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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001566
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】液圧制御ユニット及び診断方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/90 20060101AFI20231227BHJP
   B60T 8/36 20060101ALI20231227BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20231227BHJP
   B60T 8/94 20060101ALI20231227BHJP
   B62L 5/20 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
B60T8/90
B60T8/36
F16K31/06 320
B60T8/94
B62L5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100300
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 拓也
【テーマコード(参考)】
3D246
3H106
【Fターム(参考)】
3D246AA11
3D246BA02
3D246GA01
3D246GB01
3D246HA38A
3D246HA64A
3D246JB11
3D246JB43
3D246KA17
3D246LA18Z
3D246LA33Z
3D246MA04
3D246MA06
3D246MA26
3D246MA32
3H106DA07
3H106DA13
3H106DA22
3H106DC17
3H106EE28
3H106FB29
3H106KK22
(57)【要約】
【課題】本発明は、電源ラインの異常を適切に診断するものである。
【解決手段】本発明に係る液圧制御ユニット及び診断方法では、制御装置の診断部が、電源ライン診断において、電磁弁に印加される電流の電流値が、第1電流値、第1電流値より大きい第2電流値、第2電流値より小さい第3電流値の順に推移する1つの矩形波状のパルス電流を生じさせ、電流値が第1電流値から第2電流値に推移する前後における電源ラインの電圧変化量に基づいて電源ラインの抵抗値を評価する第1抵抗値評価、及び、電流値が第2電流値から第3電流値に推移する前後における電圧変化量に基づいて抵抗値を評価する第2抵抗値評価の結果に基づいて電源ラインの異常を診断し、第1抵抗値評価及び第2抵抗値評価の少なくとも一方では、電圧変化の開始時点及び終了時点の少なくとも一方が互いに異なる複数の電圧変化量が取得されて、抵抗値の評価が複数通り行われる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)のブレーキシステム(10)に用いられる液圧制御ユニット(5)であって、
電源ライン(L1)を介して電源(B1)と電気的に接続され、ホイールシリンダ(24)に生じさせる液圧を制御する電磁弁(31、32)を含む液圧制御機構(51)と、
前記液圧制御機構(51)の動作を制御する制御装置(52)と、
を備え、
前記制御装置(52)は、前記電源(B1)から前記電源ライン(L1)を介して前記電磁弁(31、32)に印加される電流を変化させた際の前記電源ライン(L1)の電圧変化に基づいて、前記電源ライン(L1)の異常を診断する電源ライン診断を行う診断部(52c)を備え、
前記診断部(52c)は、前記電源ライン診断において、
前記電磁弁(31、32)に印加される電流の電流値(C)が、第1電流値(C1)、前記第1電流値(C1)より大きい第2電流値(C2)、前記第2電流値(C2)より小さい第3電流値(C3)の順に推移する1つの矩形波状のパルス電流(P)を生じさせ、
前記パルス電流(P)において前記電流値(C)が前記第1電流値(C1)から前記第2電流値(C2)に推移する前後における前記電源ライン(L1)の電圧変化量に基づいて、前記電源ライン(L1)の抵抗値を評価する第1抵抗値評価を行い、
前記パルス電流(P)において前記電流値(C)が前記第2電流値(C2)から前記第3電流値(C3)に推移する前後における前記電圧変化量に基づいて、前記抵抗値を評価する第2抵抗値評価を行い、
前記第1抵抗値評価及び前記第2抵抗値評価の結果に基づいて、前記電源ライン(L1)の異常を診断し、
前記第1抵抗値評価及び前記第2抵抗値評価の少なくとも一方では、電圧変化の開始時点及び終了時点の少なくとも一方が互いに異なる複数の前記電圧変化量が取得されて、前記抵抗値の評価が複数通り行われる、
液圧制御ユニット。
【請求項2】
前記診断部(52c)は、前記電源ライン(L1)の電圧(V)が安定していると判定される場合に、前記電源ライン診断を行う、
請求項1に記載の液圧制御ユニット。
【請求項3】
前記診断部(52c)は、
前記第1抵抗値評価において、前記電流値(C)が前記第1電流値(C1)になっている状態で取得される前記電源ライン(L1)の電圧(V)である第1電圧(V1)と、前記電流値(C)が前記第2電流値(C2)になっている状態で取得される前記電源ライン(L1)の電圧(V)である第2電圧(V2)とに基づいて、前記電圧変化量を取得し、
前記第2抵抗値評価において、前記第2電圧(V2)と、前記電流値(C)が前記第3電流値(C3)になっている状態で取得される前記電源ライン(L1)の電圧(V)である第3電圧(V3)とに基づいて、前記電圧変化量を取得する、
請求項1に記載の液圧制御ユニット。
【請求項4】
前記第2電圧(V2)の取得タイミングは、前記パルス電流(P)において前記電流値(C)が前記第2電流値(C2)になっている期間のうちの前半よりも後半に偏っている、
請求項3に記載の液圧制御ユニット。
【請求項5】
前記第2電圧(V2)の取得タイミングは複数存在し、
前記診断部(52c)は、取得タイミングが早い前記第2電圧(V2)を用いた前記抵抗値の評価の重みと比べて、取得タイミングが遅い前記第2電圧(V2)を用いた前記抵抗値の評価の重みを重くする、
請求項3に記載の液圧制御ユニット。
【請求項6】
前記第3電圧(V3)の取得タイミングは、前記第2電流値(C2)から前記第3電流値(C3)への推移タイミングから基準時間以上経過したタイミングである、
請求項3に記載の液圧制御ユニット。
【請求項7】
前記第3電圧(V3)の取得タイミングは複数存在し、
前記診断部(52c)は、取得タイミングが早い前記第3電圧(V3)を用いた前記抵抗値の評価の重みと比べて、取得タイミングが遅い前記第3電圧(V3)を用いた前記抵抗値の評価の重みを重くする、
請求項3に記載の液圧制御ユニット。
【請求項8】
前記第1電圧(V1)、前記第2電圧(V2)及び前記第3電圧(V3)の取得タイミングはそれぞれ複数存在し、
前記第2電圧(V2)の取得タイミングの時間間隔は、前記第1電圧(V1)及び前記第3電圧(V3)の各々の取得タイミングの時間間隔と比べて短い、
請求項3に記載の液圧制御ユニット。
【請求項9】
前記第1電圧(V1)、前記第2電圧(V2)及び前記第3電圧(V3)の取得タイミングはそれぞれ複数存在し、
前記第2電圧(V2)の取得タイミングの数は、前記第1電圧(V1)及び前記第3電圧(V3)の各々の取得タイミングの数と比べて少ない、
請求項3に記載の液圧制御ユニット。
【請求項10】
前記電磁弁(31、32)の開閉状態は、前記パルス電流(P)の発生に伴って、開状態と閉状態との間で切り替わる、
請求項1~9のいずれか一項に記載の液圧制御ユニット。
【請求項11】
前記車両(100)は、鞍乗り型車両である、
請求項1に記載の液圧制御ユニット。
【請求項12】
車両(100)のブレーキシステム(10)に用いられる液圧制御ユニット(5)の診断方法であって、
前記液圧制御ユニット(5)は、
電源ライン(L1)を介して電源(B1)と電気的に接続され、ホイールシリンダ(24)に生じさせる液圧を制御する電磁弁(31、32)を含む液圧制御機構(51)と、
前記液圧制御機構(51)の動作を制御する制御装置(52)と、
を備え、
前記制御装置(52)の診断部(52c)が、前記電源(B1)から前記電源ライン(L1)を介して前記電磁弁(31、32)に印加される電流を変化させた際の前記電源ライン(L1)の電圧変化に基づいて、前記電源ライン(L1)の異常を診断する電源ライン診断を行い、
前記診断部(52c)が、前記電源ライン診断において、
前記電磁弁(31、32)に印加される電流の電流値(C)が、第1電流値(C1)、前記第1電流値(C1)より大きい第2電流値(C2)、前記第2電流値(C2)より小さい第3電流値(C3)の順に推移する1つの矩形波状のパルス電流(P)を生じさせ、
前記パルス電流(P)において前記電流値(C)が前記第1電流値(C1)から前記第2電流値(C2)に推移する前後における前記電源ライン(L1)の電圧変化量に基づいて、前記電源ラインの抵抗値を評価する第1抵抗値評価を行い、
前記パルス電流(P)において前記電流値(C)が前記第2電流値(C2)から前記第3電流値(C3)に推移する前後における前記電圧変化量に基づいて、前記抵抗値を評価する第2抵抗値評価を行い、
前記第1抵抗値評価及び前記第2抵抗値評価の結果に基づいて、前記電源ライン(L1)の異常を診断し、
前記第1抵抗値評価及び前記第2抵抗値評価の少なくとも一方では、電圧変化の開始時点及び終了時点の少なくとも一方が互いに異なる複数の前記電圧変化量が取得されて、前記抵抗値の評価が複数通り行われる、
