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特開2024-156558軽量気泡コンクリートパネル、パネル構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156558
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】軽量気泡コンクリートパネル、パネル構造体
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/14 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
E04F13/14 103F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071133
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】中間 康博
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA43
2E110AB02
2E110AB04
2E110AB05
2E110CA07
2E110DC12
(57)【要約】
【課題】パネルを建築物の下地に留め付け具により固定する際に、現場での作業者の目視においても適正な位置に留め付け具を打ち込むことが可能となり、さらには現場等でパネル表面についた線状擦傷等を目立たなくすることができる軽量気泡コンクリートパネルを提供すること。
【解決手段】軽量気泡コンクリートから成る略長方形板状のパネル本体を備えた軽量気泡コンクリートパネルであって、パネル本体の表面に、パネルを建築物の下地に留め付け具を用いて固定する際の目安位置となる、少なくとも1つの目安部が設けられており、目安部は、パネル本体の表面に、凹部または凸部として設けられていることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽量気泡コンクリートから成る略長方形板状のパネル本体を備えた軽量気泡コンクリートパネルであって、
前記パネル本体の表面に、該パネルを建築物の下地に留め付け具を用いて固定する際の目安位置となる、少なくとも1つの目安部が設けられており、
該目安部は、前記パネル本体の表面に、凹部または凸部として設けられていることを特徴とする、軽量気泡コンクリートパネル。
【請求項2】
前記目安部は、前記パネル本体の表面に、長辺方向に沿って略直線状に設けられている、請求項1に記載の軽量気泡コンクリートパネル。
【請求項3】
前記目安部のうち、前記パネルの短辺方向端部に最も近い位置に設けられている目安部は、前記パネル本体に内包されるラス網に当たる位置に設けられている、請求項2に記載の軽量気泡コンクリートパネル。
【請求項4】
前記目安部は、前記パネル本体の表面に、短辺方向に沿って略直線状に設けられている、請求項1に記載の軽量気泡コンクリートパネル。
【請求項5】
前記目安部は、建築物の前記下地が配置される間隔に対応した間隔で設けられている、請求項4に記載の軽量気泡コンクリートパネル。
【請求項6】
前記目安部のうち、前記パネルの長辺方向端部に最も近い位置に設けられている目安部は、該パネルの長辺方向端部からの距離が、25mm以上40mm以下となる位置に設けられている、請求項4に記載の軽量気泡コンクリートパネル。
【請求項7】
前記目安部は、前記パネル本体の表面に、長辺方向および短辺方向に沿って略直線状に設けられている、請求項1に記載の軽量気泡コンクリートパネル。
【請求項8】
前記パネル本体の表面に、前記目安部とは別個の、長辺方向および短辺方向の少なくとも一方に沿って略直線状に設けられた複数の溝を有し、
前記溝の幅が、0mmを超え、7mm未満であり、
かつ、前記溝の深さが、0mmを超え、4mm未満であり、
かつ、前記溝が所定間隔で設けられている、請求項1~7のいずれか一項に記載の軽量気泡コンクリートパネル。
【請求項9】
前記目安部は略直線状に形成されており、該目安部と前記溝とが略同じ方向のみに設けられている、請求項8に記載の軽量気泡コンクリートパネル。
【請求項10】
略直線状の前記目安部は凸部として形成されている、請求項9に記載の軽量気泡コンクリートパネル。
【請求項11】
前記目安部は、建築物の前記下地に対応する位置に、凹部または凸部として独立した島状に設けられている、請求項1に記載の軽量気泡コンクリートパネル。
【請求項12】
前記目安部の幅が15mm以上50mm以下である、請求項1に記載の軽量気泡コンクリートパネル。
【請求項13】
請求項1に記載の軽量気泡コンクリートパネルを、前記目安部の位置において、留め付け具で建築物の下地に固定したパネル構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量気泡コンクリートパネル、パネル構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軽量気泡コンクリート(ALC:Autoclaved Lightweight aerated Concrete)パネルは、軽量性、断熱性、不燃性、耐火性など、優れた特徴を持つ建材として、建築物の壁、屋根、床等に広く用いられている。
【0003】
ALC薄型パネル(JIS A 5416-2016「軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)」に規定された厚さ35mmのALC薄形パネル)の適用仕様については、建築工事標準仕様書・同解説 JASS 27 乾式外壁工事(日本建築学会)等で定められている。
【0004】
上記の仕様に基づき、同パネルは、例えば図14に示すように、木造の建築物において、所定の割り付けが行われ、「木ねじ」等の留め付け具を用いて所定の位置に留め付けられることとなる(例えば、特許文献1,2、非特許文献1)。所定の位置とは、パネル表面から8本~10本のねじを打ち込み、下地の木(柱や間柱、または胴縁)に当たる箇所である。さらにはALCパネル内部に埋め込まれている補強材(ラス網)に当たる箇所である。
