(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156557
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】切替スイッチ機構及びカメラ装置
(51)【国際特許分類】
H01H 19/30 20060101AFI20241029BHJP
H01H 19/02 20060101ALI20241029BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20241029BHJP
G03B 17/00 20210101ALI20241029BHJP
【FI】
H01H19/30
H01H19/02 A
G03B17/02
G03B17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071131
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】若山 富裕
【テーマコード(参考)】
5G219
【Fターム(参考)】
5G219FU03
5G219GS31
5G219HT02
5G219QS14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡単な操作で設定の切替を可能にする簡易な構成の切替スイッチ機構及びそのような切替スイッチ機構を備えたカメラ装置を提供する。
【解決手段】切替スイッチ機構10は、初期位置から回転操作方向に回転できるように筒状部25に取り付けられる操作部30と、操作部30とともに回転しつつ、操作部30に対して軸方向に移動可能に構成される可動部40と、駆動軸54の回転位置に応じて複数の設定の間で設定の切替が可能なロータリスイッチ50と、ロータリスイッチ50の駆動軸54に連結される回転部60とを備える。回転部60は、回転操作方向に向かって回転する可動部40に係合して可動部40とともに回転する一方で、回転操作方向とは反対の戻り方向に向かって回転する可動部40に接触した状態で可動部40上を滑るように構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、
初期位置から回転操作方向に回転できるように前記固定部に取り付けられる操作部と、
前記操作部とともに回転しつつ、前記操作部に対して軸方向に移動可能に構成される可動部と、
回転可能な駆動部を有し、前記駆動部の回転位置に応じて複数の設定の間で設定の切替が可能なロータリスイッチと、
前記ロータリスイッチの前記駆動部に連結される回転部と
を備え、
前記回転部は、前記回転操作方向に向かって回転する前記可動部に係合して前記可動部とともに回転する一方で、前記回転操作方向とは反対の戻り方向に向かって回転する前記可動部に接触した状態で前記可動部上を滑るように構成される、
切替スイッチ機構。
【請求項2】
前記固定部と前記操作部との間に配置され、前記操作部を前記初期位置に向けて前記戻り方向に付勢する第1の付勢部材をさらに備える、請求項1に記載の切替スイッチ機構。
【請求項3】
前記戻り方向に向かって回転する前記可動部と前記回転部との間に生じる摩擦力は、前記ロータリスイッチの前記駆動部を回転させるのに必要とされる力よりも小さい、請求項1に記載の切替スイッチ機構。
【請求項4】
前記固定部と前記可動部との間に配置され、前記可動部を軸方向に付勢して前記可動部を前記回転部に向かって押圧する第2の付勢部材をさらに備える、請求項1に記載の切替スイッチ機構。
【請求項5】
前記ロータリスイッチは、等間隔で設定された切替回転角度に前記駆動部が回転したときに設定の切替を行うように構成される、請求項1に記載の切替スイッチ機構。
【請求項6】
前記ロータリスイッチの前記駆動部が前記切替回転角度に回転したときに前記駆動部又は前記回転部の回転に抵抗を与える抵抗付与部をさらに備える、請求項5に記載の切替スイッチ機構。
【請求項7】
前記可動部及び前記回転部の一方は、周方向に沿って並んで形成され、それぞれ第1の係合面を有する複数の第1の突出部を有し、
前記可動部及び前記回転部の他方は、前記複数の第1の突出部の前記第1の係合面に係合可能な第2の係合面を有する少なくとも1つの第2の突出部を有する、
請求項6に記載の切替スイッチ機構。
【請求項8】
前記切替回転角度の間隔は、前記複数の第1の突出部が配置される間隔の倍数である、請求項7に記載の切替スイッチ機構。
