IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電池 図1
  • 特開-電池 図2
  • 特開-電池 図3
  • 特開-電池 図4
  • 特開-電池 図5
  • 特開-電池 図6
  • 特開-電池 図7
  • 特開-電池 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015658
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/184 20210101AFI20240130BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/176 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/55 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/188 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/133 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/553 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/191 20210101ALI20240130BHJP
【FI】
H01M50/184 A
H01M50/103
H01M50/15
H01M50/176
H01M50/55 101
H01M50/188
H01M50/133
H01M50/553
H01M50/533
H01M50/191
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117877
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 一生
【テーマコード(参考)】
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA01
5H011EE04
5H011FF04
5H011GG02
5H011HH09
5H011KK01
5H043AA02
5H043AA13
5H043BA19
5H043CA03
5H043CA04
5H043CA12
5H043CA13
5H043DA09
5H043DA11
5H043DA13
5H043EA15
5H043EA16
5H043EA22
5H043HA06D
5H043HA06E
5H043HA31D
5H043HA31E
5H043JA11D
5H043JA11E
5H043JA12D
5H043JA12E
5H043KA08D
5H043KA08E
5H043KA09D
5H043KA09E
(57)【要約】
【課題】信頼性が好適に向上された電池を提供すること。
【解決手段】ここで開示される電池100の好適な一態様では、正負極それぞれの電極を有する電極体10と、開口部3を有し、電極体10を収容するケース本体2と、端子装着孔8を有し、開口部3を封口する封口板4と、一端がケース本体2の内部で正負極のいずれかの電極と電気的に接合され、他端が端子装着孔8に挿通されて封口板4の外側面7に露出する集電端子20と、封口板4および集電端子20の少なくとも一部を絶縁する絶縁部材30と、を備えており、封口板4に、複数の凹部4aが形成されており、凹部4aには、凹部4aに対向する絶縁部材30が充填されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正負極それぞれの電極を有する電極体と、
開口部を有し、前記電極体を収容する電池ケースと、
端子装着孔を有し、前記開口部を封口する封口板と、
一端が前記電池ケースの内部で前記正負極のいずれかの電極と電気的に接合され、他端が前記端子装着孔に挿通されて前記封口板の外側に露出する電極端子と、
前記封口板および前記電極端子の少なくとも一部を絶縁する絶縁部材と、
を備えた電池であって、
前記封口板および前記絶縁部材の少なくともいずれか一方に、一または複数の凹部が形成されており、
前記封口板に前記凹部が形成されている場合、該凹部には、該凹部に対向する前記絶縁部材が充填されており、
前記絶縁部材に前記凹部が形成されている場合、該凹部には、該凹部に対向する前記封口板が埋設されている、電池。
【請求項2】
前記封口板に前記凹部が形成されている場合、該凹部の深さは、該凹部の周縁における前記封口板の厚みの少なくとも1/5であり、
