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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156609
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】ロックボルト
(51)【国際特許分類】
   E21D 20/00 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
E21D20/00 W
E21D20/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024041879
(22)【出願日】2024-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2023071014
(32)【優先日】2023-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】戸田 一生
(57)【要約】
【課題】定着材の攪拌混合のため、ロックボルトの挿入後ナットを持ってロックボルトを回転させることができるようにするとともに、ボルト頭部の突出量の調整を不要とする。
【解決手段】地山に形成された穿孔10に挿入されるロックボルト1であって、母材鋼棒2と、前記母材鋼棒2の頭部側に設けられ、穿孔10から突出した部分に受圧板4とナット5が取り付けられる頭部鋼棒3とからなる。前記頭部鋼棒3は、頭部先端に設けられた前記ナット5が螺合する雄ねじ部6と、この雄ねじ部6の前記母材鋼棒2側に設けられ、前記ナット5が螺進不能であり、かつ前記受圧板4の中央に形成されたボルト挿通孔が挿通可能な外径を有する連設軸部7とで構成する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山に形成された穿孔に挿入されるロックボルトであって、
母材鋼棒と、前記母材鋼棒の頭部側に設けられ、穿孔から突出した部分に受圧板とナットが取り付けられる頭部鋼棒とからなり、
前記頭部鋼棒は、頭部先端に設けられた前記ナットが螺合する雄ねじ部と、この雄ねじ部の前記母材鋼棒側に設けられ、前記ナットが螺進不能であり、かつ前記受圧板の中央に形成されたボルト挿通孔が挿通可能な外径を有する連設軸部とからなることを特徴とするロックボルト。
【請求項2】
前記連設軸部の外周面に定着用溝部が形成されている請求項1記載のロックボルト。
【請求項3】
前記雄ねじ部の外径は、前記連設軸部の外径とほぼ同一又はやや小径である請求項1記載のロックボルト。
【請求項4】
前記雄ねじ部は、前記ナットを前記雄ねじ部の最奥部まで螺入させた状態で前記ナットから少なくとも2~3山のねじ山が突出する長さ以上であり、前記受圧板の下面からの突出量が100mm以下となる長さで形成されている請求項1記載のロックボルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山に形成された穿孔に挿入されるロックボルトに関し、具体的には、母材鋼棒の頭部に、ナットが螺合する雄ねじ部と前記ナットが螺進不能な連設軸部とからなる頭部鋼棒が設けられたロックボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、NATM工法に代表される山岳トンネル工事では、発破による掘進毎に、掘削壁面に対してコンクリートの吹付けを行うとともに、多数のロックボルトをトンネル壁面に対して垂直に地山中に挿入して定着材によって固定することにより、吹付けコンクリートとロックボルトとを主たる支保部材として地山補強を図った後、その外面に防水シートを張設し、最終的なコンクリート覆工を行うようにしている。
従来のロックボルト工は、穿孔機によって穿孔を行った後、マンケージバスケットに搭乗した作業員が、穿孔内にホースでモルタルを充填し、そこにロックボルトを手作業で挿入していた。ところが、不安定な高所において長尺で高重量のロックボルトを人力で挿入する作業はかなり過酷な作業であるとともに、切羽に接近しての作業になるため極めて危険度が高いことが指摘されていた。また、このようなロックボルト工には作業員が通常3名以上必要になるため、省人化が求められていた。
