(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156570
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
F16K31/06 305R
F16K31/06 305J
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071154
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 大輔
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106DA07
3H106DA23
3H106DA35
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC02
3H106DC17
3H106DD03
3H106EE22
3H106EE25
3H106FB07
3H106GA15
3H106GB09
3H106GC01
(57)【要約】
【課題】ソレノイドに電流を流し続けることなく開弁状態を維持可能とし、かつ弁体の位置を確実に検知可能な電磁弁を提供する。
【解決手段】電磁弁は、流入口と流出口との間に主弁座、及び主弁室が設けられた弁本体と、磁力を発生させせるソレノイドと、ソレノイドの磁力によって移動する吸引子と、吸引子の移動に伴って移動し、主弁座と接離可能となるように設けられた主弁体と、主弁座に弁本体が接触した閉弁状態からソレノイドへの通電をオンオフすることで主弁座から弁本体が離隔した開弁状態を維持し、開弁状態からソレノイドへの通電をオンオフすることで閉弁状態を維持するオルタネイト機構と、吸引子に連結された磁石と、弁本体に設けられ、磁石の磁束密度を検出する磁気センサと、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入口及び流出口が形成され、前記流入口と前記流出口との間に主弁座、及び主弁室が設けられた弁本体と、
磁力を発生させせるソレノイドと、
前記ソレノイドの磁力によって移動する吸引子と、
前記吸引子の移動に伴って移動し、前記主弁座と接離可能となるように設けられた主弁体と、
前記主弁座に前記弁本体が接触した閉弁状態から前記ソレノイドへの通電をオンオフすることで前記主弁座から前記弁本体が離隔した開弁状態を維持し、開弁状態から前記ソレノイドへの通電をオンオフすることで閉弁状態を維持するオルタネイト機構と、
前記吸引子に連結された磁石と、
前記弁本体に設けられ、前記磁石の磁束密度を検出する磁気センサと、
を有する電磁弁。
【請求項2】
前記主弁体は、パイロット弁座と、前記主弁体の主弁座側とは反対側の前記主弁室と前記流出口とを連通するパイロット通路と、を備え、
前記吸引子と前記主弁体との間に前記吸引子に吸引可能とされた磁性体製のプランジャが移動可能に配置され、
前記プランジャには、前記パイロット弁座に接触可能とされたパイロット弁体が設けられている、
請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記吸引子の主弁座側に、前記吸引子に吸引可能な磁性体製のプランジャが設けられ、
前記プランジャに前記主弁体が設けられている、
請求項1に記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の電磁弁が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常の電磁弁では、開弁などの作動状態を維持するために、ソレノイドに電流を流し続ける必要があり、エネルギー消費の点で改善の余地がある。
また、電磁弁では、弁体の位置を確実に検知できることが望まれている。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、ソレノイドに電流を流し続けることなく開弁状態を維持可能とし、かつ弁体の位置を確実に検知可能な電磁弁の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る電磁弁は、流体の流入口及び流出口が形成され、前記流入口と前記流出口との間に主弁座、及び主弁室が設けられた弁本体と、磁力を発生させせるソレノイドと、前記ソレノイドの磁力によって移動する吸引子と、前記吸引子の移動に伴って移動し、前記主弁座と接離可能となるように設けられた主弁体と、前記主弁座に前記弁本体が接触した閉弁状態から前記ソレノイドへの通電をオンオフすることで前記主弁座から前記弁本体が離隔した開弁状態を維持し、開弁状態から前記ソレノイドへの通電をオンオフすることで閉弁状態を維持するオルタネイト機構と、前記吸引子に連結された磁石と、前記弁本体に設けられ、前記磁石の磁束密度を検出する磁気センサと、を有する。
【0007】
第1の態様に係る電磁弁では、ソレノイドの磁力によって吸引子を移動させ、吸引子の移動によって主弁体を主弁座から離隔させることができる。主弁体が主弁座から離隔することで電磁弁が開弁状態となる。
【0008】
オルタネイト機構は、主弁座に主弁体が接触した閉弁状態からソレノイドへの通電をオンオフすることで主弁座から主弁体が離隔した開弁状態とし、開弁状態を維持することができ、また、開弁状態からソレノイドへの通電をオンオフすることで電磁弁を閉弁状態とし、開弁状態を維持することができる。したがって、ソレノイドへ通電をし続けなくても、開弁状態、及び閉弁状態を維持することができる。
【0009】
また、吸引子には磁石が連結されているので、吸引子が移動すると、磁石と磁気センサとの距離が変化し、弁本体に設けられた磁気センサで磁石の磁束密度の変化を検出することができる。磁気センサで磁石の磁束密度の変化を検出することで、吸引子の移動に伴って移動する主弁体の位置、即ち、電磁弁の閉弁状態、及び開弁状態を検出することができる。
