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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015660
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/01 20060101AFI20240130BHJP
   A01K 89/015 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A01K89/01 E
A01K89/01 101E
A01K89/015 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117879
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】512209689
【氏名又は名称】SOLIZE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 陽介
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108BE04
2B108CC01
2B108EC01
(57)【要約】
【課題】回転軸を回転させるのに必要な力を負荷トルクの変化に応じて簡単に調整して回転軸に伝達して回転させることができる動力伝達装置を提供する。
【解決手段】動力伝達装置10は、負荷トルクが作用するハンドル軸3に駆動力を伝達して回転させるために使用される。動力伝達装置10は、周方向に沿って複数の歯25が形成された外周部24を有する回転歯車20と、回転歯車20を回転可能に収容する歯車収容部33を有する歯車ホルダ30と、歯車ホルダ30に対して移動可能に構成される可動アーム40とを備える。可動アーム40は、駆動力を受ける駆動力入力部46と、回転歯車20の歯25と噛合する歯が並んで形成されたギア部47とを有している。動力伝達装置10は、ハンドル軸3の中心Gから可動アーム40の駆動力入力部46までの距離を縮める方向に可動アーム40を付勢するコイルバネ50をさらに備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷トルクが作用する回転軸に駆動力を伝達して回転させるための動力伝達装置であって、
前記回転軸とともに回転するように前記回転軸に取り付けられる中央部と、周方向に沿って複数の歯が形成された外周部とを有する回転歯車と、
前記回転歯車を回転可能に収容する歯車収容部を有する歯車ホルダと、
前記歯車ホルダに対して移動可能に構成される可動アームであって、前記駆動力を受ける駆動力入力部と、前記回転歯車の前記複数の歯と噛合する歯が並んで形成されたギア部とを有する可動アームと、
前記回転軸の中心から前記可動アームの前記駆動力入力部までの距離を縮める方向に前記可動アームを付勢する付勢部材と
を備えた、動力伝達装置。
【請求項2】
前記歯車ホルダは、円筒状の挿通部をさらに有し、
前記可動アームは、前記歯車ホルダの前記挿通部に挿通される軸部と、前記軸部の先端に着脱自在に取り付けられるエンドキャップとをさらに有し、
前記付勢部材は、前記可動アームの前記エンドキャップと前記歯車ホルダの前記挿通部との間に配置される、
請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記可動アームの前記エンドキャップは、前記軸部への固定位置を調整できるように構成される、請求項2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記可動アームは、前記歯車ホルダの前記挿通部に当接可能なストッパ部をさらに有する、請求項2に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記歯車ホルダは、円筒状の挿通部と、前記挿通部の反対側に形成されるフック部とをさらに有し、
前記可動アームは、前記歯車ホルダの前記挿通部に挿通される軸部と、前記歯車ホルダの前記フック部に係合して前記フック部の移動をガイドするレール部とをさらに有する、
請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項6】
前記可動アームは、前記歯車ホルダの前記挿通部に当接可能なストッパ部をさらに有する、請求項5に記載の動力伝達装置。
【請求項7】
スプールを回転させるためのハンドル軸を有するリール本体と、
前記リール本体の前記ハンドル軸に取り付けられるハンドル機構と
を備え、