【請求項9】
前記ロータリスイッチの前記駆動部が前記切替回転角度に回転したときに点灯する発光部をさらに備える、請求項5に記載の切替スイッチ機構。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の切替スイッチ機構を備える、カメラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切替スイッチ機構及びカメラ装置に係り、特に設定の切替が可能なカメラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラを用いて撮像する際には、セルフタイマーの時間やストロボの発光量、シャッタスピードなどを撮影者が設定する必要があるが、これらの設定は、カメラに設けられた複数のボタンを操作することにより行われることが多い(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このように複数のボタンをカメラに設けると構造が複雑になるとともに製造コストも増加する。また、ユーザが所望の設定にするために複数のボタンを複数回操作しないといけないことも多く、設定操作も煩雑になる。したがって、簡単な操作で設定の切替を可能にする簡易な構成の切替スイッチ機構が求められている。このような切替スイッチ機構はカメラ以外の装置においても同様に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、簡単な操作で設定の切替を可能にする簡易な構成の切替スイッチ機構及びそのような切替スイッチ機構を備えたカメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、簡単な操作で設定の切替を可能にする簡易な構成の切替スイッチ機構が提供される。この切替スイッチ機構は、固定部と、初期位置から回転操作方向に回転できるように上記固定部に取り付けられる操作部と、上記操作部とともに回転しつつ、上記操作部に対して軸方向に移動可能に構成される可動部と、回転可能な駆動部を有し、上記駆動部の回転位置に応じて複数の設定の間で設定の切替が可能なロータリスイッチと、上記ロータリスイッチの上記駆動部に連結される回転部とを備える。上記回転部は、上記回転操作方向に向かって回転する上記可動部に係合して上記可動部とともに回転する一方で、上記回転操作方向とは反対の戻り方向に向かって回転する上記可動部に接触した状態で上記可動部上を滑るように構成される。
【0006】
本発明の第2の態様によれば、上述した切替スイッチ機構を備えるカメラ装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、操作部を一方向(回転操作方向)に回転させるだけでロータリスイッチの駆動部を回転させることができるので、複数の設定のうちいずれかの設定への切替を可能にする切替スイッチ機構を簡単な構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態におけるカメラ装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すカメラ装置における切替スイッチ機構に関連する構成要素を示す分解斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、
図1に示すカメラ装置におけるフロントカバーの一部を示す正面図である。
【
図5A】
図5Aは、
図2に示す切替スイッチ機構における操作部を示す前方斜視図である。
【
図6A】
図6Aは、
図2に示す切替スイッチ機構における可動部を示す正面図である。
【
図7】
図7は、
図2に示す構成要素の一部の分解斜視図である。
【
図10】
図10は、
図5Aに示す操作部が初期位置にあるときの切替スイッチ機構の状態を説明するための図である。
【
図11】
図11は、ユーザが操作部のつまみ部から手を離した状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るカメラ装置の実施形態について
図1から
図11を参照して詳細に説明する。
図1から
図11において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、
図1から
