(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156565
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】ひび幅計測装置、ひび幅計測方法およびひび幅計測プログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/04 20060101AFI20241029BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241029BHJP
【FI】
G01B11/04 H
G06T7/00 350B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071143
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】磯谷 和樹
【テーマコード(参考)】
2F065
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA22
2F065CC14
2F065FF01
2F065FF42
2F065HH02
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065QQ04
2F065QQ24
2F065QQ41
5L096AA02
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA02
5L096DA02
5L096EA43
5L096FA03
5L096FA64
5L096FA69
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】画像上の任意に選択された位置におけるひび幅を従来に比して正確に計測することができるひび幅計測装置を得ること。
【解決手段】ひび幅計測装置1は、ひびを有する構造物の画像データであるひび画像データから構造物における実際のひび幅を計測するひび幅計測装置1であって、ひび幅計測部16を備える。ひび幅計測部16は、ひび画像データの1画素が表す色情報の値と1画素あたりのひび幅との関係を示す画素ひび幅関係情報を用いてひび画像データで選択された2点間を結ぶ線分と交わるひびに相当する領域のひび画像データ上での合計ひび幅を算出する。また、ひび幅計測部16は、ひび画像データのサイズと構造物のサイズとの対応関係を示すサイズ対応情報を用いて、合計ひび幅から実際のひび幅を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひびを有する構造物の画像データであるひび画像データから前記構造物における実際のひび幅を計測するひび幅計測装置であって、
前記ひび画像データの1画素が表す色情報の値と1画素あたりのひび幅との関係を示す画素ひび幅関係情報を用いて前記ひび画像データで選択された2点間を結ぶ線分と交わる前記ひびに相当する領域の前記ひび画像データ上での合計ひび幅を算出し、前記ひび画像データのサイズと前記構造物のサイズとの対応関係を示すサイズ対応情報を用いて、前記合計ひび幅から前記実際のひび幅を算出するひび幅計測部を備えることを特徴とするひび幅計測装置。
【請求項2】
定められた前記画素ひび幅関係情報および定められた前記サイズ対応情報のうち少なくとも一方を記憶するプリセット条件記憶部と、
前記定められた画素ひび幅関係情報および前記定められたサイズ対応情報のうち少なくとも一方が初期値として設定された前記画素ひび幅関係情報および前記サイズ対応情報の設定画面を表示する条件設定表示部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のひび幅計測装置。
【請求項3】
前記ひび幅計測部は、前記ひび幅を算出する基準となる幅算出基準線を前記線分とし、前記ひび画像データを前記ひびと前記ひび以外のものとを画素単位でセグメンテーションした画像データであるひび分類画像データを用いて、前記幅算出基準線と交わる前記ひびに相当する領域を決定することを特徴とする請求項1に記載のひび幅計測装置。
【請求項4】
前記ひび画像データから前記ひびの位置を推論するための第1学習済モデルを用いて、前記ひび画像データから前記ひび分類画像データを出力するひび分類部をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のひび幅計測装置。
【請求項5】
前記ひび分類画像データを用いて前記線分と交わる前記ひびの延在方向であるひび方向を算出するひび方向算出部をさらに備え、
前記ひび幅計測部は、前記線分が前記ひび方向と直交するかを判定し、前記線分が前記ひび方向と直交していない場合には、前記幅算出基準線を、前記線分と交わり前記ひび方向に直交する直線とすることを特徴とする請求項3に記載のひび幅計測装置。
【請求項6】
前記ひび画像データから前記1画素が表す色情報の値に応じた前記1画素あたりのひび幅を推論するための第2学習済モデルを用いて、前記ひび画像データから前記画素ひび幅関係情報を出力する画素ひび幅関係情報算出部をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のひび幅計測装置。
【請求項7】
前記ひび画像データを表示するひび画像表示部と、
前記ひび幅計測部によって算出された前記実際のひび幅を表示する計測結果表示部と、
をさらに備え、
前記ひび幅計測部は、前記2点間を結ぶ線分と交わる前記ひびに相当する領域が存在するかを判定する機能をさらに有し、
前記計測結果表示部は、前記2点間を結ぶ線分と交わる前記ひびに相当する領域が存在しない場合に、前記2点間にひびがないことを示す注意情報を表示する機能をさらに有することを特徴とする請求項3に記載のひび幅計測装置。
【請求項8】
前記ひび画像データを表示する画像表示部と、
前記ひび幅計測部によって算出された前記実際のひび幅を表示する計測結果表示部と、
をさらに備え、
前記ひび幅計測部は、前記ひび画像データから選択位置における前記ひび幅を推論するための第3学習済モデルを用いて、前記画像表示部によって表示されている前記ひび画像データから前記選択位置における前記ひび幅を推論することを特徴とする請求項1に記載のひび幅計測装置。
【請求項9】
前記1画素が表す色情報の値は、輝度値、明度値、色相値および彩度値の群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載のひび幅計測装置。
【請求項10】
コンピュータを用いてひびを有する構造物の画像データであるひび画像データから前記構造物における実際のひび幅を計測するひび幅計測方法であって、
前記ひび画像データの1画素が表す色情報の値と1画素あたりのひび幅との関係を示す画素ひび幅関係情報を用いて前記ひび画像データで選択された2点間を結ぶ線分と交わる前記ひびに相当する領域の前記ひび画像データ上での合計ひび幅を算出する第1工程と、
前記ひび画像データのサイズと前記構造物のサイズとの対応関係を示すサイズ対応情報を用いて、前記合計ひび幅から前記実際のひび幅を算出する第2工程と、
を含むことを特徴とするひび幅計測方法。
【請求項11】
前記第1工程では、前記ひび幅を算出する基準となる幅算出基準線を前記線分とし、前記ひび画像データを前記ひびと前記ひび以外のものとを画素単位でセグメンテーションした画像データであるひび分類画像データを用いて、前記幅算出基準線と交わる前記ひびに相当する領域を決定することを特徴とする請求項10に記載のひび幅計測方法。
【請求項12】
前記第1工程では、前記ひび画像データから前記ひびの位置を推論するための第1学習済モデルを用いて、前記ひび画像データから前記ひび分類画像データを生成することを特徴とする請求項11に記載のひび幅計測方法。
【請求項13】
ひびを有する構造物の画像データであるひび画像データの1画素が表す色情報の値と1画素あたりのひび幅との関係を示す画素ひび幅関係情報を用いて前記ひび画像データで選択された2点間を結ぶ線分と交わる前記ひびに相当する領域の前記ひび画像データ上での合計ひび幅を算出する第1ステップと、
前記ひび画像データのサイズと前記構造物のサイズとの対応関係を示すサイズ対応情報を用いて、前記合計ひび幅から前記構造物における実際のひび幅を算出する第2ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とするひび幅計測プログラム。
【請求項14】
前記第1ステップでは、前記ひび幅を算出する基準となる幅算出基準線を前記線分とし、前記ひび画像データを前記ひびと前記ひび以外のものとを画素単位でセグメンテーションした画像データであるひび分類画像データを用いて、前記幅算出基準線と交わる前記ひびに相当する領域を決定することを特徴とする請求項13に記載のひび幅計測プログラム。
【請求項15】
前記第1ステップでは、前記ひび画像データから前記ひびの位置を推論するための第1学習済モデルを用いて、前記ひび画像データから前記ひび分類画像データを生成することを特徴とする請求項14に記載のひび幅計測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ひびを含む構造物の画像データからひび幅を計測するひび幅計測装置、ひび幅計測方法およびひび幅計測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルなどの構造物では、点検結果の報告書として、ひびの幅を正確に記載して提出することが求められている。特許文献1には、コンクリート構造物などの構造物の表面に発生するひびの幅を求めるひび割れの計測方法が開示されている。特許文献1に記載のひび割れ計測方法では、構造物の表面を撮影した原画像データをピクセル毎に2値化して、ひび割れ領域を判定し、ひび割れ領域の外周縁に沿って、その外側を周回する1ピクセル分以上の外周回領域を設定する。そして、特許文献1に記載のひび割れ計測方法では、ひび割れ領域内の各画素の輝度値合計と、外周回領域の輝度値合計と、の加算値であるひび割れの見掛面積を算出し、見掛面積からひび割れ面積を求める。また、特許文献1に記載のひび割れ計測方法では、構造物の表面を撮影する際に、長さが既知の複数のマークが表示されたクラックスケールを同時に撮影し、原画像データに撮影されたクラックスケールからひび割れの長さを求め、ひび割れ面積をひび割れ長さで除算することにより、ひび幅を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、構造物を撮影した画像全体に対して処理を行っているため、原画像データ内に、複数のひびが狭い範囲に存在する場合、あるいはひびと酷似したコンクリートの目地が存在する場合には、意図しない結果が得られてしまう問題があった。また、1本のひびにおいて、ひび幅は場所によって異なるのが通常であるが、上記従来の技術によるひび幅の算出は、ひび幅の平均値しか算出することができず、任意の位置における正確なひび幅を取得することができない。このため、指定した位置におけるひび幅を画像から求める技術が望まれていた。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、画像上の任意に選択された位置におけるひび幅を従来に比して正確に計測することができるひび幅計測装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るひび幅計測装置は、ひびを有する構造物の画像データであるひび画像データから構造物における実際のひび幅を計測するひび幅計測装置であって、ひび幅計測部を備える。ひび幅計測部は、ひび画像データの1画素が表す色情報の値と1画素あたりのひび幅との関係を示す画素ひび幅関係情報を用いてひび画像データで選択された2点間を結ぶ線分と交わるひびに相当する領域のひび画像データ上での合計ひび幅を算出する。また、ひび幅計測部は、ひび画像データのサイズと構造物のサイズとの対応関係を示すサイズ対応情報を用いて、合計ひび幅から実際のひび幅を算出する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、画像上の任意に選択された位置におけるひび幅を従来に比して正確に計測することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係るひび幅計測装置の構成の一例を示すブロック図
