(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156567
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 3/026 20060101AFI20241029BHJP
A47C 7/44 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A47C3/026
A47C7/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071150
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】小田 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】白土 航平
【テーマコード(参考)】
3B084
3B091
【Fターム(参考)】
3B084AA01
3B084GA01
3B091AA04
3B091AB02
3B091AC06
(57)【要約】
【課題】座の下方の構成の大きさを過大とせずに、背凭れと座との間に物体が挟まれることを防ぐ。
【解決手段】支持構造体と、座と、背凭れと、を備える椅子において、背凭れは、背凭れ本体と、背凭れ支持部と、を備え、背凭れ支持部は、座の下方において支持構造体に連結され、座に下方から対向する座下腕部を備え、座と座下腕部との間の上下方向の間隔は、背凭れの初期位置から後方側への傾動により広がり、背凭れの後方側から初期位置への傾動により狭まり、座および座下腕部の少なくとも一方には、座および座下腕部の他方側に突出し、座および座下腕部の間の上下方向の隙間の少なくとも一部と左右方向から見て重なる遮蔽部が設けられ、座および座下腕部の少なくとも他方には、一方側を向く本体対向面に対して一方と反対側に凹み、遮蔽部の少なくとも一部を収容可能とする収容凹部が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造体と、
前記支持構造体に支持される座と、
前記支持構造体に支持され、前記座の上方に起立した初期位置から後方側へ傾動可能な背凭れと、
を備える椅子において、
前記背凭れは、前記座の上方に配置される背凭れ本体と、前記背凭れ本体を支持する背凭れ支持部と、を備え、
前記背凭れ支持部は、前記座の下方において前記支持構造体に連結され、前記座に下方から対向する座下腕部を備え、
前記座と前記座下腕部との間の上下方向の間隔は、前記背凭れの前記初期位置から後方側への傾動により広がり、前記背凭れの後方側から前記初期位置への傾動により狭まり、
前記座および前記座下腕部の少なくとも一方には、前記座および前記座下腕部の他方側に突出し、前記座および前記座下腕部の間の上下方向の隙間の少なくとも一部と左右方向から見て重なる遮蔽部が設けられ、
前記座および前記座下腕部の少なくとも他方には、前記一方側を向く本体対向面に対して前記一方と反対側に凹み、前記遮蔽部の少なくとも一部を収容可能とする収容凹部が形成されている、椅子。
【請求項2】
前記遮蔽部は、前記座下腕部から座側に突出する背側遮蔽部を備え、
前記収容凹部は、前記座の座下面に対して上方に凹み、前記背側遮蔽部の少なくとも一部を収容可能とする座側収容凹部を備えている、請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記遮蔽部は、前記座から座下腕部側に突出する座側遮蔽部を備え、
前記収容凹部は、前記座下腕部の腕上面に対して下方に凹み、前記座側遮蔽部の少なくとも一部を収容可能とする背側収容凹部を備えている、請求項1又は2に記載の椅子。
【請求項4】
前記遮蔽部は、前記座下腕部から座側に突出する背側遮蔽部と、前記座から座下腕部側に突出する座側遮蔽部と、を備え、
前記収容凹部は、前記座の座下面に対して上方に凹み、前記背側遮蔽部の少なくとも一部を収容可能とする座側収容凹部と、前記座下腕部の腕上面に対して下方に凹み、前記座側遮蔽部の少なくとも一部を収容可能とする背側収容凹部と、を備え、
前記座側遮蔽部と前記背側遮蔽部とは、前記背凭れが前記初期位置から最大リクライニング位置に至るまでの全域で、左右方向から見て互いに重なり代を有している、請求項1に記載の椅子。
【請求項5】
前記座下腕部は、左右一対の腕本体を備え、
前記背側収容凹部は、一対の前記腕本体の間に形成されている、請求項4に記載の椅子。
【請求項6】
前記座側遮蔽部および前記背側遮蔽部は、左右方向で前記座の外側端よりも内側に位置している、請求項4に記載の椅子。
【請求項7】
前記座側収容凹部の左右方向外側には、前記座下面の端縁から上方へ屈曲して延びる内壁部が形成され、
前記座下腕部は、前記内壁部よりも左右方向外側に至る左右幅を有している、請求項4に記載の椅子。
【請求項8】
前記背側遮蔽部および前記座側遮蔽部は、左右方向を厚さ方向とし、突出端を自由端とした板状に形成され、
前記座側遮蔽部は、前記座側収容凹部内で前記背側遮蔽部と左右方向に並んで配置されている、請求項4に記載の椅子。
【請求項9】
前記座は、合成樹脂により形成され、前記座下面を形成する座板部材を備え、
前記座板部材は、上下方向に沿う前記座側遮蔽部を含んで一体形成されている、請求項4に記載の椅子。
【請求項10】
前記座下腕部の前端部は、前記支持構造体に対して、左右方向に沿う枢軸を介して回動可能に枢支され、
前記座は、前記支持構造体に対して、連動機構を介して傾動可能に枢支され、前記背凭れの後方側への回動に連動して後下がりに傾動する、請求項1に記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
支持構造体に対して、背凭れのリクライニング動作に連動して座が傾動する連動機構を備える椅子が知られている。
例えば特許文献1には、背凭れ12が支基6(支持構造体)に対して左右方向の軸回りに回動すると、これに連動して座8も左右方向の軸回りに回動する椅子が記載されている。背凭れ12は支基6に直接枢支されているが、座8はリンク部材19を介して支基6に枢支されている。背凭れ12の支基6に対しての回動量と、座8の支基6に対しての回動量とは互いに異なる。背凭れ12が後方に回動するにつれて、背凭れ12と、異なる率で回動する座8と、の間の上下方向の間隔は拡がる。背凭れ12と座8とが初期位置に復帰する際、これらの間隔は狭まることになる。このとき、背凭れ12と座8との間の空間(隙間)に左右方向外側方から手指が挿入されると、この手指が背凭れ12と座8との間に挟まる虞がある。このことから、特許文献1の背凭れ12と座8との間には、リクライニング前の初期状態において大きな間隔が確保されている。
【0003】
背凭れと座との間に手指を挟むことを防ぐ構成としては、例えば特許文献2のような構成も考えられる。特許文献2には、座部1のアウターシェル5を、左右方向両側部から下方に垂下する壁として利用し、アウターシェル5の内部空間に背凭れ9の支持腕部を位置させた椅子が記載されている。アウターシェル5は、支持腕部の周囲を丸ごとカバーしている。背凭れ9の支持腕部の周囲が完全に遮蔽されるので、背凭れ(支持腕部)と座との間に手指を挟む虞は低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4638116号公報
【特許文献2】特許第3513925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では椅子のコンパクト化が推奨されている。コンパクトに設計された椅子においては、背凭れと座との間隔も小さく設定されることになり、特許文献1のように背凭れと座との間に十分な間隔を確保できず、背凭れと座との間に手指を挟む虞が生じてしまう。
【0006】
また、特許文献2では、アウターシェル5の下端部は、背凭れ9の支持腕部の可動範囲の下限位置よりもさらに下方に延びている。このため、アウターシェル5は上下方向に大きく、椅子のコンパクト化という要請に沿えない可能性がある。また、アウターシェル5が座受部材6(支基に相当)の外側方を前後方向の広い範囲にわたって覆うので、座受部材6を構成する各種の部材(例えば座受部材に座の傾動機構を盛り込む場合はその機構部品)の組付けや外部部品との連結が困難になる。したがって、アセンブリ効率が低下する虞がある。
【0007】
本発明は、座の下方の構成の大きさを過大とせずに、背凭れと座との間に物体が挟まれることを防ぐことができる椅子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係る椅子は、支持構造体と、支持構造体に支持される座と、支持構造体に支持され、座の上方に起立した初期位置から後方側へ傾動可能な背凭れと、を備える椅子において、背凭れは、座の上方に配置される背凭れ本体と、背凭れ本体を支持する背凭れ支持部と、を備え、背凭れ支持部は、座の下方において支持構造体に連結され、座に下方から対向する座下腕部を備え、座と座下腕部との間の上下方向の間隔は、背凭れの初期位置から後方側への傾動により広がり、背凭れの後方側から初期位置への傾動により狭まり、座および座下腕部の少なくとも一方には、座および座下腕部の他方側に突出し、座および座下腕部の間の上下方向の隙間の少なくとも一部と左右方向から見て重なる遮蔽部が設けられ、座および座下腕部の少なくとも他方には、一方側を向く本体対向面に対して一方と反対側に凹み、遮蔽部の少なくとも一部を収容可能とする収容凹部が形成されている。
【0009】
本態様によれば、椅子の座と、背凭れにおける背凭れ本体を支持する背凭れ支持部の座下腕部とは、上下方向で互いに対向し、座および座下腕部の間の上下方向の間隔は、背凭れのリクライニング動作に応じて増減する。この構成において、座および座下腕部の少なくとも一方には、座および座下腕部の間の上下方向の隙間を塞ぐ遮蔽部が突設されることで、座および座下腕部の間に物体が入り込み難くなり、座および座下腕部の間に物体が挟み込まれることを抑制することができる。また、座および座下腕部の他方には、遮蔽部を収容可能な収容凹部が形成されることで、遮蔽部を隠しながら座および座下腕部を互いに接近させることができる。これにより、座および座下腕部の間の隙間を塞ぐ遮蔽部を突設しながら、座および座下腕部の上下方向の厚さを抑えることが可能となり、座および背凭れ(座下腕部)のコンパクトなデザインを実現することができる。
【0010】
(2)上記(1)の態様に係る椅子において、遮蔽部は、座下腕部から座側に突出する背側遮蔽部を備え、収容凹部は、座の座下面に対して上方に凹み、背側遮蔽部の少なくとも一部を収容可能とする座側収容凹部を備えていることが好ましい。