図11においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態におけるカメラ装置1を示す斜視図である。本実施形態におけるカメラ装置1は、撮影後に自動的に現像が行われる写真フィルムを用いるカメラ(インスタントカメラ)であるが、本発明はこのようなインスタントカメラ以外にも適用できることは言うまでもない。なお、本実施形態では、便宜的に、
図1における+Z方向を「前」又は「前方」といい、-Z方向を「後」又は「後方」ということとする。
【0011】
図1に示すように、カメラ装置1は、フロントカバー2と、フロントカバー2の後方に装着されるリアカバー3と、フロントカバー2とリアカバー3とに挟まれるトップカバー4と、フロントカバー2から前方に繰出可能なレンズ鏡筒5とを備えている。フロントカバー2にはファインダ窓6及びフラッシュ部7が形成されている。フラッシュ部7の近傍にはレリーズボタン8が配置されている。トップカバー4には、X方向に延びる排出スリット4Aが形成されており、この排出スリット4Aから撮影後に現像された写真フィルムが排出されるようになっている。
【0012】
また、カメラ装置1は、カメラ装置1が有する機能に関する設定を切り替えるための切替スイッチ機構10を備えている。本実施形態における切替スイッチ機構10は、セルフタイマーの時間の設定を切り替えるためのものであるが、この例に限られるものではなく、カメラ装置1における各種機能の設定(例えば、ストロボの発光量、シャッタスピードなど)を切り替えるように切替スイッチ機構10を構成することも可能である。
【0013】
図2は、切替スイッチ機構10に関連する構成要素を示す分解斜視図である。フロントカバー2、リアカバー3、及びトップカバー4により形成される内部空間には、
図2に示す略矩形枠状のフレーム20と、フレーム20に固定される円筒状の固定筒21とが収容されている。
図2においては、理解を容易にするために、フロントカバー2、固定筒21、及びフレーム20の一部を省略して図示している。固定筒21の半径方向内側には上述したレンズ鏡筒5(
図1参照)が収容される。フレーム20の前面には回路基板22が固定されている。
【0014】
図3は、
図1のA-A線断面図である。
図2及び
図3に示すように、切替スイッチ機構10は、フロントカバー2に形成された筒状部25(固定部)と、この筒状部25に取り付けられる略円板状の操作部30と、操作部30とともに回転する可動部40と、回路基板22上に配置されるロータリスイッチ50と、固定筒21に回転可能に取り付けられる回転部60と、回転部60の前方に配置されるねじりコイルバネ70(第1の付勢部材)と、可動部40の前方に配置されるコイルバネ80(第2の付勢部材)とを含んでいる。
【0015】
ロータリスイッチ50は、直方体状のスイッチ本体52と、スイッチ本体52から+Z方向に突出し、Z軸周りに回転可能な駆動軸54(駆動部)とを有している。このロータリスイッチ50は、駆動軸54の回転位置に応じて複数の設定の間で設定の切替が可能になっており、本実施形態では、等間隔で設定された所定の切替回転角度に駆動軸54が回転したときにセルフタイマーの時間の設定を切り替えることができる。この例では、切替回転角度は40度ごとに設定されている。駆動軸54はいわゆるDカット軸であり、断面がD字状になるように円柱面と平面とから構成される外側面を有している。
【0016】
図4Aは、フロントカバー2の筒状部25を示す正面図、
図4Bは背面図、
図4Cは
図4AのB-B線断面図である。
図2及び
図4Aから
図4Cに示すように、筒状部25は、円環板状の底部90と、底部90の外周縁から前方に延びる外側壁91と、外側壁91の径方向内側でZ方向に沿って延びる内側壁92と、内側壁92の径方向内側でZ方向に沿って延びる軸部93と、内側壁92の前縁で内側壁92と軸部93とを接続する接続部94とを含んでいる。底部90には周方向に沿って延びる外側溝95が形成されており、接続部94には周方向に沿って延びる2つの内側溝96が形成されている。2つの内側溝96は軸部93に対して対称に形成されている。軸部93の中央にはネジ孔93Aが形成されている。
【0017】
図5Aは操作部30を示す前方斜視図、
図5Bは後方斜視図である。
図5A及び