【0010】
第2の態様に係る電磁弁は、第1の態様に係る電磁弁において、前記主弁体は、パイロット弁座と、前記主弁体の主弁座側とは反対側の前記主弁室と前記流出口とを連通するパイロット通路と、を備え、前記吸引子と前記主弁体との間に前記吸引子に吸引可能とされた磁性体製のプランジャが移動可能に配置され、前記プランジャには、前記パイロット弁座に接触可能とされたパイロット弁体が設けられている。
【0011】
第2の態様に係る電磁弁は、主弁体が、パイロット弁座とパイロット通路とを備えており、吸引子と主弁体との間に吸引子に吸引可能とされた磁性体製のプランジャが移動可能に配置されている。また、プランジャには、パイロット弁座に接触可能とされたパイロット弁体が設けられている。即ち、第2の態様に係る電磁弁は、いわゆるパイロット式電磁弁の構成を有している。
【0012】
閉弁状態の電磁弁を開弁状態にするには、ソレノイドへの通電をオンオフする。ソレノイドへの通電をオンすると、吸引子が磁化してプランジャを吸引し、パイロット弁体がパイロット弁座から離隔する。パイロット弁体がパイロット弁座から離隔すると、主弁体の主弁座側とは反対側の主弁室と流出口とがパイロット通路で連通し、主弁体の主弁座側とは反対側の主弁室の圧力が流出口に逃げ、主弁体の主弁座側である流入口側の圧力が、主弁体の主弁座側とは反対側の圧力よりも相対的に高い状態となる。主弁体の上下で生ずる圧力差、即ち上下差圧により、主弁体に主弁座から離れる方向(上方向)の力が働き、主弁体が主弁座から離隔し、電磁弁は開弁状態となる。そして、ソレノイドへの通電をオフにすることで、オルタネイト機構により開弁状態が維持される。
【0013】
開弁状態の電磁弁を閉弁状態にするには、ソレノイドへの通電をオンオフする。これにより、吸引子はプランジャを吸引しなくなり、パイロット弁体をパイロット弁座に接触ささせてパイロット通路を閉止させることができる。パイロット通路が閉止されると、主弁体に対して上下差圧が生じなくなり、主弁体を主弁座に接触させて電磁弁を閉弁状態とすることができ、オルタネイト機構により閉弁状態が維持される。
【0014】
第3の態様に係る電磁弁は、第1の態様に係る電磁弁において、前記吸引子の主弁座側に、前記吸引子に吸引可能な磁性体製のプランジャが設けられ、前記プランジャに前記主弁体が設けられている。
【0015】
第3の態様に係る電磁弁では、ソレノイドへの通電をオンし、ソレノイドから磁力を発生させると吸引子がプランジャに吸引され、プランジャに設けられた主弁体を主弁座から離隔させることができ、電磁弁を開弁状態とすることができる。そして、ソレノイドへの通電をオフすることで、オルタネイト機構により開弁状態が維持される。
【0016】
開弁状態の電磁弁を閉弁状態にするには、ソレノイドへの通電をオンオフする。これにより、主弁体を設けたプランジャが吸引子に吸引されなくなり、電磁弁を閉弁状態とし、オルタネイト機構により閉弁状態を維持することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本開示の電磁弁によれば、ソレノイドに電流を流し続けることなく開弁状態を維持可能とし、かつ弁体の位置を確実に検知可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施形態に係るパイロット式電磁弁を示す断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係るパイロット式電磁弁の要部を示す分解斜視図である。
【
図3】第1の実施形態に係るパイロット式電磁弁の吸引子、及びノック棒を示す斜視図である。
【
図4】(A)、(B)はノック棒の第1歯と回転子の第2歯との噛み合わせを示す第1歯と第2歯の展開図である。
【
図5】(A)、(B)は、回転子の突起と外カムとの位置関係を示す突起と外カムの展開図である。
【
図6】(A)~(E)は、第1の実施形態に係るパイロット式電磁弁の動作を示す説明図である。
【
図7】回転子の突起と外カムとの位置関係を示す突起と外カムの展開図である。
【
図8】第2の実施形態に係る直動式電磁弁を示す断面図である。
【
図9】(A)~(E)は、第2の実施形態に係る直動式電磁弁の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施形態]
図1~
図7を用いて、本開示の電磁弁の一例としての第1の実施形態に係るパイロット式電磁弁10について説明する。
【0020】
図1には、閉弁状態(後述する主弁部14、及びパイロット弁部16がともに閉弁状態)とされた本実施形態のパイロット式電磁弁10が断面図にて示されている。本実施形態のパイロット式電磁弁10は、弁本体12内に主弁部14及びパイロット弁部16を備えた、例えば、自動車用空調機の冷凍サイクル等に用いることのできるパイロット式の電磁弁であり、主弁部14の開閉により、流体の流入口18と流出口20との間の流体の流れを開閉制御することができる。
【0021】
流入口18と流出口20はバルブボディとしての弁本体12に形成されている。この弁本体12には、流入口18と流出口20との間に収容室21が設けられている。
【0022】
収容室21の内部には、後述する主弁体24が上下に摺動可能に収容されており、主弁体24が収容室21の内部を主弁室22とパイロット弁室55とに仕切っている。そして、主弁体24の摺動方向の一方側(図面下方側)に主弁部14が構成され、他方側(図面上方側)にパイロット弁部16が配置されている。なお、主弁室22は、側部において流入口18と連通している。
【0023】
図1、及び