診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、電源ラインの異常を適切に診断することができる液圧制御ユニット及び診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、車輪に生じる制動力を制御するための液圧制御ユニットが設けられている(例えば、特許文献1を参照。)。液圧制御ユニットでは、電磁弁を含む液圧制御機構によって、ブレーキ液の液圧が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-8674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液圧制御ユニットは、ワイヤーハーネス等の電源ラインを介して電源と電気的に接続される。液圧制御ユニットにおける電磁弁等の各装置は、電源ラインを介して電源から供給される電力を用いて動作する。電源ラインの異常(例えば、経年劣化)が生じることによって電源ラインの抵抗値が過度に大きくなると、液圧制御ユニットを正常に動作させることが困難となる。したがって、電源ラインの異常を適切に診断することが望まれている。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、電源ラインの異常を適切に診断することができる液圧制御ユニット及び診断方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液圧制御ユニットは、車両のブレーキシステムに用いられる液圧制御ユニットであって、電源ラインを介して電源と電気的に接続され、ホイールシリンダに生じさせる液圧を制御する電磁弁を含む液圧制御機構と、前記液圧制御機構の動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記電源から前記電源ラインを介して前記電磁弁に印加される電流を変化させた際の前記電源ラインの電圧変化に基づいて、前記電源ラインの異常を診断する電源ライン診断を行う診断部を備え、前記診断部は、前記電源ライン診断において、前記電磁弁に印加される電流の電流値が、第1電流値、前記第1電流値より大きい第2電流値、前記第2電流値より小さい第3電流値の順に推移する1つの矩形波状のパルス電流を生じさせ、前記パルス電流において前記電流値が前記第1電流値から前記第2電流値に推移する前後における前記電源ラインの電圧変化量に基づいて、前記電源ラインの抵抗値を評価する第1抵抗値評価を行い、前記パルス電流において前記電流値が前記第2電流値から前記第3電流値に推移する前後における前記電圧変化量に基づいて、前記抵抗値を評価する第2抵抗値評価を行い、前記第1抵抗値評価及び前記第2抵抗値評価の結果に基づいて、前記電源ラインの異常を診断し、前記第1抵抗値評価及び前記第2抵抗値評価の少なくとも一方では、電圧変化の開始時点及び終了時点の少なくとも一方が互いに異なる複数の前記電圧変化量が取得されて、前記抵抗値の評価が複数通り行われる。
【0007】
本発明に係る診断方法は、車両のブレーキシステムに用いられる液圧制御ユニットの診断方法であって、前記液圧制御ユニットは、電源ラインを介して電源と電気的に接続され、ホイールシリンダに生じさせる液圧を制御する電磁弁を含む液圧制御機構と、前記液圧制御機構の動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置の診断部が、前記電源から前記電源ラインを介して前記電磁弁に印加される電流を変化させた際の前記電源ラインの電圧変化に基づいて、前記電源ラインの異常を診断する電源ライン診断を行い、前記診断部が、前記電源ライン診断において、前記電磁弁に印加される電流の電流値が、第1電流値、前記第1電流値より大きい第2電流値、前記第2電流値より小さい第3電流値の順に推移する1つの矩形波状のパルス電流を生じさせ、前記パルス電流において前記電流値が前記第1電流値から前記第2電流値に推移する前後における前記電源ラインの電圧変化量に基づいて、前記電源ラインの抵抗値を評価する第1抵抗値評価を行い、前記パルス電流において前記電流値が前記第2電流値から前記第3電流値に推移する前後における前記電圧変化量に基づいて、前記抵抗値を評価する第2抵抗値評価を行い、前記第1抵抗値評価及び前記第2抵抗値評価の結果に基づいて、前記電源ラインの異常を診断し、前記第1抵抗値評価及び前記第2抵抗値評価の少なくとも一方では、電圧変化の開始時点及び終了時点の少なくとも一方が互いに異なる複数の前記電圧変化量が取得されて、前記抵抗値の評価が複数通り行われる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る液圧制御ユニット及び診断方法では、液圧制御ユニットは、電源ラインを介して電源と電気的に接続され、ホイールシリンダに生じさせる液圧を制御する電磁弁を含む液圧制御機構と、液圧制御機構の動作を制御する制御装置と、を備え、制御装置の診断部が、電源から電源ラインを介して電磁弁に印加される電流を変化させた際の電源ラインの電圧変化に基づいて、電源ラインの異常を診断する電源ライン診断を行い、診断部が、電源ライン診断において、電磁弁に印加される電流の電流値が、第1電流値、第1電流値より大きい第2電流値、第2電流値より小さい第3電流値の順に推移する1つの矩形波状のパルス電流を生じさせ、パルス電流において電流値が第1電流値から第2電流値に推移する前後における電源ラインの電圧変化量に基づいて、電源ラインの抵抗値を評価する第1抵抗値評価を行い、パルス電流において電流値が第2電流値から第3電流値に推移する前後における電圧変化量に基づいて、抵抗値を評価する第2抵抗値評価を行い、第1抵抗値評価及び第2抵抗値評価の結果に基づいて、電源ラインの異常を診断し、第1抵抗値評価及び第2抵抗値評価の少なくとも一方では、電圧変化の開始時点及び終了時点の少なくとも一方が互いに異なる複数の電圧変化量が取得されて、抵抗値の評価が複数通り行われる。それにより、1つのパルス電流を利用して多くの抵抗値の評価を行うことができる。よって、電源ラインの異常を適切に診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る車両の概略構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係るブレーキシステムの概略構成を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態に係る液圧制御ユニットを含む部品間の電気的な接続関係の一例を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図5】本発明の実施形態に係る制御装置が行う電源ライン診断に関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施形態に係る電源ライン診断の第1の例における各種状態量の推移の一例を示すグラフである。
図7】本発明の実施形態に係る電源ライン診断の第1の例に対する比較例における各種状態量の推移の一例を示すグラフである。
図8】本発明の実施形態に係る電源ライン診断の第2の例における各種状態量の推移の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る液圧制御ユニット及び診断方法について、図面を用いて説明する。
【0011】
なお、以下では、二輪のモータサイクルに用いられる液圧制御ユニットについて説明しているが(図1中の車両100を参照)、本発明に係る液圧制御ユニットの適用対象となる車両は、二輪のモータサイクル以外の他の鞍乗り型車両であってもよい。鞍乗り型車両は、ライダーが跨って乗車する車両を意味する。鞍乗り型車両には、例えば、モータサイクル(自動二輪車、自動三輪車)、自転車、バギー等が含まれる。モータサイクルには、エンジンを動力源とする車両、電気モータを動力源とする車両等が含まれる。モータサイクルには、例えば、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が含まれる。自転車は、ペダルに付与されるライダーの踏力によって路上を推進することが可能な車両を意味する。自転車には、普通自転車、電動アシスト自転車、電動自転車等が含まれる。なお、後述するように、以下で説明する実施形態の一部は、鞍乗り型車両以外の他の車両(例えば、自動四輪車等)にも適用され得る。
【0012】
また、以下で説明する構成及び動作等は一例であり、本発明に係る液圧制御ユニット及び診断方法は、そのような構成及び動作等である場合に限定されない。
【0013】
また、以下では、同一の又は類似する説明を適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分については、符号を付すことを省略しているか、又は同一の符号を付している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0014】
<車両の構成>
図1図4を参照して、本発明の実施形態に係る車両100の構成について説明する。
【0015】
図1は、車両100の概略構成を示す模式図である。車両100は、本発明に係る車両の一例に相当する二輪のモータサイクルである。図1に示されるように、車両100は、胴体1と、ハンドル2と、前輪3と、後輪4と、液圧制御ユニット5と、報知装置6とを備える。また、車両100は、ブレーキシステム10を備える。ブレーキシステム10は、第1ブレーキ操作部11と、前輪制動機構12と、第2ブレーキ操作部13と、後輪制動機構14とを含む。
【0016】
ハンドル2は、胴体1に旋回自在に保持されている。前輪3は、胴体1にハンドル2と共に旋回自在に保持されている。後輪4は、胴体1に回動自在に保持されている。液圧制御ユニット5は、車両100の車輪に生じる制動力を制御するためのものである。液圧制御ユニット5は、ブレーキシステム10に含まれる。液圧制御ユニット5の詳細については、後述する。報知装置6は、各種情報を報知する。報知装置6としては、例えば、ランプ等の表示装置又は音声出力装置等が用いられる。
【0017】
ブレーキシステム10は、具体的には、第1ブレーキ操作部11、前輪制動機構12、第2ブレーキ操作部13及び後輪制動機構14に加えて、液圧制御ユニット5を備える。第1ブレーキ操作部11は、例えば、ハンドル2に設けられており、ライダーの手によって操作される。第1ブレーキ操作部11は、例えば、ブレーキレバーである。前輪制動機構12は、少なくとも第1ブレーキ操作部11に連動して前輪3を制動する。第2ブレーキ操作部13は、例えば、胴体1の下部に設けられており、ライダーの足によって操作される。第2ブレーキ操作部13は、例えば、ブレーキペダルである。後輪制動機構14は、少なくとも第2ブレーキ操作部13に連動して後輪4を制動する。液圧制御ユニット5は、前輪制動機構12によって前輪3に付与される制動力、及び、後輪制動機構14によって後輪4に付与される制動力を制御する機能を担うユニットである。
【0018】
図2は、ブレーキシステム10の概略構成を示す模式図である。図2に示されるように、前輪制動機構12及び後輪制動機構14のそれぞれは、ピストン(図示省略)を内蔵しているマスタシリンダ21と、マスタシリンダ21に付設されているリザーバ22と、胴体1に保持され、ブレーキパッド(図示省略)を有しているブレーキキャリパ23と、ブレーキキャリパ23に設けられているホイールシリンダ24と、マスタシリンダ21のブレーキ液をホイールシリンダ24に流通させる主流路25と、ホイールシリンダ24のブレーキ液を逃がす副流路26とを備える。図2に示されるように、ブレーキシステム10では、1つのマスタシリンダ21と連通するホイールシリンダ24の数は1つである。
【0019】