【0003】
穿孔内にロックボルトを速やかに定着する技術として、例えば下記特許文献1、2が提案されている。
【0004】
下記特許文献1には、内部が空洞となっているロックボルトの内部に、充填材として混合することによって発泡するA液とB液とを、それぞれ密閉できる内包袋に充填して内包しておくとともに、ロックボルトの側面には空洞まで貫通する複数の充填材流出孔を設けておき、地山に穿孔後、速やかにロックボルトを地山に打ち込んだ後、ロックボルト内部に設けたカッター等でA液及びB液が充填された内包袋を破断すると、A液及びB液が発泡し、充填材流出孔から地山へ流出してロックボルトを地山に固定することが開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、通孔部を有するパイプ状の収納管体を岩盤の削孔に、収納管体外周の係止部を削孔内面に係止させて挿入係止し、この収納管体内に混合すると接着作用を発揮する定着剤を予め収納しておき、この収納管体内にロックボルトを挿入し、ロックボルトを回転させて定着剤を攪拌或いは分離されていた二液を混合させるとともに、前記収納管体の通孔部より削孔内面と収納管体外面との間及び収納管体内に定着剤を拡散充填してロックボルトを定着することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-227298号公報
【特許文献2】特開平7-48998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2記載の技術では、内部が空洞のロックボルトや、通孔部及び係止部が備えられた収納管体など、特殊な構造の部材が必要になるため、部材の製作に費用が嵩み、施工費が増大する問題がある。
【0008】
また、従来より通常用いられるロックボルト50は、図9に示されるように、異形棒鋼などの表面に定着用のリブや節が形成された母材鋼棒51の頭部に、受圧板53及びナット54が取り付けられる、長さ150mm程度の雄ねじ部52が設けられた構造を有している。前記雄ねじ部52は、図10及び図11に示されるように、受圧板53及びナット54を取り付けた状態で、ナット54から雄ねじ部52のねじ山が2~3山突出し、かつ地山表面からの突出量が100mm以下となるように設定される。このとき、図11に示されるように、ロックボルト50をトンネル壁面に対して斜めに地山中に挿入する場合もあり、この場合には受圧板53が地山表面に沿って斜めに配置されるため、このような状態にも対応できるように雄ねじ部52がナット54の締結に必要な長さ以上に長く形成され、受圧板53がロックボルト50の軸中心線に対して斜めに配置できるようになっている。
【0009】
このように、ロックボルト50の雄ねじ部52がナット54の締結に必要な長さ以上に長く形成されるため、ナット54が雄ねじ部52の途中にセットされることとなる。このため、穿孔内の定着材を攪拌混合させるためにロックボルト50を回転させる際、ナット54を持って回転させることができないので、図示例のようにナット54をダブルナットにして、ねじ部52の途中でナット54を固定する必要があった。ところが、この場合には、ダブルナットにする手間がかかるとともに、ダブルナットにしても確実に固定できるとは限らず、ダブルナットの供回りなどの不具合が生じるおそれもあった。
【0010】
また、ねじ部52の全長が長いため、打設後のロックボルト50頭部の突出長を基準値以下(一般に受圧板53下面から100mm以下)にするには、ナット54が適切な位置になるように1本1本手で調整しなければならず、施工の手間がかかる問題があった。
【0011】
そこで本発明の主たる課題は、定着材の攪拌混合のため、ロックボルトの挿入後ナットを持ってロックボルトを回転させることができるようにするとともに、ボルト頭部の突出量の調整を不要としたロックボルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、地山に形成された穿孔に挿入されるロックボルトであって、
