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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156576
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】靴下
(51)【国際特許分類】
   A41B 11/00 20060101AFI20241029BHJP
   A41D 13/06 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A41B11/00 D
A41B11/00 H
A41B11/00 Z
A41D13/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071163
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】517250790
【氏名又は名称】株式会社からだクリエイト
(74)【代理人】
【識別番号】100152700
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 透
(72)【発明者】
【氏名】森村 良和
【テーマコード(参考)】
3B018
3B211
【Fターム(参考)】
3B018AA03
3B018AB01
3B018AB04
3B018AB05
3B018AB06
3B018AB07
3B018AB08
3B018AC01
3B211AA14
3B211AC17
(57)【要約】

【課題】
機械的に足裏の形状をアーチ状になるように強制するのではなく、装着して活動するだけで足の所定の部位に適切な刺激を与え、人体に備わる体性反射を惹起して足指や足裏の筋肉に無意識の反応を起こさせることで、足裏の健全なアーチ形状の形成を維持・促進し、身体の姿勢の改善や運動機能の向上が図れる靴下を提供する。
【解決手段】
足のリスフラン関節からショパール関節にかけての部位の全周に密着して覆う略筒状の本体と、前記本体の足の甲側と足裏側の中央部のみをそれぞれ前方に伸長して接続することにより第二趾・第三趾の股部に引っ掛けることを可能とした掛勾部とからなり、前記掛勾部の足裏側の両側縁をそれぞれ母趾球と小趾球の後方外縁に沿って湾曲するように構成し、本体の後端周縁の両側部を足首の周囲に固定可能なベルト体を設けてなる靴下。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足のリスフラン関節からショパール関節にかけての部位の全周に密着して覆う略筒状の本体と、前記本体の足の甲側と足裏側の中央部のみをそれぞれ前方に伸長して接続することにより第二趾・第三趾の股部に引っ掛けることを可能とした掛勾部とからなり、前記掛勾部の足裏側の両側縁をそれぞれ母趾球と小趾球の後方外縁に沿って湾曲するように構成したことを特徴とする靴下。
【請求項2】
少なくとも前記本体の後端周縁の足の側面から足裏にかけての内面、および、前記掛勾部の足裏側の両側縁に沿った内面に、当接する足の皮膚に刺激を与えることができる線状の刺激体を設けたことを特徴とする、請求項1に記載の靴下。
【請求項3】
前記本体の後端周縁の両側部を足首の周囲に固定可能なベルト体を設けたことを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれかに記載の靴下。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は靴下に関し、より詳細には歩行時や運動時に通常の靴下の下に履くことで、体性反射の作用により無意識に足指を屈曲させる効果を奏し、身体の安定性や運動機能の向上が図れる靴下(アンダーソックス)に関する。
【背景技術】
【0002】
健康で正常な足は母趾球・小趾球から踵にかけての縦アーチと親指から小指にかけての横アーチがしっかりと形成され、足裏の土踏まずが親指の付け根、小指の付け根、踵の3点を結ぶ三角ドームのような状態となって、これらのアーチ形状により足首の安定性を図るとともに、足の指で地面を掴むような駆動性と、体重を分散して衝撃を吸収する緩衝性を発揮していることが知られている。
【0003】