図5Bに示すように、操作部30は、フロントカバー2の筒状部25の外側壁91の径方向内側に収容されるカバー部31と、カバー部31の前方に装着されるつまみ部32とを含んでいる。カバー部31は、円板部311と、円板部311の外周縁から後方に延びる側壁312とを有している。円板部311の中央には、筒状部25の軸部93が挿入される挿入孔313が形成されている。また、円板部311には、つまみ部32に形成された突起321が挿入される挿入孔314が形成されており、つまみ部32の突起321を円板部311の挿入孔314に挿入することで、つまみ部32がカバー部31に装着される。
【0018】
また、カバー部31は、側壁312の後端部からさらに-Z方向に延びるフック部315を有している。このフック部315は、筒状部25の底部90に形成された外側溝95を通って底部90の後方に延びるように配置される。
【0019】
操作部30は、カバー部31の側壁312の径方向内側に収容される駆動プレート34をさらに含んでいる。この駆動プレート34は、矩形板状のプレート本体341と、プレート本体341から-Z方向に延びる1対の係合片342とを含んでいる。駆動プレート34の中央には、筒状部25の軸部93が挿入される挿入孔343が形成されている。プレート本体341には、カバー部31に形成された突起316が挿入される挿入孔344が形成されており、カバー部31の突起316をプレート本体341の挿入孔343に挿入することで、駆動プレート34がカバー部31に取り付けられる。このカバー部31の突起316は、筒状部25の接続部94に形成された内側溝96を通って接続部94の後方に延びている。また、駆動プレート34の係合片342も接続部94に形成された内側溝96を通って接続部94の後方に延びるように配置される。
【0020】
図3に示すように、操作部30のカバー部31の挿入孔313と駆動プレート34の挿入孔343に筒状部25の軸部93が挿入され、この軸部93のネジ孔93Aの前端にネジ33が螺合される。これにより、操作部30が、筒状部25に対してZ軸周りに回転可能な状態で筒状部25に取り付けられる。したがって、カメラ装置1のユーザは、操作部30のつまみ部32をつまんで操作部30を
図1において時計回りに回転させることができる。以下、
図1における時計回りの方向を「回転操作方向」といい、これとは反対の方向を「戻り方向」ということとする。操作部30がZ軸周りに回転するとき、カバー部31のフック部315(
図3では図示せず)は筒状部25の外側溝95の内部を移動し、カバー部31の突起316及び駆動プレート34の係合片342(
図3では図示せず)は筒状部25の内側溝96の内部を移動する。
【0021】
図6Aは可動部40を示す正面図、
図6Bは右側面図、
図6Cは後方斜視図である。
図6Aから
図6Cに示すように、可動部40は、円環板状の基部41と、基部41の外周縁から前方に延びる側壁42とを含んでいる。基部41は、後方に突出する複数の歯部43(第1の突出部)を有している。また、基部41には、フロントカバー2の筒状部25の軸部93が挿入される挿入孔44が形成されている。側壁42には、上述した操作部30の駆動プレート34の係合片342が挿入される切欠き45が形成されている。
【0022】
図6Dは、
図6Bに示す歯部43を拡大した図である。
図6Dに示すように、歯部43は周方向に沿って等間隔で全周にわたって形成されている。本実施形態では、18個の歯部43が20度間隔で配置されている。それぞれの歯部43は、Z軸と略平行に延びる係合面431(第1の係合面)と、戻り方向に向かうにつれ次第に+Z方向側に傾斜する傾斜面432とを有している。
【0023】
図3に示すように、可動部40の基部41と筒状部25の接続部94との間にはコイルバネ80が圧縮された状態で配置され、可動部40の挿入孔44には筒状部25の軸部93が挿入されている。したがって、可動部40は、コイルバネ80により-Z方向に付勢された状態でZ方向に移動可能となっている。また、上述したように、可動部40の切欠き45には操作部30の駆動プレート34の係合片342が挿入され、駆動プレート34の係合片342と可動部40の切欠き45とが係合している。このため、可動部40は、操作部30とともにZ軸周りに回転するようになっている。すなわち、可動部40は、操作部30とともに回転しつつ、操作部30に対して軸方向(Z方向)に移動できるように構成されている。
【0024】
図7は、回転部60及びこれに関連する構成要素の分解斜視図である。
図7においても、理解を容易にするために固定筒21の一部を省略して図示している。