【0005】
但し、下地に当たる位置であればどこでも良いというものではなく、強度的にバランスの良い位置であることが重要であり、かつ、ねじ打ち込みの際に局部的な集中荷重が発生し、損傷(欠けや割れ等)が発生しないような位置であることが必要となる。
【0006】
パネルへのねじ止め位置は、工法によって若干の違いはあるが、いずれにしても図15に示す15か所の適正位置のうち、8~10か所に打つことが基本となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-170354号公報
【特許文献2】特開2000-064462号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ALC薄形パネル設計施工指針・同解説(外壁および間仕切壁編)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、実際の施工現場では、上記基準はあるものの、ねじの打ち込み位置については目検討(施工者の目測)で行われており、基準位置からはずれて打たれてしまうケースが時折ある。そのような場合、例えば留め付け具の止めとなる下地からはずれてしまって強度不足となったり、端部に偏って留め付けたため(パネルのラス網位置から外れて留め付けられる場合もある)に、パネル部材の欠けやひび割れが発生してしまうケースがある。施工時点では顕在化せずとも施工後に損傷が出てくる場合もある。
現場でねじの打ち間違いがあると補修をしなければならず、手間が増えるほか、補修跡が目立ってしまうという問題も生じる。
【0010】
また、ALCパネルには、一般的に(1)工場の製造過程、(2)工場から現場までの搬送過程、(3)現場での施工過程、等においてパネル表面に擦傷や窪み傷等の傷が付いてしまうことがある。
【0011】
例えば、(1)工場の製造過程では、ALCが半硬化の状態で、所定のパネル厚になるよう切断する工程において、切断面(パネル表面)に線状の擦傷がついてしまうことがある。また、(2)現場までの搬送過程では、ALCパネルを複数枚積み上げてブロック化し現場に搬送するが、積み荷作業や荷下ろし作業の際に、パネル表面に線状の擦傷がついてしまうことがある。また、(3)現場での施工過程では、現場で荷下ろした後、ALCパネルに必要により所定の形状に電動工具等を用いて加工を行った後、建築物の外壁下地に、ねじ等を用いて留め付ける。こういった施工過程において、例えば、パネルに工具等が当たって擦傷する、作業者が装着している安全帯が当たって擦傷する、仮設足場の鋼材に当たって擦傷する、といったことで、線状の擦傷や窪み傷等の傷がついてしまうことがある。
【0012】
このような線状擦傷は、幅0.1mm~2mm程度の微細な傷が多く、パネルの強度を低下させるようなものではないが、補修を要したり美観の低下につながってしまうという問題があった。
【0013】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、本発明の目的は、パネルを建築物の下地に留め付け具により固定する際に、現場での作業者の目視においても適正な位置に留め付け具を打ち込むことが可能となり、さらには現場等でパネル表面についた線状擦傷等を目立たなくすることができる軽量気泡コンクリートパネルおよびパネル構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[1]
軽量気泡コンクリートから成る略長方形板状のパネル本体を備えた軽量気泡コンクリートパネルであって、
前記パネル本体の表面に、該パネルを建築物の下地に留め付け具を用いて固定する際の目安位置となる、少なくとも1つの目安部が設けられており、
該目安部は、前記パネル本体の表面に、凹部または凸部として設けられていることを特徴とする、軽量気泡コンクリートパネル。
[2]
前記目安部は、前記パネル本体の表面に、長辺方向に沿って略直線状に設けられている、[1]に記載の軽量気泡コンクリートパネル。
[3]
前記目安部のうち、前記パネルの短辺方向端部に最も近い位置に設けられている目安部は、前記パネル本体に内包されるラス網に当たる位置に設けられている、[1]または[2]に記載の軽量気泡コンクリートパネル。
[4]
前記目安部は、前記パネル本体の表面に、短辺方向に沿って略直線状に設けられている、[1]に記載の軽量気泡コンクリートパネル。
[5]
前記目安部は、建築物の前記下地が配置される間隔に対応した間隔で設けられている、[4]に記載の軽量気泡コンクリートパネル。
[6]
前記目安部のうち、前記パネルの長辺方向端部に最も近い位置に設けられている目安部は、該パネルの長辺方向端部からの距離が、25mm以上40mm以下となる位置に設けられている、[4]または[5]に記載の軽量気泡コンクリートパネル。
[7]
前記目安部は、前記パネル本体の表面に、長辺方向および短辺方向に沿って略直線状に設けられている、[1]に記載の軽量気泡コンクリートパネル。
[8]
前記パネル本体の表面に、前記目安部とは別個の、長辺方向および短辺方向の少なくとも一方に沿って略直線状に設けられた複数の溝を有し、
前記溝の幅が、0mmを超え、7mm未満であり、
かつ、前記溝の深さが、0mmを超え、4mm未満であり、
かつ、前記溝が所定間隔で設けられている、[1]~[7]のいずれかに記載の軽量気泡コンクリートパネル。
[9]
前記目安部は略直線状に形成されており、該目安部と前記溝とが略同じ方向のみに設けられている、[8]に記載の軽量気泡コンクリートパネル。
[10]
略直線状の前記目安部は凸部として形成されている、[8]または[9]に記載の軽量気泡コンクリートパネル。
[11]
前記目安部は、建築物の前記下地に対応する位置に、凹部または凸部として独立した島状に設けられている、[1]に記載の軽量気泡コンクリートパネル。
