(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156575
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】靴下
(51)【国際特許分類】
A41B 11/00 20060101AFI20241029BHJP
A61F 13/08 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A41B11/00 G
A41B11/00 Z
A61F13/08
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071162
(22)【出願日】2023-04-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】515144884
【氏名又は名称】近藤 祐司
(71)【出願人】
【識別番号】521097851
【氏名又は名称】山岡 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100157428
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 聞平
(72)【発明者】
【氏名】近藤 祐司
(72)【発明者】
【氏名】山岡 洋祐
【テーマコード(参考)】
3B018
【Fターム(参考)】
3B018AA02
3B018AB03
3B018AB07
3B018AB08
3B018AC01
3B018AD01
(57)【要約】
【課題】履き心地を確保しつつ、足指を使いやすい靴下を提供する。
【解決手段】爪先部16が小指用の第1袋部21と小指以外の4指用の第2袋部22とに分かれた靴下10は、靴下10について足の甲を覆う上面を上向きにして、足を入れずに平坦面に置いた基準状態の上面視において、第2袋部22の外周のうち親指側の第1側線S1が靴下10のフット部12の筒状本体部15の延伸方向Aに対しなす第1角度は、平行を0°とし且つ第1側線S1が窄まる側をプラスの角度として、3°以下であり、基準状態の上面視において、第2袋部22の外周のうち小指側の第2側線S2が延伸方向Aに対しなす第2角度は、平行を0°とし且つ第2側線S2が窄まる側をプラスの角度として、3°以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪先部が、小指用の第1袋部と、小指以外の4指用の第2袋部とに分かれた靴下であって、
当該靴下について足の甲を覆う上面を上向きにして、足を入れずに平坦面に置いた基準状態の上面視において、前記第2袋部の外周のうち親指側の第1側線が当該靴下のフット部の筒状本体部の延伸方向に対しなす第1角度は、平行を0°とし且つ前記第1側線が窄まる側をプラスの角度として、3°以下であり、
前記基準状態の上面視において、前記第2袋部の外周のうち小指側の第2側線が前記延伸方向に対しなす第2角度は、平行を0°とし且つ前記第2側線が窄まる側をプラスの角度として、3°以下である、靴下。
【請求項2】
爪先部が、小指用の第1袋部と、小指以外の4指用の第2袋部とに分かれた靴下であって、
当該靴下について足の甲を覆う上面を上向きにして、足を入れずに平坦面に置いた基準状態の上面視において、前記第2袋部の外周は、親指側の第1側線と小指側の第2側線を有し、
前記第1側線と前記第2側線とのなす角度は、6°以下である、靴下。
【請求項3】
前記基準状態の上面視において、前記第2袋部における親指側の角部は、式1の条件を満たす、請求項1又は2に記載の靴下。
式1:X1/L≦0.3
X1は、前記延伸方向における前記親指側の角部の寸法を表し、
Lは、前記延伸方向における前記第2袋部の寸法を表す。
【請求項4】
前記基準状態の上面視において、前記第2側線は、式2の条件を満たす、請求項1又は2に記載の靴下。
式2:X2/L≧0.5
X2は、前記延伸方向における前記第2側線の寸法を表し、
Lは、前記延伸方向における前記第2袋部の寸法を表す。
【請求項5】
前記延伸方向に直交する方向を幅方向とした場合に、
前記基準状態の上面視において、前記第2袋部の外周の先端側を構成する先端線は、親指側の角部に連続して前記幅方向に略平行に延びる略直線状の直線区間と、前記直線区間に連続して小指側に向かって徐々に後退するように延びる後退区間とが設けられ、
前記親指側の角部の幅よりも前記直線区間の幅の方が大きい、請求項1又は2に記載の靴下。