前記ハンドル機構は、
前記回転軸としての前記ハンドル軸に取り付けられる、請求項1から6のいずれか一項に記載の動力伝達装置と、
前記動力伝達装置の前記駆動力入力部に取り付けられるノブと
を含む、
釣り用リール。
【請求項8】
車輪と、
クランクシャフトを有するクランクホイールと、
前記クランクホイールの回転を前記車輪に伝達するように前記車輪と前記クランクホイールとを連結する連結部材と、
前記クランクホイールの前記クランクシャフトに取り付けられるクランク機構と
を備え、
前記クランク機構は、
前記回転軸としての前記クランクシャフトに取り付けられる、請求項1から6のいずれか一項に記載の動力伝達装置と、
前記動力伝達装置の前記駆動力入力部に取り付けられるペダルと
を含む、
自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に係り、特に負荷トルクが作用する回転軸に駆動力を伝達するための動力伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、釣り用のリールは、釣り糸を巻き取るスプールを回転させるためのハンドル軸にハンドルアームが取り付けられており、使用者がこのハンドルアームを回転させることによってスプールが回転して釣り糸が巻き取られる。釣り糸の仕掛けに魚がかかった場合には、魚の動きに応じて釣り糸に作用する張力が変化する。例えば、魚による引きが強いときは、釣り糸の張力が大きくなり、ハンドルアームを回転させるのに必要なトルクも大きくなる。このように必要なトルクが大きくなった場合に、ハンドルアームとハンドル軸とを連結しているナットを緩めてハンドルアームを長くした上で再びナットを締めることでハンドルアームを回転させるのに必要な力を軽減する機構も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示されている機構によれば、魚による引きの強さに応じて、釣りをしている最中にナットを手で操作してハンドルアームの長さを調整する必要がある。このような操作が必要であるために、使用者は釣りに集中することができず、また、魚の動きに対する対応が疎かになって魚に逃げられてしまうことも考えられる。このため、特段の操作を必要とすることなく、ハンドルアームを回転させるのに必要な力を調整することができるリール構造が要望されている。また、このような釣り用のリール以外の多種多様な装置においても、回転軸を回転させるのに必要な力を負荷トルクの変化に応じて簡単に調整して回転軸に伝達することができる動力伝達機構が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-135624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、回転軸を回転させるのに必要な力を負荷トルクの変化に応じて簡単に調整して回転軸に伝達することができる動力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、回転軸を回転させるのに必要な力を負荷トルクの変化に応じて簡単に調整して回転軸に伝達することができる動力伝達装置が提供される。上記動力伝達装置は、負荷トルクが作用する回転軸に駆動力を伝達して回転させるために使用される。上記動力伝達装置は、上記回転軸とともに回転するように上記回転軸に取り付けられる中央部と、周方向に沿って複数の歯が形成された外周部とを有する回転歯車と、上記回転歯車を回転可能に収容する歯車収容部を有する歯車ホルダと、上記歯車ホルダに対して移動可能に構成される可動アームとを備える。上記可動アームは、上記駆動力を受ける駆動力入力部と、上記回転歯車の上記複数の歯と噛合する歯が並んで形成されたギア部とを有している。上記動力伝達装置は、上記回転軸の中心から上記可動アームの上記駆動力入力部までの距離を縮める方向に上記可動アームを付勢する付勢部材をさらに備える。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、ハンドル軸を回転させるのに必要な力を負荷トルクの変化に応じて簡単に調整してハンドル軸に伝達してスプールを回転させることができる釣り用リールが提供される。この釣り用リールは、スプールを回転させるためのハンドル軸を有するリール本体と、上記リール本体の上記ハンドル軸に取り付けられるハンドル機構とを備える。上記ハンドル機構は、上記回転軸としての上記リール本体の上記ハンドル軸に取り付けられる、上記動力伝達装置と、上記動力伝達装置の上記駆動力入力部に取り付けられるノブとを含む。