本態様によれば、座下腕部に背側遮蔽部を突設して座および座下腕部の間の隙間を塞ぐことで、座および座下腕部の間に物体が挟み込まれることを抑制することができる。また、座に座側収容凹部を凹設することで、背側遮蔽部を隠しながら座および座下腕部を互いに接近させることができる。これにより、座および座下腕部の間の隙間を塞ぐ背側遮蔽部を突設しながら、座および座下腕部の上下方向の厚さを抑えてコンパクトなデザインを実現することができる。
【0011】
(3)上記(1)又は(2)の態様に係る椅子において、遮蔽部は、座から座下腕部側に突出する座側遮蔽部を備え、収容凹部は、座下腕部の腕上面に対して下方に凹み、座側遮蔽部の少なくとも一部を収容可能とする背側収容凹部を備えていることが好ましい。
本態様によれば、座に座側遮蔽部を突設して座および座下腕部の間の隙間を塞ぐことで、座および座下腕部の間に物体が挟み込まれることを抑制することができる。また、座下腕部に背側収容凹部を凹設することで、座側遮蔽部を隠しながら座および座下腕部を互いに接近させることができる。これにより、座および座下腕部の間の隙間を塞ぐ座側遮蔽部を突設しながら、座および座下腕部の上下方向の厚さを抑えてコンパクトなデザインを実現することができる。
【0012】
(4)上記(1)から(3)の何れか一つの態様に係る椅子において、遮蔽部は、座下腕部から座側に突出する背側遮蔽部と、座から座下腕部側に突出する座側遮蔽部と、を備え、収容凹部は、座の座下面に対して上方に凹み、背側遮蔽部の少なくとも一部を収容可能とする座側収容凹部と、座下腕部の腕上面に対して下方に凹み、座側遮蔽部の少なくとも一部を収容可能とする背側収容凹部と、を備え、座側遮蔽部と背側遮蔽部とは、背凭れが初期位置から最大リクライニング位置に至るまでの全域で、左右方向から見て互いに重なり代を有していることが好ましい。
本態様によれば、座下腕部および座に背側遮蔽部および座側遮蔽部をそれぞれ突設することで、背側遮蔽部および座側遮蔽部が協働して座および座下腕部の間の隙間を塞ぐことが可能となり、一方の遮蔽部のみで隙間を塞ぐ場合と比べて、個々の遮蔽部の小型化を図ることができる。また、背凭れのリクライニング動作の全域において、座側壁部と背側壁部とが互いに重なり代を有することで、座および座下腕部の間の隙間を確実に塞ぐことができる。また、座下腕部および座に背側収容凹部および座側収容凹部をそれぞれ凹設することで、背側遮蔽部および座側遮蔽部を隠しながら座および座下腕部を互いに接近させることができる。これにより、座および座下腕部の間の隙間を塞ぐ背側遮蔽部および座側遮蔽部を突設しながら、座および座下腕部の上下方向の厚さを抑えてコンパクトなデザインを実現することができる。
【0013】
(5)上記(3)又は(4)の態様に係る椅子において、座下腕部は、左右一対の腕本体を備え、背側収容凹部は、一対の腕本体の間に形成されていることが好ましい。
本態様によれば、背側収容凹部が一対の腕本体の間に形成されることで、座下腕部に背側収容凹部を形成することによる背凭れ支持部の剛性への影響を抑えることができる。
【0014】
(6)上記(4)の態様に係る椅子において、座側遮蔽部および背側遮蔽部は、左右方向で座の外側端よりも内側に位置していることが好ましい。
本態様によれば、座側遮蔽部および背側遮蔽部が左右方向で座の外側端よりも内側にあることで、座側遮蔽部および背側遮蔽部が外観上目立ちにくくなるため、上下方向に薄い座を採用したときにも、座側遮蔽部および背側遮蔽部が外観体裁を損なうことを抑えることができる。
【0015】
(7)上記(2)、(4)、(6)の何れか一つの態様に係る椅子において、座側収容凹部の左右方向外側には、座下面の端縁から上方へ屈曲して延びる内壁部が形成され、座下腕部は、内壁部よりも左右方向外側に至る左右幅を有していることが好ましい。
本態様によれば、座側収容凹部の内面を形成する内壁部が、カバー下面から段差等を介さず直接上方に落とし込まれるように形成されることで、座側収容凹部を目立たなくすることができる。また、内壁部の左右外側部が第二の座側遮蔽部として機能し、座側収容凹部の内壁部、背側遮蔽部および座側遮蔽部という三重の遮蔽部によって、座および座下腕部の間の隙間を確実に塞ぐことができる。また、座下腕部が座側収容凹部よりも広い左右幅を有して座側収容凹部に下方から対向することで、より確実に座側収容凹部を目立たなくすることができる。
【0016】
(8)上記(4)又は(6)の態様に係る椅子において、背側遮蔽部および座側遮蔽部は、左右方向を厚さ方向とし、突出端を自由端とした板状に形成され、座側遮蔽部は、座側収容凹部内で背側遮蔽部と左右方向に並んで配置されていることが好ましい。
本態様によれば、背側遮蔽部および座側遮蔽部が左右方向を厚さ方向とした板状に形成されることで、背側遮蔽部および座側遮蔽部を座側収容凹部内に容易に配置することができる。また、背側遮蔽部および座側遮蔽部の突出端を自由端とすることで、各遮蔽部の突出量を適宜設定し、座および座下腕部の間の隙間に物体が挟まれ難くするために最適化された設計にすることができる。
【0017】
(9)上記(3)、(4)、(6)の何れか一つの態様に係る椅子において、座は、合成樹脂により形成され、座下面を形成する座板部材を備え、座板部材は、上下方向に沿う座側遮蔽部を含んで一体形成されていることが好ましい。
本態様によれば、座板部材を上下方向の型割で形成された樹脂成型品とし、座側収容凹部内で下方に延びる座側遮蔽部を一体形成することで、座側収容凹部および座側遮蔽部を容易かつ効率よく形成することができる。
【0018】
(10)上記(1)から(9)の何れか一つの態様に係る椅子において、座下腕部の前端部は、支持構造体に対して、左右方向に沿う枢軸を介して回動可能に枢支され、座は、支持構造体に対して、連動機構を介して傾動可能に枢支され、背凭れの後方側への回動に連動して後下がりに傾動することが好ましい。
本態様によれば、背凭れが後方側に傾動したときに座が連動して後下がりに傾動することで、座下腕部と座との間の間隔の広がりが少なくなる。このため、隙間を塞ぐ遮蔽部の高さおよび遮蔽部を収容する収容凹部の深さを抑えることができ、座および背凭れ(座下腕部)のコンパクトなデザインに寄与することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の態様に係る椅子によれば、座の下方の構成の大きさを過大とせずに、背凭れと座との間に物体が挟まれることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る椅子を斜め上前方から見た斜視図である。
【
図2】上記椅子の一部の分解斜視図であり、背凭れ及び支持構造体の各々を構成する部品を示す図である。
【
図3】上記椅子の一部の分解斜視図であり、背凭れ側の部品を拡大して示す図である。
【
図4】上記椅子の一部の分解斜視図であり、座側および支持構造体側の部品を拡大して示す図である。
【
図5】上記椅子を左右方向左側から見た側面図であり、背凭れが後方にリクライニングする前の初期位置にある状態を示す図である。
【
図6】
図5に相当する側面図であり、背凭れがリクライニング範囲の途中まで後傾した中間位置にある状態を示す図である。
【
図7】
図5に相当する側面図であり、背凭れが最大リクライニング角度まで後傾した最大リクライニング位置にある状態を示す図である。
【
図8】上記椅子の座の下方を覆うアウターシェルを斜め下後方から見た斜視図である。
【
図9】上記椅子の軸支持機構を左右方向左側から見た側面図であり、背凭れが初期位置にある状態を示す図である。
【
図10】
図9に相当する側面図であり、背凭れが最大リクライニング位置にある状態を示す図である。
【
図11】
図9のXI-XI断面図であり、軸支持機構の断面図である。
【
図12】上記椅子の背凭れおよび座の間の隙間を塞ぐ座側壁部に沿う断面図であり、背凭れが初期位置にある状態を示す。
【
図13】
図12に相当する断面図であり、背凭れが最大リクライニング位置にある状態を示す。
【
図14】上記椅子の背凭れおよび座の間の隙間を塞ぐ背側壁部に沿う断面図であり、背凭れが初期位置にある状態を示す。
【
図15】
図14に相当する断面図であり、背凭れが最大リクライニング位置にある状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて本発明の一実施例を説明するが、本発明の範囲はここで説明する一実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができる。
以下の説明では、同一又は類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。これら構成の重複する説明は省略する場合がある。図面は模式的又は概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率等は、必ずしも現実のものと同一とは限らない。
【0022】
以下の説明において、説明の便宜上、座1に正規姿勢で着座した着座者が前を向く方向を「前方」と称し、その反対方向を「後方」と称する。また、以下の説明における上下、左右の向きは、着座者が座1に正規姿勢で着座したときの着座者を中心とした向きと合致する。なお、図面には、前方向を指す矢印FDと、後方向を指す矢印BDと、上方を指す矢印UDと、下方を指す矢印DDと、右方向を指す矢印RDと、左方向を指す矢印LDとが記されている。
【0023】
以下の説明における前、後、上、下、右、左の向きは、特に記載がなければ矢印FD、BD、UD、DD、RD、LDで示す向きとする。
上方向UD及び下方向DDは、上下方向(重力方向)に一致する。
上方向UD及び下方向DDを上下方向と称してもよい。上下方向に沿って上方から対象を見ることを「平面視」と称してもよい。
【0024】
前方向FD及び後方向BDの各々は、上下方向に対して直交する方向に相当する。前方向FD及び後方向BDは、水平面に対して平行な方向である。「水平面」とは、上下方向に対して直交する面である。
前方向FD及び後方向BDを前後方向と称してもよい。前後方向に沿って前方から対象を見ることを「正面視」と称してもよい。
【0025】
右方向RD及び左方向LDの各々は、上下方向及び前後方向に対して直交する方向に相当する。右方向RD及び左方向LDは、水平面に対して平行な方向である。
右方向RD及び左方向LDを左右方向と称してもよい。左右方向に沿って左方又は右方から対象を見ることを「側面視」と称してもよい。