図7に示すように、回転部60は、ロータリスイッチ50の駆動軸54に連結される後方回転部材61と、後方回転部材61に連結される前方回転部材62とを含んでいる。固定筒21のロータリスイッチ50の前方には、後方回転部材61を支持する支持部23が形成されている。また、固定筒21には、支持部23に隣接してプレート取付部24が形成されており、このプレート取付部24には板状のホルダプレート26が取り付けられる。ホルダプレート26には、プレート取付部24に形成された突起241が挿入される挿入孔261が形成されており、プレート取付部24の突起241をホルダプレート26の挿入孔261に挿入することで、ホルダプレート26が固定筒21のプレート取付部24に取り付けられる。
【0025】
図8Aは後方回転部材61の正面図、
図8Bは右側面図、
図8Cは背面図である。
図8Aから
図8Cに示すように、後方回転部材61は、円柱状の第1の筒部611と、第1の筒部611から前方に延びる円柱状の第2の筒部612と、第1の筒部611から後方に延びる第3の筒部613とを含んでいる。第2の筒部612の外径は第1の筒部611の外径よりも小さく、ホルダプレート26に形成された円形孔262(
図7参照)よりもわずかに小さい程度となっている。第2の筒部612は、Z軸周りに回転可能な状態でホルダプレート26の円形孔262に挿入される。また、第3の筒部613の外径は第2の筒部612の外径よりも小さく、固定筒21の支持部23に形成された円形孔231(
図7参照)よりもわずかに小さい程度となっている。第3の筒部613は、Z軸周りに回転可能な状態で支持部23の円形孔231に挿入される。第1の筒部611は支持部23とホルダプレート26との間に位置している。このような構成により、後方回転部材61は、支持部23及びホルダプレート26に支持された状態でZ軸周りに回転できるようになっている。
【0026】
後方回転部材61には、ロータリスイッチ50の駆動軸54に対応して、円柱面と平面から構成される内側面を有する貫通孔614が形成されている。この貫通孔614は、第2の筒部612、第1の筒部611、及び第3の筒部613をZ方向に貫通している。第3の筒部613の貫通孔614にはロータリスイッチ50の駆動軸54が嵌め込まれており、後方回転部材61がZ軸周りに回転するとロータリスイッチ50の駆動軸54も回転するようになっている。また、後方回転部材61には、第2の筒部612、第1の筒部611、及び第3の筒部613をZ方向に貫通する2つの貫通孔615が形成されている。
【0027】
図9Aは前方回転部材62の正面図、
図9Bは右側面図、
図9Cは背面図である。
図9Aから
図9Cに示すように、前方回転部材62は、円板状の基部621と、基部621から後方に延びる2つの軸部622と、基部621から前方に突出する3つの爪部623(第2の突出部)とを含んでいる。それぞれの軸部622は、後方回転部材61の貫通孔615に挿入されている。
【0028】
爪部623は、周方向に沿って等間隔で(本実施形態では120度の間隔で)配置されている。それぞれの爪部623は、Z軸と略平行に延びる係合面624(第2の係合面)と、回転操作方向に向かうにつれ次第に-Z方向側に傾斜する傾斜面625とを有している。爪部623の係合面624と可動部40の歯部43の係合面431とは、いずれもZ軸と略平行に延びているため、互いに当接して係合するようになっている。
【0029】
基部621には、フロントカバー2の筒状部25の軸部93が挿入される挿入孔626が形成されている。
図3に示すように、筒状部25の軸部93は、可動部40の挿入孔44及び前方回転部材62の挿入孔626に挿入され、この軸部93のネジ孔93Aの後端にネジ64が螺合される。これにより、可動部40及び前方回転部材62が、それぞれ筒状部25に対してZ軸周りに回転可能な状態で筒状部25に取り付けられる。
【0030】
図3に示すように、筒状部25の内側壁92の径方向外側には、ねじりコイルバネ70のコイル部71が配置されている。ねじりコイルバネ70の一方の腕部72(
図2参照)は、操作部30のカバー部31のフック部315(
図5B参照)に係合しており、他方の腕部73(
図2参照)は、フロントカバー2に設けられたバネ止め(図示せず)に係合している。このように、ねじりコイルバネ70は、操作部30のカバー部31のフック部315とフロントカバー2のバネ止め(固定部)との間に架け渡されて配置されている。ねじりコイルバネ70の腕部72,73の間の開き角度は、ねじりコイルバネ70の自由角度よりも小さくなっており、ねじりコイルバネ70は、操作部30のカバー部31のフック部315を周方向に沿って戻り方向に付勢するようになっている。したがって、操作部30に外力が加わっていない状態では、ねじりコイルバネ70の付勢力により操作部30のカバー部31のフック部315は筒状部25の外側溝95の端部95A(