図2に示すように、パイロット式電磁弁10の上部中央には、磁性体からなる吸引子26、及びプランジャ28が、下方が開放し、上方が閉止された収容体としてのパイプ30の内部に摺動可能に配置されている。吸引子26は、プランジャ28の上側に配置されている。
【0024】
パイプ30の下端側には、環状のナット32が一体的に固定されている。ナット32の外周には雄螺子が形成されており、ナット32は、弁本体12の上面中央に形成された大径凹部34の雌螺子に螺合して弁本体12に固定されている。
【0025】
弁本体12には、大径凹部34の底部中央に、大径凹部34よりも小径とされた凹状の主弁室22が形成されている。
【0026】
弁本体12には、主弁室22の外周側であって、大径凹部34の底部に環状凹部36が形成されている。環状凹部36にはOリング38が嵌め込まれており、Oリング38にナット32の下面が密着して、ナット32と弁本体12との間の隙間をシールしている。
【0027】
パイプ30の外周側には、円筒状のソレノイド40が配置されている。ソレノイド40は、コイル40Aが巻回されたボビン40Bの周囲を磁性材より形成されたヨーク40C(ハウジングともいう)で囲繞することにより構成されている。
【0028】
また、ボビン40Bの内周上部とパイプ30の上端部分との間には、磁極40Dが配置されている。磁極40Dは円筒状に形成され、ボビン40Bの内周上部とパイプ30の上端部分との間に、パイプ30の軸方向に沿って延びるように配置されている。磁極40Dは、吸引子26よりも上側に配置されており、ヨーク40Cの上部と当接している。
【0029】
パイプ30の上部に磁極40Dを設けることで磁束が流れる断面積を大きくとることができ、ソレノイド40に通電した際の磁束を大きくできる。特に、吸引子26の上方位置(通電オン時)と下方位置(通電オフ時)のいずれでも、吸引子26上部と磁極40Dが軸方向で重なる部分があるように吸引子26と磁極40Dを配置することで、吸引子26が下方位置にあるときに軸方向において吸引子26上部とヨーク40Cとの間の磁束を大きくできる。
【0030】
すなわち、ソレノイド40に通電した際に、吸引子26とプランジャ28に生じる磁束を大きくできる。そのため、吸引子26とプランジャ28との吸引力が大きくなり、流入口18と流出口20との差圧(正確には、パイロット通路24Bとパイロット弁室55との差圧)がより大きな場合でも、パイロット通路24Bを開弁できる。
【0031】
吸引子26は、円柱状に形成されている。吸引子26の軸心には、軸方向に貫通する貫通孔26Aが形成されている。吸引子26の上部には、貫通孔26Aと連通し、貫通孔26Aよりも大径に形成された肉抜きのための凹部26Bが形成されている。
【0032】
吸引子26の下部には、貫通孔26Aと連通し、貫通孔26Aよりも大径に形成された凹部26Cが形成されている。
図1、及び
図3に示すように、凹部26Cの下部には、後述するノック棒102の周り止め突起102Aが挿入される一対の溝26Caが形成されている。
【0033】
以上の構成により、ソレノイド40に通電した際に、吸引子26とプランジャ28がいずれも磁化され、吸引子26とプランジャ28が吸着される。このとき、連結部材60で連結された主弁体24の主弁パッキン56が主弁座58に接触しているので、ソレノイド40の通電によって吸引子26が磁化されても吸引子26は下方向に動かない。つまり、プランジャ28が上方に移動し、プランジャ28に設けられた回転子110(後述する)の弁体部54が主弁体24のパイロット弁座24Aから離隔してパイロット通路24Bを開弁する。
【0034】
吸引子26にプランジャ28が吸着されて一体の磁性体(連結対)になると、プランジャ28と吸引子26の連結対には上向きの力(吸引力F1、第1の力。
図6(B)参照。)が作用する。
また、吸引子26にプランジャ28が吸着されたことでパイロット弁室55と流出口20とがパイロット通路24Bで連通すると、パイロット弁室55の圧力がパイロット通路24Bを介して流出口20へ似て、主弁体24の主弁室側の圧力がパイロット弁室側の圧力よりも相対的に高い状態となり、主弁体24には、主弁座58から離れる方向(上方向)の力(第2の力、上向きの力F2。
図6(B)参照。)が作用する。結果として、主弁体24が上方向に移動して主弁座58(主弁口)を開弁する。
【0035】
図1、及び
図2に示すように、吸引子26は、上部に円板42を備えている。円板42は、パイプ30上端の蓋部分から離隔している。円板42とパイプ30の蓋部分との間には第1スプリング44が配置されている。第1スプリング44は、円板42を介して吸引子26を常時下方に付勢している。円板42の上面中央には、第1スプリング44の位置決め兼、吸引子26の位置検出を行うための円柱状の磁石からなるボス46が取り付けられており、第1スプリング44の下端部分にボス46が挿入されている。また、円板42には、吸引子26の凹部26Bと円板42の上側の空間とを連通させる孔48が形成されている。本実施形態では、ボス46の磁石として、永久磁石が用いられている。
【0036】
吸引子26の凹部26Cには、ノック棒102が挿入されており、該ノック棒102は、凹部26Cの内部を軸方向に沿って移動可能とされている。ノック棒102の軸方向中間部には、径方向外側へ突出する周り止め突起102Aが一対形成されており、この周り止め突起102Aが吸引子26の凹部26Cの溝26Caに挿入されることで、ノック棒102は、回転が阻止されている。即ち、ノック棒102は、凹部26Cの内部で、回転が阻止された状態で、軸方向に移動可能とされている。
【0037】
さらに、吸引子26の凹部26Cには、スプリング104が圧縮された状態で収納されている。スプリング104は、上端が凹部26Cの底部に当接し、下端がノック棒102の周り止め突起102Aに当接している。これにより、スプリング104は、下方に配置された後述する回転子110に向けてノック棒102を付勢している。