【請求項6】
前記親指側の角部及び前記直線区間の合計幅は、式3の条件を満たす、請求項5に記載の靴下。
式3:(W1+W2)/W≧0.3
Wは、前記幅方向における前記第2袋部の寸法を表し、
W1は、前記幅方向における前記親指側の角部の寸法を表し、
W2は、前記幅方向における前記直線区間の寸法を表す。
【請求項7】
前記第1袋部は、式5の条件を満たす、請求項1又は2に記載の靴下。
式5:X3≦(1/2)×L
Lは、前記延伸方向における前記第2袋部の寸法を表し、
X3は、前記延伸方向における前記第1袋部の寸法を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足の健康に有用な靴下等に関する。
【背景技術】
【0002】
足裏のアーチの崩れなど足の健康にトラブルを抱える人が増えており、このような問題の改善を目的とした様々な靴下が考案されている。特許文献1には、外反母趾と内反小指を矯正するとともに、足裏のツボを刺激して血行や代謝を良くして、筋肉疲労の回復や不眠を改善する靴下が記載されている。
【0003】
また、爪先側が複数の袋部に分かれた靴下も、様々なものが考案されている。特許文献2には、小指用の爪先部と小指以外の全ての指用の爪先部を有する靴下が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3210355号公報
【特許文献2】意匠公報第1313205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の靴下(
図2参照)は、爪先側に幅を持たせていない。しかし、このような構成の靴下は、靴下の布による足指への締め付けが比較的強くなるため、足指が動かしにくく、足指をしっかり使うことが難しい(足指本来の力を使うことが難しい)。特に歩く際は靴下の布が伸縮して伸びる時には踵側に爪先を引っ張るため、上述の締め付けがより強くなり、足指をしっかり使うことが難しいという問題がより顕著になる。
【0006】
この問題は、足裏のアーチの崩れを引き起こす虞がある。特に足指の中でも最も弱い小指をしっかり使うことができない場合が多く、この場合、外側の縦アーチが崩れて、回内足(プロネーション)を引き起こす虞がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、履き心地を確保しつつ、足指を使いやすい靴下を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するべく、第1の発明は、爪先部が、小指用の第1袋部と、小指以外の4指用の第2袋部とに分かれた靴下であって、当該靴下について足の甲を覆う上面を上向きにして、足を入れずに平坦面に置いた基準状態の上面視において、第2袋部の外周のうち親指側の第1側線が当該靴下のフット部の筒状本体部の延伸方向に対しなす第1角度は、平行を0°とし且つ第1側線が窄まる側をプラスの角度として、3°以下であり、基準状態の上面視において、第2袋部の外周のうち小指側の第2側線が延伸方向に対しなす第2角度は、平行を0°とし且つ第2側線が窄まる側をプラスの角度として、3°以下である。
【0009】
第2の発明は、爪先部が、小指用の第1袋部と、小指以外の4指用の第2袋部とに分かれた靴下であって、当該靴下について足の甲を覆う上面を上向きにして、足を入れずに平坦面に置いた基準状態の上面視において、第2袋部の外周は、親指側の第1側線と小指側の第2側線を有し、第1側線と第2側線とのなす角度は、6°以下である。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、基準状態の上面視において、第2袋部における親指側の角部は、式1の条件を満たす。
式1:X1/L≦0.3
X1は、延伸方向における親指側の角部の寸法を表し、
Lは、延伸方向における第2袋部の寸法を表す。
【0011】
第4の発明は、基準状態の上面視において、第2側線は、式2の条件を満たす。
式2:X2/L≧0.5
X2は、延伸方向における第2側線の寸法を表し、
Lは、延伸方向における第2袋部の寸法を表す。
【0012】
第5の発明は、第1又は第2の発明において、延伸方向に直交する方向を幅方向とした場合に、基準状態の上面視において、第2袋部の外周の先端側を構成する先端線は、親指側の角部に連続して幅方向に略平行に延びる略直線状の直線区間と、直線区間に連続して小指側に向かって徐々に後退するように延びる後退区間とが設けられ、親指側の角部の幅よりも直線区間の幅の方が大きい。