図4A及び
図4B参照)に突き当たった状態となっている。以下、このときの操作部30の位置を「初期位置」ということとする。このように、本実施形態におけるねじりコイルバネ70は、操作部30を初期位置に向けて付勢する第1の付勢部材として機能する。
【0031】
また、上述したように、コイルバネ80は、可動部40の基部41と筒状部25の接続部94との間に圧縮された状態で配置されている。したがって、コイルバネ80は、可動部40の基部41を-Z方向に付勢し、可動部40の歯部43で前方回転部材62の爪部623を-Z方向に押圧している。このように、本実施形態におけるコイルバネ80は、可動部40を軸方向(-Z方向)に付勢して可動部40を前方回転部材62に向かって押圧する第2の付勢部材として機能する。
【0032】
次に、このような構成のカメラ装置1の切替スイッチ機構10の動作について説明する。上述したように、操作部30に外力が加わっていない状態では、ねじりコイルバネ70の付勢力によって操作部30は初期位置に位置している。
図10は、操作部30が初期位置にあるときの切替スイッチ機構10の状態を模式的に示している。
図10に示すように、操作部30が初期位置にあるときは、可動部40の歯部43の係合面431と前方回転部材62の爪部623の係合面624は係合している。
【0033】
この状態からユーザが操作部30のつまみ部32をねじりコイルバネ70の付勢力に抗して回転操作方向に回転させると、操作部30のカバー部31とともに駆動プレート34も回転操作方向に回転する。
図10に示すように、駆動プレート34の係合片342と可動部40の切欠き45とは係合しているため、可動部40は駆動プレート34とともに回転操作方向(
図10において下方に向かう方向)に回転する。
図10に示すように、可動部40の歯部43の係合面431と前方回転部材62の爪部623の係合面624とは互いに係合しているので、可動部40の回転に伴って、前方回転部材62も回転駆動方向に回転する。前方回転部材62の軸部622は後方回転部材61の貫通孔615に挿入されているため、前方回転部材62が回転すると後方回転部材61も回転し、貫通孔614に嵌め込まれたロータリスイッチ50の駆動軸54が回転操作方向に回転する。
【0034】
本実施形態におけるロータリスイッチ50は、40度の間隔で設定された切替回転角度に駆動軸54が回転したときにセルフタイマーの時間の設定を切り替えるように構成されており、駆動軸54の回転に対して40度ごとに回転抵抗を生じさせる抵抗付与部(図示せず)を有している。したがって、操作部30のつまみ部32を回転操作方向に回転させたユーザは、操作部30を回転操作方向に40度回転させるごとにクリック感を感じ、設定が切り替わったことを認識しやすくなっている。このようにして、ユーザが操作部30のつまみ部32を回転操作方向に回転させることでセルフタイマーの時間の設定を切り替えることができる。なお、操作部30を回転操作方向に40度回転させるごとにフロントカバー2に設けた発光部9(例えばLED)を発光させて、ユーザに切替後の設定を知らせるようにしてもよい。
【0035】
このようにしてユーザが操作部30のつまみ部32を回転操作方向に回転させて所望のセルフタイマーの時間の設定に切り替えた後、ユーザがつまみ部32から手を離すと、ねじりコイルバネ70の付勢力がカバー部31のフック部315を介して操作部30に作用し、操作部30が戻り方向に回転し始める。これに伴い、
図11に示すように、可動部40も戻り方向(
図11において上方に向かう方向)に回転して、可動部40の歯部43Aの係合面431Aが前方回転部材62の爪部623の係合面624から離れ、回転操作方向において歯部43Aに隣接する歯部43Bの傾斜面432Bが前方回転部材62の爪部623の傾斜面625に接触する。
【0036】