母材鋼棒と、前記母材鋼棒の頭部側に設けられ、穿孔から突出した部分に受圧板とナットが取り付けられる頭部鋼棒とからなり、
前記頭部鋼棒は、頭部先端に設けられた前記ナットが螺合する雄ねじ部と、この雄ねじ部の前記母材鋼棒側に設けられ、前記ナットが螺進不能であり、かつ前記受圧板の中央に形成されたボルト挿通孔が挿通可能な外径を有する連設軸部とからなることを特徴とするロックボルトが提供される。
【0013】
上記請求項1記載の発明は、異形棒鋼などからなる母材鋼棒と、穿孔から突出した頭部に受圧板とナットが取り付けられる頭部鋼棒とからなるロックボルトである。そして、前記頭部鋼棒は、頭部先端に設けられたナットが螺合する雄ねじ部と、この雄ねじ部の前記母材鋼棒側に設けられ、前記雄ねじ部に螺合されたナットが螺進不能であり、かつ前記受圧板の中央に形成されたボルト挿通孔が挿通可能な外径を有する連設軸部とで構成されている。
【0014】
このため、ナットを雄ねじ部の最奥部まで螺進不能な状態に締め付け固定することにより、ロックボルトの挿入後、ナットを持って、このナットを締め込む方向に回転させると、ロックボルトを穿孔内で回転させることができるようになる。ロックボルトの回転により、穿孔内の定着材を十分に攪拌混合することができ、定着材による十分な定着強度を確保することができるようになる。
【0015】
また、ナットが雄ねじ部の最奥部で螺進不能な状態で締め付け固定されるため、ロックボルトの頭部突出量を1つ1つ手作業で調整する手間が省けるとともに、切羽近傍に作業員が近づく必要がなくなり、安全性が向上する。
【0016】
請求項2に係る本発明として、前記連設軸部の外周面に定着用溝部が形成されている請求項1記載のロックボルトが提供される。
【0017】
上記請求項2記載の発明では、前記連設軸部の外周面に定着用溝部を形成することにより、全断面接着ロックボルトとして使用した際に定着材による定着強度を高めることができる。
【0018】
請求項3に係る本発明として、前記雄ねじ部の外径は、前記連設軸部の外径とほぼ同一又はやや小径である請求項1記載のロックボルトが提供される。
【0019】
上記請求項3記載の発明では、受圧板が雄ねじ部から連設軸部にスムーズに移動できるように、雄ねじ部の外径を、連設軸部の外径とほぼ同一又はやや小径に形成している。
【0020】
請求項4に係る本発明として、前記雄ねじ部は、前記ナットを前記雄ねじ部の最奥部まで螺入させた状態で前記ナットから少なくとも2~3山のねじ山が突出する長さ以上であり、前記受圧板の下面からの突出量が100mm以下となる長さで形成されている請求項1記載のロックボルトが提供される。
【0021】
上記請求項4記載の発明では、雄ねじ部の長さとして、ナットを雄ねじ部の最奥部まで螺入させた状態でナットから少なくとも2~3山のねじ山が突出すること、受圧板の下面からの突出量が100mm以下であることの条件を満たす範囲で形成している。
【発明の効果】
【0022】
以上詳説のとおり本発明によれば、ロックボルトの挿入後ナットを持ってロックボルトを回転させることにより、定着材の十分な攪拌混合ができるようになるとともに、ボルト頭部の突出量の調整が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】トンネルの掘削手順を示す縦断面図である。
図2】トンネルの横断面図である。
図3】(A)~(D)は、ロックボルト1の施工手順を示す断面図である。
図4】本発明に係るロックボルト1を示す側面図である。
図5】受圧板4及びナット5を取り付けたロックボルト1の側面図である。
図6】トンネル壁面に対し垂直な穿孔にロックボルト1を挿入した状態を示す断面図である。
図7】トンネル壁面に対し傾斜する穿孔にロックボルト1を挿入した状態を示す断面図である。
図8】ロックボルト回転装置16を示す側面図である。
図9】従来のロックボルト50を示す側面図である。
図10】従来のロックボルト50をトンネル壁面に対し垂直な穿孔に挿入した状態を示す断面図である。
図11】従来のロックボルト50をトンネル壁面に対し傾斜する穿孔に挿入した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0025】