【
図2】輝度-ピクセル関係情報の概要の一例を示す図
【
図3】実施の形態1に係るひび幅計測方法の手順の一例を示すフローチャート
【
図4】実施の形態1に係るひび幅計測方法の手順の一例を模式的に示す図
【
図5】実施の形態1に係るひび幅計測装置を実現するコンピュータシステムの構成の一例を示すブロック図
【
図6】実施の形態2に係るひび幅計測装置の構成の一例を模式的に示す図
【
図7】モデル生成部が使用するニューラルネットワークの一例を模式的に示す図
【
図8】実施の形態2に係るひび幅計測装置の構成の他の例を模式的に示す図
【
図9】実施の形態2に係るひび幅計測装置におけるひび分類学習済モデル生成方法の手順の一例を示すフローチャート
【
図10】実施の形態2に係るひび幅計測方法の手順の一例を示すフローチャート
【
図11】実施の形態2に係るひび幅計測方法の手順の一例を示すフローチャート
【
図12】実施の形態2に係るひび幅計測方法の手順の一例を模式的に示す図
【
図13】実施の形態3に係るひび幅計測装置の構成の一例を模式的に示す図
【
図14】実施の形態3に係るひび幅計測方法の手順の一例を示すフローチャート
【
図15】実施の形態4に係るひび幅計測装置の構成の一例を模式的に示す図
【
図17】実施の形態5に係るひび幅計測装置の構成の一例を模式的に示す図
【
図18】実施の形態5に係るひび幅計測装置における輝度-ピクセル関係学習済モデル生成方法の手順の一例を示すフローチャート
【
図19】実施の形態6に係るひび幅計測方法の手順の一例を示すフローチャート
【
図20】実施の形態7に係るひび幅計測装置の構成の一例を模式的に示す図
【
図21】実施の形態7に係るひび幅計測装置におけるひび幅学習済モデル生成方法の手順の一例を示すフローチャート
【
図22】実施の形態7に係るひび幅計測方法の手順の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の実施の形態に係るひび幅計測装置、ひび幅計測方法およびひび幅計測プログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るひび幅計測装置の構成の一例を示すブロック図である。ひび幅計測装置1は、ひびを有する構造物の画像データであるひび画像データから構造物における実際のひび幅を計測する装置である。ひび幅計測装置1は、ひび画像記憶部11と、画像表示部12と、計測箇所選択部13と、画像解像度情報記憶部14と、輝度-ピクセル関係情報記憶部15と、ひび幅計測部16と、計測結果表示部17と、を備える。
【0011】
ひび画像記憶部11は、ひびの計測対象となる構造物の画像データであるひび画像データを記憶する。作業者によって撮影された構造物のひび画像データがひび画像記憶部11に記憶される。構造物の一例は、トンネルの内面である。ひび画像データは、複数の画素によって構成されるデータである。ここでは、ひび画像データは、モノクロの画像データであるものとする。
【0012】
画像表示部12は、ひび画像記憶部11に記憶されているひび画像データを表示する。表示するひび画像データは、一例では、ひび幅計測装置1のユーザによって選択されたひび画像データである。
【0013】
計測箇所選択部13は、画像表示部12に表示されたひび画像データのうち、ユーザに対してひび幅を計測したい位置を選択する機能を提供し、ユーザによってひび幅を計測したい位置が選択されると、ひび画像データにおける選択位置の情報を取得する。ひび画像データは、通常矩形状であるので、ひび画像データの定められた点を原点とし、ひび画像データの外形を構成する1つの辺に平行で原点を通る軸をX軸とし、X軸と平行な辺に垂直な他方の辺に平行で原点を通る軸をY軸とした座標系を用いて、選択位置を表すことができる。一例では、ユーザは、選択位置の間にひびが含まれるようにひび画像データ上の2点を選択する。
【0014】
画像解像度情報記憶部14は、構造物の撮影時に決まるひび画像データにおける1画素あたりの構造物の実際の大きさである画像解像度情報を記憶する。具体的には、画像解像度情報は、実際の構造物の長さと、ひび画像データにおける長さと、の関係から、ひび画像データの1画素の長さと、実際の構造物の長さと、の対応関係を算出した情報である。ひび画像データの1画素の長さは、正方形状の1画素の各辺の長さとすることができる。画像解像度情報は、サイズ対応情報に対応する。
【0015】
輝度-ピクセル関係情報記憶部15は、ひび画像データのひびの位置に含まれる1画素が示すひび幅を輝度値に基づいて算出する際に使用する情報である輝度-ピクセル関係情報を記憶する。
図2は、輝度-ピクセル関係情報の概要の一例を示す図である。
図2では、壁面300にひび310が存在し、ひび310の一部に画素p1-p9を幅方向に配列している。実際の構造物におけるひび310は連続的に存在しているが、ひび画像データの画素は離散信号である。このため、ひび310と判定された箇所のひび幅を詳細に計算するために、実施の形態1ではサブピクセルの考えを用いる。このときに使用するのが、1画素の中におけるひび310の割合を示す情報である輝度-ピクセル関係情報151である。具体的には、ひび画像データから、1画素のすべてがひび310であるとすることができる輝度値である第1輝度値を求める。また、ひび画像データから1画素のすべてがひびに相当しないとすることができる輝度値である第2輝度値を求める。ひび画像データがグレースケール画像である場合、すなわち輝度値が256階調で表される場合には、輝度値が0に近づくほど黒くなり、輝度値が255に近づくほど白くなる。ひび310が周囲に比して黒く見えるひび画像データの場合には、第1輝度値以下の画素のひび幅は、ひび幅1画素であると定義する。つまり、1画素のすべてがひび310であるとする。また、第2輝度値以上の画素のひび幅は、ひび幅0画素であると定義する。つまり、1画素のすべてがひび310でないとする。そして、輝度値から1つの画素のひび幅、すなわち1画素あたりひび幅が、ひび幅0画素とひび幅1画素との間のどの値であるのかの関係を示す情報が輝度-ピクセル関係情報151である。一例では、第1輝度値と第2輝度値との間において、1画素あたりひび幅と輝度値との間の関係を示す関数が輝度-ピクセル関係情報151である。
【0016】
輝度-ピクセル関係情報151の算出は、ひび310とひび以外の部分とがセグメンテーションされたひび画像データを用いて行われる。一例では、セグメンテーションの結果、確実にひび310であるとされた位置における複数の画素を選択し、選択した複数の画素の輝度値の平均値を第1輝度値とすることができる。また、ひび310に相当しないとされた位置における複数の画素を選択し、選択した複数の画素の輝度値の平均値を第2輝度値とすることができる。
【0017】
輝度-ピクセル関係情報151は、撮影環境が同じひび画像データであれば同じ輝度-ピクセル関係情報151を用いることができる。撮影環境は、対象物、日付などである。一例では、ひび画像データの撮影環境が同じ日付の同じトンネルであれば、同じ輝度-ピクセル関係情報151を用いることができる。しかし、ひび画像データの撮影環境が異なる日付で異なるトンネルであれば、トンネル内の明るさが異なってくるため、同じ輝度-ピクセル関係情報151を用いることは望ましくない。輝度-ピクセル関係情報は、画素ひび幅関係情報に対応する。
【0018】
図1に戻り、ひび幅計測部16は、ひび画像のうち計測箇所選択部13で選択された2点間の領域のうちひびの位置を特定する。ひびの位置の特定は、一例では選択された2点間の領域を2値化処理することによって行うことができる。ひび幅計測部16は、ひびの位置に存在するそれぞれの画素について、輝度-ピクセル関係情報を用いて輝度値から1画素あたりひび幅を算出する。このとき、それぞれの画素について、ひび幅0画素よりも大きくひび幅1画素以下の1画素あたりひび幅が算出されることになる。ひび幅計測部16は、選択された2点間を結ぶ線分がひびの位置を通る画素についての1画素あたりひび幅を合計した合計ひび幅を算出する。そして、ひび幅計測部16は、画像解像度情報を用いて画像上での合計ひび幅をトンネルでのひび幅に変換する。
【0019】
図2の例では、画素p1から画素p9までが示されており、画素p1-p9のハッチングの密度で輝度値が示されている。ひび幅計測部16は、2値化処理によって、画素p2から画素p7までがひび310の位置であると特定する。ひび幅計測部16は、画素p2から画素p7までの各画素の輝度値から、輝度-ピクセル関係情報151を用いて1画素の幅あたりのひび310の幅の割合を示す1画素あたりひび幅を算出する。この結果、画素p2,p3,p4,p5,p6,p7の1画素あたりひび幅はそれぞれ0.1,0.2,1.0,1.0,0.5,0.2であったものとする。ひび幅計測部16は、算出した画素p2から画素p7までの各画素の1画素あたりひび幅を合計した合計ひび幅を算出する。すなわち、合計ひび幅=0.1+0.2+1.0+1.0+0.5+0.2=3.0画素となる。そして、画像解像度情報を用いて合計ひび幅を実際のひび幅に換算することで、トンネルでの実際のひび幅が算出される。
【0020】
サブピクセルの考え方を適用しない場合には、ユーザによって選択された2点間のうちひび310と判定された領域にある画素は、ひび幅が1画素であると計算する。つまり、
図2の例では、ひび310と判定された領域にあるすべての画素p2-p7の長さ、すなわち6個分の画素の長さである6画素が合計ひび幅とされる。一方、実施の形態1では、ひび310と判定された領域にある画素のそれぞれについて輝度-ピクセル関係情報151を用いて輝度値から1画素あたりひび幅を算出し、算出した1画素あたりひび幅を合計したものが合計ひび幅とされる。これによって、より正確なひび幅の算出が可能となる。なお、ひび画像の輝度値は、ひび画像データの明度を用いることができる。
【0021】
図1に戻り、計測結果表示部17は、ひび幅計測部16によって算出された構造物であるトンネルでの実際のひび幅を表示する。一例では、計測結果表示部17は、ひび幅をひび画像データに重ねて表示する。このとき、ひび幅は、ユーザが選択した2点間を結ぶ線分の近くに表示することが望ましい。
【0022】
図1において、計測箇所選択部13、画像表示部12および計測結果表示部17で行われる処理は、ひび幅計測装置1の操作画面を介して行われる処理であり、表示部にひび画像データ、計測結果等を表示し、表示部に表示されたデータに対して入力部で選択された情報を取得する処理である。ひび幅計測部16で行われる処理は、ひび幅計測装置1の内部で行われる内部処理である。