【0038】
図1、及び
図3に示すように、ノック棒102の軸心には、軸方向に貫通する貫通孔106が形成されており、筒状に形成されたノック棒102の下端には、周方向に沿って複数(本実施形態では、8個)の同一形状、同一サイズとされた側面視で二等辺三角形状とされた第2歯108が形成されて第2の環状歯列が構成されている。言い換えれば、ノック棒102の下端側がクラウンギア状となっている。
【0039】
図1、及び
図2に示すように、プランジャ28の軸心には、軸方向に貫通する貫通孔50が形成されており、貫通孔50の内部には、回転子110が回転可能かつ、軸方向に移動可能に挿入されている。
【0040】
回転子110の上部には、ノック棒102の貫通孔106に挿入され、貫通孔106の内部で回転可能、かつ軸方向に移動可能なガイド軸部110Aが形成されている。
【0041】
回転子110には、ガイド軸部110Aの下側に、ガイド軸部110Aよりも大径で、貫通孔50の内周面に摺動可能とする大径部110Bが形成されている。大径部110Bは、回転子110の中で最も太い部分である。
【0042】
図2、及び
図4(B)に示すように、回転子110には、大径部110Bの上面に、周方向に沿って複数(本実施形態では、8個)の同一形状、同一サイズとされた側面視で二等辺三角形状の第1歯112が形成されて第1の環状歯列が構成されている。言い換えれば、大径部110Bの上面側がクラウンギア状となっている。
【0043】
第1歯112は、前述した第2歯108と同一サイズ、同一径形状とされており、
図4(A)に示すように、第2歯108(山部)は、第1歯112と第1歯112との間の谷部に嵌合可能とされている。
【0044】
なお、前述したように、スプリング104がノック棒102を回転子110に向けて付勢しているので、ノック棒102の第2歯108の斜面が、回転子110の第1歯112の斜面に押圧されている。
【0045】
図2に示すように、回転子110には、大径部110Bの下側の外周部に、軸方向に沿って延びる複数の突起113が周方向に沿って一定の間隔を開けて形成されている。
図5の展開図で示すように、突起113の下部には、傾斜面113Aが形成されている。
【0046】
図1に示すように、回転子110の下端は、弁体部54とされ、後述する主弁体24のパイロット弁座24Aに接触可能とされている。なお、本実施形態の回転子110は、弁棒としての機能を有している。また、本実施形態の弁体部54は、パイロット弁体として機能する。
【0047】
なお、回転子110には、大径部110Bの下側部分に、円筒状のカラー114が回転自在に外挿されている。
【0048】
プランジャ28に形成された貫通孔50の軸方向中間部には、軸心側へ突出する環状の凸部50Aが形成されている。
前述した吸引子26のスプリング104は、ノック棒102を下方に向けて付勢しているため、ノック棒102で下方に押圧された回転子110は、大径部110Bでカラー114を下方に付勢し、カラー114の下端でプランジャ28の貫通孔50に形成された凸部50Aの上端を押圧している。
したがって、プランジャ28は、スプリング104によって下方に付勢されていることになる。
【0049】
ナット32の内周部の軸方向下側部分には、内周部の軸方向上側部分よりも大径に形成された大径凹部32Aが形成されており、該大径凹部32Aには、環状に形成されたカム部材116が挿入されている。
カム部材116は、ナット32の大径凹部32Aの底部と、弁本体12の大径凹部34に形成されて上方に向けて突出する環状突起34Aとの間に挟持されている。
【0050】
上述したプランジャ28の貫通孔50には、凸部50Aの下側に、スプリング104よりも付勢力が小さいスプリング117が圧縮された状態で収納されている。スプリング117は、上端が凸部50Aに当接し、下端がカム部材116に当接している。これにより、プランジャ28はスプリング117によって上方に向けて付勢力を受けている。
【0051】
なお、プランジャ28は、スプリング104によって下方に付勢され、スプリング117によって上方に向けて付勢されているが、スプリング104の付勢力がスプリング117の付勢力よりも大きいので、結果的に、プランジャ28には、下向きの付勢力が作用することになる。このため、
図1に示す通常時(閉弁時)においては、プランジャ28はカム部材116の上面に押圧され、吸引子26とプランジャ28との間に寸法L1の隙間が形成されている。
【0052】
図1、及び
図2に示すように、カム部材116には、軸線を挟んで一方側と他方側とに連結ピン挿通孔118が形成されており、連結ピン挿通孔118には、後述する連結部材60が移動自在に挿入されている。
【0053】
カム部材116の内周面には、
図2、及び展開図である
図5(A)で示すように、直角三角形状に形成された第1歯120と、直角三角形状に形成され第1歯120よりも小さい第2歯122とを有する複数の係合突起部124が、一定の間隔を開けて周方向に沿って形成されている。係合突起部124と係合突起部124との間には、回転子110の突起113が挿入可能な深溝126が設けられている。
なお、第1歯120の傾斜面120A、及び第2歯122の傾斜面122Aは、共に、回転子110に形成された突起113の傾斜面113Aと同一方向に同一角度で傾斜している。
【0054】
図1に示すように、通常時(閉弁時)、カム部材116と主弁体24との間には、寸法L2の隙間が設けられている。寸法L2は、主弁体24が主弁室22の内部で軸方向に移動可能な寸法である。なお、寸法L2は、前述した吸引子26とプランジャ28との間の寸法L1より大きい。
【0055】
回転子110の下端の弁体部54と、主弁体24の上部に形成されたパイロット弁座24Aとによってパイロット弁部16が構成されている。なお、カム部材116と主弁体24との間がパイロット弁室55とされている。