こうした足裏のアーチ形成を促進するために様々な靴下や装具が提案されている。たとえば特許文献1に係る足コンディショニングウェアは、指間係止部と第一サポート部と第二サポート部とによるX字型サポートラインによって足裏の縦アーチと横アーチを同時に形成させ、土踏まずのドーム形状を形成、維持できるようにしている。また、特許文献2に係る矯正機能付き靴下は、足底部に帯状の低伸縮性の引張部材部と高伸縮性の伸縮部を交互に設けることで足裏のアーチを効果的に維持及び改善するものである。そのほかにも、靴自体、あるいは靴底に装着するインソールの形状によって足裏のアーチを維持または改善しようとする先行技術は多数提案されている。
【特許文献1】特開2006-348406
【特許文献2】特開2022-35297
【0004】
しかし、特許文献1や特許文献2に開示された発明をはじめとする靴下に関する先行技術の多くは、部材の伸縮性による牽引力で機械的に足裏の形状をアーチ型・ドーム型になるよう強制するものであり、足指や足裏の筋肉に作用するものではない。また、靴自体やインソールの形状に係る先行技術も基本的には同様である。こうした機械的に足裏の形状を強制する先行技術は、当然ながら適用しない状態では元に戻ってしまうものであるし、特定の形状を強制することにより却って足や身体の姿勢のバランスを崩す原因となるなど、生理的な弊害を生じる場合もある。最終的な目的が人体の姿勢の改善や運動機能の向上である以上、靴下に足裏形状の矯正機能を付加するのであれば、足指や足裏の筋肉に作用して自発的に足裏の形状を改善する技術が望ましいといえる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術の問題に鑑み、機械的に足裏の形状をアーチ状になるように強制するのではなく、装着して活動するだけで足の所定の部位に適切な刺激を与え、人体に備わる体性反射を惹起して足指や足裏の筋肉に無意識の反応を起こさせることで、足裏の健全なアーチ形状の形成を維持・促進し、身体の姿勢の改善や運動機能の向上が図れる靴下を提供することを課題とするものである。
【0006】
ちなみに体性反射とは、刺激が身体の特定の部位に加わった場合に、それに対する反応が無意識に生じる反射のことである。たとえば、膝の下の件を叩かれた刺激により、足の筋肉が無意識に収縮して足が上がる膝蓋腱反射が代表的な体性反射とされるが、人体の皮膚に対して物が当接することによる刺激が、皮膚に分布する感覚受容器(メカノレセプター)に受容され、当該皮膚の部位に係る感覚神経と連関する運動神経に支配される特定の筋肉や腱を無意識に収縮させる体性反射や、それが関連する他の筋肉にも伝わる運動連鎖も広く知られている。体性反射は多くの場合、身体を守るための反応として働くが、皮膚への刺激については、痛みや熱さを感じるほど大きくなくても体性反射は生じる。たとえば、靴の中に入り込んだ砂粒が足の指の皮膚にごく僅かな異物感を感じさせるだけで、無意識のうちに足指が異物を避けるように屈曲する反応も体性反射によるものである。
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した靴下は、足のリスフラン関節からショパール関節にかけての部位の全周に密着して覆う略筒状の本体と、前記本体の足の甲側と足裏側の中央部のみをそれぞれ前方に伸長して接続することにより第二趾・第三趾の股部に引っ掛けることを可能とした掛勾部とからなり、前記掛勾部の足裏側の両側縁をそれぞれ母趾球と小趾球の後方外縁に沿って湾曲するように構成したことを特徴とする。
【0008】
足裏のアーチ形状は、足の骨や関節、筋肉、神経の協働によって形成・維持されている。図6に示すように、足の骨や関節については、中足骨と楔状骨・立方骨とを繋ぐリスフラン関節と、立方骨・舟状骨と距骨・踵骨とを繋ぐショパール関節が、アーチ形状の文字通り骨組みの要となっている。筋肉については、図7に示すように、主に中足骨の頭部から踵骨までを覆う繊維状の足底筋膜と、長(母)趾屈筋・短(母)趾屈筋などからなる足底筋が、アーチ形状を維持する役割を果たしている。長(母)趾屈筋・短(母)趾屈筋は足指を屈曲させる屈筋群であり、その収縮により足指を内屈させて横アーチ形状を形成するとともに、足底筋膜を引っ張って縦アーチ形状を形成する。また、長趾屈筋は脛骨背面から、長母趾屈筋は腓骨背面から、短趾屈筋は踵骨から、短母指屈筋は楔状骨から、それぞれ起始しているが、いずれもショパール関節付近で皮膚から最も浅い位置を通っている。
【0009】