[12]
前記目安部の幅が15mm以上50mm以下である、[1]~[11]のいずれかに記載の軽量気泡コンクリートパネル。
[13]
[1]~[12]のいずれかに記載の軽量気泡コンクリートパネルを、前記目安部の位置において、留め付け具で建築物の下地に固定したパネル構造体。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、パネルを建築物の下地に留め付け具により固定する際に、現場での作業者の目視においても適正な位置に留め付け具を打ち込むことが可能となり、さらには現場等でパネル表面についた線状擦傷等を目立たなくすることができる軽量気泡コンクリートパネルおよびパネル構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態に係る軽量気泡コンクリートパネルの一構成例を模式的に示す平面図である。
図2】第1の実施形態に係る軽量気泡コンクリートパネルの一構成例を模式的に示す平面図である。
図3】第1の実施形態に係る軽量気泡コンクリートパネルを建築物の下地に留め付ける様子を模式的に示す斜視図である。
図4】第2の実施形態に係る軽量気泡コンクリートパネルの一構成例を模式的に示す(a)平面図および(b)部分断面図である。
図5】第2の実施形態に係る軽量気泡コンクリートパネルの一構成例を模式的に示す平面図である。
図6】パネルの長辺方向についた線状擦傷を模式的に示す平面図である。
図7】第3の実施形態に係る軽量気泡コンクリートパネルの一構成例を模式的に示す平面図である。
図8】第3の実施形態に係る軽量気泡コンクリートパネルを建築物の下地に留め付ける様子を模式的に示す斜視図である。
図9】第4の実施形態に係る軽量気泡コンクリートパネルの一構成例を模式的に示す平面図である。
図10】第5の実施形態に係る軽量気泡コンクリートパネルの一構成例を模式的に示す平面図である。
図11】第5の実施形態に係る軽量気泡コンクリートパネルの一構成例を模式的に示す平面図である。
図12】第6の実施形態に係る軽量気泡コンクリートパネルの一構成例を模式的に示す平面図である。
図13】第6の実施形態に係る軽量気泡コンクリートパネルの一構成例を模式的に示す平面図である。
図14】軽量気泡コンクリートパネルを下地に留め付ける様子を示す斜視図である。
図15】軽量気泡コンクリートパネルへのねじ止め位置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の例示の実施の形態(以下、「本実施形態」と略記する。)について、詳細に説明する。本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。本願明細書において、各数値範囲の上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
<軽量気泡コンクリートパネル>
(第1の実施形態)
図1図2は、本実施形態に係る軽量気泡コンクリートパネル(以下、ALCパネルと称する。)の一構成例を示す平面図である。また、図3は、ALCパネルを建築物の下地に留め付ける様子を模式的に示す斜視図である。
【0019】
本発明に係るALCパネル1は、軽量気泡コンクリートから成る略長方形板状のパネル本体10を備えたALCパネルであって、パネル本体10の表面に、パネルを建築物の下地に留め付け具を用いて固定する際の目安位置となる、少なくとも1つの目安部11が設けられている。目安部11は、パネル本体10の表面に、凹部または凸部として設けられている。
【0020】
なお、パネル本体10の表面は、板状のパネル本体10のうち、広い主面を指す。
【0021】
このALCパネル1では、木造の建築物において、下地にALCパネル1を留め付ける際の、留め付け具の打ち込みの目安位置が視覚的に示されているので、現場での留め付け具の打ち込みを位置ズレなく行うことができる。
【0022】
目安部11は、パネル本体10に別部材を設けることなく、パネル本体10の表面を切削や研磨等することにより凹形状または凸形状に形成することができる。
【0023】
これにより、本発明のALCパネル1では、パネルを建築物の下地木材に留め付け具により固定する際に、現場での作業者の目視においても適正な位置に留め付け具を打ち込むことが可能となる。
【0024】
なお、本明細書において、「建築物の下地」としては、例えば、柱、間柱、胴縁等が挙げられる。
【0025】
また、本明細書において、「留め付け具」は、ねじ、ビス、釘、木ねじ等を含むものとする。
【0026】
軽量気泡コンクリートとしては、例えば、JIS A 5416に記載のALCなどをあげることができる。例えば、セメント、石灰質原料、珪酸質原料、水を主原料として、内部に多量の気泡が混入された、かさ比重0.1~1.0程度の硬化体と、内部に埋設された補強材とから構成されている軽量気泡コンクリートを挙げることができる。
【0027】
パネル本体10の大きさは特に限定されるものではないが、一例として、図1に示すパネル本体10は、長辺が1820mm、短辺が606mm、厚さが37mmの、略長方形状の板状を成している。但し、パネル外形として、設計、製造時の寸法誤差は許容するものとする。
なお、パネル本体10の内部には強度を確保するための図示しない補強材としての鉄筋や金網等が埋設されていてもよい。
【0028】
また、本実施形態に係るALCパネル1は、表面が略平坦なパネルであり、「表面が略平坦」とは、遠目、具体的には、例えば概ね5m以上離れて見たときに全体として略平坦な質感を有するものであればよく、後述するように、比較的大きな凹凸により陰影を生み出し、模様を視認できるようにしたデザインパネルとは異なることを意味する。
【0029】
目安部11の形状は、特に限定されない。
図1図2に示すALCパネル1A,1B(1)では、目安部11a(11)は、パネル本体10の表面に、長辺方向に沿って略直線状に設けられている。