【0023】
次に、このような構成のひび幅計測装置1におけるひび幅計測方法について説明する。
図3は、実施の形態1に係るひび幅計測方法の手順の一例を示すフローチャートである。
図4は、実施の形態1に係るひび幅計測方法の手順の一例を模式的に示す図である。
図4では、操作画面を介して行われる処理と、内部処理と、を分けて表示している。このうち、操作画面を介して行われる処理については、操作画面に表示される内容をイメージしたものが示されている。なお、ひび画像記憶部11には、トンネルなどの構造物を撮影したひび画像データが予め記憶されているものとする。
【0024】
まず、画像表示部12は、ひび画像記憶部11からひび画像データ111を読み出して表示する(ステップS11)。読み出すひび画像データ111は、ユーザによって選択されたものであってもよいし、撮影日時などの決められた順に選択されたものであってもよい。
【0025】
ユーザは、表示されたひび画像データ111からひび幅を計測したい位置を含むように2点を選択する。つまり、ユーザは、ひび幅を計測したいひび310を挟むように2点をひび画像データ111上で選択する。ユーザによって2点が選択されると、計測箇所選択部13は、ユーザによって選択された2点のひび画像データ111上の位置を選択する(ステップS12)。
【0026】
ひび幅計測部16は、ひび画像データ111上の選択された2点を結ぶ領域からひび310の位置を特定する(ステップS13)。ひび幅計測部16は、一例では、2点を結ぶ領域の画素について2値化処理を行い、ひび310とひび以外の領域とにセグメンテーションし、ひび310の位置を特定する。次いで、ひび幅計測部16は、特定したひび310の位置の各画素の輝度値を求め(ステップS14)、各画素について輝度値から輝度-ピクセル関係情報151を用いて1画素あたりひび幅を算出する(ステップS15)。ひび幅計測部16は、特定したひび310の位置の各画素の1画素あたりひび幅の合計である合計ひび幅を算出し(ステップS16)、画像解像度情報141を用いて、合計ひび幅から実際の構造物におけるひび幅を算出する(ステップS17)。そして、計測結果表示部17は、算出したひび幅161をひび画像データ111に重ねて表示する(ステップS18)。以上で、処理が終了する。
【0027】
次に、ひび幅計測装置1のハードウェア構成について説明する。実施の形態1のひび幅計測装置1は、コンピュータシステム上で、ひび幅計測装置1における処理が記述されたコンピュータプログラムであるプログラムが実行されることにより、コンピュータシステムがひび幅計測装置1として機能する。
図5は、実施の形態1に係るひび幅計測装置を実現するコンピュータシステムの構成の一例を示すブロック図である。
図5に示されるように、このコンピュータシステムは、制御部901と、入力部902と、記憶部903と、表示部904と、通信部905と、出力部906と、を備え、これらはシステムバス907を介して接続されている。
【0028】
図5において、制御部901は、一例では、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、実施の形態1のひび幅計測装置1における処理が記述されたプログラムを実行する。入力部902は、一例ではキーボード、マウスなどで構成され、コンピュータシステムのユーザが、各種情報の入力を行うために使用する。記憶部903は、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)などの各種メモリおよびハードディスクなどのストレージデバイスを含み、上記制御部901が実行すべきプログラム、処理の過程で得られた必要なデータなどを記憶する。また、記憶部903は、プログラムの一時的な記憶領域としても使用される。表示部904は、ディスプレイ、液晶表示パネルなどで構成され、コンピュータシステムのユーザに対して各種画面を表示する。一例では、入力部902と表示部904とが一体的に形成されたタッチパネルで入力部902および表示部904が構成されていてもよい。通信部905は、通信処理を実施する受信機および送信機である。出力部906は、プリンタ、スピーカなどである。なお、
図5は、一例であり、コンピュータシステムの構成は
図5の例に限定されない。
【0029】
ここで、プログラムが実行可能な状態になるまでのコンピュータシステムの動作例について説明する。上述した構成をとるコンピュータシステムには、たとえば、図示しないCD(Compact Disc)-ROMドライブまたはDVD(Digital Versatile Disc)-ROMドライブにセットされたCD-ROMまたはDVD-ROMから、プログラムが記憶部903にインストールされる。そして、プログラムの実行時に、記憶部903から読み出されたプログラムが記憶部903の主記憶領域に格納される。この状態で、制御部901は、記憶部903に格納されたプログラムに従って、実施の形態1のひび幅計測装置1としての処理を実行する。
【0030】
なお、上記の説明においては、CD-ROMまたはDVD-ROMを記録媒体として、ひび幅計測装置1における処理を記述したプログラムを提供しているが、これに限らず、コンピュータシステムの構成、提供するプログラムの容量などに応じて、たとえば、通信部905を経由してインターネットなどの伝送媒体により提供されたプログラムを用いることとしてもよい。
【0031】
図1に示した計測箇所選択部13およびひび幅計測部16は、
図5に示した記憶部903に記憶されたプログラムが
図5に示した制御部901により実行されることによって実現される。計測箇所選択部13およびひび幅計測部16の実現には、
図5に示した記憶部903も用いられる。また、計測箇所選択部13の実現には、
図5に示した入力部902も用いられる。画像表示部12および計測結果表示部17は、
図5に示した記憶部903に記憶されたプログラムが
図5に示した制御部901により実行され、
図5に示した表示部904に表示されることによって実現される。ひび画像記憶部11、画像解像度情報記憶部14および輝度-ピクセル関係情報記憶部15は、
図5に示した記憶部903によって実現される。
【0032】
実施の形態1のひび幅計測装置1は、ひび画像データの1画素が表す輝度値の値と1画素あたりのひび幅との関係を示す輝度-ピクセル関係情報を用いてひび画像データで選択された2点間を結ぶ線分と交わるひびに相当する領域のひび画像データ上でのひび幅を算出し、ひび画像データのサイズと構造物のサイズとの対応関係を示す画像解像度情報を用いて、ひび画像データ上でのひび幅から実際のひび幅を算出するひび幅計測部16を備える。これによって、ひび画像データ上でユーザが任意に選択した2つの位置の間に挟まれるひびのひび幅を、従来に比して正確に計測することができる。
【0033】
実施の形態2.
特許文献1に記載の技術では、閾値による2値化を行ってひびの位置を特定しているが、このような手法では照明等の画像の撮影条件が変わると検出精度も変化することが多い。このため、ひび領域の検出精度が安定していないという問題もあった。
【0034】
また、実施の形態1では、ひび画像データからユーザが2点を選択していたが、選択した2点間にひびが存在しない場合もあり得る。このため、ユーザがひびを挟んだ2点を選択できることが望ましい。実施の形態2では、ひび幅を算出するにあたり、ひび領域の検出精度を安定させ、ユーザがひびを挟んだ2点を選択しやすくすることができるひび幅計測装置について説明する。
【0035】
図6は、実施の形態2に係るひび幅計測装置の構成の一例を模式的に示す図である。なお、
図1と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略し、
図1と異なる部分について説明を行う。実施の形態2に係るひび幅計測装置1Aは、実施の形態1の構成に加えて、学習装置20と、ひび分類学習済モデル記憶部21と、ひび分類部22と、をさらに備える。
【0036】
学習装置20は、ひび画像データのひびを分類する学習済モデルであるひび分類学習済モデルを生成する装置である。学習装置20は、データ取得部201と、モデル生成部202と、を備える。
【0037】
データ取得部201は、ひびを含む画像データであるひび画像データと、ひび位置を示す正解データと、を学習用データとして取得する。ひび画像データとひび位置を示す正解データとは、対応付けられている。また、ひび画像データには、ひびのほかに、トンネル目地などのひびではない物も含まれている。ひび画像データには、過去にひび幅の計測で使用した画像データを用いることができる。
【0038】
モデル生成部202は、データ取得部201から出力されるひび画像データおよびひび位置を示す正解データの組合せに基づいて作成される学習用データに基づいて、ひび分類画像データであるひび分類画像データを学習する。すなわち、ひび幅計測装置1Aのひび画像データおよびひび位置を示す正解データから最適なひび分類画像データを推論するひび分類学習済モデルを生成する。ここで、学習用データは、ひび画像データおよびひび位置を示す正解データを互いに関連付けたデータである。ひび分類学習済モデルは、第1学習済モデルに対応する。
【0039】
なお、学習装置20は、ひび幅計測装置1Aのひび分類画像データを学習するために使用されるが、一例では、ネットワークを介してひび幅計測装置1Aに接続され、このひび幅計測装置1Aとは別個の装置であってもよい。あるいは、
図6に示されるように、学習装置20は、ひび幅計測装置1Aに内蔵されていてもよい。さらに、学習装置20は、クラウドサーバ上に存在していてもよい。
【0040】
モデル生成部202が用いる学習アルゴリズムは、いわゆる教師あり学習、教師なし学習、強化学習等の公知のアルゴリズムを用いることができる。一例として、ニューラルネットワークを適用した場合について説明する。
【0041】
モデル生成部202は、一例では、ニューラルネットワークモデルに従って、いわゆる教師あり学習により、ひび分類画像データを学習する。ここで、教師あり学習とは、入力とラベルである結果とのデータの組を学習装置20に与えることで、これらの学習用データにある特徴を学習し、入力から結果を推論する手法をいう。
【0042】
ニューラルネットワークは、複数のニューロンからなる入力層、複数のニューロンからなる隠れ層である中間層、および複数のニューロンからなる出力層で構成される。中間層は、1層でもよいし、2層以上でもよい。
【0043】
図7は、モデル生成部が使用するニューラルネットワークの一例を模式的に示す図である。
図7に例示されるような3層のニューラルネットワークであれば、複数の入力が入力層X1から入力層X3に入力されると、この値にw11からw16で示される重みを掛けて中間層Y1から中間層Y2に入力される。重みw11からw16は、個々に区別しない場合には、重みw1と称される。また、中間層Y1から中間層Y2の結果にさらにw21からw26で示される重みを掛けて出力層Z1から出力層Z3より出力される。重みw21からw26は、個々に区別しない場合には、重みw2と称される。出力層Z1から出力層Z3の出力結果は、重みw1,w2の値によって変わる。
【0044】
実施の形態2において、ニューラルネットワークは、データ取得部201によって取得されるひび画像データとひび位置を示す正解データとの組合せに基づいて作成される学習用データに従って、いわゆる教師あり学習により、ひび分類画像データを学習する。