【0013】
第6の発明は、第5の発明において、親指側の角部及び直線区間の合計幅は、式3の条件を満たす。
式3:(W1+W2)/W≧0.3
Wは、幅方向における第2袋部の寸法を表し、
W1は、幅方向における親指側の角部の寸法を表し、
W2は、幅方向における直線区間の寸法を表す。
【0014】
第7の発明は、第1又は第2の発明において、第1袋部は、式5の条件を満たす。
式5:X3≦(1/2)×L
Lは、延伸方向における第2袋部の寸法を表し、
X3は、延伸方向における第1袋部の寸法を表す。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、小指用の第1袋部が独立しているため、小指を動かしやすい。また、靴下のうち小指以外の4指用の第2袋部における親指側の側線及び小指側の側線が、ともに靴下の幅方向の内側にそれほど傾いておらず、第2袋部に幅を持たせている。そのため、小指以外の4本の足指も動かしやすい。ここで、爪先側に幅を持たせると、足に対して靴下が回りやすくなってフィット感及び履き心地が低下する虞がある。それに対し、本発明では、小指用の袋部が、幅を持たせている第2袋部の回り止めの役割を果たす。そのため、4指に対し第2袋部が回りやすくなってフィット感及び履き心地が低下することが抑制される。本発明では、履き心地を確保しつつ、足指を使いやすい靴下を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態に係る靴下について、足の甲を覆う上面を上向きにして、足を入れずに平坦面に置いた基準状態の上面図である。
【
図2】
図2は、従来の靴下(特許文献2に記載の靴下)の上面図である。
【
図3】
図3は、歩く時の足底での体重移動のラインを示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態の変形例に係る靴下について、足の甲を覆う上面を上向きにして、足を入れずに平坦面に置いた基準状態の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0018】
図1は、本実施形態に係る靴下10について、足の甲を覆う上面を上向きにして、足を入れずに平坦面に置いた基準状態の上面図を表す。
図1には、
図1(a)と
図1(b)の2タイプの靴下10を示している。靴下10は、
図1に示すように、小指用の第1袋部21と、小指以外の4指用の第2袋部22とを有し、爪先側が2つの袋部21,22に分かれている。なお、
図1は左足用の靴下10を表す。右足用靴下は、左足用の靴下10と左右対称の形状であり、図示を省略する。以下、靴下10について詳細に説明する。
【0019】
靴下10は、
図1に示すように、ゴムトップから踵までのボディー部11と、踵から爪先までのフット部12とを備えている。フット部12は、足のうち爪先側以外を覆う筒状本体部15と、足の爪先側を覆う爪先部16とを備えている。爪先部16は、第1袋部21と第2袋部22とに分かれている。
【0020】
筒状本体部15は、例えば丸編み機によって、略真っすぐな筒状に編まれた部分である。
図1(a)の靴下10のように、絞り部15a(
図1(b)参照)が筒状本体部15に設けられていない場合、筒状本体部15の延伸方向Aは、上面視における筒状本体部15の両側線S3,S4の方向に基づいて決める。具体的に、延伸方向Aは、親指側の側線S3の略直線状の部分(
図1(a)では、符号S3が指す、踵から中央付近までの部分)と、小指側の側線S4の略直線状の部分(
図1(a)では、符号S4が指す、踵から中央付近までの部分)との間の中心線Aの方向となる。また、
図1(b)の靴下10のように、絞り部15aが筒状本体部15に設けられている場合、筒状本体部15の延伸方向Aは、絞り部15aにおいて最も幅が狭い箇所の横断線Cに直交する方向となる。以下では、延伸方向(長さ方向)Aに直交する方向を「幅方向」と言う。
【0021】
爪先部16では、第1袋部21が、第2袋部22に比べて前後方向の長さが短くなっている。第1袋部21は、前方に向かって少し外向きに延びている。
【0022】