【0056】
主弁体24には、パイロット弁室55と流出口20とを連通可能とするパイロット通路24Bが軸心部に形成されている。
【0057】
主弁体24の下部には、環状の主弁パッキン56が取り付けられている。この主弁パッキン56と、弁本体12の流入口18と流出口20との間に形成された主弁座58によって主弁部14が構成されている。
【0058】
吸引子26と主弁体24とは、ピン状に形成された2本の連結部材60で連結されており、吸引子26と主弁体24とは一体でパイプ30内を軸方向に沿って移動可能となっている。
図1、及び
図2に示すように、2本の連結部材60は、吸引子26、及び主弁体24の外周側に、軸心部を挟んで両側に配置されている。プランジャ28の外周面には、連結部材60が挿入される溝62が軸方向に沿って形成されている。
【0059】
図1に示すように、磁石で形成されたボス46は、一例として、径方向の一方側がS極、反対側がN極に着磁されている。
【0060】
弁本体12の上部には、ソレノイド40を覆うカバー66が設けられている。
カバー66の内部には、ソレノイド40の上側に間隔を開けて制御基板68が設けられている。
【0061】
制御基板68の下面には、一例として、磁束密度の強弱を検出する磁気センサ70が設けられており、制御基板68の上面にはマイクロコンピュータ72等の電気部品が搭載されている。
【0062】
本実施形態の磁気センサ70はホール素子であるが、ホール素子以外の磁気センサ、一例として、磁気抵抗素子等を用いることもできる。
【0063】
マイクロコンピュータ72は、磁気センサ70で検出した磁束密度の強弱から、円板42、吸引子26、及び連結部材60を介して磁石(ボス46)に連結された主弁体24の位置、即ち、主弁部14の開閉状態を検知することができる。
【0064】
磁石が磁気センサ70に近い位置にある場合には磁束密度が強くなるのでホール出力電圧が高くなり、磁石が磁気センサ70から遠い位置にある場合には磁束密度が弱くなるのでホール出力電圧が低くなるので、ホール出力電圧を計測することで、磁石の近い遠い、即ち、吸引子26の動きを検出できる。吸引子26と主弁体24とが連結部材60で連結されているので吸引子26の動きで主弁体24の動きを判定でき、これにより主弁部14の開閉状態を判定することができる。
【0065】
本実施形態のパイロット式電磁弁10では、ノック棒102、スプリング104、回転子110、カム部材116により、本開示の一例としてのオルタネイト機構(位置を保持する機構)が構成されている。
【0066】
(作用、効果)
以下に、第1の実施形態に係るパイロット式電磁弁10の作用、効果を説明する。
【0067】
まず最初に、通常時(ソレノイド40の非通電時であって、かつ主弁部14、及びパイロット弁部16の閉弁時)におけるパイロット式電磁弁10について説明する。
【0068】
ここでは、図示されない圧縮機からの流体の圧力が、パイロット式電磁弁10の流入口18に作用し、流入口18と流出口20との間に高い差圧(以後、適宜、高差圧と呼ぶ)が生じている場合の作用を説明する。この状態では、主弁体24には、流入口18からの流体の圧力により、下向き(言い換えれば、流出口20側へ)の大きな力が作用している。
【0069】
図1、及び
図6(A)に示すように、通常時(閉弁時)では、吸引子26は第1スプリング44の付勢力によって下方に付勢され、連結部材60で吸引子26に連結された主弁体24の主弁パッキン56が主弁座58に押圧され、主弁部14が閉状態とされている。また、回転子110は、ノック棒102を介してスプリング104の付勢力を受けて下方に付勢され、回転子110の弁体部54が主弁体24のパイロット弁座24Aに押圧され、パイロット弁部16が閉状態とされている。
このようにしてパイロット式電磁弁10は閉弁状態とされ、流体の流入口18と流出口20との間の流体の流れが阻止されている。
【0070】
また、通常時では、
図5(B)、及び
図6(A)に示すように、ノック棒102の突起113が、カム部材116の深溝126に挿入され、また、
図4(B)、及び
図6(A)に示すように、ノック棒102の下端に形成された第2歯108と、回転子110の第1歯112とが、1/4山分(一つの歯を一山とする)だけ、周方向にずれている。言い換えれば、ノック棒102の第2歯108の頂部が、回転子110の第1歯112の斜面の中間部に位置した状態となっている。
【0071】
なお、このノック棒102は、スプリング104で回転子110に向けて付勢されているので、ノック棒102の第2歯108の斜面は、回転子110の第1歯112の斜面を押圧している。
【0072】
(1)開弁操作
次に、パイロット式電磁弁10を閉弁状態から開弁状態にする方法を説明する。
パイロット式電磁弁10を閉弁状態から開弁状態にするには、ソレノイド40に対して、一旦通電(オン)した後、通電を停止する(オフ)。言い換えれば、ソレノイド40に対して一時的に通電を行う。
【0073】
ソレノイド40に通電を行うと、吸引子26、プランジャ28、及び磁極40Dが磁化し、先ず、プランジャ28が
図6(B)に示すように吸引子26に吸着されて上方に寸法L1(
図1参照)移動して吸引子26とプランジャ28とが一体化し、これに伴い回転子110も上方に寸法L1移動する。回転子110が上方に移動することで、回転子110の下端の弁体部54が主弁体24のパイロット弁座24Aから離隔し、パイロット弁部16が開弁状態となる。
【0074】
パイロット弁部16が開弁状態になると、パイロット弁室55の圧力が主弁体24のパイロット通路24Bを介して相対的に低圧とされた流出口20に逃げ、パイロット弁室55の圧力が低下する。これにより、主弁体24の主弁室22側の圧力が、主弁体24のパイロット弁室55側の圧力よりも相対的に高い状態となり、主弁体24の上下で生ずる圧力差、即ち上下差圧により、主弁体24に上向きの力F2が働く。