ただし、1つのマスタシリンダ21と連通するホイールシリンダ24の数は2つ以上であってもよい。また、マスタシリンダ21のブレーキ液を副流路26に供給する供給流路がさらに設けられていてもよい。また、前輪制動機構12及び後輪制動機構14の一方が省略されていてもよい。
【0020】
主流路25は、マスタシリンダ21とホイールシリンダ24とを連通する流路である。主流路25には、込め弁(EV)31が設けられている。副流路26は、主流路25のうちの、込め弁31に対するホイールシリンダ24側とマスタシリンダ21側との間をバイパスする。副流路26には、上流側から順に、弛め弁(AV)32と、アキュムレータ33と、ポンプ34とが設けられている。
【0021】
込め弁31及び弛め弁32は、ホイールシリンダ24に生じさせる液圧を制御する電磁弁である。込め弁31は、非通電時に開状態の電磁弁である。込め弁31は、通電されることによって閉状態となる。具体的には、込め弁31に印加される電流がある程度大きくなると、込め弁31が閉状態となる。閉状態で込め弁31に印加される電流は、互いに異なる複数の値に制御される。つまり、込め弁31を閉状態に維持しながら、込め弁31に印加される電流を変化させることができる。弛め弁32は、非通電時に閉状態の電磁弁である。弛め弁32は、通電されることによって開状態となる。具体的には、弛め弁32に印加される電流がある程度大きくなると、弛め弁32が開状態となる。
【0022】
液圧制御ユニット5は、ブレーキ液の液圧を制御するための液圧制御機構51と、液圧制御機構51の動作を制御する制御装置52とを備える。液圧制御機構51は、上述した込め弁31、弛め弁32、アキュムレータ33及びポンプ34等のコンポーネントを含む。液圧制御機構51は、上述した主流路25及び副流路26等の流路が内部に形成されている基体51aを含み、基体51aに上記のコンポーネントが設けられる。制御装置52としては、例えば、制御基板が用いられる。
【0023】
なお、基体51aは、1つの部材によって形成されていてもよく、複数の部材によって形成されていてもよい。また、基体51aが複数の部材によって形成されている場合、各コンポーネントは、異なる部材に分かれて設けられていてもよい。
【0024】
液圧制御機構51の動作が制御装置52によって制御されることにより、前輪制動機構12によって前輪3に生じる制動力、及び、後輪制動機構14によって後輪4に生じる制動力が制御される。制御装置52は、液圧制御機構51の動作を、例えば、車両100の走行状態に応じて制御する。
【0025】
例えば、通常状態(つまり、後述されるアンチロックブレーキ制御等が実行されない状態)では、制御装置52によって、込め弁31が開放され、弛め弁32が閉鎖される。その状態で、第1ブレーキ操作部11が操作されると、前輪制動機構12において、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加し、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が前輪3のロータ3aに押し付けられて、前輪3に制動力が付与される。また、第2ブレーキ操作部13が操作されると、後輪制動機構14において、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加し、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が後輪4のロータ4aに押し付けられて、後輪4に制動力が付与される。
【0026】
アンチロックブレーキ制御は、例えば、車輪(具体的には、前輪3又は後輪4)にロック又はロックの可能性が生じた場合に実行され、当該車輪に付与される制動力をライダーによるブレーキ操作部の操作によらずに減少させる制御である。例えば、アンチロックブレーキ制御が実行されている状態では、制御装置52によって、込め弁31が閉鎖され、弛め弁32が開放される。その状態で、制御装置52によってポンプ34が駆動されることにより、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が減少し、車輪に付与される制動力が減少する。
【0027】
制御装置52は、車両100において検出される各種情報を用いて、各種制御を実行する。例えば、図1に示されるように、車両100は、前輪車輪速センサ41と、後輪車輪速センサ42とを備える。これらのセンサの検出結果は、制御装置52に出力される。
【0028】
前輪車輪速センサ41は、前輪3の車輪速(例えば、前輪3の単位時間当たりの回転数[rpm]又は単位時間当たりの移動距離[km/h]等)を検出する車輪速センサであり、検出結果を出力する。前輪車輪速センサ41が、前輪3の車輪速に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。前輪車輪速センサ41は、前輪3に設けられている。
【0029】
後輪車輪速センサ42は、後輪4の車輪速(例えば、後輪4の単位時間当たりの回転数[rpm]又は単位時間当たりの移動距離[km/h]等)を検出する車輪速センサであり、検出結果を出力する。後輪車輪速センサ42が、後輪4の車輪速に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。後輪車輪速センサ42は、後輪4に設けられている。
【0030】
図3は、液圧制御ユニット5を含む部品間の電気的な接続関係の一例を示す図である。図3に示されるように、液圧制御ユニット5は、ワイヤーハーネス等の電源ラインL1を介して電源B1と電気的に接続される。液圧制御ユニット5における各装置は、電源ラインL1を介して電源B1から供給される電力を用いて動作する。図3では、液圧制御ユニット5において電源B1から供給される電力を用いて動作する部品の1つである込め弁31と関連する部分のみが抽出されて示されている。込め弁31は、電源ラインL1を介して電源B1と電気的に接続されている。ただし、液圧制御ユニット5における込め弁31以外の他の部品(例えば、弛め弁32等)も電源ラインL1を介して電源B1と電気的に接続されている。
【0031】
図3に示されるように、液圧制御ユニット5は、スイッチング素子35と電圧センサ43とを含む。込め弁31、スイッチング素子35及び電圧センサ43の各装置と制御装置52との間で信号の入出力が可能となっている。
【0032】
込め弁31は、スイッチング素子35を介して電源B1と電気的に接続されている。スイッチング素子35は、設置位置における通電の可否を切り替える。スイッチング素子35が閉状態である場合、スイッチング素子35を電流が通過可能な状態になる。一方、スイッチング素子35が開状態である場合、スイッチング素子35を電流が通過不可能な状態になる。スイッチング素子35は、例えば、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)を含む半導体リレーである。ただし、スイッチング素子35の構成は特に限定されず、半導体リレーでなくてもよい。
【0033】
制御装置52は、スイッチング素子35を閉状態に維持することによって、電源B1から込め弁31への電流の印加を停止できる。一方、制御装置52は、スイッチング素子35を開状態にすることによって、電源B1から込め弁31に電流を印加できる。制御装置52は、例えば、スイッチング素子35を開状態と閉状態との間で切り替え、単位時間当たりのスイッチング素子35の開状態の継続時間を調整することによって、込め弁31に印加される電流を異なる複数の値に制御できる。
【0034】
電圧センサ43は、電源ラインL1の電圧を検出する。具体的には、電圧センサ43は、液圧制御ユニット5内において電源ラインL1と込め弁31とを接続する電力線における電圧を、電源ラインL1の電圧として検出する。つまり、電圧センサ43により検出される電圧は、電源B1の電圧に対して電源ラインL1の抵抗値による電圧降下量を差し引いた電圧(換言すると、電源ラインL1の液圧制御ユニット5側の端部の電圧)である。したがって、電源ラインL1の抵抗値が大きくなると電圧降下量を差し引いた電圧は低下する。なお、図3の例では、スイッチング素子35に対して電源ラインL1側の電圧が電圧センサ43によって検出されるが、電圧センサ43は、スイッチング素子35に対して込め弁31側の電圧を検出してもよい。
【0035】
図4は、制御装置52の機能構成の一例を示すブロック図である。例えば、制御装置52の一部又は全ては、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されている。また、例えば、制御装置52の一部又は全ては、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。制御装置52は、例えば、1つであってもよく、また、複数に分かれていてもよい。
【0036】
図4に示されるように、制御装置52は、例えば、取得部52aと、制御部52bと、診断部52cとを備える。
【0037】
取得部52aは、車両100に搭載されている各装置から情報を取得する。例えば、取得部52aは、前輪車輪速センサ41、後輪車輪速センサ42及び電圧センサ43から情報を取得する。
【0038】
制御部52bは、車両100内の各種装置の動作を制御する。例えば、制御部52bは、報知装置6の動作を制御することによって、ライダーに対する報知動作を行う。また、例えば、制御部52bは、液圧制御ユニット5の各コンポーネント(具体的には、込め弁31、弛め弁32、ポンプ34及びスイッチング素子35)の動作を制御することによって、車両100の車輪に生じる制動力を制御する。
【0039】
診断部52cは、電源ラインL1の異常を診断する電源ライン診断を行う。上述したように、電源ラインL1の異常が生じることによって電源ラインL1の抵抗値が過度に大きくなると、液圧制御ユニット5を正常に動作させることが困難となる。本実施形態では、後述するように、電源ライン診断に工夫を施すことによって、電源ラインL1の異常を適切に診断することが実現される。
【0040】
<液圧制御ユニットの動作>
図5図8を参照して、本発明の実施形態に係る液圧制御ユニット5の動作について説明する。
【0041】
図5は、制御装置52(具体的には、診断部52c)が行う電源ライン診断に関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。図5におけるステップS101は、図5に示される制御フローの開始に対応する。図5におけるステップS108は、図5に示される制御フローの終了に対応する。なお、電源ライン診断の詳細については、図6図8を参照して後述する。
【0042】