【0045】
すなわち、ニューラルネットワークは、入力層にひび画像データを入力して出力層から出力された結果が、ひび位置を示す正解データに近づくように重みw1,w2を調整することで学習する。
【0046】
モデル生成部202は、以上のような学習を実行することでひび分類学習済モデルを生成し、出力する。
【0047】
図6に戻り、ひび分類学習済モデル記憶部21は、モデル生成部202から出力されたひび分類学習済モデルを記憶する。
【0048】
ひび分類部22は、ひび画像データからひびの位置を推論するためのひび分類学習済モデルを用いて、ひび画像データからひび分類画像データを推論し、出力する。すなわち、このひび分類学習済モデルにひび画像記憶部11から取得したひび画像データを入力することで、ひび画像データから推論されるひび分類画像データを出力することができる。ひび分類部22でひびが分類されたひび分類画像データは、セマンティックセグメンテーションされたひび画像データとも称される。つまり、ひび分類画像データは、セマンティックセグメンテーションされた画像データであり、ひびとひび以外の部分とが画素単位で分類された画像データである。
【0049】
なお、本実施の形態では、ひび幅計測装置1Aのモデル生成部202で学習したひび分類学習済モデルを用いてひび分類画像データを出力するものとして説明したが、他のひび幅計測装置1A等の外部からひび分類学習済モデルを取得し、このひび分類学習済モデルに基づいてひび分類画像データを出力するようにしてもよい。
【0050】
また、ひび分類部22は、ひび幅計測装置1Aのひび画像データからひび分類画像データを取得するために使用される。
図6の例では、ひび分類部22は、ひび幅計測装置1Aに内蔵されているが、一例では、ネットワークを介してひび幅計測装置1Aに接続され、このひび幅計測装置1Aとは別個の装置であってもよい。さらに、ひび分類部22は、クラウドサーバ上に存在していてもよい。
【0051】
画像表示部12は、ひび画像記憶部11のひび画像データだけではなく、ひび分類部22によって出力されるひび分類画像データも表示する。ユーザは、ひび画像データまたはひび分類画像データで計測箇所選択部13を用いて2点を選択する。ユーザは、ひび分類画像データを参照することで、ひびの位置を認識することが容易となる。
【0052】
計測箇所選択部13は、ひび画像データまたはひび分類画像データでユーザによって選択された2点の位置を特定する。
【0053】
ひび幅計測部16は、ひびの位置の特定が実施の形態1とは異なる。つまり、実施の形態2では、ひび幅計測部16は、ひび分類画像データを用いてユーザによって選択された2点を結ぶ線分の間のひびの境界の位置を特定する。
【0054】
図6において、計測箇所選択部13、画像表示部12および計測結果表示部17で行われる処理は、ひび幅計測装置1Aの操作画面を介して行われる処理であり、ひび幅計測部16およびひび分類部22で行われる処理は、ひび幅計測装置1Aの内部で行われる内部処理である。また、学習装置20で行われる処理は、事前に行われる事前処理である。
【0055】
図8は、実施の形態2に係るひび幅計測装置の構成の他の例を模式的に示す図である。なお、
図1および
図6と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略し、異なる部分について説明する。
図8に示されるひび幅計測装置1Bは、構成は実施の形態1のひび幅計測装置1と同じであり、画像表示部12、計測箇所選択部13およびひび幅計測部16の機能は、
図6で説明したものと同様である。また、ひび幅計測装置1Bの外部に、学習装置20と推論装置25とが設けられる。学習装置20は、上記で説明した構成と同じである。
【0056】
推論装置25は、データ取得部251と、ひび分類学習済モデル記憶部21と、ひび分類部22と、を有する。データ取得部251はひび画像データを取得する。一例では、データ取得部251は、ひび画像記憶部11からひび画像データを取得する。ひび分類学習済モデル記憶部21およびひび分類部22の機能は、
図6で説明したものと同様である。
【0057】
このように、推論装置25がひび幅計測装置1Bの外部に設けられる場合には、ひび分類画像データが外部からひび幅計測装置1Bに入力されることになる。このため、ひび幅計測装置1Bの内部にはひび分類部22およびひび分類学習済モデル記憶部21は不要となる。なお、
図8では、推論装置25がひび分類学習済モデルを用いてひび画像データからひび分類画像データを生成し、ひび分類画像データをひび幅計測装置1Bに入力する例を示しているが、他の方法によって作成されたひび分類画像データをひび幅計測装置1Bに入力してもよい。一例では、ユーザがひび画像データをひびとひび以外の部分とに画素単位で分類したひび分類画像データをひび幅計測装置1Bに入力してもよい。
【0058】
次に、このような構成のひび幅計測装置1A,1Bの処理について説明する。以下では、学習装置20での学習処理について説明した後、ひび幅計測方法について説明する。
【0059】
図9は、実施の形態2に係るひび幅計測装置におけるひび分類学習済モデル生成方法の手順の一例を示すフローチャートである。データ取得部201は、ひび画像データと、ひび位置を示す正解データと、を取得する(ステップS31)。なお、ひび画像データおよびひび位置を示す正解データを同時に取得するものとしたが、ひび画像データおよびひび位置を示す正解データを関連付けて入力できればよく、ひび画像データおよびひび位置を示す正解データをそれぞれ別のタイミングで取得してもよい。
【0060】
次いで、モデル生成部202は、データ取得部201によって取得されるひび画像データおよびひび位置を示す正解データの組み合わせに基づいて作成される学習用データにしたがって、いわゆる教師あり学習によりひび分類画像データを学習し、ひび分類学習済モデルを生成する(ステップS32)。
【0061】
その後、ひび分類学習済モデル記憶部21は、モデル生成部202が生成したひび分類学習済モデルを記憶する(ステップS33)。以上で、ひび分類学習済モデル生成方法が終了する。
【0062】
図10および
図11は、実施の形態2に係るひび幅計測方法の手順の一例を示すフローチャートである。
図10および
図11は、
図6に示されるひび幅計測装置1Aでのひび幅計測方法の処理手順を示している。
図12は、実施の形態2に係るひび幅計測方法の手順の一例を模式的に示す図である。
図12では、操作画面を介して行われる処理と、内部処理と、を分けて表示している。このうち、操作画面を介して行われる処理については、操作画面に表示される内容をイメージしたものが示されている。なお、ひび画像記憶部11には、トンネルなどの構造物を撮影した画像であるひび画像データが予め記憶されているものとする。
【0063】
まず、画像表示部12は、ひび画像記憶部11からひび画像データ111を読み出して表示する(ステップS51)。取得するひび画像データ111は、ユーザによって選択されたものであってもよいし、撮影日時などの決められた順に選択されたものであってもよい。
【0064】
ひび分類部22は、画像表示部12によって表示されたものと同じひび画像データ111をひび画像記憶部11から取得する(ステップS52)。次いで、ひび分類部22は、ひび分類学習済モデル記憶部21に記憶されているひび分類学習済モデルに取得したひび画像データ111を入力することで出力されるひび分類画像データ221を取得する(ステップS53)。ひび分類画像データ221は、壁面300とひび310とがセマンティックセグメンテーションされた画像データである。画像表示部12は、ひび分類画像データ221をひび画像データ111とともに表示する(ステップS54)。
【0065】
ユーザは、表示されたひび画像データ111またはひび分類画像データ221からひび幅を計測したい位置を含むように2点を選択する。つまり、ユーザは、ひび幅を計測したいひび310を挟むように2点をひび画像データ上またはひび分類画像データ上で選択する。なお、ここではユーザは、ひび310の延在方向に対して2点を結ぶ線分が垂直となるように、2点を選択するものとする。ユーザによって2点が選択されると、計測箇所選択部13は、ユーザによって選択された2点のひび画像データ上またはひび分類画像データ上の位置を取得する(ステップS55)。以下では、2点を結ぶ線分は、幅算出基準線と称される。
【0066】
ひび幅計測部16は、ひび分類画像データ上で、幅算出基準線が通る領域中のひび310と壁面300との境界を求める(ステップS56)。ひび幅計測部16は、ひび310と壁面300との境界を求めると、幅算出基準線が通る領域中の境界と境界との間の画素の位置を取得する(ステップS57)。ひび幅計測部16は、取得した画素の位置に対応するひび画像データ111の位置での輝度値を求める(ステップS58)。その後、ひび幅計測部16は、各画素について輝度値から輝度-ピクセル関係情報151を用いて1画素あたりひび幅を算出する(ステップS59)。ひび幅計測部16は、取得した画素の1画素あたりひび幅の合計である合計ひび幅を算出し(ステップS60)、画像解像度情報141を用いて、合計ひび幅から実際の構造物におけるひび幅を算出する(ステップS61)。そして、計測結果表示部17は、算出したひび幅161をひび画像データ111に重ねて表示する(ステップS62)。以上で、処理が終了する。
【0067】
なお、
図10では、ひび分類部22は、表示されたひび画像データ111をセマンティックセグメンテーションしたひび分類画像データ221を生成し、画像表示部12が、ひび分類画像データ221をひび画像データ111とともに表示した後に、ユーザが2点を選択するようにしている。しかし、ステップS51でひび画像データ111を表示した後に、ユーザがひび画像データ111上で2点を選択してもよい。この場合には、ひび分類部22は、ユーザが選択した2点を対角線とする矩形の領域についてセマンティックセグメンテーションを実行した部分的なひび分類画像データを生成する。そして、この部分的なひび分類画像データを用いて、ステップS56以降の処理が行われる。
【0068】
また、
図8に示されるひび幅計測装置1Bの場合には、
図10の処理は、以下に示す点が異なる。ひび幅計測装置1Bの場合には、ステップS52,S53の処理が省略される。また、ステップS54では、画像表示部12は、外部から入力されたひび分類画像データ221をひび画像データ111とともに表示する。
【0069】
実施の形態1では、ひびと壁面との分割は、ユーザが選択した2点間を結ぶ線分が通る領域を対象として2値化処理によって行われていたが、このような手法では照明等の画像の撮影条件が変わると検出精度も変化することが多く、ひび領域の検出精度が安定していない。しかし、実施の形態2のひび幅計測装置1A,1Bでは、ひび幅計測部16は、ひび幅を算出する基準となる幅算出基準線をユーザが選択した2点間を結ぶ線分とし、ひび画像データをひびとひび以外のものとを画素単位でセグメンテーションした画像データであるひび分類画像データを用いて、幅算出基準線と交わるひびに相当する領域を決定するようにした。これによって、対象箇所だけではなく周辺画素をも考慮した判定を行うことができるとともに、従来の画像処理では難しい目地等と区別した分割ができる。この結果、ひび領域の検出精度が従来に比して向上するという効果を実施の形態1の効果に加えて有する。
【0070】
実施の形態3.