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、クランクシャフトを回転させるのに必要な力を負荷トルクの変化に応じて簡単に調整してクランクシャフトに伝達してクランクホイールを回転させることができる自転車が提供される。この自転車は、車輪と、クランクシャフトを有するクランクホイールと、上記クランクホイールの回転を上記車輪に伝達するように上記車輪と上記クランクホイールとを連結する連結部材と、上記クランクホイールの上記クランクシャフトに取り付けられるクランク機構とを備える。上記クランク機構は、上記回転軸としての上記クランクシャフトに取り付けられる、上記動力伝達装置と、上記動力伝達装置の上記駆動力入力部に取り付けられるペダルとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態における動力伝達装置を釣り用リールに適用した例を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す釣り用リールのハンドル機構を示す正面図である。
図3図3は、図2に示すハンドル機構の分解斜視図である。
図4図4は、図2に示すハンドル機構における回転歯車の正面図である。
図5A図5Aは、図2に示すハンドル機構における歯車ホルダの正面図である。
図5B図5Bは、図5Aの歯車ホルダの平面図である。
図6A図6Aは、図2に示すハンドル機構における可動アームのアーム本体の正面図である。
図6B図6Bは、図6Aのアーム本体の底面図である。
図7図7は、図2に示すハンドル機構の動力伝達装置の縦断面図である。
図8図8は、図2に示すハンドル機構における歯車ホルダ及び可動アームのA-A線断面図である。
図9図9は、図7に示す動力伝達装置の動作を説明するための模式的断面図である。
図10図10は、図7に示す動力伝達装置の動作を説明するための模式的断面図である。
図11図11は、本発明の一実施形態における動力伝達装置を自転車に適用した例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る動力伝達装置の実施形態について図1から図11を参照して詳細に説明する。図1から図11において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図1から図11においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態における動力伝達装置10を釣り用リール1に適用した例を示す斜視図である。図1に示す釣り用リール1は、釣り糸を巻き取るスプールを含むリール本体2と、リール本体2に設けられたハンドル軸3に取り付けられるハンドル機構4とを有している。ハンドル機構4は、本発明に係る動力伝達装置10と、動力伝達装置10に回転可能に取り付けられるノブ5とを含んでいる。
【0012】
図2はハンドル機構4を示す正面図、図3は分解斜視図である。図2及び図3に示すように、ハンドル機構4を構成する動力伝達装置10は、リール本体2のハンドル軸3に取り付けられる回転歯車20と、回転歯車20を収容する歯車ホルダ30と、歯車ホルダ30に対して移動可能に構成される可動アーム40と、可動アーム40を付勢する付勢部材としてのコイルバネ50とを有している。
【0013】
図4は、回転歯車20の正面図である。図4に示すように、回転歯車20は、リール本体2のハンドル軸3(図1参照)の外形と略同一の形状の軸孔21が形成された中央部22と、中央部22の周囲でZ方向に延びる円筒部23と、円筒部23から半径方向外側に広がる外周部24とを有している。外周部24には周方向に沿って複数の歯25が形成されている。リール本体2のハンドル軸3は、回転歯車20の中央部22の軸孔21に挿通され、このハンドル軸3にナット26(図1図4参照)が締結されることにより、回転歯車20がハンドル軸3に取り付けられる。これにより、回転歯車20はリール本体2のハンドル軸3とともに回転するようになっている。
【0014】
図5Aは歯車ホルダ30の正面図、図5Bは平面図である。図5A及び図5Bに示されるように、歯車ホルダ30は、X方向に延びる梁部31と、梁部31の一端部に設けられる円筒状の挿通部32と、梁部31の他端部から半円状に延びる1対の歯車収容部33と、挿通部32とは反対側に位置するフック部34とを含んでいる。挿通部32には、X方向に貫通する挿通孔32A(図3参照)が形成されている。半円状の歯車収容部33の内周部33Aは、回転歯車20の円筒部23を支持するようになっており、1対の歯車収容部33の間には、回転歯車20の外周部24が位置するようになっている。すなわち、回転歯車20は、歯車収容部33の半径方向内側に収容されている。このような歯車収容部33によって回転歯車20は(ハンドル軸3を中心として)回転可能に支持される。