図5に示される制御フローが開始すると、ステップS102において、診断部52cは、電源ライン診断の開始条件が満たされたか否かを判定する。電源ライン診断の開始条件としては、例えば、車両100の発進後に車両100の車速が基準車速を上回ったとの条件が用いられる。車両100の車速は、例えば、前輪車輪速センサ41及び後輪車輪速センサ42の検出結果に基づいて、決定され得る。基準車速は、例えば、ライダーが車両100を加速させる意思を有すると判断できる程度の車速に設定される。
【0043】
電源ライン診断の開始条件が満たされていないと判定された場合(ステップS102/NO)、ステップS102が繰り返される。一方、電源ライン診断の開始条件が満たされたと判定された場合(ステップS102/YES)、ステップS103に進む。
【0044】
ステップS103において、診断部52cは、電源ラインL1の電圧が安定しているか否かを判定する。例えば、診断部52cは、設定時間内における電源ラインL1の電圧の最小値と最大値との差が基準値以下である場合に、電源ラインL1の電圧が安定していると判定する。一方、診断部52cは、設定時間内における電源ラインL1の電圧の最小値と最大値との差が基準値より大きい場合に、電源ラインL1の電圧が安定していないと判定する。
【0045】
電源ラインL1の電圧が安定していないと判定された場合(ステップS103/NO)、ステップS102に戻る。一方、電源ラインL1の電圧が安定していると判定された場合(ステップS103/YES)、ステップS104に進む。
【0046】
ステップS104において、診断部52cは、電源ライン診断を行う。診断部52cは、電源ライン診断において、液圧制御ユニット5の電磁弁(例えば、込め弁31)に印加される電流を変化させた際の電源ラインL1の電圧変化に基づいて、電源ラインL1の異常を診断する。電源ライン診断では、電源ラインL1が正常であるか否かが診断される。電源ラインL1が正常である場合は、電源ラインL1の抵抗値が過度に大きくなっていない場合に相当する。一方、電源ラインL1が異常である場合は、電源ラインL1の抵抗値が過度に大きくなっている場合に相当する。なお、電源ライン診断の詳細については、図6図8を参照して後述する。
【0047】
ステップS105において、診断部52cは、電源ラインL1が正常であると診断されたか否かを判定する。電源ラインL1が正常であると診断された場合(ステップS105/YES)、図5に示される制御フローは終了する。一方、電源ラインL1が正常であると診断されなかった場合(ステップS105/NO)、ステップS106に進む。
【0048】
ステップS106において、診断部52cは、電源ラインL1の電圧が安定しているか否かを判定する。ステップS106の処理は、上述したステップS103の処理と同様である。電源ラインL1の電圧が安定していないと判定された場合(ステップS106/NO)、ステップS102に戻る。一方、電源ラインL1の電圧が安定していると判定された場合(ステップS106/YES)、ステップS107に進む。ステップS107において、診断部52cは、電源ラインL1が異常であると診断し、図5に示される制御フローは終了する。電源ラインL1が異常であると診断された場合、例えば、電源ラインL1が異常である旨が報知装置6によってライダーに対して報知される。
【0049】
以下、電源ライン診断の詳細について、図6図8を参照して説明する。具体的には、図6及び図7を参照して電源ライン診断の第1の例について説明した後に、図8を参照して電源ライン診断の第2の例について説明する。
【0050】
診断部52cは、電源ライン診断において、込め弁31に印加される電流(具体的には、電流値)を変化させる。そして、診断部52cは、その際の電源ラインL1の電圧の変化である電圧変化に基づいて、電源ラインL1の異常を診断する。電源ライン診断では、診断部52cは、具体的には、後輪制動機構14の込め弁31に電流を印加する。以下では、電源ライン診断において、後輪制動機構14の込め弁31に電流が印加される例を主に説明するが、電源ライン診断において電流が印加される電磁弁は、例えば、前輪制動機構12の込め弁31であってもよく、前輪制動機構12又は後輪制動機構14の弛め弁32であってもよい。
【0051】
図6は、電源ライン診断の第1の例における各種状態量の推移の一例を示すグラフである。図6では、横軸に時間tを取り、各種状態量の推移が示されている。図6では、状態量として、電源ラインL1の電圧V(具体的には、電圧センサ43により検出される電圧)、及び、込め弁31に印加されている電流の電流値Cが示されている。
【0052】
図6に示されるように、電源ライン診断の第1の例では、診断部52cは、込め弁31の開閉状態が開状態と閉状態との間で切り替わるように、込め弁31に印加される電流(具体的には、電流値C)を変化させる。具体的には、診断部52cは、電流(具体的には、電流値C)を矩形波状に推移させる。図6の例では、診断部52cは、電流値Cが最小値Cmin、最大値Cmax、最小値Cminの順に推移する4つの矩形波状のパルス電流P1、P2、P3、P4を順に生じさせる。なお、生じさせるパルス電流の数は、4つ以外であってもよい。最小値Cminは、0Aである。つまり、電流値Cが最小値Cminである場合、込め弁31には電流が印加されず、込め弁31は開状態になる、電流値Cが最大値Cmaxである場合、込め弁31は閉状態になる。
【0053】
図6の例では、時点t1より前において、電流値Cは最小値Cminになっている。時点t1から時点t2までの間において、電流値Cは最大値Cmaxになっている。時点t2から時点t3までの間において、電流値Cは最小値Cminになっている。時点t3から時点t4までの間において、電流値Cは最大値Cmaxになっている。時点t4から時点t5までの間において、電流値Cは最小値Cminになっている。時点t5から時点t6までの間において、電流値Cは最大値Cmaxになっている。時点t6から時点t7までの間において、電流値Cは最小値Cminになっている。時点t7から時点t8までの間において、電流値Cは最大値Cmaxになっている。時点t8より後において、電流値Cは最小値Cminになっている。
【0054】
つまり、図6の例では、時点t1より前において、込め弁31は開状態になっている。時点t1から時点t2までの間において、込め弁31は閉状態になっている。時点t2から時点t3までの間において、込め弁31は開状態になっている。時点t3から時点t4までの間において、込め弁31は閉状態になっている。時点t4から時点t5までの間において、込め弁31は開状態になっている。時点t5から時点t6までの間において、込め弁31は閉状態になっている。時点t6から時点t7までの間において、込め弁31は開状態になっている。時点t7から時点t8までの間において、込め弁31は閉状態になっている。時点t8より後において、込め弁31は開状態になっている。
【0055】
上記のように、図6の例では、4つの矩形波状のパルス電流P1、P2、P3、P4が順に生じることによって、込め弁31が閉状態に4回切り替わる。図6の例では、込め弁31の閉状態の継続時間は、込め弁31が閉状態に切り替わる全ての回で同一である。つまり、4つの矩形波状のパルス電流P1、P2、P3、P4のパルス幅は互いに同一である。ただし、後述するように、込め弁31の閉状態の継続時間は、込め弁31が閉状態に切り替わる一部の回で他の一部の回と異なっていてもよい。
【0056】
電流値Cが最小値Cminになっており、込め弁31に電流が印加されていない場合、電源ラインL1の抵抗値による電圧降下は生じない。ゆえに、電圧センサ43により検出される電源ラインL1の電圧Vは電源B1の電圧とほぼ等しくなる。一方、電流値Cが最大値Cmaxになっており、込め弁31に電流が印加されている場合、電源ラインL1の抵抗値による電圧降下が生じる。ゆえに、電流値Cが最大値Cmaxになっている場合、電流値Cが最小値Cminになっている場合と比べて、電圧センサ43により検出される電源ラインL1の電圧Vは低くなる。ゆえに、図6の例では、時点t1から時点t2までの間、時点t3から時点t4までの間、時点t5から時点t6までの間、及び、時点t7から時点t8までの間において、電源ラインL1の電圧Vが他の時点と比べて低くなっている。
【0057】
電源ライン診断の第1の例では、診断部52cは、込め弁31に印加される電流(具体的には、電流値C)が込め弁31の開状態と閉状態との間での切り替えを伴って変化する際の電源ラインL1の電圧変化に基づいて、電源ライン診断を行う。具体的には、診断部52cは、込め弁31が開状態と閉状態との間で切り替わる前後における電源ラインL1の電圧変化量に基づいて、電源ライン診断を行う。込め弁31が開状態と閉状態との間で切り替わる前後における電源ラインL1の電圧変化量(例えば、時点t1より前における電圧Vと、時点t1から時点t2までの間における電圧Vとの差)は、電源ラインL1の抵抗値による電圧降下量に相当する。ゆえに、診断部52cは、このような電圧変化量に基づいて、電源ラインL1の抵抗値を評価することができる。そして、診断部52cは、電源ラインL1の抵抗値の評価結果に基づいて、電源ラインL1の異常を診断する。
【0058】
図6では、電源ラインL1の電圧変化量を特定するために取得される電圧Vの取得タイミングが、ドット(例えば、ドットD1、D2、D3、D4)によって示されている。図6中で一点鎖線によりペアリングされている2つのドットによりそれぞれ示されるタイミングで取得される2つの電圧Vの差が電圧変化量として取得される。図6の例では、診断部52cは、パルス電流の発生に伴って込め弁31が開状態と閉状態との間で切り替わる前後における電源ラインL1の電圧変化量を取得する。
【0059】
例えば、図6の例では、診断部52cは、時点t1より前のドットD1の取得タイミングで取得される電圧Vと、時点t1から時点t2までの間のドットD2の取得タイミングで取得される電圧Vとの差を電圧変化量として取得する。この電圧変化量は、パルス電流P1の発生に伴って込め弁31が開状態から閉状態に切り替わる前後における電源ラインL1の電圧変化量に相当する。
【0060】
次に、診断部52cは、時点t1から時点t2までの間のドットD3の取得タイミングで取得される電圧Vと、時点t2から時点t3までの間のドットD4の取得タイミングで取得される電圧Vとの差を電圧変化量として取得する。この電圧変化量は、パルス電流P1の発生に伴って込め弁31が閉状態から開状態に切り替わる前後における電源ラインL1の電圧変化量に相当する。
【0061】
診断部52cは、パルス電流P2、P3、P4に対しても同様に、込め弁31が開状態から閉状態に切り替わる前後における電源ラインL1の電圧変化量と、込め弁31が閉状態から開状態に切り替わる前後における電源ラインL1の電圧変化量とを取得する。このようにして、診断部52cは、各パルス電流に対して、2つの一点鎖線と対応する2つの電圧変化量を取得する。それにより、診断部52cは、4つのパルス電流P1、P2、P3、P4を利用して、8つの一点鎖線と対応する8つの電圧変化量を取得する。