神経については、長(母)趾屈筋・短(母)趾屈筋を含む足底筋は、内側足底神経・外側足底神経・前底神経・中底神経・後底神経などの深足底神経によって支配されている。各深足底神経は支配領域の皮膚感覚を伝えるとともに、皮膚に受けた刺激により体性反射を惹起し、無意識に足指を屈曲させる反応を起こす。深足底神経は、図8に示すように、内側足底神経が主に第一趾~第三趾および足裏の内側面の筋肉や皮膚感覚を支配し、外側足底神経が主に第四趾・第五趾および足裏の外側面の筋肉や皮膚感覚を支配している。より詳細には、脛骨後面の神経叢から発した内側足底神経が第一~第三趾を、踵骨内側のショパール関節付近で内側足底神経から分岐した外側足底神経が第四~第五趾を、両底神経からさらに分岐した前底神経が第一~第三趾を、中底神経が第四趾を、後底神経が第四~第五趾をそれぞれ支配している。
【0010】
請求項1に記載した靴下の略筒状の本体の後端をショパール関節付近に位置するように構成したのは、上記の長趾屈筋および深足底神経がいずれもショパール関節付近の内側でいわゆる足根管に集約されて皮膚から最も浅い位置を通っているからである。伸縮性の高い生地で形成した略筒状の本体に足を通し、本体の前端の掛勾部を第二趾と第三趾の股部に引っ掛けた上で、本体の後端を脛骨の前まで引っ張ってフィットさせると、本体の後端は概ねショパール関節の周囲に当接して軽く締め付ける状態となる。この際、本体の後端周縁の縫製部分が足根管の位置の皮膚に当接して刺激を与えることにより深足底神経に体性反射を惹起し、深足底神経に支配される足底筋が収縮する。これにより、無意識に足指が地面を掴むように内屈するとともに長(母)趾屈筋・短(母)趾屈筋が足底筋膜を引っ張って縦横のアーチ形状を形成させる。
【0011】
次に、掛勾部を第二趾と第三趾の股部のみに引っ掛けるように構成したのは、足指は手指とは異なり5本の指を各個独立させて自由に動かすことが困難で、第一趾とは別に第二~第五趾が連動して動くようになっているからである。足指は足底筋膜で繋がっているため、脳が特定の足指に信号を送っても、足底筋膜を伝わって他の指にも刺激が伝わり、無意識に連動して動く。この連動は、人間が二足歩行足へと移行する過程で、足指を荷重の分散やバランス調整に特化するように進化させてきたことによる。一方、第一趾を独立させて動かせるのは、樹上生活時代には手指と同様に第一趾が他の足指と対向していて、各段に強いグリップ力で物を掴むことを可能としていたことの名残りで、二足歩行への移行後も接地の安定性の向上と、手指と同様に細かい動作を行う必要性があったからである。
【0012】
掛勾部を指の股部に引っ掛けることにより股部に刺激が与えられて体性反射を惹起し、足指が地面を掴むように屈曲させるが、前述のとおり足指が分かれる足裏の前部では前底神経が第一~第三趾を支配しているため、掛勾部を第二趾と第三趾の股部に当接させることにより、すべての足指に屈曲反応を最も有効に生じさせることができる。第一~第三趾の屈曲反応により第二・第三趾に連動して第四・第五趾も屈曲反応を生じるからである。これに対し、もし、掛勾部を草履の鼻緒のように第一趾と第二趾の股部に当接させた場合の体性反射は主に第一~第三趾に留まり、第三趾と第四趾、あるいは、第四趾と第五趾の股部に当接させた場合の体性反射は第一趾に及びにくくなるからである。一方、本願発明者の試行と経験によれば、掛勾部の数を増やして複数の股部に同時に当接させると、過多となった刺激が分散して逆に体性反射が起こりにくくなり、無意識に足指を屈曲させる作用が十分に発揮されない。そのため、掛勾部は第二趾と第三趾の間の股部に引っ掛けて支持させているのである。
【0013】
さらに、掛勾部の足裏側の両側縁をそれぞれ母趾球と小趾球の後方外縁に沿って湾曲するように構成したのは、掛勾部の両側縁の縫製部分により足裏の皮膚へ刺激を与えて体性反射を惹起し、足底筋と足底筋膜を収縮させることで、無意識に足裏のアーチ形状を強化するためである。母趾球と小指球はMP関節の直下に位置しており、足裏の前方の接地面として体重を支えているため、掛勾部の縫製部分を母趾球や小趾球の直下に位置させて直接刺激を与えたとしても、体重により常時強く押し付けられることによる刺激に皮膚の感覚受容器が馴化してしまうため、却って体性反射は起こりにくくなる。そのため、本発明では、掛勾部の足裏側の両側縁をそれぞれ母趾球と小趾球の後方外縁に沿って湾曲させることで、両側縁の縫製部分が土踏まずの前側の足裏、中足骨の下部に軽く当接するように構成している。これにより、歩行や運動により足裏が接地する都度、ごく僅かな刺激が繰り返し足裏の皮膚に加わって継続的に体性反射が生じ、無意識に足底筋と足底筋膜を収縮させてリスフラン関節を動かし、足裏のアーチ形状を強化するのである。
【0014】
次に、請求項2に記載した靴下は、請求項1に記載した靴下であって、少なくとも前記本体の後端周縁の足の側面から足裏にかけての内面、および、前記掛勾部の足裏側の両側縁に沿った内面に、当接する足の皮膚に刺激を与えることができる線状の刺激体を設けたことを特徴とする。