可動部40はコイルバネ80によって-Z方向に付勢されているので、歯部43Bの傾斜面432Bと爪部623の傾斜面625との接触によってこれらの面の間に摩擦力が生じるが、この摩擦力は、上述したロータリスイッチ50の抵抗付与部による回転抵抗によってロータリスイッチ50の駆動軸54を回転させるのに必要とされる力よりも小さくなるようにコイルバネ80及びねじりコイルバネ70の付勢力、歯部43の傾斜面432の傾斜角度、爪部623の傾斜面625の傾斜角度などが設計されている。したがって、ロータリスイッチ50の駆動軸54は回転することなく、爪部623が傾斜面432Bに接触した状態で傾斜面432B上を滑るように可動部40がコイルバネ80の付勢力に抗して+Z方向に移動しつつ戻り方向に回転する。すなわち、前方回転部材62、後方回転部材61、及びロータリスイッチ50の駆動軸54は戻り方向に回転することなく、可動部40及び操作部30がねじりコイルバネ70の付勢力によって戻り方向に回転し、最終的には操作部30が初期位置に戻る。
【0037】
このように、本実施形態における回転部60は、回転操作方向に向かって回転する可動部40の歯部43に前方回転部材62の爪部623が係合して可動部40とともに回転する一方で、戻り方向に向かって回転する可動部40の歯部43は前方回転部材62の爪部623に接触した状態で爪部623上を滑るように構成されている。したがって、操作部30が回転操作方向に回転すると、可動部40を介して回転部60が回転操作方向に回転し、回転部60に連結されたロータリスイッチ50の駆動軸54が回転操作方向に回転して、ロータリスイッチ50による設定の切替を行うことが可能となる。また、操作部30が戻り方向に回転した際には、回転部60は回転せずに可動部40に接触した状態で可動部40上を滑り、可動部40及び操作部30が初期位置まで戻り方向に回転して戻る。このように、本実施形態によれば、操作部30を一方向(回転操作方向)に回転させるだけでロータリスイッチ50の駆動軸54を回転させることができるので、複数の設定の間で設定の切替を可能にする切替スイッチ機構10を簡単な構成で実現することができる。
【0038】
また、本実施形態では、操作部30を初期位置に向けて付勢するねじりコイルバネ70が設けられているため、ユーザが操作部30をねじりコイルバネ70の付勢力に抗して回転操作方向に回転させることによって可動部40を介して回転部60を回転操作方向に回転させることができ、ユーザが操作部30に加えた力を取り除くと、ねじりコイルバネ70による付勢力によって操作部30及び可動部40を戻り方向に回転させて操作部30を初期位置に戻すことができる。
【0039】
さらに、本実施形態では、可動部40を軸方向に付勢して可動部40を回転部60に向かって押圧するコイルバネ80が設けられているため、可動部40と回転部60とを確実に係合させて回転部60及びロータリスイッチ50の駆動軸54を安定的に回転させることができる。
【0040】
本実施形態では、ロータリスイッチ50の切替回転角度の間隔(40度)は、可動部40の歯部43が配置される間隔(20度)の倍数となっている。このような構成によれば、ロータリスイッチ50の駆動軸54が切替回転角度の回転位置にあるときには、前方回転部材62の爪部623の係合面624が可動部40の複数の歯部43のいずれかの係合面431に係合することになるため、操作部30及び可動部40を回転させる際のガタつきを少なくすることができる。
【0041】
上述した実施形態では、回転部60が後方回転部材61と前方回転部材62とを含んでいるが、これらの部材を一体化して単一の部材により構成してもよい。
【0042】
上述した実施形態では、可動部40の歯部43(第1の突出部)が周方向の全周にわたって形成されているが、ロータリスイッチ50の作動範囲をカバーできるのであれば、可動部40の歯部43は周方向の全周にわたって形成されている必要はない。また、上述した実施形態では、前方回転部材62の爪部623(第2の突出部)が3つ形成されているが、爪部623の数はこれに限られるものではなく1個以上であればよい。
【0043】
さらに、上述した実施形態では、可動部40側に複数の歯部43(第1の突出部)を形成し、回転部60側に少なくとも1つの爪部623(第2の突出部)を形成しているが、上述した爪部623と同様の機能を有する少なくとも1つの爪部(第2の突出部)を可動部40側に形成し、上述した歯部43と同様の機能を有する複数の歯部(第1の突出部)を回転部60側に形成してもよい。
【0044】
上述した実施形態では、切替スイッチ機構10がフロントカバー2の前面に設けられているが、切替スイッチ機構10の位置はこれに限られるものではなく、カメラ装置1の後面や側面に切替スイッチ機構10を配置してもよい。