【0026】
<椅子100>
図1に示すように、本実施形態に係る椅子100は、座1と、背凭れ2と、弾性部材23と、支持構造体3と、を有する。椅子100は、床面FSに椅子100が置かれた状態で、かつ、着座者が座1に着座した状態で使用される。
背凭れ2は、支持構造体3を介して、連動可能なように座1に連結されている。言い換えると、椅子100の構造においては、背凭れ2は、座1に直接的に支持されていない。
【0027】
<座1>
図1、
図5、
図8に示すように、座1は、厚さ方向を上下方向に向けた厚板状をなし、下方を向く座板下面(座下面)4Lと、上方を向く座板上面4Uと、を有する。座1は、着座荷重を支持する構造体(座本体)としてのアウターシェル(座板部材)4と、アウターシェル4の上面側に一体的に配置される上面形成部材4Vと、を有する。
座板下面4Lは、アウターシェル4の下面によって形成されている。座板下面4Lは、例えば下方に凸の膨出形状をなしている。アウターシェル4の材料は、公知の樹脂材料や金属材料が用いられる。
【0028】
座板上面4Uは、着座者の臀部及び大腿部を弾性的に支持する上面形成部材4Vによって形成されている。座板上面4Uは、例えば、着座者の臀部及び大腿部の形状に応じた3次元形状を有する曲面である。例えば、上面形成部材4Vは、アウターシェル4の上面側を覆う張材4Mによって形成されている。張材4Mの材料は、例えば、メッシュ等の布である。上面形成部材4Vは、アウターシェル4の上面側に取り付けられる公知のクッション部材であってもよい。なお、クッション部材の場合、図示は省略するが、クッション部材の保形のために、クッション部材の下方に、アウターシェル4とは別部材の板部材(インナーシェル)が配置されていることが望ましい。
【0029】
図8に示すように、アウターシェル4の座板下面4L側には、支持機構収容部6と、操作機構収容部7と、肘掛け固定部8と、座側収容凹部11と、が形成されている。
<支持機構収容部6>
支持機構収容部6は、前後方向及び左右方向においてアウターシェル4の略中央に形成されている。支持機構収容部6は、椅子100の左右中央を通る中心面に関して左右対称に形成されている。
図9,
図12を併せて参照し、支持機構収容部6の前部には、座受部材40の第二座受け部材42の前部締結フランジ42Lを下方から当接させて支持する前棚部6Fが形成されている。前棚部6Fにおける下方に臨む下面は、前部締結フランジ42Lをボルトナット等の着脱可能な締結具を用いて固定するための締結面である。
【0030】
支持機構収容部6の後部で前棚部6Fよりも上方に変位した部位には、座受部材40の第一座受部材41の後部締結フランジ41Lを下方から当接させて支持する後棚部6Gが形成されている。後棚部6Gにおける下方に臨む下面は、後部締結フランジ41Lをボルトナット等の着脱可能な締結具を用いて固定するための締結面である。支持機構収容部6の後部で後棚部6Gを形成する部位は、後棚部6Gよりも前方に位置する部位よりも左右方向で幅広の拡幅部6Eとされている。拡幅部6Eの後方には、拡幅部6Eと同一の左右幅で座側収容凹部11が形成されている。
【0031】
<操作機構収容部7>
図8に示すように、操作機構収容部7は、レバー収容部7Aと、ワイヤ収容部7Bとを有する。
本実施形態において、レバー収容部7Aは、左右方向では支持機構収容部6よりも右方の位置に配置され、前後方向では支持機構収容部6の前端部の前後に渡るように配置されている。レバー収容部7Aの位置は、図に示す位置に限定されない。レバー収容部7Aは、平面視で前後に長い略矩形状に形成され、座板下面4Lに対して上方に変位した平坦な底面7Cを形成している。底面7Cは、不図示の操作機構の操作部を当接させて支持する。底面7Cは、操作部をボルトナット等の着脱可能な締結具を用いて固定するための締結面である。
【0032】
ワイヤ収容部7Bは、座板下面4Lに形成された、例えば溝である。ワイヤ収容部7Bは、例えば支持機構収容部6の左側(左右方向内側)から左方へ、支持機構収容部6の前縁に沿うように延び、支持機構収容部6の左側で後方に湾曲し、さらに右側に折り返すように湾曲して、支持機構収容部6の左側縁に突き当たる。図に示すワイヤ収容部7Bの経路は一例であり、レバー収容部7Aの位置等を考慮して適宜設定される。
【0033】
ワイヤ収容部7Bに収容された不図示のワイヤ構造体は、一端が操作部に連結され、他端が支持機構収容部6内で不図示のロック解除作動部に連結される。ロック解除作動部は、脚部30の昇降機構であるガススプリング32のロックを解除可能とする。ロック解除作動部は、着座者による操作部の操作によってワイヤ構造体を介して作動し、ガススプリング32のロックを解除して座を昇降可能とする。
座板下面4Lから上方に凹む操作機構収容部7の深さは、操作機構を構成する複数の部材の各々の大きさに応じて適宜設定される。
【0034】
<肘掛け固定部8>
図8に示すように、肘掛け固定部8は、左右一対に設けられ、支持機構収容部6よりも左右方向外側に配置されている。肘掛け固定部8の位置は、図に示す位置に限定されない。肘掛け固定部8は、平面視で左右に長い略矩形状に形成され、座板下面4Lに対して上方に変位した平坦な底面8Aを形成している。底面8Aは、肘掛けの支持アームの基端部(何れも不図示)を当接させて支持する。底面8Aは、肘掛けの支持アームの基端部をボルトナット等の着脱可能な締結具を用いて固定するための締結面である。
【0035】
<座側収容凹部11>
図8に示すように、座側収容凹部11は、支持機構収容部6の後方に形成されている。座側収容凹部11は、支持機構収容部6と同様、左右対称に形成されている。座側収容凹部11は、支持機構収容部6の拡幅部6Eと同一の左右幅に形成されている。
図16を併せて参照し、座側収容凹部11は、前後方向と交差する断面において、上方に凸の湾曲形状の湾曲壁部12を形成している。湾曲壁部12は、概ね一定の断面形状を有して後上がりに延びている。湾曲壁部12の左右両側部であって、尚且つ、左右方向の両側端部からやや内側方の部位からは、後述する座側壁部13がそれぞれ下方に向けて延びている。湾曲壁部12の左右外側部を、座板下面4Lから上方に屈曲して延びる内壁部12Aということがある。図示都合上、
図8と
図16とで内壁部12Aの形状が異なっている。
【0036】
図8を参照し、アウターシェル4の後部は、湾曲壁部12よりも急傾斜となるように後上がりに湾曲している。座側収容凹部11は、座板下面4Lの後部の左右方向内側の領域を切り欠くように形成されている。座側収容凹部11の内面と座板下面4Lとの交差部分には、上下方向から見て後方に凸の湾曲状をなす稜線部11Bが形成されている。座側収容凹部11の稜線部11Bは座板下面4Lの端縁11Cでもある。湾曲壁部12は、座板下面4Lの端縁11Cから上方へ屈曲して延びている。
【0037】
<操作機構>
図8を参照し、操作機構は、操作部と、ワイヤ構造体と、ロック解除作動部と、を有している(何れも不図示)。
操作部は、レバー収容部7Aに取り付けられる。操作部は、例えば着座者が手指で操作するレバーを有し、このレバーを付勢力に抗して回動操作することで、ワイヤ構造体を介してロック解除作動部を作動させることが可能である。ロック解除作動部は、ガススプリング32のロックを解除し、座1を昇降可能とする。操作部は、着座者による操作性を考慮して位置が設定され、それに応じてレバー収容部7Aの位置および形状等が設定される。
【0038】
ワイヤ構造体は、ワイヤ収容部7Bに保持される。ワイヤ構造体は、例えば中空のアウターケーブル内にインナーケーブルを挿通して摺動させる公知の操作ケーブルを採用してもよい。ワイヤ構造体は、操作部への操作によりアウターケーブル内でインナーケーブルを摺動させ、ロック解除作動部に操作力を伝達可能とする。ワイヤ構造体は、可撓性を有し、ワイヤ収容部7Bに沿って容易に配索可能である。
【0039】
図2を併せて参照し、ロック解除作動部は、支持機構収容部6内に配置される。ロック解除作動部は、少なくとも一部が支持構造体3の支基60に支持される。ロック解除作動部は、支持構造体3の脚柱33に内蔵されたガススプリング32の上端部を押圧可能である。ガススプリング32の上端部には、ロック解除突起部32Dが配置される。ロック解除作動部がロック解除突起部32Dを下方に押圧することで、ガススプリング32のロックが解除されて座が昇降可能となる。
【0040】
<背凭れ2>
図1、
図2に示すように、背凭れ2は、背アーム部20と、背受部21と、弾性部材支持部24と、背凭れカバー25と、を有する。背凭れ2は、着座者の背中を支持する部位であり、座1に対して傾動可能である。背アーム部20、背受部21、弾性部材支持部24、及び背凭れカバー25を構成する材料としては、公知の樹脂材料や金属材料が用いられる。
【0041】
<背アーム部20>
図1、
図5参照し、背アーム部20は、支持構造体3に支持されている。
背アーム部20は、側面視で略L字形状に形成されている。背アーム部20は、縦アーム20Aと、横アーム20Bと、を有する。縦アーム20Aは、上下方向に延びる。横アーム20Bは、前後方向に延びる。横アーム20Bは、座1のアウターシェル4の下方に配置され、アウターシェル4に下方から対向する座下腕部の一例である。縦アーム20Aは、横アーム20Bと一体となるように同一部材で形成されてもよいし、横アーム20Bとは別体の部材として横アーム20Bに対して分離可能であってもよい。図中符号20Gは縦アーム20Aおよび横アーム20Bの間の屈曲部を示す。
【0042】
縦アーム20Aは、上端部に背受部21を支持している。
図3を併せて参照し、横アーム20Bは、アーム開口部20Cと、左右一対のアーム本体20Fと、補強アーム20Dと、を有する。アーム開口部20Cは、縦アーム20Aの後面(背面)に取り付けた弾性部材23の前部を挿通する開口部である。左右アーム本体20Fは、アーム開口部20Cを介して左右方向に離間している。左右アーム本体20Fは、椅子100の左右中央を通る中心面に関して左右対称の構成を有している。補強アーム20Dは、左右アーム本体20Fの前後中間部の間に配置されて左右方向に延びている。補強アーム20Dは、左右アーム本体20F同士を連結するクロスメンバであり、横アーム20Bひいては背アーム部20の強度剛性を高めている。
【0043】
<アーム本体20F>
図2、
図3に示すように、アーム本体20Fは、前端部を左右方向に貫通する第一軸支持孔26を有している。第一軸支持孔26には、左右方向に沿う第三軸部73が挿通される。第三軸部73は、支基60によって静的に支持されている。アーム本体20Fの前端部は、第三軸部73を介して支基60に取り付けられ、第三軸部73を中心に揺動(傾動)可能である。