【0015】
前述のように、皮膚への刺激はごく僅かな強さでも体性反射を惹起させるため、本来は本体の縁部の縫製部分が当接する程度の刺激でも良い。しかし、皮膚感覚や反射反応には個人差があるため、必要に応じてやや刺激を大きくすることが望ましい場合もあるため、請求項2に係る靴下では、本体の縁部の適切な箇所の内面に線状の刺戟体を設けている。刺戟体の構成は特に限定されないが、皮膚に当接して軽い刺激を与える程度で十分なので、たとえば、シリコンゴムを線状に付着させてごく薄い畝部を設けることが好適である。
【0016】
次に、請求項3に記載した靴下は、請求項1または請求項2のいずれかに記載した靴下であって、前記本体の後端周縁の両側部を足首の周囲に固定可能なベルト体を設けたことを特徴とする。
【0017】
前記本体を伸縮性の高い生地で略筒状に形成すれば、通した足に自然にフィットすることが期待できるが、歩行や運動によって靴の中で足が動くことで本体がズレて、縁部が適切な位置から外れるおそれがある。そのため、請求項3に係る発明では、前記本体の後端周縁の両側部にベルト体を設けており、第二趾と第三趾の股部に引っ掛けた掛勾部と、足首の周囲、具体的にはアキレス腱に回したベルト体によって伸縮性のある本体の前後を固定している。これにより、本体が不用意にズレることが防がれる。
【発明の効果】
【0018】
以上のような構成により、本願発明に係る靴下は、極めて簡易な構造によって、装着して活動するだけで足の所定の部位に適切な刺激を与え、人体に備わる体性反射を惹起して足指や足裏の筋肉に無意識の反応を起こさせることで、足裏に適切なアーチ形状を維持させ、身体の姿勢の改善や運動機能の向上が図れるという効果を奏するものである。従来技術のように機械的に足裏の形状をアーチ状になるように強制するのではなく、無意識かつ自発的な身体反応の作用を利用するものであるので、本願発明に係る靴下を継続的に着用することにより足裏の筋肉・神経に反応を癖付けすることができ、該靴下を着用しなくなっても効果を維持することが可能となる。また、足裏に特定の形状を機械的に強制しないため、足や身体の姿勢のバランスを崩すなど、生理的な弊害が生じる可能性も小さい。
【0019】
足裏にアーチ形状を機械的に強制する従来技術の靴下の場合、強制するための部材にはある程度の厚みや大きさが必要となるので、使用者が不必要に異物感や違和感を感じたり、靴を履いた際にサイズがきつくなってしまうといった不都合が生じるおそれがある。また、靴自体の内部構造やインソールの構造によって足裏にアーチ形状を機械的に強制する従来技術については、履いている靴下を介しての作用となるため、効果が減殺されたり、履ける靴下に制約が生じたりといった問題も考えらえる。しかし、本願発明に係る靴下は通常の靴下と同様の薄い生地でも形成できるため、異物感や違和感が少なく、足の皮膚に直接作用して効果を発揮するものであるから、その上に履く通常の靴下や靴を選ばない。
【0020】
さらに、足裏の適切なアーチ形状はスポーツにおける運動機能向上にも有効であるが、スポーツ競技、特に団体競技にはウェアや用具の仕様が規制されているものがあり、仕様外の靴下が見えるだけでも失格となる場合がある。しかし、本願発明に係る靴下であれば、アンダーソックスとして通常の靴下の下に履くことができるので、サポーターと同様に取り扱うことができ、外部に露出することもないので、使用の自由度が高く、幅広い局面で使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図を用いて説明する。図1は本願発明の一実施形態に係る靴下1を右足に装着した状態を示す斜視図である。図2は同じく右足に装着した状態の靴下1を内側から見た側面図であり、図3は足裏側から見た底面図、図4は足の甲側からみた平面図である。また、図4は、図2において足の骨格や関節、関係する筋肉や神経と靴下1の構成との位置関係を示す透視図である。なお、図中の破線および点線は透視部分を表し、一点鎖線は縫製部分を表している。
【0022】
実施形態に係る靴下1は、足にフィットする伸縮性のある生地からなる略筒状の本体10と、前記本体10の後端周縁の両側部から後方に伸びて足首の周囲、特にアキレス腱に固定可能なベルト体11とからなる。本体10の前端の足の甲側と足裏側の中央部をそれぞれ前方に略三角形状に伸長し、それらの頂点を接続して細い帯状の掛勾部12を形成している。掛勾部12は、必ずしも本体10の前端を伸長して両端を縫い合わせたりて接続することのみにより形成するのではなく、本体10と一体的に形成してもよい。本体10の素材は、足をある程度締め付けてフィットする伸縮性のある生地であれば特に限定されないが、靴下としての通気性や抗菌性を有するものが好適である。ベルト体11の素材も特に限定されないが、足首にフィットする伸縮性のある生地が好適であり、また、本体とは異なり、足首周辺に余計な刺激を与えないように薄手の生地を用いることが望ましい。