【0045】
上述した実施形態では、操作部30を初期位置に向けて戻り方向に付勢する第1の付勢部材としてねじりコイルバネ70を用い、可動部40を軸方向に付勢して可動部40を回転部60に向かって押圧する第2の付勢部材としてコイルバネ80を用いた例を説明したが、これらの付勢部材として他の種類の付勢手段を用いてもよい。
【0046】
上述した実施形態では、ロータリスイッチ50に駆動軸54の回転に抵抗を与える抵抗付与部を設けているが、これに限られるものではなく、例えば回転部60に所定の切替回転角度ごとに凹部を設け、この凹部に板バネを嵌まり込ませることでロータリスイッチ50の駆動軸54が所定の切替回転角度に回転したときに駆動軸54の回転に抵抗を与えるバネ抵抗付与部を構成してもよい。
【0047】
以上述べたように、本発明に係る切替スイッチ機構は、以下のような構成を採用することが可能である。
【0048】
[構成1]
固定部と、
初期位置から回転操作方向に回転できるように前記固定部に取り付けられる操作部と、
前記操作部とともに回転しつつ、前記操作部に対して軸方向に移動可能に構成される可動部と、
回転可能な駆動部を有し、前記駆動部の回転位置に応じて複数の設定の間で設定の切替が可能なロータリスイッチと、
前記ロータリスイッチの前記駆動部に連結される回転部と
を備え、
前記回転部は、前記回転操作方向に向かって回転する前記可動部に係合して前記可動部とともに回転する一方で、前記回転操作方向とは反対の戻り方向に向かって回転する前記可動部に接触した状態で前記可動部上を滑るように構成される、
切替スイッチ機構。
【0049】
[構成2]
前記固定部と前記操作部との間に配置され、前記操作部を前記初期位置に向けて前記戻り方向に付勢する第1の付勢部材をさらに備える、上記構成1の切替スイッチ機構。
【0050】
[構成3]
前記戻り方向に向かって回転する前記可動部と前記回転部との間に生じる摩擦力は、前記ロータリスイッチの前記駆動部を回転させるのに必要とされる力よりも小さい、上記構成1又は2の切替スイッチ機構。
【0051】
[構成4]
前記固定部と前記可動部との間に配置され、前記可動部を軸方向に付勢して前記可動部を前記回転部に向かって押圧する第2の付勢部材をさらに備える、上記構成1から3のいずれかの切替スイッチ機構。
【0052】
[構成5]
前記ロータリスイッチは、等間隔で設定された切替回転角度に前記駆動部が回転したときに設定の切替を行うように構成される、上記構成1から4のいずれかの切替スイッチ機構。
【0053】
[構成6]
前記ロータリスイッチの前記駆動部が前記切替回転角度に回転したときに前記駆動部又は前記回転部の回転に抵抗を与える抵抗付与部をさらに備える、上記構成5の切替スイッチ機構。
【0054】
[構成7]
前記可動部及び前記回転部の一方は、周方向に沿って並んで形成され、それぞれ第1の係合面を有する複数の第1の突出部を有し、
前記可動部及び前記回転部の他方は、前記複数の第1の突出部の前記第1の係合面に係合可能な第2の係合面を有する少なくとも1つの第2の突出部を有する、
上記構成1から6のいずれかの切替スイッチ機構。
【0055】
[構成8]
前記切替回転角度の間隔は、前記複数の第1の突出部が配置される間隔の倍数である、上記構成7の切替スイッチ機構。
【0056】
[構成9]
前記ロータリスイッチの前記駆動部が前記切替回転角度に回転したときに点灯する発光部をさらに備える、上記構成5の切替スイッチ機構。
【0057】
また、本発明に係るカメラ装置は、以下のような構成を採用することが可能である。
[構成10]
上記構成1から9のいずれかの切替スイッチ機構を備える、カメラ装置。
【0058】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0059】
1 カメラ装置
2 フロントカバー
9 発光部
10 切替スイッチ機構
20 フレーム
21 固定筒
22 回路基板
25 筒状部(固定部)
30 操作部
31 カバー部
32 つまみ部
34 駆動プレート
40 可動部
43 歯部(第1の突出部)
50 ロータリスイッチ
54 駆動軸(駆動部)
60 回転部
61 後方回転部材
62 前方回転部材
70 ねじりコイルバネ(第1の付勢部材)
80 コイルバネ(第2の付勢部材)
431 (第1の)係合面
432 傾斜面
623 爪部(第2の突出部)
624 (第2の)係合面
625 傾斜面