【0030】
これにより、図3に示すように、例えば、ALCパネル1B(1)の長手方向が横向きになるように配して、建築物の下地に留め付ける際に、縦方向(パネルの短辺方向)における留め付け具30の打ち込みの位置を好適に示すことができる。一例として下地の間隔Lは455mmであり、柱の幅は105mm、間柱の幅は35mmである。
図3では、留め付け具30の打ち込みの位置を白丸「〇」で示しているが、打ち込みの位置は一例であり、これに限定されるものではない。後掲する図8においても同様である。
【0031】
なお、目安部11が略直線状に設けられていることで、横方向(パネルの長辺方向)における打ち込み位置は作業者の目視による検討になるが、パネルの奥側に下地が見えるため、それを狙うことで検討は付けやすくなる。
【0032】
なお、本明細書において「略直線状」とは、定規で引いたような一直線状だけではなく、フリーハンドで引いたような、ある程度蛇行した線状も含むものである。
【0033】
また、目安部11の断面形状についても特に限定されず、目安部11の側面がパネル本体10の表面に対して略垂直であってもよいし、傾斜していてもよい。目安部11の側面は湾曲していてもよい。
【0034】
図1に示すALCパネル1A(1)では、パネルを長手方向が横向きになるように配した状態において、目安部11a(11)は、パネル本体10の上部と下部の2か所に設けられている。
これにより、ALCパネル1A(1)を取り付ける際に、パネルの上部と下部において留め付け具を適切な位置に打ち込むことができる。
【0035】
また、図2に示すALCパネル1B(1)では、目安部11a(11)は、パネル本体10の上部と下部に加えて中央部を含む3か所に設けられている。
これにより、ALCパネル1B(1)を取り付ける際に、パネルの上部と下部に加えて中央部において留め付け具をより適切な位置に打ち込むことができる。
【0036】
また、目安部11a(11)のうち、パネルの短辺方向端部13に最も近い位置に設けられている目安部11a(11)は、パネル本体10に内包されるラス網に当たる位置に設けられていることが好ましい。なお、パネルの短辺方向端部13は、図においてパネル上下の端部のことを示す。
【0037】
目安部11a(11)のうち、パネルの短辺方向端部13に最も近い位置に設けられている目安部11a(11)は、その中心とパネルの短辺方向端部13からの距離Bが、75mm以上100mm以下となる位置に設けられていることが好ましい。
【0038】
パネル短辺方向端部13における留め付け具打ち込みの位置を適切に示すことで、パネルにかかる負の(内側から外側方向への)風荷重を、バランス良く負担でき、下地の動きや変形等に対し、パネルの反りを抑制できる。またラス網に当たる位置で打ち込むことができ、パネル端部の割れや欠けを抑制できる。
【0039】
通常、ラス網の端部は、パネル長辺方向端部14から20~25mm程度中央部寄りに位置している。そのため、目安部11a(11)は、パネルの長辺方向端部14まで設けてもよいし、設けなくてもよい。なお、パネルの長辺方向端部14は、図においてパネル左右の端部のことを示す。目安部11aをパネルの長辺方向端部14まで設けない場合は、設けない距離はパネルの長辺方向端部14から20mm以下とするとよい。
【0040】
パネル長辺方向端部14における留め付け具打ち込みの位置を適切に示すことで、特に、パネル内部に埋め込まれているラス網に当たる位置で打ち込むことができ、パネル端部の割れや欠けを抑制できる。
【0041】
目安部11が凹部として形成されている場合、その深さとしては、視認できる範囲であれば特に限定されないが、例えば、0mmを超え、4mm未満であることが好ましく、0.3mm以上、2mm以下であることがより好ましい。
これにより、目安部11が視認しやすいものとなる。目安部11の深さは、後述するような溝12の深さの範囲内とすると、表面の平坦さをなるべく維持しながら、視認しやすいものとできる。
【0042】
なお、本明細書において、目安部11の深さは、パネル本体10表面からの深さをいうものとする。
【0043】
目安部11が凸部として形成されている場合、その高さとしては、視認できる範囲であれば特に限定されないが、例えば、0mmを超え、4mm未満であることが好ましく、0.3mm以上、2mm以下であることがより好ましい。
これにより、目安部11が視認しやすいものとなる。目安部11の高さは、後述するような溝12の深さの範囲内とすると、表面の平坦さをなるべく維持しながら、視認しやすいものとできる。
【0044】
なお、本明細書において、目安部11の高さは、パネル本体10表面からの高さをいうものとする。
【0045】
目安部11の幅としては、特に限定されないが、10mm以上50mm以下であることが好ましく、20mm以上40mm以下であることがより好ましい。
【0046】
これにより、パネル施工後に、ねじ頭部の補修、具体的には、例えば、ねじ頭打ち込み部に専用の補修材を充填し、表面を周辺形状と同一となるよう整える作業を行い、周辺を平滑にすることができ、施工後のパネルの美観を良好なものとすることができる。
【0047】
凹部または凸部として形成された目安部11に、20mm~30mm程度以上の平滑な部分を設けることで、ねじ頭部分の補修作業がやりやすくなる(目安部11が細かな溝形状だと手間がかかる)。
【0048】
このような目安部11は、工場等において、例えば、切削刃による切削加工等を行う工程時において形成することができる。目安部11を凹部とする場合は、目安部を形成する位置を切削して凹部を形成し、目安部11を凸部とする場合は、目安部の位置となる場所以外を切削して凸部を形成することができる。
【0049】
(第2の実施形態)
つぎに、本発明の軽量気泡コンクリートパネルの第2の実施形態について説明する。