【0075】
また、プランジャ28と一体化した吸引子26は、磁極40D側に吸引されてプランジャ28と一体化した吸引子26に上向きの力(吸引力F1)が作用する。
【0076】
そのため、ソレノイド40へ通電がなされると、主弁体24には、磁極40Dによる吸引力F1と、主弁体24の上下差圧による上向きの力F2とが作用して
図6(C)に示すように、主弁体24が上方向へ動き、主弁パッキン56が主弁座58から離隔して主弁部14が開弁状態となる。これにより、流入口18から流出口20へ流体が流れるようになる。
【0077】
なお、主弁パッキン56が主弁座58から離隔した状態は、回転子110の突起113が、カム部材116の深溝126から上方に引き抜かれた状態である。
ここで、ノック棒102の下端に形成された第2歯108の斜面が、回転子110に形成された第1歯112の斜面を下向きに押圧しているので、回転子110に周方向の回転力が生じ、第2歯108と第1歯112との関係は、
図4(B)に示す状態から
図4(A)に示す状態、即ち、第2歯108が、第1歯112と第1歯112との間の谷間に嵌合した状態となり、回転子110は、第1歯112の1/4山分だけ周方向に回転することになる。
【0078】
回転子110が、第1歯112の1/4山分だけ周方向に回転すると、
図5(A)、及び
図6(C)に示すように、深溝126から抜け出ている回転子110の突起113が、カム部材116に対して周方向に移動し、突起113の傾斜面113Aの頂部(下端)が、カム部材116に形成された第1歯120の傾斜面120Aの上方に位置する。言い換えると、側面視で、突起113の傾斜面113Aと第1歯120の傾斜面120Aとが周方向にオーバーラップする。
【0079】
そして、ソレノイド40への通電が停止されると、吸引子26、プランジャ28、及び磁極40Dが磁化されない状態となるので、吸引子26、及びプランジャ28には吸引力が作用しなくなり、吸引子26、及びプランジャ28は、第1スプリング44の付勢力を受けて下方へ移動し、これに伴って回転子110も下方へ移動する。
【0080】
回転子110が下方へ移動すると、回転子110に形成された突起113の傾斜面113Aが、カム部材116の係合突起部124に形成された第1歯120の傾斜面120Aに押し付けられて傾斜面120Aを下る方へ摺動する。
【0081】
言い換えれば、突起113の傾斜面113Aが摺動した分だけ回転子110が回転し、
図6(D)に示すように、突起113の下端が第1歯120の傾斜面120Aと第2歯122の垂直面とで形成された谷状浅溝127(
図5参照))に嵌り込み、回転子110の下方向への移動が阻止されるので、主弁体24が主弁座58から離隔した状態で保持される。
【0082】
即ち、ソレノイド40へ通電した後に通電が停止されても、言い換えれば、ソレノイド40に電力を供給し続けなくても主弁部14の開弁状態を維持することができ、電力消費を抑制することができる。
【0083】
なお、突起113の傾斜面113Aが傾斜面120Aを下る方向へ摺動することで回転子110が回転するので、ノック棒102の下端に形成された第2歯108に対して、回転子110に形成された第1歯112が1/4山分周方向にずれ(
図4(A)→
図4(B)、
図6(C)→
図6(D)参照)、この状態が維持される(突起113の下端が第1歯120の傾斜面120Aと第2歯122の垂直面とで形成された谷状浅溝127に嵌合するため。)。
【0084】
(2)閉弁操作
次に、パイロット式電磁弁10を開弁状態から閉弁状態にする方法を説明する。
パイロット式電磁弁10を閉弁状態に戻すには、ソレノイド40に対して、一旦通電(オン)した後、通電を停止(オフ)する。言い換えれば、ソレノイド40に対して一時的に通電を行う。
【0085】
図6(D)に示す状態のパイロット式電磁弁10のソレノイド40に通電を行うと、吸引子26、プランジャ28、及び磁極40Dが磁化され、吸引子26、及びプランジャ28が上方へ移動し、これに伴い、回転子110も上方に移動する。
【0086】
回転子110が上方に移動することで、回転子110の突起113が、カム部材116の深溝126から上方に引き抜かれ、回転子110は回転可能な状態となる。
【0087】
なお、回転可能な状態となった回転子110は、スプリング104で付勢されたノック棒102で押圧されているので、回転子110の第1歯112とノック棒102の第2歯108とが噛み合うように(
図4(A)、
図6(E)参照)、回転子110が第1歯112の1/4山分だけ周方向に回転する。
【0088】
そして、通電を停止(オフ)すると、吸引子26、プランジャ28、及び磁極40Dが磁化されなくなり、磁極40D側へ吸引されていた吸引子26、プランジャ28、及び回転子110が下方に移動する。
【0089】
回転子110が下方向に移動すると、これに伴い、カム部材116の深溝126から引き抜かれていた回転子110の突起113も下方に移動し、突起113の傾斜面113Aが、カム部材116の第2歯122の傾斜面122Aを下るように摺動して回転子110が回転し、突起113がカム部材116の深溝126に挿入される(
図7に示す突起113参照)。
【0090】
回転子110が回転して突起113がカム部材116の深溝126に挿入される、即ち、回転子110が下方向へ移動することで、回転子110の下端の弁体部54が、主弁体24のパイロット弁座24Aに接触し、パイロット弁部16が閉弁する。
【0091】
さらに、吸引子26、及びプランジャ28は、第1スプリング44の付勢力を受けて下方へ付勢されているので、連結部材60で吸引子26に連結された主弁体24が主弁座58側へ移動する。そして、主弁体24の主弁パッキン56が主弁座58に接触し、主弁部14が閉弁状態となる。