【0044】
アーム本体20Fは、左右方向内側部においてアーム長さ方向に延びるアーム溝27を有している。アーム溝27は、前後方向では第一軸支持孔26と補強アーム20Dとの間に配置される。アーム溝27は、アーム本体20Fの左右内側面から左右方向外側に凹む溝であり、溝内空間を左右方向内側(左右中央側)に開放している。アーム溝27は、前部が上方へ屈曲し、腕上面20Hで溝内空間を上方に開放させている。この開放端からアーム溝27内へ、後述するアーム係合部51Jを挿入して係合可能である。
【0045】
<背受部21>
図2、
図5を参照し、背受部21は、縦アーム20Aの上端部に支持され、座1の上後方に配置されている。例えば、背受部21は、背アーム部20と別体をなし、縦アーム20Aの上端部にボルトナット等の着脱可能な締結具で固定される背受支持部21Aと、背受支持部21Aの前面側を覆う背中受面構成部21Bと、を有している。背受部21は、背アーム部20と一体的に揺動(傾動)可能である。例えば、背中受面構成部21Bは、背受支持部21Aの前面側を覆う張材21Mによって形成されている。張材21Mの材料は、例えば、メッシュ等の布である。
なお、背受支持部21Aは、背アーム部20に一体形成された構成でもよい。背中受面構成部21Bには、布材に被覆された公知のクッション部材を取り付けてもよい。背中受面構成部21Bは、布材で被覆されてもよい。
【0046】
<弾性部材支持部24>
図2を参照し、弾性部材支持部24は、背受支持部21Aの背面(後面)に弾性部材23の縦バネ部23Aを固定する部材である。弾性部材支持部24は、不図示のボルト等の締結部材を用いて、縦バネ部23Aを背受支持部21Aの背面に締結する。
【0047】
<背凭れカバー25>
図2を参照し、背凭れカバー25は、弾性部材支持部24及び縦バネ部23Aを覆うように縦アーム20Aに固定される。これにより、弾性部材支持部24及び縦バネ部23Aは、椅子100の外側に露出しない。背凭れカバー25を縦アーム20Aに締結することで、椅子100のデザイン性が向上する。
【0048】
<弾性部材23>
図2を参照し、弾性部材23の前部は、座受部材40を介して、座1のアウターシェル4に支持されている。弾性部材23は、例えば、公知の板バネであり、合成樹脂または金属により形成される帯板状の部材である。弾性部材23は、幅方向を左右方向に向けて配置され、側面視で略L字形状に湾曲している。弾性部材23は、背受部21に固定される縦バネ部23Aと、座受部材40に固定される横バネ部23Bとを有する。なお、弾性部材23を構成するバネ構造としては、板バネに限定されない。板バネ以外の公知のバネを弾性部材23に適用してもよい。
【0049】
上述した構成を有する弾性部材23は、背凭れ2の傾動によって上下方向および前後方向に弾性変形する。弾性部材23は、弾性変形に起因する復元力を座1及び背凭れ2に与え、座1及び背凭れ2を前限位置(初期位置)81に戻す部材である。ここで、弾性部材23において生じる弾性変形とは、弾性部材23に加わる力の作用によって、弾性部材23が弾性的に変形することを意味する。この点について、具体的に説明する。
【0050】
以下、着座者が背中で背凭れ2を押していない椅子100の状態を初期状態とすし、着座者が背中で背凭れ2を押している椅子100の状態を傾動状態として説明する。
「弾性部材23が弾性的に変形する」とは、椅子100の状態が初期状態から傾動状態に変化する過程において、弾性部材23が弾性的に変形することを意味する。
【0051】
ここで、椅子100に弾性部材23がアセンブリされた状態において、初期状態でも弾性部材23に予め弾性変形を生じさせて組み付けてもよい。言い換えると、椅子100に弾性部材23がアセンブリされた状態において、初期状態でも弾性部材23が椅子100を構成する部材に対して復元力(初期反力)を付与する設定としてもよい。
【0052】
<支持構造体3>
図1に示すように、支持構造体3は、座1のアウターシェル4及び背凭れ2を支持する。これにより、支持構造体3は、床面FSにおいて椅子100を支持する。本実施形態においては、支持構造体3は、座板下面4Lにおいて座1を支持するが、支持構造体3は、座板下面4L以外の部位において座1を支持してもよい。例えば、支持構造体3は、座1の左右側面において座1を支持してもよい。
【0053】
図1、
図2に示すように、支持構造体3は、脚部30と、座受部材40と、軸支持機構50とを有している。
<脚部30>
脚部30は、床面FS上に設置される。脚部30は、複数のキャスタ31a付きの多岐脚31と、多岐脚31の中央部より起立し昇降機構であるガススプリング32が内蔵された脚柱33と、を有している。脚柱33は、内筒34と、外筒35と、を有している。外筒35は、多岐脚31に回転不能に嵌合して支持されている。内筒34の下部は、上下方向に平行な軸の回りで回転可能である。言い換えると、内筒34の下部は、外筒35内に挿入され、外筒35に対して相対回転可能に支持されている。内筒34の上部は、軸支持機構50を構成する支基60に固定されている。
【0054】
ガススプリング32としては、公知のガススプリングが用いられる。ガススプリング32は、例えば、シリンダと、ピストンと、ロック機構と、を有する(何れも不図示)。シリンダ内には、圧縮ガスが充填されている。ピストンは、シリンダ内で上下方向に移動可能である。ロック機構は、上下方向におけるピストンの位置を固定するとともに、ピストンの位置の固定状態を解除可能である。ロック機構は、ガススプリング32の上端から突出するロック解除突起部32Dを有する。ロック解除突起部32Dは、ロック解除作動部に係合しており、着座者による操作部の操作によってガススプリング32のロックを解除可能である。
【0055】
<座受部材40>
図2、
図4、
図5に示すように、座受部材40は、座板下面4Lにおいて支持機構収容部6に収容されている。座受部材40は、下端部を除く大部分を支持機構収容部6の内部に収容可能である。左右方向から見て、座受部材40は、アウターシェル4に重なって外観され難い。
【0056】
座受部材40は、第一座受部材41と第二座受部材42とによって構成されている。
第一座受部材41及び第二座受部材42の各々は、金属板で構成されている。例えば、第一座受部材41及び第二座受部材42の各々は、公知の板金加工によって形成されている。座受部材40を形成する材料の種類および厚さ等は、座1に着座した着座者を支持するための十分な強度を有していれば、特に限定されない。
【0057】
<第一座受部材41>
図4、
図9、
図11を参照し、第一座受部材41は、前後方向および左右方向に延びる平面視矩形状の第一平板部41Aと、第一平板部41Aの左右側縁から下方に屈曲して延びる左右一対の第一側板部41Bと、を有する。左右の第一側板部41Bには、それぞれ第一前孔41Gと第一後孔41Hとが形成されている。
【0058】
第一平板部41Aは、例えばボルトナット等の着脱可能な締結具を用いて、支持機構収容部6の底面6Aに締結され、アウターシェル4に固定される。
左右の第一側板部41Bは互いに離間し、これら左右の第一側板部41Bの間に第二座受部材42が配置される。
【0059】
<第二座受部材42>
図4、
図9、
図11を参照し、第二座受部材42は、前後方向および左右方向に延びる平面視矩形状の第二平板部42Aと、第二平板部42Aの左右側縁から上方に屈曲して延びる左右一対の第二側板部42Bと、を有する。左右の第二側板部42Bには、それぞれ第二前孔42Gと第二後孔42Hとが形成されている。
第二前孔42Gおよび第二後孔42Hは、第一座受部材41および第二座受部材42を一体に組み付けた状態で、第一前孔41Gおよび第一後孔41Hとそれぞれ側面視で重なる。第一前孔41Gおよび第二前孔42Gには第一軸部71が挿通され、第一後孔41Hおよび第二後孔42Hには第二軸部72が挿通される。
左右の第二側板部42Bは互いに離間し、これら左右の第二側板部42Bの間に弾性部材23の横バネ部23Bが配置される。
【0060】
座受部材40は、第一平板部41Aと第二平板部42Aとを上下方向で対向させるように、第一座受部材41と第二座受部材42とを組み合わされることによって構成されている。この構造では、左右の第二側板部42Bの先端が第一平板部41Aに接触することで、第一座受部材41と第二座受部材42との間の上下方向の相対位置が規定される。第一座受部材41および第二座受部材42の間には、弾性部材23の横バネ部23Bが挿入される。横バネ部23Bは、例えば第二平板部42Aにボルトナット等の着脱可能な締結具を用いて固定される。
【0061】
<軸支持機構50>
図2、
図4、
図9に示すように、軸支持機構50は、支持コネクタ51と、支持リンク55と、支基60と、支基カバー65と、第一軸部71と、第二軸部72と、第三軸部73と、第四軸部74と、回動規制ピン75と、を有する。支持コネクタ51及び支持リンク55の各々は、金属板で構成されている。例えば、支持コネクタ51及び支持リンク55の各々は、公知の板金加工によって形成されている。支持コネクタ51及び支持リンク55を形成する材料の種類および厚さ等は、座1に着座した着座者を支持するための十分な強度を有していれば、特に限定されない。
【0062】
ここで、
図9を参照し、座受部材40と、支持リンク55と、支基60と、支持コネクタ51とは、第一~第四軸部71~74で連結された四節リンク機構56を構成している。第一軸部71と第三軸部73との間は、見かけ上はリンクが存在しないが、側面視V字状の支持コネクタ51によって連結されている。
【0063】
<支持コネクタ51>
図4、
図9、
図11を参照し、支持コネクタ51は、コネクタ接続板部51Aと、左右一対のコネクタ側板部51Bと、を有する。
コネクタ接続板部51Aは、支持コネクタ51の後端部において左右方向に延び、左右のコネクタ側板部51Bの後端部同士を連結する。
コネクタ側板部51Bは、上板部51Dと、下板部51Eと、後部接続板部51Fと、を有する。
【0064】
上板部51Dの前端部には、第一軸部71を挿通するコネクタ上孔51Gが形成されている。上板部51Dは、第一軸部71に回動可能に支持される部位である。
下板部51Eの前端部には、第三軸部73を挿通するコネクタ下孔51Hが形成されている。下板部51Eは、第三軸部73に回動可能に支持される部位である。
後部接続板部51Fは、上板部51Dおよび下板部51Eの後部間を接続する。これにより、コネクタ側板部51Bは、側面視で前方に向けて開放する略V字形状に形成されている。