前記絶縁部材に前記凹部が形成されている場合、該凹部の深さは、該凹部の周縁における前記絶縁部材の厚みの少なくとも1/5である、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記凹部は、前記封口板および前記絶縁部材の少なくともいずれか一方に複数形成されており、
前記複数の凹部は、前記電極端子の周囲において、該電極端子を中心点とした場合に、点対称となる位置にそれぞれ形成されている、請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
前記一または複数の凹部のそれぞれは、その開口部から視て円形状または楕円形状である、請求項1または2に記載の電池。
【請求項5】
前記端子装着孔は円筒状に形成されており、
前記電極端子の前記端子装着孔に挿通される部分は円筒状に形成されており、
前記凹部のそれぞれにおいて、少なくとも前記電極端子の円筒状部分の回転方向と対向する部分において、開口部の角がR形状に形成されている、請求項1または2に記載の電池。
【請求項6】
前記封口板の厚みは、1mm以上である、請求項1または2に記載の電池。
【請求項7】
前記絶縁部材は、絶縁フィラーを含む、請求項1または2に記載の電池。
【請求項8】
前記電極端子および前記絶縁部材は、一体成形品として備えられている、請求項1または2に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池等の電池は、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の車両駆動用電源などに好適に用いられている。かかる電池は、例えば、電極端子と封口板とを絶縁するための絶縁部材を備えている。例えば、下記特許文献1には、かかる構成の電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-086813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者の検討によると、モジュール締結時や拘束後の走行車両振動によって、電極端子に対してその回転軸を中心にはたらく力(以下、単に「トルク」ともいう)がかかることがあり、これによって、電極端子-絶縁部材-封口板の接合部や絶縁部材が損傷するおそれがあることが分かった。
【0005】
本開示は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、その主な目的は、信頼性が好適に向上された電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を実現するべく、本開示は、正負極それぞれの電極を有する電極体と、開口部を有し、上記電極体を収容する電池ケースと、端子装着孔を有し、上記開口部を封口する封口板と、一端が上記電池ケースの内部で上記正負極のいずれかの電極と電気的に接合され、他端が上記端子装着孔に挿通されて上記封口板の外側に露出する電極端子と、上記封口板および上記電極端子の少なくとも一部を絶縁する絶縁部材と、を備えた電池であって、上記封口板および上記絶縁部材の少なくともいずれか一方に、一または複数の凹部が形成されており、上記封口板に上記凹部が形成されている場合、該凹部には、該凹部に対向する上記絶縁部材が充填されており、上記絶縁部材に上記凹部が形成されている場合、該凹部には、該凹部に対向する上記封口板が埋設されている電池を提供する。
【0007】
このように、封口板および絶縁部材の少なくともいずれか一方に凹部を設けた場合、電極端子にかかるトルクによって生じる荷重を該凹部によって好適に受けることができる。これによって、電極端子にかかるトルクを分散させることができるため、上述した接合部や絶縁部材の損傷を好適に抑制することができる。したがって、本開示によると、信頼性が好適に向上された電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る電池を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
図3図3は、図1の封口板を模式的に示す上面図である。
図4図4は、第2実施形態に係る封口板を模式的に示す上面図である。
図5図5は、図4のV-V線に沿う模式的な縦断面図である。
図6図6は、第3実施形態に係る図2対応図である。
図7図7は、第4実施形態に係る図2対応図である。