これにより、パイロット式電磁弁10は、
図6(A)に示す閉弁状態に戻り、閉弁状態が維持される。
【0092】
本実施形態のパイロット式電磁弁10は、ノック棒102、スプリング104、回転子110、及びカム部材116を含んで構成されたオルタネイト機構(主弁体24の位置を保持する機構)を備えているので、ソレノイド40に対する通電をオンオフすることで、パイロット式電磁弁10の開弁状態と閉弁状態とを交互に切り換えることができ、かつ開弁状態、及び閉弁状態(主弁体24の位置)を維持することができる。
【0093】
本実施形態のパイロット式電磁弁10は、ソレノイド40へ電力を供給し続けなくても開弁状態を維持することができるので、電力消費を抑制し、省エネを実現できる構成となっている。また、ソレノイド40の通電状態を検知する方法では、主弁部14の開閉状態を確実に検知できない場合があるが、本実施形態のパイロット式電磁弁10では、磁石(ボス46)、磁気センサ70、及びマイクロコンピュータ72を用いて主弁体24の位置、即ち、主弁部14の開閉状態を確実に検知することができる。
【0094】
[第2の実施形態]
次に、本開示の電磁弁の一例としての第2の実施形態に係る直動式電磁弁200を、
図4、
図5、
図7、
図8、及び
図9にしたがって説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0095】
図8に示すように、第2の実施形態の直動式電磁弁200では、第1の実施形態のパイロット式電磁弁10とは異なり、主弁体24は設けられておらず、回転子110が主弁体の役目をしており、回転子110の下端の弁体部54が主弁体として機能し、主弁座58を開閉可能としている。本実施形態では、回転子110の弁体部54と主弁座58とで、主弁部14が構成されている。
【0096】
本実施形態のカム部材116には、連結部材60の下端部分がスライド自在に挿入される有底孔202が形成されており、吸引子26の移動に伴って、有底孔202の内部でカム部材116の下端部分が移動するように構成されている。
【0097】
なお、その他の構成は、第1の実施形態のパイロット式電磁弁10と同様である。
【0098】
(作用、効果)
以下に、第2の実施形態に係る直動式電磁弁200の作用、効果を説明する。
【0099】
まず最初に、通常時(ソレノイド40の非通電時であって、かつ主弁部14の閉弁時)における直動式電磁弁200について説明する。
【0100】
図8、及び
図9(A)に示すように、通常時(閉弁時)では、吸引子26が第1スプリング44の付勢力によって下方に付勢され、吸引子26に固定された連結部材60の下端が、カム部材116の有底孔202の底部に突き当たっている。
【0101】
また、回転子110は、ノック棒102を介してスプリング104の付勢力を受けて下方に付勢され、回転子110の弁体部54が主弁座58に押圧され、主弁部14が閉状態とされている。
【0102】
さらに、下方に付勢されている回転子110の大径部110Bでカラー114が下方に付勢され、カラー114の下端でプランジャ28の貫通孔50に形成された凸部50Aの上端を押圧している。これにより、プランジャ28の凸部50Aとカム部材116との間に配置されたスプリング117が圧縮されている。
【0103】
また、通常時では、
図5(B)、及び
図9(A)に示すように、ノック棒102の突起113が、カム部材116の深溝126に挿入され、また、
図4(B)、及び
図9(A)に示すように、ノック棒102の下端に形成された第2歯108と、回転子110の第1歯112とが、1/4山分(一つの歯を一山とする)だけ、周方向にずれている。言い換えれば、ノック棒102の第2歯108の頂部が、回転子110の第1歯112の斜面の中間部に位置した状態となっている。
【0104】
なお、このノック棒102は、スプリング104で回転子110に向けて付勢されているので、ノック棒102の第2歯108の斜面は、回転子110の第1歯112の斜面を押圧している。
【0105】
(1)開弁操作
次に、本実施形態の直動式電磁弁200を閉弁状態から開弁状態にする方法を説明する。
直動式電磁弁200を閉弁状態から開弁状態にするには、ソレノイド40に対して、一旦通電(オン)した後、通電を停止する(オフ)。言い換えれば、ソレノイド40に対して一時的に通電を行う。
【0106】
ソレノイド40に通電を行うと、吸引子26、プランジャ28、及び磁極40Dが磁化し、先ず、プランジャ28が
図9(B)に示すように吸引子26に吸着されて上方に寸法L1(
図8参照)移動して吸引子26とプランジャ28とが一体化し、これに伴い回転子110も上方に寸法L1移動する。回転子110が上方に寸法L1移動することで、回転子110の下端の弁体部54が主弁座58から寸法L1離隔する。
【0107】
さらに、プランジャ28と一体化した吸引子26は、磁極40D側に吸引されて上方に移動し、これに伴い、回転子110も上方に移動する。
これにより、回転子110の突起113が、カム部材116の深溝126から上方に引き抜かれる。ここで、ノック棒102の下端に形成された第2歯108の斜面が、回転子110に形成された第1歯112の斜面を下向きに押圧しているので、回転子110に周方向の回転力が生じ、第2歯108と第1歯112との関係は、
図4(B)に示す状態から
図4(A)に示す状態、即ち、第2歯108が、第1歯112と第1歯112との間の谷間に嵌合した状態となり、回転子110は、第1歯112の1/4山分だけ周方向に回転することになる。
【0108】
回転子110が、第1歯112の1/4山分だけ周方向に回転すると、
図5(A)、及び
