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特開2024-156586高所作業用安全帯に使用するカラビナ
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  • 特開-高所作業用安全帯に使用するカラビナ 図1
  • 特開-高所作業用安全帯に使用するカラビナ 図2
  • 特開-高所作業用安全帯に使用するカラビナ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156586
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】高所作業用安全帯に使用するカラビナ
(51)【国際特許分類】
   A62B 35/00 20060101AFI20241029BHJP
   C08L 61/10 20060101ALI20241029BHJP
   C08L 77/06 20060101ALI20241029BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20241029BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20241029BHJP
   F16B 45/02 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A62B35/00 J
C08L61/10
C08L77/06
C08K7/06
C08J5/04 CEZ
F16B45/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023080435
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】511299953
【氏名又は名称】グラストップ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】509284820
【氏名又は名称】天満 基博
(71)【出願人】
【識別番号】522500549
【氏名又は名称】松吉 恭裕
(72)【発明者】
【氏名】天満 基博
(72)【発明者】
【氏名】松吉 恭裕
【テーマコード(参考)】
2E184
3J038
4F072
4J002
【Fターム(参考)】
2E184KA01
2E184KA11
2E184LA16
3J038AA01
3J038BA02
3J038BC02
3J038BC04
3J038BC07
4F072AA02
4F072AA07
4F072AB06
4F072AB10
4F072AB14
4F072AD13
4F072AH03
4F072AH24
4F072AH49
4F072AJ04
4F072AJ11
4F072AK05
4F072AK14
4F072AL16
4J002CC03W
4J002CL03X
4J002DA016
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD01X
4J002GC00
4J002GM00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リサイクル炭素繊維の有効利用と金属代替材により生産コスト及び二酸化炭素排出量を削減するためのものであり、材料強度と軽量化を実現する。
【解決手段】本発明は、熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂と、10mm~15mmの範囲の繊維長さである一種類もしくは二種類以上の炭素繊維と、バインダであるアラミド繊維とを含む抄造体を素形材にして形成されている炭素繊維強化プラスチック板からなる高所作業用安全帯のカラビナである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂と、10mm~15mmの範囲の繊維長さである一種類もしくは二種類以上の炭素繊維と、バインダであるアラミド繊維とを含む抄造体を素形材にして形成されている炭素繊維強化プラスチック板からなる高所作業用安全帯のカラビナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄やステンレスと同等の曲げ強度が期待でき、鉄の五分の一の軽さを実現する炭素繊維強化プラスチック製の高所作業用安全帯に使用するカラビナに関するものである。
【背景技術】
【背景技術】
【0002】
従来、一例として実用新案登録第3233300号(特許文献1)鉄製の手持ち工具とほぼ同等の引張荷重強度を有し、4分の1~7分の1の重さの高所作業用安全帯に使用するカラビナの提供が可能となり、防爆や、高所作業の安全性確保など有益なものである。実測値として、リサイクルカーボンの炭素繊維と熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂から成る本発明のカラビナと、SUS304の比較では曲げ強さは、本発明の場合は646MPaであったのに対して上記金属の曲げ強さに相当すると考えられている抗折力が、520MPaで、引張荷重強度は、304MPaに対して520MPaであった。引張強度はやや劣るもののアルミニュウムの70~130MPaと比較すると2から三倍の強度があった。
【0003】
また、炭素繊維の廃材は国内航空機メーカー1社で70t/年排出され、この利用方法の開発が喫緊の課題と成っている。その他自動車産業においても炭素繊維補強の水素燃料タンクの廃材も同様である。
しかし、上記の課題解決は未だなされていない。これはリサイクル炭素繊維の生成は開発が進んでおり、溶液法や燃焼法などにより、樹脂分を除去した炭素繊維を取り出すことが可能となっているが、強度不足などにより利用がなされていないのか実情である。熱可塑性樹脂を混合してペレットにしたのち射出成型やトランスファー成型が試みられているが、強度不足により、用途が限定的となっており、リサイクル炭素繊維大きな利用に至っていない。
【0004】
上記金属からの樹脂化による軽量化の課題は、その解決策として発明された実用新案登録第第3225768号考案(特許文献2)があるが、この考案は上記問題を解決するものとして有用なものである。その概要は、炭素繊維強化熱可塑性樹脂から成るものであり、極めて有用なるものであるが、成形上から熱可塑性樹脂を使用せざるを得ないこととなり、強度不足でその利用は限定的である。