図8図8は、図7の第2鍔部の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術のいくつかの好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本開示の実施に必要な事柄(例えば、本開示を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本開示は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本開示を限定することを意図したものではない。
【0010】
また、各図は、模式図であり、必ずしも実際の実施品が忠実に反映されたものではない。以下では、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。ここでは、図中において、前、後、上、下、左、右は、それぞれF、Rr、U、D、L、Rで表す。ただし、前、後、上、下、左、右は説明の便宜上の方向に過ぎず、電池の設置態様等を限定するものではない。また、図中の回転方向D1は説明の便宜上の方向に過ぎず、集電端子(電極端子)の回転方向を限定するものではない。そして、以下の説明は、ここで開示される技術を以下の実施形態に限定することを意図したものではない。また、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、A以上B以下の意と共に、「Aより大きい」および「Bより小さい」の意を包含するものとする。
【0011】
なお、本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、電解質を介して正極と負極の間で電荷担体が移動することによって繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般をいう。電解質は、液状電解質(電解液)、ゲル状電解質、固体電解質のいずれであってもよい。かかる二次電池は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)の他に、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)等も包含する。以下では、リチウムイオン二次電池を対象とした場合の実施形態について説明する。
【0012】
<電池の構成>
図1は、電池100を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、電池100は、電池ケース1と、電極体10と、集電端子20(電極端子)と、絶縁部材30とを備えている。図1では、電池ケース1のうちの一部品である封口板4に集電端子20と、絶縁部材30とが一体成形されたアッセンブリ部品(以下、封口板アッセンブリ4Aと呼ぶ)と、その他の部品とを分離して図示している。さらに図1では、負極に関して、封口板4と集電端子20と絶縁部材30とを分離して図示している。
【0013】
電池ケース1は、ケース本体2と封口板4とを備えている。ケース本体2および封口板4は、電池ケース1を構成するケース部材の一例である。ケース本体2は、電極体10と電解液とを収容している。ケース本体2は、略直方体の扁平な角型の容器である。なお、他の実施形態では、電池ケース1の形状は円筒状等その他の形状であってもよい。ケース本体2は、対向する幅広面を構成する一対の側面の間の一側面が開口している。ケース本体2としては、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金等の金属製のものを用いることができる。
【0014】
封口板4は、ケース本体2の開口部3を封口する部材である。図1では分離状態で図示しているが、電池100の完成品では、封口板4はケース本体2の開口部3の周縁に接合されている。封口板4としては、例えば、アルミニウムまたはアルミ合金等の金属製のものを用いることができる。封口板4は、電池100の内部側を向いた内側面6と外部側を向いた外側面7とを有している。封口板4は、また、内側面6と外側面7とを貫通する端子装着孔8を有している。端子装着孔8は、封口板4の正極側と負極側に1個ずつ設けられている。端子装着孔8によって電池ケース1の内部と外部とは連通している。端子装着孔8の形状は、ここでは円筒状であるが、例えば矩形状等の種々の形状であってもよい。特に限定されるものではないが、封口板4の厚み(図2のSを参照)は、例えば0.5mm以上とすることができ、後述する凹部4aが形成され易いという観点から、好ましくは1mm以上であり、例えば2mm以上であってもよい。また、封口板4の厚みの上限は、例えば10mm以下であり、電池100の体積容量を好適に維持するという観点から、好ましくは5mm以下である。
【0015】