図4(a)は、本実施形態の軽量気泡コンクリートパネルの一構成例を模式的に示す(a)平面図であり、図4(b)は、図4(a)のX1-X2線における部分断面図である。図5は、本実施形態の軽量気泡コンクリートパネルの一構成例を模式的に示す平面図である。また、図6は、パネルの長辺方向に沿ってついた線状擦傷を模式的に示す平面図である(なお、図6では溝は省略している。)。
なお、以下の説明では、上述した実施形態と異なる点について主に説明し、同様の部分については、説明を省略する。
【0050】
本実施形態のALCパネル1は、パネルの長辺方向に沿って略直線状に設けられた目安部11a(11)に加えて、さらに、パネル本体10の表面に、目安部11とは別個の、長辺方向および短辺方向の少なくとも一方に沿って略直線状に設けられた複数の溝12を有する。
【0051】
これにより、運搬時や現場でパネル表面についた線状擦傷等を目立たなくすることができる。
【0052】
図4に示すALCパネル1C(1)では、パネルを長手方向が横向きになるように配した状態において、目安部11a(11)は、パネル本体10の上部と下部の2か所に設けられている。
また、図5に示すALCパネル1D(1)では、目安部11a(11)は、パネル本体10の上部と下部に加えて中央部を含む3か所に設けられている。
【0053】
そして、図4図5に示すALCパネル1C,1D(1)では、パネル本体10の一方の表面には、目安部11a(11)とは別個の、複数の略直線状の溝12が、パネル本体10の長辺と略平行に、略所定間隔で形成されている。
【0054】
溝12の幅(最大幅)は、0mmを超え、7mm未満であり、0mmを超え、4mm以下であることが好ましく、0mmを超え、2mm以下であることがより好ましく、0.3mm以上、2mm以下であることがさらに好ましい。
【0055】
溝12の深さ(最大深さ)は、0mmを超え、4mm未満であり、0.3mmを超え、4mm未満であることが好ましく、0.3mm以上、2mm以下であることがより好ましい。
【0056】
これらの溝12の間隔は、0mmを超え、100mm以下であり、10mm以上、60mm以下であることが好ましく、10mm以上、30mm以下であることがより好ましい。
【0057】
なお、本明細書における溝の深さとは、深さの最も大きい部分の寸法をいい、溝の幅とは幅の最も大きい部分の寸法をいい、溝の間隔とは溝の幅の中心部から隣接する同中心部までの寸法をいう。
【0058】
溝12の幅や深さおよび間隔を上記範囲とすることで、パネルの表面に線状に走る擦傷があっても、塗装仕上げ後には視認することが難しくなる。すなわち、パネル表面についた線状擦傷を目立たなくすることができる。また、表面の略平坦な意匠感も、この範囲における幅や深さおよび間隔であれば損なわれない。
【0059】
なお、長辺方向に設けられた複数の溝12は、上記範囲であるならば、幅や深さおよび間隔は同じ(均一)でも構わないし、異なって(ランダム)いても構わない。
【0060】
溝12の幅や深さおよび間隔が上記範囲よりも大きいと、塗装仕上げ後において線状擦傷を目立たないようにする効果が十分に得られない。また、表面の略平坦な意匠感を十分に得ることができない。すなわち、デザイン性の強い意匠パネルに見えてしまう。一方、溝12の幅や深さおよび間隔が上記範囲よりも小さいと、製造時にパネル表面に精度よく溝12を形成することが製造技術的に(パネル厚みの誤差などにより)困難になる。
【0061】
特に、図4図5に示すALCパネル1C,1D(1)では、複数の溝12が、パネル本体10の長辺と略平行に形成されていることで、例えば図6に示すような、パネル本体10の長辺方向に沿ってついた線状擦傷20を、より効果的に目立たないようにすることができる。
【0062】
なお、これらの溝12の角度は、傾斜しておらず、略直角である方が、擦傷の形状と似ており、傷がより目立ちにくくなるため、好ましい。なお、溝の角度とは、パネル表面と溝底面とを繋ぐ、溝の側面部分の角度のことをいう。
【0063】
製造上は、溝12の側面に傾斜を設けても設けなくても、どちらも可能であるが、溝12の幅および深さが比較的大きい場合(例えば、3~4mm程度である場合)には、均一な塗装面を確保する観点から、やや傾斜を設けたほうが好ましい。このような観点からは、溝12の側面部分の角度は、0度を超え~75度の範囲とする(パネル表面側の溝幅を底面幅より広くする)ことが好ましい。溝12の側面は湾曲していてもよい。
【0064】
このような溝12は、工場等において、例えば、切削刃による切削加工等により形成することができる。
【0065】
本実施形態のALCパネル1において、目安部11は略直線状に形成されており、目安部11と溝12とが略同じ方向のみに設けられていることが好ましい。
図4図5に示すALCパネル1C,1D(1)では、目安部11a(11)はパネルの長辺方向に略直線状に形成されており、溝12はパネルの長辺方向に形成されている。
【0066】
目安部11と溝12との形成方向が同じであることで、製造時の加工工数を抑えることができる。例えば、切削装置の切削刃にパネル本体10を通して表面を切削する際に、1回の切削工程で目安部11と複数の溝12を同時に形成できる。
【0067】
本実施形態のALCパネル1では、略直線状の目安部11は、凸部として形成されていることが好ましい。
【0068】
ALCパネル1の製造工程において、溝12の部分は切削し、目安部11の部分は切削しないことで、目安部11は、溝12の非形成部である凸部として形成することができる。目安部11を、溝12の非形成部として形成することで、1回の切削工程で目安部11と複数の溝12とを同時に形成できる。
【0069】
なお、本実施形態のALCパネルは、表面が略平坦なパネルであり、ALCパネル表面に溝または凹凸模様を付与して意匠性を高めた、いわゆるデザインパネル(装飾模様付きパネル)とは異なるものである。このようなデザインパネルにおける溝または凹部の深さは、一般的に4mm以上の寸法とすることで、比較的大きな凹凸により陰影を生み出し、模様を視認できるようにしている。
【0070】