【0062】
診断部52cは、取得された各電圧変化量に対して、電源ラインL1の抵抗値を評価する。図6の例では、診断部52cは、8つの電圧変化量の各々に対して、電源ラインL1の抵抗値を評価する。つまり、診断部52cは、電源ラインL1の抵抗値の評価を8通り行う。抵抗値の評価では、診断部52cは、電圧変化量が基準変化量(つまり、基準抵抗値を電圧変化量に置き換えた値)より小さい場合に、抵抗値が正常であると評価する。そして、8通りの抵抗値の評価の中で、抵抗値が正常であると評価された数が基準数以上である場合、診断部52cは、電源ラインL1が正常であると診断し、電源ライン診断を終了する。基準数は、抵抗値の評価の総数(上記の例では、8つ)より小さい数であり、任意の数を取り得る。
【0063】
なお、8通りの抵抗値の評価の中で、抵抗値が正常であると評価された数が基準数より少なかった場合、診断部52cは、電源ラインL1が異常であると診断してもよい。あるいは、この場合、診断部52cは、電源ラインL1が直ちには異常であると診断しなくてもよい。例えば、診断部52cは、複数(上記の例では、4つ)のパルス電流P1、P2、P3、P4を生じさせ、複数通り(上記の例では、8通り)の抵抗値の評価を行う上記で説明した評価セットを再度行ってもよい。そして、2回目の評価セットで抵抗値が正常であると評価された数が基準数以上である場合、診断部52cは、電源ラインL1が正常であると診断し、電源ライン診断を終了してもよい。この場合において、診断部52cは、例えば、上限回数(例えば、3回)の評価セットを行った結果、いずれの評価セットにおいても電源ラインL1が正常であると診断されなかった場合、電源ラインL1が異常であると診断し、電源ライン診断を終了する。
【0064】
上記の例では、図5を参照して説明したように、電源ラインL1の電圧Vが安定していると判定される場合に、電源ライン診断が行われる。それにより、電源ライン診断の信頼性を向上できる。ただし、診断部52cは、電源ラインL1の電圧Vが安定していると判定されるか否かによらずに電源ライン診断を行ってもよい。この場合、込め弁31が閉状態に切り替わる全ての回で込め弁31の閉状態の継続時間が同一であると(つまり、複数の矩形波状のパルス電流のパルス幅が互いに同一であると)、車両100内の他の信号によるノイズの影響によって電源ライン診断の信頼性が低下しやすくなる。ゆえに、電源ライン診断の信頼性を向上させる観点で、この場合には、込め弁31の閉状態の継続時間は、込め弁31が閉状態に切り替わる一部の回で他の一部の回と異なっていることが好ましい。つまり、複数の矩形波状のパルス電流のうち一部のパルス幅が他の一部のパルス幅と異なっていることが好ましい。
【0065】
上記の例では、各パルス電流において、電流値Cが最小値Cmin、最大値Cmax、最小値Cminの順に推移する例を説明した。ただし、各パルス電流において、電流値Cは、込め弁31が開状態になる電流値、込め弁31が閉状態になる電流値、込め弁31が開状態になる電流値の順に推移すればよく、電流値Cが取る値は上記の例に限定されない。例えば、時点t1から時点t2までの間、時点t3から時点t4までの間、時点t5から時点t6までの間、及び、時点t7から時点t8までの間の電流値Cは、最大値Cmaxより小さい値でもよい。また、例えば、時点t2から時点t3までの間、時点t4から時点t5までの間、及び、時点t6から時点t7までの間の電流値Cは、最小値Cminより大きい値でもよい。
【0066】
図7は、電源ライン診断の第1の例に対する比較例における各種状態量の推移の一例を示すグラフである。図7では、図6と同様に、横軸に時間tを取り、電源ラインL1の電圧V、及び、込め弁31に印加されている電流の電流値Cの推移が各種状態量の推移として示されている。
【0067】
図7に示される比較例は、車両100と異なり、鞍乗り型車両以外の車両における電源ライン診断の例である。上述した図6の電源ライン診断では、込め弁31の開閉状態が開状態と閉状態との間で瞬間的に切り替わる。それにより、込め弁31の動作音がある程度大きくなる。しかしながら、車両100は鞍乗り型車両であり、鞍乗り型車両のライダーには周囲の騒音が直接的に届いている。ゆえに、鞍乗り型車両のライダーにとって、込め弁31の動作音は騒音として感じ取られにくい。鞍乗り型車両のライダーがヘルメットを装着している場合があることも、込め弁31の動作音が騒音として感じ取られにくい要因として挙げられる。一方、鞍乗り型車両以外の車両では、込め弁31の動作音は騒音として感じ取られやすく、車両内の静寂性が求められる。
【0068】
そこで、比較例では、診断部52cは、まず、電流値Cを最小値Cminから中間値Cmidまで徐々に上昇させる。図7の例では、時点t11より前において、電流値Cが最小値Cminから中間値Cmidまで徐々に上昇している。ここで、中間値Cmidは最大値Cmaxより小さいものの、電流値Cが中間値Cmidである場合、込め弁31は閉状態になる。ゆえに、時点t11より前において、込め弁31は、ある程度の時間を掛けて閉状態になる。
【0069】
そして、比較例では、診断部52cは、込め弁31が閉状態に維持されるように、電流値Cを変化させる。図7の例では、診断部52cは、電流値Cが中間値Cmid、最大値Cmax、中間値Cmidの順に推移する4つの矩形波状のパルス電流P11、P12、P13、P14を順に生じさせる。
【0070】
図7の例では、時点t11から時点t12までの間において、電流値Cは中間値Cmidになっている。時点t12から時点t13までの間において、電流値Cは最大値Cmaxになっている。時点t13から時点t14までの間において、電流値Cは中間値Cmidになっている。時点t14から時点t15までの間において、電流値Cは最大値Cmaxになっている。時点t15から時点t16までの間において、電流値Cは中間値Cmidになっている。時点t16から時点t17までの間において、電流値Cは最大値Cmaxになっている。時点t17から時点t18までの間において、電流値Cは中間値Cmidになっている。時点t18から時点t19までの間において、電流値Cは最大値Cmaxになっている。時点t19から時点t20までの間において、電流値Cは中間値Cmidになっている。
【0071】
上述したように、電流値Cが中間値Cmidである場合、及び、電流値Cは最大値Cmaxである場合のいずれの場合にも、込め弁31は閉状態になる。ゆえに、4つの矩形波状のパルス電流P11、P12、P13、P14が生じている間、込め弁31が閉状態に維持される。診断部52cは、図6の例と同様に、図7中で一点鎖線によりペアリングされている2つのドットによりそれぞれ示されるタイミングで取得される2つの電圧Vの差を電圧変化量として取得する。そして、診断部52cは、図6の例と同様に、4つのパルス電流P11、P12、P13、P14を利用して取得される8つの電圧変化量の各々に対して、電源ラインL1の抵抗値を評価する。
【0072】
時点t20より後において、診断部52cは、電流値Cを中間値Cmidから最小値Cminまで徐々に降下させる。ゆえに、時点t20より後において、込め弁31は、ある程度の時間を掛けて開状態になる。
【0073】
上記のように、図7に示される比較例では、電源ライン診断の開始時に、電流値Cが最小値Cminから中間値Cmidまで徐々に上昇し、電源ライン診断の終了時に、電流値Cが中間値Cmidから最小値Cminまで徐々に降下する。それにより、電源ライン診断の開始時に、ある程度の時間を掛けて込め弁31が開状態から閉状態になり、電源ライン診断の終了時に、ある程度の時間を掛けて込め弁31が閉状態から開状態になる。ゆえに、込め弁31の動作音を小さくできるので、車両内の静寂性が確保される。
【0074】
以上説明したように、電源ライン診断の第1の例では、診断部52cは、込め弁31に印加される電流(具体的には、電流値C)が込め弁31の開状態と閉状態との間での切り替えを伴って変化する際の電源ラインL1の電圧変化に基づいて、電源ライン診断を行う。それにより、電源ライン診断の開始時及び終了時において込め弁31に印加される電流を変化させることに要する時間を削減できるので、電源ライン診断に掛かる時間を短縮できる。ゆえに、電源ラインL1の異常を適切に診断することができる。
【0075】
さらに、電源ライン診断の第1の例では、複数のパルス電流が生じている間においても、込め弁31が開状態と閉状態との間で切り替わる。ゆえに、複数のパルス電流が生じている間において、込め弁31が開状態になっている状態を生じさせることができる。例えば、図6の例では、4つの矩形波状のパルス電流P1、P2、P3、P4が生じている間において、時点t2から時点t3までの間、時点t4から時点t5までの間、及び、時点t6から時点t7までの間に、込め弁31が開状態になっている。
【0076】
ここで、ブレーキシステム10では、上述したように、1つのマスタシリンダ21と連通するホイールシリンダ24の数は1つである。また、上述したように、電源ライン診断では、具体的には、後輪制動機構14の込め弁31に電流が印加される。ゆえに、電源ライン診断において後輪制動機構14の込め弁31が閉状態となっている場合、後輪4のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧をライダーのブレーキ操作によって上昇させることができなくなる。一方、電源ライン診断の第1の例では、複数のパルス電流が生じている間において、込め弁31が開状態になっている状態を生じさせることができるので、後輪4のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧をライダーのブレーキ操作によって上昇させることができない状況が抑制される。
【0077】
図8は、電源ライン診断の第2の例における各種状態量の推移の一例を示すグラフである。図8では、図6及び図7と同様に、横軸に時間tを取り、電源ラインL1の電圧V、及び、込め弁31に印加されている電流の電流値Cの推移が各種状態量の推移として示されている。
【0078】
図8に示されるように、電源ライン診断の第2の例では、診断部52cは、込め弁31に印加される電流の電流値Cが、第1電流値C1、第1電流値C1より大きい第2電流値C2、第2電流値C2より小さい第3電流値C3の順に推移する1つの矩形波状のパルス電流Pを生じさせる。図8の例では、第1電流値C1及び第3電流値C3は最小値Cminであり、第2電流値C2は最大値Cmaxである。つまり、図8の例では、診断部52cは、電流値Cが最小値Cmin、最大値Cmax、最小値Cminの順に推移する1つの矩形波状のパルス電流Pを生じさせる。ただし、後述するように、第1電流値C1、第2電流値C2及び第3電流値C3の値はこの例に限定されない。また、第1電流値C1及び第3電流値C3は、互いに異なっていてもよい。