本発明に係るロックボルト1は、図1及び図2に示されるように、山岳トンネル掘削に際して、トンネル壁面に対しトンネル半径方向に向けて挿入するロックボルトや、切羽に対し前方の地山に向けて挿入する鏡ボルトなどとして使用できるとともに、護岸等の壁面や法面等の補強用支保部材などとしても使用することができる。本書では、トンネル掘削に使用した場合について詳細に説明する。
【0026】
山岳トンネルの施工では、図1に示されるように、切羽Sの近傍に、ドリルジャンボ11、吹付け機12、ホイールローダ13、ロックボルト施工装置14などのトンネル施工重機が配置され掘削作業が行われる。図示の例は、上半及び下半の一括の並行作業により掘削を行うミニベンチ工法の例であり、上半及び下半のそれぞれにおいて、ドリルジャンボ11によって切羽Sに対して削孔と装薬を行い、上半と下半とを一気に切り崩し(発破)、その後にホイールローダ13によってズリ出しを行った後、壁面に対して吹付け機12を用いて一次吹付けを行い、必要に応じて鋼製支保工の建込み、二次吹付けを行った後、ロックボルト施工装置14によってロックボルトの施工を行う、という手順に従って掘削が行われる。
【0027】
本発明に係るロックボルト1は、定着材の十分な攪拌混合のため、ロックボルト1の挿入後ナットを持って回転させるのに好適であるとともに、ボルト頭部の突出量を常に一定にすることができ、突出量の調整を不要としたものである。
【0028】
本発明に係るロックボルト1は、図4及び図5に示されるように、異形棒鋼などの表面に定着用のリブや節が備えられた母材鋼棒2と、この母材鋼棒2の頭部側に設けられ、トンネル壁面の穿孔10から突出した部分に受圧板4とナット5が取り付けられる頭部鋼棒3とで構成される。前記頭部鋼棒3は、母材鋼棒2の一端に隣接して互いの軸中心線が一直線上に配置された状態で接合されている。前記母材鋼棒2の頭部側とは、ロックボルト1を穿孔10に挿入したときの孔口側のことであり、前記ナット5が取り付けられる側のことである。頭部鋼棒3と母材鋼棒2との接合方法は、転造による一体化した成形や、摩擦圧接、溶接などの公知の接合方法を用いることができる。また、熱間鍛造により母材鋼棒2に頭部鋼棒3を一体的に形成してもよい。
【0029】
前記受圧板4は、平板状のベアリングプレートであり、平面形状が四角形や円形、多角形などで形成され、中央に前記頭部鋼棒3が挿通可能なボルト挿通孔が形成されている。なお、前記受圧板4として、カップ状に形成されたものを用いることも可能である。
【0030】
前記頭部鋼棒3は、頭部先端に設けられた前記ナット5が螺合する雄ねじ部6と、この雄ねじ部6の母材鋼棒2側に連続して設けられ、前記雄ねじ部6に螺合されたナット5が螺進不能であり、かつ前記受圧板4の中央に形成されたボルト挿通孔が挿通可能な外径を有する連設軸部7とで構成されている。すなわち、本発明に係るロックボルト1は、母材鋼棒2側から順に、母材鋼棒2、連設軸部7、雄ねじ部6が直列的に連続して配列されて形成されている。
【0031】
前記雄ねじ部6に螺合されたナット5を連設軸部7に螺進不能とするには、雄ねじ部6に形成されたねじ溝を連設軸部7に連続して形成しないようにすればよい。これにより、雄ねじ部6の先端から回転して螺入されたナット5は、雄ねじ部6の最奥部、すなわち雄ねじ部6と連設軸部7との境界部においてそれ以上奥側への螺進ができなくなり、ナット締め込み方向への回転が不能となって、ロックボルト1に固定された状態となる。
【0032】
次に、前記ロックボルト1の施工手順について詳細に説明すると、
ロックボルトの施工では、人力でのロックボルトの挿入や定着材の挿入といった切羽に接近しての作業を不要とし、安全性の向上と省人化による生産性の向上を図る観点から、ロックボルトの自動施工が行われる。ロックボルトの自動施工を行う際は、定着材9として、主剤と硬化剤が樹脂フィルムチューブやガラス管などのカプセル状の容器に分離収容されている接着剤からなるレジンカプセル15が用いられることが多い。
【0033】