また、ガラス繊維に熱硬化性樹脂によるものが特許番号第2907679号(特許文献3)として提案されている。またこの提案の従来例として炭素繊維エポキシ布地で工具表面を覆う方法も開示されているが、金属製の類似品の持つトルクの40%以下の強度しかないため利用が特定されてしまうとのことである。
【0005】
登山用カラビナとして図3に示す落下器1、カラビナ2、止具3、ロックピン4と固定バネ5からなる公開実用新案公報昭和60-15355号公報(特許文献4)であり、炭素繊維とエポキシ系熱硬化性樹脂をペレット状にしてマッチドダイ成型かトランスファー成型を行うことが開示されているが、熱硬化性樹脂の成型温度や曲げ強度が示されておらず安全のためのカラビナとしての解決策が示されていないと言えることとなる。
明細書の記載から樹脂分を飛ばして長繊維を得た後、ペレット状にして上記成型方法を行うものと考えられ、製品化の段階で短繊維を利用するものであり、本発明者らの実験では抄造法と炭素繊維は長繊維の利用で、初めて所望の曲げ強度や引っ張り強さが実現できるものであり、これらの点の開示は上記引用例にはない。
【0006】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3233300号公報
【特許文献2】実用新案登録第3225768号公報
【特許文献3】特許番号第2907679号公報
【特許文献4】公開実用新案公報昭和60-15355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記に鑑み発明されたものであり、炭素繊維強化プラスチック製の高所作業用安全帯に使用するカラビナであり、成形型により強度と軽さを必要とする商品の提供が可能となるものである。その成分割合が40~60w%の炭素繊維と60~40w%の熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂から成り、定着材としてアラミド繊維を全体の中での濃度が0.05から0.08w%になるようにしたことを特徴とする炭素繊維強化プラスチック製の高所作業用安全帯に使用するカラビナ(以下単にカラビナと称する)である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のカラビナは、軽量かつ引張荷重強度が鋼材並みの強度を有する炭素繊維強化プラスチックによる軽量化と、抄造法による強度の向上を達成するものである。
【0010】
本発明のカラビナは、一例として止め具を省略したものを図1に示すものである。図2は従来公知の一般的な抄造法を示すフロー図である。
【0011】
本発明のカラビナは、抄造法を利用するものであるが、この方法は一般的に知られた方法であり、その目的は繊維への樹脂の定着を効率的に行うことができるようにしたものである。
【0012】
本発明のカラビナの抄造法による5mm厚の板材の実施は、炭素繊維45w%と熱硬化性のフェノール樹脂50wt%と、定着材5wt%の混合物を混錬し抄造法により成形するものであり、その厚さは素形材として50mmである。その後乾燥し、140℃で熱プレスにより成形し5mm厚の板材として成形するものである。形状については金型計上で行えるものである。
【0013】
上記実施に際して、一例として繊維長を10mmにした場合のみ曲げ強度は、n数40での平均値は545MPaであった。このことは好適に行えていてSUS304の520MPaに相当することがわかる。
【0014】
上記実施例では、5mm厚の成形を例示したがカラビナの大きさにより、また使用用途により10mm~20mm厚のものとする場合は、素形材を100mm~200mm程度に成形し、上記同様にプレス成型後、10mm~20mm厚に成形するものである。
【発明の効果】
【0015】
鉄製のカラビナとほぼ同等の曲げ強度を有し、比重で換算すると炭素繊維強化プラスチック板の比重は1.5であり、鉄の非常の7.9と比較して5分の1の重さのカラビナの提供が可能となり、防爆や、高所作業の安全性確保など有益なものである。
実測値として、リサイクルカーボンとフェノール樹脂の本発明の炭素繊維強化プラスチック板は650MPaであり、S55C鉄の曲げ強度換算値650MPa、SUS304の520MPaと比較してもほぼ同等といえる。また本発明の引張強度は304MPaであり、専門機関(日本安全帯研究会のインターネット資料による)と腿部での強度は161Kgf必要とのことであるが、本発明のカラビナは2mm/minの速度で200Kgfでは何らの変形も破損もなかった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】 本発明の炭素繊維強化プラスチック板の一例を示す図面代用写真の斜視図である。
図2】 従来公知の一般的な抄造法を示すフロー図である。
図3】 従来例のカラビナを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例を説明すると、10mm長にカットされた炭素繊維とフェノール樹脂とを45wt%対55wt%で定着材を5wt%の割合で大量の水の中で混錬した後、脱水して素形材を成型する。その後、乾燥させるため80℃で3時間乾燥させた後、加圧加熱成形するものである。上記乾燥は水分量が10%程度で、加熱温度は140℃で、5mm厚の成形品を得るため150トンプレスで5分間プレスして成形するものである。
【0018】
上記実施例において、カラビナの実施例を示したが、大きさによりプレス圧や時間は調整するものである。
【0019】
本発明は、抄造法と熱可塑性樹脂により、炭素繊維強化プラスチック板材料の軽量化と防爆機能の実現を達成できた極めて有益なるものであるばかりでなくリサイクルカーボンを利用できるため、鉄製やステンレス製などの板材量や工具を得るための千数百度の温度の溶融作業がないため二酸化炭素削減に大きく貢献できる。
【0020】
また従来、高所での作業において、工具類を腰に保持するため、その重量から腰を痛めることもあったが、軽量のため緩和が期待できカラビナの落下による重大災害の心配も軽減できる。またさらに極めて高い軽量化が実現できたため壁など他のものへの衝突による損傷も軽減できる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は金属に代わる新素材としての機械産業や安全作業において、環境を重視した対策として、また防爆による火災防止、軽量化による大きな効果を有する極めて優れたものである。
図1
図2
図3