封口板4は、電池ケース1の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁5が設けられている。また、電池ケース1には、電解液を注入するための注液孔9が設けられている。
【0016】
電極体10は、ケース本体2に収容されている。電極体10は、例えば、絶縁フィルム(図示は省略)などで覆われた状態で、ケース本体2に収容されている。電極体10は、正極シート11と、負極シート12と、正極シート11と負極シート12との間に配置されたセパレータシート(図示省略)とを備えている。正極シート11、負極シート12、およびセパレータシートは、それぞれ長尺の帯状の部材である。正極シート11、負極シート12、およびセパレータシートは重ねられ、ケース本体2内で捲回されている。なお、ここで開示される技術は、例えば電極体が、正極シートおよび負極シートがセパレータシートを介して重ねられた積層型電極体である場合にも適用することができる。また、正極シートおよび負極シートとしては、例えばタブを有するものを用いることもできる。
【0017】
正極シート11は、予め定められた幅および厚さの金属箔(例えば、アルミニウム箔)の両面に、正極活物質を含む正極活物質層が形成された部材である。なお、他の実施形態では、正極シートの片面のみに正極活物質層が形成されていてもよい。正極活物質は、例えば、リチウムイオン二次電池では、リチウム遷移金属複合材料のように、充電時にリチウムイオンを放出し、放電時にリチウムイオンを吸収しうる材料である。正極活物質は、一般的にリチウム遷移金属複合材料以外にも種々提案されており、特に限定されない。
【0018】
負極シート12は、予め定められた幅および厚さの金属箔(例えば、銅箔)の両面に、負極活物質を含む負極活物質層が形成された部材である。なお、他の実施形態では、負極シートの片面のみに負極活物質層が形成されていてもよい。負極活物質は、例えば、リチウムイオン二次電池では、天然黒鉛のように、充電時にリチウムイオンを吸蔵し、充電時に吸蔵したリチウムイオンを放電時に放出しうる材料である。負極活物質は、一般的に天然黒鉛以外にも種々提案されており、特に限定されない。
【0019】
セパレータシートには、例えば、所要の耐熱性を有し、電解質が通過しうる多孔質の樹脂シートが用いられる。セパレータシートについても種々提案されており、特に限定されない。
【0020】
電解液としては、この種の電池に用いられ得る従来公知のものを使用可能であり、例えば、有機溶媒(非水溶媒)中に、支持塩を含有させたものを用いることができる。
【0021】
ケース本体2内で捲回された正極シート11は、一端がケース本体2内の左端付近にくるように配置される。負極シート12は、一端がケース本体2内の右端付近にくるように配置される。図1では分離状態で図示しているが、電池100の完成品では、正極シート11および負極シート12には、それぞれ1つの集電端子20が溶接されている。
【0022】
封口板アッセンブリ4Aは、封口板4と、集電端子20と、絶縁部材30とが一体成形(インサート成形)で組み付けられたアッセンブリ部品である。即ち、電極端子20および絶縁部材30は、一体成形品として備えられている。かかる構成によると、封口板アッセンブリ4Aを容易に取り外すことができるため、作業性の観点から好ましい。集電端子20は、一部が電池ケース1の内部に配置され、他の一部が電池ケース1の外部に配置されている。また前述のように図示は省略しているが、集電端子20は、電池ケース1の内部において電極体10に接続されている。なお、負極側の集電端子20は、例えば、銅または銅合金で形成されている。正極側の集電端子20は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成されている。
【0023】
図2は、封口板4の端子装着孔8付近の断面図である。図2は、図1のII-II断面図である。図2に示すように、集電端子20は、台座部21と、電極体接続部22と、軸部23と、外部接続部24とを備えている。なお、以下では、電極体10の電極を電池ケース1の外部に取り出す、端子装着孔8付近の構成を「電極取出部」とも称する。
【0024】
台座部21は、四角形の平板状に構成され、水平方向に延びている。図2に示すように、台座部21の前後方向の長さは端子装着孔8よりも長い。図示は省略するが、左右方向に関しても、台座部21の長さは端子装着孔8よりも長い。台座部21は、径方向の大きさが端子装着孔8よりも大きい。
【0025】