【0065】
下板部51Eの後部(第三軸部73から後方に離間した部位)には、左右方向外側に向けて突出するアーム係合部51Jが固定されている。アーム係合部51Jは、左右方向に沿う円柱状の軸である。アーム係合部51Jは、支持コネクタ51をアーム本体20Fに連結する際に、アーム本体20Fのアーム溝27に係合し、アーム本体20Fと支持コネクタ51との第三軸部73回りの相対回動を規制する。
【0066】
下板部51Eには、上下方向に長い長円形状の長孔51Kが形成されている。長孔51Kは、前後方向において、アーム係合部51Jとコネクタ下孔51Hとの間に位置する。長孔51Kは、側面視でコネクタ下孔51Hを中心とした円弧状に延びている。長孔51Kには、回動規制ピン75が挿入される。
支持コネクタ51は、第一軸部71及び第三軸部73の各々に回動可能に連結されている。支持コネクタ51は、支持構造体3に対して、第三軸部73を中心に背アーム部20と一体的に回動可能である。支持コネクタ51の第三軸部73中心の回動範囲は、長孔51Kおよび回動規制ピン75の組み合わせにより制限されている。
【0067】
支持コネクタ51において、上板部51Dと下板部51Eとの間には、前方に向けて開放する切欠部51Xが形成されている。
左右のコネクタ側板部51Bの間には、第一座受部材41、第二座受部材42、支持リンク55、及び支基60が配置されている。
【0068】
<支持リンク55>
図4、
図9に示すように、軸支持機構50は、左右一対の支持リンク55を有している。
支持リンク55は、左右方向に厚さ方向を向けた板状をなし、上下方向に延びている。支持リンク55の上端部には、リンク上孔55Uが形成され、支持リンク55の下端部には、リンク下孔55Lが形成されている。リンク上孔55Uは、第二軸部72に対して回動可能に支持される。リンク下孔55Lは、第四軸部74に対して回動可能に支持される。
【0069】
<支基60>
図4、
図9に示すように、支基60は、概略直方体形状の中空状をなし、脚部30の上部に設置される。支基60は、脚部30の上部に設置された状態で、第三軸部73及び第四軸部74を支持する。
支基60の下面には、脚部30の内筒34の上端部が接続されている。支基60の内部には、ガススプリング32のロック解除突起部32Dと、ロック解除作動部の少なくとも一部と、が配置される。支基60の上面は上方に開口し、この開口を覆うように支基カバー65が取り付けられる。
【0070】
支基60の左右一対の側部63には、支基前孔63Bと、支基後孔63Cと、支基中央孔63Dと、が形成されている。支基後孔63Cは、リンク下支持部63Aに形成されている。リンク下支持部63Aは、側部63の外側面に対して左右方向内側に凹んだ部位である。リンク下支持部63Aは、側面視で上方に向けて広がるように形成されて支基60の上面に開放し、支持リンク55の下部を揺動可能に収容する。
【0071】
前後方向において、支基中央孔63Dは、支基前孔63Bと支基後孔63Cとの間に位置する。支基前孔63Bは、第三軸部73を支持する部位である。支基後孔63Cは、第四軸部74を支持する部位である。支基中央孔63Dは、回動規制ピン75を支持する部位である。
【0072】
<支基カバー65>
図4、
図9に示すように、支基カバー65は、支基60の上面に沿う概略板状をなしている。支基カバー65の上面には、ロック解除作動部の一部およびワイヤ構造体の端部を支持する機構支持部が設けられている。
【0073】
<第一軸部71、第二軸部72、第三軸部73、第四軸部74、及び回動規制ピン75>
図4、
図9に示すように、第一軸部71、第二軸部72、第三軸部73、及び第四軸部74、回動規制ピン75の各々は、左右方向に延びる軸である。このような軸部及びピンの各々は、例えば、公知の中実の棒状部材(金属ロッド等)からなる。四つの軸部の各々に対して回動可能に連結される部位には、軸挿通孔が形成されている。四つの軸部の各々を形成する材料の種類および軸径等は、座1に着座した着座者を支持するための十分な強度を有していれば、特に限定されない。
【0074】
本実施形態においては、第一軸部71、第二軸部72、第三軸部73、第四軸部74、及び回動規制ピン75の各々は中実の棒状部材とするが、例えば、中空の棒状部材であってもよい。
第一軸部71、第二軸部72、第三軸部73、第四軸部74、及び回動規制ピン75の各々は、軸支持機構50の左右全福に渡るか左右全福を越える長さを有してもよい。また、
図11に示す第二軸部72のように、互いに同軸かつ左右別体の軸部材に分割されてもよい。
【0075】
次に、軸支持機構50の支持構造の具体的構成及び動作について説明する。
<第一軸部71による支持構造>
図9、
図11を参照し、第一軸部71が延びる左右方向においては、支持コネクタ51の左右の上板部51Dから左右方向内側に向けて、支持コネクタ51の上板部51D、第一座受部材41の第一側板部41B、第二座受部材42の第二側板部42B、が順に並んでいる。第一軸部71は、第一座受部材41の第一前孔41Gと、第二座受部材42の第二前孔42Gと、支持コネクタ51のコネクタ上孔51Gと、を貫通している。第一軸部71は、第一座受部材41および第二座受部材42の前部同士を一体に連結するとともに、座1に固定された座受部材40を支持コネクタ51に対して回動可能に支持している。
【0076】
<第二軸部72による支持構造>
図9、
図11を参照し、第二軸部72が延びる左右方向においては、第一座受部材41の第一側板部41Bから左右方向内側に向けて、第一座受部材41の第一側板部41B、支持リンク55の上部、第二座受部材42の第二側板部42B、が順に並んでいる。第二軸部72は、第一座受部材41の第一後孔41Hと、支持リンク55のリンク上孔55Uと、第二座受部材42の第二後孔42Hと、を貫通している。第二軸部72は、第一座受部材41および第二座受部材42の後部同士を一体に連結するとともに、座1に固定された座受部材40に支持リンク55の上部を回動可能に連結している。第二軸部72は、座1の前後方向の移動に伴い、支持リンク55の上部の揺動軌跡に沿って移動する。
図11の第二軸部72は、互いに同軸かつ左右別体の軸部材に分割されているが、この構成に限らず、
図4の第二軸部72のように、座受部材40の左右全幅に渡る一本の軸部材で構成してもよい。
【0077】
<第三軸部73による支持構造>
図4、
図9、
図11を参照し、第三軸部73が延びる左右方向においては、アーム本体20Fの前端部から左右方向内側に向けて、アーム本体20Fの前端部、支持コネクタ51の下板部51E、支基60の側壁部、が順に並んでいる。第三軸部73は、アーム本体20Fの第一軸支持孔26と、支持コネクタ51のコネクタ下孔51Hと、支基60の支基前孔63Bと、を貫通している。第三軸部73は、支基60に対して、支持コネクタ51及びアーム本体20Fを回動可能に支持している。
【0078】
<第四軸部74による支持構造>
図4、
図9、
図11を参照し、第四軸部74が延びる左右方向においては、支持リンク55から左右方向内側に向けて、支持リンク55の下部、支基60のリンク下支持部63A、が順に並んでいる。第四軸部74は、支持リンク55のリンク下孔55Lと、支基60の支基後孔63Cと、を貫通している。第四軸部74は、支持リンク55を支基60に対して回動可能に支持している。
【0079】
<回動規制ピン75>
図4、
図9、
図11を参照し、回動規制ピン75は、支基60によって静的に支持されている。回動規制ピン75は、支基60の支基中央孔63Dと、支持コネクタ51のコネクタ側板部51Bの長孔51Kと、を貫通している。長孔51Kの形状により、背アーム部20の傾動範囲80が規定されている。
【0080】
図9、
図10を参照し、背アーム部20と一体的に支持コネクタ51が回動すると、長孔51Kに対する回動規制ピン75の位置が変化する。
図9は背凭れ2が初期位置81にあるときの軸支持機構50を示す。このとき、回動規制ピン75は長孔51Kの下端に突き当たり、背受部21が傾動範囲80における前限位置81で停止する。
図10は背凭れ2が最大リクライニング位置83にあるときの軸支持機構50を示す。このとき、回動規制ピン75は長孔51Kの上端に突き当たり、背受部21が傾動範囲80における後限位置(最大リクライニング位置)83で停止する。
このように、長孔51Kによって、背受部21の傾動範囲80が規定されている。
【0081】
<支持コネクタ51と背アーム部20との結合構造>
図9に示すように、アーム本体20Fの前端部と支持コネクタ51の下板部51Eの前端部とは、第三軸部73を介して連結されている。第三軸部73から径方向で離間した位置において、支持コネクタ51のアーム係合部51Jは、アーム本体20Fのアーム溝27(
図3参照)に係合され、支持コネクタ51とアーム本体20Fとの相対回動を規制する。これにより、支持コネクタ51とアーム本体20Fとが一体回動可能に連結される。
【0082】
<第一軸部71、第二軸部72、第三軸部73、及び第四軸部74の距離関係>
図9に示すように、第一軸部71から第三軸部73に向かう方向において、第一軸部71の軸心と第三軸部73の軸心との間の距離を第一距離L1と定義する。
第二軸部72から第四軸部74に向かう方向において、第二軸部72の軸心と第四軸部74の軸心との間の距離を第二距離L2と定義する。ここで、第一距離L1は第二距離L2もよりも大きい。
【0083】
<第一軸部71及び第三軸部73に対する支持リンク55の位置関係>
図9に示すように、支持リンク55は、第一軸部71及び第三軸部73よりも後方に位置する。言い換えると、支持リンク55は、前後方向で第一軸部71と背受部21(
図5参照)との間、又は、第三軸部73と背受部21との間に位置する。
【0084】
<支持構造体3における作用>
上述の態様に係る椅子100においては、着座者が座1に着座した状態で、後方に向けて着座者が背中で背受部21に押すと、背受部21を後方に移動させるように、背アーム部20が第三軸部73を中心に後方へ回動する。また、背アーム部20の回動に伴って、支持コネクタ51も背アーム部20と一体的に第三軸部73を中心に後方へ回動する。この支持コネクタ51の回動に伴って、支持コネクタ51に支持された第一軸部71は、第三軸部73を中心に後方へ回動しながら、座受部材40の前部を後方に移動させる。その結果、座1が後方へ移動する。
【0085】