【0015】
歯車ホルダ30のフック部34は、歯車収容部33の-X方向側の端部から+Y方向の延びるネック部35と、ネック部35の+Y方向側の端部からZ方向に広がるヘッド部36とを含んでいる。このような構造により、フック部34のヘッド部36と歯車収容部33の-X方向側の端部との間には、X方向に延びるガイド溝37が形成される。
【0016】
図3に戻って、可動アーム40は、X方向に延びるアーム本体41と、アーム本体41に着脱自在に取り付けられるエンドキャップ42とを含んでいる。エンドキャップ42は、ネジ山(図示せず)が形成されたネジ部42Aと、ネジ部42Aのよりも径の大きいヘッド部42Bとを含んでいる。このヘッド部42Bの外径は、コイルバネ50の外径よりも大きくなっている。
【0017】
コイルバネ50は、圧縮された状態でエンドキャップ42のヘッド部42Bと歯車ホルダ30の挿通部32との間に配置される。このため、可動アーム40は、コイルバネ50によって+X方向に常に付勢された状態となっている。図2は、ハンドル機構4に外部からの力が作用していない初期状態を示しており、この初期状態では、コイルバネ50の付勢力によって、可動アーム40のアーム本体41の+X方向の端部(ストッパ部70)が歯車ホルダ30の挿通部32に当接している。
【0018】
図6Aはアーム本体41の正面図、図6Bは底面図である。図6A及び図6Bに示すように、アーム本体41は、X方向に延びる基部43と、基部43から+X方向に延びる略円筒状の軸部44と、基部43から-X方向に延びる平板状の作動部45とを含んでいる。作動部45には、ノブ5を固定するためのネジ6(図3参照)が取り付けられる駆動力入力部46が設けられている。この駆動力入力部46に形成された貫通孔46Aにネジ6を挿通させ、このネジ6をノブ5に取り付けることによって、ノブ5が作動部45に対して回転可能に取り付けられる。釣り用リール1の使用者がノブ5を握ってハンドル軸3を中心としてハンドル機構4を回転させると、後述するように、ノブ5に加えた力が動力伝達装置10を介してハンドル軸3に伝達され、ハンドル軸3が回転してスプールが回転するようになっている。このように、本実施形態においては、アーム本体41の駆動力入力部46は、釣り用リール1の使用者がノブ5に加える力(駆動力)を受けるように構成されている。
【0019】
図3に示すように、軸部44の+X方向の先端には、エンドキャップ42のネジ部42Aが挿入されるネジ孔44Aが形成されている。エンドキャップ42のネジ部42Aをアーム本体41の軸部44のネジ孔44Aに螺合することで、エンドキャップ42をアーム本体41に対して固定することができる。本実施形態では、エンドキャップ42のネジ部42Aの螺合の程度を調整することで、エンドキャップ42のヘッド部42BのX方向の位置を調整することができる。
【0020】
このように、本実施形態では、エンドキャップ42のヘッド部42BのX方向の位置を調整することができるので、エンドキャップ42のヘッド部42Bと歯車ホルダ30の挿通部32との間に配置されるコイルバネ50の圧縮の度合いを調整することができる。すなわち、エンドキャップ42のヘッド部42BのX方向の位置を調整することで、コイルバネ50が可動アーム40を付勢する力(付勢力)を調整することができる。
【0021】
図3及び図6Bに示すように、基部43の内部には、複数の歯がX方向に並んで形成されたギア部47が形成されている。このギア部47の歯は、歯車ホルダ30の収容される回転歯車20の歯25と噛合するようになっており、ギア部47と回転歯車20とによりラック-ピニオン構造が形成されている。
【0022】
基部43の-Y方向側には開口48Aが形成されており、この開口48Aの-X方向側には、基部43の両縁からZ方向に延出する延出片49が形成されている。これらの延出片49の間には、開口48AよりもZ方向に沿った幅の狭い開口48Bが形成されている。
【0023】
図7は、図2に示すハンドル機構4の動力伝達装置10の縦断面図、図8は、図2に示すハンドル機構4における歯車ホルダ30及び可動アーム40のA-A線断面図である。図7及び図8に示すように、アーム本体41の延出片49の+Y方向側には、歯車ホルダ30のフック部34のヘッド部36を収容するガイド溝60が形成されている。このガイド溝60はX方向に沿って延びており、開口48Aに連通している。また、フック部34のガイド溝37は、アーム本体41の基部43の両縁から延びる延出片49の間に位置している。