電極体接続部22は、電池ケース1の内部に配置され、電極体10に接続されている。図1に示すように、電極体接続部22は板状に形成され、台座部21の後端から下方に延びている。電極体接続部22は中間部で前方側に向かって屈折している。電極体接続部22は、屈折部分よりも下方では再び下方に向かって延びている。この屈折により、電極体接続部22の先端は、前後方向に関して台座部21の中央部に位置している。
【0026】
軸部23は、電極体接続部22と電池ケース1の外部に配置された外部接続部24との間に配置され、端子装着孔8に挿通されている。軸部23は、台座部21から上方に延びている。図2に示すように、軸部23の前後方向の長さは台座部21および端子装着孔8よりも短い。図示は省略するが、左右方向に関しても、軸部23の長さは台座部21および端子装着孔8よりも短い。そのため、軸部23は、端子装着孔8の内周面とは離間している。
【0027】
外部接続部24は、軸部23の上方に設けられている。外部接続部24は、封口板4の外側面7に露出している。図2に示すように、外部接続部24の前後方向の長さは台座部21および端子装着孔8よりも短く、軸部23よりも長い。図示は省略するが、左右方向に関しても、外部接続部24の長さは台座部21および端子装着孔8よりも短く、軸部23よりも長い。外部接続部24は、端子装着孔8に挿通可能な大きさに構成されている。台座部21、軸部23、および外部接続部24の大きさの差により、軸部23は台座部21および外部接続部24に対してくびれたようになっている。
【0028】
絶縁部材30は、封口板4および集電端子20の少なくとも一部を絶縁する。また、絶縁部材30は、ここでは、端子装着孔8に少なくともその一部が挿通された状態で配置されている。本実施形態では、絶縁部材30は、端子装着孔8と集電端子20との間を埋めるように封口板4および集電端子20と一体成形されている。絶縁部材30は、端子装着孔8と集電端子20の軸部23との間に位置する筒状部31と、封口板4の内側面6に沿って水平方向に延びる第1鍔部32と、封口板4の外側面7に沿って水平方向に延びる第2鍔部33とを有している。筒状部31と第1鍔部32と第2鍔部33とは一体に形成されている。図2に示すように、第1鍔部32および第2鍔部33の前後方向の長さは、外部接続部24よりも長い。図示は省略するが、左右方向に関しても、第1鍔部32および第2鍔部33の長さは、集電端子20の台座部21および外部接続部24よりも長い。
【0029】
図3に示すように、本実施形態では、封口板4の外側面7に複数(ここでは、8つ)の凹部4aが形成されている。ただし、封口板4が有する凹部の数はこれに限定されず、例えば1つであってもよい。また、図2に示すように、凹部4aには、凹部4aに対向する絶縁部材30の少なくとも一部が充填されている。かかる構成によると、集電端子20にかかるトルクによって生じる荷重を凹部4aによって好適に受けることができる。これによって、集電端子20にかかるトルクを分散させることができるため、集電端子20-絶縁部材30-封口板4の接合部や絶縁部材30の損傷を好適に抑制することができる。なお、凹部4aを有する封口板4は、例えば金型等によって製造することができる。
【0030】
特に限定されるものではないが、凹部4aの深さ(図2のTを参照)は、例えば凹部4aの周縁における封口板4の厚み(図2のSを参照)の1/10以上であり、上述した荷重をより好適に受けるという観点から、好ましくは1/5以上であり、例えば1/4以上であってもよい。また、凹部4aの深さの上限は、例えば封口板4の厚みの1/2以下であり、1/3以下であってもよい。
【0031】
特に限定されるものではないが、凹部4a1つあたりの底面の面積は、封口板4の外側面7の孔や凹部を設ける前の面積を100%としたとき、例えば1%以上であり、上述した荷重をより好適に受けるという観点から、好ましくは2%以上であり、例えば3%以上であってもよい。また、凹部4a1つあたりの底面の面積の上限は、例えば、封口板4の外側面7の面積の10%以下であり、7%以下や5%以下であってもよい。
【0032】
本実施形態では、凹部4aは、集電端子20の周囲において、電極端子20を中心点とした場合に、点対称となる位置にそれぞれ形成されている(図3を参照,図3では便宜上、集電端子の掲載を省略している)。かかる構成によると、上述した荷重を凹部4aによってより効果的に受けることができるため、集電端子20-絶縁部材30-封口板4の接合部や絶縁部材30の損傷をより好適に抑制することができる。ただし、他の実施形態では、凹部は集電端子20を中心点として点対称となる位置に形成されていなくてもよい。
【0033】