座1の後方移動に伴って、座受部材40の後部を回動可能に支持する第二軸部72も、後方に移動する。第二軸部72は、支持リンク55によって回動可能に支持されている。支持リンク55は、第四軸部74の回りに回動する。つまり、第二軸部72は、第四軸部74の回りに回動しながら、後方へ移動する。したがって、第一軸部71及び第二軸部72によって支持されている座1は、前部が支持コネクタ51を介して第三軸部73回りに回動し、後部が支持リンク55を介して第四軸部74回りに回動する。
【0086】
すなわち、座1は、第三軸部73回りの回動と第四軸部74回りの回動とが組み合わされた軌跡を描くように(四節リンク機構56で規定される動きを描くように)、後方に移動する。その際、第三軸部73及び第四軸部74を支持する支基60は、前後方向に移動しない。言い換えると、座1、第一軸部71、及び第二軸部72は、支基60に対して後方に移動する。
【0087】
本実施形態に係る椅子100によれば、着座者が背受部21を後方に押した際、背受部21が後方に傾動するとともに、背受部21の傾動に伴って座1を後方に牽引し、支基60に対して座1を後方に移動させることができる。
さらに、支持リンク55は、前後方向において第一軸部71及び第三軸部73よりも後方に位置するので、第一軸部71及び第三軸部73よりも前方に支持リンク55等の機構部品が不要となり、支持構造体3の小型化を図ることができる。したがって、座1の座板下面4Lが露出する空間のうち、座1の座板下面4Lに配置される支持構造体3が占める空間を小さくすることができる。すなわち、座1の下方において、支持構造体3の前方に広い空間を確保することができ、椅子100のデザイン性を向上させることができる。
【0088】
また、座1は、第一軸部71よりも後方に位置する第二軸部72によって回動可能に支持されている。第二軸部72は、背凭れ2には直接的に連結されておらず、支持リンク55によって支持されている。このため、第二軸部72の下方への移動範囲が規制された状態となる。言い換えると、支持リンク55の回動範囲が規制されることで、第二軸部72の下方への移動範囲が規制される。また、支持リンク55の高さも制限されているので、第二軸部72の下方への移動範囲が規制される。
【0089】
このように第二軸部72の移動が規制された状態で、第二軸部72は、後方及び下方に傾動可能なように支持される。このため、座1の後方及び下方への傾動は、背凭れ2の傾動とは異なる動きとすることができる。したがって、支持リンク55の高さと支持リンク55の回動範囲を適宜設定することによって、座1の後方及び下方への傾動量が過大となること抑制することができる。
【0090】
本実施形態に係る椅子100によれば、背受部21が前限位置81にある場合において、支持リンク55が後方に傾いていない状態とする。このため、背受部21が後限位置83に達したとしても、支持リンク55の後方及び下方への移動量を小さくすることができる。
【0091】
本実施形態に係る椅子100によれば、前記第一距離L1は、前記第二距離L2もよりも大きいため、背受部21の傾動量に対して座1の後方及び下方への支持リンク55の傾動量が過大となること抑制することができる。
【0092】
本実施形態に係る椅子100によれば、座1は、座板下面4Lに対して上方に凹んだ支持機構収容部6を有し、第一軸部71及び第二軸部72は、支持機構収容部6の内部に収容されている。このため、前後方向及び左右方向から見て、第一軸部71及び第二軸部72が支持機構収容部6の外部に露出しない。したがって、椅子100の外観の点で、デザイン性を向上させることができる。
【0093】
本実施形態に係る椅子100によれば、座1は、支持機構収容部6が形成された座板下面4Lを有するアウターシェル4を有する。支持構造体3は、支持機構収容部6の内部に収容される座受部材40を有する。座受部材40は、第一軸部71及び第二軸部72を支持するとともに、左右方向から見てアウターシェル4と重なっている。このため、前後方向及び左右方向から見て、第一軸部71及び第二軸部72を支持する座受部材40が支持機構収容部6の外部に露出し難い。したがって、椅子100の外観の点で、デザイン性を向上させることができる。
【0094】
さらに、椅子100を構成する上述した部品をアセンブリする作業において、背凭れ2及び座受部材40を先に相互に組み立てた後、座受部材40をアウターシェル4の支持機構収容部6に収容するといった作業を行うことができる。これにより、アセンブリ作業を簡易に行うことができる。
【0095】
本実施形態に係る椅子100によれば、支持コネクタ51には、前方に開放する切欠部51Xが形成されている。このため、座1の前下方における広い空間を強調し、デザイン性を向上させることができる。また、切欠部51Xは、操作機構のワイヤ構造体等の索状部材の配索スペースとして利用することができる。
【0096】
ワイヤ構造体を用いてガススプリング32の操作を行うことで、従来のようなロッドを用いた操作が不要となる。特に、可撓性を有するワイヤ構造体を用いるため、座板下面4Lに配置される部材のレイアウトにおいて椅子100を構成する必須部材があったとしても、この必須部材を避けるようにワイヤ構造体の配置を自由に設定することができる。つまり、座板下面4Lにおけるレイアウトに関し、操作部の配置自由度を高めることができる。
<座1と背アーム部20との間の隙間S1の遮蔽構造>
【0097】
図5、
図8に示すように、座1の下面側を覆うアウターシェル(座板部材)4は、座板下面4Lを形成している。座板下面4Lは、下方に凸の膨出形状をなす外観面であり、アウターシェル4における下方を向くシェル下面(カバー下面)である。アウターシェル4は、例えば合成樹脂製の成型品であり、上下方向の型割によって、後述する座側壁部13を含んで一体形成されている。アウターシェル4は、座1の下面側を覆うカバー部材であるとともに、上面側に複数のリブ4A(
図12参照)等の補強構造が一体形成され、着座荷重を受けることが可能な強度部材として構成されている。
【0098】
アウターシェル4の後部の下方には、背凭れ2の背アーム部20が前後方向に延びている。背アーム部20は、背受部(背凭れ本体)21から下方へ延びる縦アーム20Aと、縦アーム20Aの下端から前方に向けて屈曲(湾曲)する屈曲部20Gと、屈曲部20Gの前端から前方へ延びる横アーム20Bと、を備えている。縦アーム20Aは、下側ほど後側に位置するように上下方向に対して傾斜して直線状に延びている。縦アーム20Aは、座1の後端部1Aの後方を通過してアウターシェル4と同等の高さに至り、縦アーム20Aの下端から前方に向けて屈曲する屈曲部20Gが形成されている。
【0099】
横アーム20Bは、屈曲部20Gから前方へ、前側ほど下側に位置するように前後方向に対して傾斜して直線状に延びている。横アーム20Bの前端部は、後述する第三軸部73を介して支基60に連結される軸支部とされている。横アーム20Bは、前側に位置するほど上下幅が広がるように、側面視でテーパ状に形成されている。横アーム20Bは、アウターシェル4の後部に下方から対向する背側対向部を構成している。アウターシェル4の後部は、横アーム20Bに上方から対向する座側対向部を構成している。「上方又は下方から対向する」とは、上下方向から見て対象同士が互いに重なることとする。
【0100】
アウターシェル4の後部には、座板下面4Lに対して上方に凹む座側収容凹部11が形成されている。座側収容凹部11は、横アーム20Bとの間の空間を上方に広げることで、後述する背側壁部22の上部を収容可能とする。
図16を参照し、座側収容凹部11の左右幅H1は、横アーム20Bの左右幅H2よりも狭い。座側収容凹部11の左右の内側壁12Aは、横アーム20Bの左右の外側面20Kよりも左右方向内側に位置している。
【0101】
図2,
図8を参照し、アウターシェル4の平面視の中心領域で座受部材40と重なる部位には、概略直方体状の座受部材40を収容可能な支持機構収容部6が形成されている。支持機構収容部6は、座受部材40よりも一回り大きい直方体状の空間を形成している。支持機構収容部6の後方には、座側収容凹部11が連続して形成されている。
【0102】
座側収容凹部11は、外周に稜線部11Bが形成されることで、着座者が手指の触覚によって座側収容凹部11の存在を認識しやすい。着座者が座側収容凹部11の存在を認識することで、座側収容凹部11の内側への手指の差し込みが抑えられる。座側収容凹部11の稜線部11Bの左右側部は、左右方向で横アーム20Bの外側部20Kよりも内側に位置し(
図16参照)、かつ稜線部11Bの左右側部の下方には横アーム20Bが位置しているので、この点でも座側収容凹部11の内側への手指の差し込みが抑えられる。
【0103】
図5~
図7を参照し、アウターシェル4と横アーム20Bとの間の上下方向の間隔は、背凭れ2のリクライニング動作に応じて増減する。すなわち、アウターシェル4と横アーム20Bとの間の上下方向の間隔は、背凭れ2の後方側への傾動により広がり、背凭れ2の前方側への傾動により狭まる。横アーム20Bには、アウターシェル4側(上方)に突出してアウターシェル4と横アーム20Bとの間の上下方向の隙間S1を塞ぐための左右一対の背側壁部22が設けられている。
【0104】
ここで、
図3、
図16を参照し、背アーム部20は、少なくとも横アーム20Bにおいて、略矩形状の断面形状を有して前後方向に延びる左右一対のアーム本体20Fを備えている。すなわち、アーム本体20Fは、本発明における座下腕部の一部である。左右アーム本体20Fは、左右方向で互いに離間している。左右アーム本体20Fは、前後方向の中間部(中央部に限らない)において、左右方向に延びる補強アーム20Dを介して一体に連結されている。
【0105】
図12を併せて参照し、補強アーム20Dは、少なくとも左右側部において略三角形状の断面形状を有して左右方向に延びている。補強アーム20Dの前面20D1は、側面視でアーム本体20Fの長さ方向と交差する平面状に形成されている。前面20D1の前方には、支持コネクタ51のコネクタ接続板部51A、および支基60の後面62が順に配置されている。
【0106】
コネクタ接続板部51Aの上端部には、前方に屈曲して延びるストッパフランジ51A1が形成されている。ストッパフランジ51A1は、背凭れ2が最大リクライニング位置83に達したときに、支基60の後上面62Aに上方から当接し、支持コネクタ51ひいては背凭れ2の回動範囲を規定する。
【0107】
補強アーム20Dの下面20D2は、少なくとも左右側部においてアーム本体20Fの下面20Jと面一の平面状に形成されている。補強アーム20Dの後上面20D3は、少なくとも左右側部において、側面視でアーム本体20Fの長さ方向に対して後下がりに傾斜した平面状に形成されている。