図9(C)に示すように、深溝126から抜け出ている回転子110の突起113が、カム部材116に対して周方向に移動し、突起113の傾斜面113Aの頂部(下端)が、カム部材116に形成された第1歯120の傾斜面120Aの上方に位置する。言い換えると、側面視で、突起113の傾斜面113Aと第1歯120の傾斜面120Aとが周方向にオーバーラップする。
【0109】
そして、ソレノイド40への通電が停止されると、吸引子26、プランジャ28、及び磁極40Dが磁化されない状態となるので、吸引子26、及びプランジャ28には吸引力が作用しなくなり、吸引子26、及びプランジャ28は、第1スプリング44の付勢力を受けて下方へ移動し、これに伴って回転子110も下方へ移動する。
【0110】
回転子110が下方へ移動すると、回転子110に形成された突起113の傾斜面113Aが、カム部材116の係合突起部124に形成された第1歯120の傾斜面120Aに押し付けられて傾斜面120Aを下る方へ摺動する。
【0111】
言い換えれば、突起113の傾斜面113Aが摺動した分だけ回転子110が回転し、
図9(D)に示すように、突起113の下端が第1歯120の傾斜面120Aと第2歯122の垂直面とで形成された谷状浅溝127(
図5参照)に嵌り込み、回転子110の下方向への移動が阻止されるので、回転子110の弁体部54が主弁座58から離隔した状態で保持され、流入口18から流出口20へ流体が流れるようになる。
【0112】
なお、突起113の傾斜面113Aが傾斜面120Aを下る方向へ摺動することで回転子110が回転するので、ノック棒102の下端に形成された第2歯108に対して、回転子110に形成された第1歯112が1/4山分周方向にずれる(
図4(A)→
図4(B)、
図9(C)→
図9(D)参照。)。
【0113】
このように、本実施形態の直動式電磁弁200では、ソレノイド40へ通電した後に通電が停止されても、言い換えれば、ソレノイド40に電力を供給し続けなくても主弁部14の開弁状態を維持することができ、電力消費を抑制することができる。
【0114】
(2)閉弁操作
次に、直動式電磁弁200を開弁状態から閉弁状態にする方法を説明する。
直動式電磁弁200を閉弁状態に戻すには、ソレノイド40に対して、一旦通電(オン)した後、通電を停止(オフ)する。言い換えれば、ソレノイド40に対して一時的に通電を行う。
【0115】
図9(D)に示す状態の直動式電磁弁200のソレノイド40に通電を行うと、吸引子26、プランジャ28、及び磁極40Dが磁化され、吸引子26、及びプランジャ28が上方へ移動し、これに伴い、回転子110も上方に移動する。
【0116】
回転子110が上方に移動することで、回転子110の突起113が、カム部材116の深溝126から上方に引き抜かれ、回転子110は回転可能な状態となる。
【0117】
なお、回転可能な状態となった回転子110は、スプリング104で付勢されたノック棒102で押圧されているので、回転子110の第1歯112とノック棒102の第2歯108とが噛み合うように(
図4(A)、
図9(E)参照)、回転子110が第1歯112の1/4山分だけ周方向に回転する。
【0118】
そして、通電を停止(オフ)すると、吸引子26、プランジャ28、及び磁極40Dが磁化されなくなり、磁極40D側へ吸引されていた吸引子26、プランジャ28、及び回転子110が下方に移動する。
【0119】
回転子110が下方向に移動すると、これに伴い、カム部材116の深溝126から引き抜かれていた回転子110の突起113も下方に移動し、突起113の傾斜面113Aが、カム部材116の第2歯122の傾斜面122Aを下るように摺動して回転子110が回転し、突起113がカム部材116の深溝126に挿入される(
図7の突起113参照。)。
【0120】
回転子110が回転してカム部材116の深溝126に挿入される、即ち、回転子110が下方向へ移動することで、回転子110の下端の弁体部54が、弁本体12に形成された主弁座58に接触し、主弁部14が閉弁する。
これにより、直動式電磁弁200は、
図9(A)に示す閉弁状態に戻る。
【0121】
本実施形態の直動式電磁弁200も、第1の実施形態のパイロット式電磁弁10と同様に、ノック棒102、スプリング104、回転子110、及びカム部材116を含んで構成されたオルタネイト機構を備えているので、ソレノイド40に対する通電をオンオフすることで、直動式電磁弁200の開弁状態と閉弁状態とを交互に切り換えることができ、かつ開弁状態、及び閉弁状態を維持することができる。
【0122】
本実施形態の直動式電磁弁200も、ソレノイド40へ電力を供給し続けなくても開弁状態を維持することができるので、電力消費を抑制し、省エネを実現できる構成となっている。
【0123】
また、本実施形態の直動式電磁弁200では、下端が弁体部54とされた回転子110と吸引子26とが連動する構成であり、吸引子26に磁石からなるボス46が連結されているので、回転子110と連動して吸引子26が移動すると、磁石からなるボス46と磁気センサ70との距離が変化し、主弁部14の開閉状態を検知できる。
【0124】
[その他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0125】
10 パイロット式電磁弁(電磁弁)
12 弁本体
18 流入口
20 流出口
22 主弁室
24 主弁体
24A パイロット弁座
24B パイロット通路
26 吸引子
28 プランジャ
40 ソレノイド
46 ボス(磁石)
54 弁体部(パイロット弁体)
58 主弁座
70 磁気センサ
102 ノック棒(オルタネイト機構)
104 スプリング(オルタネイト機構)
110 回転子(パイロット弁体、オルタネイト機構)
116 カム部材(オルタネイト機構)
200 直動式電磁弁(電磁弁)