第2袋部22は、第1袋部21と第2袋部22が分かれている分岐箇所Dから、前側の部分により構成されている。第2袋部22の外周は、略直線状に延びる親指側の第1側線S1と、略直線状に延びる小指側の第2側線S2と、第1側線S1の前端と第2側線S2の前端とを結ぶ先端線Tとにより構成されている。先端線Tは、第1側線S1の前端に連続する第1角部(親指側の角部)R1の区間と、第1角部R1に連続して幅方向に略平行に延びる略直線状の直線区間T1と、直線区間T1に連続して小指側に向かって徐々に後退するように延びる後退区間T2とにより構成されている。
【0023】
ここで、本実施形態では、爪先部16の第2袋部22に幅を持たせている。具体的に、基準状態の上面視において、第1側線S1及び第2側線S2は、ともに筒状本体部15の延伸方向Aと略平行になっている。
【0024】
なお、基準状態の上面視において、第1側線S1が延伸方向Aに対しなす角度(以下「第1側線角度」と言う。)は、延伸方向Aと平行を0°とし且つ第1側線S1が窄まる側をプラスの角度(
図2参照)として、3°以下であればよく、2°以下が好ましく、1°以下がさらに好ましい。また、基準状態の上面視において、第2側線S2が延伸方向Aに対しなす角度(以下「第2側線角度」と言う。)は、延伸方向Aと平行を0°とし且つ第2側線S2が窄まる側をプラスの角度(
図2参照)として、3°以下であればよく、2°以下が好ましく、1°以下がさらに好ましい。
【0025】
また、基準状態の上面視において、第1側線S1と第2側線S2のなす角度で見た場合に、この角度は、6°以下であればよく、4°以下が好ましく、2°以下がさらに好ましい。
【0026】
本実施形態では、第2袋部22における親指側の第1角部R1の縦寸法を小さくしている。具体的に、基準状態の上面視において、第1角部R1は、式1の条件を満たす。
式1:X1/L≦0.3
但し、X1は、延伸方向Aにおける第1角部R1の寸法(縦寸法)を表し、Lは、同方向Aにおける第2袋部22の寸法(縦寸法)を表す。なお、
図1でX1/L=0.2であり、X1/Lは0.25以下が好ましい。第2袋部22は第1角部R1の縦寸法が相対的に小さいため、親指の動きの自由度が高くなる。また、第2袋部22は、第1角部R1の幅W1より直線区間T1の幅W2の方が大きいため(W1<W2)、親指に加えて、人差し指の動きの自由度も高くなる。
【0027】
本実施形態では、第2袋部22における後退区間T2(小指側の角部)の縦寸法を小さくしている。すなわち、第2側線S2を長くしている。具体的に、基準状態の上面視において、第2側線S2は、式2の条件を満たす。
式2:X2/L≧0.5
但し、X2は、延伸方向Aにおける第2側線S2の寸法(縦寸法)を表す。なお、
図1でX2/L=0.63であり、X2/Lは0.6以上が好ましい。第2側線S2の縦寸法X2が比較的長いため、薬指側の足指の動きの自由度が高くなる。
【0028】
また、基準状態の上面視において、親指側の第1角部R1及び直線区間T1の合計幅(W1+W2)は、式3の条件を満たす。
式3:(W1+W2)/W≧0.3
但し、Wは、幅方向における第2袋部22の寸法を表し、W1は、幅方向における第1角部R1の寸法を表し、W2は、幅方向における直線区間T1の寸法を表す。なお、
図1で(W1+W2)/W=0.5であり、(W1+W2)/Wは0.4以上が好ましい。
【0029】
また、本実施形態では、第2袋部22の第1角部R1の幅W1を小さくしている。具体的に、基準状態の上面視において、第1角部R1の幅W1は、式4の条件を満たす。
式4:W1/W≦0.2
なお、
図1でW1/W=0.14であり、W1/Wは0.15以下が好ましい。第2袋部22は第1角部R1の幅W1が相対的に小さいため、親指の動きの自由度がさらに高くなる。
【0030】
[本実施形態の効果等について]
本実施形態では、小指用の第1袋部21が独立しているため、小指を動かしやすい。また、小指以外の4指用の第2袋部22における第1側線S1及び第2側線S2が、ともに靴下10の幅方向の内側にそれほど傾いておらず、爪先部16の第2袋部22に幅を持たせている。
【0031】
ここで、特許文献2に記載の靴下10’の場合は、爪先部16が、小指用の第1袋部21と、小指以外の4指用の第2袋部22とに分かれている点は、本実施形態と同じである。しかし、本実施形態とは異なり、爪先部16の第2袋部22に幅を持たせていない。靴下10’では、
図2に示すように、上述の第1側線角度θ1及び第2側線角度θ2が比較的大きい。具体的に、第1側線角度θ1及び第2側線角度θ2は約10°である。この場合、小指以外の4指を動かしにくく、小指用の第1袋部21を設けたとしても、4指とともに小指もしっかり使うことができず、足裏のアーチ(特に外側の縦アーチ)の崩れを引き起こす虞がある。