【0108】
補強アーム20Dの下部後側には、後上面20D3よりも後方へアーム本体20Fの下面20Jに沿って延びる板状の後方延出部20D4が形成されている。
補強アーム20Dの上部には、左右方向内側の領域を、アーム本体20Fの腕上面20Hと面一の上端部から下方へ規定深さに掘り下げた中央凹部20D5が形成され、後述する座側壁部13と隙間を確保している。
【0109】
補強アーム20Dの後方には、左右アーム本体20Fが左右方向で離間することで、左右アーム本体20Fの間、すなわち、左右アーム本体20Fの対向する内側面20L同士の間に、後述する座側壁部13を収容可能な背側収容凹部20Mが形成されている。なお、背側収容凹部20Mは、左右アーム本体20Fの上方に突出する左右背側壁部22の間の空間(左右背側壁部22に挟まれた空間、側面視で左右背側壁部22と重なる空間)を含んでもよく、補強アーム20Dの中央凹部20D5と上下方向の少なくとも一部で重なっていてもよい。
【0110】
補強アーム20Dの前方には、ボックス状の支基60が配置されている。支基60は、背凭れ2が後傾する前の初期状態において、側面視で横アーム20Bの上下幅内(上下面20H,20Jの間)に全体が収まるように設けられている。支基60は、背凭れ2が後傾する前の初期状態において、左右アーム本体20Fの前部と一体的な外観を形成している。背アーム部20の横アーム20Bの前部と支基60とは、あたかも一体化された外観をなし、上下厚さを抑えた偏平状の態様をなしている(
図1参照)。
【0111】
図3を参照し、左右アーム本体20Fの左右方向内側の上方には、アウターシェル4側(上方)に突出する左右一対の背側壁部22が突設されている。各背側壁部22は、左右方向を厚さ方向とし、上方への突出端22Aを自由端とした板状に形成されている。各背側壁部22は、左右同側のアーム本体20Fの内側面20Lを上方に延長させるように形成されている。なお、本実施形態において、各背側壁部22は、左右アーム本体20Fに設けられているが、これに限らず、左右アーム本体20Fを含む座下腕部の適所、たとえば、補強アーム20Dに設けられてもよい。
【0112】
図14に示す側面視において、各背側壁部22は、補強アーム20Dの後上面20D3に沿うように前上方に延びる平行四辺形状に形成されている。各背側壁部22の前下傾斜部22Bは、支持コネクタ51における左右同側の上板部51Dの後上傾斜部51D1に後上方から当接している。すなわち、各背側壁部22は、支持コネクタ51の各上板部51Dと左右方向の位置が重なっている(
図11,
図16参照)。各背側壁部22は、左右方向において、座1の外側端1Bよりも内側に配置されている。
【0113】
図8、
図11、
図12、
図16を参照し、座側収容凹部11の左右方向内側、具体的には、稜線部11Bよりも左右方向で内側方の部位には、左右方向と略直交する平板状の座側壁部13が左右一対に設けられている。左右の座側壁部13は、座側収容凹部11の内側において、左右同側の背側壁部22を左右方向内側に避けるように(左右同側の背側壁部22の左右方向内側に隙間を空けて並ぶように)配置されている。各座側壁部13は、各背側壁部22と同様、左右方向を厚さ方向とし、上方への突出端を自由端とした板状に形成されている。各座側壁部13は、各背側壁部22と同様、左右方向において、座1の外側端1Bよりも内側に配置されている。各座側壁部13は、第一座受部材41の第一側板部41Bと左右方向の位置が重なっている。
【0114】
左右の座側壁部13と左右の背側壁部22とが協働することで、規定の前後方向位置における、アウターシェル4および背アーム部20の間の上下方向の隙間S1が、背凭れ2の傾動範囲80の全域で塞がれる。前記「規定の前後方向位置」とは、支持コネクタ51の後方で以下の範囲の位置である。すなわち、背凭れ2が初期位置81にあるときに、前記「上下方向の隙間S1」が、人の手指に相当する距離未満になる範囲の位置である。アウターシェル4の後端寄りの位置は、座板下面4Lが後ろ上がりに湾曲して隙間S1を広げることから、前記「規定の前後方向位置」から外れている。
【0115】
背アーム部20の横アーム20Bには、腕上面20Hに対して下方へ凹む背側収容凹部20Mが形成されている。背側収容凹部20Mは、アウターシェル4との間の空間を下方へ広げることで、左右の座側壁部13の下部を収容可能とする。
左右の座側壁部13と左右の背側壁部22とは、これら左右の壁部13,22よりも左右方向内側(奥側)に手指や物品等が入り込むことを阻止するべく、アウターシェル4と背アーム部20との間の上下方向の隙間S1を塞ぐシャッター部材である。
【0116】
アウターシェル4と背アーム部20との間の上下方向の隙間S1は、背凭れのリクライニング動作に応じて増減する。すなわち、背凭れ2が後方側に傾動して横アーム20Bが下方に傾動すると、横アーム20Bが座から下方に離れることで、アウターシェル4と横アーム20Bとの間の上下方向の隙間S1が広がる(増加する)。背凭れ2が前方側に傾動して横アーム20Bが上方に傾動すると、横アーム20Bがアウターシェル4に下方から近付くことで、アウターシェル4と横アーム20Bとの間の上下方向の隙間S1が狭まる(減少する)。
【0117】
座側壁部13と背側壁部22とは、左右方向から見て、背凭れ2が初期位置81から最大リクライニング位置83に至るまでの間の全域で、互いに重なる重なり代14を有している。したがって、背凭れ2のリクライニング範囲の全域で、座側壁部13および背側壁部22によって、アウターシェル4と横アーム20Bとの間の上下方向の隙間S1の奥側(左右方向内側)が塞がれる。
【0118】
ここで、横アーム20Bの左右方向外側の範囲では、左右のアーム本体20Fとアウターシェル4との間の上下方向の隙間S1が、左右方向外側に開放(露出)している。これにより、アウターシェル4および背アーム部20の個々の外観を分けて形成し、アウターシェル4および背アーム部20の上下方向の厚さを抑えた外観を形成することができる。
【0119】
アーム本体20Fとアウターシェル4との間の上下方向の隙間S1は、アウターシェル4が下方に凸の膨出形状をなすことで、側面視では狭く形成される。しかし、アウターシェル4の左右方向外側では座板下面4Lが上向きに湾曲し、かつアーム本体20Fの腕上面20Hも左右方向外側ほど下向きに傾斜することから、アーム本体20Fとアウターシェル4との間の隙間S1は、側面視で視認される以上に空間が確保され、手指や物品等が挟まれ難くなっている。
【0120】
<作用>
以下、座側壁部13および背側壁部22、ならびに座側収容凹部11および背側収容凹部20Mに係る作用について説明する。
図5、
図12,
図14は、背凭れ2がリクライニング前の初期位置81にある状態を示している。図中符号81Zは背凭れ2の初期位置81に対応した座1の初期位置を示す。
図5、
図12,
図14の状態では、アーム本体20Fとアウターシェル4との間の上下方向の隙間S1が最も狭まる。しかし、前述したように、アウターシェル4の座板下面4Lの湾曲およびアーム本体20Fの腕上面20Hの傾斜により、隙間S1は左右方向外側ほど広がるので、手指や物品等が挟まれ難くなっている。
【0121】
また、アーム本体20Fの内側面20Lの上方に背側壁部22が起立し、アーム本体20Fよりも左右方向内側の隙間S1を塞ぐので、隙間S1の奥側に手指や物品等が入り込むことも阻止される。背側壁部22の上部は、座側収容凹部11内に入り込むので、背側壁部22の突出端22Aが側面視で視認されることもない。座側収容凹部11の左右方向外側の内壁部12Aと背側壁部22との間の左右方向の間隔は、人の手指に相当する距離が確保されているので(
図16参照)、この点でも手指や物品等の挟み込みが阻止される。
図5、
図12、
図14の状態では、座側壁部13は、背側壁部22の左右方向内側に隠され、側面視で視認されない。このとき、座側壁部13の下端部は、背側収容凹部20M内に入り込んでいる。
【0122】
図6は、背凭れ2が最大リクライニング角度の半分程度まで後傾した中間位置82にある状態を示している。図中符号82Zは背凭れ2の中間位置82に対応した座1の中間位置を示す。
図6の状態では、背凭れ2が第三軸部73中心で後方に回動することで、背凭れ2と一体的に回動する支持コネクタ51も同様に第三軸部73中心で後方に回動する。すると、支持コネクタ51に第一軸部71を介して連結された座受部材40が後方へ移動し、第一~第四軸部71~74で連結された四節リンク機構56の動きによって、座受部材40ひいては座1が僅かに後下がりに傾きつつ後方へ移動する。
【0123】
このとき、座1は、背凭れ2とは異なる動きで、かつ横アーム20Bの後下がりの傾動よりも少ない角度で、後下がりに傾動する。このため、リクライニング前の状態に比べて、アーム本体20Fとアウターシェル4との間の上下方向の隙間S1は広がる。しかし、背凭れ2が最大リクライニング角度の半分程度まで後傾した状態では、背側壁部22は上端部が座側収容凹部11に入り込んだ状態にあり、背側壁部22の後方で座側壁部13が姿を見せ始めているものの、実質的に背側壁部22のみでアーム本体20Fとアウターシェル4との間の隙間S1を塞いでいる。
【0124】
図7、
図13、
図15は、背凭れ2が最大リクライニング角度まで後傾した状態を示している。図中符号83Zは背凭れ2の最大リクライニング位置83に対応した座1の後退位置を示す。
図7、
図13、
図15の状態では、四節リンク機構56の動きにより座受部材40ひいては座1の後下がりの傾動角度が増すが、それ以上に横アーム20Bが後下がりに傾動するので、アーム本体20Fとアウターシェル4との間の上下方向の隙間S1はさらに広がる。しかし、この隙間S1も、背側壁部22と座側壁部13との協働によって塞がれる。
【0125】
すなわち、背凭れ2が
図6の状態からさらに後傾すると、やがて背側壁部22の上端部が座側収容凹部11の下方に抜け出す。しかし、背側壁部22の左右方向内側には、座側壁部13が隣接して配置されており、背側壁部22が座側収容凹部11の下方に抜け出しても、座側壁部13が座側収容凹部11の下方に突出して左右背側壁部22の対向する内側面同士の間に入り込んでいる分は、座側壁部13が背側収容凹部20Mに収容されている状態であり、アーム本体20Fとアウターシェル4との間の隙間S1が塞がれる。実施形態では、座側壁部13と背側壁部22とは、リクライニング範囲の全域で、側面視の重なり代14を維持する設定であり、各壁13,22を過剰に高くすることなく、アーム本体20Fとアウターシェル4との間の隙間S1を塞ぐことが可能である。