【0024】
このような構成により、歯車ホルダ30のフック部34及びネック部35がアーム本体41の延出片49に係合しつつ、歯車ホルダ30のヘッド部36がアーム本体41のガイド溝60の内部をX方向に移動するようになっている。このように、本実施形態では、アーム本体41の延出片49及びガイド溝60は、歯車ホルダ30のフック部34に係合しつつ、フック部34のX方向への移動をガイドするレール部として機能する。このようなレール部によって可動アーム40に対する歯車ホルダ30の移動をガイドすることで、動力伝達装置10の構造を簡単なものにすることができる。なお、動力伝達装置10を組み立てる際には、歯車ホルダ30のフック部34のヘッド部36をアーム本体41の開口48Aからガイド溝60に導入することができる。
【0025】
図9に示すように、コイルバネ50は、ハンドル軸3の中心Gから駆動力入力部46の貫通孔46Aの中心Cまでの距離D1を縮める方向(すなわち+X方向)に可動アーム40を付勢している。一方、釣り用リール1を実際に使用する際には、釣り糸の張力に応じた負荷トルクがハンドル軸3に作用し、この負荷トルクが回転歯車20を介して可動アーム40のギア部47に-X方向の力を与える。コイルバネ50が可動アーム40を付勢する力をP1、負荷トルクが可動アーム40のギア部47に与える力をQ1とすると、負荷トルクが小さくてQ1がP1よりも小さいときには、可動アーム40は歯車ホルダ30に対して移動せずに初期状態のままである。したがって、釣り用リール1の使用者がハンドル機構4を回転させる実質半径は図9に示す距離D1となる。
【0026】
魚による引きが強くなるなどにより釣り糸の張力が大きくなると、ハンドル軸3に作用する負荷トルクも大きくなるが、負荷トルクが可動アーム40のギア部47に与える力が上述したコイルバネ50の付勢力P1よりも大きくなると、図10に示すように、可動アーム40が歯車ホルダ30に対して-X方向に移動する。このとき、可動アーム40は、コイルバネ50が可動アーム40を付勢する力P2(可動アーム40の移動に伴いコイルバネ50は図9に示す状態からさらに圧縮されているためP2図9のP1よりも大きくなる)と負荷トルクが可動アーム40のギア部47に与える力Q2とが釣り合う位置まで移動する。したがって、釣り用リール1の使用者がハンドル機構4を回転させる実質半径は、ハンドル軸3の中心Gから駆動力入力部46の貫通孔46Aの中心Cまでの距離D2となり、初期状態での実質半径D1よりも長くなる。このため、釣り用リール1の使用者は、負荷トルクが大きくなっても比較的小さい力でハンドル機構4を回転させることが可能となる。
【0027】
このように、本実施形態によれば、ハンドル軸3に作用する負荷トルクが大きくなると、負荷トルクが可動アーム40のギア部47に与える力とコイルバネ50が可動アーム40を付勢する力とが釣り合う位置まで可動アーム40が歯車ホルダ30に対して移動し、ハンドル軸3の中心Gから可動アーム40の貫通孔46Aの中心Cまでの距離が長くなる。したがって、負荷トルクが大きくなっても、ハンドル軸3を回転させるために必要な駆動力を無段階で連続的かつ自動的に小さく調整することができ、駆動力の調整のために釣りを中断する必要がない。
【0028】
また、本実施形態では、可動アーム40のエンドキャップ42のネジ部42Aの螺合の程度を調整することで、エンドキャップ42のヘッド部42Bと歯車ホルダ30の挿通部32との間に配置されるコイルバネ50の圧縮の度合いを調整することができる。このように、コイルバネ50が可動アーム40を付勢する力(付勢力)を調整することで、可動アーム40が歯車ホルダ30に対して移動し始めるタイミングを調整することができる。
【0029】
また、可動アーム40のエンドキャップ42はアーム本体41の軸部44に対して着脱自在に取り付けられるため、エンドキャップ42をアーム本体41の軸部44から取り外してコイルバネ50を新しいもの又は別の種類のものに簡単に交換することができる。
【0030】
本実施形態では、可動アーム40を付勢する付勢部材としてコイルバネ50を用いた例を説明したが、可動アーム40を付勢する付勢部材は、このようなコイルバネに限られるものではなく、板バネなどの他の種類のバネやゴムなどの付勢部材であってもよい。また、本実施形態では、付勢部材としてのコイルバネ50を圧縮することで可動アーム40を付勢しているが、当業者であれば、コイルバネ50を引っ張った状態で保持して可動アーム40を付勢するように構成できることも理解できるであろう。
【0031】