実施の形態1,2では、ユーザが選択した2点がひびの延在方向に垂直であることを前提としていた。しかし、ユーザがひびの延在方向に垂直な方向の2点を選択することは困難である場合が多い。そこで、ユーザが選択した2点が、ひびの延在方向に垂直でない場合に、ひびの延在方向に垂直となるように、補正処理を行うひび幅計測装置について説明する。
【0071】
図13は、実施の形態3に係るひび幅計測装置の構成の一例を模式的に示す図である。なお、
図1および
図6と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略し、
図1および
図6と異なる部分について説明する。
【0072】
図13に示されるひび幅計測装置1Cは、
図6のひび幅計測装置1Aにおいて、ひび方向算出部31をさらに備える。ひび方向算出部31は、ひび分類画像データを用いてユーザが選択した2点を結ぶ線分と交わるひびの延在方向であるひび方向を算出する。具体的には、ひび方向算出部31は、ひび分類画像データの定められた点を原点とし、ひび分類画像データの外形を構成する1つの辺に平行で原点を通る軸をX軸とし、X軸と平行な辺に垂直な他方の辺に平行で原点を通る軸をY軸とした座標系を用いて、ユーザが選択した2点を結ぶ線分と交わるひび方向を算出する。一例では、ひび方向算出部31は、ひび分類部22で分類されたひびのうち、選択した2点を結ぶ線分を通るひびを選択し、ひびを構成するすべての画素からの距離が最小となる近似直線を算出する。このとき、ひびを構成するすべての画素の座標を用いて、最小二乗法によって近似直線を算出する。ひび方向算出部31は、算出した近似直線の傾きをひび方向とする。
【0073】
また、実施の形態3に係るひび幅計測装置1Cでは、ひび幅計測部16の機能が異なる。ひび幅計測部16は、選択した2点を通る線分がひび方向と直交するかを判定し、線分がひび方向と直交していない場合には、幅算出基準線を、線分と交わりひび方向に直交する直線として、ひび幅を算出する機能をさらに有する。
【0074】
具体的なひび幅計測部16の機能について説明する。ひび幅計測部16は、ひび方向算出部31が算出した近似直線と、選択した2点を通る線分と、が直交しているかを判定する。近似直線の傾きと選択した2点を通る線分の傾きとの積が-1である場合には、両者は直交し、両者の傾きの積が-1でない場合には両者は直交していないと判定することができる。両者が直交している場合には、ひび幅計測部16は、選択した2点を結ぶ線分を幅算出基準線として、実施の形態2で算出した方法で得られたひび幅を算出する。一方、両者が直交していない場合には、ひび幅計測部16は、選択した2点を結ぶ線分と交わり、近似直線に直交する1つの直線を算出する。選択した2点を結ぶ線分と交わり、近似直線に直交する1つの直線としては、選択した2点を通る線分と近似直線との交点を通る直線としてもよいし、選択した2点のうちいずれかを通る直線としてもよい。ひび幅計測部16は、算出した直線を幅算出基準線として、実施の形態2で説明した方法によってひび幅を算出する。
【0075】
図14は、実施の形態3に係るひび幅計測方法の手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図10と同一の処理には同一のステップ番号を付して、その説明を省略する。
【0076】
ステップS55の後に、ひび方向算出部31は、ひび分類画像データ上でユーザによって選択された2点を結ぶ線分と交わるひびの延在方向を示す近似直線を算出する(ステップS71)。その後、ひび幅計測部16は、選択された2点を結ぶ線分が近似直線と直交しているかを判定する(ステップS72)。直交している場合(ステップS72でYesの場合)には、
図11のステップS56に処理が移る。
【0077】
直交していない場合(ステップS72でNoの場合)には、ひび幅計測部16は、選択した2点を結ぶ線分と交わり、近似直線に直交する直線を算出する(ステップS73)。一例では、ひび幅計測部16は、選択した2点を結ぶ線分と近似直線との交点を通る近似直線に直交する直線を算出する。次いで、ひび幅計測部16は、算出した直線を幅算出基準線として(ステップS74)、
図11のステップS56に処理が移る。
【0078】
なお、実施の形態3で説明したひびの延在方向に垂直なひび幅を求める処理と、実施の形態2で説明したユーザによって選択された2点を結ぶ線分がひびと交わる長さをひび幅として求める処理と、をユーザによって選択可能としてもよい。
【0079】
実施の形態3のひび幅計測装置1Cは、ひびの方向を算出するひび方向算出部31をさらに備え、ひび幅計測部16は、ユーザが選択した2点を結ぶ線分がひびの方向と直交しない場合に、ひびの方向に直交する直線を幅算出基準線として算出し、幅算出基準線が通る領域中のひびと壁面との境界を求めて、境界と境界との間のひび幅を算出する。これによって、ユーザが選択した2点を結ぶ線分に近い位置でのより正確なひび幅を算出することが可能となる。
【0080】
実施の形態4.