図3に示すように、本実施形態では、凹部4aは、その開口部から視て円形状である。ただし、凹部の開口部から視た形状はこれに限定されず、楕円形状、矩形状、三角形状等その他の種々の形状であってもよい。このなかでも、凹部の開口部から視た形状が円形状や楕円形状の場合、角部を有しないため、該角部への応力集中を防止することができるため好ましい。また、封口板に複数の凹部が存在する場合、該複数の凹部の開口部から視た形状は全て同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0034】
絶縁部材30は、例えば、PFA(ペルアルコキシアルカン)樹脂等の樹脂により形成されている。ただし、絶縁部材30は、成形性、絶縁性、シール性、および電解液に対する耐性を備えた材料であればよく、PFA樹脂には限定されない。他の好適な絶縁部材30の材料としては、例えば、PPS(ポリフェニレンスルファイド)樹脂が挙げられる。なお、絶縁部材30の成形時の温度と電池100の使用時の温度との差を考慮し、封口板4の線膨張率と絶縁部材30の線膨張率とは近い方が好ましい。そこで、好適には、絶縁部材30には、PFA樹脂等の他に、線膨張率を調整するためのフィラー(例えば、絶縁フィラー)が添加されてもよい。
【0035】
かかるフィラーの一例としては、ガラス成分を主体として構成されるガラスフィラーが挙げられる。ここで、「ガラス成分を主体として構成される」とは、フィラー全体を100質量%としたとき、ガラス成分が例えば90質量%以上、95質量%以上、99質量%以上(100質量%であってもよい)含有されることを意味し得る。また、ガラス成分の一例としては、SiO-Al-CaO-SrO系ガラス、SiO-B-ZnO-NaO系ガラス等が挙げられる。ガラスフィラーの平均粒子径は、例えば1μm~20μmや5μm~10μmの範囲内とすることができる。なお、本明細書において「平均粒子径」とは、例えばレーザ回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒径の小さい側から積算値50%に相当する粒径を意味する。ガラスフィラーとしては、例えば市販のものを用いることができる。
【0036】
<電池の製造方法>
上記のような電池100は、例えば、(1)用意工程と(2)レーザ溶接工程とを包含する製造方法によって製造できる。ここでは、用意工程に、(1A)インサート成形工程をさらに含んでいる。
【0037】
(1)用意工程では、電池ケース1と封口板4とを用意する。さらに、その他上記したような必要部材を用意する。ここでは、封口板4は、開口部から視て円形状の凹部4aを複数備えており、複数の凹部4aは集電端子20に対して点対称となるように形成されている。
【0038】
(1A)インサート成形工程では、封口板4に集電端子20と絶縁部材30とを一体化してアッセンブリ部品(例えば、封口板アッセンブリ4A)を作製する。封口板アッセンブリ4Aは、封口板4、集電端子20、および絶縁部材30をインサート成形することで作製できる。これにより、部品点数を削減できると共に、従来のリベットを用いる方法に比べて導電経路を簡便に形成できる。インサート成形は、例えば、特開2021-086813号公報、特開2021-086814号公報、特許第3986368号公報、特許第6648671号公報等に記載されるように、従来公知の方法に従って行うことができる。例えば、下型と上型とを有する成形金型を用いて、部品セット工程、位置決め工程、上型セット工程、射出成形工程、上型リリース工程、および部品取出工程、を含む方法によって作製できる。
【0039】
部品セット工程では、集電端子20が封口板4の端子装着孔8に挿通された後、封口板4が下型に装着される。位置決め工程では、集電端子20が位置決めされ、固定される。上型セット工程では、上型が、下型とともに封口板4および集電端子20を上下方向に挟むように装着される。射出成形工程では、まず成形金型が加熱される。次に、成形金型に溶融樹脂が注入される。溶融樹脂は上型から端子装着孔8を通って下型に流される。その後、成形金型と成形品とが冷却される。これにより、絶縁部材30と封口板4と集電端子20とが一体化される。上型リリース工程では、上型が下型から離間される。部品取出工程では、成形品が下型から取り外される。
【0040】
(2)レーザ溶接工程では、電池ケース1の内部に電極体10が収容された後、電池ケース1の開口部3に封口板4が嵌合される。次に、電池ケース1と封口板4との合わせ目(嵌合部)が、レーザで溶接接合される。なお、レーザ溶接に使用するレーザ光の種類やレーザ溶接の条件については、従来と同様よく、特に限定されない。嵌合部が全周に亘って溶接接合されることで、封口板4と電池ケース1とが隙間無く溶着される。その後、注液孔9から電解液を注入し、注液孔9を封止部材で塞ぐことによって、電池100を密閉する。以上のようにして、電池100を製造することができる。