また、本実施形態では、可動アーム40のギア部47がX方向に沿って直線状に形成されているが、可動アーム40のギア部47は必ずしも直線状に形成されている必要はなく、例えば曲線又は円弧に沿ってギア部47が湾曲していてもよい。このようにギア部47を曲線又は円弧に沿って湾曲させれば可動アーム40のX方向の長さを短くすることができる。
【0032】
上述の実施形態では、本発明の一実施形態における動力伝達装置10を釣り用リール1に適用した例を説明したが、上述した動力伝達装置10は、負荷トルクが作用する回転軸を有するものであれば任意の工具、機械、器具、装置、乗物などに適用することが可能である。一例として、図11は、上述した動力伝達装置10を自転車101に適用した例を示す模式図である。
【0033】
図11に示す自転車101は、後輪102(車輪)と、クランクシャフト103を有するクランクホイール104と、クランクホイール104の回転を後輪102に伝達するように後輪102とクランクホイール104とを連結する連結部材としてのチェーン105と、クランクシャフト103に取り付けられるクランク機構106とを有している。クランク機構106は、上述した動力伝達装置10と、動力伝達装置10に取り付けられるペダル107とを含んでいる。動力伝達装置10の回転歯車20はクランクシャフト103に取り付けられ、ペダル107はアーム本体41の駆動力入力部46に回転可能に取り付けられる。なお、後輪102とクランクホイール104とを連結する連結部材はベルトであってもよい。
【0034】
このような構成においても、自転車101で上り坂を走行するときなど、クランクシャフト103に作用する負荷トルクが大きくなると、負荷トルクが可動アーム40のギア部47に与える力とコイルバネ50が可動アーム40を付勢する力とが釣り合う位置まで可動アーム40が移動し、クランクシャフト103の中心から可動アーム40の駆動力入力部46の中心Cまでの距離が長くなる。したがって、負荷トルクが大きくなっても、クランクシャフト103を回転させるために必要な駆動力を無段階で連続的かつ自動的に小さく調整することができ、楽に上り坂を走行することができる。
【0035】
以上述べたように、本発明の第1の態様によれば、回転軸を回転させるのに必要な力を負荷トルクの変化に応じて簡単に調整して回転軸に伝達して回転させることができる動力伝達装置が提供される。具体的には、本発明に係る動力伝達装置は、以下のような構成を採用することができる。
【0036】
(構成1)
動力伝達装置は、負荷トルクが作用する回転軸に駆動力を伝達して回転させるために使用される。上記動力伝達装置は、上記回転軸とともに回転するように上記回転軸に取り付けられる中央部と、周方向に沿って複数の歯が形成された外周部とを有する回転歯車と、上記回転歯車を回転可能に収容する歯車収容部を有する歯車ホルダと、上記歯車ホルダに対して移動可能に構成される可動アームとを備える。上記可動アームは、上記駆動力を受ける駆動力入力部と、上記回転歯車の上記複数の歯と噛合する歯が並んで形成されたギア部とを有している。上記動力伝達装置は、上記回転軸の中心から上記可動アームの上記駆動力入力部までの距離を縮める方向に上記可動アームを付勢する付勢部材をさらに備える。
【0037】
このような構成によれば、回転軸に作用する負荷トルクが大きくなると、負荷トルクが可動アームのギア部に与える力と付勢部材が可動アームを付勢する力とが釣り合う位置まで可動アームが移動し、回転軸の中心から可動アームの駆動力入力部までの距離(動力伝達装置を回転させる実質半径)が長くなる。したがって、負荷トルクが大きくなっても、回転軸を回転させるために必要な駆動力を無段階で連続的かつ自動的に小さく調整することができる。すなわち、本発明に係る動力伝達装置によれば、回転軸を回転させるのに必要な力を負荷トルクの変化に応じて自動的に調整して回転軸に伝達することが可能となる。
【0038】
(構成2)
上記構成1において、上記歯車ホルダは、円筒状の挿通部をさらに有していてもよい。上記可動アームは、上記歯車ホルダの上記挿通部に挿通される軸部と、上記軸部の先端に着脱自在に取り付けられるエンドキャップとをさらに有していてもよい。上記付勢部材は、上記可動アームの上記エンドキャップと上記歯車ホルダの上記挿通部との間に配置されていてもよい。このような構成を採用することで、エンドキャップの取り外すだけで付勢部材を簡単に交換することが可能となる。
【0039】
(構成3)
上記構成2において、上記可動アームの上記エンドキャップは、上記軸部への固定位置を調整できるように構成されていてもよい。このように可動アームのエンドキャップの軸部への固定位置を調整することにより、付勢部材の付勢力を調整して可動アームが歯車ホルダに対して移動し始めるタイミングを調整することが可能となる。