【0126】
なお、背凭れ2のリクライニングに伴い座1との間隔を増減させる部位に遮蔽部を設ける場合、背凭れ2および座1の間に生じる隙間を全て隠す設定であることが好ましいが、例えば手指が入り込まない程度の隙間は許容する設定であってもよい。
座1および背凭れ2に設ける遮蔽部は、突出端を自由端とした壁部13,22に限らず、座板下面4Lおよび腕上面20Hに設けた凹みの内壁部(座板下面4Lおよび腕上面20Hに連なる内壁部)である構成も含む。
【0127】
以上説明したように、上記実施形態における椅子100は、支持構造体3と、支持構造体3に支持される座1と、支持構造体3に支持され、座1の上方に起立した初期位置81から後方側へ傾動可能であり、初期位置81に向けて付勢される背凭れ2と、を備える椅子100において、座1は、下面側を覆う座板部材(アウターシェル4)を備え、背凭れ2は、アウターシェル4の下方に配置されて支持構造体3に連結され、アウターシェル4に下方から対向する背凭れ支持部(背アーム部20の横アーム20B)を備え、アウターシェル4と横アーム20Bとの間の間隔は、背凭れ2の後方側への傾動により広がり、背凭れ2の前方側への傾動により狭まるものであり、横アーム20Bには、アウターシェル4側に突出し、アウターシェル4および横アーム20Bの間の上下方向の隙間S1を塞ぐ遮蔽部(背側壁部22)が設けられ、アウターシェル4には、座板下面4Lに対して上方に凹み、背側壁部22の少なくとも一部を収容可能とする収容凹部(座側収容凹部11)が形成されている。
【0128】
この構成によれば、椅子100の座1における下面側を覆うアウターシェル4と、背凭れ2における背凭れ本体を支持する横アーム20Bとは、上下方向で互いに対向し、アウターシェル4および横アーム20Bの間の上下方向の間隔は、背凭れ2のリクライニング動作に応じて増減する。この構成において、横アーム20Bには、アウターシェル4および横アーム20Bの間の上下方向の隙間S1を塞ぐ背側壁部22が突設されることで、アウターシェル4および横アーム20Bの間に物体が入り込み難くなり、アウターシェル4および横アーム20Bの間に物体が挟み込まれることを抑制することができる。また、アウターシェル4には、背側壁部22を収容可能な座側収容凹部11を凹設することで、背側壁部22を隠しながらアウターシェル4および横アーム20Bを互いに接近させることができる。これにより、アウターシェル4および横アーム20Bの間の隙間S1を塞ぐ背側壁部22を突設しながら、アウターシェル4および横アーム20Bの上下方向の厚さを抑えることが可能となり、座1および背凭れ2(横アーム20B)のコンパクトなデザインを実現することができる。
【0129】
上記椅子100において、アウターシェル4および横アーム20Bの間の隙間S1を塞ぐ遮蔽部として、アウターシェル4から横アーム20B側に突出する座側壁部13をさらに備え、遮蔽部を収容する収容凹部として、横アーム20Bの腕上面20Hに対して下方に凹む部位を含み、座側壁部13の少なくとも一部を収容可能とする背側収容凹部20Mを備えている。
この構成によれば、アウターシェル4に座側壁部13をさらに突設してアウターシェル4および横アーム20Bの間の隙間S1を塞ぐことで、アウターシェル4および横アーム20Bの間に物体が挟み込まれることをより一層抑制することができる。また、横アーム20Bに背側収容凹部20Mを凹設することで、座側壁部13を隠しながらアウターシェル4および横アーム20Bを互いに接近させることができる。これにより、アウターシェル4および横アーム20Bの間の隙間S1を塞ぐ座側壁部13を突設しながら、アウターシェル4および横アーム20Bの上下方向の厚さを抑えてコンパクトなデザインを実現することができる。
【0130】
上記椅子100において、座側壁部13と背側壁部22とは、左右方向から見て、背凭れ2が初期位置81から最大リクライニング位置83に至るまでの全域で、互いに重なり代14を有している。
この構成によれば、横アーム20Bおよびアウターシェル4に背側壁部22および座側壁部13をそれぞれ突設することで、背側壁部22および座側壁部13が協働してアウターシェル4および横アーム20Bの間の隙間S1を塞ぐことが可能となり、一方の遮蔽部のみで隙間S1を塞ぐ場合と比べて、個々の遮蔽部の小型化を図ることができる。また、背凭れ2のリクライニング動作の全域において、座側壁部13と背側壁部22とが互いに重なり代14を有することで、アウターシェル4および横アーム20Bの間の隙間S1を確実に塞ぐことができる。また、横アーム20Bおよびアウターシェル4に背側収容凹部20Mおよび座側収容凹部11をそれぞれ凹設することで、背側遮蔽部および座側遮蔽部を隠しながらアウターシェル4および横アーム20Bを互いに接近させることができる。これにより、アウターシェル4および横アーム20Bの間の隙間S1を塞ぐ背側遮蔽部および座側遮蔽部を突設しながら、アウターシェル4および横アーム20Bの上下方向の厚さを抑えてコンパクトなデザインを実現することができる。
【0131】
上記椅子100において、横アーム20Bは、左右一対のアーム本体20Fを備え、背側収容凹部20Mは、一対のアーム本体20Fの間に形成されている。
この構成によれば、背側収容凹部20Mが一対のアーム本体20Fの間に形成されることで、横アーム20Bに背側収容凹部20Mを形成することによる横アーム20Bの剛性への影響を抑えることができる。
【0132】
上記椅子100において、座側壁部13および背側壁部22は、左右方向で座1の外側端1Bよりも内側に位置している。
この構成によれば、座側壁部13および背側壁部22が左右方向で座1の外側端1Bよりも内側にあることで、座側壁部13および背側壁部22が外観上目立ちにくくなるため、上下方向に薄い座1を採用したときにも、座側壁部13および背側壁部22が外観体裁を損なうことを抑えることができる。
【0133】
上記椅子100において、座側収容凹部11の左右方向外側には、座板下面4Lの端縁11Cから上方へ屈曲して延びる内壁部12Aが形成され、横アーム20Bは、内壁部12Aよりも左右方向外側に至る左右幅を有している。
この構成によれば、座側収容凹部11の内面を形成する内壁部12Aが、座板下面4Lから段差等を介さず直接上方に落とし込まれるように形成されることで、座側収容凹部11を目立たなくすることができる。また、内壁部12Aの左右外側部が第二の座側遮蔽部として機能し、座側収容凹部11の内壁部12A、背側遮蔽部および座側遮蔽部という三重の遮蔽部によって、アウターシェル4および横アーム20Bの間の隙間S1を確実に塞ぐことができる。また、横アーム20Bが座側収容凹部11よりも広い左右幅を有して座側収容凹部11に下方から対向することで、より確実に座側収容凹部11を目立たなくすることができる。
【0134】
上記椅子100において、座側壁部13および背側壁部22は、左右方向を厚さ方向とし、突出端13A,22Aを自由端とした板状に形成され、座側壁部13は、座側収容凹部11内で背側壁部22と左右方向に並んで配置されている。
この構成によれば、座側壁部13および背側壁部22が左右方向を厚さ方向とした板状に形成されることで、座側壁部13および背側壁部22を座側収容凹部11内に容易に配置することができる。また、座側壁部13および背側壁部22の突出端13A,22Aを自由端とすることで、座側壁部13および背側壁部22の突出量を適宜設定し、アウターシェル4および横アーム20Bの間の隙間S1に物体が挟まれ難くするために最適化された設計にすることができる。
【0135】
上記椅子100において、アウターシェル4は、合成樹脂により形成され、上下方向の型割で形成された成型品であり、座側壁部13を含んで一体形成されている。
この構成によれば、アウターシェル4を上下方向の型割で形成された樹脂成型品とし、座側収容凹部11内で下方に延びる座側壁部13を一体形成することで、座側収容凹部11および座側壁部13を容易かつ効率よく形成することができる。
【0136】
上記椅子100において、横アーム20Bの前端部は、支持構造体3に対して、左右方向に沿う第三軸部73を介して回動可能に枢支され、座1は、支持構造体3に対して、リンク機構56を介して傾動可能に枢支され、背凭れ2の後方側への回動に連動して後下がりに傾動することが好ましい。
この構成によれば、背凭れ2が後方側に傾動したときに座1が連動して後下がりに傾動することで、横アーム20Bとアウターシェル4との間の間隔の広がりが少なくなる。このため、隙間S1を塞ぐ遮蔽部の高さおよび遮蔽部を収容する収容凹部の深さを抑えることができ、座1および背凭れ2(横アーム20B)のコンパクトなデザインに寄与することができる。
【0137】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきものではない。追加、省略、置換、及びその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
実施形態では、背凭れ2は揺動軸を介して支持構造体3に支持され、揺動軸を中心に傾動するが、これに限らず、リンク機構を介して傾動する構成でもよい。座1は背凭れ2と連動可能に支持されているが、これに限らず、座1が背凭れ2と連動しない構成であってもよい。座側壁部13および背側壁部22、ならびに座側収容凹部11および背側収容凹部20Mを全て備える構成に限らず、座側壁部13および背側収容凹部20Mの組み合わせのみ、または背側壁部22および座側収容凹部11の組み合わせのみ、を備える構成でもよい。
また、座側壁部13は、座側収容凹部11内で左右方向に離間して一対のみ設けられているが、座側収容凹部11への手指の侵入をより確実に防止できるように、左右方向での設置数をさらに増やすことも可能である。
【符号の説明】
【0138】
1 座
1B 外側端
2 背凭れ
3 支持構造体
4 アウターシェル(座板部材)
4L 座板下面(本体対向面)
11 座側収容凹部(収容凹部)
11C 端縁
12A 内壁部
13 座側壁部(遮蔽部、座側遮蔽部)
13A 突出端
20 背アーム部(背凭れ支持部)
20B 横アーム(座下腕部)
20F アーム本体(腕本体)
20H 腕上面(本体対向面)
20M 背側収容凹部(収容凹部)
22 背側壁部(遮蔽部、背側遮蔽部)
22A 突出端
56 リンク機構(連動機構)
73 第三軸部(枢軸)
80 傾動範囲
81 初期位置
82 中間位置
83 最大リクライニング位置
100 椅子
S1 上下方向の隙間
H2 左右幅