これに対し、本実施形態のALCパネルは、4mm未満の浅い線状溝を密に(狭い間隔で)形成することで、従来のフラットパネル同様、表面の略平坦な意匠感を損なうことのないよう配慮したものとなっている。これにより、例えばアクセント的に用いるデザインパネルとの併用使いなどにおいても、違和感のない壁面意匠を創出することが可能となる。
【0071】
なお、完全なフラットパネルの場合、塗装時に塗り継ぎムラが発生しやすいといった問題があるが、本実施形態のALCパネルでは、浅い溝12が形成されていることで、そのような塗り継ぎムラが起きにくく、塗装の仕上げが良くなるといった利点もある。
【0072】
また、パネルの施工時において、デザインパネルの場合、溝深さが大きいため、シーリング材充てん後のヘラ押さえが大変であるが、本実施形態のALCパネルでは、溝12が浅いため、パネル間のシーリング工事がやりやすくなるといった利点も挙げられる。
【0073】
このように、表面が略平坦なALCパネルにおいて表面に線状擦傷がついたパネルであっても、強度的に問題ないものであれば使用することができるため、廃棄されるパネルを削減することができ、資源のロスや、新しいパネルを用意することによるコストを削減することができる。
【0074】
なお、上述した説明では、目安部11b(11)がパネルの長辺方向に略直線状に形成され、溝12がパネルの長辺方向に形成されている場合を例に挙げて説明したが、目安部11b(11)と溝12とは異なる方向に設けられていてもよい。すなわち、溝12がパネルの短辺方向に形成されていてもよい。この場合、パネル本体10の短辺方向に沿ってついた線状擦傷を、より効果的に目立たないようにすることができる。
【0075】
(第3の実施形態)
つぎに、本発明の軽量気泡コンクリートパネルの第3の実施形態について説明する。
図7は、本実施形態の軽量気泡コンクリートパネルの一構成例を模式的に示す平面図である。また、図8は、ALCパネルを建築物の下地に留め付ける様子を模式的に示す斜視図である。
なお、以下の説明では、上述した実施形態と異なる点について主に説明し、同様の部分については、説明を省略する。
【0076】
図7に示すALCパネル1E(1)では、目安部11b(11)は、パネル本体10の表面に、短辺方向に沿って略直線状に設けられている。目安部11b(11)は、パネルの短辺方向端部13まで設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0077】
これにより、図8に示すように、例えば、ALCパネル1E(1)の長手方向が横向きになるように配して、建築物の下地に留め付ける際に、横方向(パネル長辺方向)における留め付け具30の打ち込み位置を好適に示すことができる。縦方向(パネル短辺方向)における打ち込み位置は作業者の目視による判断になるが、例えば75mm以上100mm以下の範囲での寸法狙いとなるので、検討は付けやすい。
【0078】
本実施形態のALCパネル1において、目安部11b(11)は、建築物の下地が配置される間隔に対応した間隔で設けられていることが好ましい。
【0079】
これにより、建築物の下地に対する打ち込みの位置をより適切に示すことができる。柱や間柱、胴縁等の下地は、例えば455mmの間隔Lで配置されている。その場合、目安部11b(11)も455mmの間隔で設けられることが好ましい。
ただし、設計、製造時の寸法誤差は許容するものとする。
【0080】
目安部11b(11)のうち、パネルの長辺方向端部14に最も近い位置に設けられている目安部11b(11)は、パネル本体10に内包されるラス網に当たる位置に設けられていることが好ましい。
【0081】
具体的には、目安部11のうち、パネルの長辺方向端部14に最も近い位置に設けられている目安部11b(11)は、その中心とパネルの長辺方向端部14からの距離Aが、25mm以上40mm以下となる位置に設けられていることが好ましい。25mm以上あれば補強材に当たる位置となり、40mm以下であれば柱を外さずに留め付け具を打ち込むことができる。30mm以上40mm以下となる位置に設けられているとより確実に補強材に当たる位置で打ち込むことができるのでより好ましい。
【0082】
パネル長辺方向端部14における留め付け具打ち込みの位置を適切に示すことで、パネルの工法標準の違いがあっても、パネル内部に埋め込まれているラス網に当たる位置で打ち込むことができ、パネル端部の割れや欠けを抑制できる。
【0083】
目安部11の幅としては、特に限定されないが、10mm以上50mm以下であることが好ましく、20mm以上40mm以下であることがより好ましい。また目安部11の幅は、間柱の幅よりも小さいと、間柱の幅内に目安部が配置されることになる。そのため、目安部の幅は、間柱の幅よりも小さくするとよい。
【0084】
(第4の実施形態)
つぎに、本発明の軽量気泡コンクリートパネルの第4の実施形態について説明する。
図9は、本実施形態の軽量気泡コンクリートパネルの一構成例を模式的に示す平面図である。
なお、以下の説明では、上述した実施形態と異なる点について主に説明し、同様の部分については、説明を省略する。
【0085】
本実施形態のALCパネル1は、パネルの短辺方向に沿って略直線状に設けられた目安部11b(11)に加えて、さらに、パネル本体10の表面に、目安部11とは別個の、長辺方向および短辺方向の少なくとも一方に沿って略直線状に設けられた複数の溝12を有している。
これにより、運搬時や現場等でパネル表面についた線状擦傷等を目立たなくすることができる。
【0086】
図9に示すALCパネル1F(1)では、目安部11b(11)はパネルの短辺方向に略直線状に形成されており、溝12はパネルの長辺方向に形成されている。
これにより、パネル本体10の長辺方向に沿ってついた線状擦傷を、より効果的に目立たないようにすることができる。
【0087】
本実施形態のALCパネル1F(1)では、略直線状の目安部11b(11)は、凸部として形成されていることが好ましい。
【0088】