実施の形態1から3では、画像解像度情報および輝度-ピクセル関係情報は、ひび画像データの撮影環境ごとにユーザによって求める必要があった。しかし、同じ構造物のひびを頻繁に検査する場合には、同じ撮影環境でひび画像データが撮影されることが多い。また、異なる場所の対象物でも、撮影環境が類似することもある。このような場合には、画像解像度情報または輝度-ピクセル関係情報を予め設定されたものの中から選択可能としてもよい。
【0081】
図15は、実施の形態4に係るひび幅計測装置の構成の一例を模式的に示す図である。なお、
図1および
図6と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略し、
図1および
図6と異なる部分について説明を行う。実施の形態4に係るひび幅計測装置1Dは、実施の形態2の構成に加えて、プリセット条件記憶部41と、条件設定表示部42と、をさらに備える。
【0082】
プリセット条件記憶部41は、定められた画像解像度情報と、定められた輝度-ピクセル関係情報と、を含むプリセット条件を記憶する。定められた画像解像度情報および定められた輝度-ピクセル関係情報は、よく使用される撮影環境での画像解像度情報および輝度-ピクセル関係情報とすることができる。
【0083】
なお、プリセット条件記憶部41に記憶される定められた画像解像度情報および定められた輝度-ピクセル関係情報は、1つに限られることはなく、複数であってもよい。一例では、頻繁に検査を行う構造物の撮影環境に対応する画像解像度情報および輝度-ピクセル関係情報をプリセット条件記憶部41に記憶しておくことができる。
【0084】
条件設定表示部42は、画像解像度情報および輝度-ピクセル関係情報を設定する設定画面を表示し、ユーザによる設定を受け付ける。実施の形態4では、条件設定表示部42は、プリセット条件記憶部41に記憶されている定められた画像解像度情報および定められた輝度-ピクセル関係情報のそれぞれを、画像解像度情報の初期値および輝度-ピクセル関係情報の初期値に設定した設定画面を表示する。プリセット条件記憶部41に複数の画像解像度情報が記憶されている場合には、予め定められた画像解像度情報を初期値とすることができる。同様に、プリセット条件記憶部41に複数の輝度-ピクセル関係情報が記憶されている場合には、予め定められた輝度-ピクセル関係情報を初期値とすることができる。条件設定表示部42によって表示される設定画面では、画像解像度情報および輝度-ピクセル関係情報をユーザが任意に変更することもできる。また、条件設定表示部42は、設定画面でユーザによって決定された画像解像度情報および輝度-ピクセル関係情報をそれぞれ画像解像度情報記憶部14および輝度-ピクセル関係情報記憶部15に設定する。これによって、ひび幅計測時において、ひび幅計測部16は、画像解像度情報記憶部14に記憶された画像解像度情報および輝度-ピクセル関係情報記憶部15に記憶された輝度-ピクセル関係情報を参照して、ひび幅の計測処理を行う。
【0085】
図16は、設定画面とプリセット条件の一例を示す図である。設定画面420は、条件設定表示領域421と、設定ボタン422と、キャンセルボタン423と、を有する。条件設定表示領域421には、プリセット条件記憶部41に記憶されているプリセット条件410中の定められた画像解像度情報411および定められた輝度-ピクセル関係情報412が初期値として設定されている。ここでは、プリセット条件410の定められた画像解像度情報411には、プリセット名が「AA」で画像解像度が「0.5」mm/picのデータのみが設定されているものとする。定められた画像解像度情報411には1つのデータしか設定されていないので、このデータが設定画面420にプリセットされる初期値となる。また、プリセット条件410の定められた輝度-ピクセル関係情報412には2つのデータが設定されている。この場合には、初期値として設定されているプリセット名が「XXトンネル」であるデータが設定画面420にプリセットされる初期値となる。ここでは、輝度-ピクセル関係情報412は、輝度値と1画素あたりひび幅を示すpixとの組を複数有する情報となっている。また、他のプリセットされたデータを選択したい場合には、ボタン421aを押すことで、定められた輝度-ピクセル関係情報412がリスト表示され、リスト表示された中からデータを選択することができる。
【0086】
なお、条件設定表示領域421における画像解像度情報および輝度-ピクセル関係情報は、ユーザによって適宜編集可能である。一例では、画像解像度情報については、条件設定表示部42を介して任意の数値を入力することができる。また、輝度-ピクセル関係情報については、図示しないが公知の方法で輝度値と1画素あたりひび幅との組を複数登録したり、輝度値と1画素あたりひび幅との組を複数登録した輝度-ピクセル関係情報のデータをひび幅計測装置1Dに読み込んだりすることができる。
【0087】
設定ボタン422は、条件設定表示領域421に表示されている画像解像度情報および輝度-ピクセル関係情報をひび幅計測装置1Dに適用するボタンである。設定ボタン422が押されると、条件設定表示領域421に設定された画像解像度情報は、画像解像度情報記憶部14に設定され、条件設定表示領域421に設定された輝度-ピクセル関係情報は、輝度-ピクセル関係情報記憶部15に設定される。キャンセルボタン423は、設定画面での設定を中止するボタンである。
【0088】
図16の設定画面420において、ユーザは、プリセット条件410の中に、ひび幅の計測対象となるひび画像データの撮影条件と一致するものまたは類似するものがある場合には、一致するまたは類似する条件の画像解像度情報または輝度-ピクセル関係情報を選択する。このような条件の選択によって、画像解像度情報または輝度-ピクセル関係情報をユーザが求めたり、入力したりする手間を省くことが可能となる。
【0089】
なお、実施の形態1または実施の形態3の構成に、プリセット条件記憶部41と条件設定表示部42とを設ける構成としてもよい。また、上記した説明では、プリセット条件記憶部41には、定められた画像解像度情報および定められた輝度-ピクセル関係情報を記憶する場合を説明したが、定められた画像解像度情報および輝度-ピクセル関係情報のうち少なくとも一方が記憶されていればよい。
【0090】
実施の形態4のひび幅計測装置1Dにおけるひび幅計測方法は、実施の形態1から3で説明したものと同様であるので、その説明を省略する。
【0091】
実施の形態4のひび幅計測装置1Dは、定められた画像解像度情報および定められた輝度-ピクセル関係情報のうち少なくとも一方を記憶するプリセット条件記憶部41と、定められた画像解像度関係情報および定められた輝度-ピクセル関係情報のうち少なくとも一方が初期値として設定された画像解像度情報および輝度-ピクセル関係情報の設定画面を表示する条件設定表示部42と、をさらに備える。ひび画像データの撮影環境が類似するものであれば、同じ画像解像度情報および同じ輝度-ピクセル関係情報を用いることが可能な場合もある。このような場合には、ひび幅の計測対象となるひび画像データを用いたひび幅の計測のために、その都度、画像解像度情報および輝度-ピクセル関係情報を作成するのではなく、過去の一致するまたは類似する画像解像度情報および輝度-ピクセル関係情報を流用することで、ひび幅の計測にかかる時間を短縮することができる。つまり、画像解像度情報および輝度-ピクセル関係情報をユーザが作成する手間を省略することができるという効果を有する。
【0092】
実施の形態5.
図17は、実施の形態5に係るひび幅計測装置の構成の一例を模式的に示す図である。なお、
図1および
図6と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略し、
図1および
図6と異なる部分について説明する。実施の形態5に係るひび幅計測装置1Eは、
図6のひび幅計測装置1Aにおいて、輝度-ピクセル関係情報記憶部15を除去し、学習装置50と、輝度-ピクセル関係学習済モデル記憶部51と、輝度-ピクセル関係算出部52と、ひび分類画像記憶部53と、をさらに備える。
【0093】
学習装置50は、ひび画像データのひび領域における各画素について輝度値から1画素あたりひび幅を算出する輝度-ピクセル関係学習済モデルを生成する装置である。学習装置50は、データ取得部501と、モデル生成部502と、を備える。輝度-ピクセル関係学習済モデルは、第2学習済モデルに対応する。
【0094】
データ取得部501は、ひび画像データと、正解データである輝度値に応じた画素とひび幅との関係情報と、を学習用データとして取得する。ひび画像データと輝度値に応じた画素とひび幅との関係情報とは、対応付けられている。輝度値に応じた画素とひび幅との関係情報は、一例では、実施の形態1から3において、ひび画像データの画素の各輝度値が、1画素の幅を基準としたときの何画素のひび幅に相当するかを示す輝度-ピクセル関係情報を事前に予備実験で求めた結果を、ひび画像データに対応付けて蓄積したものである。
【0095】
モデル生成部502は、データ取得部501から出力されるひび画像データおよび輝度値に応じた画素とひび幅との関係情報の組合せに基づいて作成される学習用データに基づいて、輝度-ピクセル関係情報を学習する。すなわち、ひび幅計測装置1Eのひび画像データおよび輝度値に応じた画素とひび幅との関係情報から最適な輝度-ピクセル関係情報を推論する学習済モデルである輝度-ピクセル関係学習済モデルを生成する。ここで、学習用データは、ひび画像データおよび輝度値に応じた画素とひび幅との関係情報を互いに関連付けたデータである。
【0096】
なお、学習装置50は、ひび幅計測装置1Eの輝度-ピクセル関係情報を学習するために使用されるが、一例では、ネットワークを介してひび幅計測装置1Eに接続され、このひび幅計測装置1Eとは別個の装置であってもよい。あるいは、
図17に示されるように学習装置50は、ひび幅計測装置1Eに内蔵されていてもよい。さらに、学習装置50は、クラウドサーバ上に存在していてもよい。
【0097】
モデル生成部502が用いる学習アルゴリズムは教師あり学習、教師なし学習、強化学習等の公知のアルゴリズムを用いることができる。一例では、
図7で説明したニューラルネットワークモデルに従って、教師あり学習によって輝度-ピクセル関係情報を学習する。つまり、
図7でニューラルネットワークは、入力層にひび画像データを入力して出力層から出力された結果が、輝度値に応じた画素とひび幅との関係情報に近づくように重みw1,w2を調整することで学習し、輝度-ピクセル関係学習済モデルを生成する。
【0098】
輝度-ピクセル関係学習済モデル記憶部51は、モデル生成部502から出力された輝度-ピクセル関係学習済モデルを記憶する。
【0099】
輝度-ピクセル関係算出部52は、ひび画像データから1画素が表す輝度値に応じた1画素あたりのひび幅を推論するための輝度-ピクセル関係学習済モデル記憶部51に記憶された輝度-ピクセル関係学習済モデルを用いて、ひび画像データから輝度-ピクセル関係情報を推論し、出力する。すなわち、この輝度-ピクセル関係学習済モデルにひび画像記憶部11から取得したひび画像データを入力することで、ひび画像データから推論される輝度-ピクセル関係情報を出力することができる。輝度-ピクセル関係情報は、ひび画像データにおいて、画素の各輝度値がどのくらいの1画素あたりひび幅に相当するかを示す情報である。輝度-ピクセル関係算出部52は、関係情報算出部に対応する。
【0100】
なお、実施の形態5では、ひび幅計測装置1Eのモデル生成部502で学習した輝度-ピクセル関係学習済モデルを用いて輝度-ピクセル関係情報を出力するものとして説明したが、他のひび幅計測装置1E等の外部から輝度-ピクセル関係学習済モデルを取得し、この輝度-ピクセル関係学習済モデルに基づいて輝度-ピクセル関係情報を出力するようにしてもよい。
【0101】
また、輝度-ピクセル関係算出部52は、ひび幅計測装置1Eのひび画像データから輝度-ピクセル関係情報を取得するために使用される。
図17の例では、輝度-ピクセル関係算出部52は、ひび幅計測装置1Eに内蔵されているが、一例では、ネットワークを介してひび幅計測装置1Eに接続され、このひび幅計測装置1Eとは別個の装置であってもよい。さらに、輝度-ピクセル関係算出部52は、クラウドサーバ上に存在していてもよい。
【0102】
ひび分類画像記憶部53は、ひび画像データをひびと壁面とにセマンティックセグメンテーションした画像データであるひび分類画像データを記憶する。ひび分類画像記憶部53は、画像表示部12に表示されたひび画像データに対応するひび分類画像データをひび幅計測部16に出力する。実施の形態5では、ひび分類画像記憶部53は、ひび幅計測装置1Eの外部でセマンティックセグメンテーションされたひび分類画像データを記憶する形態としているが、ひび幅計測装置1Eが、実施の形態2のようにひび分類部22を有し、ひび分類部22によってセマンティックセグメンテーションされたひび分類画像データがひび幅計測部16に入力される形態としてもよい。
【0103】
次に、このような構成のひび幅計測装置1Eの処理について説明する。以下では、学習装置50での学習処理について説明する。
【0104】
図18は、実施の形態5に係るひび幅計測装置における輝度-ピクセル関係学習済モデル生成方法の手順の一例を示すフローチャートである。データ取得部501は、ひび画像データと、輝度値に応じた画素とひび幅との関係情報と、を取得する(ステップS91)。なお、ひび画像データおよび輝度値に応じた画素とひび幅との関係情報を同時に取得するものとしたが、ひび画像データおよび輝度値に応じた画素とひび幅との関係情報を関連付けて入力できればよく、ひび画像データおよび輝度値に応じた画素とひび幅との関係情報をそれぞれ別のタイミングで取得してもよい。
【0105】
次いで、モデル生成部502は、データ取得部501によって取得されるひび画像データおよび輝度値に応じた画素とひび幅との関係情報の組み合わせに基づいて作成される学習用データにしたがって、いわゆる教師あり学習により輝度-ピクセル関係情報を学習し、輝度-ピクセル関係学習済モデルを生成する(ステップS92)。
【0106】
その後、輝度-ピクセル関係学習済モデル記憶部51は、モデル生成部502が生成した輝度-ピクセル関係学習済モデルを記憶する(ステップS93)。以上で、輝度-ピクセル関係学習済モデル生成方法が終了する。
【0107】
なお、実施の形態5でのひび幅計測方法は、実施の形態2で説明したものと同様であるので、その説明を省略する。
【0108】
実施の形態5では、ひび幅計測装置1Eは、輝度-ピクセル関係学習済モデルに、ひび画像データを入力することで、輝度-ピクセル関係情報を出力する輝度-ピクセル関係算出部52を備える。これによって、過去に蓄積された、ひび周辺の輝度および過去の輝度-ピクセル関係情報から機械学習によって生成した輝度-ピクセル関係学習済モデルを用いて、輝度-ピクセル関係情報を自動算出することができる。この結果、ユーザによる画像データを用いて輝度-ピクセル関係情報を算出する手間を削減することが可能となる。
【0109】
実施の形態6.