【0040】
(構成4)
上記構成2又は3において、上記可動アームは、上記歯車ホルダの上記挿通部に当接可能なストッパ部をさらに有していてもよい。
【0041】
(構成5)
上記構成1において、上記歯車ホルダは、円筒状の挿通部と、上記挿通部の反対側に形成されるフック部とをさらに有していてもよい。上記可動アームは、上記歯車ホルダの上記挿通部に挿通される軸部と、上記歯車ホルダの上記フック部に係合して上記フック部の移動をガイドするレール部とをさらに有していてもよい。このようなレ-ル部によって可動アームに対する歯車ホルダの移動をガイドすることで、動力伝達装置の構造を簡単なものにすることができる。
【0042】
(構成6)
上記構成5において、上記可動アームは、上記歯車ホルダの上記挿通部に当接可能なストッパ部をさらに有していてもよい。
【0043】
(構成7)
本発明の第2の態様によれば、ハンドル軸を回転させるのに必要な力を負荷トルクの変化に応じて簡単に調整してハンドル軸に伝達してスプールを回転させることができる釣り用リールが提供される。この釣り用リールは、スプールを回転させるためのハンドル軸を有するリール本体と、上記リール本体の上記ハンドル軸に取り付けられるハンドル機構とを備える。上記ハンドル機構は、上記回転軸としての上記リール本体の上記ハンドル軸に取り付けられる、上記構成1から6のいずれかの動力伝達装置と、上記動力伝達装置の上記駆動力入力部に取り付けられるノブとを含む。
【0044】
このような構成によれば、ハンドル軸に作用する負荷トルクが大きくなると、負荷トルクが可動アームのギア部に与える力と付勢部材が可動アームを付勢する力とが釣り合う位置まで可動アームが移動し、ハンドル軸の中心から可動アームの駆動力入力部までの距離(ハンドル機構を回転させる実質半径)が長くなる。したがって、負荷トルクが大きくなっても、ハンドル軸を回転させるために必要な駆動力を無段階で連続的かつ自動的に小さく調整することができ、駆動力の調整のために釣りを中断する必要がない。
【0045】
(構成8)
本発明の第3の態様によれば、クランクシャフトを回転させるのに必要な力を負荷トルクの変化に応じて簡単に調整してクランクシャフトに伝達してクランクホイールを回転させることができる自転車が提供される。この自転車は、車輪と、クランクシャフトを有するクランクホイールと、上記クランクホイールの回転を上記車輪に伝達するように上記車輪と上記クランクホイールとを連結する連結部材と、上記クランクホイールの上記クランクシャフトに取り付けられるクランク機構とを備える。上記クランク機構は、上記回転軸としての上記クランクシャフトに取り付けられる、上記構成1から6のいずれかの動力伝達装置と、上記動力伝達装置の上記駆動力入力部に取り付けられるペダルとを含む。
【0046】
このような構成によれば、クランクシャフトに作用する負荷トルクが大きくなると、負荷トルクが可動アームのギア部に与える力と付勢部材が可動アームを付勢する力とが釣り合う位置まで可動アームが移動し、クランクシャフトの中心から可動アームの駆動力入力部までの距離(クランク機構を回転させる実質半径)が長くなる。したがって、負荷トルクが大きくなっても、クランクシャフトを回転させるために必要な駆動力を無段階で連続的かつ自動的に小さく調整することができる。すなわち、本発明に係る自転車によれば、クランクシャフトを回転させるのに必要な力を負荷トルクの変化に応じて自動的に調整してクランクシャフトに伝達することが可能となる。
【0047】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0048】
1 釣り用リール
2 リール本体
3 ハンドル軸(回転軸)
4 ハンドル機構
5 ノブ
6 ネジ
10 動力伝達装置
20 回転歯車
22 中央部
23 円筒部
24 外周部
25 歯
26 ナット
30 歯車ホルダ
31 梁部
32 挿通部
33 歯車収容部
34 フック部
35 ネック部
36 ヘッド部
37 ガイド溝
40 可動アーム
41 アーム本体
42 エンドキャップ
43 基部
44 軸部
45 作動部
46 駆動力入力部
47 ギア部
49 延出片
50 コイルバネ(付勢部材)
60 ガイド溝
70 ストッパ部
101 自転車
102 後輪(車輪)
103 クランクシャフト
104 クランクホイール
105 チェーン(連結部材)
106 クランク機構
107 ペダル
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11