【0041】
電池100は各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。また、電池100を複数備えた組電池として用いることもできる。
【0042】
以上、本開示のいくつかの実施形態について説明したが、上記第1実施形態は一例に過ぎない。本開示は、他にも種々の形態にて実施することができる。本開示は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0043】
例えば、上記第1実施形態では、正極側および負極側において、封口板4の凹部4aに凹部4aに対向する絶縁部材30の一部が充填されているが、これに限定されない。正極側および負極側のいずれか一方のみを、かかる構成とすることもできる。また、例えば、上記第1実施形態では、一体成形(インサート成形)によって封口板アッセンブリ4Aを製造しているが、これに限定されない。ここで開示される技術は、一体成形以外の方法によって製造された封口板アッセンブリについても適用することができる。
【0044】
図4は、第2実施形態に係る封口板を模式的に示す上面図である。図5は、図4のV-V線に沿う模式的な縦断面図である。図4に示すように、端子装着孔108は円筒状に形成されており、また、集電端子20の端子装着孔108に挿通される部分は円筒状に形成されている。図4および図5に示すように、第2実施形態では、凹部104のそれぞれにおいて、少なくとも集電端子20の円筒状部分の中心軸を中心とした回転方向(図4のD1方向)に対向する部分において、開口部の角(ここでは、縁104a)がR形状である。かかる構成によると、凹部104にかかる応力の緩和や、集電端子20-絶縁部材30-封口板104の接合部の強度の補強がより好適に実現されるため、好ましい。なお、縁104aは、ここではD1方向に対して2箇所形成されているが、1箇所のみに形成されていてもよい。また、他の縁104aは、ここではR形状としていないが、例えばR形状であってもよい。凹部104のその他の構成(例えば、大きさや深さ等)については、適宜凹部4aの説明を参照することができる。また、特に限定されないが、縁104aのRの大きさは、概ね0.05~30(例えば0.1~10)とすることができる。なお、凹部が他の形状(例えば、円形状や楕円形状等)の場合についても、少なくともD1方向に対向する角をR形状とすることができる。
【0045】
例えば、上記第1実施形態では、封口板4の外面側7に凹部4aが形成されているが、これに限定されない。ここで、図6は、第3実施形態に係る図2対応図である。図6に示すように、第3実施形態では、封口板204の内面側206に、凹部204aが形成されている。なお、図示は省略するが、図6の封口板を示す斜視図は、図3の外側面7の表記を内側面6に変更したものということができる。また、他の実施形態では、封口板4が有する端子装着孔8に凹部が形成されていてもよい。これら凹部の構成(例えば、大きさや深さ等)については、適宜凹部4aの説明を参照することができる。
【0046】
例えば、上記第1実施形態では、封口板4に凹部4aが形成されているが、これに限定されない。ここで、図7は、第4実施形態に係る図2対応図であり、図8は、図7の第2鍔部の構成を示す模式図である。図8において、333Aは第2鍔部333の外側面を示しており、333Bは第2鍔部333の内側面を示している。図7および図8に示すように、第4実施形態では、絶縁部材330に、凹部333aが複数(ここでは、8つ)形成されている。この場合、凹部333aには、凹部333aに対向する封口板304の一部が埋設されている。かかる構成によると、集電端子20にかかるトルクによって生じる荷重を凹部333aによって好適に受けることができる。これによって、集電端子20にかかるトルクを分散させることができるため、集電端子20-絶縁部材330-封口板304の接合部や絶縁部材330の損傷を好適に抑制することができる。かかる構成は、例えば凹部333aに対応する凸部を有する封口板を用いて、金型成形等によって実現することができる。なお、凹部の開口部の形状は、凹部4aの説明で列挙したような種々の形状とすることができる。また、凹部において、少なくともD1方向に対向する角をR形状とすることができる。
【0047】