定着材9としてレジンカプセル15を用いた場合のロックボルト1の施工は、図3に示されるように、(A)前記ロックボルト施工装置14により壁面にロックボルトのための穿孔10を形成した後、(B)この穿孔10にレジンカプセル15を挿入し、(C)、(D)その後ロックボルト1を挿入して定着させるという手順で行われる。
【0034】
前記レジンカプセル15を穿孔10に挿入するには、圧縮空気による射出装置が搭載されたロックボルト施工装置14が用いられ、前記射出装置からレジンカプセル15を圧縮空気によって穿孔10内に射出することにより、1つの穿孔10内に複数の(通常5~6個の)レジンカプセル15を配置する(図3(B))。
【0035】
穿孔10にレジンカプセル15を挿入した後、ロックボルト施工装置14に備えられたロックボルト打設装置により、穿孔10にロックボルト1を挿入する(図3(C))。このとき、ロックボルト1の挿入に伴って、ロックボルト1の先端によってレジンカプセル15の容器が破壊され、カプセル内に収容された接着剤成分(主剤及び硬化剤)が溶出する。この状態でロックボルト1を回転することにより主剤と硬化剤が攪拌混合され、定着材9としての強度が発現される。また、ロックボルト1を一定時間回転させた後、接着剤が硬化するまでの指定時間、ロックボルト施工装置14によってロックボルト1を保持し、定着させる(図3(D))。
【0036】
ここで、ロックボルト1の挿入から定着までの手順を更に詳細に説明すると、
ロックボルト1に受圧板4を挿通させた上で、上述のようにして雄ねじ部6の最奥部にナット5を固定した状態で、前述したようにロックボルト施工装置14に搭載されたロックボルト打設装置によってトンネル壁面に形成した穿孔10に前記ロックボルト1を挿入する(図6及び図7)。このロックボルト1の挿入は、受圧板4がトンネル壁面に密着するとともに、ナット5が受圧板4に密着するまで行う。
【0037】
ロックボルト1の挿入完了後速やかに、図8に示されるように、ロックボルト施工装置14に搭載されたロックボルト回転装置16によってナット5を把持した状態で、ナット5を締め込む方向に回転する。前記ロックボルト回転装置16は、図8に示されるように、先端部のナット5を把持するナット把持部17が、モータ18によって回転可能とされたものである。前記ロックボルト回転装置16によってロックボルト1が一定方向に回転されるため、穿孔10内でレジンカプセル15から溶出した主剤と硬化剤とが攪拌混合され、定着材9の十分な接着強度が発現され、ロックボルト1の十分な定着力が確保できる。
【0038】
前記ロックボルト回転装置16によって一定時間回転させた後、回転を停止し、ナット把持部17にナット5を把持した状態で、定着材9が硬化するまでの指定時間保持し、定着させる。定着材9が硬化するまでの時間は定着材9の種類によって予め定められている。しかる後、ロックボルト回転装置16を取り除き、ロックボルト1の施工を完了する。
【0039】
以下、前記ロックボルト1の構造について更に詳細に説明すると、
前記連設軸部7の外周面には、定着材9による定着強度を高めるため、定着用の多数の溝部8が形成されている。この溝部8に定着材9が充填されることにより、ロックボルト1の定着力が強化される。前記溝部8は、定着強度を高めることができ、加工しやすいものであればどのような形態でもよく、図示例のように、非ねじ形状からなり、周方向に1周する断面略コの字形の環状の溝部を、軸方向に間隔をあけて多数配置した形態としたり、あるいは前記雄ねじ部6のねじ溝と連続しないねじ溝で形成してもよいし、リブや節が形成された異形棒鋼のような形態で形成してもよい。また、網目状に溝部を形成するチェッカー加工(クロスチェッカー加工)を施してもよい。いずれにしても、雄ねじ部6に螺入されたナット5が螺進不能であり、かつ受圧板4が雄ねじ部6から連設軸部7にかけて挿通できるような形状であればよい。
【0040】
前記受圧板4が雄ねじ部6から連設軸部7にかけて連続して挿通できるようにするため、雄ねじ部6の外径は、連設軸部7の外径とほぼ同一又はやや小径とするのがよい。これにより、雄ねじ部6と連設軸部7との境界部で受圧板4が引っ掛かることなく、滑らかに挿通移動できるとともに、雄ねじ部6の最奥部まで螺入させたナット5がそれ以上奥側に螺進するのを確実に防止することができる。前記雄ねじ部6の外径D6と前記連設軸部7の外径D7とは、D7-D6=0~5mm、好ましくは0~2mmであるのがよい。
