部電極は、積層された状態において、表面、すなわちダイアフラム14と反対側の面を覆うようにして絶縁膜30が成膜されている。なお、
図10において絶縁膜30は図示が省略されている。下部電極及び上部電極の表面の延在部62の表面には、矩形状に絶縁膜30が除去されることにより、各々下部電極及び上部電極を露出させる露出部(図示省略)が形成されている。
【0058】
発信センサ10Dは、この露出部から露出された上部電極と下部電極とに配線(図示省略)を介して電圧を印加することにより、ダイアフラム14を変形(伸縮)させて音波を発生させる。
【0059】
次に、第3実施形態の作用及び効果について説明する。
【0060】
本実施形態の超音波センサ200では、上記第2実施形態の超音波センサ100と同様に、受信センサ10Cの4つの圧電膜24と別に1つの圧電膜60を有する発信センサ10Dを備えているので、4つの圧電膜24に電圧を印加する場合と比較して圧電膜60に印加される電圧の低下を抑制することができる。このように、超音波の発信時に印加する電圧の低下を抑制できることにより、より遠くまで超音波を発信することができる。
【0061】
また、本実施形態においては、圧電膜部20Fの圧電膜60は、
図10に点線の円形で示されるダイアフラム14の変曲点よりも内側に配置されており、受信センサ10Cの4つの圧電膜24はダイアフラム14の変曲点よりも外側に配置されている。そのため、上記第2実施形態と同様に、発生した電荷が打ち消し合ってしまうのを防止することができるので、ダイアフラム14の変形量が低下を抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態の超音波センサ200によれば、受信センサ10Cの4つの圧電膜24が発信センサ10Dの1つの圧電膜60の周囲を囲むように配置されるので、受信センサ10Cと発信センサ10Dとを並べて配置する場合と比較して、超音波センサ200を全体的にコンパクトにすることができる。
【0063】
[実施形態の補足説明]
上述した実施形態においては、リブ16Bを1つとしたが本発明はこれに限られず、複数設けてもよい。
【0064】
また、上述した実施形態においては、超音波センサ10、及び受信センサ10A、10Cの圧電膜24を4つ、すなわち分割数を4つとしたが、本発明はこれに限られない。分割数は、2つ、3つ、及び5つ等、何れの数であってもよい。上述したように
図7で示されるように寄生容量の有無等によって適宜変更してもよい。
【0065】
また、上述した実施形態においては、超音波センサ10、及び受信センサ10A、10Cの複数の圧電膜24は、1つの圧電膜を分割して形成されているが、本発明はこれに限られない。複数の圧電膜24は、分割により形成されていなくてもよい。
【0066】
また、上述した実施形態においては、超音波センサ10、及び受信センサ10A、10Cの複数の圧電膜24は、1つの圧電膜を等分割して形成されているが、本発明はこれに限られず、等分割して形成されていなくてもよい。すなわち、複数の圧電膜24は、異なる面積を有していてもよい。
【0067】
また、上述した第1実施形態においては、絶縁膜30が除去された領域Rを設けているが、絶縁膜30が除去された領域Rは設けなくてもよい。すなわち絶縁膜30は除去しなくてもよい。
【0068】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
10,100,200・・・超音波センサ、10A,10C・・・受信センサ、
10B,10D・・・発信センサ、12・・・基板、14・・・ダイアフラム(基板)、
24,50,60・・・圧電膜、22・・・下部電極、26・・・上部電極、
30・・・絶縁膜