特に限定されるものではないが、凹部333aの深さ(図7のTを参照)は、例えば凹部333aの周縁における絶縁部材330の第2鍔部333の厚み(図7のSを参照)の1/10以上であり、上述したような荷重をより好適に受けるという観点から、好ましくは1/5以上であり、例えば1/4以上であってもよい。また、凹部333aの深さの上限は、例えば第2鍔部333の厚みの1/2以下であり、例えば1/3以下であってもよい。また、特に限定されるものではないが、絶縁部材330(詳しくは、第2鍔部333)の厚みSは、例えば1mm以上とすることができ、凹部333aが形成され易いという観点から、好ましくは2mm以上であり、例えば3mm以上であってもよい。また、第2鍔部333の厚みSの上限は、例えば10mm以下であり、5mm以下であってもよい。
【0048】
特に限定されるものではないが、凹部333a1つあたりの底面の面積は、第2鍔部の内側面333Bの孔や凹部を設ける前の面積を100%としたとき、例えば1%以上であり、上述した荷重をより好適に受けるという観点から、好ましくは2%以上であり、例えば3%以上であってもよい。また、凹部333a1つあたりの底面の面積の上限は、例えば、第2鍔部の内側面333Bの面積の10%以下であり、7%以下や5%以下であってもよい。
【0049】
なお、上記第1~4実施形態のうち、2種以上を組み合わせた構成によっても、ここで開示される技術の効果を好適に得ることができる。また、105,306,109は、図1の5,6,9にそれぞれ対応し、107,207,および307は、図1の7に対応し、230,231および331,232および332は、図1の30,31,および32にそれぞれ対応している。
【0050】
以上のとおり、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項(item)に記載のものが挙げられる。
項1:正負極それぞれの電極を有する電極体と、開口部を有し、上記電極体を収容する電池ケースと、端子装着孔を有し、上記開口部を封口する封口板と、一端が上記電池ケースの内部で上記正負極のいずれかの電極と電気的に接合され、他端が上記端子装着孔に挿通されて上記封口板の外側に露出する電極端子と、上記封口板および上記電極端子少なくとも一部を絶縁する絶縁部材と、を備えた電池であって、上記封口板および上記絶縁部材の少なくともいずれか一方に、一または複数の凹部が形成されており、上記封口板に上記凹部が形成されている場合、該凹部には、該凹部に対向する上記絶縁部材が充填されており、上記絶縁部材に上記凹部が形成されている場合、該凹部には、該凹部に対向する上記封口板が埋設されている、電池。
項2:上記封口板に上記凹部が形成されている場合、該凹部の深さは、該凹部の周縁における上記封口板の厚みの少なくとも1/5であり、上記絶縁部材に上記凹部が形成されている場合、該凹部の深さは、該凹部の周縁における上記絶縁部材の厚みの少なくとも1/5である、項1に記載の電池。
項3:上記凹部は、上記封口板および上記絶縁部材の少なくともいずれか一方に複数形成されており、上記複数の凹部は、上記電極端子の周囲において、該電極端子を中心点とした場合に、点対称となる位置にそれぞれ形成されている、項1または項2に記載の電池。
項4:上記一または複数の凹部のそれぞれは、その開口部から視て円形状または楕円形状である、項1~項3のいずれか一つに記載の電池。
項5:上記端子装着孔は円筒状に形成されており、上記電極端子の上記端子装着孔に挿通される部分は円筒状に形成されており、上記凹部のそれぞれにおいて、少なくとも上記電極端子の円筒状部分の回転方向と対向する部分において、開口部の角がR形状に形成されている、項1~項4のいずれか一つに記載の電池。
項6:上記封口板の厚みは、1mm以上である、項1~項5のいずれか一つに記載の電池。
項7:上記絶縁部材は、絶縁フィラーを含む、項1~項6のいずれか一つに記載の電池。
項8:上記電極端子および上記絶縁部材は、一体成形品として備えられている、項1~項7のいずれか一つに記載の電池。
【符号の説明】
【0051】
1 電池ケース(ケース部材)
2 ケース本体(ケース部材)
3 開口部
4,104,204,304 封口板(ケース部材)
4a,104a,204a,333a 凹部
4A 封口板アッセンブリ
5,105 安全弁
6,206,306 内側面
7,107,207,307 外側面
8,108 端子装着孔
9,109 注液孔
10 電極体
11 正極シート
12 負極シート
20 集電端子(電極端子)
21 台座部
22 電極体接続部
23 軸部
24 外部接続部
30,230,330 絶縁部材
31,231,331 筒状部
32,232,332 第1鍔部
33,233,333 第2鍔部
100 電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8