ALCパネル1の製造工程において、溝12の部分は切削し、目安部11b(11)の部分は切削しないことで、目安部11b(11)は、溝12の非形成部である凸部として形成することができる。目安部11b(11)を、溝12の非形成部として形成することで、1回の切削工程で目安部11b(11)と複数の溝12とを同時に形成できる。
【0089】
また、ALCパネル1では、略直線状の目安部11b(11)は、凹部として形成されていてもよい。
ALCパネル1の製造工程において、溝12の部分を切削した後、目安部11b(11)の部分を切削することで、目安部11b(11)を凹部として形成できる。切削工程を2回にしたり、もしくは目安部を切削する切削刃を変更して1工程で切削するなどし、目安部11b(11)を容易に形成できる。
【0090】
なお、上述した説明では、目安部11b(11)がパネルの短辺方向に略直線状に形成され、溝12がパネルの長辺方向に形成されている場合を例に挙げて説明したが、目安部11b(11)と溝12とが略同じ方向のみに設けられていてもよい。すなわち、溝12がパネルの短辺方向に形成されていてもよい。この場合、パネル本体10の短辺方向に沿ってついた線状擦傷を、より効果的に目立たないようにすることができる。
【0091】
また、目安部11と溝12との形成方向が同じであることで、製造時の加工工数を抑えることができる。例えば、切削装置の切削刃にパネル本体10を通して表面を切削する際に、1回の切削工程で目安部11と複数の溝12を同時に形成できる。
【0092】
(第5実施形態)
つぎに、本発明の軽量気泡コンクリートパネルの第5の実施形態について説明する。
図10図11は、本実施形態の軽量気泡コンクリートパネルの一構成例を模式的に示す平面図である。
なお、以下の説明では、上述した実施形態と異なる点について主に説明し、同様の部分については、説明を省略する。
【0093】
上述した実施形態では、パネルの横方向(長辺方向)のみ、縦方向(短辺方向)のみについて、打ち込み位置を示す目安部11が設けられていたが、本実施形態のALCパネル1では、パネルの横方向および縦方向における打ち込みの位置を示す目安部11が設けられている。
【0094】
図10に示すALCパネル1G(1)では、目安部11a(11)は、パネル本体10の表面に、長辺方向に沿って略直線状に設けられており、目安部11b(11)は、短辺方向に沿って略直線状に設けられている。
これにより、例えば、ALCパネル1G(1)の長手方向が横向きになるように配して、建築物の下地に留め付ける際に、パネルの横方向(長辺方向)および縦方向(短辺方向)における打ち込みの位置を、目安部11aと目安部11bとの交差部11cで好適に示すことができる。
【0095】
目安部11の幅としては、特に限定されないが、10mm以上50mm以下であることが好ましく、20mm以上40mm以下であることがより好ましい。また長辺方向に設けられる目安部11aの幅と、短辺方向に設けられる目安部11bの幅は同じであってもよく、異なっていても構わない。
【0096】
図11に示すALCパネル1H(1)では、目安部11d(11)は、建築物の下地に対応する位置に、凹部または凸部として独立した島状に設けられている。
これにより、例えば、ALCパネル1H(1)の長手方向が横向きになるように配して、建築物の下地に留め付ける際に、パネルの横方向(長辺方向)および縦方向(短辺方向)における打ち込みの位置を、島状に設けた目安部11によって好適に示すことができる。
【0097】
目安部11d(11)が島状に設けられている場合、目安部11d(11)の平面形状は特に限定されず、例えば、円形状や多角形状、それらを組み合わせた形状とすることができる。図11では目安部11d(11)を四角形状とした場合を示している。
【0098】
目安部11d(11)の幅としては、特に限定されないが、10mm以上50mm以下であることが好ましく、20mm以上40mm以下であることがより好ましい。ここで、目安部11d(11)の幅は、例えば、目安部11d(11)が円形状の場合にはその直径を示し、四角形状の場合にはその1辺の長さを示すものとする。
【0099】
また、目安部11d(11)の断面形状についても特に限定されず、目安部11d(11)の側面がパネル本体10の表面に対して略垂直であってもよいし、傾斜していてもよい。目安部11d(11)の側面は湾曲していてもよい。
【0100】
このような島状の目安部11d(11)は、工場等において、例えば、切削刃による切削加工により形成することができる。
【0101】
(第6の実施形態)
つぎに、本発明の軽量気泡コンクリートパネルの第6の実施形態について説明する。
図12図13は、本実施形態の軽量気泡コンクリートパネルの一構成例を模式的に示す平面図である。
なお、以下の説明では、上述した実施形態と異なる点について主に説明し、同様の部分については、説明を省略する。
【0102】
本実施形態のALCパネル1では、パネルの横方向および縦方向における打ち込みの位置を示す目安部11に加えて、さらに、パネル本体10の表面に、目安部11とは別個の、長辺方向および短辺方向の少なくとも一方に沿って略直線状に設けられた複数の溝12を有している。
これにより、運搬時や現場等でパネル表面についた線状擦傷等を目立たなくすることができる。
【0103】
図12に示すALCパネル1I(1)では、パネル本体10の表面に、目安部11a(11)が長辺方向に沿って略直線状に設けられており、目安部11b(11)が短辺方向に沿って略直線状に設けられており、溝12はパネルの長辺方向に形成されている。
これにより、パネル本体10の長辺方向に沿ってついた線状擦傷を、より効果的に目立たないようにすることができる。
【0104】
また、略直線状の目安部11a,11b(11)は、凸部として形成されていることが好ましい。
【0105】