【0023】
本体10は、足のリスフラン関節からショパール関節にかけての部位の全周に密着して覆う形状とし、掛勾部12は足指の第二趾(人差し指)と第三趾(中指)の間の股部に引っ掛けて本体の前端を固定可能としている。そのため、装着時には足指すべて、および、リスフラン関節付近よりも前方の足の甲と足裏の大部分が露出する。特に、足裏の前方では、母趾球・小指球が概ね露出しており、掛勾部12の両側縁はそれぞれ母趾球と小趾球を避けるようにそれらの後方外縁に沿って湾曲し、母趾球・小指球の後方麓周に当接する形状としている。また、足裏の後方ではショパール関節の直下及び両側面の部位に本体10の後端縁が当接する形状としている。
【0024】
かかる形状により、本体10の後端縁がショパール関節の内側を通る足根管の上の皮膚を軽く締め付けて刺激を与えることにより、足根管内の深足底神経に体性反射を惹起し、深足底神経に支配される足底筋が収縮する。これにより、無意識に足指が地面を掴むように内屈するとともに長(母)趾屈筋・短(母)趾屈筋が足底筋膜を引っ張って縦横のアーチ形状を形成させる。
【0025】
また、掛勾部12を第二趾と第三趾の間の股部に引っ掛けるようにしたことにより、股部の皮膚に与えられた刺激が、第一~第三趾を支配する前底神経において体性反射を惹起し、第一~第三趾を屈曲させるとともに、第二趾・第三趾と連動して第四・第五趾も屈曲するため、無意識にすべての足指を足指に地面を掴むように内屈させる。この際、足指を屈曲させる長(母)趾屈筋・短(母)趾屈筋が足底筋膜を引っ張ることで足裏の縦アーチ形状の形成を促進する。また、足指の屈曲は手指ほどではないにしても物を掴む方向に動作するため、MP関節付近で足裏の中央部が上方にやや持ち上がり、足裏前方の横アーチ形状の形成も促進される。
【0026】
さらに、掛勾部12の足裏側の両側縁をそれぞれ母趾球と小趾球の後方外縁に沿って湾曲するように構成しているため、掛勾部12の両側縁の縫製部分が土踏まずの前側の足裏、中足骨の下部に軽く当接して皮膚へ刺激を与え、この刺激により惹起された体性反射が足底筋と足底筋膜を収縮させることで、やはり、無意識に足裏のアーチ形状の形成が促進される。
【0027】
以上のように、実施形態に係る靴下1は、簡易な構造ながら、本体10の後端縁部によるショパール関節付近への刺激、掛勾部12による第二趾と第三趾の間の股部への刺激、掛勾部12の足裏側の湾曲させた両側縁による母趾球・小指球の後方麓周部への刺激というごく僅かな刺激を同時かつ複合的に与えて体性反射を惹起することで、機械的な矯正手段を用いることなく、足指と足裏の筋肉に自発的にアーチ形状を形成させることができるのである。
【0028】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明したが、本発明は、必ずしも上述した構成にのみ限定されるものではなく、本発明の目的を達成し、効果を有する範囲内において、適宜変更実施することが可能なものであり、本発明の技術的思想の範囲内に属する限り、それらは本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係る靴下は、足裏のアーチ形状を回復させる効果により、偏平足の改善や足の筋肉が衰えた高齢者の歩行能力の改善に有効であるだけでなく、健常者の身体の姿勢の改善やスポーツ時の運動能力の向上にも有効である。また、本発明に係る靴下は、裸足の状態での単独の使用でも効果を発揮するが、通常の靴下の下に履くアンダーソックスとして履いても当然有効である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施形態に係る靴下1の斜視図
図2】実施形態に係る靴下1の側面図
図3】実施形態に係る靴下1の底面図
図4】実施形態に係る靴下1の平面図
図5】実施形態に係る靴下1を側面から見た透視図
図6】足の骨格・関節を表す参考図
図7】足裏の筋肉を表す参考図
図8】足裏の神経を表す参考図
【符号の説明】
【0031】
1 靴下
10 本体
11 ベルト部
12 掛勾部
13 縫製部分(前方)
14 縫製部分(後方)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8