【0079】
図8の例では、時点t21より前において、電流値Cは最小値Cminになっている。時点t21から時点t22までの間において、電流値Cは最大値Cmaxになっている。時点t22より後において、電流値Cは最小値Cminになっている。つまり、図8の例では、時点t21より前において、込め弁31は開状態になっている。時点t21から時点t22までの間において、込め弁31は閉状態になっている。時点t22より後において、込め弁31は開状態になっている。
【0080】
図8の例では、時点t21から時点t22までの間において、電源ラインL1の抵抗値による電圧降下に起因して、電源ラインL1の電圧Vが他の時点と比べて低くなっている。電流値Cが第1電流値C1になっている状態で取得される電源ラインL1の電圧Vを第1電圧V1と呼ぶ。つまり、第1電圧V1は、時点t21より前において取得される電圧Vである。電流値Cが第2電流値C2になっている状態で取得される電源ラインL1の電圧Vを第2電圧V2と呼ぶ。つまり、第2電圧V2は、時点t21から時点t22までの間において取得される電圧Vである。電流値Cが第3電流値C3になっている状態で取得される電源ラインL1の電圧Vを第3電圧V3と呼ぶ。つまり、第3電圧V3は、時点t22より後において取得される電圧Vである。
【0081】
電源ライン診断の第2の例では、診断部52cは、パルス電流Pにおいて電流値Cが切り替わる前後における電源ラインL1の電圧変化量に基づいて、電源ライン診断を行う。具体的には、診断部52cは、パルス電流Pにおいて電流値Cが第1電流値C1(図8の例では、最小値Cmin)から第2電流値C2(図8の例では、最大値Cmax)に推移する前後における電源ラインL1の電圧変化量に基づいて、電源ラインL1の抵抗値を評価する第1抵抗値評価を行う。また、診断部52cは、パルス電流Pにおいて電流値Cが第2電流値C2(図8の例では、最大値Cmax)から第3電流値C3(図8の例では、最小値Cmin)に推移する前後における電圧変化量に基づいて、電源ラインL1の抵抗値を評価する第2抵抗値評価を行う。そして、診断部52cは、第1抵抗値評価及び第2抵抗値評価の結果に基づいて、電源ラインL1の異常を診断する。
【0082】
図8では、図6と同様に、電源ラインL1の電圧変化量を特定するために取得される電圧Vの取得タイミングが、ドット(例えば、ドットD11、D12等)によって示されている。図8中で一点鎖線によりペアリングされている2つのドットによりそれぞれ示されるタイミングで取得される2つの電圧Vの差が電圧変化量として取得される。
【0083】
なお、図8では、理解を容易にするために、ペアリングされている2つのドットを示す一点鎖線の一部の図示は省略されている。また、図8では、第1電圧V1の取得タイミングを示すドット(ドットD11~D16)が6つで、第2電圧V2の取得タイミングを示すドット(ドットD21~D24)が4つで、第3電圧V3の取得タイミングを示すドット(ドットD31~D36)が6つである例が示されているが、後述するように、ドットの数及び配置は図8の例に限定されない。
【0084】
診断部52cは、第1抵抗値評価において、第1電圧V1と第2電圧V2とに基づいて、電圧変化量を取得する。例えば、図8の例では、診断部52cは、時点t21より前のドットD11、D12、D13、D14、D15、D16の各取得タイミングで第1電圧V1を取得する。また、診断部52cは、時点t21から時点t22までの間のドットD21、D22、D23、D24の各取得タイミングで第2電圧V2を取得する。
【0085】
そして、診断部52cは、ドットD11の取得タイミングで取得される第1電圧V1と、ドットD21、D22、D23、D24の各取得タイミングで取得される第2電圧V2の各々との差を、電圧変化量としてそれぞれ取得する。つまり、診断部52cは、ドットD11の取得タイミングで取得される第1電圧V1に対して、4つの電圧変化量を取得する。同様に、ドットD12、D13、D14、D15、D16の各取得タイミングで取得される第1電圧V1に対しても、4つの電圧変化量をそれぞれ取得する。結果として、診断部52cは、合計24個の電圧変化量を取得する。
【0086】
診断部52cは、第1抵抗値評価で取得された合計24個の電圧変化量の各々に対して、電源ラインL1の抵抗値を評価する。つまり、第1抵抗値評価では、電源ラインL1の抵抗値の評価が24通り行われる。第1抵抗値評価の各評価では、上述した電源ライン診断の第1の例と同様に、電圧変化量が基準変化量より小さい場合に、抵抗値が正常であると評価される。
【0087】
診断部52cは、第2抵抗値評価において、第2電圧V2と第3電圧V3とに基づいて、電圧変化量を取得する。例えば、図8の例では、診断部52cは、第1抵抗値評価で取得された第2電圧V2に加えて、時点t22より後のドットD31、D32、D33、D34、D35、D36の各取得タイミングで第3電圧V3を取得する。
【0088】
そして、診断部52cは、ドットD31の取得タイミングで取得される第3電圧V3と、ドットD21、D22、D23、D24の各取得タイミングで取得される第2電圧V2の各々との差を、電圧変化量としてそれぞれ取得する。つまり、診断部52cは、ドットD31の取得タイミングで取得される第3電圧V3に対して、4つの電圧変化量を取得する。同様に、ドットD32、D33、D34、D35、D36の各取得タイミングで取得される第3電圧V3に対しても、4つの電圧変化量をそれぞれ取得する。結果として、診断部52cは、合計24個の電圧変化量を取得する。
【0089】
診断部52cは、第2抵抗値評価で取得された合計24個の電圧変化量の各々に対して、電源ラインL1の抵抗値を評価する。つまり、第2抵抗値評価では、電源ラインL1の抵抗値の評価が24通り行われる。第2抵抗値評価の各評価では、上述した電源ライン診断の第1の例と同様に、電圧変化量が基準変化量より小さい場合に、抵抗値が正常であると評価される。
【0090】
診断部52cは、第1抵抗値評価及び第2抵抗値評価を通じて行われた合計48通りの抵抗値の評価の中で、抵抗値が正常であると評価された数が基準数以上である場合、診断部52cは、電源ラインL1が正常であると診断し、電源ライン診断を終了する。
【0091】
なお、合計48通りの抵抗値の評価の中で、抵抗値が正常であると評価された数が基準数より少なかった場合、診断部52cは、電源ラインL1が異常であると診断してもよい。あるいは、この場合、診断部52cは、電源ラインL1が直ちには異常であると診断しなくてもよい。例えば、診断部52cは、1つのパルス電流Pを生じさせ、複数通り(上記の例では、合計48通り)の抵抗値の評価を行う上記で説明した評価セットを再度行ってもよい。そして、2回目の評価セットで抵抗値が正常であると評価された数が基準数以上である場合、診断部52cは、電源ラインL1が正常であると診断し、電源ライン診断を終了してもよい。この場合において、診断部52cは、例えば、上限回数(例えば、3回)の評価セットを行った結果、いずれの評価セットにおいても電源ラインL1が正常であると診断されなかった場合、電源ラインL1が異常であると診断し、電源ライン診断を終了する。
【0092】
以上説明したように、電源ライン診断の第2の例では、診断部52cは、パルス電流Pにおいて電流値Cが第1電流値C1(図8の例では、最小値Cmin)から第2電流値C2(図8の例では、最大値Cmax)に推移する前後における電源ラインL1の電圧変化量に基づいて、電源ラインL1の抵抗値を評価する第1抵抗値評価を行う。また、診断部52cは、パルス電流Pにおいて電流値Cが第2電流値C2(図8の例では、最大値Cmax)から第3電流値C3(図8の例では、最小値Cmin)に推移する前後における電圧変化量に基づいて、電源ラインL1の抵抗値を評価する第2抵抗値評価を行う。そして、診断部52cは、第1抵抗値評価及び第2抵抗値評価の結果に基づいて、電源ラインL1の異常を診断する。さらに、第1抵抗値評価及び第2抵抗値評価では、電圧変化の開始時点及び終了時点の少なくとも一方が互いに異なる複数の電圧変化量が取得されて、抵抗値の評価が複数通り行われる。それにより、1つのパルス電流Pを利用して多くの抵抗値の評価を行うことができる。ゆえに、電源ライン診断においてパルス電流Pを複数回生じさせる必要がなくなるので、電源ライン診断に掛かる時間を短縮できる。よって、電源ラインL1の異常を適切に診断することができる。
【0093】
上記では、第1抵抗値評価及び第2抵抗値評価の両方において、電圧変化の開始時点及び終了時点の少なくとも一方が互いに異なる複数の電圧変化量が取得されて、抵抗値の評価が複数通り行われる例を説明した。ただし、第1抵抗値評価及び第2抵抗値評価の少なくとも一方において、電圧変化の開始時点及び終了時点の少なくとも一方が互いに異なる複数の電圧変化量が取得されて、抵抗値の評価が複数通り行われれば上記と同様の効果が奏される。例えば、第1抵抗値評価において抵抗値の評価が複数通り行われれば、第2抵抗値評価において抵抗値の評価が1通りのみ行われてもよい。また、第2抵抗値評価において抵抗値の評価が複数通り行われれば、第1抵抗値評価において抵抗値の評価が1通りのみ行われてもよい。
【0094】
上述したように、電圧変化量を特定するための電圧Vの取得タイミングを示すドットの数及び配置は図8の例に限定されない。ただし、電圧Vの取得タイミングについては、図8に示される以下の工夫が施されていることが好ましい。
【0095】
例えば、電圧Vの取得タイミングの第1の工夫として、第2電圧V2の取得タイミングは、パルス電流Pにおいて電流値Cが第2電流値C2になっている期間のうちの前半よりも後半に偏っていることが好ましい。図8の例では、ドットD21、D22、D23、D24が、パルス電流Pにおいて電流値Cが第2電流値C2になっている時点t21から時点t22までの期間のうちの前半よりも後半に偏っている。例えば、取得タイミングがある期間のうちの前半よりも後半に偏っていることは、複数の取得タイミングの平均値がある期間の後半に属していることを意味してもよい。また、例えば、取得タイミングがある期間のうちの前半よりも後半に偏っていることは、複数の取得タイミングのうちある期間の前半に属する数よりも後半に属する数の方が多いことを意味してもよい。
【0096】
第1電流値C1から第2電流値C2への推移タイミング(図8の例では、時点t21)の直後には、電圧Vの降下が完了しきっていない。ゆえに、第2電圧V2の取得タイミングを電流値Cが第2電流値C2になっている期間のうちの前半よりも後半に偏らせることによって、降下中の電圧Vが第2電圧V2として取得されることが抑制される。それにより、第1抵抗値評価及び第2抵抗値評価の信頼性が向上する。
【0097】