【0032】
それに対し、本実施形態では、小指とともに、小指以外の4指も動かしやすい。また、小指用の第1袋部21が、幅を持たせている第2袋部22の回り止めの役割を果たすため、4指に対し第2袋部22が回りやすくなってフィット感及び履き心地が低下することが抑制される。本実施形態では、履き心地を確保しつつ、足指を使いやすい靴下10を提供することができる。
【0033】
また、本実施形態では、第1角部R1を小さくし、且つ、第1角部R1及び直線区間T1の合計幅(W1+W2)を比較的大きくしているため、親指及び人差し指がさらに動かしやすくし、また、第2側線S2の縦寸法X2を比較的長くしているため、中指及び薬指がさらに動かしやすくなる。
【0034】
ここで、
図3には、歩く時の足底での体重移動を示すライン41,42を示す。足30の3つのアーチ(横アーチ31、内側の縦アーチ32、外側の縦アーチ33)がバランスよく形成されている場合、足底での体重移動を示すラインは、実線のライン41のようになる。しかし、足指が十分に使えていない場合は、足指の中でも最も弱い小指が特に使えなくなるため、外側の縦アーチ33が崩れてしまい、回内足(プロネーション)を引き起こす。そして、この場合の足底での体重移動は、破線のライン42のように、早い段階で内側の縦アーチ32側に移る。
【0035】
なお、本願発明者は、
図1に示す靴下10(第1側線S1と第2側線S2が略平行の靴下)を用いた試験によって、3つのアーチ31~33のバランスが改善されることを確認している。
【0036】
具体的に、まず通常の靴下を両足に履いて、胸の前で腕を交差させての片足立ち試験を片足ずつ行ったところ、右足と左足のどちらかで片足立ちを10秒以上保持することができなかった被験者が9名いた。そして、その9名の被験者が、本実施形態に係る靴下10を履いて1分間の歩行後に、再び片足立ち試験を行った。その結果、7名が片足立ちを10秒以上保持することができた。この結果は、靴下10を履いて歩行することで、普段はあまり使われていなかった足指が使われて、アーチ31~33のバランスが改善されることを示している。靴下10の継続使用は、回内足の改善に有用である。なお、9名の被験者は、男性4名、女性5名であり、年齢層は20代1名、30代4名、40代2名、50代2名であった。9名の被験者に性別や年齢層の偏りのなかった。
【0037】
本実施形態によれば、回内足の改善に有用な靴下10を提供することができる。回内足の改善に有用な靴下10としては、第1側線角度及び第2側線角度は1°以下であることが好ましい。
【0038】
[本実施形態の変形例]
本変形例では、爪先部16において、延伸方向Aにおける第1袋部21の寸法(縦寸法)X3が、
図4に示すように、上述の実施形態よりも短くなっている。具体的に、基準状態の上面視において、第1袋部21の縦寸法X3は、式5の条件を満たす。Lは、延伸方向Aにおける第2袋部22の寸法(縦寸法)を表す。なお、本変形例では、第1袋部21の縦寸法X3について、寸法Lの2分の1以下としているが、寸法Lの3分の1以下とすることが好ましい。
式5:X3≦(1/2)×L
【0039】
ここで、爪先部16の側面(マチ)の厚みは、通常、4本の指を入れる第2袋部22に合わせて設計される。すなわち、第1袋部21のマチは、第2袋部22に合わせて設計される。そのため、足の平面形状に基づいて第1袋部21の縦寸法X3を決めた場合、第1袋部21の縦寸法が必要以上に長くなる。本変形例では、式5に基づいて第1袋部21の縦寸法X3を設計することで、第1袋部21のフィット感が得られるようにしている。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、足の健康に有用な靴下等に適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 靴下
11 ボディー部
12 フット部
15 筒状本体部
16 爪先部
21 第1袋部
22 第2袋部
A 筒状本体部の延伸方向
S1 第1側線
S2 第2側線
【手続補正書】
【提出日】2023-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪先部が、小指用の第1袋部と、小指以外の4指用の第2袋部とに分かれた靴下であって、