ALCパネル1の製造工程において、溝12の部分は切削し、目安部11a,11b(11)の部分は切削しないことで、目安部11a,11b(11)は、溝12の非形成部である凸部として形成される。目安部11a,11b(11)を、溝12の非形成部として形成することで、1回の切削工程で目安部11a,11b(11)と複数の溝12とを同時に形成できる。
【0106】
また、ALCパネル1では、略直線状の目安部11a,11b(11)は、凹部として形成されていてもよい。
ALCパネル1の製造工程において、溝12の部分を切削した後、目安部11a,11b(11)の部分を切削することで、目安部11a,11b(11)を凹部として形成できる。
【0107】
なお、図12では、溝12がパネルの長辺方向に形成されている場合を例に挙げて示したが、本実施形態はこれに限定されず、溝12はパネルの短辺方向に形成されていてもよい。この場合、パネル本体10の短辺方向に沿ってついた線状擦傷を、より効果的に目立たないようにすることができる。
【0108】
図13に示すALCパネル1J(1)では、目安部11d(11)は独立した島状に設けられており、溝12はパネルの長辺方向に形成されている。
これにより、パネル本体10の長辺方向に沿ってついた線状擦傷を、より効果的に目立たないようにすることができる。
【0109】
また、島状の目安部11d(d)は、凸部として形成されていることが好ましい。
【0110】
ALCパネル1の製造工程において、溝12の部分は切削し、目安部11d(11)の部分は切削しないことで、目安部11d(11)は、溝12の非形成部である凸部として形成される。目安部11d(11)を、溝12の非形成部として形成することで、1回の切削工程で目安部11d(11)と複数の溝12とを同時に形成できる。
【0111】
また、ALCパネル1では、島状の目安部11d(11)は、凹部として形成されていてもよい。
ALCパネル1の製造工程において、溝12の部分を切削した後、目安部11d(11)の部分を切削することで、目安部11d(11)を凹部として形成できる。
【0112】
なお、図13では、溝12がパネルの長辺方向に形成されている場合を例に挙げて示したが、本実施形態はこれに限定されず、溝12はパネルの短辺方向に形成されていてもよい。この場合、パネル本体10の短辺方向に沿ってついた線状擦傷を、より効果的に目立たないようにすることができる。
【0113】
以上、説明してきた実施形態では、ALCパネル1が、長手方向が横向きになるように配して、建築物の下地に留め付けられる場合を例に挙げて説明してきたが、ALCパネル1は、長手方向が縦向きになるように配して、建築物の下地に留め付けられるものであってもよい。
【0114】
<パネル構造体>
本発明のパネル構造体は、上述したような軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)を、目安部の位置において、留め付け具で建築物の下地に固定されてなる。
これにより、ALCパネルの適正な位置に留め付け具が打ち込まれ、位置ズレなく建築物の下地に固定されたパネル構造体を提供できる。
【0115】
さらに、ALCパネルの表面に上述したような浅い溝が密に形成されている場合、ALCパネルに線状擦傷等がついている場合であっても、塗装仕上げ後には、傷跡を視認することが難しくなる。すなわち、表面の略平坦な意匠感を損なうことなく、パネル表面についた線状擦傷等を目立たなくすることができる。
【0116】
また、パネル(ALCパネル)の表面に塗装が施されていてもよい。
塗装には、ALCパネルの塗装において一般的に用いられている塗装材(下塗り材、中塗り材、上塗り材を含む)を、特に限定されることなく用いることができる。
【0117】
<建築物>
さらに、本発明の技術的思想は、上述したような軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)またはパネル構造体を備えた建築物にも及ぶものとする。
【0118】
上述したような、本発明の軽量気泡コンクリートパネルまたはパネル構造体は、例えば、建築物の外壁として使用されるが、これに限定されず、建築物の内壁、間仕切り壁、天井の壁、床材等として使用されるものであってもよい。
【0119】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施形態では、目安部や複数の溝が、パネル本体の一方の表面に設けられている場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、目安部や複数の溝は、パネル本体の両方の表面に設けられていてもよい。
【0120】
また、上述した実施形態では、平面視で略長方形状のパネル本体として、向かい合う2組の辺において、一方の組の辺の長さが、他方の組の辺の長さと異なる(すなわち、長辺をなす組と短辺をなす組とがある)場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、4辺の長さが等しい、すなわち正方形状のパネルについても適用可能である。この場合、長辺方向は「第1の方向」、短辺方向は「(第1の方向と直交する)第2の方向」と読み替えるものとする。
さらに、長方形状以外の形状のパネルにおいても、本発明の技術的思想は及ぶものとする。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明による軽量気泡コンクリートパネルを用いることで、現場での作業者の目視においても適正な位置に留め付け具を打ち込むことが可能なものとなり、建築物の壁パネルとして広く利用することができる。
【符号の説明】
【0122】
1(1A~1J) 軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)
10 パネル本体
11(11a,11b,11d) 目安部
11c 交差部
12 溝
13 短辺方向端部
14 長辺方向端部
20 線状擦傷
30 留め付け具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15