実施の形態2では、ひび分類部22でひび画像データにおいて壁面とひびとをセマンティックセグメンテーションしていた。ひび分類画像データではなくひび画像データを用いてユーザが2点を選択する場合において、ユーザが選択した2点間に、ひびではなく、ひびに類似した目地等が存在する場合もある。このような場合に、注意喚起を行うことが可能なひび幅計測装置について説明する。
【0110】
実施の形態6に係るひび幅計測装置は、実施の形態2と同様の構成を有する。ただし、ひび幅計測部16は、ひび分類画像データ上でユーザが選択した2点間にひびが存在するか否かを判定する機能をさらに有する。具体的には、ひび幅計測部16は、ユーザが選択した2点間を結ぶ線分と交わるひびに相当する領域が存在するかを判定する機能をさらに有する。また、計測結果表示部17は、選択した2点間にひびが存在しない場合に、選択した2点間にひびがないことを示す注意情報をユーザに対して表示する機能をさらに有する。
【0111】
図19は、実施の形態6に係るひび幅計測方法の手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図10と同一の処理には同一のステップ番号を付して、その説明を省略する。
【0112】
ステップS55の後に、ひび幅計測部16は、ひび分類画像データ上で、選択された2点を結ぶ線分が通る領域上にひびが存在するかを判定する(ステップS111)。ひびが存在する場合(ステップS111でYesの場合)には、
図11のステップS56に処理が移る。
【0113】
一方、ひびが存在しない場合(ステップS111でNoの場合)には、計測結果表示部17は、選択した2点間にひびがないことを示す注意情報を表示する(ステップS112)。以上で処理が終了する。
【0114】
なお、上記した例では、実施の形態2の構成に実施の形態6の構成を適用した場合を示したが、実施の形態3から5のいずれか1つに実施の形態6の構成を適用してもよい。
【0115】
実施の形態6では、ひび幅計測部16は、ひび分類画像データ上のユーザが選択した2点間にひびが存在するかを判定し、ひびが存在しない場合に、計測結果表示部17は、選択した2点間にひびがないことを示す注意情報を表示するようにした。これによって、ユーザは、ひび画像データでひびと思って選択した部分がひびでないことを認識することが可能となる。また、ひびではない箇所のひび幅の計測がなされることがないので、ひび幅の計測処理を効率的に実行することが可能となる。
【0116】
実施の形態7.
図20は、実施の形態7に係るひび幅計測装置の構成の一例を模式的に示す図である。なお、
図1と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略し、
図1と異なる部分について説明する。実施の形態7に係るひび幅計測装置1Fは、実施の形態1のひび幅計測装置1に対して、画像解像度情報記憶部14および輝度-ピクセル関係情報記憶部15を除去し、学習装置70と、ひび幅学習済モデル記憶部71と、をさらに備える。
【0117】
学習装置70は、ひび画像データからひびの実際の構造物におけるひび幅を算出するひび幅学習済モデルを生成する装置である。学習装置70は、データ取得部701と、モデル生成部702と、を備える。ひび幅学習済モデルは、第3学習済モデルに対応する。
【0118】
データ取得部701は、ひび画像データと、過去の点検データと、を学習用データとして取得する。ひび画像データと過去の点検データとは、対応付けられている。また、過去の点検データは、ひび画像データに対応するひび位置およびひび幅を含むデータであり、正解データに対応する。過去の点検データにおけるひび幅は、ひび画像データ上におけるひび幅でもよいが、実際の構造物上で計測したひび幅であることが望ましい。つまり、過去の点検データにおけるひび幅は、ひび画像データから計測したデータではなく、実際の構造物でクラックスケールを用いて計測したデータであることが望ましい。これは、実際の構造物でクラックスケールを用いて計測したデータの方がより正確な値に近いためである。
【0119】
モデル生成部702は、データ取得部701から出力されるひび画像データおよび過去の点検データの組合せに基づいて作成される学習用データに基づいて、選択位置におけるひび幅を学習する。すなわち、ひび幅計測装置1Fのひび画像データおよび過去の点検データから最適な選択位置におけるひび幅を推論するひび幅学習済モデルを生成する。ここで、学習用データは、ひび画像データおよび過去の点検データを互いに関連付けたデータである。
【0120】
なお、学習装置70は、ひび幅計測装置1Fの選択位置におけるひび幅を学習するために使用されるが、一例では、ネットワークを介してひび幅計測装置1Fに接続され、このひび幅計測装置1Fとは別個の装置であってもよい。あるいは、
図20に示されるように学習装置70は、ひび幅計測装置1Fに内蔵されていてもよい。さらに、学習装置70は、クラウドサーバ上に存在していてもよい。
【0121】
モデル生成部702が用いる学習アルゴリズムは教師あり学習、教師なし学習、強化学習等の公知のアルゴリズムを用いることができる。一例では、
図7で説明したニューラルネットワークモデルに従って、教師あり学習によって選択位置におけるひび幅を学習する。つまり、
図7でニューラルネットワークは、入力層にひび画像データを入力して出力層から出力された結果が、過去の点検データに近づくように重みw1,w2を調整することで学習し、でひび幅学習済モデルを生成する。
【0122】
ひび幅学習済モデル記憶部71は、モデル生成部702から出力されたひび幅学習済モデルを記憶する。
【0123】
ひび幅計測部16は、ひび画像データから選択位置におけるひび幅を推論するためのひび幅学習済モデル記憶部71に記憶されたひび幅学習済モデルを用いて、画像表示部12によって表示されているひび画像データから選択位置におけるひび幅を推論する。すなわち、このひび幅学習済モデルにひび画像記憶部11から取得したひび画像データと計測箇所選択部13で選択された選択位置とを入力することで、ひび画像データから推論される選択位置におけるひび幅を出力することができる。
【0124】
なお、実施の形態7では、ひび幅計測装置1Fのモデル生成部702で学習したひび幅学習済モデルを用いて選択位置におけるひび幅を出力するものとして説明したが、他のひび幅計測装置1F等の外部からひび幅学習済モデルを取得し、このひび幅学習済モデルに基づいて選択位置におけるひび幅を出力するようにしてもよい。
【0125】
また、ひび幅計測部16は、ひび幅計測装置1Fのひび画像データから選択位置におけるひび幅を取得するために使用される。
図20の例では、ひび幅計測部16は、ひび幅計測装置1Fに内蔵されているが、一例では、ネットワークを介してひび幅計測装置1Fに接続され、このひび幅計測装置1Fとは別個の装置であってもよい。さらに、ひび幅計測部16は、クラウドサーバ上に存在していてもよい。
【0126】
次に、このような構成のひび幅計測装置1Fの処理について説明する。以下では、学習装置70での学習処理について説明した後、ひび幅計測方法について説明する。
【0127】
図21は、実施の形態7に係るひび幅計測装置におけるひび幅学習済モデル生成方法の手順の一例を示すフローチャートである。データ取得部701は、ひび画像データと、過去の点検データと、を取得する(ステップS131)。過去の点検データは、ひび画像に対応するひび位置とひび幅とを含む。なお、ひび画像データおよび過去の点検データを同時に取得するものとしたが、ひび画像データおよび過去の点検データを関連付けて入力できればよく、ひび画像データおよび過去の点検データをそれぞれ別のタイミングで取得してもよい。
【0128】
次いで、モデル生成部702は、データ取得部701によって取得されるひび画像データおよび過去の点検データの組み合わせに基づいて作成される学習用データにしたがって、いわゆる教師あり学習により選択位置におけるひび幅を学習し、ひび幅学習済モデルを生成する(ステップS132)。
【0129】
その後、ひび幅学習済モデル記憶部71は、モデル生成部702が生成したひび幅学習済モデルを記憶する(ステップS133)。以上で、ひび幅学習済モデル生成方法が終了する。
【0130】
図22は、実施の形態7に係るひび幅計測方法の手順の一例を示すフローチャートである。まず、画像表示部12は、ひび画像記憶部11からひび画像データを読み出して表示する(ステップS151)。取得するひび画像データは、ユーザによって選択されたものであってもよいし、撮影日時などの定められた順に選択されたものであってもよい。
【0131】
ユーザは、表示されたひび画像データからひび幅を計測したい位置を含むように2点を選択する。つまり、ユーザは、ひび幅を計測したいひびを挟むように2点をひび画像データ上で選択する。ユーザによって2点が選択されると、計測箇所選択部13は、ユーザによって選択された2点のひび画像データ上の位置を選択する(ステップS152)。
【0132】
ひび幅計測部16は、表示されたひび画像データと、ひび画像データ上の2点の選択位置と、を取得する(ステップS153)。次いで、ひび幅計測部16は、ひび幅学習済モデル記憶部71に記憶されたひび幅学習済モデルに、ひび画像データと、2点の選択位置と、を入力し、選択された位置におけるひび幅を出力する(ステップS154)。そして、計測結果表示部17は、ひび幅計測部16によって算出されたひび幅をひび画像データに重ねて表示する(ステップS155)。以上で、処理が終了する。