また、例えば、電圧Vの取得タイミングの第2の工夫として、第3電圧V3の取得タイミングは、第2電流値C2から第3電流値C3への推移タイミングから基準時間以上経過したタイミングであることが好ましい。図8の例では、ドットD31、D32、D33、D34、D35、D36のうち、最も早い取得タイミングを示すドットD31により示される第3電圧V3の取得タイミングは、第2電流値C2から第3電流値C3への推移タイミングである時点t22から基準時間以上経過したタイミングである。第2電流値C2から第3電流値C3への推移タイミング(図8の例では、時点t22)の直後には、電圧Vの上昇が完了しきっていない。基準時間は、第2電流値C2から第3電流値C3への推移に伴う電圧Vの上昇が完了するまでに掛かる時間よりも長い時間に設定される。それにより、上昇中の電圧Vが第3電圧V3として取得されることが抑制される。ゆえに、第2抵抗値評価の信頼性が向上する。
【0098】
また、例えば、電圧Vの取得タイミングの第3の工夫として、第2電圧V2の取得タイミングの時間間隔は、第1電圧V1及び第3電圧V3の各々の取得タイミングの時間間隔と比べて短いことが好ましい。図8の例では、ドットD11、D12、D13、D14、D15、D16の時間間隔と、ドットD31、D32、D33、D34、D35、D36の時間間隔とは、互いに略一致している。一方、ドットD21、D22、D23、D24の時間間隔は、ドットD11、D12、D13、D14、D15、D16の時間間隔、及び、ドットD31、D32、D33、D34、D35、D36の時間間隔と比べて短い。それにより、パルス電流Pにおいて電流値Cが第2電流値C2(図8の例では、最大値Cmax)になっている期間(図8の例では、時点t21から時点t22までの期間)を短くできる。ゆえに、込め弁31が閉状態になっている期間を短くできる。よって、後輪4のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧をライダーのブレーキ操作によって上昇させることができない状況が抑制される。
【0099】
また、例えば、電圧Vの取得タイミングの第4の工夫として、第2電圧V2の取得タイミングの数は、第1電圧V1及び第3電圧V3の各々の取得タイミングの数と比べて少ないことが好ましい。図8の例では、ドットD11、D12、D13、D14、D15、D16の数と、ドットD31、D32、D33、D34、D35、D36の数とは、ともに6個であり、一致している。一方、ドットD21、D22、D23、D24の数は、4個であり、ドットD11、D12、D13、D14、D15、D16の数、及び、ドットD31、D32、D33、D34、D35、D36の数と比べて少ない。それにより、パルス電流Pにおいて電流値Cが第2電流値C2(図8の例では、最大値Cmax)になっている期間(図8の例では、時点t21から時点t22までの期間)を短くできる。ゆえに、込め弁31が閉状態になっている期間を短くできる。よって、後輪4のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧をライダーのブレーキ操作によって上昇させることができない状況が抑制される。
【0100】
なお、上記で説明した電圧Vの取得タイミングの第1の工夫、第2の工夫、第3の工夫、及び、第4の工夫の4種類の工夫のうち、いずれもが採用されなくてもよく、任意の複数種類の工夫が組み合わされて採用されてもよい。
【0101】
上記の例では、複数通り行われる抵抗値の評価の重みが同一である例を説明した。ただし、診断部52cは、複数通り行われる抵抗値の評価のうち一部の評価の重みを他の一部の評価の重みと異ならせてもよい。
【0102】
例えば、評価の重みの第1の工夫として、診断部52cは、取得タイミングが早い第2電圧V2を用いた抵抗値の評価の重みと比べて、取得タイミングが遅い第2電圧V2を用いた抵抗値の評価の重みを重くしてもよい。例えば、ドットD23、D24よりも取得タイミングが早いドットD21、D22と対応する第2電圧V2を用いた抵抗値の評価の重みと比べて、ドットD21、D22よりも取得タイミングが遅いドットD23、D24と対応する第2電圧V2を用いた抵抗値の評価の重みを重くしてもよい。また、例えば、ドットD21と対応する第2電圧V2を用いた抵抗値の評価、D22と対応する第2電圧V2を用いた抵抗値の評価、D23と対応する第2電圧V2を用いた抵抗値の評価、D24と対応する第2電圧V2を用いた抵抗値の評価の順に重みを重くしてもよい。
【0103】
上述したように、第1電流値C1から第2電流値C2への推移タイミング(図8の例では、時点t21)の直後には、電圧Vの降下が完了しきっていない。ゆえに、取得タイミングが遅い第2電圧V2は、取得タイミングが早い第2電圧V2と比べて降下中の電圧Vである可能性が低い。よって、取得タイミングが早い第2電圧V2を用いた抵抗値の評価の重みと比べて、取得タイミングが遅い第2電圧V2を用いた抵抗値の評価の重みを重くすることによって、第1抵抗値評価及び第2抵抗値評価の信頼性が向上する。
【0104】
また、例えば、評価の重みの第2の工夫として、診断部52cは、取得タイミングが早い第3電圧V3を用いた抵抗値の評価の重みと比べて、取得タイミングが遅い第3電圧V3を用いた抵抗値の評価の重みを重くしてもよい。例えば、ドットD34、D35、D36よりも取得タイミングが早いドットD31、D32、D33と対応する第3電圧V3を用いた抵抗値の評価の重みと比べて、D31、D32、D33よりも取得タイミングが遅いドットD34、D35、D36対応する第3電圧V3を用いた抵抗値の評価の重みを重くしてもよい。また、例えば、ドットD31と対応する第3電圧V3を用いた抵抗値の評価、ドットD32と対応する第3電圧V3を用いた抵抗値の評価、ドットD33と対応する第3電圧V3を用いた抵抗値の評価、ドットD34と対応する第3電圧V3を用いた抵抗値の評価、ドットD35と対応する第3電圧V3を用いた抵抗値の評価、ドットD36と対応する第3電圧V3を用いた抵抗値の評価の順に重みを重くしてもよい。
【0105】
上述したように、第2電流値C2から第3電流値C3への推移タイミング(図8の例では、時点t22)の直後には、電圧Vの上昇が完了しきっていない。ゆえに、取得タイミングが遅い第3電圧V3は、取得タイミングが早い第3電圧V3と比べて上昇中の電圧Vである可能性が低い。よって、取得タイミングが早い第3電圧V3を用いた抵抗値の評価の重みと比べて、取得タイミングが遅い第3電圧V3を用いた抵抗値の評価の重みを重くすることによって、第2抵抗値評価の信頼性が向上する。
【0106】
なお、上記で説明した評価の重みの第1の工夫、及び、第2の工夫の2種類の工夫のうち、いずれもが採用されなくてもよく、両方の工夫が組み合わされて採用されてもよい。
【0107】
上記の例では、パルス電流Pにおいて、第1電流値C1及び第3電流値C3が最小値Cminであり、第2電流値C2が最大値Cmaxである例を説明した。ただし、第1電流値C1、第2電流値C2及び第3電流値C3の値はこの例に限定されない。例えば、第2電流値C2が最大値Cmaxより小さい値であってもよい。また、上記の例では、込め弁31の開閉状態は、パルス電流Pの発生に伴って、開状態と閉状態との間で切り替わる。ただし、込め弁31の開閉状態は、パルス電流Pの発生に伴って、開状態と閉状態との間で切り替わらなくてもよい。例えば、第1電流値C1及び第3電流値C3が図7中の中間値Cmidであってもよい。この場合、電流値Cが第2電流値C2になっている場合に加えて、電流値Cが第1電流値C1又は第3電流値C3になっている場合にも込め弁31は閉状態に維持される。
【0108】
上記では、車両100が鞍乗り型車両である例を説明した。ただし、図8を参照して電源ライン診断の第2の例については、鞍乗り型車両以外の他の車両(例えば、自動四輪車等)にも適用され得る。
【0109】
<液圧制御ユニットの効果>
本発明の実施形態に係る液圧制御ユニット5の効果について説明する。
【0110】
まず、電源ライン診断の第1の例に関する効果について説明する。
【0111】
液圧制御ユニット5では、制御装置52は、込め弁31に印加される電流を変化させた際の電源ラインL1の電圧変化に基づいて、電源ラインL1の異常を診断する電源ライン診断を行う診断部52cを備え、診断部52cは、込め弁31に印加される電流が込め弁31の開状態と閉状態との間での切り替えを伴って変化する際の電源ラインL1の電圧変化に基づいて、電源ライン診断を行う。それにより、電源ライン診断の開始時及び終了時において込め弁31に印加される電流を変化させることに要する時間を削減できるので、電源ライン診断に掛かる時間を短縮できる。ゆえに、電源ラインL1の異常を適切に診断することができる。
【0112】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、診断部52cは、電源ライン診断において、込め弁31に印加される電流を矩形波状に推移させる。それにより、込め弁31の開閉状態を、矩形波状のパルス電流の発生に伴って、開状態と閉状態との間で切り替えることが適切に実現される。ゆえに、込め弁31に印加される電流が込め弁31の開状態と閉状態との間での切り替えを伴って変化する際の電源ラインL1の電圧変化に基づいて、電源ライン診断を行うことが適切に実現される。
【0113】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、診断部52cは、電源ラインL1の電圧Vが安定していると判定される場合に、電源ライン診断を行う。それにより、電源ライン診断の信頼性を向上できる。
【0114】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、電源ライン診断において、込め弁31が閉状態に複数回切り替わり、込め弁31の閉状態の継続時間は、全ての回で同一である。それにより、各回の込め弁31の閉状態の継続時間をできるだけ短くできる。ゆえに、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧をライダーのブレーキ操作によって上昇させることができない状況が抑制される。
【0115】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、電源ライン診断において、込め弁31が閉状態に複数回切り替わり、込め弁31の閉状態の継続時間は、一部の回で他の一部の回と異なる。電源ラインL1の電圧Vが安定しているか否かの判定を省略しつつ、電源ライン診断の信頼性を向上できる。
【0116】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、診断部52cは、込め弁31が開状態と閉状態との間で切り替わる前後における電源ラインL1の電圧変化量に基づいて、電源ライン診断を行う。それにより、込め弁31に印加される電流が込め弁31の開状態と閉状態との間での切り替えを伴って変化する際の電源ラインL1の電圧変化に基づいて、電源ライン診断を行うことが適切に実現される。