当該靴下について足の甲を覆う上面を上向きにして、足を入れずに平坦面に置いた基準状態の上面視において、前記第2袋部の外周のうち親指側の第1側線が当該靴下のフット部の筒状本体部の延伸方向に対しなす第1角度は、平行を0°とし且つ前記第1側線が窄まる側をプラスの角度として、3°以下であり、
前記基準状態の上面視において、前記第2袋部の外周のうち小指側の第2側線が前記延伸方向に対しなす第2角度は、平行を0°とし且つ前記第2側線が窄まる側をプラスの角度として、3°以下であり、
前記延伸方向に直交する方向を幅方向とした場合に、
前記基準状態の上面視において、前記第2袋部の外周の先端側を構成する先端線は、親指側の角部に連続して前記幅方向に平行に延びる略直線状の直線区間と、前記直線区間に連続して小指側に向かって徐々に後退するように延びる後退区間とが設けられ、
前記親指側の角部の幅よりも前記直線区間の幅の方が大きく、
前記第1袋部は、式5の条件を満たす、靴下。
式5:X3≦(1/2)×L
Lは、前記延伸方向における前記第2袋部の寸法を表し、
X3は、前記延伸方向における前記第1袋部の寸法を表す。
【請求項2】
爪先部が、小指用の第1袋部と、小指以外の4指用の第2袋部とに分かれた靴下であって、
当該靴下について足の甲を覆う上面を上向きにして、足を入れずに平坦面に置いた基準状態の上面視において、前記第2袋部の外周は、親指側の第1側線と小指側の第2側線を有し、
前記第1側線と前記第2側線とのなす角度は、6°以下であり、
当該靴下のフット部の筒状本体部の延伸方向に直交する方向を幅方向とした場合に、
前記基準状態の上面視において、前記第2袋部の外周の先端側を構成する先端線は、親指側の角部に連続して前記幅方向に平行に延びる略直線状の直線区間と、前記直線区間に連続して小指側に向かって徐々に後退するように延びる後退区間とが設けられ、
前記親指側の角部の幅よりも前記直線区間の幅の方が大きく、
前記第1袋部は、式5の条件を満たす、靴下。
式5:X3≦(1/2)×L
Lは、前記延伸方向における前記第2袋部の寸法を表し、
X3は、前記延伸方向における前記第1袋部の寸法を表す。
【請求項3】
前記基準状態の上面視において、前記第2袋部における親指側の角部は、式1の条件を満たす、請求項1又は2に記載の靴下。
式1:X1/L≦0.3
X1は、前記延伸方向における前記親指側の角部の寸法を表し、
Lは、前記延伸方向における前記第2袋部の寸法を表す。
【請求項4】
前記基準状態の上面視において、前記第2側線は、式2の条件を満たす、請求項1又は2に記載の靴下。
式2:X2/L≧0.5
X2は、前記延伸方向における前記第2側線の寸法を表し、
Lは、前記延伸方向における前記第2袋部の寸法を表す。
【請求項5】
前記親指側の角部及び前記直線区間の合計幅は、式3の条件を満たす、請求項1又は2に記載の靴下。
式3:(W1+W2)/W≧0.3
Wは、前記幅方向における前記第2袋部の寸法を表し、
W1は、前記幅方向における前記親指側の角部の寸法を表し、
W2は、前記幅方向における前記直線区間の寸法を表す。
【請求項6】
爪先部が、小指用の第1袋部と、小指以外の4指用の第2袋部とに分かれた靴下であって、
当該靴下について足の甲を覆う上面を上向きにして、足を入れずに平坦面に置いた基準状態の上面視において、前記第2袋部の外周のうち親指側の第1側線が当該靴下のフット部の筒状本体部の延伸方向に対しなす第1角度は、平行を0°とし且つ前記第1側線が窄まる側をプラスの角度として、3°以下であり、
前記基準状態の上面視において、前記第2袋部の外周のうち小指側の第2側線が前記延伸方向に対しなす第2角度は、平行を0°とし且つ前記第2側線が窄まる側をプラスの角度として、3°以下であり、
前記第1袋部は、式6の条件を満たす、靴下。
式6:X3≦(1/3)×L
Lは、前記延伸方向における前記第2袋部の寸法を表し、
X3は、前記延伸方向における前記第1袋部の寸法を表す。
【請求項7】
爪先部が、小指用の第1袋部と、小指以外の4指用の第2袋部とに分かれた靴下であって、
当該靴下について足の甲を覆う上面を上向きにして、足を入れずに平坦面に置いた基準状態の上面視において、前記第2袋部の外周は、親指側の第1側線と小指側の第2側線を有し、
前記第1側線と前記第2側線とのなす角度は、6°以下であり、
前記第1袋部は、式6の条件を満たす、靴下。
式6:X3≦(1/3)×L
Lは、当該靴下のフット部の筒状本体部の延伸方向における前記第2袋部の寸法を表し、
X3は、前記延伸方向における前記第1袋部の寸法を表す。