【0133】
実施の形態7のひび幅計測装置1Fでは、ひび幅学習済モデル記憶部71に記憶されたひび幅学習済モデルに、ひび画像データと、2点の選択位置と、を入力し、選択された位置におけるひび幅を出力するようにした。これによって、ひび画像データでひび幅を計測したい位置を含むように2点を選択するだけで、ひび幅を計測することができる。
【0134】
なお、上記した実施の形態1から7では、ひび画像データがモノクロデータである場合を例に挙げて説明したが、ひび画像データがカラーデータであってもよい。ひび画像データがカラーデータである場合にも、輝度値を用いた処理が可能である。この場合には、輝度値は明度を示す明度値とすることができる。また、このほかに色相の値である色相値、彩度の値である彩度値を用いてもよい。輝度値、明度値、色相値および彩度値はひび画像データの1画素が表す色情報の値の一例である。つまり、ひび幅計測部16は、ひび画像データの1画素が表す色情報の値と1画素あたりのひび幅との関係を示す画素ひび幅関係情報を用いてひび画像データで選択された2点間を結ぶ線分と交わるひびに相当する領域のひび画像データ上でのひび幅を算出し、ひび画像データのサイズと構造物のサイズとの対応関係を示す画像解像度情報を用いて、ひび画像データ上でのひび幅から実際のひび幅を算出する。
【0135】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【0136】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0137】
[付記1]
ひびを有する構造物の画像データであるひび画像データから前記構造物における実際のひび幅を計測するひび幅計測装置であって、
前記ひび画像データの1画素が表す色情報の値と1画素あたりのひび幅との関係を示す画素ひび幅関係情報を用いて前記ひび画像データで選択された2点間を結ぶ線分と交わる前記ひびに相当する領域の前記ひび画像データ上での合計ひび幅を算出し、前記ひび画像データのサイズと前記構造物のサイズとの対応関係を示すサイズ対応情報を用いて、前記合計ひび幅から前記実際のひび幅を算出するひび幅計測部を備えることを特徴とするひび幅計測装置。
[付記2]
定められた前記画素ひび幅関係情報および定められた前記サイズ対応情報のうち少なくとも一方を記憶するプリセット条件記憶部と、
前記定められた画素ひび幅関係情報および前記定められたサイズ対応情報のうち少なくとも一方が初期値として設定された前記画素ひび幅関係情報および前記サイズ対応情報の設定画面を表示する条件設定表示部と、
をさらに備えることを特徴とする付記1に記載のひび幅計測装置。
[付記3]
前記ひび幅計測部は、前記ひび幅を算出する基準となる幅算出基準線を前記線分とし、前記ひび画像データを前記ひびと前記ひび以外のものとを画素単位でセグメンテーションした画像データであるひび分類画像データを用いて、前記幅算出基準線と交わる前記ひびに相当する領域を決定することを特徴とする付記1または2に記載のひび幅計測装置。
[付記4]
前記ひび画像データから前記ひびの位置を推論するための第1学習済モデルを用いて、前記ひび画像データから前記ひび分類画像データを出力するひび分類部をさらに備えることを特徴とする付記3に記載のひび幅計測装置。
[付記5]
前記ひび分類画像データを用いて前記線分と交わる前記ひびの延在方向であるひび方向を算出するひび方向算出部をさらに備え、
前記ひび幅計測部は、前記線分が前記ひび方向と直交するかを判定し、前記線分が前記ひび方向と直交していない場合には、前記幅算出基準線を、前記線分と交わり前記ひび方向に直交する直線とすることを特徴とする付記3に記載のひび幅計測装置。
[付記6]
前記ひび画像データから前記1画素が表す色情報の値に応じた前記1画素あたりのひび幅を推論するための第2学習済モデルを用いて、前記ひび画像データから前記画素ひび幅関係情報を出力する画素ひび幅関係情報算出部をさらに備えることを特徴とする付記3から5のいずれか1つに記載のひび幅計測装置。
[付記7]
前記ひび画像データを表示するひび画像表示部と、
前記ひび幅計測部によって算出された前記実際のひび幅を表示する計測結果表示部と、
をさらに備え、
前記ひび幅計測部は、前記2点間を結ぶ線分と交わる前記ひびに相当する領域が存在するかを判定する機能をさらに有し、
前記計測結果表示部は、前記2点間を結ぶ線分と交わる前記ひびに相当する領域が存在しない場合に、前記2点間にひびがないことを示す注意情報を表示する機能をさらに有することを特徴とする付記3から6のいずれか1つに記載のひび幅計測装置。
[付記8]
前記ひび画像データを表示する画像表示部と、
前記ひび幅計測部によって算出された前記実際のひび幅を表示する計測結果表示部と、
をさらに備え、
前記ひび幅計測部は、前記ひび画像データから選択位置における前記ひび幅を推論するための第3学習済モデルを用いて、前記画像表示部によって表示されている前記ひび画像データから前記選択位置における前記ひび幅を推論することを特徴とする付記1に記載のひび幅計測装置。
[付記9]
前記1画素が表す色情報の値は、輝度値、明度値、色相値および彩度値の群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする付記1から8のいずれか1つに記載のひび幅計測装置。
[付記10]
コンピュータを用いてひびを有する構造物の画像データであるひび画像データから前記構造物における実際のひび幅を計測するひび幅計測方法であって、
前記ひび画像データの1画素が表す色情報の値と1画素あたりのひび幅との関係を示す画素ひび幅関係情報を用いて前記ひび画像データで選択された2点間を結ぶ線分と交わる前記ひびに相当する領域の前記ひび画像データ上での合計ひび幅を算出する第1工程と、
前記ひび画像データのサイズと前記構造物のサイズとの対応関係を示すサイズ対応情報を用いて、前記合計ひび幅から前記実際のひび幅を算出する第2工程と、
を含むことを特徴とするひび幅計測方法。
[付記11]
前記第1工程では、前記ひび幅を算出する基準となる幅算出基準線を前記線分とし、前記ひび画像データを前記ひびと前記ひび以外のものとを画素単位でセグメンテーションした画像データであるひび分類画像データを用いて、前記幅算出基準線と交わる前記ひびに相当する領域を決定することを特徴とする付記10に記載のひび幅計測方法。
[付記12]
前記第1工程では、前記ひび画像データから前記ひびの位置を推論するための第1学習済モデルを用いて、前記ひび画像データから前記ひび分類画像データを生成することを特徴とする付記11に記載のひび幅計測方法。
[付記13]
ひびを有する構造物の画像データであるひび画像データの1画素が表す色情報の値と1画素あたりのひび幅との関係を示す画素ひび幅関係情報を用いて前記ひび画像データで選択された2点間を結ぶ線分と交わる前記ひびに相当する領域の前記ひび画像データ上での合計ひび幅を算出する第1ステップと、
前記ひび画像データのサイズと前記構造物のサイズとの対応関係を示すサイズ対応情報を用いて、前記合計ひび幅から前記構造物における実際のひび幅を算出する第2ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とするひび幅計測プログラム。
[付記14]
前記第1ステップでは、前記ひび幅を算出する基準となる幅算出基準線を前記線分とし、前記ひび画像データを前記ひびと前記ひび以外のものとを画素単位でセグメンテーションした画像データであるひび分類画像データを用いて、前記幅算出基準線と交わる前記ひびに相当する領域を決定することを特徴とする付記13に記載のひび幅計測プログラム。
[付記15]
前記第1ステップでは、前記ひび画像データから前記ひびの位置を推論するための第1学習済モデルを用いて、前記ひび画像データから前記ひび分類画像データを生成することを特徴とする付記14に記載のひび幅計測プログラム。
【符号の説明】
【0138】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F ひび幅計測装置、11 ひび画像記憶部、12 画像表示部、13 計測箇所選択部、14 画像解像度情報記憶部、15 輝度-ピクセル関係情報記憶部、16 ひび幅計測部、17 計測結果表示部、20,50,70 学習装置、21 ひび分類学習済モデル記憶部、22 ひび分類部、25 推論装置、31 ひび方向算出部、41 プリセット条件記憶部、42 条件設定表示部、51 輝度-ピクセル関係学習済モデル記憶部、52 輝度-ピクセル関係算出部、53 ひび分類画像記憶部、71 ひび幅学習済モデル記憶部、111 ひび画像データ、141,411 画像解像度情報、151,412 輝度-ピクセル関係情報、161 算出したひび幅、201,251,501,701 データ取得部、202,502,702 モデル生成部、221 ひび分類画像データ、300 壁面、310 ひび、410 プリセット条件、420 設定画面、421 条件設定表示領域、421a ボタン、422 設定ボタン、423 キャンセルボタン、901 制御部、902 入力部、903 記憶部、904 表示部、905 通信部、906 出力部、907 システムバス、p1-p9 画素。