【0041】
前記頭部鋼棒3の外径は、前記母材鋼棒2の外径より小さな径で形成されている。また、受圧板4の中央に形成されたボルト挿通孔は、頭部鋼棒3は挿通できるが、母材鋼棒2は挿通できない径で形成されている。これにより、頭部鋼棒3に挿通された受圧板4が母材鋼棒2まで挿通することなく、頭部側に保持されるようになる。
【0042】
前記雄ねじ部6のねじは、ナット5を時計回り(右回り)に回転させると締まる右ねじでも、ナット5を反時計回り(左回り)に回転させると締まる左ねじでもよいが、ロックボルト施工装置14に搭載されたロックボルト回転装置16によってナット5を回転する際、前記ロックボルト回転装置16の回転方向に対してナット5が締まる方向のねじ加工が施されるようにする。すなわち、標準的なドリフタの場合、図8に示されるように、削孔時の回転方向が反時計回り(左回り)であるので、このようなドリフタを搭載したロックボルト施工装置14を用いる場合は、反時計回り(左回り)に回転するとナット5が締まる左ねじ(逆ねじ)が加工される。一方、稀に削岩用の極一部の機械では、削孔時に時計回り(右回り)に回転するものもあるので、このようなドリフタを搭載したロックボルト施工装置14を用いる場合は、時計回り(右回り)に回転するとナット5が締まる右ねじ(正ねじ)が加工される。
【0043】
前記雄ねじ部6の長さは、図5に示されるように、ナット5を雄ねじ部6の最奥部まで螺入させた状態で、ナット5から少なくとも2~3山のねじ山が突出する長さ以上であり、かつ、図6及び図7に示されるように、ロックボルト1を穿孔10に挿入し、受圧板4をトンネル壁面に密着させた状態で、受圧板4の下面(トンネル壁面)からの突出量Lが100mm以下となる長さで形成されている。本発明に係るロックボルト1では、ナット5をダブルナットにする必要がないため、穿孔10からのボルト頭部の突出長を短くすることができ、後の防水シートの施工などにおいても有利である。前記突出量Lの上限長さは、60mm以下がより好ましく、35~40mmが特に好ましい。
【0044】
前記連設軸部7の長さは、前記雄ねじ部6の長さと同等以上であり、かつ150mm以下程度とするのが好ましい。連設軸部7の長さは、図7に示されるように、ロックボルト1をトンネル壁面に対して斜めに挿入した場合に、受圧板4が傾斜可能な遊び量を確保するためのものであるので、少なくとも雄ねじ部6の長さと同等以上の長さが必要になる一方で、余り長くし過ぎると、ロックボルト1の強度低下や定着力の低下などのおそれがあるため、150mm程度を上限としている。
【0045】
〔他の形態例〕
上記形態例では、定着材9としてレジンカプセル15を用いていたが、モルタルを用いてもよい。穿孔10内にモルタルを充填後、ロックボルト1を挿入して、ロックボルト1を回転させることにより、ロックボルト1とモルタルとの馴染みを良くするとともに、モルタルとともに急結剤を充填したときは、急結剤をモルタルに均等に攪拌混合させることができ、モルタルを急速に固化させることができる。
【0046】
また、定着材9としてモルタルを用いた場合において、ロックボルト1の挿入後、ロックボルト1を回転させずに、そのまま定着させることも可能である。この場合には、従来のロックボルトの代替え品として本発明に係るロックボルト1を使用できるとともに、頭部のナット5からの雄ねじ部6の突出量が調整手間をかけることなく常に一定になるため、品質確保と省力化を図ることができるメリットがある。
【符号の説明】
【0047】
1…ロックボルト、2…母材鋼棒、3…頭部鋼棒、4…受圧板、5…ナット、6…雄ねじ部、7…連設軸部、8…溝部、9…定着材、10…穿孔、11…ドリルジャンボ、12…吹付け機、13…ホイールローダ、14…ロックボルト施工装置、15…レジンカプセル、16…ロックボルト回転装置、17…ナット把持部、18…モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11