【0117】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、診断部52cは、込め弁31が開状態から閉状態に切り替わる前後における電圧変化量と、込め弁31が閉状態から開状態に切り替わる前後における電圧変化量と、に基づいて電源ライン診断を行う。それにより、1つのパルス電流に対して、少なくとも2通りの電源ラインL1の抵抗値の評価を行うことができる。ゆえに、電源ライン診断において生じさせるパルス電流の数を低減でき、電源ライン診断に掛かる時間を短縮できる。ただし、診断部52cは、少なくとも1つのパルス電流に対して、込め弁31が開状態から閉状態に切り替わる前後における電圧変化量、及び、込め弁31が閉状態から開状態に切り替わる前後における電圧変化量の一方に基づかずに電源ライン診断を行ってもよい。
【0118】
好ましくは、ブレーキシステム10は、液圧制御ユニット5を備え、ブレーキシステム10では、1つのマスタシリンダ21と連通するホイールシリンダ24の数は1つである。電源ライン診断の第1の例では、複数のパルス電流が生じている間においても、込め弁31が開状態と閉状態との間で切り替わる。ゆえに、複数のパルス電流が生じている間において、込め弁31が開状態になっている状態を生じさせることができる。よって、電源ライン診断において電流が印加される込め弁31が属する制動機構(上記の例では、後輪制動機構14)のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧をライダーのブレーキ操作によって上昇させることができない状況が抑制される。
【0119】
次に、電源ライン診断の第2の例に関する効果について説明する。
【0120】
液圧制御ユニット5では、制御装置52は、電源B1から電源ラインL1を介して電磁弁(上記の例では、込め弁31)に印加される電流を変化させた際の電源ラインL1の電圧変化に基づいて、電源ラインL1の異常を診断する電源ライン診断を行う診断部52cを備え、診断部52cは、電源ライン診断において、電磁弁に印加される電流の電流値Cが、第1電流値C1、第1電流値C1より大きい第2電流値C2、第2電流値C2より小さい第3電流値C3の順に推移する1つの矩形波状のパルス電流Pを生じさせ、パルス電流Pにおいて電流値Cが第1電流値C1から第2電流値C2に推移する前後における電源ラインL1の電圧変化量に基づいて、電源ラインL1の抵抗値を評価する第1抵抗値評価を行い、パルス電流Pにおいて電流値Cが第2電流値C2から第3電流値C3に推移する前後における電圧変化量に基づいて、電源ラインL1の抵抗値を評価する第2抵抗値評価を行い、第1抵抗値評価及び第2抵抗値評価の結果に基づいて、電源ラインL1の異常を診断し、第1抵抗値評価及び第2抵抗値評価の少なくとも一方では、電圧変化の開始時点及び終了時点の少なくとも一方が互いに異なる複数の電圧変化量が取得されて、抵抗値の評価が複数通り行われる。それにより、1つのパルス電流Pを利用して多くの抵抗値の評価を行うことができる。ゆえに、電源ライン診断においてパルス電流Pを複数回生じさせる必要がなくなるので、電源ライン診断に掛かる時間を短縮できる。よって、電源ラインL1の異常を適切に診断することができる。
【0121】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、診断部52cは、電源ラインL1の電圧Vが安定していると判定される場合に、電源ライン診断を行う。それにより、電源ライン診断の信頼性を向上できる。
【0122】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、診断部52cは、第1抵抗値評価において、電流値Cが第1電流値C1になっている状態で取得される電源ラインL1の電圧Vである第1電圧V1と、電流値Cが第2電流値C2になっている状態で取得される電源ラインL1の電圧Vである第2電圧V2とに基づいて、電圧変化量を取得し、第2抵抗値評価において、第2電圧V2と、電流値Cが第3電流値C3になっている状態で取得される電源ラインL1の電圧Vである第3電圧V3とに基づいて、電圧変化量を取得する。それにより、第1抵抗値評価及び第2抵抗値評価を行うことが適切に実現される。
【0123】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、第2電圧V2の取得タイミングは、パルス電流Pにおいて電流値Cが第2電流値C2になっている期間のうちの前半よりも後半に偏っている。それにより、降下中の電圧Vが第2電圧V2として取得されることが抑制されるので、第1抵抗値評価及び第2抵抗値評価の信頼性が向上する。
【0124】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、第2電圧V2の取得タイミングは複数存在し、診断部52cは、取得タイミングが早い第2電圧V2を用いた抵抗値の評価の重みと比べて、取得タイミングが遅い第2電圧V2を用いた抵抗値の評価の重みを重くする。それにより、降下中の電圧Vである可能性が低い第2電圧V2を用いた抵抗値の評価の重みを重くすることができるので、第1抵抗値評価及び第2抵抗値評価の信頼性が向上する。
【0125】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、第3電圧V3の取得タイミングは、第2電流値C2から第3電流値C3への推移タイミングから基準時間以上経過したタイミングである。それにより、上昇中の電圧Vが第3電圧V3として取得されることが抑制されるので、第2抵抗値評価の信頼性が向上する。
【0126】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、第3電圧V3の取得タイミングは複数存在し、診断部52cは、取得タイミングが早い第3電圧V3を用いた抵抗値の評価の重みと比べて、取得タイミングが遅い第3電圧V3を用いた抵抗値の評価の重みを重くする。それにより、上昇中の電圧Vである可能性が低い第3電圧V3を用いた抵抗値の評価の重みを重くすることができるので、第2抵抗値評価の信頼性が向上する。
【0127】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、第1電圧V1、第2電圧V2及び第3電圧V3の取得タイミングはそれぞれ複数存在し、第2電圧V2の取得タイミングの時間間隔は、第1電圧V1及び第3電圧V3の各々の取得タイミングの時間間隔と比べて短い。それにより、例えば、上記の例では、込め弁31が閉状態になっている期間を短くできる。よって、電源ライン診断において電流が印加される込め弁31が属する制動機構(上記の例では、後輪制動機構14)のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧をライダーのブレーキ操作によって上昇させることができない状況が抑制される。
【0128】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、第1電圧V1、第2電圧V2及び第3電圧V3の取得タイミングはそれぞれ複数存在し、第2電圧V2の取得タイミングの数は、第1電圧V1及び第3電圧V3の各々の取得タイミングの数と比べて少ない。それにより、例えば、上記の例では、込め弁31が閉状態になっている期間を短くできる。よって、電源ライン診断において電流が印加される込め弁31が属する制動機構(上記の例では、後輪制動機構14)のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧をライダーのブレーキ操作によって上昇させることができない状況が抑制される。
【0129】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、電磁弁(上記の例では、込め弁31)の開閉状態は、パルス電流Pの発生に伴って、開状態と閉状態との間で切り替わる。それにより、例えば、込め弁31の開閉状態がパルス電流Pの発生に伴って開状態と閉状態との間で切り替わらない場合と比べて、込め弁31が閉状態になっている期間を短くできる。よって、電源ライン診断において電流が印加される込め弁31が属する制動機構(上記の例では、後輪制動機構14)のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧をライダーのブレーキ操作によって上昇させることができない状況が抑制される。
【0130】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、車両100は、鞍乗り型車両である。それにより、液圧制御ユニット5が鞍乗り型車両に搭載される場合において、電源ラインL1の異常を適切に診断することができる。
【0131】
本発明は実施形態の説明に限定されない。例えば、実施形態の一部のみが実施されてもよい。
【0132】
例えば、上述した電源ライン診断の第1の例と第2の例とが組み合わされて採用されてもよい。例えば、電源ライン診断の第1の例で少なくとも1つのパルス電流に対して行われる第1抵抗値評価及び第2抵抗値評価の少なくとも一方において、電圧変化の開始時点及び終了時点の少なくとも一方が互いに異なる複数の電圧変化量が取得されて、抵抗値の評価が複数通り行われてもよい。
【符号の説明】
【0133】
1 胴体、2 ハンドル、3 前輪、3a ロータ、4 後輪、4a ロータ、5 液圧制御ユニット、6 報知装置、10 ブレーキシステム、11 第1ブレーキ操作部、12 前輪制動機構、13 第2ブレーキ操作部、14 後輪制動機構、21 マスタシリンダ、22 リザーバ、23 ブレーキキャリパ、24 ホイールシリンダ、25 主流路、26 副流路、31 込め弁、32 弛め弁、33 アキュムレータ、34 ポンプ、35 スイッチング素子、41 前輪車輪速センサ、42 後輪車輪速センサ、43 電圧センサ、51 液圧制御機構、51a 基体、52 制御装置、52a 取得部、52b 制御部、52c 診断部、100 車両、B1 電源、C 電流値、C1 第1電流値、C2 第2電流値、C3 第3電流値、Cmax 最大値、Cmid 中間値、Cmin 最小値、L1 電源ライン、P パルス電流、P1 パルス電流、P2 パルス電流、P3 パルス電流、P4 パルス電流、P11 パルス電流、P12 パルス電流、P13 パルス電流、P14 パルス電流、V 電圧、V1 第1電圧、V2 第2電圧、V3 第3電圧。
図1
図2
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図6
図7
図8